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特許7044628流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法
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  • 特許-流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/48 20060101AFI20220323BHJP
   F16K 37/00 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
F16T1/48 D
F16K37/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018093019
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019199882
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】三宮 佳幸
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140576(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056292(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010273(WO,A1)
【文献】特開2017-9070(JP,A)
【文献】特開2011-60269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/48
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を移送する主管、
主管に連通している支管、
支管に連通しており、当該支管を分岐する第一分岐支管及び第二分岐支管、
第一分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第一排出弁、
第二分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第二排出弁、
第一排出弁における振動を検出し、第一検出信号を出力する第一検出手段、
第二排出弁における振動を検出し、第二検出信号を出力する第二検出手段、
第一検出信号及び第二検出信号を受信し、第一検出信号及び第二検出信号の振動を把握する制御手段、
を備えた流体トラップの詰まり検出システムであって、
制御手段は、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動が、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定したとき、詰まり対応処理を実行する、
ことを特徴とする流体トラップの詰まり検出システム。
【請求項2】
請求項1に係る流体トラップの詰まり検出システムにおいて、
制御手段は、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動の音量が所定の基準音量を超えたとき、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定する、
ことを特徴とする流体トラップの詰まり検出システム。
【請求項3】
請求項1に係る流体トラップの詰まり検出システムにおいて、
制御手段は、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動の周波数が所定の基準周波数であるとき、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定する、
ことを特徴とする流体トラップの詰まり検出システム。
【請求項4】
請求項1に係る流体トラップの詰まり検出システムにおいて、
第一検出手段は、第一排出弁の流体漏れによって生じる流体漏れ振動を検出し、
第二検出手段は、第二排出弁の流体漏れによって生じる流体漏れ振動を検出する、
ことを特徴とする流体トラップの詰まり検出システム。
【請求項5】
流体を移送する主管、
主管に連通している支管、
支管に連通しており、当該支管を分岐する第一分岐支管及び第二分岐支管、
第一分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第一排出弁、
第二分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第二排出弁、
を備えた流体トラップの詰まり検出システムを用いた流体トラップの詰まり検出方法であって、
第一排出弁における振動を検出し、
第二排出弁における振動を検出し、
一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動が、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定したとき、詰まり対応処理を実行する、
ことを特徴とする流体トラップの詰まり検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法は、エアトラップやスチームトラップにおけるドレン排出の詰まりを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、コンプレッサーで圧縮された圧縮エアや、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて移送する配管系統が設置されていることがある。そして、この配管内で、圧縮エアや蒸気からドレン(凝縮水)が発生し、ドレンが過度に配管内に滞留した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する。
【0003】
このため、配管系統の随所にエアトラップやスチームトラップといった自動弁が設けられている。圧縮エアや蒸気を移送する配管系統の主管には、トラップ設置用の支管が連通して延びており、この支管上にエアトラップやスチームトラップが設けられる。
【0004】
これらのトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式トラップは内部に中空のフロートを内蔵している。そして、通常においては、このフロートは底部付近に形成されたドレン排出口を塞いでおり、ここからの圧縮エアや蒸気の漏れを防いでいるが、トラップの弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従ってこのフロートが浮上し、ドレン排出口を開放する。これによって、ドレン排出口から自動的にドレンを配管外に排出する。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞するため、圧縮エアや蒸気の漏れは生じない。
【0005】
ところで、エアトラップやスチームトラップに作動不良が生じると、圧縮エアや蒸気の適正な移送が妨げられ、産業プラントの効率的な稼動が確保できない。エアトラップやスチームトラップの作動不良としては、圧縮エアや蒸気が外部に漏れ出る漏れ状態と、ドレンを適正に排出することができない詰まり状態の二つのケースがある。
【0006】
圧縮エアや蒸気の漏れ状態は、フロートの摩耗や変形等が原因で、本来、密閉すべきドレン排出口とフロートとの間に隙間が生じることによって発生する作動不良であり、排出口を密閉できなければ、ここから圧縮エアや蒸気の漏洩が生じ移送効率の低下等を招く。一方、詰まり状態は、ドレン排出口に異物等が付着・堆積してドレン排出口が塞がることによって発生する作動不良であり、ドレン排出口が詰まればドレンを排出することができず、トラップの弁内や配管内に過度のドレンが滞留してしまう。
【0007】
エアトラップやスチームトラップに、これら漏れ状態や詰まり状態の作動不良が発生した場合、できるだけ早く作動不良を解消するためのメンテナンス作業を行う必要がある。したがって、漏れ状態や詰まり状態の発生を的確に把握するため、後記特許文献1に開示されているような検出技術が知られている。
【0008】
後記特許文献1には、トラップ本体の蓋に作動状態検出装置を取り付ける構成が開示されており、この作動状態検出装置は振動センサと温度センサとを備えている。作動状態検出装置の振動センサと温度センサがトラップの振動と温度とを検出することによって、漏れ状態や詰まり状態といった作動不良を検出することができる。
【0009】
すなわち、エアトラップやスチームトラップに漏れ状態が生じている場合、圧縮エアや蒸気の漏洩に伴って漏洩音が発生し、トラップに特有の振動が生じるため、トラップのこの振動を検出すれば漏れ状態を検出することができる。
【0010】
また、特にスチームトラップに詰まり状態が生じている場合、通常時においては高温の蒸気によって熱せられたスチームトラップ自体の温度が、排出されずに滞留したドレンによる冷却によって低下するため、トラップの温度を検出して温度低下を把握すれば詰まり状態を検出することができる。
【0011】
なお、エアトラップに詰まり状態が生じている場合、圧縮エアは蒸気とは異なり通常においても高温ではないため、詰まり状態が生じても温度が低下することはない。このため、温度を検出しても詰まり状態を把握することはできない。したがって、エアトラップについては、詰まり状態を検出するため、滞留したドレン量を直接、検出する流量計を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2002-168371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の特許文献1に開示された技術においては、スチームトラップの詰まり状態を検出するために、漏れ状態検出用の振動センサとは別に温度センサを設ける必要があり、検出装置の構成が複雑化する。また、エアトラップについては、詰まり状態を検出するためにドレンの流量計を設ける必要があり、同様に構成が複雑化する。
【0014】
特に、エアトラップやスチームトラップに詰まり状態が生じた場合のセーフティー機構として、主管に連通する支管を分岐させて二つのトラップを設置することがあり、これら各々のトラップに振動センサとは別に温度センサや流量計を設けた場合、構成の複雑化が倍増し、さらにコストも高くなる。
【0015】
そこで、本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法は、これらの問題を解決することを課題とし、簡易な構成で流体トラップの詰まり状態を検出することができる流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願に係る流体トラップの詰まり検出システムは、
流体を移送する主管、
主管に連通している支管、
支管に連通しており、当該支管を分岐する第一分岐支管及び第二分岐支管、
第一分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第一排出弁、
第二分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第二排出弁、
第一排出弁における振動を検出し、第一検出信号を出力する第一検出手段、
第二排出弁における振動を検出し、第二検出信号を出力する第二検出手段、
第一検出信号及び第二検出信号を受信し、第一検出信号及び第二検出信号の振動を把握する制御手段、
を備えた流体トラップの詰まり検出システムであって、
制御手段は、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動が、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定したとき、詰まり対応処理を実行する。
【0017】
本願に係る流体トラップの詰まり検出方法は、
流体を移送する主管、
主管に連通している支管、
支管に連通しており、当該支管を分岐する第一分岐支管及び第二分岐支管、
第一分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第一排出弁、
第二分岐支管に設けられており、内部の排出対象を外部に向けて排出する第二排出弁、
を備えた流体トラップの詰まり検出システムを用いた流体トラップの詰まり検出方法であって、
第一排出弁における振動を検出し、
第二排出弁における振動を検出し、
一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動が、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定したとき、詰まり対応処理を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法においては、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動が、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりの影響による影響振動であると判定したとき、詰まり対応処理を実行する。
【0019】
すなわち、一方の第一排出弁又は第二排出弁における振動を検出することによって、他方の第二排出弁又は第一排出弁に生じた詰まりを把握し対応処理を行うことができる。したがって、簡易な構成で流体トラップの詰まり状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の第1の実施形態を示す全体構成図である。
図2図1に示す制御部56が実行する作動不良検出処理のプログラムのフローチャートである。
図3】本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の第2の実施形態を示す全体構成図である。
図4】本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法のその他の実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の下記の要素に対応している。
エアトラップ10、20、30、40・・・第一排出弁、第二排出弁
振動センサ15、25、35、45・・・第一検出手段、第二検出手段
制御部56・・・制御手段
支管80・・・支管
分岐支管81、82、83、84・・・第一分岐支管、第二分岐支管
主管89・・・主管
周波数a・・・流体漏れ振動
周波数c・・・基準周波数
基準影響音量(z)・・・基準音量
圧縮エア、蒸気・・・流体
ドレン・・・排出対象
モニタ58への詰まり状態の表示・・・詰まり対応処理
【0022】
[第1の実施形態]
本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の第1の実施形態を説明する。
【0023】
(全体構成の説明)
産業プラントには、コンプレッサーで圧縮された圧縮エアや、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて移送する配管系統が設置されていることがある。そして、この配管内で、圧縮エアや蒸気からドレンが発生し、ドレンが過度に配管内に滞留した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する。
【0024】
このため、配管系統の随所にエアトラップやスチームトラップといった、ドレン排出用の自動弁が設けられている。図1に示す主管89は圧縮エアや蒸気を移送する配管系統であり、この主管89にはレシーバータンク50を介して支管80が接続されている。そして、この支管80にはさらに分岐支管82が接続されている。分岐支管82の接続部分から下流側が分岐支管81である。
【0025】
分岐支管81、82にはそれぞれエアトラップ10、20が設けられている。このエアトラップ10、20の弁室内には中空のフロートが設けられており(図示せず)、通常時には弁室の下方に設けられたドレン排出口を塞ぎ、ここからの圧縮エアの漏れを防いでいる。
【0026】
圧縮エアからドレンが発生した場合、主管89から支管80、分岐支管81、82を通じてエアトラップ10、20の弁室にドレンが流入し、これに伴ってフロートが浮上し、ドレン排出口を開放する。ドレン排出口の開放によって、配管内の高圧の勢いに従い、ドレンはドレン排出口から排出される。排出されたドレンは、ドレン回収管(図示せず)を通じて回収される。
【0027】
ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞するため、圧縮エアの漏れは生じない。各エアトラップが、それぞれ以上のようなフロートの浮上・下降動作を行い、ドレン排出口は開放・閉塞を繰り返してドレンは適宜排出される。
【0028】
なお、支管80を分岐支管81、82によって分岐させ、二つのエアトラップ10、20を設けているのは、一方のエアトラップに詰まり状態の作動不良が発生した場合のセーフティー機構であり、他方のエアトラップから確実にドレンを排出するためである。すなわち、作動不良のうち圧縮エアの漏れがもたらす不都合は圧縮エアの損失であるが、詰まり状態の作動不良が解消されない場合においては、排出されずに滞留したドレンがエアトラップ内に充満してさらに配管系統を逆流し、設備上重大な障害を引き起こす危険がある。このため、セーフティー機構として二つのエアトラップが設けられている。
【0029】
エアトラップ10、20に対応して、それぞれ振動センサ15、25が取り付けられている。振動センサ15、25は対応するエアトラップ10、20の振動を検出し、無線によって振動信号を発信する。本実施形態においては、振動センサ15、25によってエアトラップ10、20の振動を検出し、エアトラップの漏れ状態とともに詰まり状態をも検知することができる。振動センサ15、25が無線発信する振動信号は、受信部55によって中継され、制御部56に取り込まれる。なお、制御部56はメモリ57を有しており、モニタ58に接続されている。
【0030】
(作動不良検出プログラムの説明)
次に、制御部56が実行する作動不良(漏れ状態及び詰まり状態)の検出処理のプログラムを図2に示すフローチャートに基づいて説明する。制御部56は、多数のエアトラップに取り付けられた各振動センサからの振動信号に基づき、エアトラップごとに図2のフローチャートに示す処理を繰り返し実行する。今、かりにエアトラップ10に対する検出処理が行われるとする。
【0031】
まず、制御部56は、エアトラップ10に取り付けられた振動センサ15からの振動信号に基づいて、漏れ音を検出したか否かを判別する(ステップS1)。エアトラップから圧縮エアの漏れが生じている場合、漏れ音の振動特有の周波数aが発生する。制御部56のメモリ57には予め周波数aのデータが記録されており、制御部56は受信した振動信号とこの記録データとを比較し、振動が周波数aであるか否かを判断して漏れ音を判別する。
【0032】
そして、漏れ音であると判別した場合、ステップS2に進み、制御部56は本エアトラップ、すなわちエアトラップ10に圧縮エアの漏れが生じていることをモニタ58に表示する。この表示に従ってオペレータは、エアトラップ10に漏れ状態の作動不良が発生していることを認識し、所定のメンテナンス処理を行う。
【0033】
ここで、支管80と同一系統に配置されている分岐支管81、82に設けられているエアトラップ10、20のいずれかに詰まり状態が生じ、ドレンを適正に排出できなくなった場合、その影響振動がもう一方のエアトラップ10、20の側に発生する。
【0034】
この影響振動の現れ方は、レシーバータンク、支管又は分岐支管による流路設計その他の設置状況によって多様であるが、たとえば、いずれかのエアトラップに詰まり状態が生じて弁室内にドレンが充満したことによって、もう一方のエアトラップに圧縮エアやドレンが集中的に流入し、このエアトラップからのドレンの排出音量が大きくなることがある。本実施形態では、二つのエアトラップ10、20のいずれかに詰まり状態が生じた場合、その影響振動がもう一方のエアトラップのドレン排出音量の増大という形で現れるように、レシーバータンク50、支管80及び分岐支管81、82等が流路設計されている。
【0035】
ステップS1において、漏れ音が検出されなかった場合、制御部56はステップS3に進み、ドレンの排出音を検出したか否か判別する。ドレンが排出される際、排出音による振動特有の周波数bが発生する。制御部56のメモリ57には予め周波数bのデータが記録されており、制御部56は周波数がbであるか否かを判断してドレン排出音を判別する。
【0036】
そして、ドレン排出音を検出した場合、振動センサ15からの振動信号が示すドレン排出音の音量が、基準影響音量を超えているか否かを判別する(ステップS4)。この基準影響音量のデータzは制御部56のメモリ57に予め記録されている。
【0037】
ドレン排出音の音量が基準影響音量(z)を超えていると判別した場合、他方のエアトラップ、すなわちエアトラップ20に詰まり状態の作動不良が生じていると判断することができる。このため、制御部56はステップS5に進み、他方のエアトラップ20に詰まり状態が生じており、ドレンが適正に排出されていないことをモニタ58に表示する。この表示に従ってオペレータは、エアトラップ20に詰まり状態の作動不良が発生していることを認識し、所定のメンテナンス処理を行う。
【0038】
なお、本実施形態では、一方のエアトラップのドレンが排出される際の音量の増大を検出することによって、他方のエアトラップの詰まり状態を検知したが、一方のエアトラップに流入する圧縮エア又はドレンの流入音の増大を検出し、これに基づいて他方のエアトラップの詰まり状態を検知することもできる。
【0039】
以上のように、本実施形態においては、エアトラップの圧縮エアの漏れ状態を検出するために取り付けられた振動センサを利用して、エアトラップの詰まり状態をも検出することができる。特に、エアトラップはスチームトラップとは異なり、詰まり状態が生じても温度が低下するという現象は生じないことから、振動に基づき簡易な構成で効率よく詰まり状態を検出することができる利点は大きい。
【0040】
[第2の実施形態]
続いて、本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法の第2の実施形態を説明する。本実施形態における全体構成は、第1の実施形態において示した図1の構成と基本的に同様であるため、全体構成の図示は省略する。
【0041】
本実施形態においては、エアトラップ10、20のいずれかに詰まり状態が生じた場合、その影響振動がもう一方のエアトラップにおいて周波数cとして現れるよう、レシーバータンク50、支管80及び分岐支管81、82等が流路設計されている。
【0042】
本実施形態における制御部56が実行する作動不良(漏れ状態及び詰まり状態)の検出処理のプログラムを図3に示すフローチャートに基づいて説明する。今、かりにエアトラップ10に対する検出処理が行われるとする。
【0043】
ステップS1、 S2の処理は第1の実施形態で示した内容と同じであり、制御部56は振動センサ15からの振動信号に基づいて漏れ音を検出し、本エアトラップ、すなわちエアトラップ10に圧縮エアの漏れが生じていることをモニタ58に表示する。
【0044】
ステップS1において、漏れ音が検出されなかった場合、ステップS23に進み、周波数cの詰まり影響音を検出したか否かを判別する。制御部56のメモリ57には予め周波数cのデータが記録されており、制御部56は受信した振動信号とこの記録データとを比較し、振動が周波数cであるか否かを判断して詰まり影響音を判別する。
【0045】
詰まり影響音を検出した場合、他方のエアトラップ、すなわちエアトラップ20に詰まり状態の作動不良が生じていると判断することができる。このため、制御部56はステップS24に進み、エアトラップ20に詰まり状態が生じており、ドレンが適正に排出されていないことをモニタ58に表示する。この表示に従ってオペレータは、エアトラップ20に詰まり状態の作動不良が発生していることを認識し、所定のメンテナンス処理を行う。
【0046】
[その他の実施形態]
前述のように、複数のエアトラップのいずれかに詰まり状態が生じ、ドレンを適正に排出できなくなった場合、もう一方のエアトラップの側に発生する影響振動の現れ方は、レシーバータンク、支管及び分岐支管等の流路設計その他の設置状況によって多様である。
【0047】
前記実施形態において示した流路設計とは異なる流路設計として、たとえば図4に示すものがある。支管80には、T字型に分岐させた分岐支管83、84を接続し、それぞれにエアトラップ30、40を設け、さらに各々の振動を検出する振動センサ35、45を取り付ける。このように分岐の形状を変化させる流路設計の他、支管又は分岐支管の長さ、太さによっても影響振動の現れ方が異なる。流路設計に応じて現れる影響振動を適切に振動センサで検出すれば、他方のトラップに生じている詰まり状態を把握することができる。
【0048】
また、前記各実施形態においては、本願に係る流体トラップの詰まり検出システム及び詰まり検出方法をエアトラップに適用した例を示したが、他の流体トラップ、たとえば蒸気を移送する配管系統に設けられるスチームトラップに適用することもできる。
【0049】
さらに、前記各実施形態においては、詰まり対応処理として、モニタ58への詰まり状態の報知(表示)を例示したが、トラップに詰まり状態を解消するための自動クリーニング装置を設けておき、制御部がこの自動クリーニング装置に指令信号を与えることによって、自動的にクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10、20、30、40:エアトラップ 15、25、35、45:振動センサ
56:制御部 80:支管 81、82、83、84:分岐支管 89:主管

図1
図2
図3
図4