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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220323BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20220323BHJP
   B60W 30/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G05D1/02 H
A01B69/00 303F
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
B60W30/00
G05D1/02 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018157521
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020030760
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174229(JP,A)
【文献】特開2015-112056(JP,A)
【文献】特開2017-221164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
A01B 69/00 -69/08
B60W 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の走行駆動方式として、複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を選択自在な走行駆動方式選択部と、
その走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部とが備えられている自動走行システム。
【請求項2】
作業車両の走行駆動方式として、複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を選択自在な走行駆動方式選択部と、
その走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
作業車両にて設定された作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致する場合には、衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部と、
作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、走行駆動方式の不一致を示す不一致情報を報知する不一致情報報知部とが備えられている自動走行システム。
【請求項3】
作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対して作業車両側の走行駆動方式を一致させるように、作業車両側の走行駆動方式を変更する走行駆動方式変更部が備えられている請求項2に記載の自動走行システム。
【請求項4】
作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、前記走行経路生成部が、作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を再生成する請求項2に記載の自動走行システム。
【請求項5】
通信端末には、前記走行駆動方式選択部と、前記走行経路生成部と、端末側通信部とが備えられ、
前記作業車両には、前記端末側通信部との間で情報を通信自在な車両側通信部と、前記自動走行制御部とが備えられ、
前記端末側通信部は、前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に関する走行駆動方式情報を送信自在で、且つ、目標走行経路に関する走行経路情報として、目標走行経路を複数の単位経路群に分割した単位経路群に関する単位経路群情報に分けて、単位経路群情報毎に順次送信自在に構成され、
前記車両側通信部にて受信する走行駆動方式情報による走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定する判定部が備えられ、
前記自動走行制御部は、前記判定部にて走行駆動方式が一致すると判定している状態において前記車両側通信部にて順次受信する単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を行う請求項2~4の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項6】
作業車両にて設定された走行駆動方式を取得する走行駆動方式取得部と、
その走行駆動方式取得部にて取得した走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部とが備えられている自動走行システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を目標走行経路に沿って自動走行させる自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の自動走行システムは、衛星測位システム等を用いて取得される作業車両の測位情報に基づいて、目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。目標走行経路は、作業領域となる圃場に関する圃場情報や作業車両に関する車体情報等に基づいて、作業領域に対して予め生成されている。目標走行経路として、作業装置にて作業しながら作業車両を直進走行させる作業経路と、作業装置による作業を停止させた状態で作業車両を旋回走行(180度の方向転換走行)させる連結経路とが生成されている。作業経路は、作業経路に直交する方向に間隔を隔てて平行に並ぶ状態で複数生成され、連結経路は、作業経路の終端から次の作業経路の始端まで旋回走行させるように、作業経路に直交する方向に隣接する作業経路の端部同士を繋ぐ状態で複数生成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-75027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標走行経路における連結経路は、作業車両を旋回走行させる際の旋回半径を基準として連結経路が生成されている。旋回半径は、例えば、作業車両の走行駆動方式によって大きさが異なっている。例えば、作業車両の走行駆動方式が四輪走行駆動方式であれば、二輪走行駆動方式よりも、旋回半径は大きくなっている。
【0005】
しかしながら、連結経路を含む目標走行経路を生成する際には、作業車両の走行駆動方式まで考慮されておらず、走行駆動方式に応じた目標走行経路を生成できていなかった。
【0006】
例えば、作業車両の走行駆動方式が四輪走行駆動方式であるとして連結経路を生成した場合を考える。この場合には、四輪走行駆動方式にて作業車両を旋回走行させる際に、十分な旋回半径が確保されており、作業車両を適切に旋回走行させることができる。しかしながら、十分な旋回半径を確保するために、作業経路の端部と作業領域(圃場)の端部との間に形成される枕地が大きくなり、作業経路の距離が短くなる。そのために、二輪走行駆動方式にて作業車両を旋回走行させる際に、枕地が必要以上に大きくなり、作業経路の距離も必要以上に短くなり、作業効率の低下を招くことになる。
【0007】
また、作業車両の走行駆動方式が二輪走行駆動方式であるとして連結経路を生成した場合を考えると、逆に、枕地をより小さくすることができ、作業経路の距離をより長くすることができる。しかしながら、四輪走行駆動方式にて作業車両を旋回走行させる際に、十分な旋回半径が確保されておらず、作業車両を旋回走行させることができなくなる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、走行駆動方式に応じた目標走行経路を生成することができ、作業効率の向上を図り、且つ、走行駆動方式に応じた適切な旋回半径にて旋回走行させる状態で作業車両を自動走行させることができる自動走行システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、作業車両の走行駆動方式として、複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を選択自在な走行駆動方式選択部と、
その走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部とが備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、走行駆動方式選択部にて1つの走行駆動方式を選択すると、走行経路生成部は、選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成することができる。自動走行制御部は、走行経路生成部によって生成された目標走行経路を用いて自動走行制御を行うことができる。このように、走行駆動方式選択部にて1つの走行駆動方式を選択するだけで、走行駆動方式に応じた目標走行経路を生成することができるので、その目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させることで、作業効率の向上を図り、且つ、走行駆動方式に応じた適切な旋回半径にて旋回走行させる状態で作業車両を自動走行させることができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、作業車両の走行駆動方式として、複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を選択自在な走行駆動方式選択部と、
その走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
作業車両にて設定された作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致する場合には、衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部と、
作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、走行駆動方式の不一致を示す不一致情報を報知する不一致情報報知部とが備えられている点にある。
【0012】
本構成によれば、走行駆動方式選択部にて1つの走行駆動方式を選択すると、走行経路生成部は、選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成している。一方、作業車両では、ユーザ等が作業車両側の走行駆動方式を設定することができるので、走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致するとは限らない。
【0013】
そこで、作業車両側の走行駆動方式と走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致する場合には、自動走行制御部が自動走行制御を行っている。これにより、自動走行制御部は、作業車両側の走行駆動方式と走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致することを確認した上で、自動走行制御を行うことができる。よって、自動走行制御部による自動走行制御は、走行駆動方式が一致する適切な状態で行うことができながら、作業効率の向上を図り、且つ、走行駆動方式に応じた適切な旋回半径にて旋回走行させる状態で作業車両を自動走行させることができる。
【0014】
作業車両側の走行駆動方式と走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、不一致情報報知部が不一致情報を報知するので、ユーザ等は、走行駆動方式が不一致であることを容易に認識することができる。これにより、走行駆動方式が一致しない場合でも、例えば、走行駆動方式を変更する等の作業をユーザ等が行うことで、走行行駆動方式が一致する適切な状態として、自動走行制御部による自動走行制御を行うことができる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対して作業車両側の走行駆動方式を一致させるように、作業車両側の走行駆動方式を変更する走行駆動方式変更部が備えられている点にある。
【0016】
本構成によれば、作業車両側の走行駆動方式と走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合に、走行駆動方式変更部は、走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に対して作業車両側の走行駆動方式を一致させるように、作業車両側の走行駆動方式を自動的に変更することができる。よって、ユーザ等が、走行駆動方式を変更する等の作業を行わなくてもよいので、ユーザ等の作業負担を軽減しながら、走行駆動方式が一致する適切な状態で自動走行制御部による自動走行制御を行うことができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、作業車両側の走行駆動方式と前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、前記走行経路生成部が、作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を再生成する点にある。
【0018】
本構成によれば、作業車両側の走行駆動方式と走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式とが一致しない場合には、走行経路生成部が、作業車両側の走行駆動方式を用いて目標走行経路を再生成するので、自動走行制御部は、走行経路生成部が再生成した目標走行経路にて自動走行制御を行うことができる。これにより、ユーザ等が、走行駆動方式を変更する等の作業を行わなくてもよいので、ユーザ等の作業負担を軽減しながら、目標走行経路を自動的に再生成して、走行駆動方式が一致する適切な状態で自動走行制御部による自動走行制御を行うことができる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、通信端末には、前記走行駆動方式選択部と、前記走行経路生成部と、端末側通信部とが備えられ、
前記作業車両には、前記端末側通信部との間で情報を通信自在な車両側通信部と、前記自動走行制御部とが備えられ、
前記端末側通信部は、前記走行駆動方式選択部にて選択された走行駆動方式に関する走行駆動方式情報を送信自在で、且つ、目標走行経路に関する走行経路情報として、目標走行経路を複数の単位経路群に分割した単位経路群に関する単位経路群情報に分けて、単位経路群情報毎に順次送信自在に構成され、
前記車両側通信部にて受信する走行駆動方式情報による走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定する判定部が備えられ、
前記自動走行制御部は、前記判定部にて走行駆動方式が一致すると判定している状態において前記車両側通信部にて順次受信する単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を行う点にある。
【0020】
本構成によれば、端末側通信部は、走行経路情報として、目標走行経路を複数の単位経路群に分割した単位経路群に関する単位経路群情報に分けて、単位経路群情報毎に順次送信するので、一度に送信する通信量の増大を防止しながら、走行経路情報を送信することができる。
【0021】
端末側通信部は、単位経路群情報に加えて、走行駆動方式情報を送信するので、判定部は、車両側通信部にて受信する走行駆動方式情報による走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とを比較することで、走行駆動方式が一致するか否かを適切に判定することができる。自動走行制御部は、判定部にて走行駆動方式が一致すると判定している状態において車両側通信部にて順次受信する単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を行うので、走行駆動方式が一致する適切な状態で自動走行制御を行うことができる。
【0022】
走行経路情報は、複数の単位経路群情報に分けて送信するので、自動走行制御部による自動走行制御の実行途中に、目標走行経路が変更された場合でも、端末側通信部が、変更後の目標走行経路における単位経路群情報を送信することで、自動走行制御部は、変更後の目標走行経路を用いて自動走行制御を行うことができる。このときにも、自動走行制御部は、判定部にて走行駆動方式が一致すると判定している状態において車両側通信部にて順次受信する単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を行うので、走行駆動方式が一致する適切な状態で自動走行制御を行うことができる。
【0023】
本発明の第6特徴構成は、作業車両にて設定された走行駆動方式を取得する走行駆動方式取得部と、
その走行駆動方式取得部にて取得した走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
衛星測位システムにより取得される作業車両の測位情報に基づいて、前記走行経路生成部にて生成された目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部とが備えられている点にある。
【0024】
本構成によれば、走行駆動方式取得部は、作業車両にて設定された走行駆動方式を取得し、走行経路生成部は、走行駆動方式取得部にて取得した走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路を生成する。これにより、作業車両にて設定された走行駆動方式に応じた目標走行経路を自動的に生成することができる。よって、自動走行制御部は、走行経路生成部にて生成された目標走行経路を用いて自動走行制御を行うことで、ユーザ等が走行駆動方式を変更する等の作業を行うことなしに、作業効率の向上を図り、且つ、走行駆動方式に応じた適切な旋回半径にて旋回走行させる状態で作業車両を自動走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】目標走行経路を設定した状態における作業領域を示す図
図4】旋回情報入力用の画面を示す図
図5】目標走行経路における連結経路を示す図
図6】目標走行経路における連結経路を示す図
図7】旋回半径用の関係を示す図
図8】経路作成の設定確認画面を示す図
図9】トラクタを自動走行させるときの動作を示すフローチャート
図10】トラクタを自動走行させるときの動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両を適用することができる。
【0027】
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0028】
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0029】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することで、トラクタ1をロータリ耕耘仕様に構成することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、プラウ、播種装置、散布装置等の作業装置12を連結することができる。
【0030】
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0031】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0032】
キャビン10の内部には、図1に示すように、パワーステアリング機構14(図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
【0033】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図3参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0034】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、図1及び図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0035】
トラクタ1と基準局4との夫々には、図2に示すように、測位衛星71(図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0036】
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0037】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール55等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、図3参照)を生成する走行経路生成部53、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部53が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部54等を有している。
【0038】
走行経路生成部53は、作業領域S内に目標走行経路P(例えば、図3参照)を生成しており、目標走行経路Pの生成の仕方については後述する。
【0039】
走行経路生成部53にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、目標走行経路Pに関する走行経路情報が端末記憶部54に記憶されている。走行経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
【0040】
このようにして、走行経路生成部53が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、通信モジュール55を用いて、携帯通信端末3からトラクタ1に走行経路情報を送信することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、通信モジュール25を用いて、走行経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した走行経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0041】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等が目標走行経路Pのスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。車載電子制御ユニット18が、測位ユニット21(衛星測位システムに相当する)により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、作業領域S内の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0042】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御等が含まれている。
【0043】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0044】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0045】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0046】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図3参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0047】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0048】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0049】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0050】
トラクタ1には、図1及び図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0051】
ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。
【0052】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,55を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0053】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0054】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、及び、ソナーユニット103,104等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0055】
以下、走行経路生成部53による目標走行経路Pの生成について説明する。
走行経路生成部53が目標走行経路Pを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両や作業装置12の種類や機種等の車体情報、及び、旋回情報を入力しており、入力された車体情報及び旋回情報が端末記憶部54に記憶されている。目標走行経路Pの生成対象となる作業領域S(図3参照)を圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置を含む圃場情報を取得して端末記憶部54に記憶している。
【0056】
圃場情報の取得について説明すると、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット52は、測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット52は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した作業領域Sを含む圃場情報を取得している。図3では、矩形状の作業領域Sが特定された例を示している。
【0057】
旋回情報は、トラクタ1をどのように旋回走行させるかを示す情報である。例えば、旋回情報は、後進無しの旋回態様にて旋回走行させるのか、或いは、後進有りの旋回態様にて旋回走行させるのかの旋回方法を示す情報、及び、旋回走行させるときの旋回半径を示す情報を含むものである。
【0058】
旋回情報の入力について説明する。
旋回情報を入力するに当たり、図4に示すように、携帯通信端末3の表示部51には、旋回情報入力用の画面が表示される。この旋回情報入力用の画面では、トラクタ1の走行駆動方式を選択する走行駆動方式選択部56、及び、旋回方法を選択する旋回方法選択部57等が表示されている。トラクタ1を旋回走行させるときの旋回半径は、走行駆動方式によって異なることから、旋回半径を特定するために走行駆動方式選択部56にて走行駆動方式を選択している。
【0059】
トラクタ1の走行駆動方式は、トラクタ1を四輪駆動にて走行させる四輪走行駆動方式(図4において左側の一番上のボタン)と、トラクタ1を二輪駆動にて走行させる二輪走行駆動方式(図4において左側の上から二番目のボタン)と、旋回走行させるときに前輪5を後輪6よりも早く回転させる倍速走行駆動方式(図4において左側の上から三番目のボタン)との何れかを選択することができる。四輪走行駆動方式、二輪走行駆動方式、及び、倍速走行駆動方式の夫々において、旋回走行するときに旋回側の後輪6にブレーキをかけるオートブレーキをON状態するかOFF状態とするかを選択することができる(図4において左側の上から四番目のボタン)。ちなみに、図4では、オートブレーキをON状態として四輪走行駆動方式が選択された例を示している。これにより、四輪走行駆動方式、二輪走行駆動方式、及び、倍速走行駆動方式の3つの走行駆動方式において、オートブレーキをON状態とする走行駆動方式、及び、オートブレーキをOFF状態とする走行駆動方式の合計6種類の走行駆動方式から、走行駆動方式選択部56にて1つの走行駆動方式を選択可能となっている。
【0060】
旋回方法は、旋回方法選択部57にて、前進だけでなく後進も行いながら旋回走行する「後進可」(図4において中央側のボタン)と、前進だけで旋回走行する「前進のみ」(図4において右側のボタン)との何れかの旋回方法が選択可能となっている。図4では、「後進可」が選択された例を示している。
【0061】
旋回方法選択部57にて「前進のみ」を選択した場合には、図5に示すように、前進にて旋回走行して走行方向を180度転回させる第1旋回経路P2aを有する連結経路P2に沿って旋回させる旋回方法となる。旋回方法選択部57にて「後進可」を選択した場合には、図6に示すように、前進にて旋回走行する第2旋回経路P2bと、第2旋回経路P2bに引き続いて走行方向を前進から後進に切り替えて後進にて直進走行する後進経路P2cと、後進経路P2cに引き続いて走行方向を後進から前進に切り替えて前進にて旋回走行する第3旋回経路P2dとを有する連結経路P2に沿って旋回させる旋回方法となる。
【0062】
図4に戻り、旋回情報入力用の画面には、旋回走行するときの旋回半径の補正値を表示する補正値表示部58、旋回半径の補正値をプラス側又はマイナス側に変更設定可能な補正値変更設定部59、及び、ブロック単位での作業を行うか否かを選択するブロック作業選択部60が備えられている。ちなみに、ブロック作業選択部60にてブロック単位での作業を行うと選択すると、作業領域S(圃場)を複数のブロックに区分けしてブロック毎に作業を行うように目標走行経路Pを生成することになる。
【0063】
トラクタ1を旋回走行させるときの旋回半径は、トラクタ1の走行駆動方式によってその大きさが異なる。例えば、図5に示すように、旋回方法選択部57にて「前進のみ」を選択したときに旋回走行させる場合に、トラクタ1を四輪走行駆動方式にて旋回走行させる場合を実線にて示しており、トラクタ1を二輪走行駆動方式にて旋回走行させる場合を点線にて示している。このように、二輪走行駆動方式での第1旋回経路P2aにおける旋回半径は、四輪走行駆動方式での第1旋回経路P2aにおける旋回半径よりも小さくなっている。図6に示すように、旋回方法選択部57にて「後進可」を選択したときに旋回走行させる場合でも、第2旋回経路P2b及び第3旋回経路P2dについて、二輪走行駆動方式での旋回半径は、四輪走行駆動方式での旋回半径よりも小さくなっている。
【0064】
トラクタ1を旋回走行させるときの旋回半径については、走行駆動方式だけでなく、トラクタ1の機種、トラクタ1の前輪5及び後輪6の半径やトレッド幅、作業装置12の種類や大きさ等の車体情報によっても、旋回半径の大きさが異なる。
【0065】
そこで、図7に示すように、走行駆動方式及び車体情報により旋回半径を特定するための旋回半径用の関係が実験等により予め設定されており、その旋回半径用の関係が端末記憶部54に記憶されている。旋回半径用の関係は、どの走行駆動方式でどのような車体情報であれば、旋回半径はどのような旋回半径となるかを示すものである。
【0066】
図7に示す旋回半径用の関係では、走行駆動方式及び車体情報が基準状態であるときの旋回半径が基準旋回半径として設定され、走行駆動方式及び車体情報が基準状態から異なる状態であると、旋回半径として、基準旋回半径に対する補正値が設定されている。例えば、トラクタ1の種類がA、タイヤの種類がA、作業装置12の種類がAである車体情報において、オートブレーキをOFF状態とする四輪走行駆動方式であるときを基準状態としている。ちなみに、図7では、オートブレーキのON状態とOFF状態との区別について、オートブレーキのON状態については、「+AB」を追加して表示しており、オートブレーキのOFF状態については、「+AB」を削除して表示している。
【0067】
端末電子制御ユニット52は、走行駆動方式選択部56にて複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式が選択されると、端末記憶部54に記憶されている車体情報及び旋回半径用の関係を用いて、図4に示すように、選択された走行駆動方式に対応する旋回半径(旋回半径の補正値)を特定している。端末電子制御ユニット52は、特定済みの旋回半径(旋回半径の補正値)を旋回情報として端末記憶部54に記憶させるとともに、旋回半径の補正値として補正値表示部58に表示させている。例えば、オートブレーキOFFの状態で四輪走行駆動方式を選択すると、旋回半径が基準旋回半径となるので、補正値表示部58における旋回半径の補正値は、「0.0m」となる。オートブレーキOFFの状態で二輪走行駆動方式を選択すると、図7に示す旋回半径用の関係では、旋回半径の補正値として「-0.5m」が設定されているので、補正値表示部58における旋回半径の補正値は、「-0.5m」となる。
【0068】
目標走行経路Pの生成について説明する。
走行経路生成部53は、端末記憶部54に記憶されている圃場情報、車体情報及び旋回情報等を用いて、目標走行経路Pを生成する。図3に示すように、走行経路生成部53は、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分け設定している。中央領域R1は、作業領域Sの中央部に設定されており、トラクタ1を往復方向に自動走行させて所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う往復作業領域となっている。外周領域R2は、中央領域R1の周囲に設定されている。走行経路生成部53は、例えば、旋回情報に含まれる旋回半径や車体情報に含まれるトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を圃場の畔際で旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペース等を求めている。走行経路生成部53は、中央領域R1の外周に求めたスペース等を確保するように、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分けしている。
【0069】
図3に示すように、目標走行経路Pは、中央領域R1において同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された直線状の複数の作業経路P1と、隣接する作業経路P1の始端と終端とを連結する連結経路P2とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を直進走行させながら、所定の作業を行うための経路である。連結経路P2は、所定の作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を180度転換させるための経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。ちなみに、図3に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。
【0070】
連結経路P2の生成について説明を加える。
走行経路生成部53は、端末記憶部54に記憶されている旋回情報に含まれる旋回半径及び旋回方法に基づいて、連結経路P2を生成している。旋回方法選択部57にて「前進のみ」の旋回方法が選択されている場合には、図5に示すように、前進にて旋回走行して走行方向を180度転回させる第1旋回経路P2aを有する連結経路P2を生成している。図3に示す目標走行経路Pでは、旋回方法選択部57にて「前進のみ」の旋回方法が選択されている場合を示している。
【0071】
端末電子制御ユニット52は、走行駆動方式選択部56による選択状態と車体情報とから端末記憶部54に記憶されている旋回半径用の関係を用いて、第1旋回経路P2aの旋回半径を特定している。例えば、オートブレーキOFF状態で四輪走行駆動方式が選択されていると、図7に示す旋回半径用の関係において該当する旋回半径(旋回半径の補正値)が特定され、オートブレーキOFF状態で二輪走行駆動方式が選択されていると、図7に示す旋回半径用の関係において該当する旋回半径(旋回半径の補正値)が特定されている。
【0072】
図5に示すように、二輪走行駆動方式の第1旋回経路P2a(点線にて示す)は、四輪走行駆動方式の第1旋回経路P2a(実線にて示す)よりも旋回半径を小さくできる。これにより、四輪走行駆動方式における作業経路P1の終端P1aと次の作業経路P1の終端P1bに対して、二輪走行駆動方式における作業経路P1の終端P1cと次の作業経路P1の始端P1dが作業領域Sの端部側(図5において上方側)に位置させることができる。よって、走行経路生成部53は、二輪走行駆動方式の方が四輪走行駆動方式よりも、作業経路P1の長さをより長く生成することができる。このように、走行経路生成部53は、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて連結経路P2を生成し、その連結経路P2に応じた長さを有する作業経路P1を生成して、適切な目標走行経路Pを生成している。
【0073】
旋回方法選択部57にて「後進可」」の旋回方法が選択されている場合には、図6に示すように、走行経路生成部53が、前進にて旋回走行する第2旋回経路P2bと、第2旋回経路P2bに引き続いて走行方向を前進から後進に切り替えて後進にて直進走行する後進経路P2cと、後進経路P2cに引き続いて走行方向を後進から前進に切り替えて前進にて旋回走行する第3旋回経路P2dとを有する連結経路P2を生成している。
【0074】
端末電子制御ユニット52は、走行駆動方式選択部56による選択状態と車体情報とから端末記憶部54に記憶されている旋回半径用の関係(図7参照)を用いて、第2旋回経路P2b及び第3旋回経路P2dの旋回半径を特定している。この場合でも、二輪走行駆動方式の第2旋回経路P2b及び第3旋回経路P2d(点線にて示す)は、四輪走行駆動方式の第2旋回経路P2b及び第3旋回経路P2d(実線にて示す)よりも旋回半径を小さくできる。これにより、四輪走行駆動方式における作業経路P1の終端P1eと次の作業経路P1の終端P1fに対して、二輪走行駆動方式における作業経路P1の終端P1gと次の作業経路P1の始端P1hが作業領域Sの端部側(図6において上方側)に位置させることができる。よって、走行経路生成部53は、二輪走行駆動方式の方が四輪走行駆動方式よりも、作業経路P1の長さをより長く生成することができる。
【0075】
ここで、入力した車体情報や旋回情報は、図8に示すように、経路作成の設定確認画面を携帯通信端末3の表示部51に表示させることで、ユーザ等が確認することができるようになっている。図8における経路作成の設定確認画面では、旋回情報(図8において下から3つ目の表示欄)だけでなく、作業領域Sの住所、作業開始位置及び作業終了位置の緯度経度等の圃場情報、トラクタ1の種類や作業機(作業装置)の種類等の車体情報等の各種の情報を確認できるようにしている。
【0076】
入力した車体情報や旋回情報は、変更設定可能となっている。例えば、図8に示すように、経路作成の設定確認画面において、ユーザ等が詳細ボタン91を押すことで、各種の情報を変更設定可能な変更設定画面に移行し、その変更設定画面において、ユーザ等が各種の情報を変更設定することができる。
【0077】
車体情報や旋回情報等を変更設定すると、変更設定後の車体情報や旋回情報を用いて、目標走行経路Pを生成することもできる。図8に示す経路作成の設定確認画面において、「経路を生成する」という経路生成指示ボタン92を押すことで、走行経路生成部53が、変更設定された車体情報や旋回情報等を用いて、目標走行経路Pを生成している。このように、一度、走行経路生成部53にて目標走行経路Pを生成した後に、ユーザ等が携帯通信端末3の表示部51を操作することで、車体情報や旋回情報等を変更設定すると、走行経路生成部53が、変更設定後の車体情報や旋回情報等を用いて、目標走行経路Pを再生成することができる。目標走行経路Pを再生成する場合には、車体情報や旋回情報等が変更設定された後、他の表示画面に移行しなくても、図8に示す経路作成の設定確認画面において、経路生成指示ボタン92を操作するだけでよく、操作性の向上を図ることができる。
【0078】
トラクタ1を自動走行させる際の動作について、図9のフローチャートに基づいて説明する。
まず、圃場情報を取得する作業や車体情報及び旋回情報等の入力作業をユーザ等が行うことで、自動走行を行うための各種の情報を設定する自動走行用の情報設定を行う(ステップ#1)。情報設定が行われると、走行経路生成部53が、設定された各種の情報に基づいて、作業領域Sに目標走行経路Pを生成している(ステップ#2)。このとき、走行経路生成部53は、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を特定し、その特定済みの旋回半径を用いて作業経路P1及び連結経路P2を含む目標走行経路Pを生成している。
【0079】
端末電子制御ユニット52は、通信モジュール55を用いて、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に関する走行駆動方式情報、及び、走行経路生成部53にて生成された目標走行経路Pに関する走行経路情報を送信している。車載電子制御ユニット18は、通信モジュール25を用いて、通信モジュール55にて送信される走行駆動方式情報及び走行経路情報を受信している。このようにして、走行駆動方式情報、及び、走行経路情報の通信が行われる(ステップ#3)。
【0080】
走行駆動方式については、トラクタ1側にてユーザが操作部等を操作することで、トラクタ1側にて複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を設定可能となっている。実際にトラクタ1を自動走行させる場合には、トラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式にてトラクタ1を自動走行させることになる。よって、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致することが求められる。
【0081】
そこで、トラクタ1には、図2に示すように、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定する判定部186と、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致しない場合には、走行駆動方式の不一致を示す不一致情報を報知する不一致情報報知部187とが備えられている。
【0082】
図9に示すように、走行経路情報、及び、走行駆動方式情報の通信が行われると、判定部186は、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定している(ステップ#4)。
【0083】
判定部186にて、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致しないと判定すると、不一致情報報知部187が不一致情報を報知する(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5)。不一致情報報知部187は、トラクタ1の報知装置26を作動させる又はトラクタ1の表示部に不一致情報を表示させて、トラクタ1側で不一致情報を報知するとともに、通信モジュール25を用いてトラクタ1から携帯通信端末3に不一致情報を送信している。端末電子制御ユニット52は、通信モジュール55にて受信される不一致情報を表示部51に表示させて、携帯通信端末3側で不一致情報を報知している。
【0084】
不一致情報が報知させると、ユーザ等は、走行駆動方式が一致していないことを認識することができる。よって、ユーザ等によりトラクタ1の操作部等を操作することで、作業車両側の走行駆動方式が変更され、作業車両側の走行駆動方式を走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に一致させる走行駆動方式変更作業等の復旧作業が行われる。
【0085】
判定部186にて、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致すると判定すると、車載電子制御ユニット18が、携帯通信端末3から自動走行の開始指示を受けた上で、自動走行制御の実行を開始して、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる(ステップ#4のYesの場合、ステップ#6)。
【0086】
このようにして、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とを一致させた状態で、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。よって、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径に応じた連結経路P2を含む目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を適切に自動走行させることができる。
【0087】
走行経路情報について、端末電子制御ユニット52が走行経路情報を送信するに当たり、走行経路情報の全ての情報を一度に送信するのではなく、走行経路情報を複数の単位経路群情報に分割して、単位経路群情報毎に順次送信することができる。目標走行経路Pは、作業経路P1、連結経路P2等の複数の経路から生成されているので、目標走行経路Pを構成する所定本数の経路を単位経路群とし、目標走行経路Pを複数の単位経路群に分割している。単位経路群情報は、単位経路群の夫々に関する経路情報であり、端末電子制御ユニット52は、所定の送信タイミングになる毎に、単位経路群情報を順次送信することができる。携帯通信端末3が通信端末に相当し、端末電子制御ユニット52及び通信モジュール55により端末側通信部が構成され、車載電子制御ユニット18及び通信モジュール25により車両側通信部が構成されている。
【0088】
送信タイミングについては、例えば、自動走行の開始時点を初めの送信タイミングとし、その後、所定時間が経過する毎に送信タイミングになるとすることができる。また、自動走行の開始時点を初めの送信タイミングとし、その後、次の単位経路群の開始位置から所定距離だけ手前箇所にトラクタ1が到達した時点を送信タイミングとすることができる。送信タイミングについては、ある単位経路群から次の単位経路群に自動走行を移行させる前に、次の単位経路群に関する単位経路群情報を送信していればよく、どのようなタイミングを送信タイミングとするかは適宜変更が可能である。
【0089】
走行経路情報として単位経路群情報毎を順次送信する場合に、トラクタ1を自動走行させる際の動作について、図10のフローチャートに基づいて説明する。図10のフローチャートでは、図9のフローチャートにおけるステップ#1及びステップ#2が同様であるので、その説明は省略する。
【0090】
端末電子制御ユニット52は、自動走行を開始する前に、通信モジュール55を用いて、走行駆動方式情報を送信するとともに、走行経路情報として、1つ目の単位経路群情報、及び、自動走行を開始させるための初期情報を送信している。通信モジュール25は、通信モジュール55にて送信される走行駆動方式情報、単位経路群情報及び初期情報を受信しており、走行駆動方式情報及び単位経路群情報の通信が行われる(ステップ#7)。
【0091】
これにより、自動走行を開始する前に、車載電子制御ユニット18は、走行駆動方式情報、1つ目の単位経路群情報及び初期情報を取得している。この状態において、判定部186が、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定している(ステップ#8)。
【0092】
不一致情報報知部187は、判定部186にて走行駆動方式が一致しないと判定すると、不一致情報の報知を行う(ステップ#8のNoの場合、ステップ#9)。その後、図9の場合と同様に、走行駆動方式変更作業等の復旧作業が行われる。
【0093】
車載電子制御ユニット18は、判定部186にて走行駆動方式が一致すると判定し、自動走行の開始指示を受けると、1つ目の単位経路群情報及び初期情報に基づいて、自動走行制御の実行を開始している(ステップ#8のYesの場合、ステップ#10)。
【0094】
端末電子制御ユニット52は、車載電子制御ユニット18による自動走行制御の実行途中に、送信タイミングになると、通信モジュール55を用いて、走行駆動方式情報、及び、2つ目の単位経路群情報を送信して、走行駆動方式情報及び単位経路群情報の通信を行う(ステップ#11のYesの場合、ステップ#12)。
【0095】
判定部186は、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定し、走行駆動方式が一致していなければ、不一致情報報知部187が不一致情報の報知を行う(ステップ#13のNoの場合、ステップ#14)。ちなみに、ステップ#13において、判定部186にて走行駆動方式が一致しないと判定すると、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1の自動走行を停止させて、一旦、自動走行制御を停止させる。
【0096】
判定部186にて走行駆動方式が一致していると判定すると、車載電子制御ユニット18は、通信モジュール25にて受信する2つ目の単位経路群情報に基づいて、自動走行制御の実行を継続している(ステップ#13のYesの場合、ステップ#15)。
【0097】
その後、端末電子制御ユニット52は、自動走行制御が終了されるまで、送信タイミングになる毎に、走行駆動方式情報、及び、次の単位経路群情報を送信して、走行駆動方式情報及び単位経路群情報の通信を行う(ステップ#16のNoの場合)。これにより、自動走行制御が終了されるまで、ステップ#11~#15の動作が繰り返し行われる。このようにして、端末電子制御ユニット52は、走行経路情報を複数の単位経路群情報に分割して、単位経路群情報毎に順次送信し、車載電子制御ユニット18は、走行駆動方式が一致することを確認した上で、順次送信される単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を継続している。
【0098】
図10に示すフローチャートでは、端末電子制御ユニット52が、走行経路情報の全ての情報を一度に送信するのではなく、複数の単位経路群情報に分割して、単位経路群情報毎に順次送信している。よって、車載電子制御ユニット18による自動走行制御の実行途中に、当初の目標走行経路Pとは異なる目標走行経路Pに変更されても、変更後の目標走行経路Pについての単位経路群情報を送信することで、変更後の目標走行経路Pにて自動走行制御を行うことができる。
【0099】
例えば、走行駆動方式選択部56にて走行駆動方式を変更設定すると、走行経路生成部53が、変更設定された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて連結経路P2を含む目標走行経路Pを再生成することができる。そこで、端末電子制御ユニット52は、自動走行制御を行う対象の目標走行経路Pを、当初の目標走行経路Pから再生成された目標走行経路Pに変更することができる。目標走行経路Pの変更が行われるに伴って、端末電子制御ユニット52が、通信モジュール55を用いて、変更後の目標走行経路Pにおける単位経路群情報を送信している。車載電子制御ユニット18は、通信モジュール25にて受信する変更後の目標走行経路Pにおける単位経路群情報に基づいて、自動走行制御を行うことができる。
【0100】
目標走行経路Pの変更が行われると、端末電子制御ユニット52が、変更後の目標走行経路Pにおける単位経路群情報に加えて、変更設定された走行駆動方式に関する走行駆動方式情報も送信することができる。この場合には、変更設定された走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが異なるので、判定部186にて走行駆動方式が一致しないと判定される。しかしながら、変更設定された走行駆動方式に一致させるように、ユーザ等が作業車両側の走行駆動方式を変更することができるので、車載電子制御ユニット18は、変更後の目標走行経路Pにて自動走行制御を行うことができる。また、第2実施形態にて後述する如く、走行駆動方式変更部188を備える場合には、走行駆動方式変更部188によって作業車両側の走行駆動方式を自動的に変更することもできる。
【0101】
このように、車載電子制御ユニット18による自動走行制御の実行途中に、走行駆動方式選択部56による走行駆動方式の変更設定に伴って目標走行経路Pが変更されても、変更後の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。
【0102】
目標走行経路Pとして、複数の連結経路P2が生成されるので、複数の連結経路Pの全てを同じ走行駆動方式で自動走行させるだけでなく、例えば、ある連結経路P2を自動走行させるときの走行駆動方式と別の連結経路P2を自動走行させるときの走行駆動方式とを異ならせるように、複数の走行駆動方式を選択することができる。例えば、目標走行経路Pにおいて、1本目から所定本数分までの連結経路P2では四輪走行駆動方式を選択し、所定本数以降の連結経路P2では二輪走行駆動方式を選択することができる。このように、複数の連結経路Pについて、異なる走行駆動方式を選択することもできる。
【0103】
この場合でも、判定部186は、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定し、走行駆動方式が一致していなければ、不一致情報報知部187が不一致情報の報知を行っている。この判定部186による判定タイミングについては、異なる走行駆動方式が選択された連結経路Pを自動走行する手前のタイミングとなる。そこで、判定部186は、例えば、トラクタ1の現在位置が連結経路P2の手前位置(例えば、連結経路P2の始端よりも所定距離だけ手前の作業経路P1上の位置)に到達すると、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式とが一致するか否かを判定している。
【0104】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、上記第1実施形態において、判定部186にて走行駆動方式が一致していないと判定した場合の動作についての別実施形態を示すものである。以下、この第2実施形態における動作について説明するが、その他の構成や動作は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0105】
第1実施形態では、判定部186にて走行駆動方式が一致していないと判定した場合(図9及び図10のステップ#4、ステップ#8、ステップ#13参照)には、不一致情報報知部187による不一致情報の報知を行っている。第2実施形態では、不一致情報報知部187による不一致情報の報知に代えて又は加えて、作業車両側の走行駆動方式を自動的に変更している。
【0106】
例えば、図2に示すように、トラクタ1に、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に対して作業車両側の走行駆動方式を一致させるように、作業車両側の走行駆動方式を変更する走行駆動方式変更部188が備えられている。走行駆動方式変更部188にて作業車両側の走行駆動方式を自動的に変更することで、ユーザ等が走行駆動方式変更作業を行わなくても、トラクタ1を自動走行させることができ、ユーザ等の作業負担の軽減を図ることができる。
【0107】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態は、第2実施形態と同様に、判定部186にて走行駆動方式が一致していないと判定した場合の動作についての別実施形態を示すものである。以下、この第3実施形態における動作について説明するが、その他の構成や動作は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0108】
判定部186にて走行駆動方式が一致していないと判定した場合(図9及び図10のステップ#4、ステップ#8、ステップ#13参照)には、不一致情報報知部187による不一致情報の報知に代えて又は加えて、走行経路生成部53が、作業車両側の走行駆動方式を取得して、作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を用いた目標走行経路Pを再生成している。図2に示すように、携帯通信端末3に、通信モジュール25,55を用いて、トラクタ1側で設定された作業車両側の走行駆動方式を取得する走行駆動方式取得部93が備えられている。
【0109】
走行経路生成部53は、走行駆動方式取得部93にて取得した作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を特定し、その特定した旋回半径を用いて連結経路P2を生成する状態で目標走行経路Pを再生成している。
【0110】
走行経路生成部53にて目標走行経路Pが再生成されると、端末電子制御ユニット52が、通信モジュール55を用いて、走行駆動方式情報(作業車両側の走行駆動方式を示す情報)、及び、再生成された目標走行経路Pに関する走行経路情報や単位経路群情報を送信している。これにより、通信モジュール25にて受信する走行駆動方式情報にて示す走行駆動方式と作業車両側の走行駆動方式とが一致することになり、車載電子制御ユニット18が、再生成された目標走行経路Pに関する走行経路情報や単位経路群情報を用いて自動走行制御を行い、再生成された目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。
【0111】
〔第4実施形態〕
この第4実施形態は、上記第1実施形態において、走行経路生成部53が、走行駆動方式に対応する旋回半径を用いた目標走行経路Pを生成するための構成についての別実施形態を示すものである。以下、この第3実施形態における構成について説明するが、その他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0112】
第1実施形態では、複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式を選択する走行駆動方式選択部56を備え、走行経路生成部53が、走行駆動方式選択部56にて選択された走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路Pを生成している。
【0113】
それに対して、第4実施形態では、上記第3実施形態と同様に、携帯通信端末3に、通信モジュール25,55を用いて、トラクタ1側で設定された作業車両側の走行駆動方式を取得する走行駆動方式取得部93が備えられている。走行経路生成部53は、走行駆動方式取得部93にて取得した作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて目標走行経路Pを生成している。
【0114】
これにより、携帯通信端末3に走行駆動方式選択部56を備えなくてもよく、走行駆動方式取得部93にて、トラクタ1側にて設定される作業車両側の走行駆動方式を自動的に取得することができる。走行経路生成部53は、実際にトラクタ1側にて設定された作業車両側の走行駆動方式に対応する旋回半径を用いて適切な目標走行経路Pを生成することができる。
【0115】
この場合には、走行経路生成部53が、作業車両側の走行駆動方式に応じて目標走行経路Pを生成しているので、目標走行経路Pを生成する際に用いた走行駆動方式とトラクタ1側にて設定された走行駆動方式が一致することになる。よって、判定部186による走行駆動方式が一致するか否かの判定、及び、端末電子制御ユニット52による通信モジュール55を用いた走行駆動方式に関する走行駆動方式情報の送信を行わなくてもよい。
【0116】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0117】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0118】
(2)上記実施形態では、端末電子制御ユニット52が、走行駆動方式選択部56にて複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式が選択されると、その選択情報に加えて、端末記憶部54に記憶されている車体情報に基づいて、旋回半径を特定している。旋回半径を特定するに当たり、走行駆動方式選択部56にて複数の走行駆動方式から1つの走行駆動方式が選択された選択情報のみから特定することもできる。
【0119】
(3)上記実施形態では、走行経路生成部53、及び、走行駆動方式選択部56を携帯通信端末3に備えた例を示したが、例えば、走行経路生成部53、及び、走行駆動方式選択部56をトラクタ1の作業車両側に備えたり、外部の管理装置に備えることもできる。
【符号の説明】
【0120】
1 トラクタ(作業車両)
3 携帯通信端末(通信端末)
18 車載電子制御ユニット(自動走行制御部、車両側通信部)
25 通信モジュール(車両側通信部)
52 端末電子制御ユニット(端末側通信部)
53 走行経路生成部
55 通信モジュール(端末側通信部)
56 走行駆動方式選択部
93 走行駆動方式取得部
186 判定部
187 不一致情報報知部
188 走行駆動方式変更部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10