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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】レンジ切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20220323BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20220323BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20220323BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
F16H61/12
B60K20/00 B
F16H59/08
F16H61/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018169335
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020041601
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2019-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 太一
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅英
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】中村 大輔
【審判官】平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-7993(JP,A)
【文献】特開2011-225033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/12
F16H 59/08
F16H 61/18
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート上を移動可能にされ、非操作時に自動的にホームポジション判定領域に戻るモーメンタリ式のセレクトレバーと、
前記セレクトレバーの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出されたセレクトレバーの位置の時間変化に応じて、前記セレクトレバーの移動速度を求める移動速度取得手段と、
前記移動速度取得手段により求められたセレクトレバーの移動速度に基づいて、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域からニュートラルポジション判定領域側に移動する際に、該ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間を求める通過時間取得手段と、
前記通過時間取得手段により求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段と、
前記セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間を計時する計時手段と、
前記計時手段により計時された計時時間が、前記ニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定する判定手段と、を備えることを特徴とするレンジ切替装置。
【請求項2】
前記位置検出手段は、前記セレクトレバーの車幅方向の位置を検出する第1位置検出手段と、前記セレクトレバーの車両前後方向の位置を検出する第2位置検出手段と、を有し、前記セレクトレバーの車幅方向の位置及び車両前後方向の位置から前記セレクトレバーの2次元上の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のレンジ切替装置。
【請求項3】
前記移動速度取得手段は、前記セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域を出てから、ニュートラルポジション判定領域に入るまでに要した時間と、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域とニュートラルポジション判定領域との間の距離とに基づいて、前記セレクトレバーの移動速度を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンジ切替装置。
【請求項4】
前記判定時間設定手段は、雰囲気温度を考慮して、前記ニュートラル判定時間を設定することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のレンジ切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジ切替装置に関し、特に、シフトバイワイヤ機構が採用されたレンジ切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シフトレバー(セレクトレバー)の操作位置をセンサによって検出し、その検出結果に基づいて、アクチュエータ(例えば電動モータ等)を駆動することにより、自動変速機のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ(SBW)機構を備えた車両(自動変速機)が実用化されている。
【0003】
また、SBWが採用されたシフタ(セレクタ)として、ホーム(H)ポジションと前進走行(D)ポジション及び後進走行(R)ポジションとの間の経路上にニュートラル(N)ポジションが配置されているシフトゲート(シフトパターン)上をシフトレバーが移動可能に設けられ、非操作時に自動的にホームポジションに戻るモーメンタリ式のシフタも実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、特許文献1には、上述したようなモーメンタリ機能を有するシフト操作装置において、運転者の要求に適切に応答することができる、変速機のシフト操作装置が開示されている。より具体的には、このシフト操作装置では、ニュートラルポジション位置を経由する前のシフトレバーの位置を予め記憶しておき、それがホームポジション位置である場合にはより短いニュートラルポジション認識時間TN(1)とし、ニュートラルポジション位置経由前のシフトレバーの位置が前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置である場合にはより長いニュートラルポジション認識時間TN(2)とする。
【0005】
特許文献1に記載のシフト操作装置によれば、ニュートラルポジション認識時間TN(1)を短くすることにより、ホームポジション位置からニュートラルポジション位置へ移動させたい場合には、ニュートラルポジションを短い時間で認識(判定)することができる。一方、ニュートラルポジション認識時間TN(2)を長くすることにより、前進走行ポジション位置や後進走行ポジション位置からホームポジション位置への戻りの場合にはニュートラルポジションであることを認識しにくくなる(すなわち、誤判定を防止することができる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-7993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したニュートラルポジション認識時間TN(2)を長くすると、例えば、運転者がシフトレバーを前進走行ポジションに保持していて、その後、前進走行レンジからニュートラルレンジに切替えたくて、シフトレバーを前進走行ポジションからニュートラルポジションに操作した(動かした)場合を想定すると、ニュートラルレンジにしたいときに、なかなかニュートラルレンジにならず、運転者に違和感を与えるおそれがある。一方、ニュートラルポジション認識時間TN(2)を短くすると、例えば、極低温時などにおいて、シフトレバーの戻る速度が遅くなった場合に誤判定してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、セレクトレバーが、ホームポジションと前進走行ポジション、後進走行ポジションとの間の移動経路上にニュートラルポジションが配置されているシフトゲート上を移動可能に設けられ、非操作時に自動的にホームポジションに戻るモーメンタリ式のレンジ切替装置において、セレクトレバーが前進走行ポジション又は後進走行ポジションからニュートラルポジションに移動するときに、モーメンタリ機能の作用で戻っているのか、運転者がニュートラルポジションを選択したいのかを、誤ることなく、かつ、運転者に違和感を与えることなく判定することが可能なレンジ切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレンジ切替装置は、ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート上を移動可能にされ、非操作時に自動的にホームポジション判定領域に戻るモーメンタリ式のセレクトレバーと、セレクトレバーの位置を検出する位置検出手段と、セレクトレバーの位置の時間変化に応じて、セレクトレバーの移動速度を求める移動速度取得手段と、セレクトレバーの移動速度に基づいて、セレクトレバーが前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域からニュートラルポジション判定領域側に移動する際に、ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間を求める通過時間取得手段と、求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間を設定する判定時間設定手段と、セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間を計時する計時手段と、計時時間が、ニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るレンジ切替装置によれば、セレクトレバーの位置が検出され、そのセレクトレバーの位置の時間変化に応じて、セレクトレバーの移動速度が求められる。そして、セレクトレバーの移動速度に基づいて、セレクトレバーが前進走行ポジション又は後進走行ポジションからニュートラルポジション側に移動する際に、ニュートラルポジション判定領域を通過するために要すると予想される予想通過時間が求められ、求められた予想通過時間に応じて、ニュートラルポジションが選択されているか否かを判定するニュートラル判定時間が設定される。一方、セレクトレバーがニュートラルポジション判定領域内に位置している時間が計時される。そして、計時時間がニュートラル判定時間以上となった場合に、ニュートラルポジションが選択されていると判定される。すなわち、セレクトレバーの移動速度から求められるニュートラルポジション判定領域の予想通過時間に応じてニュートラル判定時間が可変される。そのため、セレクトレバーが自動的に戻される場合も、運転者が前進走行ポジション又は後進走行ポジションからニュートラルポジションに操作する場合も、その時々のリアルタイムの移動速度に応じて適切なニュートラル判定時間を設定することができる。よって、誤判定を防止するために必要以上に判定時間を長くする必要がない。その結果、セレクトレバーが前進走行ポジション又は後進走行ポジションからニュートラルポジションに移動するときに、モーメンタリ機能の作用で戻っているのか、運転者がニュートラルポジションを選択したいのかを、誤ることなく、かつ、運転者に違和感を与えることなく判定することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係るレンジ切替装置では、位置検出手段が、セレクトレバーの車幅方向の位置を検出する第1位置検出手段と、セレクトレバーの車両前後方向の位置を検出する第2位置検出手段とを有し、セレクトレバーの車幅方向の位置及び車両前後方向の位置からセレクトレバーの2次元上の位置を検出することが好ましい。
【0012】
この場合、セレクトレバーの車幅方向の位置及び車両前後方向の位置からセレクトレバーの2次元上の位置が検出されるため、適確にセレクトレバーの2次元上(すなわち、シフトゲート上)の位置を検出することが可能となる。
【0013】
本発明に係るレンジ切替装置では、セレクトレバーが、前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域を出てから、ニュートラルポジション判定領域に入るまでに要した時間と、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域とニュートラルポジション判定領域との間の距離とに基づいて、移動速度取得手段が、セレクトレバーの移動速度を求めることが好ましい。
【0014】
この場合、セレクトレバーが、前進走行ポジション判定領域又は後進走行ポジション判定領域を出てから、ニュートラルポジション判定領域に入るまでに要した時間と、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域とニュートラルポジション判定領域との間の距離とに基づいて、セレクトレバーの移動速度が求められるため、適切にセレクトレバーの移動速度を求めることが可能となる。
【0015】
本発明に係るレンジ切替装置では、判定時間設定手段が、雰囲気温度を考慮して、ニュートラル判定時間を設定することが好ましい。
【0016】
この場合、雰囲気温度を考慮して、ニュートラル判定時間が設定されるため、例えば、極低温時などにも、より適切にニュートラル判定時間を設定することが可能となる。
【0017】
本発明に係るレンジ切替装置は、ホームポジション判定領域と前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域との間の移動経路上にニュートラルポジション判定領域が配置されているシフトゲート上を移動可能にされ、非操作時に自動的にホームポジション判定領域に戻るモーメンタリ式のセレクトレバーと、セレクトレバーが、ニュートラルポジション判定領域、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域、又は、ホームポジション判定領域内に位置しているか否かを検知する位置検知手段と、セレクトレバーが、所定時間以上、ニュートラルポジション判定領域、前進走行ポジション判定領域、後進走行ポジション判定領域、又は、ホームポジション判定領域内に位置している場合に、当該レンジが選択されていると判定する判定手段とを備え、判定手段が、前進走行ポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバーが、ホームポジション判定領域内又は後進走行ポジション判定領域内に位置していると検知されるまで、ニュートラルポジションが選択されているか否かの判定を停止し、後進走行ポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバーが、ホームポジション判定領域内又は前進走行ポジション判定領域内に位置していると検知されるまで、ニュートラルポジションが選択されているか否かの判定を停止することを特徴とする。
【0018】
本発明に係るレンジ切替装置によれば、前進走行ポジションが選択されたと判定された場合、その後、セレクトレバーが、ホームポジション判定領域内又は後進走行ポジション判定領域内に位置していると検知されるまで、ニュートラルポジションが選択されているか否かの判定が停止され、後進走行ポジションが選択されたと判定された場合、その後、セレクトレバーが、ホームポジション判定領域内又は前進走行ポジション判定領域内に位置していると検知されるまで、ニュートラルポジションが選択されているか否かの判定が停止される。すなわち、前進走行ポジション又は後進走行ポジションからホームポジションに戻る(移動する)際にはニュートラルポジションが選択されているか否かの判定が行われなくなるため、確実に誤判定を防止することができる。なお、ニュートラルポジションを選択する際には、一度、セレクトレバーをホームポジション等に戻し、ホームポジション等からニュートラルポジションに移動することにより、ニュートラルポジションを選択することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、セレクトレバーが、ホームポジションと前進走行ポジション、後進走行ポジションとの間の移動経路上にニュートラルポジションが配置されているシフトゲート上を移動可能に設けられ、非操作時に自動的にホームポジションに戻るモーメンタリ式のレンジ切替装置において、セレクトレバーが前進走行ポジション又は後進走行ポジションからニュートラルポジションに移動するときに、モーメンタリ機能の作用で戻っているのか、運転者がニュートラルポジションを選択したいのかを、誤ることなく、かつ、運転者に違和感を与えることなく判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るレンジ切替装置の構成を示すブロック図である。
図2】シフトゲート、及び、各ポジション判定領域を示す図である。
図3】第1実施形態に係るレンジ切替装置によるNレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係るレンジ切替装置の構成を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係るレンジ切替装置によるNレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係るレンジ切替装置1の構成について説明する。図1は、レンジ切替装置1の構成を示すブロック図である。図2は、シフトゲート22、及び、各ポジション判定領域を示す図である。
【0023】
レンジ切替装置(セレクタ)1は、自動変速機10のシフトレンジを切替えるものである。レンジ切替装置1は、主として、自動変速機10のシフトレンジを選択するための操作を受け付けるセレクトレバー(シフトレバー)21と、セレクトレバー21の位置を検出する位置センサ23(第1位置センサ231、第2位置センサ232)と、セレクトレバー21の位置データに基づいて自動変速機10のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ・コントロールユニット(以下「SBW-CU」という)40とを備えて構成されている。
【0024】
自動変速機10は、エンジン(図示省略)の出力軸に接続され、該エンジンからの駆動力を変換して出力する。ここで、自動変速機10としては、ロックアップクラッチ機能とトルク増幅機能を持つトルクコンバータ、及び、変速ギヤ列とコントロールバルブ(油圧機構)を含むトランスミッション部を有して構成され、コントロールバルブにより自動変速可能に構成された有段自動変速機や、例えばチェーン式等の無段変速機(CVT)等を挙げることができる。なお、本実施形態では、CVTを採用した。
【0025】
自動変速機10には、SBW-CU40と電気的に接続され、該SBW-CU40からの制御信号(駆動信号)に応じて、自動変速機10のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ・アクチュエータ(以下「SBWアクチュエータ」という)11が取り付けられている。
【0026】
SBWアクチュエータ11は、SBW-CU40からの制御信号に応じて、例えば、自動変速機10のマニュアル弁を動かして、自動変速機10のシフトレンジを切り替える。SBWアクチュエータ11は、マニュアル弁を動かす電動モータ12を含んで構成されている。ここで、自動変速機10は、後進走行レンジ(R(リバース)レンジ)、中立レンジ(N(ニュートラル)レンジ)、前進走行レンジ(D(ドライブ)レンジ)、ブレーキ(B)レンジ、及び、駐車レンジ(P(パーキング)レンジ)を取り得るように構成されている。
【0027】
例えば、車両のセンターコンソール等には、運転者によるシフト操作(自動変速機10のシフトレンジを選択するための操作)を受付けるセレクトレバー(シフトレバー)21が設けられている。
【0028】
図2に示されるように、セレクトレバー21は、H(ホーム)ポジション判定領域22HとD(前進走行)ポジション判定領域22D及びR(後進走行)ポジション判定領域22Rとの間の移動経路上にN(ニュートラル)ポジション判定領域22Nが配置されているシフトゲート22上を移動可能にされ、非操作時に自動的にHポジション22Hに戻るモーメンタリ式のセレクトレバーである。
【0029】
また、図2に示されるように、シフトゲート22は、アルファベットのスモールh状に形成されている。すなわち、シフトゲート22は、車両前後方向(図面上下方向)に延在する溝状の第1ゲート22aと、一端が第1ゲート22aの中間部と接続され、車幅方向(図面左右方向)に延在する溝状の第2ゲート22bと、一端が第2ゲート22bの他端と接続され、車両後方(図面下方向)に延在する溝状の第3ゲート22cとから形成されている。
【0030】
シフトゲート22には、Hポジションが選択されているか否かを判定するためのHポジション判定領域22H、Nポジションが選択されているか否かを判定するためのNポジション判定領域22N、Dポジションが選択されているか否かを判定するためのDポジション判定領域22D、Rポジションが選択されているか否かを判定するためのRポジション判定領域22R、及び、Bポジションが選択されているか否かを判定するためのBポジション判定領域22Bが配置されている。
【0031】
より具体的には、Hポジション判定領域22Hは、第2ゲート22bと第3ゲート22cとの交点に配置されており、運転者がセレクトレバー21を操作していないときにセレクトレバー21が位置するホームポジションである。セレクトレバー21は、非操作時には、例えば、ばねの付勢力などによって自動的にHポジションに戻るように構成されている。
【0032】
Nポジション判定領域22Nは、第2ゲート22bと第1ゲート22aとの交点に配置されており、自動変速機10をNレンジに移行し車両を非駆動(中立)状態にするポジションである。運転者がセレクトレバー21をHポジションからDポジション又はRポジションに操作するときに、セレクトレバー21は、Nポジション判定領域22Nを通過する。また、セレクトレバー21がDポジションやRポジションからHポジションに自動的に復帰するときにもNポジション判定領域22Nを通過する。
【0033】
Dポジション判定領域22Dは、第1ゲート22aの一端(車両後方側の端部)に配置されており、自動変速機10をDレンジに移行し車両を前進走行状態にするポジションである。
【0034】
Rポジション判定領域22Rは、第1ゲート22aの他端(車両前方側の端部)に配置されており、自動変速機10をRレンジに移行し車両を後進走行状態にするポジションである。
【0035】
Bポジション判定領域22Bは、第3ゲート22cの他端(車両後方側の端部)に配置されており、自動変速機10をBレンジに移行し車両をエンジンブレーキ作動状態にするポジションである。
【0036】
Hポジション判定領域22H、Nポジション判定領域22N、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22R、Bポジション判定領域22Bそれぞれは、所定の大きさを持っており、いずれかの判定領域内に、セレクトレバー21が、所定の判定時間以上継続して位置している場合(すなわち、セレクトレバー21が保持された場合)に、当該ポジションが選択されたと判定される。なお、レンジ切替装置1には、例えば、パーキングスイッチが設けられており、該パーキングスイッチが操作されることにより、自動変速機10がP(パーキング)レンジに切替えられる。この場合、自動変速機10は、出力軸がロックされた状態となる。
【0037】
セレクトレバー21のシフトゲート22上(2次元上)の位置は、位置センサ23によって検出される。位置センサ23は、特許請求の範囲に記載の位置検出手段として機能する。より具体的には、位置センサ23は、セレクトレバー21の車幅方向(左右方向)の位置を検出する第1位置センサ231(第1位置検出手段に相当)と、セレクトレバー21の車両前後方向の位置を検出する第2位置センサ232(第2位置検出手段に相当)とを有し、車幅方向(左右方向)位置及び車両前後方向位置からセレクトレバー21の2次元上(シフトゲート22上)の位置を検出する。
【0038】
なお、位置センサ23(第1位置センサ231及び第2位置センサ232)としては、例えば、リニアエンコーダや、セレクトレバー21の操作角度を検出する角度センサ等を用いることができる。位置センサ23(第1位置センサ231及び第2位置センサ232)は、SBW-CU40に接続されており、検出されたセレクトレバー21の位置データ(位置に応じた検出信号(例えば電圧値等))が、SBW-CU40に読み込まれる。
【0039】
上述したように、SBW-CU40は、SBWアクチュエータ11と接続されている。また、SBW-CU40は、CAN100を介して、トランスミッション・コントロールユニット(以下「TCU」という)50等と通信可能に接続されている。
【0040】
TCU50は、自動変速機10の変速制御を司る制御ユニットである。TCU50には、自動変速機10に設けられた出力軸回転センサ等の各種センサ等が接続されている。また、TCU50は、CAN100を通して、エンジン回転数やアクセルペダル開度等の情報、及び、SBW-CU40から送信された自動変速機10のシフトレンジ等の情報を受信する。
【0041】
TCU50は、取得した、出力軸回転数(車速)、エンジン回転数、アクセルペダル開度、及び、シフトレンジ等の各種情報に基づいて、コントロールバルブ15を構成するソレノイドバルブ(電磁弁)を駆動し、自動変速機10の変速制御等を行う。ここで、コントロールバルブ15は、自動変速機10を変速させるための油圧をコントロールする。より具体的には、コントロールバルブ15は、スプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブを用いて油路を開閉することで、オイルポンプで発生した油圧を、例えば、ドライブプーリやドリブンプーリ等に供給する。なお、TCU50は、自動変速機10の各種情報を、CAN100を介して、SBW-CU40に送信する。
【0042】
SBW-CU40は、位置センサ23(第1位置センサ231及び第2位置センサ232)から入力されたセレクトレバー21の位置データ、及び、TCU50から受信した各種入力情報等に基づいて、制御信号(モータ駆動信号)を生成して出力し、SBWアクチュエータ11を駆動することにより自動変速機10のシフトレンジを切り替える。ここで、SBW-CU40は、セレクトレバー21がDポジション又はRポジションからNポジションに移動するときに、モーメンタリ機能の作用で戻っているのか、運転者がNポジションを選択したいのかを、誤ることなく、かつ、運転者に違和感を与えることなく判定するする機能を有している。
【0043】
そのため、SBW-CU40は、移動速度取得部41、通過時間取得部42、判定時間設定部43、計時部44、判定部45を機能的に備えている。SBW-CU40は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、SBWアクチュエータ11を駆動するドライバ回路等を含む入出力I/F等を有して構成されている。SBW-CU40では、EEPROMなどに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、移動速度取得部41、通過時間取得部42、判定時間設定部43、計時部44、判定部45それぞれの機能が実現される。
【0044】
移動速度取得部41は、セレクトレバー21の位置の時間変化に応じて、セレクトレバー21の移動速度を求める。移動速度取得部41は、特許請求の範囲に記載の移動速度取得手段として機能する。移動速度取得部41は、例えば、セレクトレバー21がDポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22Rを出てから、Nポジション判定領域22Nに入るまでに要した時間と、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22RとNポジション判定領域22Nとの間の距離とに基づいて、セレクトレバー21の移動速度を求める。なお、取得されたセレクトレバー21の移動速度は、通過時間取得部42に出力される。
【0045】
通過時間取得部42は、セレクトレバー21の移動速度に基づいて、セレクトレバー21がDポジション又はRポジションからNポジション側に移動する際に、Nポジション判定領域22Nを通過するために要すると予想される予想通過時間を求める。通過時間取得部42は、特許請求の範囲に記載の通過時間取得手段として機能する。ここで、Nポジション判定領域22N内の経路長をDとし、セレクトレバー21の移動速度をVとした場合、予想通過時間Tは次式(1)により求められる。なお、取得された予想通過時間Tは、判定時間設定部43に出力される。
予想通過時間T=D/V ・・・(1)
【0046】
判定時間設定部43は、求められた予想通過時間Tに応じて、Nポジションが選択されているか否かを判定するN(ニュートラル)判定時間TNを設定する。判定時間設定部43は、特許請求の範囲に記載の判定時間設定手段として機能する。その際に、判定時間設定部43は、求められた予想通過時間Tに、マージンを持たせて(加えて)、N判定時間TNを設定することが好ましい。ここで、マージンをAとすると、N判定時間TNは、例えば、次式(2)によって求められる。
N判定時間TN=A+予想通過時間T ・・・(2)
【0047】
また、その際に、判定時間設定部43は、雰囲気温度を考慮して、例えば、上記マージンA(すなわちN判定時間TN)を設定することが好ましい。なお、雰囲気温度は、例えば、車両に設けられたエアコンディショナの室内温度センサにより検出することができる。設定されたN判定時間TNは、判定部45に出力される。
【0048】
計時部44は、タイマ又はカウンタを有して構成されており、セレクトレバー21が、Nポジション判定領域22N内に位置している時間(保持されている時間)を計時する。計時部44は、特許請求の範囲に記載の計時手段として機能する。なお、同様に、計時部44は、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22R内などに位置している時間(保持されている時間)も計時する。計時時間は、判定部45に出力される。
【0049】
判定部45は、計時時間がN判定時間TN以上となった場合に、Nポジションが選択されていると判定する。一方、判定部45は、計時時間がN判定時間TN未満の場合に、モーメンタリ機能によりセレクトレバー21が戻されていると判定する。すなわち、判定部45は、特許請求の範囲に記載の判定手段として機能する。なお、同様に、判定部45は、セレクトレバー21が、予め設定された所定時間以上、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22Rに位置している場合に、当該レンジが選択されていると判定する。
【0050】
次に、図3を参照しつつ、レンジ切替装置1の動作について説明する。図3は、レンジ切替装置1によるNレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてSBW-CU40において、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
【0051】
ステップS100では、セレクトレバー21の位置が読み込まれる。続いて、ステップS102では、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22RからNポジション判定領域22Nに移動されたか否かについての判定が行われる。ここで、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22RからNポジション判定領域22Nに移動された場合には、ステップS104に処理が移行する。一方、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22RからNポジション判定領域22Nに移動されていないときには、本処理から一旦抜ける。
【0052】
ステップS104では、セレクトレバー21がNポジション判定領域22N内に位置している時間を計時するタイマの計時(又はカウンタのカウントアップ)が始動される。次に、ステップS106では、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22RからNポジション判定領域22Nに移動する間に要した時間と、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22RとNポジション判定領域22Nとの間の距離とに基づいて、セレクトレバー21の移動速度が演算される。
【0053】
続いて、ステップS108では、セレクトレバー21の移動速度と、シフトゲート22のNポジション判定領域22N内の移動経路長とに基づいて、Nポジション判定領域22Nを通過するために要すると予想される予想通過時間が演算される。続くステップS110では、求められた予想通過時間に応じて、Nポジションが選択されているか否かを判定するN判定時間が設定される。なお、N判定時間の設定方法については上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
次に、ステップS112では、セレクトレバー21がNポジション判定領域22Nの外に移動したか否かについての判断が行われる。ここで、セレクトレバー21がNポジション判定領域22Nの外に移動した場合には、本処理から抜ける。一方、セレクトレバー21がNポジション判定領域22Nの外に移動していないときには、ステップS114に処理が移行される。
【0055】
ステップS114では、セレクトレバー21がNポジション判定領域22N内に位置している時間を計時するタイマ(又はカウンタ)がカウントアップされる。その後、ステップS116では、計時時間がN判定時間以上となったか否かについての判断が行われる。ここで、計時時間がN判定時間以上となった場合には、ステップS118に処理が移行する。一方、計時時間がN判定時間以上となっていないときには、ステップS112に処理が移行し、上述したステップS112~S116の処理が再度(繰り返して)実行される。
【0056】
ステップS118では、Nポジションが選択されていると判定される。そして、SBWアクチュエータ11が駆動されて、自動変速機10のシフトレンジがNレンジに切替えられる。その後、本処理から抜ける。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態によれば、セレクトレバー21の位置が検出され、そのセレクトレバー21の位置の時間変化に応じて、セレクトレバー21の移動速度が求められる。そして、セレクトレバー21の移動速度に基づいて、セレクトレバー21がDポジション又はRポジションからNポジション側に移動する際に、Nポジション判定領域22Nを通過するために要すると予想される予想通過時間が求められ、求められた予想通過時間に応じて、Nポジションが選択されているか否かを判定するN判定時間が設定される。一方、セレクトレバー21がNポジション判定領域22N内に位置している時間が計時される。そして、計時時間がN判定時間以上となった場合に、Nポジションが選択されていると判定される。すなわち、セレクトレバー21の移動速度から求められるNポジション判定領域22Nの予想通過時間に応じてN判定時間が可変される。そのため、セレクトレバー21が自動的に戻される場合も、運転者がDポジション又はRポジションからNポジションに操作する場合も、その時々のリアルタイムの移動速度に応じて適切なN判定時間を設定することができる。よって、誤判定を防止するために必要以上に判定時間を長くする必要がない。その結果、セレクトレバー21がDポジション又はRポジションからNポジションに移動するときに、モーメンタリ機能の作用で戻っているのか、運転者がNポジションを選択したいのかを、誤ることなく、かつ、運転者に違和感を与えることなく判定することが可能となる。
【0058】
その際に、本実施形態によれば、セレクトレバー21の車幅方向の位置及び車両前後方向の位置からセレクトレバー21の2次元上の位置が検出されるため、適確にセレクトレバー21の2次元上(すなわち、シフトゲート22上)の位置を検出することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態によれば、Dポジション判定領域22D又はRポジション判定領域22Rを出てから、Nポジション判定領域22Nに入るまでに要した時間と、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22RとNポジション判定領域22Nとの間の距離とに基づいて、セレクトレバー21の移動速度が求められるため、適切にセレクトレバー21の移動速度を求めることが可能となる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、雰囲気温度を考慮して、N判定時間が設定されるため、例えば、極低温時などにも、より適切にN判定時間を設定することが可能となる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、図4を用いて第2実施形態に係るレンジ切替装置1Bの構成について説明する。図4は、レンジ切替装置1Bの構成を示すブロック図である。なお、図4において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0062】
本実施形態は、位置センサ23に代えて位置センサ23B1~23B5が用いられている点で上述した第1実施形態と異なっている。また、SBW-CU40に代えてSBW-CU40Bが用いられている点で上述した第1実施形態と異なっている。さらに、SBW-CU40Bは、移動速度取得部41、通過時間取得部42、判定時間設定部43を有しておらず、計時部44に代えて計時部44Bを有するとともに、判定部45に代えて判定部45Bを有している点でSBW-CU40と異なっている。その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
位置センサ23B1は、セレクトレバー21が、Nポジション判定領域22N内に位置しているか否かを検知する。位置センサ23B2は、セレクトレバー21が、Dポジション判定領域22D内に位置しているか否かを検知する。位置センサ23B3は、セレクトレバー21が、Rポジション判定領域22R内に位置しているか否かを検知する。位置センサ23B4は、セレクトレバー21が、Hポジション判定領域22H内に位置しているか否かを検知する。位置センサ23B5は、セレクトレバー21が、Bポジション判定領域22B内に位置しているか否かを検知する。位置センサ23B1~23B5は、特許請求の範囲に記載の位置検知手段として機能する。なお、各センサの検知データはSBW-CU40に出力される。
【0064】
SBW-CU40の判定部45Bは、位置センサ23B1~23B5の検知結果に基づいて、セレクトレバー21が、所定時間以上、Nポジション判定領域22N、Dポジション判定領域22D、Rポジション判定領域22R、Hポジション判定領域22H、Bポジション判定領域22Bに位置している場合に、当該レンジが選択されていると判定する。判定部45Bは、特許請求の範囲に記載の判定手段として機能する。
【0065】
特に、判定部45Bは、Dポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバー21が、Hポジション判定領域22H内、Rポジション判定領域22R内に位置していると検知されるまで、Nポジションが選択されているか否かの判定を停止する。同様に、Rポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバー21が、Hポジション判定領域22H内又はDポジション判定領域22D内に位置していると検知されるまで、Nポジションが選択されているか否かの判定を停止する。
【0066】
次に、図5を参照しつつ、レンジ切替装置1Bの動作について説明する。図5は、レンジ切替装置1BによるNレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてSBW-CU40Bにおいて、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
【0067】
ステップS200では、セレクトレバー21の位置が読み込まれる。続いて、ステップS202では、Dポジション又はRポジションが選択されたか否かについての判断が行われる。ここで、Dポジション又はRポジションが選択された場合には、ステップS204に処理が移行する。一方、Dポジション又はRポジションが選択されていないときには、本処理から一旦抜ける。
【0068】
ステップS204では、Nポジションの判定を行うことが禁止される。続いて、ステップS206では、セレクトレバー21が、Nポジションを除く他のポジション、すなわち、Hポジション、Dポジション、又は、Rポジションに移動したか否かについての判断が行われる。ここで、Hポジション、Dポジション、又は、Rポジションに移動した場合には、ステップS208に処理が移行する。一方、Hポジション、Dポジション、又は、Rポジションに移動していないときには、ステップS204に処理が移行し、上述したステップS204~S206の処理が再度(繰り返して)実行される。
【0069】
ステップS208では、Nポジションの判定を行うことが許可される。次に、ステップS210では、Nポジションが選択されたか否か、すなわち、セレクトレバー21がNポジション判定領域22N内に所定時間以上保持されたか否かについての判断が行われる。ここで、Nポジションが選択された場合には、ステップS212に処理が移行する。一方、Nポジションが選択されていないときには、本処理から一旦抜ける。
【0070】
ステップS212では、Nポジションが選択されていると判定される。そして、SBWアクチュエータ11が駆動されて、自動変速機10のシフトレンジがNレンジに切替えられる。その後、本処理から抜ける。
【0071】
本実施形態によれば、Dポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバー21が、Hポジション判定領域22H内又はRポジション判定領域22R内に位置していると検知されるまで、Nポジションが選択されているか否かの判定が停止される。同様に、Rポジションが選択されたと判定した場合、その後、セレクトレバー21が、Hポジション判定領域22H内又はDポジション判定領域22D内に位置していると検知されるまで、Nポジションが選択されているか否かの判定が停止される。すなわち、Dポジション又はRポジションからHポジションに戻る(移動する)際にはNポジションが選択されているか否かの判定が行われなくなるため、確実に誤判定を防止することができる。なお、Nポジションを選択する際には、一度、セレクトレバー21をHポジション等に戻し、Hポジション等からNポジションに移動することにより、Nポジションを選択することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態のシステム構成は一例であり、本発明のシステム構成は上記実施形態には限られない。例えば、SBW-CU40とSBWアクチュエータ11を一体にしてもよい。また、SBW-CU40とTCU50とを一つのユニットとしてもよい。
【0073】
本発明は、自動変速機を搭載していない車両(例えば、電動モータなどで車輪を直接駆動するEV(電気自動車)や、FCV(燃料電池自動車)や、SHEV(シリーズハイブリッド自動車)など)にも適用することができる。
【0074】
また、セレクトレバー21の移動速度は、シフトレバー21の今回位置と前回位置との差、及び、位置のサンプリング周期(時間)に基づいて、算出してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、1B レンジ切替装置(セレクタ)
10 自動変速機
11 シフトバイワイヤ・アクチュエータ
21 セレクトレバー(シフトレバー)
22 シフトゲート(シフトパターン)
23,23B1~23B5 位置センサ
231 第1位置センサ
232 第2位置センサ
22H Hポジション判定領域(Hポジション)
22N Nポジション判定領域(Nポジション)
22R Rポジション判定領域(Rポジション)
22D Dポジション判定領域(Dポジション)
22B Bポジション判定領域(Bポジション)
40,40B シフトバイワイヤ・コントロールユニット(SBW-CU)
41 移動速度取得部
42 通過時間取得部
43 判定時間設定部
44,44B 計時部
45,45B 判定部
50 トランスミッション・コントロールユニット(TCU)
100 CAN
図1
図2
図3
図4
図5