(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】レーザ肉盛り加工部品の検査方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/03 20060101AFI20220323BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20220323BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20220323BHJP
【FI】
B23K26/03
B23K26/70
B23K26/342
(21)【出願番号】P 2018199020
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】在田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 達郎
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109458(JP,A)
【文献】特開平08-243769(JP,A)
【文献】特開平11-325862(JP,A)
【文献】特開2008-128730(JP,A)
【文献】特開2017-156087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/03
B23K 26/70
B23K 26/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ肉盛り加工部品の検査方法であって、
前記レーザ肉盛り加工部品は第1の穴と第2の穴とを有し、
前記第1の穴と前記第2の穴とは連続しており、
前記レーザ肉盛り加工部品の外側から奥に向けて、前記第2の穴と前記第1の穴とがこの順に並び、
前記第2の穴の内壁にレーザ肉盛り加工が行われ、
光を反射する反射部材は先端部と基端部とを有し、
前記第1の穴に前記反射部材の先端部を挿入することで、前記反射部材の前記基端部が前記第2の穴の内壁に接触しないように、前記反射部材を前記第2の穴の内部に配置する工程と、
前記反射部材
を配置する工程の後、前記第2の穴に光を照射する工程と、
前記光を照射する工程の後、撮像部により前記
第2の穴を撮像する工程と、を有するレーザ肉盛り加工部品の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ肉盛り加工部品の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドなどの部品ではレーザ肉盛り加工が行われる。例えばアルミニウム(Al)合金製のシリンダヘッドに銅(Cu)合金など異なる材料をレーザクラッド加工などで接合し、バルブシートを形成する。カメラを用いて部品を撮像することで肉盛り層の検査を行う(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像のために光源から部品に光を照射する。しかし、穴の奥に十分な光を照射することは難しく、鮮明に撮像することが困難なことがある。この結果、精度の高い検査が難しくなる。そこで、精度の高い検査が可能なレーザ肉盛り加工部品の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、レーザ肉盛り加工部品の検査方法であって、前記レーザ肉盛り加工部品は第1の穴と第2の穴とを有し、前記第1の穴と前記第2の穴とは連続しており、前記レーザ肉盛り加工部品の外側から奥に向けて、前記第2の穴と前記第1の穴とがこの順に並び、前記第2の穴の内壁にレーザ肉盛り加工が行われ、光を反射する反射部材は先端部と基端部とを有し、前記第1の穴に前記反射部材の先端部を挿入することで、前記反射部材の前記基端部が前記第2の穴の内壁に接触しないように、前記反射部材を前記第2の穴の内部に配置する工程と、前記反射部材を配置する工程の後、前記第2の穴に光を照射する工程と、前記光を照射する工程の後、撮像部により前記第2の穴を撮像する工程と、を有するレーザ肉盛り加工部品の検査方法によって達成できる。
【発明の効果】
【0006】
精度の高い検査が可能なレーザ肉盛り加工部品の検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は検査装置を例示する模式図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は反射ピンの例を示す図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は反射ピンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態の検査方法について説明する。
図1(a)および
図1(b)は検査装置を例示する模式図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、検査対象はレーザ肉盛り加工後のシリンダヘッド10である。
【0009】
シリンダヘッド10は例えばAlなどの金属で形成されている。シリンダヘッド10の穴12は吸気ポートまたは排気ポートとして機能する。穴12の壁面にはレーザ肉盛り加工が行われる。例えばCuなどの金属粉を供給し、レーザ光を照射することで、バルブシートが形成される。検査装置は肉盛り加工部分を撮影し、画像に基づいて欠陥などがないか調べる。
【0010】
図1(b)に示すように、検査装置100は、支柱20、着脱装置22、カメラ24、照明26、反射ピン30(反射部材)、および制御部40を備える。
【0011】
着脱装置22およびカメラ24はそれぞれアームを介して支柱20に連結されて、上下および水平方向に移動可能である。
【0012】
図1(a)に示すように、着脱装置22の先端部は反射ピン30のクランプ部に挿入可能である。着脱装置22を用いて反射ピン30をシリンダヘッド10の穴12に装着する。
【0013】
カメラ24は例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラであり、制御部40に接続されている。制御部40は例えばコンピュータでありカメラ24が撮像する画像に基づいて、シリンダヘッド10の肉盛り加工の良否判定を行う。また、制御部40は着脱装置22およびカメラ24の位置を制御してもよい。
【0014】
図1(b)に示すように、照明26は例えばドーム型であり、シリンダヘッド10を覆う。例えば照明26の内壁全体からシリンダヘッド10に向けて光が照射される。照明26には、照明26を貫通する穴28が設けられている。シリンダヘッド10は、穴12、穴28およびカメラ24が直線で結ばれるように配置される。なお、反射ピン30をシリンダヘッド10に着脱する際は、照明26を取り外すことができる。
【0015】
図2は反射ピン30付近の拡大図である。
図2に示すように、反射ピン30は先細りのテーパ形状を有する。穴12の奥から出口側にかけて反射ピン30の先端部34および基端部36が配置される。先端部34および基端部36はそれぞれ円柱形状を有する。
【0016】
反射ピン30はシリンダヘッド10の穴12および14に挿入されている。穴14はバルブが配置される部分であり、穴12に接続している。反射ピン30の先端部34が穴14に挿入されることで、反射ピン30が固定される。反射ピン30の軸線は穴12および14の軸線に一致する。反射ピン30の最大の直径は穴12の最小の直径よりも小さい。
【0017】
基端部36は先端部34より太く、穴12の内壁に接触せず、かつ内壁に対向する。反射ピン30のうち穴12の出口側の表面にはクランプ部32が設けられている。クランプ部32に着脱装置22を挿入することができる。反射ピン30は金属製でもプラスチック製でもよく、表面の光の反射率がシリンダヘッド10の反射率よりも高い。
【0018】
次に検査について説明する。まず
図1(a)に示すように、レーザ肉盛り加工後のシリンダヘッド10を支柱20付近に配置する。着脱装置22を用いて、反射ピン30をシリンダヘッド10の穴12に配置する。着脱装置22をシリンダヘッド10から遠ざけ、照明26をシリンダヘッド10にかぶせる。このとき、照明26の穴28と穴12とが同一直線上になるように、照明26を配置する。さらに、穴12および穴28と同一直線上にカメラ24を配置する。
【0019】
照明26からシリンダヘッド10に向けて光を照射する。照明26からの光は反射ピン30で反射され、穴12の内部を照らす。照明26の点灯後、カメラ24で穴12の画像を撮像する。制御部40はカメラ24から画像を取り込み、画像に基づいてレーザ肉盛り加工部分の良否判定を行う。
【0020】
以上、本実施形態によれば、レーザ肉盛り加工が行われた穴12に反射ピン30を挿入し、照明26から光を照射し、カメラ24で穴12の肉盛り部分を撮像する。反射ピン30が照明26から照射される光を反射するため、反射ピン30を用いない場合に比べて、穴12の奥まで光が届きやすい。
図2に示す穴12の出口付近の内壁12aは照明26の光で照らされる。奥の内壁12bには照明26の光が届きにくいが、反射ピン30で反射された光で照らされる。したがって輝度が高くなり、カメラ24は鮮明な画像を撮像することができる。制御部40は当該画像に基づいて検査を行うため、検査の精度が向上する。
【0021】
クランプ部32に着脱装置22を差し込むことで、反射ピン30の着脱が可能である。また基端部36に冶具を接触させなくてよいため、基端部36の表面が傷つきにくい。
【0022】
反射ピン30の材料は金属でも絶縁体でもよく、照明26の光に対して高い反射率を有するものであればよい。特に反射率がシリンダヘッド10よりも高いことが好ましい。
【0023】
図3(a)から
図4(b)は反射ピンの例を示す図である。
図3(a)の反射ピン30は
図1(a)から
図2に示したものと同じであり、円柱型の基端部36を有する。
図3(b)に示す反射ピン30aは基端部36aを有する。基端部36aはドーム型であり、外側に湾曲した曲面を含む。
図4(a)に示す反射ピン30bは基端部36bを有する。基端部36bは先端部34に向けて広がるような斜面である。
図4(b)に示す反射ピン30cは基端部36cを有する。基端部36cはくびれ型であり、内側に窪んだ曲面を含む。
【0024】
穴12の内壁は複数の角度を有して曲がっている。基端部36a~36cにより角度をつけて光を反射させることで、穴12の内側をより明るく照らすことができる。なお、反射ピンの形状は
図3(a)から
図4(b)に示したものに限定されず、穴12の形状などに応じて適切なものとすればよい。また反射ピンの直径および長さなどは穴12の大きさに応じて変更すればよい。ドーム型の照明26から光を照射することで乱反射光が発生し、穴12を均一に照らすことができる。照明26はドーム型でなくてもよい。
【0025】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 シリンダヘッド
12、14、28 穴
12a、12b 内壁
20 支柱
22 着脱装置
24 カメラ
26 照明
30、30a~30c 反射ピン(反射部材)
32 クランプ部
34 先端部
36、36a~36c 基端部
40 制御部
100 検査装置