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特許7044698チルトモータ車両の前車部及びそのモータ車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】チルトモータ車両の前車部及びそのモータ車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/08 20060101AFI20220323BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20220323BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20220323BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/05
B62K5/10
B62K25/08 Z
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2018504972
(86)(22)【出願日】2016-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 IB2016054682
(87)【国際公開番号】W WO2017021905
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2019-04-11
(31)【優先権主張番号】102015000041334
(32)【優先日】2015-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレア
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0270765(US,A1)
【文献】特表2003-535742(JP,A)
【文献】国際公開第2015/067760(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/098199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/05
B62K 5/08
B62K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車部フレーム(16)と、
関節型四辺形部(20)によって前車部フレーム(16)に運動学的に接続された一対の前輪(10´、10´´)と
を備えるモータ車両の前車部(8)であって、
前記関節型四辺形部(20)は、中間部ヒンジ(28)に対応して前記前車部フレーム(16)にヒンジ止めされた上部交差部材(24´)及び下部交差部材(24´´)を備え、
前記上部交差部材(24´)及び下部交差部材(24´´)は、側部ヒンジ(52)に対応して横方向端部(40、44)に対して回動する直立部(48、48´、48´´)によって、対向する横方向端部(40、44)に対応して、互いに接続され、各直立部(48´、48´´)は、上端部(60)から下端部(64)へ延在し、前記上端部(60)は前記上部交差部材(24´)に連結され、前記下端部(64)は前記下部交差部材(24´´)に連結され、
前記上部交差部材(24´)及び下部交差部材(24´´)並びに前記直立部(48)は、前記関節型四辺形部(20)を画定し、
前記前車部(8)は、前記前輪(10´、10´´)を回転可能に支持するように前輪(10´、10´´)を支持する回転ピン(68)に機械的に接続されたスタブ車軸(56)のための支持構造(72)を備え、
前記支持構造(72)は、各直立部(48´、48´)の前記上端部(60)および前記下端部(64)に対応して配置された操舵ヒンジ(76)によって、前記関節型四辺形部(20)にヒンジ止めされ、
前記操舵ヒンジは、前記前輪(10´、10´´)のそれぞれの互いに平行な操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)を画定しており、
前記支持構造(72)が、
専用のホイールアタッチメント(94)に対応して前記前輪(10´、10´´)の前記回転ピン(68)に接続されたガイドホイール(88)と、
前記操舵ヒンジ(76)によって前記関節型四辺形部(20)にヒンジ止めされた支持ブラケット(92)と、を備え、
前記ガイドホイール(88)は、それぞれの傾斜軸(B‐B)を画定し、かつ前記ガイドホイール(88)と前記支持ブラケット(92)との間の接続を実現する少なくとも3つの傾斜ヒンジ(100、105、106、110)によって、対向する軸方向上端部(96)および軸方向下端部(98)に対応して前記支持ブラケット(92)にヒンジ止めされている、ことを特徴とする、モータ車両の前車部(8)。
【請求項2】
前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)は、それぞれ前記直立部(48´、48´´)の軸と一致する、請求項1に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項3】
前輪(10´、10´´)は、対称面(R´‐R´、R´´‐R´´)を備え、前記各前輪の対称面(R´‐R´、R´´‐R´´)は、各前輪(10´、10´´)の前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)をそれぞれ含む、請求項1または2に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項4】
前記支持構造(72)が、各前輪(10´、10´´)のリム(84)によって区切られた空間(80)内に完全に収容されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項5】
前記空間(80)が、前記中間部ヒンジ(28)を通過する前記前車部(8)の中心を通る面(M‐M)に面している、請求項4に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項6】
前記ガイドホイール(88)、前記支持ブラケット(92)および前記傾斜ヒンジ(100、105、106、110)は、前記支持構造(72)の外周に沿って連続する、請求項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項7】
前輪(10´、10´´)の回転ピン(68)は、前記支持構造(72)の内側に配置され、および/または、側部ヒンジ(52)およびそれぞれの直立部(48´、48´´)は、前記支持構造(72)の内側に配置される、請求項6に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項8】
前記支持構造(72)は、第1の傾斜ヒンジ(105)および第2の傾斜ヒンジ(106)が前記支持ブラケット(92)および前記ガイドホイール(88)にそれぞれヒンジ止めされた接続ロッド(104)を備える、請求項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項9】
前記支持構造(72)は、前記支持ブラケット(92)および前記ガイドホイール(88)にヒンジ止めされたプレート(108)を備える、請求項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項10】
前記傾斜ヒンジ(100、105、106、110)は、各前輪(10´、10´´)の対称面(R´‐R´、R´´‐R´´)に垂直であり、かつ前記操舵ヒンジ(76)によって画定された操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)に垂直である前記傾斜軸(B‐B)に対応して、前記支持ブラケット(92)および前記ガイドホイール(88)にヒンジ止めされている、請求項1~9のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項11】
前記ガイドホイール(88)は、前記前輪(10´、10´´)用のサスペンションを実現するためにダンパ(116)とばね(120)とを含む直線的ガイドである、請求項1~10のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項12】
前記ガイドホイール(88)は、前記ダンパ(116)を収容するステム(124)と、前記ステム(124)と同軸に装着され、かつ前記ステム(124)に対して並進可能なケース(126)とを備え、前記ケース(126)は、車輪スタブ車軸(56)を支持し、前記ばね(120)によって弾性的に影響を受ける、請求項1~11のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項13】
前記ケース(126)は、前記ばね(120)と傾斜ヒンジ(100、105、106、110)の1つとを支持および固定する付属物(128)を備える、請求項12に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項14】
前記ガイドホイール(88)は、外側ジャケット(132)を備え、前記外側ジャケット(132)には、前記スタブ車軸(56)と、第1の傾斜ヒンジ(105)および第2の傾斜ヒンジ(106)が前記ガイドホイール(88)の前記外側ジャケット(132)及び前記支持ブラケット(92)にそれぞれヒンジ止めされた接続ロッド(104)とが接続され、前記外側ジャケット(132)は、ダンパ(116)およびばね(120)を内部に包囲し、前記外側ジャケット(132)は、スロット(136)によって前記ガイドホイール(88)の軸方向に案内されるピン(140)を収容する前記スロット(136)を備え、前記ピン(140)は、前記プレート(108)によって前記支持ブラケット(92)に接続されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項15】
前記ピン(140)が、前記スロット(136)を介して前記ばね(120)の伸長または圧縮運動を案内するように、前記ばね(120)によって弾性的に影響を受ける、請求項14に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項16】
前記外側ジャケット(132)と前記接続ロッド(104)または前記プレート(108)との間に、前記スロット(136)の外側における前記スロット(136)に沿った前記ピン(140)の動きの案内を実現するように、前記外側ジャケット(132)と同軸に装着されたカラー(144)が介在する、請求項14または15に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項17】
前記スロット(136)は、前記ガイドホイール(88)の延出した延長部に対して平行に方向付けられる、請求項14、15または16に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項18】
前記スロット(136)は、各前輪(10´、10´´)の対称面(R´‐R´、R´´‐R´´)に直角な面に沿って方向付けられる、請求項14、15、16、又は17に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項19】
前記ガイドホイール(88)は、外側ジャケット(132)を備え、前記外側ジャケット(132)には、スタブ車軸(56)と、第1の傾斜ヒンジ(105)および第2の傾斜ヒンジ(106)が前記ガイドホイール(88)の前記外側ジャケット(132)および前記支持ブラケット(92)にそれぞれヒンジ止めされた前記接続ロッド(104)とが接続され、前記外側ジャケット(132)は、ダンパ(116)および前記ばね(120)を内部に包囲し、前記外側ジャケット(132)は、前記スロット(136)によって前記ガイドホイール(88)の軸方向に案内されるピン(140)を収容するスロット(136)を備え、前記ピン(140)は、前記外側ジャケット(132)の内側に収容されたスライダまたはスライドブッシュ(148)にヒンジ止めされている、請求項1~11のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項20】
前記ピン(140)は、前記支持ブラケット(92)に対して固定されている、請求項19に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項21】
前記スロット(136)は、前記ガイドホイール(88)の延出した延長部に対して平行に方向付けられる、請求項19または20に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項22】
前記スロット(136)は、前輪(10´、10´´)の対称面(R´‐R´、R´´‐R´´)に平行に方向付けられる、請求項19または20に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項23】
前記ピン(140)が、ヒンジまたはボールジョイント(150)に対応して前記スライダまたは前記スライドブッシュ(148)にヒンジ止めされ、前記ヒンジまたはボールジョイント(150)が、前記支持構造(72)の前記傾斜ヒンジ(100、110)を画定している、請求項19、20または21に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項24】
前記ピン(140)は、前記スロット(136)を介して前記ガイドホイール(88)に挿入され、前記ピン(140)は、前記ガイドホイール(88)に平行にスライドするように、前記ガイドホイール(88)の空洞(157)に収容されたヘッド(153)によって前記スライダまたはスライドブッシュ(148)に固定されている、請求項19~23のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項25】
前記スライダまたはスライドブッシュ(148)は、前記ガイドホイール(88)に沿った前記前輪(10´、10´´)の揺動運動中に前記ピン(140)に対して前記スライダまたは前記スライドブッシュ(148)の傾斜を可能にするのに適した少なくとも1つの皿穴(151)を備える、請求項19~24のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項26】
前記前輪(10´、10´´)の各回転ピン(68)が、前記関節型四辺形部(20)の前記直立部(48、48´、48´´)の前記上端部(60)と前記下端部(64)との間に含まれている、請求項1~25のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項27】
前記上部交差部材(24´)および前記下部交差部材(24´´)の前記横方向端部(40、44)が、前記直立部(48´、48´´)に形成された横方向座部(152)内に少なくとも部分的に収容される、請求項1~26のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項28】
各ガイドホイール(88)には、前記対応する前輪(10´、10´´)の制動手段(154)が固定されている、請求項1~27のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項29】
前記支持ブラケット(92)には、モータ車両の関連するハンドルバーに運動学的に接続された操舵タイロッド(156)が固定されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項30】
前記中間部ヒンジ(28)および前記側部ヒンジ(52)が互いに平行であり、また、前記中間部ヒンジ(28)を通過する投影面(P)に関して前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)が中間部ヒンジ軸(W‐W)および側部ヒンジ軸(Z‐Z)と角度(α)を特定し、前記角度(α)が80°~120°である、請求項1~29のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項31】
前記角度(α)が90°~110°である、請求項30に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項32】
前記中間部ヒンジ(28)および前記側部ヒンジ(52)は互いに平行であり、前記中間部ヒンジ(28)を通過する前記投影面(P)に関して前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)が前記中間部ヒンジ軸(W‐W)および前記側部ヒンジ軸(Z‐Z)と90°の角度(α)を特定するように、前記中間部ヒンジ(28)および前記側部ヒンジ(52)は、前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)に対して直交である、請求項1~31のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項33】
前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)は、前記中間部ヒンジ(28)を通過する前記投影面(P)に関して、地面に垂直な鉛直方向(N‐N)に対して4°~20°で傾斜している、請求項1~32のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項34】
前記操舵軸(S´‐S´、S´´‐S´´)は、前記中間部ヒンジ(28)を通過する前記投影面(P)に関して、地面に垂直な鉛直方向(N‐N)に対して、8°~16°の操舵角(β)で傾斜している、請求項1~33のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項35】
前記中間部ヒンジ(28)および前記側部ヒンジ(52)は、地面に対して平行である請求項1~34のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項36】
前記中間部ヒンジ(28)および前記側部ヒンジ(52)が、互いに平行な前記中間部ヒンジ軸(W‐W)および前記側部ヒンジ軸(Z‐Z)に沿って配向されている、請求項1~35のいずれか一項に記載のモータ車両の前車部(8)。
【請求項37】
後車軸に備えられた駆動輪と、請求項1~36のいずれか一項に記載の前車部(8)とを有する、モータ車両(4)。
【請求項38】
前記モータ車両(4)が、前記後車軸(12)に2つの後部駆動輪(14)を備える、請求項37に記載のモータ車両(4)。
【請求項39】
前記後車軸(12)の2つの前記後部駆動輪(14)が、請求項1~36のいずれか一項に記載の関節型四辺形部(20)と同じ構成の関節型四辺形部(20)によって、共に後車軸フレームに接続されている、請求項38に記載のモータ車両(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルトモータ(角度調節なモータ)車両の前車部およびそのモータ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、後部駆動輪と、2つの操舵および傾斜輪とを備えた(すなわち前部で転がりまたは傾斜する)3輪モータ車両が当業界には存在する。
【0003】
したがって、後輪はトルクを提供して牽引を可能にし、一方、対になった前輪は車両の方向性を提供することを意図している。
【0004】
2つの後輪の代わりに2つの前輪を使用することにより、トルク伝達のための差動装置の使用を回避する。このようにして、後車軸におけるコストと重量の削減を達成することができる。
【0005】
前車部にある対になった車輪は、操舵に加えて、傾斜および転がりが可能である。このように、後車軸に2つの車輪を備えた3輪車両と比較して、前車部に2つの車輪を備えた車両は、バイクのようにコーナリング時に傾斜することができるため、実際のバイクと同等である。
【0006】
しかし、前車部に2つの対になった車輪を有するこのような車両は、2輪のみのモータ車両と比較して、自動車と同様に前輪が地面に二重に置かれていることによって、より大きな安定性が確保されている。
【0007】
前輪は、運動学的機構によって互いに運動学的に接続されており、これにより、例えば関節型四辺形部を介在させて、同期的かつ鏡面的な転がりおよび/または操舵を可能にする。
【0008】
前輪の操舵角に関しては、例えばコーナリング時に外輪がより開いたままである車型の操舵を行う場合などに、前輪間で異なる操舵角を与えることも可能である。
【0009】
このように、チルト3輪モータ車両(角度調節可能な3輪モータ車両)は、2輪モータサイクルのハンドリング性と同時に4輪車両の安定性と安全性をユーザに提供するように設計される。
【0010】
実は、より大きな安定性には、2輪モータ車両と比較して必然的に車両の構造を重くする(第3の車輪とそれに関する運動学的機構など)追加要素の存在が必要であるため、予め定められた2つの目標は相反する。
【0011】
さらに、3輪「のみ」の存在では、4輪車両の安定性およびロードホールディングを保証できない。
【0012】
したがって、安定性とハンドリング性、ならびに信頼性と低コストを確保しつつ、これらの相反する目的を取り持つことができる3輪車両を開発することが不可欠である。
【0013】
このような目的を達成するためには、前輪の操舵および転がりまたは傾斜動作の支持を担う、フレームまたは前車部の前部の特定の幾何形状を開発しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述の問題を解決するために、今日まで、多くの解決策が3輪車両の技術において採用されており、そのうちの2つは前車部に基づいている。
【0015】
先行技術のそのような解決策は、上記の安定性およびハンドリング性に対する必要性を最適化することができない。
【0016】
したがって、先行技術に関して言及した欠点および制限を解決する必要があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この要件は、請求項1に記載のモータ車両前車部および請求項34に記載のモータ車両によって満たされる。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、その好ましいおよび非限定的な実施形態の以下の記載からより明白に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるモータ車両の前車部の断面図を示す。
図2a】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度から見た側面図を示す。
図2b】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度から見た側面図を示す。
図2c】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度から見た側面図を示す。
図2d】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度から見た側面図を示す。
図3】本発明のさらなる実施形態によるモータサイクルの前車部の斜視図を示す。
図4a図3の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図4b図3の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図4c】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図4d】本発明の一実施形態による前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図5】本発明のさらなる実施形態によるモータサイクルの前車部の斜視図である。
図6a図5の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図6b図5の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
【0020】
図6c図5の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
図6d図5の前車部のコンポーネントの異なる角度からの側面図を示す。
【0021】
図6e】ばねの圧縮構成における図6a~図6dのコンポーネントの異なる角度からの図を示す。
図6f】ばねの圧縮構成における図6a~図6dのコンポーネントの異なる角度からの図を示す。
図6g】ばねの圧縮構成における図6a~図6dのコンポーネントの異なる角度からの図を示す。
図7】本発明によるコンポーネントガイドホイールの側面図である。
図8図7のVIII-VIII断面に沿った、図7のコンポーネントの断面図を示す。
図9】異なる角度からの、図7のコンポーネントであるガイドホイールの側面図である。
図10図9の断面X-Xに沿った、図9のハブの断面図を示す。
図11図7のガイドホイールの一部のさらなる側面図と断面図を示す。
図12図7のガイドホイールのさらなるコンポーネントの様々な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に説明する実施形態に共通の要素または要素の部分は、同じ参照番号を使用して示す。
【0023】
前述の図を参照すると、参照番号4は、本発明によるモータ車両の概略の全体図を示す。
【0024】
本発明の目的のためには、モータ車両という用語は、少なくとも3輪、すなわち以下によりよく説明するように2つの整列した車輪と、少なくとも1つの後輪とを有する任意のモータサイクルを包含する、広範な意味で考慮する必要があることを指摘しなければならない。したがって、このような定義は、前車部に2輪を有し、後車軸に2輪を有する、いわゆる4輪オートバイをも含む。
【0025】
モータ車両4は、少なくとも2つの前輪10、10´、10´´を支持する前車部8から、1つ以上の後輪(図示せず)を支持する後車軸まで延在するフレーム6を備える。
【0026】
左前輪10´と右前輪10´´とを区別することが可能であり、左10´および右10´´の定義は純粋に形式的なものであり、車両の運転者に関連して意味する。車輪は、モータ車両を運転する運転者の観察点と比較して、モータ車両の中心面M‐Mの左右に配置される。
【0027】
以下の説明において、また図面においても、車両を運転する運転者の観察点と比較して前車部の左右のコンポーネントをそれぞれ示すために、引用符´および´´を用いて中心面M‐Mに関する前車部の対称または鏡面要素に言及する。
【0028】
本発明の目的のために、モータ車両のフレーム6は、任意の形状、サイズであってもよく、例えば、格子タイプ、ボックスタイプ、クレードル、シングルまたはダブルなどであってもよい。
【0029】
モータ車両のフレーム6は、一体または複数の部品であり得る。例えば、モータ車両のフレーム6は後車軸フレームと相互接続し、後車軸フレームは、1つ以上の後部駆動輪を支持する振動する後部フォーク(図示せず)を備えていてもよい。
【0030】
後部振動フォークは、直接ヒンジによって、またはレバー機構および/または中間フレームの介在によってフレーム6に接続されてもよい。
【0031】
モータ車両前車部8は、前車部フレーム16と、関節型四辺形部20によって前車部フレーム16に運動学的に接続された一対の前輪10とを備える。
【0032】
関節型四辺形部20は、中間部ヒンジ28に対応して前車部フレーム16にヒンジ止めされた一対の交差部材24を備える。
【0033】
中間ヒンジ部28は、互いに平行な中間部ヒンジ軸を識別する。
【0034】
例えば、中間部ヒンジは、長手方向X‐Xまたはモータ車両の走行方向を通る中心面M‐Mを跨ぐように配置されたフロントビーム32に装着されている。
【0035】
例えば、モータ車両4のハンドルバー(図示せず)に接続された操舵機構は、公知の方法でモータ車両4のフレーム6の操舵チューブ内に旋回するように挿入された操舵コラム上で回動する。
【0036】
交差部材24は、対向する横方向端部40、44の間で主横方向Y‐Yに延在する。
【0037】
特に、交差部材24は、側部ヒンジ52に対応して横方向端部40、44に対して回動する直立部48によって、対向する横方向端部40、44に対応して互いに接続されている。
【0038】
一実施形態では、交差部材24、24´、24´´は、フロントビーム32に対して片持ちに装置される。
【0039】
交差部材24および直立部48は、関節型四辺形部20を画定する。具体的には、四辺形20は、2つの交差部材24、すなわち上部交差部材24´と下部交差部材24´´とを備え、上部交差部材24´は関連するハンドルバーの側部に面し、下部交差部材24´´はモータ車両4を支持する地面に面している。
【0040】
交差部材24´、24´´は、形状、材質、大きさにおいて必ずしも互いに同一である必要はない。各交差部材24は一体部品、または例えば溶接、ボルト、リベットなどによって機械的に取り付けられた2つ以上の部品で作ることができる。
【0041】
2つの直立部48があり、特に左側直立部48´と右側直立部48´´がある。
【0042】
左右の直立部48´、48´´の定義は純粋に形式的なものであり、車両の運転者に関連して意味する。左右の直立部48´、48´´は、モータ車両を運転する運転者の観察点と比較してモータ車両の中心面M‐Mの左右に配置されている。
【0043】
側部ヒンジ52は、互いに平行であり、それぞれの側部ヒンジ軸Z‐Zを画定する。
【0044】
好ましくは、中間部ヒンジ28および側部ヒンジ52は、互いに平行な中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zに沿って配向される。
【0045】
左右の直立部48´、48´´は、左右の前輪10´、10´´をそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を中心として回転可能にそれぞれ支持する。操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は互いに平行である。
【0046】
各直立部48は、上端部60から下端部64まで延在する。
【0047】
上端部60は上部交差部材24´に面しており、下端部64は下部交差部材24´´に面している。各前輪は、前輪10のスタブ車軸56を備えている。
【0048】
一実施形態によれば、各スタブ車軸56は、前輪10の回転ピン68に機械的に接続され、前輪10を関連する回転軸R‐Rを中心に回転可能に支持する。
【0049】
前輪10の各回転ピン68は、関節型四辺形部20の対応する直立部48の上端部60と下端部64との間に含まれる。
【0050】
可能な実施形態によれば、ヒンジ28およびヒンジ52は互いに平行であり、操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に垂直である。言い換えれば、一実施形態によれば、中間部ヒンジ28を通過する投影面Pと比較して、操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は、中間部ヒンジ軸W‐Wおよび横ヒンジ軸と90度の角度αである。
【0051】
可能な実施形態によれば、角度αは80°~120°度であり、好ましくは角度αは90°~110°であり、さらに好ましくは角度αは100°に等しい。
【0052】
投影面Pに関する操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は、地面に垂直な鉛直方向N‐Nに対して4°~20°、より好ましくは8°~16°の操舵角βで傾斜していてもよい。
【0053】
さらに別の実施形態によれば、ヒンジ28および52は、地面に平行な中間部ヒンジ軸W‐Wおよび横ヒンジ軸Z‐Z側、すなわち投影面Pに関して鉛直方向N‐Nに垂直に傾斜するように設けることも可能であり、この構成では、角度βは0°に等しい。
【0054】
さらに、図示されているように、ヒンジ28およびヒンジ52が操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に対して垂直でないように設けることも可能である。実際、上述のように、中間部ヒンジ28を通る投影面Pに関して操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´および中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zの間に画定された角度αは80°~120°の間に含まれる。
【0055】
中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zの地面への平行度は、転がり運動において、曲線に対して内側の車輪がほぼ鉛直に上昇することを意味し、(地面から伝達される)水平方向の制動力から車輪の転がり運動を切り離し、モータ車両の底部に向かってあまり場所を取らないという二重の利点を有する。
【0056】
中間部軸W‐Wおよび側部軸Z‐Zを操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に対して傾斜させることにより、静止時の静止状態では、中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zは地面に対して平行であり、制動状態では、したがって前輪10´、10´´のサスペンションが圧縮された状態では、中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zは地面に対して実質的に平行な状態へと傾斜して動くことに留意されたい。例えば、静状態において、中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zは、水平方向に対してゼロとは異なる角度βになり(水平方向に対して垂直な鉛直方向で形成される角度に一致する)、制動時および最大圧縮条件では、この角度はゼロになる傾向がある。
【0057】
制動中に、中間部ヒンジ軸W‐Wおよび側部ヒンジ軸Z‐Zが地面と実質的に平行に配置されているとき、水平であり、したがって地面に平行な制動力は、地面に実質的に垂直すなわち鉛直である車輪の行程運動に伴うコンポーネントを生成しないため、車輪の跳躍は回避される。
【0058】
さらに、直立部48´、48´´の上端部60および下端部64は、それぞれの前輪10´、10´´の回転ピン68の上下に配置され、先行技術の解決策で生じるように完全には覆っていないことに留意されたい。
【0059】
言い換えれば、前輪10´、10´´の各回転ピン68は、関節型四辺形部20の対応する直立部48、48´、48´´の上端部60と下端部64との間に含まれる。
【0060】
これは、サスペンションを含む各車輪10´、10´´と関節型四辺形部との間の接続の剛性が、先行技術の前述の解決策でもたらされるよりも剛直なレベルであり、制動力または非対称的な衝撃によって前輪10´、10´´の交互共振が優勢になり得る可能性をより少なくするのに役立つことを意味する。したがって、本発明は、軽量であるが安全で正確でもあり、前車部において運転者に安全感を伝える車両を提供するのに全般的に役立ち、振動やハンドルバーのわずかな動きをユーザに伝達しない。
【0061】
さらに、車輪の鉛直方向寸法における関節型四辺形部の上部交差部材24´と下部交差部材24´´の位置決めは、前車部の重心、したがって車両の重心を下方に移動させ、車両の動的挙動を改善することを可能にする。
【0062】
有利には、前車部8は、各前輪10´、10´´に対応して、関連する回転軸R‐Rを中心として前輪10´、10´´を回転可能に支持するように前輪10´、10´´の回転ピン68に機械的に接続された各前輪10´、10´´のスタブ車軸56用の傾斜支持構造72を備える。
【0063】
有利には、傾斜支持構造72は、各直立部48´、48´´の上端部60および下端部64に対応して配置された操舵ヒンジ76によって、関節型四辺形部20にヒンジ止めされており、操舵ヒンジは、互いに平行な車輪10´、10´´のそれぞれの操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を画定している。
【0064】
操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´は、それぞれ、直立部48´、48´´の対称軸と一致することが好ましい。
【0065】
各車輪10´、10´´は、車輪のR´‐R´、R´´‐R´´の中心面を含み、車輪のR´‐R´、R´´‐R´´の中心面は、各前輪10´、10´´の操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´を通過する。さらなる実施形態では、各操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´と車輪R´‐R´、R´´‐R´´の関係する中心面との間にオフセットまたは横方向オーバーハングが設けられる。そのような横方向オーバーハングは、0~2cm、より好ましくは0~1cmであり、さらに好ましくは、横方向オーバーハングは0.7cmに等しい。
【0066】
好ましくは、傾斜支持構造72は、各車輪10´、10´´のリム84によって区切られた空間(容積)80内に完全に収容されている。
【0067】
好ましくは、空間80は、中間部ヒンジ28を通過する前車部8の中心面M‐Mに対して面している。言い換えると、スタブ車軸56は、モータ車両の中心面M‐Mに向かって内側に面しており、スタブ車軸56のスピンドルに関連する関係のコンポーネントは外部の観察者には直接見えない。
【0068】
好ましい実施形態によれば、傾斜支持構造72は、前輪10´、10´´のスタブ車軸56に接続されたガイドホイール88と、操舵ヒンジ76によって関節型四辺形部20にヒンジ止めされた支持ブラケット92とを備える。
【0069】
ガイドホイール88は、回転ピン68に接続され、専用の車輪アタッチメント94に対応する対応する車輪10´、10´´の回転ピン68を回転可能に支持する。
【0070】
ガイドホイール88は、対向する軸方向上端部96および軸方向下端部98の間に延在し、好ましくは、対向する軸方向端部96、98において、ガイドホイール88はフレームへの接続要素に機械的に接続される。
【0071】
例えば、ガイドホイール88は、ガイドホイール88の対向する軸方向上端部96および軸方向下端部98で、少なくとも3つの傾斜ヒンジ100によって支持ブラケット92にヒンジ止めされ、少なくとも3つの傾斜ヒンジ100は、それぞれの傾斜軸B‐Bを画定し、ガイドホイール88と支持ブラケット92との間に回転並進接続を実現する。
【0072】
好ましくは、ガイドホイール88、支持ブラケット92および傾斜ヒンジ100は、周方向に閉じた傾斜構造支持部72を画定する。
【0073】
周方向に閉じた構造という用語は、車輪R´‐R´、R´´‐R´´の中心面上のガイドホイール88、支持ブラケット92および傾斜ヒンジ100の突出部が、閉じた多角形を画定し、または閉じた外周を有することを意味することが理解される。
【0074】
好ましくは、各車輪10´、10´´の回転ピン68は、周方向に閉じた傾斜支持構造72および/または側部ヒンジ52の内側に配置され、それぞれの直立部48は、周方向に閉じた傾斜支持構造72の内側に配置される。
【0075】
一実施形態によれば、傾斜支持構造72は、第1の傾斜ヒンジ105および第2の傾斜ヒンジ106で支持ブラケット92およびガイドホイール88に二重にヒンジ止めされた、接続ロッド104を備える。
【0076】
一実施形態によれば、傾斜支持構造72は、第3の傾斜ヒンジ110で支持ブラケット92およびガイドホイール88にヒンジ止めされた、プレート108を備える。
【0077】
傾斜ヒンジ100、105、106、110は、各車輪10´、10´´の中心面R´‐R´、R´´‐R´´に垂直であり、かつ操舵ヒンジ76によって画定された操舵軸S´‐S´、S´´‐S´´に垂直である傾斜軸B‐Bで、支持ブラケット92およびガイドホイール88にヒンジ止めされている。
【0078】
好ましくは、ガイドホイール88は、各車輪10´、10´´のサスペンションを実現するためのダンパ116およびばね120を備える直線的ガイドである。このような直線のガイドホイール88は、各車輪10´、10´´のための揺動軸T‐Tを画定する。
【0079】
一実施形態によれば、ガイドホイール88は、ダンパ116を収容するステム124と、ステム124と同軸に装着され、ステム124に対して並進可能なケース126とを備え、ケース126は、対応する車輪10´、10´´のスタブ車軸56を支持し、ばね120によって弾性的に影響を受ける。
【0080】
例えば、ケース126は、ばね120の、および傾斜ヒンジ100、105、106、110の1つの支持および固定付属物128を備える。
【0081】
一実施形態によれば、ガイドホイール88は、外側ジャケット132を備え、外側ジャケット132には、スタブ車軸56と、第1の傾斜ヒンジ105および第2の傾斜ヒンジ106に対応してガイドホイール88の支持ブラケット92および外側ジャケット132に二重にヒンジ止めされた接続ロッド104とが接続されている。さらに、外側ジャケット132は、ダンパ116およびばね120を内部に包囲し、外側ジャケット132は、スロット136によって軸方向に案内されるピン140を収容するスロット136を備え、ピン140は、第3の傾斜ヒンジ110を画定し、接続ロッド104またはプレート108によって支持ブラケット92に接続されている。
【0082】
ピン140は、ばね120の弾性的な影響を受けて、スロット136を介してばね120の伸長または圧縮運動を案内する。
【0083】
例えば、外側ジャケット13と接続ロッド104またはプレート108との間には、外側ジャケット132に同軸に装着されたカラー144が介在し、スロット136に沿ったピン140の動きに対する外側ガイドを実現する。
【0084】
スロット136は、ガイドホイール88の主延長部に平行に方向付けられ、特にスロット136は、各車輪10´、10´´の中心面R´‐R´、R´´‐R´´に垂直な面に沿って方向付けられる。
【0085】
本発明の別の実施形態によれば、ガイドホイール88は、外側ジャケット132を備え、外側ジャケット132には、スタブ車軸56と、第1の傾斜ヒンジ105および第2の傾斜ヒンジ106に対応してガイドホイール88の支持ブラケット92および外側ジャケット132に二重にヒンジ止めされた接続ロッド104とが接続され、外側ジャケット132は、ダンパ116およびばね120を内部に包囲し、外側ジャケット132は、スロット136によって軸方向に案内されるピン140を収容するスロット136を備える。ピン140は、次に、外側ジャケット132の内側に収容され、かつ第3の傾斜ヒンジ110を画定する、スライダまたはスライドブッシュ148にヒンジ止めされる。
【0086】
例えば、ピン140は、ヒンジまたはボールジョイント150でスライダまたはスライドブッシュ148にヒンジ止めされる。
【0087】
ヒンジまたはボールジョイント150は、第3の傾斜ヒンジ100、110を画定する。
【0088】
例えば、ピン140はスロット136を介してガイドホイール88に挿入され、スロット136の反対側で、ピン140は、ガイドホイール88の空洞157に収容されたヘッド153によってスライダまたはスライドブッシュ148に固定され、したがって、ガイドホイール88を妨害することなく、またスロット136の正反対の第2のスロットを通って外側ジャケットを妨げることなく、ガイドホイール88に対して揺動方向T‐Tと平行にスライドする。
【0089】
好ましくは、スライダまたはスライドブッシュ148は、ガイドホイール88によって画定された揺動軸T‐Tに沿った車輪10´、10´´の揺動運動中にピン140に対してカーソルまたはスライドブッシュ148の関連する傾斜を可能にするのに適した少なくとも1つの皿穴151を備える。
【0090】
皿穴151によって可能になるこのような関連する傾斜は、ピン140、スライダまたはスライドブッシュ148とガイドホイール88の外側ジャケット132との間の衝突または干渉を防止する。
【0091】
ピン140は、好ましくは、支持ブラケット92に対して固定されている。
【0092】
このような実施形態では、スロット136は、ガイドホイール88の主延長部に平行に方向付けられ、特に、スロット136は、各車輪10´、10´´の中心面R´‐R´、R´´‐R´´に平行に方向付けられる。
【0093】
ガイドホイール88は、通常のショックアブソーバとモータサイクルのフォークのステムとの間の一種のハイブリッド構造を構成することに留意されたい。この専用の構造によってフォークライニングの曲げ強さを組み合わせることが可能になり、ここから非常にコンパクトなキャリパー、接続ロッドおよび車輪ピンリンク機構を継承することもできる。このコンパクトさは、スロット136の存在により達成される。
【0094】
実際に、スロット136がなければ、ストロークに対応する部分を関連するライニング内に挿入しなければならないため、圧縮中に固定されたままである軸方向上端部96に対応する取り付け点をかなり高くする必要がある。
【0095】
さらに、ばね120は空気中で機能し、従来のフォークのように油中では機能しないため、スロット136は心配なく開けることができることに留意されたい。スライダまたはスライドブッシュ148は、従来のフォークのステムとライニングとの間で起こるように密閉されておらず、例えばプラスチック製の単純なリングであり、解決策の単純さと経済性で有利になるように、天候に曝されて機能する。
【0096】
好ましくは、関節型四辺形部20の上部交差部材24´および下部交差部材24´´の横方向端部40、44は、直立部48´、48´´の内側に形成された横方向座部152の内側に少なくとも部分的に収容される。
【0097】
好ましくは、各ガイドホイール88には、対応する車輪10´、10´´の制動手段154が取り付けられている。
【0098】
例えば、制動手段154は、ディスクブレーキキャリパを備えていてもよい。本発明の目的のために、制動手段154は、いかなるタイプのものであってもよい。好ましくは、制動手段154は、各車輪10´、10´´のリム84によって画定された空間80の内側に適合するように位置決めされ、かつ寸法決めされる。
【0099】
好ましくは、ガイドホイール88は、例えばライニング126または外側ジャケット132上に作られた専用のアイレット155を備え、制動手段154をガイドホイール88に取り付けることを可能にする。
【0100】
さらに、ガイドホイール88のライニング126または外側ジャケット132には、ホイールアタッチメント94が各車輪10の回転ピン68を回転可能に支持するように作られている。
【0101】
好ましくは、支持ブラケット92には、モータ車両の関連するハンドルバーに運動学的に接続された固定操舵タイロッド156が取り付けられている。例えば、操舵タイロッド156は、ヒンジまたはボールジョイント160を介在させて各ブラケット92に接続することができる。
【0102】
上述したように、本発明によるモータ車両4は、少なくとも1つの後部駆動輪14を備え、可能な実施形態によれば、車両は、後車軸12に2つの後部駆動輪14を有する。
【0103】
例えば、モータ車両が4輪車であるような実施形態では、後車軸12の後部駆動輪14は、前輪10に関して上述したような関節型四辺形部20によって、互いにおよび後車軸フレーム13に接続される。
【0104】
この説明から理解されるように、本発明は、先行技術に言及された欠点を克服することを可能にする。
【0105】
有利には、本発明は、従来技術と比較して車両の動的挙動を改善する。
【0106】
実際には、前輪の支持の特定の配置およびアーキテクチャにより、前輪の瞬時回転の中心を長手方向に対してかなり後方に移動させることが可能になる。
【0107】
これにより、従来型の伸縮自在のステムフォークを使用して得られたものに匹敵するサスペンションの沈み込みをより良好に制御することができる。言い換えれば、サスペンションの沈み込みは均一で漸進的であり、車両の前車部は運転者に安定感と自信を伝える。
【0108】
さらに、前輪の支持構造の傾斜式の組立体は、ガイドホイールに収容されたばねとダンパを備えるサスペンションが応力を受けて曲がることを防止し、このことはサスペンションのライニングとステムとの間の相対滑りを容易にし、ジャミング現象を防止する。したがって、傾斜によって、サスペンションがフレームに対する車輪の揺動運動に追従し、撓むことなく、したがってジャミングなしで傾斜することができるため、サスペンションの曲がりおよびジャミングを埋め合わせるためのサスペンションのオーバーサイズを回避することが可能となる。
【0109】
この影響は制動時にさらに明らかであり、関与する相当の力でサスペンションが再び撓む傾向がなく、サスペンションはそれ自体が自由に傾斜、延出および圧縮することができ、アスファルトの粗さを写し取って前車部における安全感と自信を運転者に伝える。
【0110】
曲げ荷重に耐える必要がないため、より小さく軽いサスペンションを使用することができる。
【0111】
サスペンションのコンポーネントの寸法が小さくなると、前車部の質量が減少し、したがって傾斜する車両のハンドリング性が良好になり、傾くときに下がる性質が改善される。
【0112】
また、図示されているように、車輪の操舵軸は、その回転ピンに比べて長手方向でかなり後方にある。
【0113】
このようにして、操舵時に、車両の中心面に向かって車輪の後方のフットプリントがより小さくなる。このようにして、車輪の同じ操舵角に対して、前輪のそれぞれの後部が車両の前車部フレームと干渉することなく、比較的小さな車輪軌道、すなわち前輪間の横方向距離を用いることが可能である。
【0114】
したがって、車両の全体的な横方向フットプリントを縮小するように控えめな車輪軌道を用いることが可能である。縮小された前輪軌道を用いることは、傾きまたは傾斜の優れた性質を有する機敏な車両を得るのに役立つ。
【0115】
さらに、操舵リンク機構を前車部からさらに後退させ、したがって保護することが可能である。さらに、操舵リンク機構がさらに後方に配置され視界から外れるため、外部の観察者から隠すこともできる。
【0116】
さらに、操舵車軸および関連する機構/操舵レバーが長手方向に後方へ移動することによって、コーナリングと加速/制動の両方の場合において車両の力学を改善するために、いわゆる質量の集中化に寄与するように前車部の質量をさらに後退させることも可能である。
【0117】
加えて、路面の粗さに対応するための前車部の能力を向上させるために、本発明による前車部のばね上質量が低減されることに留意すべきである。
【0118】
さらに、前輪の支持構造は、長手方向と横方向の両方において極めて剛性であることに留意すべきである。
【0119】
実際には、横方向には、決定的に頑丈であることが証明されており車輪が同じ角度で傾くまたは傾斜することを可能にする、関節型四辺形部構造が設けられている。
【0120】
なお長手方向には、一方では適切な傾斜でガイドホイールに拘束され、他方では横方向の四辺形の剛性構造に拘束されるブラケットを含むため、極めて剛性の傾斜構造が使用される。このようにして、構造の傾斜によって、長手方向の力がブラケットの剛性構造に肩代わりされ、これを介して関節型四辺形部に肩代わりされる。
【0121】
さらに、本発明の前車部は特にコンパクトであるため、各車輪の支持機構、サスペンションおよび操舵のすべてが車輪のリムのフットプリント内に含まれることが有利である。このように、明らかな審美的利点の他に、各車輪の内側に遮蔽されるこれらのコンポーネントによって引き起こされる空力抵抗が低減されるため、力学的利点も得られる。
【0122】
前輪の負荷に対するバランスは対をなす前輪に等しい負荷で得られるため、説明した解決策は相互接続されたサスペンションの場合に該当する。負荷の伝達は、四辺形を介して、したがって車両全体の慣性をも含む四辺形の慣性によって行われ、したがって慣性に関連するエンティティの遅延をもたらす。
【0123】
実際には、対になった車輪の間に介在する慣性は、相互接続された車輪を有する解決策を独立した車輪を有する方へ動かし、快適性を優先し、他の方法では減衰されない車輪上でトリガされ得るあらゆる共振現象を打ち消すように作用する。
【0124】
したがって、本発明によるモータ車両は、2つの対になった前輪の存在により、2輪を有するモータ車両よりも高い安定性だけでなく、2輪のみを有するモータ車両に典型的である優れたハンドリング性と容易な傾きを保証することができる。
【0125】
さらに、上述したように、関節型四辺形部の直立部の上端部および下端部は、それぞれの前輪の回転ピンの上下に配置され、従来技術の解決策で生じるように完全にはその上にはない。これは、各車輪と、サスペンションを備える関節型四辺形部との間の接続の剛直さが、先行技術の前述の解決策でもたらされるよりもより剛性であり、制動力または非対称的な衝撃によって前輪の交互共振が優勢になり得る可能性をより少なくするのに役立つことを意味する。したがって、本発明は、軽量であるが安全で正確でもあり、前車部において運転者に安全感を伝える車両を提供するのに全般的に役立ち、振動やハンドルバーのわずかな動きをユーザに伝達しない。
【0126】
当業者は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲内にとどまりつつ、偶発的かつ特定の要件を満たすように、上述の解決策に多くの修正および変形を行うことができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図7
図8
図9
図10
図11
図12