(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】吸入可能な液体のための吸入器デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 15/06 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61M15/06 A
(21)【出願番号】P 2018522827
(86)(22)【出願日】2016-07-19
(86)【国際出願番号】 AU2016050637
(87)【国際公開番号】W WO2017011866
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-18
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518021919
【氏名又は名称】メディカル、ディベロップメンツ、インターナショナル、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVELOPMENTS INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイク、ゴールディング
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、リナカー
(72)【発明者】
【氏名】ビクター、レギン
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4175556(US,A)
【文献】特開2005-218498(JP,A)
【文献】米国特許第02445476(US,A)
【文献】実開平01-066898(JP,U)
【文献】国際公開第2010/017586(WO,A1)
【文献】米国特許第3565071(US,A)
【文献】特表2014-504852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/06
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への送出のためのメトキシフルラン液を収容する吸入器デバイスであって、前記吸入器デバイスが、
(1)空気入口端部及びマウスピース端部を有する密封された長尺本体と、
(2)前記長尺本体の前記空気入口端部を密封する
ように構成される第1の
再密封可能なエンドキャップと、
(3)前記長尺本体の前記マウスピース端部を密封する
ように構成される第2の
再密封可能なエンドキャップと、
(4)メトキシフルラン液が予め充填された受動蒸発支持材料と、
を備え、
前記メトキシフルラン液が貯留時に蒸気を形成するにつれて、前記長尺本体は、前記第1の端部シール及び前記第2の端部シールの開放時に貯留された蒸気を患者に直接に投与するために利用できるように蒸気チャンバを形成し、
前記第1の
再密封可能なエンドキャップは、少なくとも1つの空気入口溝又は穴を更に備
え、前記空気入口溝又は穴は、前記空気入口のサイズが調整可能なように前記再密封可能な調整可能なエンドキャップが開かれる場合に、空気入口開口を形成するように適応され、
前記第2の
再密封可能なエンドキャップは、患者の口内への挿入のために構成さ
れ、前記第2の
再密封可能なエンドキャップはマウスピースチャンバを具備して:
前記第2の
再密封可能なエンドキャップが閉じられる場合に、前記蒸気チャンバが前記マウスピースチャンバからシールされ;
前記第2の
再密封可能なエンドキャップが開かれる場合に、蒸気が、前記マウスピースチャンバの側壁に位置するベントを介し、前記マウスピースチャンバ内に放射状に内側に流れる
ようになっている、吸入器デバイス。
【請求項2】
前記第1の
再密封可能なエンドキャップは、前記デバイスの前記長尺本体と回転可能に係合するように取り外し可能に締結される請求項1に記載の吸入器デバイス。
【請求項3】
前記第1の
再密封可能なエンドキャップは、前記空気入口開口を閉じるように第1の方向に回転させられるように構成され、前記空気入口開口を開くように第2の方向に回転させられるように構成される請求項2に記載の吸入器デバイス。
【請求項4】
前記第2の
再密封可能なエンドキャップの外側形状は、前記マウスピースチャンバの吸入開口に向か
う請求項1~3のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項5】
前記第2の
再密封可能なエンドキャップは、前記デバイスの前記長尺本体と回転可能に係合するように取り外し可能に締結される請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項6】
前記第2の
再密封可能なエンドキャップは、前記
マウスピース端部を密封するように第1の方向に回転させられるように構成され、前記
マウスピース端部を開くように第2の方向に回転させられるように構成される請求項5に記載の吸入器デバイス。
【請求項7】
前記第2の
再密封可能なエンドキャップは、前記マウスピース端部が閉じられる場合に緊密な密封をもたらすように構成される圧縮性材料と蒸気不透過性フィルム又は箔を具備する詰め物挿入体を備える請求項1~6のいずれか一項に記載の吸入器デバイス。
【請求項8】
前記受動蒸発支持材料は、ポリプロピレンウィッキングフェルトである請求項1に記載の吸入器デバイス。
【請求項9】
前記受動蒸発支持材料は、3以上の長手方向経路を形成するように前記蒸気チャンバの中心部から内面まで延びる3以上の半径方向アームを備える請求項1に記載の吸入器デバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、前記密封された長尺本体、前記第1の
再密封可能なエンドキャップ、前記第2の
再密封可能なエンドキャップ、及び前記メトキシフルラン液が予め充填された前記受動蒸発支持材料のみから構成される請求項1に記載の吸入器デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能な液体のための吸入器デバイスに関し、特に、ハロゲン化揮発性液体などの吸入可能な揮発性液体の貯留及び/又は患者への投与のための、吸入器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
活性物質を備える又はそれ自体が活性物質である吸入可能な液体の貯留及び患者への投与は、一般に、課題を与える。患者の好み及び病院環境又は他の環境での必要に応じた自己投与又は投与の容易さに起因して、治療物質又は医薬物質などの活性物質は、しばしば、経口送出できるように錠剤及びカプセルの形態で、鼻送出できるようにスプレーの形態で、及び、経静脈的な送出ができるように液体製剤の形態で形成される。
【0003】
例えば呼吸器疾患を治療又は緩和するために患者の肺に活性物質を投与することが有利な場合、活性物質は、単独で又は鼻腔内経路と組み合わせて経口吸入経路により投与される場合がある。適した吸入器デバイスとしては、例えば、定用量吸入器及び乾燥粉末吸入器を挙げることができる。これらのタイプの経口吸入器デバイスは、一般に、活性物質を肺における所望の作用部位に送出するための加圧手段を必要とする。加えて、活性物質を含有する又はそれ自体が活性物質である液体は、通常、吸入経路による送出に適するように投与ポイントで吸入可能な呼吸用の形態への変換を要する。噴霧又はエアロゾル化により呼吸用のサイズの液滴へ変換するなど、液体を呼吸用の形態へ変換すること、或いは、蒸気を形成するために加熱することは、移動する機械的な加熱手段及び/又は電気手段を送出装置が含む必要があり、これにより、設計、製造の複雑さ、エンドユーザのコスト、操作性、及び/又は、患者の使用が増大する。
【0004】
活性物質としての又は活性物質を備える揮発性液体の使用が知られている。1つのそのような例はハロゲン化揮発性液体である。ハロゲン化揮発性液体は、麻酔(健忘、筋肉麻痺、及び/又は、鎮静を含む)及び/又は鎮痛を誘発する及び/又は維持するのに有用であると見なされてきたため、麻酔薬及び/又は鎮痛薬として有用となり得る。フッ素化物の麻酔特性は少なくとも1946年以来から知られてきた(Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204)。この後、1950年代にフルオロオクテン、ハロタン、及び、メトキシフルランが臨床用途に導入され、その後、現在幾つかの国で臨床的に使用されているエンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、及び、デスフルランが開発された(Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3)。
【0005】
ハロゲン化揮発性液体は、全身麻酔のために使用される場合、気化器及び呼吸可能なキャリアガスの流れを含む送出システムを介して陽圧下で患者に送出される場合がある。より最近では、局所麻酔又は局部麻酔及び非吸入経路による送出で使用するためにハロゲン化揮発性液体が形成されてきた。例としては、皮内又は静脈内注射用微小液滴(例えば米国特許第4,725,442号明細書);髄腔内又は硬膜外送出のための水溶液(例えば、国際公開第2008/036858号パンフレット);スワブ、液滴、スプレー、又は、経粘膜送出のためのエアロゾル(例えば国際公開第2010/025505号パンフレット);経皮的、局所、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、神経周囲浸潤、くも膜下腔内、又は、硬膜外送出用の揮発性麻酔薬の揮発性、気化、又は、蒸発を減少させるのに有効な量の抽出溶媒を含む水性ベースの溶液(例えば国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2009/094459号パンフレット);医療用パッチへの製剤に適した組成物(例えば国際公開第2014/143964号パンフレット);局所、髄腔内、硬膜外、経皮的、局所、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、及び、皮下送出のための溶液、懸濁液、クリーム、ペースト、油、ローション、ゲル、泡、ヒドロゲル、軟膏、リポソーム、エマルジョン、液晶エマルジョン、及び、ナノエマルジョンとしての製剤に適した組成物(例えば、国際公開第2008/070490号パンフレット、国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2010/129686号パンフレット)、及び、安定した注入可能な液体製剤(国際公開第2013/016511号パンフレット)としての製剤が挙げられる。
【0006】
揮発性液体の安全な貯留及び取り扱いのための主な考慮事項は、一般に、蒸気圧の上昇、容器のロバスト性、及び、容器シールの完全性を含む。また、揮発性液体の化学的性質は、活性物質が貯留時に容器材料を浸透する、可溶化する、或いはさもなければ、容器材料と反応することができれば重要でなり得る。ハロゲン化揮発性液体のための多数の貯留容器が、キャップ付きボトル大型タンク、出荷用容器などのガラスバイアルの代替物としての硬質ポリマー容器(例えば、国際公開第1999/034762号パンフレット、国際公開第2012/116187号パンフレット);液体麻酔薬を麻酔機又は気化器へ送出するための流体接続用のねじ付きスパウトを伴うガスケットレス弁アセンブリ及び柔軟な容器を備えた硬質ポリマーボトル(例えば、国際公開第2010/135436号パンフレット、国際公開第2013/106608号パンフレット、国際公開第2013/149263号パンフレット、国際公開第2015/034978号パンフレット);貯留された液体麻酔薬をスロット付き管を介して気化器に送出するためのキャップ付き膜を有する容器(国際公開第2009/117529号パンフレット);及び、蒸気バリア特性又は容器不活性を与える又は高めるための材料で随意的にコーティングされた硬質な高分子容器及びアルミニウム容器(例えば、国際公開第2002/022195号パンフレット、国際公開第2003/032890号パンフレット、国際公開第2010/129796号パンフレット)を含めて記載されてきた。
【0007】
ハロゲン化揮発性液体のような吸入不可能な形態の揮発性液体及び該揮発性液体を貯留するための容器を形成する際の様々な進歩にもかかわらず、吸入可能な形態の揮発性液体及び揮発性液体を貯留する及び/又は患者へ投与するための装置の必要性が依然として残る。
【0008】
吸入可能な医薬品のための新規な吸入器を設計しようとする試みは一般的に進行中である。例えば、国際公開第2008/040062号パンフレットは、吸入可能な液体及び粉末状固体を貯留する及び/又はユーザの口内又は鼻内に送出するための複雑な構造及び可動部品に依存する多様な吸入器デバイスの概念を記載する。記載される様々な装置は、加圧キャニスタ、アンプル、バイアル、及び、プランジャの形態の1つ又は2つの薬剤容器を保持するようになっている。装置は、装置の内壁に対して装置の外壁をスライドさせて薬剤容器から液体薬剤を送出することによって作動されるものとして記載される。幾つかの実施形態において、装置は、空気経路を開放するように展開する可動マウスピースを含む。また、この装置は、一方又は両方の吸気及び呼気の一方向の空気流を与えるための1つ以上の一方向弁を含むものとしても記載される(吸気及び呼気の流れを方向付ける一連の一方向弁も、一般に、国際公開第1997/003711号パンフレットに記載される装置の参照により組み入れられる国際公開第2007/033400号パンフレットに記載されている)。
【0009】
使用のために必要とされる際、国際公開第2008/040062号パンフレットの装置は、打ち抜き手段、すなわち、壊れやすい端部を有する投薬容器の2つの壊れやすい端部をそれぞれ穿孔するための2つのパンチによって薬剤を放出することができると主張されているが、加圧手段(例えば加圧キャニスタによる);壊れやすい手段(例えばストライカでアンプルを破裂させることによる又は壊れやすい膜又はバイアルのシールをパンチ手段で打ち抜くことによる);粉砕可能な手段(例えばバイアルをプランジャで粉砕することによる);取り外し手段(例えばバイアルからねじを外したキャップを取り除くことによる);及び、プランジング手段(例えばプランジャバレルから薬剤を押し込むことによる)を含む様々な他の手段が一般に記載される。
【0010】
しかしながら、ハロゲン化揮発性液体のような吸入可能な液体は、蒸気が蒸発し得る有効な空気チャンバを必要とするとともに、患者への送出のために空気/蒸気チャンバを通る効果的な空気流を可能にする。したがって、国際公開第2008/040062号パンフレットの例えば
図48A、48B、48C、49A、49B、50A、50B、51A、51B、56A、56B、57,58A、58B、58C及び58Dに記載されるような実施形態は、蒸発手段(又は芯)が液体貯留容器自体の壁によって放出された液体に効果的に曝されることが防止されるので、実際には機能しないと予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4,725,442号明細書
【文献】国際公開第2008/036858号パンフレット
【文献】国際公開第2010/025505号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094460号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094459号パンフレット
【文献】国際公開第2014/143964号パンフレット
【文献】国際公開第2008/070490号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129686号パンフレット
【文献】国際公開第2013/016511号パンフレット
【文献】国際公開第1999/034762号パンフレット
【文献】国際公開第2012/116187号パンフレット
【文献】国際公開第2010/135436号パンフレット
【文献】国際公開第2013/106608号パンフレット
【文献】国際公開第2013/149263号パンフレット
【文献】国際公開第2015/034978号パンフレット
【文献】国際公開第2009/117529号パンフレット
【文献】国際公開第2002/022195号パンフレット
【文献】国際公開第2003/032890号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129796号パンフレット
【文献】国際公開第2008/040062号パンフレット
【文献】国際公開第1997/003711号パンフレット
【文献】国際公開第2007/033400号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204
【文献】Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を与える、吸入可能な液体の貯留及び患者への投与のための新規な吸入器デバイス、特に、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどのハロゲン化揮発性液体を送出するための吸入器を提供する。この装置は、最低限3つの製造部品(吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を除く)を用いて吸入可能な液体を貯留及び投与することができる。この装置は、個別に製造された容器内に液体を貯留する必要性を回避することにより、輸送コスト、保管コスト、及び、廃棄コスト、並びに、材料廃棄を更に減少させることもできる、使いやすい、予め充填された(すなわち、いつでも使用できる状態にある)、容易に持ち運びできる、低コストで製造される装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置が、
(1)第1の端部及び第2の端部を有する密封された長尺本体であって、前記密封された長尺本体が再密封可能、部分的に再密封可能、又は、再密封不可能である、長尺本体と、
(2)前記長尺本体の前記第1の端部を密封するための第1の端部シールと、
(3)前記長尺本体の前記第2の端部を密封するための第2の端部シールと、
(4)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料と、
を備え、
前記第1の端部シール及び前記第2の端部シールが再密封可能な端部シール又は再密封不可能な端部シールから独立に選択され、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれて、前記長尺本体は、前記第1及び第2の端部シールの開放時に貯留された蒸気を患者に直接に投与するために利用できるように蒸気チャンバを形成する、吸入器デバイスが提供される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置が、
(1)第1の端部及び第2の端部を有する密封された長尺本体であって、密封された長尺本体が再密封可能、部分的に再密封可能、又は、再密封不可能である、長尺本体、
(2)長尺本体の第1の端部を密封するための第1の端部シール、
(3)長尺本体の第2の端部を密封するための第2の端部シール、及び、
(4)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料、
のみから成り、
第1の端部シール及び第2の端部シールが再密封可能な端部シール又は再密封不可能な端部シールから独立に選択され、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれて、長尺本体は、第1及び第2の端部シールの開放時に貯留された蒸気を患者に直接に投与するために利用できるように蒸気チャンバを形成する、吸入器デバイスが提供される。
【0016】
本発明の第1及び第2の態様に係る1つの実施形態では、密封された長尺本体が再密封可能であり、また、第1及び第2の端部シールがいずれも再密封可能である。別の実施形態では、密封された長尺本体が再密封不可能であり、また、第1及び第2の端部シールがいずれも再密封不可能である。更なる他の実施形態では、密封された長尺本体が部分的に再密封可能であり、また、第1の端部シールが再密封可能な端部であり、第2の端部シールが再密封不可能な端部であり、逆もまた同様である。
【0017】
第1及び第2の態様に係る1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。好ましい実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】メトキシフルランを投与するために現在使用されるGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)と称される従来技術の吸入器デバイスを示す。
【
図2】第1の再密封可能な密封端部及び第2の再密封可能な密封端部を備える本発明の実施形態に係る吸入器デバイスの2つの例(
図2A及び
図2B)を示す。
【
図3A】
図2Aの吸入器デバイスを上方から見た図であり、開放位置又は「作動」位置にある調整可能エンドキャップの形態を成す再密封可能な第2の密封(空気入口)端部の空気入口穴への空気取り入れ方向を示す(
図3A)。
【
図3B】調整可能エンドキャップが閉鎖位置又は「密封」位置にある
図3Aに示される装置の断面図である。
【
図5】上から見たときの図示のような調整可能マウスピースエンドキャップ(
図5B)と嵌め合い係合するようになっている雄ねじ山構成(
図5A)を例示するための
図2Bの吸入器デバイスの長尺本体を示し、また、
図5D(
図5E)の調整可能マウスピースエンドキャップの断面
図A-Aを含む雌ねじ山構成(
図5C及び
図5D)を例示するための線図を示す。
【
図6】2つの空気入口穴(
図6B)又は4つの空気入口穴(
図6C)を有する調整可能空気入口エンドキャップと嵌め合い係合するようになっている雄ねじ山構成(
図6A)を例示するための
図2A又は
図2Bの吸入器デバイスの長尺本体を示す。
【
図7】第1の再密封不可能な密封端部と第2の再密封不可能な密封端部とを備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図7A)を示し、第1及び第2の再密封不可能な密封端部は同じである。再密封不可能な密封端部の拡大図(
図7B)及び斜視図(
図7C)が示される。
【
図8】投与モードにおける第1の再密封不可能な密封端部と第2の再密封不可能な密封端部とを備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図8A及び8B)を示す。
【
図10】3つ以上の長手方向導管を備える本発明の一実施形態に係る受動蒸発支持材料の一例の斜視図(
図10A)及び上面図(
図10B)を示し、導管は、長尺本体の内面と共に受動蒸発支持材料によって形成される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
吸入可能な液体を投与するために役立つ吸入器デバイスは、一般に、患者に活性物質を送出するために受動的又は能動的な手段のいずれかによって作動すると考えられ得る。能動的手段を有する吸入器デバイスは、例えば、活性物質を噴霧する、気化する、及び/又は、一般に送出するために、加圧手段、移動手段、機械的手段、加熱手段、及び/又は、電気的手段を含んでもよい。これに対し、受動的手段を有する吸入器デバイスは、周囲条件での活性物質の気化又は蒸発、及び、活性物質を送出するための患者の呼吸のみに依存する。
【0020】
Analgizer(商標)吸入器デバイス(Abbott Laboratories Corporation)は、吸入可能な液体を送出するために受動的手段によって作動する装置の例である。USPTO TESSのデータベースによれば、Analgizer(商標)は、吸入麻酔の自己投与の管理のための吸入器に関して商標登録されて現在失効している商標であり、1968年に初めて使用された。Analgizer(商標)は、非常に単純な装置であり、マウスピースとポリプロピレンの吸収芯とを有し、断面で見て「スイスロール」形状に強固に巻かれた白い円筒形のポリエチレン開放端チューブから成っていた。吸入麻酔薬、すなわち、メトキシフルラン(15mL)が、使用直前に、吸入器の開放端の基部に流し込まれて、強固に巻回された芯上へ注がれた。患者は、その後、マウスピースを通して吸入することによって液体麻酔薬を自己投与することができた。
【0021】
Green Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)は、1990年代に開発され、それ以来、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで使用されてきた(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)。Green Whistle(商標)装置は、その設計の簡素さにおいてはAnalgizer(商標)と同様であるが、患者の呼気時の装置からの薬剤蒸気損失を防ぐための基端部の一方向弁と、吐き出された薬剤蒸気を濾過するためにマウスピースの希釈穴に外部から嵌め込まれるように設計される活性炭(AC’)チャンバとを含めるなど、特定の機能的改善を含む。基端部に対する付加的な設計変更は、送出されるべき薬剤用量を貯留するために使用されるガラスバイアルからのキャップの除去を助けるためのキャップラグの導入、断面で見て「S形状」芯上へ注がれる液体の広がりを促進するためのドーム、又は、ドームの代わりに、呼吸可能なガスラインの取り付けを可能にしてガスを装置に通すように方向付けるための入口ニップルを含んでいた。Green Whistle(商標)装置は、一人の患者の使用を目的として設計される。
【0022】
Methoxyflurane(Penthrox(登録商標)/(商標)、Medical Developments International Limited)は、モルヒネ及びフェンタニルなどの一般的な鎮痛剤に代わる非麻薬性鎮痛剤、すなわち非オピオイド鎮痛剤を提供する。また、メトキシルフランは、経口錠剤形態で又は経静脈的に患者に投与される鎮痛剤に代わるものを与え、したがって、臨床的状況、外科的状況(例えば術前及び術後)、及び/又は、緊急の状況において(例えば救急診療科及びトリアージ管並びに救急医療隊員や捜索救助隊などの第1応答者により)迅速な痛みの軽減が求められるときに特に有用となり得る。しかしながら、Green Whistle(商標)装置は、現在、メトキシフルランを投与するために市販されている唯一の装置である。装置の使用説明書によれば、投与者は、メトキシフルランボトルを直立状態に保持して、吸入器の基部を使用し、ボトルキャップを緩め、その後、吸入器を45°の角度に傾けてボトルの内容物を基部に流し込む前に装置を回転させつつ手でキャップを取り外すことが求められる。随意的にACチャンバが事前に又は後に外部から装置に取り付けられてもよい。装置が有効である間に、ステップ数及び別個の構成要素の数は、例えば高ストレス状況及び/又は緊急状況において投与者又は自己投与者にとって取り扱い上の困難をもたらす場合がある。
【0023】
本発明は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどの吸入可能な液体の貯留及び患者への投与のための新規な吸入器デバイスを提供し、この装置は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を有する。
【0024】
定義
本明細書中において別段に定義されなければ、以下の用語は、以下の一般的な意味を有すると理解される。
【0025】
「活性物質」とは、治療物質及び非治療物質、並びに、それらを含む化合物、製剤、及び、組成物のことである。
【0026】
「緩和する」、「緩和」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を和らげる、少なくする、軽減する、良くする、又は、改善することを指す。
【0027】
「送出用量」とは、患者に投与するための吸入可能な液体又は活性物質の用量を指す。
【0028】
「フィルタ」、「フィルタリング」、及び、その変形は、呼気時に患者の呼気から吸入可能な揮発性液体蒸気を吸収、吸着、捕獲、捕捉、除去、掃去、又は、部分的又は完全に除去できる物質の能力を指す。
【0029】
「ハロゲン化揮発性液体」とは、(i)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を含む、或いは(ii)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を備える活性物質を含む活揮発性液体のことである。幾つかの実施形態では、ハロゲン化炭化水素、特にフッ素化炭化水素、及び、ハロゲン化エーテル、特にフッ素化エーテルが好ましい場合がある。幾つかの実施形態では、ハロゲン化エーテルが特に好ましい場合があり、ハロゲン化エーテルとしては、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「吸入可能な液体」とは、活性物質を含む液体、又は、それ自体が活性物質であって容易に吸入可能であるか又は患者によって吸入され得る或いは吸入されるようになっている液体のことである。幾つかの実施形態では、吸入可能な揮発性液体、特にハロゲン化揮発性液体が好ましい。
【0031】
「吸入」、「吸入可能」、及び、その変形は、例えば、これに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体の患者による取り入れを指し、経口吸入及び鼻吸入の両方を含む。幾つかの実施形態では、経口吸入が特に好ましい。
【0032】
「患者」とは、人の患者及び動物の患者の両方を指す。幾つかの実施形態では、人の患者が特に好ましい場合がある。したがって、患者への言及は、吸入可能な液体が投与される人又は動物を意味すると理解され、人の患者の場合には、自己投与による投与を含むと理解される。
【0033】
「医薬物質」とは、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を治療するための薬剤、又は、薬剤を含む化合物、製剤、又は、組成物のことである。医薬物質という用語は、治療物質又は活性物質と互換的に使用することができる。
【0034】
「呼吸」、「呼吸の」、及び、それらの変形は、例えばこれに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体、及び、活性成分などを患者が呼吸する、吸い込む、吸入する、及び、吐き出す行為を指す。
【0035】
「室温」とは、例えば10℃~40℃であってもよいが、より一般的には15℃~30℃の周囲温度のことである。
【0036】
「治療物質」とは、患者を治療することができる又は患者に治療的又は医学的な利益を提供する、或いは、患者における治療的使用のための規制及び/又は市場流通承認を有する又は必要とする活性物質、又は、活性物質を含む化合物、製剤、又は、組成物(生物学的な化合物、製剤、及び、組成物を含む)のことである。治療物質は医薬物質を含む。これに対し、「非治療物質」は、例えば無煙たばこ製品及び電子たばこのような治療的使用のための規制及び/又は販売承認を有さない又は必要としなくてもよい、或いは、認知された又は同定された治療的使用を有さないが、例えば栄養補助食品など、一般的な健康、幸福、又は、生理学的利益などの非治療的な理由のために患者により使用される場合がある活性物質を意味すると理解される。
【0037】
「治療する」、「治療」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因の緩和、調節、調整、又は、停止を指す。幾つかの実施形態において、治療は、防御的治療又は予防的治療を含んでもよい。
【0038】
「揮発性液体」とは、液体形態で主に存在するが、例えばそれらが室温及び通常の大気圧において周囲条件下で蒸気形態で部分的に存在するように蒸気を容易に形成し、蒸発し、又は、気化する物質のことである。
【0039】
実施形態
ここで、非限定的な例に関連して実施形態を説明する。
【0040】
吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置が、
(1)第1の端部及び第2の端部を有する密封された長尺本体であって、密封された長尺本体が再密封可能、部分的に再密封可能、又は、再密封不可能である、長尺本体と、
(2)長尺本体の第1の端部を密封するための第1の端部シールと、
(3)長尺本体の第2の端部を密封するための第2の端部シールと、
(4)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料と、
を備え、
第1の端部シール及び第2の端部シールが再密封可能な端部又は再密封不可能な端部から独立に選択され、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれて、長尺本体は、第1及び第2の端部シールの開放時に貯留された蒸気を患者に直接に投与するために利用できるように蒸気チャンバを形成する、吸入器デバイスが提供される。
【0041】
他の実施形態では、吸入可能な液体の貯留及び患者への送出のための吸入器デバイスであって、前記装置が、
(1)第1の端部及び第2の端部を有する密封された長尺本体であって、密封された長尺本体が再密封可能、部分的に再密封可能、又は、再密封不可能である、長尺本体、
(2)長尺本体の第1の端部を密封するための第1の端部シール、
(3)長尺本体の第2の端部を密封するための第2の端部シール、及び、
(4)吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料、
のみから成り、
第1の端部シール及び第2の端部シールが再密封可能な端部又は再密封不可能な端部から独立に選択され、更に、吸入可能な液体が貯留時に蒸気を形成するにつれて、長尺本体は、第1及び第2の端部シールの開放時に貯留された蒸気を患者に直接に投与するために利用できるように蒸気チャンバを形成する、吸入器デバイスが提供される。
【0042】
1つの実施形態では、密封された長尺本体が再密封可能であり、また、第1及び第2の端部シールがいずれも再密封可能である。貯留モードでは、再密封可能な端部シールが閉じられる。使用のために必要とされる際には、ユーザが吸入する際に装置を通る空気流経路をもたらして蒸気を蒸気チャンバからユーザに送出するために再密封可能な端部シールが開放される。
【0043】
1つの実施形態において、第1の端部シール及び第2の端部シールは、プラグ、エンドキャップ、又は、少なくとも1つの空気入口開口を備える調整可能エンドキャップから独立に選択される再密封可能な端部シールである。エンドキャップ及び調整可能エンドキャップは、例えばねじ山構成又はスナップ嵌合結合構成によって装置の長尺本体の残りの部分と回転可能に係合するように取り外し可能に締結されてもよい。プラグは、同じ方法で又は厳しい公差の嵌合によって長尺本体と取り外し可能に締結されてもよい。
【0044】
再密封可能な端部シールが調整可能エンドキャップである場合、空気入口穴は、例えば空気流経路を与えるように露出され得る溝又は穴によって、又は、長尺本体の溝又は穴と随意的に位置合わせできる溝又は穴によって、調整可能エンドキャップが開放されるときに多くの方法で調整可能エンドキャップに形成されてもよい。したがって、1つの実施形態において、再密封可能な端部シールは、溝又は穴から独立に選択される少なくとも1つの空気入口開口を備える調整可能エンドキャップである。
【0045】
装置が患者の使用のために必要とされる際、調整可能エンドキャップは、それが空気入口穴を完全に覆う閉鎖位置から、患者が吸入するにつれて蒸気を患者に送出するために空気が蒸気チャンバに流れ込んで受動蒸発支持材料の表面を横切ることができるようにする部分開放位置又は完全開放位置へと徐々に調整されてもよい。使用時、空気入口開口は、多くの方法で調整可能エンドキャップを開放することによって、例えば、長尺本体に対して調整可能エンドキャップを跳ね上げる、上方に引き上げる、ねじる、旋回させる、回転させる、又は、調整可能エンドキャップのねじを緩めることによって開放されてもよい。空気流経路は、部分的に開放された又は完全に開放された空気入口開口をもたらすために長尺本体に対して調整可能エンドキャップを跳ね上げる、上方へ引き上げる、ねじる、旋回させる、回転させる、又は、緩める度合いによって調整可能に制御されてもよい。
【0046】
再密封可能な端部シールは、随意的に、貯留モードのための装置の密封及び再密封を助けるための詰め物挿入体を備えてもよい。詰め物挿入体は、再密封可能な端部が閉じられるときに緊密なシールをもたらするのに役立つために圧縮性材料と蒸気不透過性フィルム又は箔とを備えてもよい。圧縮性材料の例としては、高分子発泡体又はLDPEなどのスポンジが挙げられるが、これらに限定されない。蒸気不透過性フィルムの例としては、PETなどの高分子フィルム、アルミニウム、ニッケル、及び、これらの合金などの金属箔が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、エンドキャップが随意的に詰め物挿入体を備える。
【0047】
他の実施形態では、密封された長尺本体が再密封不可能であり、また、第1の端部シール及び第2の端部シールが再密封不可能な端部シールである。使用のために必要とされる際には、ユーザが吸入する際に装置を通る空気流経路をもたらして蒸気を蒸気チャンバからユーザに送出するために再密封不可能な端部シールが不可逆的に開放される。再密封不可能な端部シールの例としては、クラウンシール(リングプルクラウンキャップを含む)及び蒸気不透過性フィルム又は箔を挙げることができるが、これらに限定されない。再密封不可能な端部シールは、例えば引っ張り、引き裂き、リッピング、剥離、穿孔、穴開け、又は、穿刺によって開放されてもよい。したがって、再密封不可能な端部シールは、随意的に、シールを開放するための引っ張り手段、引き裂き手段、リッピング手段、剥離手段、穿孔手段、穴開け手段、又は、穿刺手段を備えてもよい。1つの実施形態において、第1の端部シール及び第2の端部シールは、クラウンシール、蒸気不透過性フィルム、又は、箔から成るグループから独立に選択される再密封不可能な端部シールである。1つの実施形態において、再密封不可能な端部シールはクラウンシール、好ましくはリングプルクラウンキャップである。他の実施形態では、再密封不可能な端部シールが蒸気不透過性フィルム又は箔である。
【0048】
蒸気不透過性フィルムの例としては、高分子フィルム、金属箔(例えば、アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金など)、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又はラミネートフィルムなどの箔を含むこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム又は金属箔から選択される単一層である。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム、金属箔、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又は箔を含む組合せから選択される2つ以上の層を備えるラミネートフィルムである。ラミネートフィルムは、例えばLLDPEなどの適切な溶着可能な箔又は高分子フィルムから形成される溶着可能な層を備えてもよい。溶着可能な層は、ラミネートの層を一緒にシールすること及び/又は溶着可能な層を備える蒸気不透過性フィルムを装置に対してシールすることに役立ってもよい。溶着に適したプロセスとしては、熱溶着及び超音波溶着が挙げられる。
【0049】
1つの実施形態において、高分子フィルムは、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、高分子フィルムは、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、例えば二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)などの二軸延伸高分子を含むそれらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。1つの実施形態において、高分子フィルムは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。
【0050】
1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムはPETを備える。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、PETと、金属箔層、好ましくはアルミニウム箔層とを備える。1つの実施形態では、蒸気不透過性フィルムが金属化PET(Met PET)を備える。
【0051】
更なる他の実施形態では、密封された長尺本体が部分的に再密封可能であり、また、第1の端部シールが再密封可能な端部シールであり、第2の端部シールが再密封不可能な端部シールであり、逆もまた同様である。使用のために必要とされる際には、ユーザが吸入する際に装置を通る空気流経路をもたらして蒸気を蒸気チャンバからユーザに送出するために再密封可能な端部シールが開放されるとともに再密封不可能な端部シールが除去される。
【0052】
第1の端部シール及び第2の端部シールは同じであってもよく又は異なっていてもよい。第1及び第2の端部シールが同じである場合、装置は、使用のためにいずれかの方向に向くようになっていてもよい。しかしながら、一方の密封端部は、特に、少なくとも1つの空気入口開口を備える空気入口端部として機能するようになっていてもよく、また、他方の密封端部は、特に、少なくとも1つの蒸気吸入開口を備えるマウスピースとして機能するようになっていてもよく、この場合、空気入口端部及び装置が使用のために特定の向きを必要としてもよい。例えば、一方の密封端部は、特に、マウスピース端部として機能するようになっていてもよく、少なくとも蒸気吸入開口へ向けて先細る部分を備えてもよい。
【0053】
したがって、装置が使用される際、一方の端部は、少なくとも1つの空気入口開口を備える空気入口端部として機能し、また、他方の端部は、少なくとも1つの蒸気吸入開口を備えるマウスピース端部として機能することが理解される。長尺本体は、随意的には、使用時に空気入口端部の空気入口開口と部分的又は完全に位置合わせするようになっている1つ以上の開口、例えば溝又は穴を備えてもよい。長尺本体の端部が再密封可能な端部シールによって密封される場合、空気入口開口及び/又は蒸気吸入開口は、再密封可能な端部シールが開放されるとき或いはこれらの開口が長尺本体の開口と部分的に又は完全に位置合わせするときに装置を通る空気流経路をもたらしてユーザの吸入時に蒸気を蒸気チャンバからユーザに送出するように端部シールに独立に形成されてもよい。長尺本体の端部が再密封不可能な端部シールによって密封される場合、空気入口開口及び/又は蒸気吸入開口は、再密封不可能な端部シールが開放される又は除去されるときに装置を通る空気流経路をもたらしてユーザの吸入時に蒸気を蒸気チャンバからユーザに送出するように長尺本体の端部の周囲によって独立に形成されてもよい。
【0054】
本装置は、携帯可能ないつでも使用できる一体型の薬剤貯留送出装置をもたらすために吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料を備える。本装置は、メトキシフルラン用の従来の吸入器デバイスと比べて、例えば、緊急時、病院にいないとき、孤立した環境で、屋外環境で、スポーツしているとき、人道的支援において、及び/又は、現場作業環境で、迅速な痛みの軽減が必要とされるときに、容易な投与、特に自己投与をもたらす。
【0055】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。更なる他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。
【0056】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、蒸気チャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっており、その形態は、平面ライニング、蒸気チャンバ壁の部分ライニング、及び、蒸気チャンバ壁の全ライニングから成るグループから選択される。
【0057】
他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を蒸気チャンバを通じて形成するようになっている。少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できる断面形状の多数の例が想定されてもよく、そのうちの一部は以下の通りである。2つ、3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路は、例えば、これらに限定されないが、少なくとも2つの独立した空気流/蒸気経路を形成できるA形、B形、S形、Z形、数字2、数字5、及び、数字8、並びに、空気取り入れチャンバを通じて3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できるK形、M形、V形、W形、X形、Y形、及び、数字3などのアルファベットの文字又は1桁の数字から選択される断面形状を採用する受動蒸発支持材料によって形成されてもよい。
【0058】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている。経路は、受動蒸発支持材料それ自体を貫く独立した導管として形成されてもよく、又は、経路は、受動蒸発支持材料が蒸気チャンバの内面と接触することによって形成されてもよい。したがって、1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の長手方向導管を備え、この場合、導管は、受動蒸発支持材料内に形成され、又は、蒸気チャンバの内面と共に受動蒸発支持材料によって形成され、又は、それらの組合せである。1つの例が
図10に示されており、この場合、受動蒸発支持材料(27)は、3つ以上の長手方向導管(29)を形成するために中心部(27b)から蒸気チャンバ(28)の内面まで延びる3つ以上の
半径方向アーム(27a)を備える。3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている受動蒸発支持材料は、より小さいサイズの装置に特に適し得る。
【0059】
受動蒸発支持材料は、吸入可能な液体を吸収してそれを受動的に蒸気として放出するのに適した任意の材料から形成されてもよい。ウィッキング特性を有する材料が、本装置での使用に特に適した受動蒸発支持材料となり得る。ウィッキング特性は、一般に、引き出し、拡散、引張又は別の方法によるものであろうと、材料の初期接触点から材料の全体にわたってであろうと、及び/又は、液体が材料の露出された表面領域から蒸発するにつれてであろうと、液体を分配することによって、材料がその表面からの液体の蒸発率又は気化率を促進させる又は高めることができる能力を含むように理解される。したがって、1つの実施形態では、受動蒸発支持材料がウィッキング材料である。1つの実施形態では、ウィッキング材料がウィッキングフェルト又は多孔質高分子材料である。好ましい実施形態では、ウィッキング材料がポリプロピレンウィッキングフェルトである。
【0060】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランを貯留して投与するのに特に有用であると考えられる。したがって、1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。好ましい実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【0061】
本装置による患者への投与に適した吸入可能な液体の送出用量は、例えば、規制された承認用量を参照することによって決定されてもよい。鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの適切な送出用量は、一般に、15mL未満、好ましくは12mL未満である。1つの実施形態において、送出用量は、0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、2.5mL、3mL、3.5mL、4mL、4.5mL、5mL、5.5mL、6mL、6.5mL、7mL、7.5mL、8mL、8.5mL、9mL、9.5mL、10mL、10.5mL、11mL、11.5mL及び12mLから成るグループから選択される。1つの実施形態において、本装置による投与のためのメトキシフルランの送出用量は、1.5mL、3mL及び6mLから成るグループから選択される。
【0062】
装置は様々な材料から形成されてもよい。しかしながら、適した材料は、貯留及び/又は送出されるべき吸入可能な液体を基準にしてそれらの材料が化学的に不活性である、安定している、及び、不浸透性であるかどうかを考慮することによって選択されてもよい。材料は、FDAのような規制当局による医療グレード人体使用のための承認された基準を満たすかどうかを基準にするなどして医療機器用途へのそれらの適合性に基づき選択されてもよい。
【0063】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体を貯留して投与するのに特に有用であると想定される。したがって、1つの実施形態において、装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの貯留及び患者への送出に適合する1つ以上の材料から形成される。
【0064】
本装置を形成するのに適し得る材料の例としては、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(ナノ複合材料を含む)、金属(その合金を含む)、及び、それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム及びその合金を含む)、及び、それらの組合せから形成される。更なる実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料で随意的に内部が裏打ちされ又はコーティングされる。
【0065】
本装置の1つの利点は、吸入可能な液体の貯留及び投与に必要な個々の構成要素又は部品の数が最小であるという観点から操作が容易であることに加え、その比較的単純な製造及び低い製造コストであると考えられる。例えば、装置の長尺本体は、単一の製造部品として形成されてもよい。端部シールは、同じ又は異なる材料から別個に形成されてもよい。1つの実施形態において、長尺本体、第1の端部シール、及び第2の端部シールは、高分子材料、金属(例えば、アルミニウム、ニッケル)、及び、金属合金(例えば、ステンレス鋼)から成るグループから選択される材料から独立に形成される。
【0066】
高分子は、射出成形、ブロー成形、及び、押出プロセスによる本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムの大規模製造に特に適している。また、それらの高分子は、3D印刷技術による更に小さい規模での本装置の製造に適している。更に、高分子は、装置の廃棄後にリサイクルされてもよい。
【0067】
本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムを形成するのに用いる高分子の例としては、以下の高分子及びそれらの組合せ(共押出高分子を含む)、すなわち、ポリプロピレン(「PP」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、及び、高密度ポリエチレン(「HDPE」)を含むポリエチレン(「PE」)、二軸延伸ポリプロピレン(「BOPP」)、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテン、ポリシクロメチルペンテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)((「PETE」)としても知られる)、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(「PETP」)、ポリエチレンイソフタレート(「PEI」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリトリメチレンテレフタレート(「PTT」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(「PCT」)などの高分子フタル酸エステル;製造後にフッ素化される(例えば成形後フッ素化)高分子、フッ素化エチレン-プロピレン、クロロトリフルオロエチレン(「Kel-F」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含むフッ素化高分子;酢酸セルロース、ポリオキシメチレン(「POM」)を含むポリエステル、及び、ポリエチレンテレフタレートグリコール共ポリエステル(「PETG」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール改質体(「PCTG」)、及び、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタル酸(「PCTA」)などのコポリマーを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル;アモルファスナイロンを含むナイロン;ポリビニルアルコール(「PVA」)及びエチレンビニルアルコール(「EVOH」)を含むポリビニル;ポリエーテルスルホン(「PES」)を含むポリスルホン;及び、デンプン、セルロース、及び、タンパク質を含む天然高分子を挙げることができるが、これらに限定されない。また、適切な高分子は、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満の水分蒸気透過率(「MVTR」、水蒸気透過率「WVTR」としても知られる)を有する高分子を含んでもよい。
【0068】
したがって、1つの実施形態では、装置が1つ以上の高分子から形成され、この場合、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー(コポリマーとしても知られる)を含む)及びその組合せ(共押出高分子を含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、スプレーコーティング、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料を伴う随意的な内部ライニング又はコーティングを更に備える。
【0069】
1つの実施形態において、高分子は、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、高分子は、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、ポリオレフィンは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、及び、BOPPなどのそれらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、高分子フタル酸エステルは、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、フッ素化高分子は、Kel-F、PTFE、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、ポリエステルは、セルロースアセテート、POM、及び、PETG、PCTG、PCTAを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル、並びに、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態では、ナイロンがアモルファスナイロンである。一実施形態では、ポリビニルは、PVA、EVOH及びそれらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態では、ポリスルホンがPESである。1つの実施形態において、天然高分子は、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される。
【0070】
1つの実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される単一の高分子から形成される。他の実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される2つ以上の高分子から形成される。1つの実施形態において、装置は、HDPE、PET、及び、それらの組合せから成るグループから選択される高分子から形成される。1つの実施形態では、装置がPETを備える。
【0071】
装置の長尺本体は、一般に、その長さに沿って同じ断面形状をとってもよい。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円形、半円形、楕円形、半楕円形、長円形、卵形、正方形、長方形、台形、三角形、及び、これらの組合せから成るグループから選択される。また、角張った角を有する形状が丸みを帯びた角に取って代えられてもよく、例えば、角張った角が丸みを帯びた角に取って代えられる長方形は、丸みを帯びた長方形形状と称されてもよい。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円筒形、長方形、丸みを帯びた長方形、台形、及び、丸みを帯びた台形から選択される。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円筒形、長方形、丸みを帯びた長方形、台形、及び、丸みを帯びた台形から選択され、この場合、円筒形が特に好ましい。
【0072】
マウスピース端部の断面形状は、長尺本体の残りの部分と同じであってもよく又は異なっていてもよい。1つの実施形態では、マウスピースがマウスピース穴に向かって先細りになっている。1つの実施形態において、マウスピース穴の断面形状は、従来のエアロゾル又はネブライザーフェイスマスクに適合するようになっている。
【0073】
吸入可能な液体を装置を使用して患者が自己投与できるため、装置は、患者の手首又は首の周りに配置するためのラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを随意的に備えてもよい。したがって、1つの実施形態において、装置は、ラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを備える。
【0074】
実施例1
図1は、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで現在使用される従来技術のGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(1)(Medical Developments International Limited)(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)を示す。使用のために必要とされる際には、送出用量のメトキシフランが装置の基端部(3)に流し込まれる。用量が蒸発手段(図示せず)上への送出のために基端部に流し込まれた後、メトキシフルランは、患者がマウスピース(2)を通じて空気/蒸気混合物を吸入することにより鎮痛薬を自己投与できるように蒸発する。患者がマウスピースを通じて呼吸し続ければ、任意の呼気/蒸気混合物は、活性炭を収容する外的に取り付けられるチャンバ「ACチャンバ」(4)を介して装置から抜け出る。
【0075】
実施例2
図2Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(5)を示す。
図3Aは、上から見たときの装置の別の斜視図を示す。また、装置は、メトキシルランなどの吸入可能な液体が予め充填される内部に収容される受動蒸発支持材料(図示せず)も備える。吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料は示されていなかったが、受動蒸発支持材料は、患者による吸入時に空気/蒸気混合物を送出するために存在すると理解される。貯留モードにおいて、吸入器デバイスは、吸入可能な液体及びその蒸気のための密封された貯留容器として機能し、そのため、吸入器デバイスは、準備万端であって、開放時にいつでも薬剤を蒸気の形態で患者に即座に送出できる状態にある。吸入器デバイスは、密封された長尺本体(6)と、マウスピース端部(7a)として機能するようになっているとともに再密封可能な端部シール(7)によって密封される第1の端部と、空気入口端部として機能するようになっているとともに1つ以上の空気入口穴(8a)を備える調整可能エンドキャップ(8)の形態の再密封可能な端部シールによって密封される第2の端部とを有する。
図2Aでは、空気入口穴(8a)がそれらの閉鎖位置又は「密封」位置で示され、一方、
図3Aは、空気入口穴をそれらの開放位置又は「作動」位置で示す。投与モードでは、マウスピース端部(7a)を通じた患者による吸入時に
図3Aに示される矢印の方向で空気を蒸気チャンバ(図示せず)内に引き込むことができるようにするべく第1の端部シール(7)及び第2の端部シール(8)がいずれも開放される。第1の端部シール(7)は、蒸気吸入開口(7b)との厳しい公差の嵌合によってマウスピース端部(7a)を密封及び再密封するようになっているとともに長手方向で外側に引っ張ることによって患者又は投与者により除去できるプラグであってもよい。或いは、第1の端部シール(7)は、マウスピース端部(7a)と嵌め合い係合するねじ山によってマウスピース端部(7a)を密封及び再密封するようになっているプラグであってもよく、このプラグは、蒸気吸入開口(7b)を開放するべくプラグのねじを外す患者又は投与者により除去できる。
図3Bは、
図3Aに示される装置のA-A断面図である。第2の端部シール(8)は、
図3Bに示されるような調整可能エンドキャップである。調整可能エンドキャップの拡大図が
図3Cに示される。空気入口穴(8a)は、それらの閉鎖位置又は「密封」位置で示される。
図3Cに示される調整可能エンドキャップは、長尺本体(6)のねじ山(6a)と嵌め合い係合するねじ山(8a)を備える。したがって、空気入口穴は、長尺本体(6)に対して調整可能エンドキャップ(8)のねじを外す患者又は投与者によって部分的に又は完全に開放され又は「作動」されてもよい。調整可能エンドキャップ(8)は、随意的に、貯留モードのための装置の密封及び再密封を助けるための詰め物挿入体(8c)を備えてもよい。
【0076】
実施例3
図2Bは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(9)を示す。また、装置は、メトキシルランなどの吸入可能な液体が予め充填される受動蒸発支持材料(図示せず)も備える。吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料は示されていなかったが、受動蒸発支持材料は、患者による吸入時に空気/蒸気混合物を送出するために存在すると理解される。貯留モードにおいて、吸入器デバイスは、吸入可能な液体及びその蒸気のための密封された貯留容器として機能し、そのため、吸入器デバイスは、準備万端であって、開放時にいつでも薬剤を蒸気の形態で患者に即座に送出できる状態にある。吸入器デバイスは、密封された長尺本体(10)と、マウスピース端部として機能するようになっているとともに調整可能エンドキャップの形態の第1の端部シール(11)によって密封される第1の端部と、空気入口端部として機能するようになっているとともに調整可能エンドキャップの形態の第2の端部シール(12)によって密封され、したがって1つ以上の空気入口穴(12a)を備える第2の端部とを有する。2つではなく4つの空気入口穴(12a)を有する別の調整可能空気入口エンドキャップ(12)が
図6Cに示される。
図4Aは、個々の構成要素、特に長尺本体(10)のねじ山(10a)及び(10b)、調整可能空気入口エンドキャップ(12)の空気入口穴(12a)、調整可能マウスピースエンドキャップ(11)の蒸気吸入開口(11a)、及び、貯留モードのための装置の密封及び再密封を助けるための詰め物挿入体(11b)をより良く例示するための装置の分解図を示す。
【0077】
貯留モードでは、両方の端部シールが
図4Bに示されるようなそれらの閉鎖位置又は「密封」位置にある。投与モードでは、両方の端部シールが
図4Cに示されるような開放位置又は「作動」位置にある。調整可能空気入口エンドキャップ(12)は、ねじ山(10a)と嵌め合い係合するためのねじ山(12c)を備え、また、調整可能マウスピースエンドキャップ(11)は、ねじ山(10b)と嵌め合い係合するためのねじ山(11c)を備える。
図5A、
図5D、
図5E、
図6A、
図6B、及び、
図6Cに更に示されるように、ねじ山(10a)/(12c)及び(10b)/(11c)は単一のねじ山構成であってもよく或いは代わりに二重のねじ山構成であってもよい。二重のねじ山構成の利点は、回転数を最小限に抑えることによって開放を容易にすることである。したがって、マウスピース端部(11)を通じた患者による吸入時に
図4Cに矢印により示されるように空気を蒸気チャンバ(13)を通じて引き込むことができるようにするべくエンドキャップ(11)及び(12)のねじを外すことによって密封端部が開放される。空気/蒸気混合物を患者に送出するために、調整可能マウスピースエンドキャップ(11)は
図5B及び
図5Cに更に示されるように1つ以上の内部溝(11d)を備える。
【0078】
実施例4
図7は、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(14)を示す。また、装置は、メトキシルランなどの吸入可能な液体が予め充填される受動蒸発支持材料(図示せず)も備える。吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料は示されていなかったが、受動蒸発支持材料は、患者による吸入時に空気/蒸気混合物を送出するために存在すると理解される。貯留モードにおいて、吸入器デバイスは、吸入可能な液体及びその蒸気のための密封された貯留容器として機能し、そのため、吸入器デバイスは、準備万端であって、開放時にいつでも薬剤を蒸気の形態で患者に即座に送出できる状態にある。
図7Aに示されるように、吸入器デバイスは、第1の再密封不可能な端部シール(16)及び第2の再密封不可能な端部シール(17)によって密封される密封された長尺本体15を有する。第1の端部シール(16)及び第2の端部シール(17)はいずれも、再密封不可能な金属リングプルクラウンキャップであり、したがって、リングプル(16a)及び(17a)をそれぞれ備える。リングプル(16a)を備える再密封不可能なリングプルクラウンキャップ(16)の拡大図が
図7Bに示される。第1の端部シール(16)及び第2の端部シール(17)が同じであり、密封された長尺本体が装置の全長にわたって同じ円筒状の断面領域を有するため、いずれの端部も、装置を使用のためにいずれかの方向に向けることができるようにマウスピース端部又は空気入口端部として機能し得る。使用のために必要とされる場合には、
図7Cに示されるように投与者/患者がリングプルライン(16b)及び(17b)に沿ってリングプル(16a)及び(17a)を引くことによって再密封不可能な金属リングプルクラウンキャップが開放される。空気入口開口及び蒸気吸入開口(図示せず)は、長尺本体15の周囲によって形成されるとともに、端部シール(16)及び(17)の除去時にマウスピースの端部としてどのような端部が選択されたとしても患者による吸入時に空気を蒸気チャンバ(図示せず)を通じて引き込むことができるようにする。
【0079】
実施例5
図8は、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(19)を示す。装置は、密封された空気入口端部(18)及び密封されたマウスピース端部(20)を
図8Aに示される矢印の方向に押すことによって使用のために「作動」される。その後、患者は、
図8Bに示される矢印の方向で空気/蒸気混合物を投与するべくマウスピース端部を通じて吸入する。
【0080】
装置の個々の構成要素が
図9に更に示される。
図9Aは、円筒状の形態を成す長尺本体(21)を示す。円筒体は任意の適した材料から形成されてもよいが、密封された空気入口端部(19)及び密封されたマウスピース端部(20)を開放するために必要な押圧力に耐えるためには高分子材料及び金属が特に好ましい。
図9C及び
図9Dは、
図9Bに示される組み立てられた装置のA-A断面図を与える。装置は、メトキシフルランなどの吸入可能な液体が予め充填された
図9Cに示すような受動蒸発支持材料(22)を備える。吸入可能な液体が予め充填された受動蒸発支持材料は、第1の密封された(マウスピース)端部(20)及び第2の密封された(空気入口)端部(19)でそれぞれ再密封不可能な端部シール(23)及び(24)を穿刺することによって使用のための装置が「作動」された時点で患者による吸入時に空気/蒸気混合物の送出を可能にする。再密封不可能なシール(23)及び(24)を穿刺するために、マウスピース端部及び空気入口端部は独立に
図9Dに示されるような穿刺手段(25)及び(26)をそれぞれ備える。
【0081】
実施例6
吸入器デバイスがメトキシフルランを送出できる能力は、以下のように肺波形発生システムなどの呼吸シミュレータシステムを用いて検査されてもよい。肺波形発生器が「大人」流量条件(毎分14回の呼吸)に設定され、濃度ロギングソフトウェア及びDatexセンサが開始される。各検査ごとにメトキシフルラン(3mL)が装置に流し込まれ、それにより、送出されるべきメトキシフルランがポリプロピレン製の芯に予め充填され、その後、装置のマウスピース端部が肺波形発生器の開口に挿入される。最初の呼吸濃度のために最初の1分間、その後、定常状態試験のために次の20分間、集中ロギングが開始される。
【0082】
Prototype装置は、HDPE同等の材料を使用してラピッドプロトタイプとして製造されてもよい。
【0083】
この明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が別段に必要としなければ、「備える(comprise)」という単語及び「備える(comprises)」や「備えている(comprising)」などのその変形は、述べられた整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを含むことを意味するが、任意の他の整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを排除することを意味しないものと理解される。
【0084】
この明細書における任意の従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の任意の事項への言及は、この明細書が関連する対象分野における共通の一般的知識の一部を従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の事項が形成するという確認又は承認又は任意の形態の示唆として解釈されず、また、解釈されるべきでない。