(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】食器洗浄システム
(51)【国際特許分類】
A47L 15/46 20060101AFI20220323BHJP
A47L 15/24 20060101ALI20220323BHJP
B25J 9/04 20060101ALI20220323BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A47L15/46 Z
A47L15/24
B25J9/04 A
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2018534391
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2017029233
(87)【国際公開番号】W WO2018034252
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2019-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2016159050
(32)【優先日】2016-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399075500
【氏名又は名称】株式会社吉野家ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】特許業務法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尹 祐根
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓明
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-334232(JP,A)
【文献】特開2009-000349(JP,A)
【文献】特開2015-084892(JP,A)
【文献】特開2004-188527(JP,A)
【文献】特開2013-150511(JP,A)
【文献】特開2014-156000(JP,A)
【文献】特開2007-069239(JP,A)
【文献】特開昭61-173873(JP,A)
【文献】特開2000-181522(JP,A)
【文献】特開平05-315400(JP,A)
【文献】特開平04-328829(JP,A)
【文献】特開平10-320521(JP,A)
【文献】東北大学、「食器洗浄・収納パートナロボット」を発表,日本,Impress Watch Corporation, an Impress Group company,2006年07月19日,https://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/03/25/1677.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/46
A47L 15/24
B25J 9/04
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄用ラックに収納された食器を洗浄室内で洗浄する食器洗浄機と、
前記洗浄室に搬入される前記洗浄用ラックを載置するための搬入台と、
前記洗浄室から搬出された前記洗浄用ラックを載置するための搬出台と、
単一のロボットアーム機構を有するロボット装置とを具備し、
前記搬入台と前記食器洗浄機と前記搬出台とは前記単一のロボットアーム機構の可動範囲内に配置され、
前記ロボットアーム機構は、
前記食器洗浄機の出力に基づいて、前記洗浄用ラックを前記搬入台から前記洗浄室に移送するとともに前記食器洗浄機を操作すること
と、前記洗浄用ラックを前記洗浄室から前記搬出台に移送し、前記洗浄用ラックからストック台上のストックラックに前記食器を移し変えることとを、実行可能に構成される食器洗浄システム。
【請求項2】
洗浄用ラックに収納された食器を洗浄室内で洗浄する食器洗浄機と、
前記洗浄室に搬入される前記洗浄用ラックを載置するための搬入台と、
前記洗浄室から搬出された前記洗浄用ラックを載置するための搬出台と、
前記食器洗浄機により洗浄された食器を収納するストックラックを載置するためのストック台と、
単一のロボットアーム機構を有するロボット装置とを具備し、
前記搬入台と前記食器洗浄機と前記搬出台と前記ストック台とは前記単一のロボットアーム機構の可動範囲内に配置され、
前記ロボットアーム機構は前記搬出台上の前記洗浄用ラックから前記ストック台上の前記ストックラックに前記食器を移し変えることを特徴とする食器洗浄システム。
【請求項3】
前記ロボット装置は、
前記ロボットアーム機構と、
フットスイッチと、
前記フットスイッチが押されたとき、前記洗浄用ラックを前記搬入台から前記洗浄室に移送させ、前記食器洗浄機を操作して前記洗浄室を閉鎖させ、前記食器洗浄機を操作して洗浄を開始させるために、前記ロボットアーム機構を制御する制御部とを有することを特徴とする請求項1記載の食器洗浄システム。
【請求項4】
前記フットスイッチは、少なくとも前記ロボットアーム機構が搬入又は搬出を行っている間、インターロック状態に遷移される請求項
3に記載の食器洗浄システム。
【請求項5】
前記ロボット装置は、
フットスイッチを具備し、
第1のタスクプログラムを行っている間に前記フットスイッチが押されたとき、前記第1のタスクプログラムを中断し該第1のタスクプログラムとは異なる第2のタスクプログラムを行い、該第2のタスクプログラムの完了後に中断していた前記第1のタスクプログラムを再開する請求項2に記載の食器洗浄システム。
【請求項6】
前記ロボット装置は、
前記ロボットアーム機構と、
前記食器洗浄機
の出力を受信する受信部と、
前記
出力を受信したとき、前記食器洗浄機を操作して前記洗浄室を開放させ、前記洗浄用ラックを前記洗浄室から前記搬出台に移送させるために、前記ロボットアーム機構を制御する制御部とを有することを特徴とする請求項
1記載の食器洗浄システム。
【請求項7】
前記搬出台は、スタンド駆動部を有し、
前記スタンド駆動部が、前記洗浄用ラックから前記ストックラックに食器の収納が完了したときに、前記洗浄用ラックを押し上げ前記食器洗浄機の背面にある回収レールへ前記洗浄用ラックを送る請求項
2に記載の食器洗浄システム。
【請求項8】
前記ロボット装置は、
前記ロボットアーム機構と、
前記搬出台を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像を処理して前記食器の位置、前記食器の種類及び前記食器の姿勢を判断する画像処理部と、
前記食器が所定枚数を上限として種類ごとに前記ストックラック内で積み重ねられるように、前記食器の種類と前記食器の積み重ね枚数とに基づいて複数のリリース位置から一のリリース位置を選定するリリース位置選定部と、
前記食器の位置と前記食器の姿勢と前記選定されたリリース位置とに基づいて前記ロボットアーム機構による移し変え動作を制御する動作制御部とを有することを特徴とする請求項
2記載の食器洗浄システム。
【請求項9】
前記ロボット装置は、
前記複数のリリース位置にそれぞれ設置される複数の反射型光電センサと、
前記複数のリリース位置各々に対する前記食器のリリース回数を前記積み重ね枚数として計数するとともに前記反射型光電センサのオフにより計数値をゼロリセットする計数部とをさらに有することを特徴とする請求項
8記載の食器洗浄システム。
【請求項10】
前記ロボット装置は、
前記ストック台を撮影する他のカメラと、
前記複数のリリース位置各々のリリース回数を前記積み重ね枚数として計数するとともに前記他のカメラで撮影された画像の画像処理結果に基づいて計数値をゼロリセットする計数部とをさらに有することを特徴とする請求項
8記載の食器洗浄システム。
【請求項11】
前記ロボット装置は、
作業員操作部と、
前記複数のリリース位置各々のリリース回数を前記食器の積み重ね枚数として計数するとともに前記作業員操作部の操作に従って計数値をゼロリセットする計数部とをさらに有することを特徴とする請求項
8記載の食器洗浄システム。
【請求項12】
前記リリース位置選定部は、前記積み重ね枚数が所定枚数に達したとき前記リリース位置を変更することを特徴とする請求項
8記載の食器洗浄システム。
【請求項13】
前記ロボット装置は、前記積み重ね枚数が所定枚数に達したとき、前記積み重ね枚数が所定枚数に達したことを光と音と振動との少なくとも一により報知する報知部をさらに有することを特徴とする請求項
8記載の食器洗浄システム。
【請求項14】
前記ロボットアーム機構は、直動伸縮機構を備えた極座標形であることを特徴とする請求項1乃至
13の何れか1項に記載の食器洗浄システム。
【請求項15】
洗浄用ラックに収納された食器を洗浄室内で洗浄する食器洗浄機と、
前記洗浄室に搬入される前記洗浄用ラックを載置するための搬入台と、
前記洗浄室から搬出された前記洗浄用ラックを載置するための搬出台と、
前記食器洗浄機により洗浄された食器を収納するストックラックを載置するためのストック台と、
ロボットアーム機構を有するロボット装置とを具備し、
前記ロボット装置は、
前記ストックラック内に設けられる少なくとも1つのセンサと、
前記センサの出力に基づいて、前記ロボットアーム機構が前記ストックラック内に食器をリリースするリリース回数を計数し、前記センサのオフにより計数した前記リリース回数をゼロリセットする計数部とをさらに有する食器洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は食器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の外食産業における重要な課題の一つは労働力不足に起因する省力化である。その対処の一つとして食器洗浄機の導入がある。食器洗浄工程としては返却棚から食べ残しを取り除き、浸漬槽に沈め、その後、食器をブラシ等で予備洗浄を行ってから、洗浄ラックに載置する。食器を載置した洗浄ラックを食器洗浄機に搬入して、所定位置にセットして、食器洗浄機の洗浄スイッチを操作する。それにより洗浄処理が開始される。洗浄終了後、食器洗浄機の洗浄ラックをクリーンテーブルに搬出して、洗浄された食器を丼、皿、小鉢などの種類ごとに仕分けしてストッカラックに積み重ねる。これら作業を作業員は調理、配膳、膳下などの他の作業の合間を縫って実行する必要があるため、非常に煩雑であるばかりか、食器洗浄の終了タイミングにも注意を払う必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的は、作業員の省力化に寄与するとともに食器洗浄に係る一連の作業の煩雑さを軽減することを実現する食器洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本実施形態に係る食器洗浄システムは、洗浄用ラックに収納された食器を洗浄室内で洗浄する食器洗浄機と、洗浄室に搬入される洗浄用ラックを載置するための搬入台と、洗浄室から搬出された洗浄用ラックを載置するための搬出台と、ロボットアーム機構を有するロボット装置とを具備する。搬入台と食器洗浄機とはロボットアーム機構の可動範囲内に配置される。ロボットアーム機構は、洗浄用ラックを搬入台から洗浄室に移送するとともに食器洗浄機を操作する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る食器洗浄システムの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のロボットアーム機構の外観斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のロボットアーム機構の内部構造を示す側面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る食器洗浄システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5のロボットアーム機構によるピッキング作業に関連する処理を説明するための補足図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る食器洗浄システムの動作を示すタイミングチャート図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る食器洗浄システムの複数のタスク処理モードを説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、本実施形態に係る食器洗浄システムの外観斜視図である。
図2は、
図1の食器洗浄システムの平面図である。本実施形態に係る食器洗浄システムは、ドア式食器洗浄機200(以下、単に食器洗浄機200ともいう)と搬入台401と搬出台501とストック台601とロボット装置100とを有する。
【0007】
食器洗浄機200は洗浄機本体201を有する。洗浄機本体201は、ドアで開閉される洗浄室210が設けられる。洗浄室210内で洗浄用ラック800に収容された食器等が洗浄される。洗浄機本体201は、その下方に機械室が設けられる。機械室には、洗浄水を洗浄ノズルから食器に噴出するために、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと洗浄水を洗浄ポンプとが収容されている。また機械室には、すすぎ水をすすぎノズルから食器に噴出するために、すすぎ水タンクとすすぎポンプとが収容される。洗浄室210の底面には開口が空けられ、その開口を通して洗浄水とすすぎ水とが機械室から洗浄室210に向かって噴出される。洗浄室210を跨いでスライドレールが設けられる。洗浄機本体201の背面には支柱203が立設される。支柱203には、上下移動自在に箱型のドア205が支持される。ドア205の前面にはハンドル207が配置される。ハンドル207はリンクバーに接続される。リンクバーの端部は支柱203に軸支され、リンクバーの中央部はドア205の側面に係合される。ハンドル207を上下に操作することで、リンクバーに係合されたドア205が上下に移動し、それにより洗浄室210は開放され、又は閉鎖される。ドア205が最下位置にあるとき、洗浄室210は閉鎖される。洗浄室210が閉鎖された状態で食器洗浄機200の洗浄スイッチ211が押されたのを契機に、洗浄/すすぎ動作が開始される。
【0008】
従来、作業員は上記の食器洗浄機200を使用して食器を洗浄するために複数の作業を順番に行っていた。作業員は、搬入台401上に載置された、食器を収容した洗浄用ラック800を食器洗浄機200の洗浄室210に搬入する搬入作業と、食器洗浄機200のドア205を閉めて洗浄室210を閉鎖する閉鎖作業と、洗浄スイッチ211を押す押下作業と、食器洗浄機200のドア205を開けて洗浄室210を開放する開放作業と、洗浄用ラック800を洗浄室210から搬出台501に搬出する搬出作業と、搬出台601上の洗浄用ラック800からストック台601上のストックラック900に食器を移送する移送作業とを行っていた。
【0009】
本実施形態に係る食器洗浄システムは作業員の作業負担を軽減する。最も好ましくはロボットアーム機構130が、上記作業の全てを担当する。ロボットアーム機構130が、洗浄用ラック800を搬入台401から食器洗浄機200の洗浄室210に搬入できるように、ロボットアーム機構130の可動範囲内に搬入台401と食器洗浄機200が配置される。ロボットアーム機構130が、食器洗浄機200のドア205を閉めて洗浄室210を閉鎖し、洗浄スイッチ211を押し、洗浄後、食器洗浄機200のドア205を開けて洗浄室210を開放することができるように、ロボットアーム機構130の可動範囲内に食器洗浄機200が配置される。ロボットアーム機構130が、洗浄用ラック800を洗浄室210から搬出台501に搬出することができるように、ロボットアーム機構130の可動範囲内に食器洗浄機200と搬出台501が配置される。ロボットアーム機構130が、搬出台601上の洗浄用ラック800からストック台601上のストックラック900に食器を移送することができるように、ロボットアーム機構130の可動範囲内に搬入台401とストック台601が配置される。このようにロボットアーム機構130の可動範囲内にこれら台401,501,601と食器洗浄機200とを設置することで、一連の作業全体又は一部の作業をロボット装置100に担当させる事ができる。またロボットアーム機構130の設置位置を変更することなく、ロボット装置100に担当させる作業を動的に変更することができる。
【0010】
ここでは、ロボットアーム機構の正面に食器洗浄機200が配置され、食器洗浄機200を挟んで両隣に近接して搬入台401と搬出台501とが配置され、搬出台501の近傍、ロボットアーム機構側にストック台601が配置される。洗浄用ラック800をスライドするだけで搬入台401から洗浄室210、洗浄室210から搬出台501に移動できるように、搬入台401と搬出台501との高さは、洗浄室210の高さにあわせて調節されている。また、洗浄用ラック800をスムーズに移動させるために、搬入台401と搬出台501と洗浄室210のスライドレールとにはそれぞれ複数の搬送ローラ405、505、209が配設されている。食器洗浄機200の背面側、搬出台501から搬入台401にかけて、搬出台501上の洗浄用ラック800を回収し、搬入台401に戻すための回収レール701が設置される。回収レール701の搬出台501側の高さは、搬出台501と同じであり、搬入台401に向かってゆるやかに下方に傾斜して設けられる。これにより、回収レール701に回収された洗浄用ラック800は、重力により搬入台401側に戻される。
【0011】
搬入台401は、食器洗浄機200の洗浄室210に搬入する洗浄用ラック800を載置する。搬入台401上には、詰め込みエリア(例えば400mm×400mm)が設定される。作業員は詰め込みエリアに洗浄用ラック800を配置する。作業員は詰め込みエリアに配置された洗浄用ラック800に食器を詰め込む。
【0012】
搬入台401の、詰め込みエリアに対応する領域には、そのロボットアーム機構130の詰め込みエリアを作業員に認識させるためのマーク等がつけられている。本実施形態において、搬入台401に載置された洗浄用ラック800の位置をセンサ、カメラ等で検出しない。ロボットアーム機構は、予め決められた軌道に従って、洗浄ラック800を搬入台401から食器洗浄機200の洗浄室210に搬入する。そのため、搬入台401にマークに設け、そのマークに従って洗浄用ラック800が置かれることで、ロボットアーム機構による搬入作業を成功させることができる。搬入台401の下方の床面にはロボット装置100を構成するフットスイッチ104が配置される。フットスイッチ104が踏下されたとき、ロボットアーム機構130による後述の洗浄準備作業が開始される。
【0013】
搬出台501は、食器洗浄機200の洗浄室210から搬出された洗浄用ラック800を載置する。搬出台501には、ロボットアーム機構130のピッキングエリア(例えば400mm×400mm)が設定される。ピッキングエリアの上方には、視野がピッキングエリアを包含するようピッキングエリアカメラ105が設置される。ロボット装置100は、ピッキングエリアカメラ105で撮影されたピッキングエリア内の画像は後述の画像処理部127により画像処理され、それによりピッキングエリア内の食器を認識し、ロボットアーム機構130は後述の動作制御部123の制御に従って、ピッキングエリア内の食器を順次ピックアップする。搬出台501のピッキングエリアの中央には幅方向と平行に矩形形状の窪み503が形成されている。この窪み503にスタンドアップ機構が収納されている。スタンドアップ機構は、角柱形状のスタンド300とスタンド300を駆動するスタンド駆動部301とを有する。スタンド300は、その一端が、窪み503の回収レール701側の側壁に軸支されている。スタンド300は、搬出台501の長さ方向(洗浄用ラック800の搬出方向)と高さ方向とに直交する回転軸を有する。スタンド300は駆動されていない状態で、その表面は搬出台501の表面よりも下方にある。スタンド駆動部301が駆動したとき、スタンド300がその一端の回転軸を中心に回転し、その他端側が上方に押し上げられる。それによりピッキングエリア上の洗浄用ラック800は押し上げられ、搬出台501の表面に対して垂直に立てられた状態で搬出台501から回収レール701に回収される。
【0014】
ストック台601は、食器洗浄機200で洗浄された食器を収納するストックラック900を載置する。ストックラック900の内側にはロボットアーム機構130のストックエリアが設定されている。ストックエリア内には複数、ここでは8箇所にリリース位置が既定されている。ロボットアーム機構130により、ピッキングエリアでピックアップされた食器はストックエリアのリリース位置にリリースされる。リリース位置各々にはロボット装置100を構成する反射型光電センサ(食器センサ)110が装備される。食器センサ110は、対応するリリース位置に食器が存在するとき“オン”状態を示し、食器が存在しないとき“オフ”状態を示す。ストック台601には、ロボット装置100を構成する報知部106として、ランプが設置される。ランプは、リリース位置に積み重ねられた食器の数が所定数に達したのを契機に点灯する。作業員は、点灯したランプを見て、ストックラック900内の食器が所定数に達したことを認識することができる。なお、ここでは作業員に報知するための手段として光を使用したが、作業員が認識できるのであれば、報知する手段に音や振動等を用いてもよい。報知部106は、システム制御部121の制御に従って、後述のリリース位置PR1~PR8の少なくとも1箇所で食器の積み重ね枚数が6枚等の所定の上限数に達したときに、その旨を光と音と振動との少なくとも一、好ましくは光と音と振動とにより作業員に報知する。なお、振動報知に関しては、作業員が携帯する、バイブレータ機能を備えた携帯端末に対して典型的には無線通信により報知部106からバイブレータ機能を起動させるためのトリガ信号を送信するものである。
【0015】
図3は、
図1のロボットアーム機構130の外観斜視図である。
図4は、
図1のロボットアーム機構130の内部構造を示す側面図である。本実施形態に係るロボット装置100のロボットアーム機構130は、複数の関節部J1-J6を有する。ロボットアーム機構130は、基台から順に旋回回転関節部、起伏回転関節部、直動関節部を配置した極座標形である。直動関節部としてここでは伸縮長の長い後述の直動伸縮機構を採用しているがそれに限定されるものではない。
【0016】
ロボットアーム機構130は、基台1、支柱部(支柱部)2、起伏部4、アーム部5及び手首部6を備える。支柱部2、起伏部4、アーム部5及び手首部6は、基台1から順番に配設される。複数の関節部J1,J2,J3,J4,J5,J6は基台1から順番に配設される。基台1には円筒体をなす支柱部2が典型的には鉛直に設置される。支柱部2は旋回回転関節部としての第1関節部J1を収容する。第1関節部J1は回転軸RA1を備える。回転軸RA1は鉛直方向に平行である。支柱部2は支柱下部フレーム21と支柱上部フレーム22とを有する。下部フレーム21の一端は第1関節部J1の固定部に接続される。下部フレーム21の他端は基台1に接続される。下部フレーム21は円筒形状のハウジング31により覆われる。上部フレーム22は第1関節部J1の回転部に接続され、回転軸RA1を中心に軸回転する。上部フレーム22は円筒形状のハウジング32により覆われる。第1関節部J1の回転に伴って下部フレーム21に対して上部フレーム22が回転し、それによりアーム部5は水平に旋回する。円筒体をなす支柱部2の内部中空には後述する直動伸縮機構としての第3関節部J3の第1、第2コマ列51、52が収納される。
【0017】
支柱部2の上部には第2関節部J2を備える起伏部4が設置される。第2関節部J2は回転関節である。第2関節部J2の回転軸RA2は回転軸RA1に垂直である。起伏部4は、第2関節部J2の固定部(支持部)としての一対のサイドフレーム23を有する。一対のサイドフレーム23は、上部フレーム22に連結される。一対のサイドフレーム23は、鞍形形状のカバー33により覆われる。一対のサイドフレーム23にモータハウジングを兼用する第2関節部J2の回転部としての円筒体24が支持される。円筒体24の周面には、送り出し機構25が取り付けられる。送り出し機構25のフレーム26には、ドライブギア56、ガイドローラ57及びローラユニット58が支持される。円筒体24の軸回転に従って送り出し機構25は回動し、送り出し機構25に支持されたアーム部5が上下に起伏する。送り出し機構25は円筒形状のカバー34により覆われる。鞍形カバー33と円筒カバー34との間の間隙は断面U字形状の蛇腹カバー14により覆われる。蛇腹カバー14は、第2関節部J2の起伏動に追従して伸縮する。
【0018】
第3関節部J3は直動伸縮機構により提供される。直動伸縮機構は発明者らが新規に開発した構造を備えており、可動範囲の観点でいわゆる従来の直動関節とは明確に区別される。第3関節部J3のアーム部5は屈曲自在であるが、中心軸(伸縮中心軸RA3)に沿ってアーム部5の根元の送り出し機構25から前方に送り出されるときには屈曲が制限され、直線的剛性が確保される。アーム部5は後方に引き戻されるときには屈曲が回復される。アーム部5は第1コマ列51と第2コマ列52とを有する。第1コマ列51は屈曲自在に連結された複数の第1コマ53からなる。第1コマ53は略平板形に構成される。第1コマ53は端部箇所の蝶番部(ヒンジ部)で屈曲自在に連結される。第2コマ列52は複数の第2コマ54からなる。第2コマ54は横断面コ字形の溝状体又はロ字形の筒状体に構成される。第2コマ54は底板端部箇所のヒンジ部で屈曲自在に連結される。第2コマ列52の屈曲は、第2コマ54の側板の端面どうしが当接する位置で制限される。その位置では第2コマ列52は直線的に配列する。第1コマ列51の先頭の第1コマ53と、第2コマ列52の先頭の第2コマ54とは結合コマ55により接続される。例えば、結合コマ55は第1コマ53と第2コマ54とを合成した形状を有している。
【0019】
第1、第2コマ列51,52はローラユニット58を通過する際に互いに押圧されて接合する。接合により第1、第2コマ列51,52は直線的剛性を発揮し、柱状のアーム部5を構成する。ローラユニット58の後方にはドライブギア56がガイドローラ57とともに配置される。ドライブギア56は図示しないモータユニットに接続される。モータユニットは、ドライブギア56を回転させるための動力を発生する。第1コマ53の内側の面、つまり第2コマ54と接合する側の面の幅中央には連結方向に沿ってリニアギア539が形成されている。複数の第1コマ53が直線状に整列されたときに隣合うリニアギア539は直線状につながって、長いリニアギアを構成する。ドライブギア56はガイドローラ57に押圧された第1コマ53のリニアギア539に噛み合わされる。直線状につながったリニアギア539はドライブギア56とともにラックアンドピニオン機構を構成する。ドライブギア56が順回転するとき第1、第2コマ列51,52はローラユニット58から前方に送り出される。ドライブギア56が逆回転するとき第1、第2コマ列51,52はローラユニット58の後方に引き戻される。引き戻された第1、第2コマ列51,52はローラユニット58とドライブギア56との間で互いに分離される。分離された第1、第2コマ列51,52はそれぞれ屈曲可能な状態に復帰する。屈曲可能な状態に復帰した第1、第2コマ列51,52は、ともに同じ方向(内側)に屈曲し、支柱部2の内部に鉛直に収納される。このとき、第1コマ列51は第2コマ列52に略平行にほぼ揃った状態で収納される。
【0020】
アーム部5の先端には手首部6が取り付けられる。手首部6の先端には食器を吸着するための吸着パッド7が取り付けられる。手首部6は第4~第6関節部J4~J6を装備する。第4~第6関節部J4~J6はそれぞれ直交3軸の回転軸RA4~RA6を備える。第4関節部J4は伸縮中心軸RA3と略一致する第4回転軸RA4を中心とした回転関節であり、この第4関節部J4の回転により吸着パッド7は揺動回転される。第5関節部J5は第4回転軸RA4に対して垂直に配置される第5回転軸RA5を中心とした回転関節であり、この第5関節部J5の回転により吸着パッド7は前後に傾動回転される。第6関節部J6は第4回転軸RA4と第5回転軸RA5とに対して垂直に配置される第6回転軸RA6を中心とした回転関節であり、この第6関節部J6の回転により吸着パッド7は軸回転される。
【0021】
吸着パッド7は例えばシリコン樹脂製の蛇腹チューブであり、その先端が円錐形に拡がっている。吸着パッド7にはエアチューブを介してエアコンプレッサが接続されている。吸着パッド7の先端を食器の裏面に接触させた状態でエアコンプレッサが駆動すると、食器で閉空間とされる吸着パッド7の内部の負圧により食器が吸着パッド7に吸着される。エアコンプレッサが停止すると吸着パッド7の内部が大気圧に復帰して食器がリリースされる。また、洗浄用ラック800の移動と食器洗浄機200のハンドル操作とを吸着パッド7で行うために、例えば吸着パッド7の後端部分は、吸着パッド7の先端部分よりも太い。それにより、吸着パッド7の後端部分が洗浄用ラック800に押し当てた状態で、吸着パッド7の先端が洗浄用ラック800に接触することを回避した上で、洗浄用ラック800を押し出すように移動させることができる。同様に、吸着パッド7の後端部分を食器洗浄機200のハンドル207の上面に当てた状態で吸着パッド7を下方に移動させることで洗浄室210を閉鎖し、吸着パッド7の後端部分をハンドル207の下面に当てた状態で吸着パッド7を上方に移動させることにより洗浄室210を開放することができる。
【0022】
図5は、本実施形態に係る食器洗浄システムの構成を示すブロック図である。食器洗浄システムは、食器洗浄機200とロボット装置100とを有する。食器洗浄機200は、洗浄スイッチ211が押下されたのを契機に、予め登録されている洗浄プログラムに従って食器の洗浄作業を行う。食器洗浄機200は、食器の洗浄作業が完了したのを契機に、ロボット装置に対して、洗浄完了信号を出力する。ロボット装置100に対して、食器洗浄機インターフェース(食器洗浄機I/F)102を介して食器洗浄機200が電気的に接続され、スタンドインターフェース(スタンドI/F)103を介してスタンド駆動部301が電気的に接続されている。ロボット装置100は、食器洗浄機I/F102(受信部)を介して食器洗浄機200から出力された洗浄完了信号を受信する。ロボット装置100は、スタンドI/F103を介してスタンド駆動部301にピッキング完了信号と食器収納作業終了信号とを出力する。スタンド駆動部301は、ピッキング完了信号と食器収納作業終了信号との両方を受け付けたのを契機に駆動し、それによりスタンド300が回転し、洗浄用ラック800が回収レール701に回収される。
【0023】
ロボット装置100は、ロボットアーム機構130、ロボットアーム機構130による洗浄作業の契機となるフットスイッチ104、ロボットアーム機構130のピッキングエリアを撮影するピッキングエリアカメラ、ロボットアーム機構130によるリリース位置に所定数の食器が積み重ねられたことを作業員に報知するための報知部106、ロボットアーム機構130のリリース位置の食器有無を検出する食器センサ110を備える。ロボットアーム機構130の関節部J1,J2,J3,J4,J5、J6には、アクチュエータ132として、例えばステッピングモータが設けられている。これらステッピングモータには、モータドライバ133がそれぞれ電気的に接続されている。モータドライバ133は、受信した位置指令値に応じたパルスを対応するステッピングモータに供給する。また、これらステッピングモータのドライブシャフトには、一定の回転角ごとに出力されるパルスをカウンタで加減算して回転位置を測定するためのロータリーエンコーダ131がそれぞれ接続されている。ロボットアーム機構130の吸着パッド7にエアチューブを介してコンプレッサ135が接続される。
【0024】
ロボット装置100は、システム制御部121、タスクプログラム記憶部125、画像処理部127、ストック食器数計数部128、リリース位置決定部129及び動作制御部123を備える。システム制御部121は、CPU(Central Processing Unit)と半導体メモリ等を有し、ロボット装置100を統括して制御する。
【0025】
タスクプログラム記憶部125は、作業の種類の異なる複数、ここでは第1、第2タスクプログラムのデータを記憶する。タスクプログラムには手先軌道等が記述されている。第1タスクプログラムには洗浄準備作業に関する動作が記述されている。洗浄準備作業は、洗浄用ラック800を搬入台401の詰め込みエリアから食器洗浄機200の洗浄室210に搬入する搬入作業と、食器洗浄機200のハンドル207を操作して洗浄室210を閉鎖する閉鎖作業と、食器洗浄機200の洗浄スイッチ211を押す押下作業とからなる。なお、洗浄室210が閉鎖されたのを契機に自動的に洗浄が開始されるタイプの食器洗浄機200のとき、洗浄スイッチ211の押下作業が省略される。洗浄準備作業は、洗浄用ラック800内に詰め込まれた食器に対する作業がないため、予め決められた手先軌道でロボットアーム機構130は動作する。フットスイッチ104が押下されたとき、システム制御部121によりタスクプログラム記憶部125から第1タスクプログラムが読み出され、ロードされる。動作制御部123は、第1タスクプログラムで予め規定されている手先軌道に従って、ロボットアーム機構130のモータドライバ133各々に対して位置指令信号を出力する。
【0026】
第2タスクプログラムには食器収納作業に関する動作が記述されている。食器収納作業は、ハンドル207を操作して洗浄室210を開放する開放作業と、洗浄用ラック800を食器洗浄機200の洗浄室210から搬出台501のピッキングエリアに搬出する搬出作業と、洗浄用ラック800に詰め込まれた食器をピックアップし、ストック台601のストックラック900内にリリースするピッキング作業とからなる。食器収納作業のうち、ピッキング作業におけるピックアップ位置とリリース位置とは、洗浄用ラック800内の食器の種類、位置、向き及びストックラック900内のリリース位置に積み重ねられている食器の数に応じて変化する。洗浄完了信号を受信したとき、システム制御部121によりタスクプログラム記憶部125から第2タスクプログラムが読み出され、ロードされる。動作制御部123は、第2タスクプログラムで予め規定されている手先軌道に従って、ロボットアーム機構130のモータドライバ133各々に対して位置指令信号を出力する。ピッキング作業に関して、動作制御部123は、後述の画像処理部127で計算したピックアップ位置と、ストック食器数計数部128により計数したリリース位置毎のリリース回数(リリース位置毎に積み重ねられている食器数)、リリース位置決定部129で決定したリリース位置とに従ってロボットアーム機構130の手先軌道を計算し、ロボットアーム機構130のモータドライバ各々に対して位置指令信号を出力する。具体的には、動作制御部123は、各食器の画像処理部127で計算したピックアップ位置と、リリース位置決定部129で決定したリリース位置と、そのリリース位置に積み重ねられている食器数と食器種類に固有の食器高さとから決まるリリース高とから、吸着パッド7の軌道を計算し、ロボットアーム機構130のモータドライバ各々に対して位置指令信号を出力する。
【0027】
なお、ここでは、食器洗浄機200は食器の洗浄が完了したのを契機に洗浄完了信号を出力し、ロボットアーム機構130は、その洗浄完了信号を受けて、食器収納作業を開始する。しかしながら、ロボットアーム機構130が食器洗浄機200の洗浄動作が完了したことを認識する方法はこれに限定されない。例えば、食器洗浄機200は、洗浄動作が完了したのを契機に洗浄動作の完了を表す音(洗浄完了音)を発生するタイプであってもよい。この場合、ロボット装置はマイクと音声処理部とを備え、音声処理部は、マイクでひろった音を処理し、洗浄完了音を認識する。それにより、ロボットアーム機構130は、洗浄完了音が発生されたのを契機に、食器収納作業を開始することができる。また、食器洗浄機200は、モニタを備え、洗浄動作が完了したのを契機に洗浄動作の完了を表す画像(洗浄完了画像)をモニタに表示するタイプであってもよい。この場合、ロボット装置は食器洗浄機200のモニタを撮影するモニタカメラを備え、モニタカメラで撮影されたモニタ画像を食器洗浄機200の画像処理部127により処理し、洗浄完了画像が表示されたか否かを判断する。それにより、ロボットアーム機構130は、洗浄完了画像が表示されたのを契機に、食器収納作業を開始することができる。このように、音や光で食器洗浄機による食器の洗浄が完了したことを把握する手段をロボット装置100が備えることで、外部装置との間で信号の送受信ができないタイプの食器洗浄機であっても、本実施形態に係る食器洗浄システムの食器洗浄機200として使用することができる。
【0028】
図6は、
図5のロボットアーム機構130によるピッキング作業を説明するための補足図である。
図6(a)は、リリース位置各々の食器数がゼロである場合を示している。
図6(b)は、優先度の高いリリース位置の食器数がゼロではない場合を示している。
【0029】
画像処理部127は、ピッキングエリアカメラ105により撮影された画像(ピッキングエリア画像)に基づいて、ピッキングエリア内の食器の有無を判断し、食器がある場合には食器の種類、食器の重心位置及び食器の向きを特定する。具体的には、予め食器(丼、皿、小鉢)毎のパターンが登録されている。画像処理部127は、ピッキングエリア画像を2値化処理し、2値化したピッキングエリア画像から食器の輪郭を抽出し、パターンマッチング処理を実行し、ピッキングエリアに食器が存在するか否か、食器が存在する場合には、存在する食器の種類を判断する。画像処理部127は、ピッキングエリア画像から抽出された食器の輪郭の重心位置(ピックアップ位置)PP01~PP04を計算する。重心位置PP01~PP04は、ロボット座標系で表され、ロボットアーム機構130によるその食器のピックアップ位置に使用される。さらに、画像処理部127は、判断した皿が、リリース位置において規定されている基準線に対する傾斜角を計算する。具体的には、画像処理部127は、
図6(a)に示すように、ピッキングエリア内の皿の長手方向の中心線を特定し、リリース位置において規定されている皿の長手方向の中心線に対してどれだけ傾いているか、その傾斜角を計算する。ピッキングエリア内の皿の向きを特定することで、ロボットアーム機構130がリリースするときの食器の向きを揃えることができ、それにより食器を積み重ねて収納することを実現できる。ピッキングエリア画像から特定のパターンが抽出されなかったとき、つまりピッキングエリアに食器が存在しないとき、画像処理部127はシステム制御部121の制御に従って、スタンド駆動部301に対してロボットアーム機構130によるピッキング作業の完了を表すピッキング完了信号を出力する。
【0030】
ストック食器数計数部128は、リリース位置決定部129の出力に基づいて、ストックエリアに規定されたリリース位置毎のリリース回数を計数し、リリース位置毎の計数値を保持する。食器センサ110-1~110-8はロボットアーム機構130のリリース位置PR1~PR8にそれぞれ対応する位置に設置される。食器センサ110-1~110-8は、対応するリリース位置PR1~PR8に食器が存在しないときオフ状態を示し、食器が存在するときオン状態を示す。ストックラック900内の食器が作業員により移動されたとき、その食器が積み重ねられていた位置に対応する食器センサの状態がオン状態からオフ状態に遷移する。ストック食器数計数部128は、オン状態からオフ状態に遷移した食器センサに対応するリリース位置の計数値をゼロリセットする。なお、光電センサ(食器センサ)110-1~110-8がオフ状態を示したことを契機としてそのリリース位置の食器数をゼロ値にリセットするものとして説明したが、それに限定されるものではない。例えば、ストックエリアを撮影するストックエリアカメラをピッキングエリアカメラ105とは別途に設置し、このストックエリアカメラで撮影したストックエリアの画像を画像処理部127で処理し、各リリース位置で食器の輪郭を抽出できなかったときは、そのリリース位置の食器数をゼロ値にリセットするようにしてもよい。また、タッチパネルとディスプレイからなる作業員操作部をストック台601又はその近傍に設置しておき、作業員(作業員)が、ストックされた食器を食器保管棚に移動したとき、その食器が置かれていたいずれかのリリース位置を表すアイコンをタッチパネル上から作業員自身でタップ操作をすることにより、そのリリース位置の食器数をゼロ値にリセットするようにしてもよい。
【0031】
リリース位置決定部129は、リリース位置PR1~PR8毎のリリース回数とストックエリア内の食器の種類、数とに基づいて、ロボットアーム機構130によりピックアップされた食器のリリース位置を決定する。具体的には、リリース位置決定部129は、ピッキングエリア内の食器のリリース位置を以下のように決定する。なお、
図6に示すように、ここではリリース位置PR1~PR8のうち、ピッキングエリアから最も遠い横一列の3つのリリース位置PR1~PR3が丼用のリリース位置として設定され、丼用のリリース位置よりピッキングリア側の横一列の3つのリリース位置PR4~PR6が小鉢用のリリース位置として設定され、残りの2つのリリース位置PR7~PR8が皿用のリリース位置として設定されている。また、丼用の3つのリリース位置PR1~PR3、小鉢用の3つのリリース位置PR4~PR6、皿用の2つのリリース位置PR7~PR8には、それぞれ優先順位が設定されている。例えば、食器毎の複数のリリース位置には、ロボットアーム機構130の設置位置から遠い順に優先順位が設定されている。ここでは、丼用の3つのリリース位置PR1~PR3には、リリース位置PR1,PR2,PR3の順で優先順位が割り当てられている。同様に、小鉢用の3つのリリース位置PR4~PR6には、リリース位置PR4,PR5,PR6の順で優先順位が割り当てられている。皿用の3つのリリース位置PR7~PR8には、リリース位置PR7,PR8の順で優先順位が割り当てられている。さらに、リリース位置各々には、積み重ねられる食器数、つまりリリース回数の上限数が設定されており、リリース回数の上限数は例えば6に設定されている。
【0032】
リリース位置決定部129は、複数のリリース位置PR1~PR8のうち、画像処理部127により判断された食器の種類に対応するリリース位置を特定する。リリース位置決定部129は、食器の種類に応じたリリース位置のうち、ストック食器数計数部128により保持されているリリース位置毎のリリース回数が上限数に達していないリリース位置を抽出する。リリース位置決定部129は、抽出したリリース位置から最も優先順位の高いリリース位置を選択する。例えば、
図6(a)に示すように、丼と判断された重心位置PP01、PP03について、そのリリース位置をリリース位置PR1、小鉢と判断された重心位置PP04のリリース位置をリリース位置PR4、皿と判断された重心位置PP02のリリース位置をリリース位置PR7に決定する。また、
図6(b)に示すように、丼用のリリース位置PR1~PR3のうち優先度の高いリリース位置PR1のリリース回数が5であるため、リリース位置決定部129は、丼と判断された重心位置PP06についてそのリリース位置をリリース位置PR1に決定する。それによりリリース位置PR1のリリース回数が上限に達するため、重心位置PP07の丼については第2位の優先順位のリリース位置PR2に移動する。同様に、小鉢用のリリース位置PR4~PR6のうち優先度の高いリリース位置PR4のリリース回数が上限に達しているため、重心位置PP08の小鉢のリリース位置をPR5に決定する。同様に、皿用のリリース位置PR7~PR8のうち優先度の高いリリース位置PR7のリリース回数が上限に達しているため、皿(PP05)のリリース位置をPR8に決定する。
【0033】
動作制御部123は、画像処理部108により特定されたピッキングエリア内の複数の食器各々の種類、重心位置、姿勢に関する情報を用いて、ピッキングの順番を決定する。例えば、丼を最優先のピッキング対象とし、小鉢を第2位の優先順位とし、皿が最終順位とする。同種類の食器の中では、ロボットアーム機構130の支柱部2から近い順番でピッキングする。また、動作制御部123は、食器の種類に関係なく、最もピッキング作業が短くなるように、食器のピッキングの順番を決定してもよい。
【0034】
図7は、本実施形態に係る食器洗浄システムの動作を示すタイミングチャート図である。
図7に示すように、フットスイッチ104が踏下されたのを契機に、ロボットアーム機構130は、第1タスクプログラムに従って洗浄準備作業を行う。洗浄完了信号を受信したのを契機に、ロボットアーム機構130は、第2タスクプログラムに従って食器収納作業を行う。ピッキングエリアに食器が存在しないとき、ロボット装置100はシステム制御部121の制御に従って、スタンド駆動部301に対してピッキング完了信号を出力する。ピッキング完了信号を受けてスタンド駆動部301が駆動し、それによりスタンド300が回転し、洗浄用ラック800が回収レール701に回収される。回収レール701に回収された洗浄用ラック800は搬出台501から搬入台401に戻される。
【0035】
図8は、本実施形態に係る食器洗浄システムの複数のタスク処理モードを説明するためのタイミングチャートである。本実施形態に係る食器洗浄システムは複数のタスク処理モード、ここでは安全処理モード、逐次処理モード、割り込み処理モードを備える。これらの処理モードは、作業員により適宜切り替えることができる。
【0036】
安全処理モードは、ロボットアーム機構による一連の洗浄作業の安全性の高い処理モードである。安全処理モードにおいて、ロボットアーム機構130が洗浄準備作業又は食器収納作業を行っている間、システム制御部121の制御に従って、フットスイッチ104がインターロック状態に遷移される。ロボットアーム機構130による洗浄準備作業は、ロボットアーム機構130によるタスク処理がなされていないときに、フットスイッチ104が踏下されない限り行われない。例えば、
図8(a)に示すように、食器洗浄作業が行われている間(時刻t13~時刻t15)の時刻t14にフットスイッチ104が踏下されても、ロボット装置100はフットスイッチ104からの信号を受け付けない。それにより、作業員が見ているときにロボットアーム機構130の動作が開始されるので、作業員は、ロボットアーム機構130が正常に動作を開始しているかをその都度確認することができる。これは安全性の向上に寄与する。
【0037】
逐次処理モードは、食器の洗浄効率を向上を実現する処理モードである。逐次処理モードは、第1タスクプログラムを実行する契機となる信号と第2タスクプログラムを実行する契機となる信号とを入力された順に逐次処理するモードである。例えば
図8(b)に示すように、ロボット装置100は、時刻t23で受け付けた食器収納作業が行われている間(時刻t23~時刻t25)の時刻t24に食器洗浄機200から出力された洗浄完了信号を受け付け、食器収納作業を保留する。ロボットアーム機構130は、食器収納作業が完了した後、所定時間経過後の時刻t26で、自動的にその保留していた食器収納作業を開始する。もちろん、時刻t24でフットスイッチ104が踏下された場合においても、洗浄準備作業を保留し、ロボットアーム機構130は、食器収納作業が完了した後、所定時間経過後の時刻t26で、自動的にその保留していた洗浄準備作業を開始する。それにより、ロボットアーム機構130が食器収納作業をしている間に、作業員は食器を洗浄用ラック800に詰め込み、フットスイッチ104を踏下すればよく、ロボットアーム機構130の食器収納作業の完了を待って、フットスイッチ104を踏む必要がなくなる。また、ロボットアーム機構130の食器収納作業と並行して作業員が洗浄準備作業を行うことが出来る。これらは、作業員の作業効率を向上させるとともに、食器の洗浄効率も向上させる。
【0038】
割り込み処理モードは、食器の洗浄効率を向上を実現する処理モードである。割り込み処理モードは、ロボットアーム機構130による食器収納作業が行われている間に、フットスイッチ104が踏下されたとき、ロボットアーム機構130は、一旦、実行中の食器収納作業を中断し、洗浄準備作業を完了した後に、中断していた食器収納作業を再開するモードである。それにより、食器洗浄システムにおいて、ロボットアーム機構130によるピッキング作業と食器洗浄機200による食器洗浄とを並行に行わせることができ、これは、食器の洗浄効率の向上に寄与する。
【0039】
このように、ロボットアーム機構130は洗浄準備作業と食器収納作業とを並列して行うことはできないが、タスク処理モードを逐次処理モードにし、作業員が食器準備作業を担当し、ロボットアーム機構130が食器収納作業を担当するといったように、ロボットアーム機構130と作業員とが協働して作業を行うことができ、それにより洗浄準備作業と食器収納作業とを並行に処理でき、食器の洗浄効率を向上することができる。また、タスク処理モードを割り込み処理モードにすることで、ロボットアーム機構130は、食器収納作業を中断して洗浄準備作業を行い、食器洗浄機200に食器を洗浄させている間に中断していた食器収納作業を再開することができ、洗浄準備作業と食器収納作業動作とを並列して行うことはできないが、効率よく洗浄準備作業と食器収納作業とを行うことができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る食器洗浄システムでは、ロボットアーム機構130は、洗浄用ラック800の搬入作業、洗浄室210の閉鎖作業、洗浄スイッチ211の押下作業、洗浄用ラック800の搬出作業及び食器のピッキング作業からなる一連の洗浄作業のうち、全ての作業を担当する可能性があるために、ロボットアーム機構130の可動範囲内に収まるように、搬入台401、食器洗浄機200、搬出台501及びストック台601の全てが配置されている。それにより、作業員の数に応じて、上記複数の作業のうち、ロボットアーム機構130に担当させる作業を、ロボットアーム機構130の設置位置を変更することなく、動的に変更することができる。しかしながら、ロボットアーム機構130が担当する作業が限定されているのであれば、必ずしも搬入台401、食器洗浄機200、搬出台501及びストック台601の全てがロボットアーム機構130の可動範囲内に収まっていなくてもよい。
【0041】
例えば、ロボットアーム機構130の担当作業が、洗浄用ラック800の搬入作業だけのとき、又は洗浄用ラック800の搬入作業と洗浄室210の閉鎖作業とのとき、又は洗浄用ラック800の搬入作業と洗浄室210の閉鎖作業と洗浄スイッチ211の押下作業とに限定されているときは、ロボットアーム機構130の可動範囲内に収まるように、少なくとも搬入台401と食器洗浄機200とが配置されていればよい。この場合、ロボットアーム機構130は、フットスイッチ104が踏下されたのを契機に作業を開始する。
【0042】
また、ロボットアーム機構130の担当作業が、洗浄用ラック800の搬出作業に限定されているときは、ロボットアーム機構130の可動範囲内に収まるように、少なくとも食器洗浄機200と搬出台501とが配置されていればよい。ロボットアーム機構130による搬出作業は、食器洗浄機200からの洗浄完了信号を受けて開始される。
【0043】
さらに、ロボットアーム機構130の担当作業が、食器のピッキング作業に限定されているときは、ロボットアーム機構130の可動範囲内に収まるように、少なくとも搬出台501とストック台601とが配置されていればよい。ロボットアーム機構130によるピッキング作業は、ピッキングカメラ105により撮影されたピッキングエリア画像が画像処理部127により処理され、ピッキングエリアに食器が存在し、その食器が静止していると判断されたのを契機に開始される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
104…フットスイッチ、105…ピッキングカメラ、110…食器センサ、200…食器洗浄機、201…洗浄機本体、203…支柱、205…ドア、207…ハンドル、209、405,505…搬送ローラ、210…洗浄室、211…洗浄スイッチ、401…搬入台、501…搬出台、601…ストック台、701…回収レール、800…洗浄用ラック、900…ストックラック。