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▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】力強いウッディでパウダリーな匂い物質
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20220323BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220323BHJP
   C07C 13/277 20060101ALI20220323BHJP
   C07C 49/547 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20220323BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C11B9/00 K
C11B9/00 M
C11D3/50
C07C13/277 CSP
C07C49/547
A61K8/35
A61Q13/00 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018562320
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017065072
(87)【国際公開番号】W WO2017220568
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】16175671.3
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ファンクハウザー
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト モレッティ
(72)【発明者】
【氏名】フローリン ド ナントゥイユ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-008340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00- 15/00
C11C 1/00- 5/02
C11D 1/00- 19/00
C07B 31/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00- 99/00
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、一方の点線は炭素-炭素単結合を表し、もう一方は炭素-炭素二重結合を表し、かつRは、水素原子、またはC1~C4アルキル基もしくはアルケニル基を表す)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物の、ウッディでパウダリーなイオノン型の匂いノートを付与するための賦香性成分としての使用。
【請求項2】
前記化合物は、式
【化2】
(式中、Rは、請求項1中と同じ意味を有する)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
Rは、Me基、Et基、Pr基、Pr基、またはプロパ-2-エン-2-イル基を表すことを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項4】
Rは、Me基、またはEt基を表すことを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記化合物は、1-((1Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項6】
i)請求項1から5までのいずれか1項に定義される少なくとも1種の式(I)の化合物と、
ii)香料キャリアーおよび香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に、少なくとも1種の香料助剤と、
を含む、ウッディでパウダリーなイオノン型の匂いノートを付与するための賦香性組成物。
【請求項7】
求項6に定義される組成物を含む、賦香消費者製品。
【請求項8】
前記賦香消費者製品が、香料、ファブリックケア製品、ボディケア製品、化粧用調剤、スキンケア製品、エアケア製品またはホームケア製品であることを特徴とする、請求項7記載の賦香消費者製品。
【請求項9】
前記賦香消費者製品は、精製香料、スプラッシュもしくはオードパルファム、コロン、シェーブローションもしくはアフターシェーブローション、液体洗剤もしくは固形洗剤、ファブリック柔軟剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、ペーパークリーナー、漂白剤クリーナー、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品、シャンプー、染髪用調剤、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品、消毒薬、インティメートケア製品、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラントもしくは制汗剤、脱毛剤、タニング用製品もしくは日焼け用製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メークアップ、賦香石けん、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または足用/手用ケア製品、衛生製品、エアーフレッシュナー、「すぐに使える」粉末状エアーフレッシュナー、カビ取り剤、調度品ケア、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用洗剤、皮革手入れ用製品、または車手入れ用製品であることを特徴とする、請求項7記載の賦香消費者製品。
【請求項10】

【化3】
(式中、一方の点線は炭素-炭素単結合を表し、もう一方は炭素-炭素二重結合を表し、かつR1は、水素原子、またはC1~C3アルキル基もしくはアルケニル基を表す)の化合物。
【請求項11】
ウッディでパウダリーなイオノン型の匂いノートを付与するために賦香性組成物または賦香物品の匂い特性を付与、増強、改善または変更する方法であって、前記組成物または物品に、式(I)
【化4】
(式中、一方の点線は炭素-炭素単結合を表し、もう一方は炭素-炭素二重結合を表し、かつRは、水素原子、またはC1~C4アルキル基もしくはアルケニル基を表す)の少なくとも1種の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物の有効量を添加することを含む、方法。
【請求項12】
前記化合物は、式
【化5】
(式中、Rは、請求項1中と同じ意味を有する)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Rは、Me基、Et基、Pr基、Pr基、またはプロパ-2-エン-2-イル基を表すことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項14】
Rは、Me基、またはEt基を表すことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記化合物は、1-((1Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料の分野に関連する。より具体的には、本発明は、以下に定義される1-アセチル誘導体、および該誘導体の賦香性成分としての使用に関する。したがって、ここで述べられることに続いて、本発明はまた、賦香消費者製品の一部としての本発明の化合物を含む。
【0002】
先行技術
本発明者らが最善で知る限り、本発明の化合物自体は公知であるが(J.Graefe et al,in Tetrahedron 1970,26,2677を参照)、化学製品としてのみ報告されているにすぎない。その先行技術は、式(I)の化合物の感覚刺激特性、または香料の分野における前記化合物の使用を一切報告も示唆もしていない。
【0003】
本発明者らが最善で知る限り、香料において有用である可能性があると報告された最も近い構造類似体は、シクロドデカジエンの部分的に水素化された1-アセチル誘導体であり(国際公開第99/65852号パンフレット(WO99/65852)に報告されている)、一般的なウッディアンバーリーでムスキーな匂いを有すると記載されている。前記先行技術は、該ジエン誘導体が、安定性試験において中程度ないし不十分な性能を有し、良好な持続性を有することを示している。本発明のトリエンが、改善された性能を有する有用な香料成分であり得るということはどこにも示唆されていない。
【0004】
本発明の説明
ここで、本発明者らは、驚くべきことに、式
【化1】
(式中、一方の点線は炭素-炭素単結合を表し、もう一方は炭素-炭素二重結合を表し、かつRは、水素原子、またはC1~C4アルキル基もしくはアルケニル基を表す)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物が、例えばウッディでパウダリーなイオノン型の匂いノートの付与のために賦香性成分として使用され得ることを見出した。
【0005】
明瞭にするために、「式中、一方の点線は炭素-炭素単結合を表し、もう一方は炭素-炭素二重結合を表す」または同等の表現は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち前記点線によってつながった炭素原子、例えば炭素1および2の間の全結合(実線および点線)が炭素-炭素単結合または二重結合であることを意味する。
【0006】
本発明の任意の実施形態によれば、前記化合物(I)は、C13~C17化合物、好ましくはC14~C16化合物である。
【0007】
本発明の任意の実施形態によれば、前記化合物(I)は、式
【化2】
(式中、Rは、式(I)中と同じ意味を有する)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物である。
【0008】
本発明の任意の実施形態によれば、前記化合物(I)は、式
【化3】
(式中、Rは、式(I)中と同じ意味を有する)の化合物のその立体異性体のいずれか1つの形またはそれらの混合物である。
【0009】
本発明の任意の実施形態によれば、前記本発明の化合物は、式中のRが水素原子またはC1~C3アルキル基もしくはアルケニル基を表す化合物である。好ましくは、前記本発明の化合物は、式中のRがC1~C3アルキル基もしくはアルケニル基を表す化合物である。特に、Me、Et、iPr、nPr、プロパ-2-エン-2-イル、またはシクロプロピル等のR基を挙げることができる。好ましくは、Me、Et、iPrまたはnPr、プロパ-2-エン-2-イル、さらにより好ましくはMe、Et、またはiPr、さらにより好ましくはMeまたはEt等のR基を挙げることができる。
【0010】
明瞭にするために、表現「その立体異性体のいずれか1つ」または同等の表現は、当業者により理解される通常の意味、すなわち本発明の化合物が任意の純粋なジアステレオマーであり得る(例えば、それぞれの炭素-炭素二重結合が1つの特定の配置EまたはZにある)ことを意味する。
【0011】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、前記化合物は、そのE異性体もしくはZ異性体またはそれらの混合物の形であり得る。例えば本発明は、式(I)で示され、同じ化学構造を有するが、二重結合の配置の点で異なる1種以上の化合物を含む、または該化合物からなる物の組成物を含む。特に、化合物(II)は、ジアステレオマー、例えば(1Z,5E,9E)、(1Z,5Z,9E)、(1Z,5E,9Z)、(1Z,5Z,9Z)、(1E,5E,9E)、(1E,5Z,9E)、(1E,5Z,9Z)、(1E,5E,9Z)またはそれらの混合物の形であり得、かつ化合物(II’)は、ジアステレオマー、例えば(1Z,4E,8E)、(1Z,4Z,8E)、(1Z,4E,8Z)、(1Z,4Z,8Z)、(1E,4E,8E)、(1E,4Z,8E)、(1E,4Z,8Z)、(1E,4E,8Z)またはそれらの混合物の形であり得る。
【0012】
明瞭にするために、1つだけの炭素-炭素二重結合の立体化学のみ、例えば(1Z)を指定することによりジアステレオマーの混合物を示すことができるが、それは、当該技術分野における通常の意味、例えば(1Z)の場合には、(1Z,5E,9E)、(1Z,5Z,9E)、(1Z,5E,9Z)および(1Z,5Z,9Z)ジアステレオマーからなる混合物を意味する。
【0013】
特に、本発明の化合物は、主として立体異性体(1Z,5E,9E)、(1Z,5E,9Z)および(1Z,5Z,9E)を含有し、残りは本質的に(1Z,5Z,9Z)立体異性体である混合物の形であり得る。そのような場合に、そのような立体異性体の混合物について、質量/質量比(1Z,5E,9E)/[(1Z,5E,9Z)+(1Z,5Z,9E))]が定義され得る。前記実施形態の特定の態様によれば、化合物(I)は、30/70から1/99の間に含まれる(1Z,5E,9E)/[(1Z,5E,9Z)+(1Z,5Z,9E))]比を有する立体異性体の混合物の形である。好ましくは、前記立体異性体の混合物は、25/75から2/98の間に含まれる(1Z,5E,9E)/[(1Z,5E,9Z)+(1Z,5Z,9E))]比を有する。さらにより好ましくは、前記立体異性体の混合物は、15/85から2/98の間に含まれる(1Z,5E,9E)/[(1Z,5E,9Z)+(1Z,5Z,9E))]比を有する。好ましくは、前記立体異性体の混合物の主要な異性体は、異性体(1Z,5E,9Z)である。
【0014】
本発明の化合物の具体的な例としては、限定されない例として、実施例1のiii)で得られるような、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンの6/94の(1Z,5E,9E)/[(1Z,5E,9Z)+(1Z,5Z,9E))]異性体比を有する異性体(1Z,5E,9E)、(1Z,5E,9Z)および(1Z,5Z,9E)の混合物の形を挙げることができ、それは、シダー、ベチバー、アンバーリーな側面を有するウッディノートを特徴とし、イオノン、イリス、パウダリーなノートを連想させる。上記化合物はまた、モッシーノートを有する。
【0015】
その他の例としては、1-((1Z,5E,9Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンを挙げることができ、それは、上述の化合物と同様の匂いを有するが、それ自体はモッシーノートを有さないことにより区別される。
【0016】
本発明の化合物のその他の具体的な限定されない例としては、以下の第1表中の化合物を挙げることができる。
【0017】
第1表:本発明の化合物、およびそれらの匂い特性
【表1】
【0018】
本発明の特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オン、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オン、1-((1Z,5E,9Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オン、または1-(1Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンである。
【0019】
本発明の化合物の匂いを先行技術のジエン化合物の匂いと比較すると、本発明の化合物はそれ自体、異なる匂いの特徴の点と、より力強くかつ持続的な特徴を有する点で区別される。
【0020】
例えば1-((1Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンと相応の先行技術のジエンとを比較すると、本発明の化合物は、イオノンパウダリーノート、モッシーノートを有する点と、より温かくかつ強力なウッディな特徴である点と、先行技術の化合物のファッティおよびダスティなコノテーションがないという点で異なる。前記相違点は、本発明の化合物および先行技術の化合物を、それぞれ異なる使用に適したものにし、すなわち異なる感覚刺激的印象を付与するのに適したものにする。
【0021】
上述のように、本発明は、式(I)の化合物の賦香性成分としての使用に関する。言い換えると、本発明は、賦香性組成物または賦香物品または表面の匂い特性を付与、増強、改善または変更する方法またはプロセスであって、前記組成物または物品に、有効量の式(I)の少なくとも1種の化合物を添加して、例えばその典型的なノートを付与することを含む方法に関する。
【0022】
「式(I)の化合物の使用」とは、本明細書ではまた、化合物(I)を含み、香料産業において有利に使用することができる任意の組成物の使用であるとも理解されるべきである。
【0023】
実際に賦香性成分として有利に使用することができる前記組成物も、本発明の主題である。
【0024】
したがって、本発明のもう1つの主題は、
i)賦香性成分として、先に定義された少なくとも1種の本発明の化合物と、
ii)香料キャリアーおよび香料基剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分と、
iii)任意に、少なくとも1種の香料助剤と、
を含む、賦香性組成物である。
【0025】
「香料キャリアー」とは、香料の観点から実際に中立的な材料、すなわち賦香性成分の感覚刺激特性を大きく変更しない材料を意味する。前記キャリアーは、液体または固体であり得る。
【0026】
液体キャリアーとしては、限定されない例として、乳化系、すなわち溶剤および界面活性剤、または香料で通常使用される溶剤を挙げることができる。香料で通常使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は、網羅的にすることはできない。しかしながら、限定されない例として、ブチレングリコールもしくはプロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコールおよびそのモノエーテル、1,2,3-プロパントリイルトリアセテート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、1,3-ジアセチルオキシプロパン-2-イルアセテート、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、2-(2-エトキシエトキシ)-1-エタノール、トリエチルシトレートのような溶剤またはそれらの混合物を挙げることができ、それらが最も一般的に使用される。香料キャリアーおよび香料基剤の両方を含む組成物については、先に規定されたもの以外の適切な香料キャリアーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンもしくはその他のテルペン類、イソパラフィン類、例えばIsopar(登録商標)(供給元:Exxon Chemical)の商標として知られるイソパラフィン類またはグリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類、例えばDowanol(登録商標)(供給元:Dow Chemical Company)の商標として知られるグリコールエーテルエステル類、または水素化ひまし油、例えばCremophor(登録商標)RH40(供給元:BASF)の商標として知られる水素化ひまし油であってよい。
【0027】
固体キャリアーとは、そこに賦香性組成物または賦香性組成物の幾つかの要素が化学的または物理的に結合され得る材料を表すことを意図する。一般的に、そのような固体キャリアーは、該組成物の安定化のため、または該組成物もしくは幾つかの成分の蒸発速度を抑えるためのいずれかのために使用される。固体キャリアーは、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果に至る手法を把握している。しかしながら、固体キャリアーの限定されない例としては、吸収性ゴムもしくはポリマー、または無機材料、例えば多孔質ポリマー、シクロデキストリン、木材系材料、有機ゲルもしくは無機ゲル、クレイ、石膏、タルクもしくはゼオライトを挙げることができる。
【0028】
固体キャリアーのその他の限定されない例としては、カプセル化材料を挙げることができる。そのような材料の例は、壁形成材料および可塑化材料、例えば単糖類、二糖類もしくは三糖類、天然デンプンもしくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質もしくはペクチン、またはさらに、H.Scherz著の親水コロイド:食品における安定化剤、増粘剤およびゲル化剤(Hydrokolloide:Stabilisatoren,Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln)、モノグラフシリーズ 食品化学、食品品質の第2巻(Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet)、Behr’s出版(Behr’s Verlag GmbH & Co.)、ハンブルク、1996年のような参考書に挙げられる材料を含んでもよい。カプセル化は、当業者に良く知られた方法であり、例えば噴霧乾燥、凝集もしくはさらに押出等の技術を使用することにより行うことができ、またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含む被覆カプセル化からなる。
【0029】
固体キャリアーの限定されない例としては、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素もしくはポリウレタン型の樹脂またはそれらの混合物(前記樹脂のすべては当業者に良く知られている)を有するコア・シェルカプセルであって、重合、界面重合、コアセルベーションもしくは任意にポリマー安定化剤またはカチオン性コポリマーの存在下で一緒にすることによって誘導される相分離法のような技術(前記技術のすべては先行技術に記載されている)を使用したカプセルを挙げることができる。
【0030】
尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メタノールメラミン、グアナゾール等の樹脂、およびそれらの混合物は、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド、2,2-ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)とアミンとの重縮合によって製造され得る。その一方で、商標Urac(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(供給元:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(供給元:BASF)として市販されている予め形成された樹脂のアルキロール化ポリアミンを使用することができる。
【0031】
その他の樹脂は、ポリオール、例えばグリセロールおよびポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートもしくはキシリレンジイソシアネートの三量体またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットあるいはキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体(商品名Takenate(登録商標)として知られる、供給元:Mitsui Chemicals)、なかでもキシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの三量体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットの重縮合により製造される樹脂である。
【0032】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連した影響力の大きな文献の幾つかは、K.DietrichらによってActa Polymerica,1989年,第40巻,第243頁、第325頁および第683頁、ならびに1990年,第41巻,第91頁において発表されたような文献を含む。そのような文献は、特許文献にさらに詳説されかつ例示された従来技術の方法に従ってそのようなコア・シェル型マイクロカプセルを製造することに影響を及ぼす様々なパラメータを既に記載している。米国特許第4,396,670号明細書(US4,396,670)(Wiggins Teape Group Limited)は、その特許文献の該当する初期の例である。それ以来、多くの他の著者はこの分野で文献を拡充しており、ここですべての発表された進展を網羅することはできないであろうが、カプセル化技術における一般知識は非常に重要である。そのようなマイクロカプセルの適切な使用を開示する、より近年の適切な文献は、例えばH.Y.Leeら著のマイクロカプセル化ジャーナル(Journal of Microencapsulation),2002年,第19巻,第559~569頁、国際特許出願の国際公開第01/41915号パンフレット(WO01/41915)、またはさらにS.BoneらによってChimia,2011年,第65巻,第177~181頁において指摘されている。
【0033】
「香料基剤」とは、本明細書では、少なくとも1種の賦香性補助成分を含む組成物を意味している。
【0034】
前記賦香性補助成分は、式(I)の化合物ではない。さらに、「賦香性補助成分」とは、本明細書においては、賦香性調製物または快い効果を付与する組成物において使用される化合物を意味している。言い換えると、何かに賦香するものとみなされるべき、そのような補助成分は、当業者によれば、組成物の匂いを良い方向にまたは心地よく、かつ有する匂いと同じにならないように付与または改変することができるものと認識されるはずである。
【0035】
該基剤中に存在する賦香性補助成分の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、それらはいずれにせよ網羅的なものではなく、ここで、当業者は、その一般知識に基づき、かつ意図される使用または適用および所望の感覚刺激効果に従ってそれらを選択することができる。一般用語においては、これらの賦香性補助成分は、アルコール類、ラクトン類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アセテート類、ニトリル類、テルペノイド類、窒素系もしくは硫黄系複素環式化合物および精油のような様々な化学物質クラスに属するものであり、前記賦香性補助成分は、天然由来もしくは合成由来のものであるか、またはプロパフューム(すなわち、分解に際して賦香性成分を遊離する化合物)であってさえもよい。プロパフュームの例は、文献、例えばHerrmannによる出版文献である応用化学国際版(Angewandte Chemie International Edition)、2007年、第46巻、第5836頁~5863頁、または同じ種類のより最近の論文だけでなく、その分野の豊富な特許文献に記載されている。
【0036】
特に、香料配合物で通常使用される賦香性補助成分、例えば
- アルデハイディック成分:デカナール、ドデカナール、2-メチル-ウンデカナール、10-ウンデセナール、オクタナール、および/またはノネナール;
- アロマティック-ハーバル成分:ユーカリ油、樟脳、ユーカリプトール、メントールおよび/またはα-ピネン;
- バルサミック成分:クマリン、エチルバニリンおよび/またはバニリン;
- シトラス成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジ油、リナリルアセテート、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1-p-メンテン-8-イルアセテートおよび/または1,4(8)-p-メンタジエン;
- フローラル成分:メチルジヒドロジャスモネート、リナロオール、シトロネロール、フェニルエタノール、3-(4-t-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルサリチレート、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチル-4(2H)-ピラノール、β-イオノン、メチル2-(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)-3-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン、ヘキシルサリチレート、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、3-(4-イソプロピルフェニル)-2-メチルプロパナール、ベルジルアセテート、ゲラニオール、p-メンタ-1-エン-8-オール、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアセテート、4-シクロヘキシル-2-メチル-2-ブタノール、アミルサリチレート、高cis-メチルジヒドロジャスモネート、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、ベルジルプロピオネート、ゲラニルアセテート、テトラヒドロリナロオール、cis-7-p-メンタノール、プロピル(S)-2-(1,1-ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2-メトキシナフタレン、2,2,2-トリクロロ-1-フェニルエチルアセテート、4/3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、4-フェニル-2-ブタノン、イソノニルアセテート、4-(1,1-ジメチルエチル)-1-シクロヘキシルアセテート、ベルジルイソブチレートおよび/またはメチルイオノン異性体の混合物;
- フルーティー成分:γ-ウンデカラクトン、4-デカノライド、エチル2-メチルペンタノエート、ヘキシルアセテート、エチル2-メチルブタノエート、γ-ノナラクトン、アリルヘプタノエート、2-フェノキシエチルイソブチレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートおよび/またはジエチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート;
- グリーン成分:2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルバルデヒド、2-t-ブチル-1-シクロヘキシルアセテート、スチラリルアセテート、アリル(2-メチルブトキシ)アセテート、4-メチル-3-デセン-5-オール、ジフェニルエーテル、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;
- ムスク成分:1,4-ジオキサ-5,17-シクロヘプタデカンジオン、ペンタデセノライド、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-シクロペンタ[G]イソクロメン、(1S,1’R)-2-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシ]-2-メチルプロピルプロパノエート、および/または(1S,1’R)-[1-(3’,3’-ジメチル-1’-シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
- ウッディ成分:1-(オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-1-エタノン、パチュリ油、パチュリ油のテルペン分画、(1’R,E)-2-エチル-4-(2’,2’,3’-トリメチル-3’-シクロペンテン-1’-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、メチルセドリルケトン、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタン-1-オンおよび/またはイソボルニルアセテート;
- その他の成分(例えば、アンバー、パウダリースパイシー、またはウォータリー):ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチル-ナフト[2,1-b]フラン、およびその立体異性体のいずれか、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、クローブ油、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、および/または3-(3-イソプロピル-1-フェニル)ブタナール
を挙げることができる。
【0037】
本発明による香料基剤は、上述の賦香性補助成分に制限されるものでなくてもよく、多くのこれら以外の補助成分は、いずれにせよ、S.Arctander著の香料およびフレーバーの化学(Perfume and Flavor Chemicals)、1969年、モントクレア(米国、ニュージャージー州)もしくはそのより最新版、または同じ性質のその他の論文、ならびに香料分野における豊富な特許文献などの参考書に列挙されている。また、前記補助成分は、様々な種類の賦香性化合物を制御様式で放出することが知られる化合物であってもよいと理解される。
【0038】
「香料助剤」とは、本明細書においては、追加的に加えられる恩恵、例えば色、特に耐光性、化学的安定性等を付与することができる成分を意味している。賦香性組成物中で通常使用される助剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅し得るものではないが、前記成分は当業者に良く知られていると述べる必要がある。具体的な限定されない例としては、以下の、粘度剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化調節剤および/またはレオロジー調節剤)、安定化剤(例えば、保存剤、酸化防止剤、熱/光安定化剤および/または緩衝剤もしくはキレート化剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料および/または顔料)、保存剤(例えば、抗細菌剤または抗微生物剤または抗真菌剤もしくは炎症抑制剤)、研磨材、皮膚冷感剤、固定剤、駆虫剤、軟膏、ビタミンおよびそれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
当業者であれば、所望の効果に最適な配合物を、賦香性組成物の上述の成分を混合すること、単純に当該技術分野の標準的知識を適用すること、そして試行錯誤の方法論によって設計することが十分に可能であると理解される。
【0040】
少なくとも1種の式(I)の化合物および少なくとも1種の香料キャリアーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態、ならびに少なくとも1種の式(I)の化合物、少なくとも1種の香料キャリアー、少なくとも1種の香料基剤、および任意に少なくとも1種の香料助剤からなる。
【0041】
特定の実施形態によれば、上述の組成物は、1種より多くの式(I)の化合物を含み、そして本発明の様々な化合物の香調を有するアコードまたは香料を調香師が調合することを可能とし、こうして作製の目的のための新たな構成要素が作製される。
【0042】
明瞭にするために、化学合成から直接的に得られる任意の混合物、例えば適切な精製をしておらず、本発明の化合物が出発物、中間体または最終生成物として含まれることとなる反応媒体は、前記混合物により本発明による化合物が香料のために適切な形で得られない限りは、本発明による賦香性組成物としてはみなされ得ないとも理解される。このように未精製の反応混合物は、一般的に特段の特定がない限り本発明からは除外される。
【0043】
本発明の化合物は、有利には、現代の香料のあらゆる分野において、すなわち精製香料または機能性香料の分野において、前記化合物(I)が添加される消費者製品の匂いを良い方向に付与または改変するために使用することもできる。したがって、本発明のもう1つの主題は、賦香性成分として、先に定義された式(I)の少なくとも1種の化合物を含む賦香消費者製品からなる。
【0044】
本発明の化合物は、そのままで、または本発明の賦香性組成物の一部として加えることができる。
【0045】
明瞭にするために、「賦香消費者製品」とは、適用される表面または空間(例えば皮膚、毛髪、テキスタイルまたは家内表面)に少なくとも1種の心地よい賦香性効果を送達する消費者製品を表すものと意図している。言い換えると、本発明による賦香消費者製品は、所望の消費者製品に相当する機能性配合物および任意に追加の恩恵剤(benefit agent)と、少なくとも1種の本発明の化合物の感覚刺激的有効量とを含む賦香消費者製品である。明瞭にするために、前記賦香消費者製品は、不可食性製品である。
【0046】
賦香消費者製品の成分の性質および種類は、本明細書のより詳細な説明を保証するものではなく、それらはいずれにせよ網羅的なものではなく、当業者は、その一般知識に基づき、かつ前記製品の性質および所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0047】
適切な賦香消費者製品の限定されない例には、香料、例えば精製香料、スプラッシュ、またはオードパルファム、コロンまたはシェーブローションもしくはアフターシェーブローション;ファブリックケア製品、例えば液体洗剤もしくは固形洗剤、ファブリック柔軟剤、液体または固体のセントブースター、ファブリックリフレッシャー、アイロン水、ペーパークリーナー、漂白剤クリーナー、カーペットクリーナー、カーテン手入れ用製品;ボディーケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、染髪用調剤もしくはヘアースプレー、カラーケア製品、整髪製品、デンタルケア製品)、消毒薬、インティメートケア製品;化粧用調剤(例えば、肌用クリームもしくはローション、バニシングクリームまたはデオドラントもしくは制汗剤(例えば、スプレーまたはロールオン)、脱毛剤、タニング用製品もしくは日焼け用製品もしくは日焼け後製品、ネイル用製品、スキンクレンジング、メークアップ)、またはスキンケア製品(例えば、石けん、シャワー用もしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、衛生製品もしくは足用/手用ケア製品);家内空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴または車)および/または公共空間(ホール、ホテル、モール等)で使用することができるエアケア製品、例えばエアーフレッシュナーもしくは「すぐに使える」粉末状エアーフレッシュナー;またはホームケア製品、例えばカビ取り剤、調度品ケア製品、ワイプ、食器用洗剤もしくは硬質表面用(例えば、床、浴槽、サニタリーまたは窓)洗剤、皮革手入れ用製品;車手入れ用製品、例えば磨き剤、ワックスもしくはプラスチッククリーナーが含まれる。
【0048】
上述の賦香消費者製品の幾つかは、本発明の化合物にとって攻撃的な媒体であり得るので、本発明の化合物を、早期の分解から、例えばカプセル化によって、または該化合物を酵素、光、熱もしくはpH変化のような適切な外部刺激に際して本発明の成分を放出するのに適した別の化学物質に化学的に結合させることによって保護する必要があることがある。
【0049】
本発明による化合物が上述の様々な製品または組成物中に導入され得る割合は、広い範囲内の値の幅を有する。これらの値は、本発明による化合物が、当該技術分野で通常使用される賦香性補助成分、溶剤または添加剤と混合される場合には、賦香されるべき物品の性質および所望の感覚刺激効果ならびに所定の基剤における補助成分の性質に依存している。
【0050】
例えば、賦香性組成物の場合には、典型的な濃度は、本発明の化合物が導入される組成物の質量に対して0.05質量%~20質量%またはさらに高い本発明の化合物のオーダーである。賦香消費者製品の場合には、典型的な濃度は、本発明の化合物が導入される消費者製品の質量に対して0.01質量%~10質量%またはさらに高い本発明の化合物のオーダーである。
【0051】
本発明の化合物は、アセチレンをシクロドデカ-4,8-ジエン-1-オンに付加することに続き、得られた1-アルキニルシクロドデカ-4,8-ジエン-1-オールを脱水することで、1-アルキニルシクロドデカ-1,5,9-トリエンが形成され、それを次いで、三重結合の水和により変換することで、所望の本発明の化合物を得ることができる方法に従って製造することができる。前記脱水工程および水和工程は、ワンポットで実施することができ、当業者に良く知られた条件に従うループ転位として知られており、例えば条件は、独国特許第19848305号明細書(DE19848305)、国際公開第2015/144832号パンフレット(WO2015/144832)またはOrganic Process Research&Development 2002,6,216に報告されている。したがって、本発明のもう1つの態様は、式
【化4】
(式中、点線は先に指定されたのと同じ意味を有し、かつR1は水素原子またはC1~C3アルキル基もしくはアルケニル基を表す)の中間生成物、および該中間生成物の、本発明の化合物の製造のための使用に関する。
【0052】
もう1つの実施形態によれば、本発明の化合物は、トリメチルシランカルボニトリルをシクロドデカ-4,8-ジエン-1-オンに付加するのに続き、(トリメチルシリル)オキシ基を脱離させることで、1-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルボニトリルおよび1-シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルボニトリルの混合物が形成され、それらを分離することができる方法に従って製造することができる。該ニトリル化合物は、次いでアルデヒドへと還元される。グリニャール試薬の添加に続き、酸化反応を行うことにより、本発明の化合物が得られる。
【0053】
実施例
ここで本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明することとする。その際、略語は、当該技術分野の通常の意味を有する。温度は、摂氏度(℃)で示され、NMRスペクトルデータは、CDCl3(特に規定されなければ)中で1Hおよび13Cについては360MHzまたは400MHzの機器で記録し、化学シフトδは、標準としてのTMSに対してppmで示され、結合定数JはHzで表現される。
【0054】
実施例1
先行技術の化合物1-(4,8-シクロドデカジエン-1-イル)-1-エタノンは、先行技術の国際公開第99/65852号パンフレット(WO99/65852)の実施例3で報告される方法により製造することができた。
匂い:ウッディ、シダー、ファッティ、ダスティ。
【0055】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オン(式(I)の化合物)の合成
i)1-エチニルシクロドデカ-4,8-ジエン-1-オール(化合物A)の製造:
LaCl3・2LiClのTHF溶液(0.6M、200ml、120mmol)を、室温で、そのままのシクロドデカ-4,8-ジエン-1-オン(4E,8E(5%)異性体、4E,8Z(47%)異性体、4Z,8E(47%)異性体の混合物、国際公開第2012/175437号パンフレット(WO2012/175437)、70.05g、393mmol)に添加した。得られた溶液を、0℃~5℃に冷却し、塩化エチニルマグネシウムのTHF溶液(0.5M、800ml、400mmol)で4時間の期間にわたり処理した。得られた溶液を室温まで温め、その温度でGC分析は反応の完了を示した。それを0℃に冷却し、塩化アンモニウムの飽和水溶液(200ml)をゆっくり添加することにより処理した。次いで該反応物を、セライトを通じて濾過した。その濾液を、メチルt-ブチルエーテルで2回抽出した。それぞれの有機相を、水およびブラインで洗浄した。合した抽出物を、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させた。該濾液の濾過および濃縮の後に、その生成物を、Fisherカラムを通じた分別蒸留により精製することで、以下の異性体混合物:6%-45%-49%を有する所望の生成物(53.67g、263mmol、67%)が得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 204)。
【0056】
【表2】
【0057】
ii)1-エチニルシクロドデカ-1,5,9-トリエン(化合物B)の製造:
42.2gの化合物A(42.2g、208mmol)を、ギ酸(341g、7.5mol)中に溶解させた。水(14g、780mmol)を添加した。室温で30分間にわたり撹拌した後に、その反応物を水へと注ぎ、メチルt-ブチルエーテルで2回抽出した。それぞれの有機相を、飽和重炭酸ナトリウム、水、およびブラインで洗浄した。合した抽出物を、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させた。溶剤の蒸発後に得られた残留物を、バルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃/0.1mbar)により精製することで、2つの画分:
第1画分:10.02gの77%純度の化合物(異性体混合物=7%-29%-41%、41.4mmol)
第2画分:18.24gの61%純度の化合物(異性体混合物=5%-22%-34%、59.7mmol)
が得られた。
全収率=101.1mmol、49%。
【0058】
第1画分をさらに、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1)に続いて、バルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃/0.1mbar)により精製することで、6.54g(92%純度)の所望の生成物が、異性体混合物(7%-36%-49%)として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 186)。
【0059】
iii)1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オン(化合物C)の製造
AuCl(0.23g、0.99mmol)を、メタノール(50ml)中に溶解させた。先に製造された化合物B(5.4g、29mmol、7%-36%-49%の異性体混合物)を添加し、引き続き水(2.04g、113mmol)を添加した。その反応物を、3時間にわたり還流加熱した。室温に冷却した後に、それをメチルt-ブチルエーテルで希釈した。固体を濾別し、メチルt-ブチルエーテルですすいだ。濾液を濃縮した。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1)に続いて、バルブ・ツー・バルブ蒸留(110℃/0.2mbar)により精製した。
【0060】
2.85gの所望の生成物(14mmol、48%)が、異性体(1Z,5E,9E)、(1Z,5E,9Z)および(1Z,5Z,9E)の混合物(それぞれ、6%-69%-25%)として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 204)。
【0061】
【表3】
【0062】
iv)1-((1Z,5E,9Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンの製造
前記異性体は、4Z,8E-シクロドデカジエノンから、実施例1の項目i)~iii)で報告された工程に従って製造した。
【0063】
【表4】
【0064】
v)1-((1Z,5E,9E)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンの製造
前記異性体は、4E,8E-シクロドデカジエノンから、実施例1の項目i)~iii)で報告された工程に従って製造した。
【0065】
【表5】
【0066】
vi)1-((1Z,5Z,9E)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンの炭素NMR
【表6】
【0067】
実施例2
式(I)のその他の化合物の合成
i)1-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルボニトリルおよび1-シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルボニトリルの製造
ヨウ化亜鉛(II)(4.5g、14.2mmol)およびトリメチルシランカルボニトリル(20g、200.0mmol)を、370mlのジクロロメタンに添加した。その懸濁液を0℃に冷却し、シクロドデカ-4,8-ジエン-1-オン(35g、196mmol、4E,8E(5%)異性体、4E,8Z(47%)異性体、4Z,8E(47%)異性体の混合物、国際公開第2012/175437号パンフレット(WO2012/175437)を参照)を滴加した。添加が完了したら、その反応物を室温で2時間にわたり撹拌した。該反応混合物を、水性重炭酸ナトリウム上に注ぎ、メチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。バルブ・ツー・バルブ蒸留により、172mmolの1-((トリメチルシリル)オキシ)シクロドデカ-4,8-ジエン-1-カルボニトリルの異性体混合物が得られた。
【0068】
1-((トリメチルシリル)オキシ)シクロドデカ-4,8-ジエン-1-カルボニトリル(172mmol)およびピリジン(150mL)の50mlのトルエン中の混合物に、塩化ホスホリル(50ml、473mmol)を室温で滴加した。その反応物を3時間にわたり還流加熱し、次いで室温に冷却した。該反応混合物を氷上にゆっくり注ぎ、メチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、5%塩酸、水性重炭酸ナトリウム、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。バルブ・ツー・バルブ蒸留により、53%の1-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルボニトリルの異性体および21%の1-シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルボニトリルの異性体を含有する40gの粗製材料が得られた。1-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルボニトリル(50℃~55℃)および1-シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルボニトリル(67℃)は、0.1mbarでの分別蒸留により分離することができる。
【0069】
ii)先の工程i)で得られたニトリルからアルデヒドを合成するための一般的手順GP1
ニトリル(87mmol)を、80mlのジクロロメタン中に溶解させ、その溶液を-78℃に冷却した。水素化ジイソブチルアルミニウム(120ml、ジクロロメタン中1M、120mmol)を、-60℃未満の温度に保ちながら滴加した。添加が完了したら、その反応混合物を、冷5%塩酸溶液上にゆっくり注いだ。該混合物を、室温で16時間にわたり撹拌し、次いでメチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。
【0070】
iii)先の工程ii)で得られたアルデヒドから第二級アルコールを合成するための一般的手順GP2
アルデヒド(13.1mmol)を、30mlのTHF中に溶解させ、その溶液を0℃に冷却した。臭化アルキルマグネシウム(15.0ml、THF中1M、15.0mmol)を滴加した。添加が完了したら、該反応混合物を、塩化アンモニウム溶液上にゆっくり注ぎ、次いでメチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。
【0071】
iv)先の工程iii)で得られた第二級アルコールを酸化させてケトンを得るための一般的手順GP3
アルコール(5.5mmol)を、15mlのジクロロメタン中に溶解させ、その溶液を0℃に冷却した。デス・マーチンペルヨージナン(3.0g、7.1mmol)を固体として小分けにして添加した。その反応物を、室温で10分間にわたり撹拌し、その温度で白色の沈殿物が現れた。該反応混合物を、5%水酸化ナトリウム溶液上にゆっくり注ぎ、次いでメチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。
【0072】
v)前記手順に従って得られた化合物の特性評価
シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒド:
シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒドは、工程i)で得られたシクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルボニトリルのGP1に従う還元から得られ、それは、さらなる精製を行わずに後続工程に送られた。
【0073】
シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルバルデヒド:
GP1に従って、工程i)で得られたシクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルボニトリル(1.8g、9.6mmol)から出発して、シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルバルデヒド(95%純度、410.0mg、2.2mmol)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 190)。
【0074】
【表7】
【0075】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オール:
GP2に従って、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒド(15.6g、82mmol)および臭化メチルマグネシウム(60ml、THF中1.4M、84mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オール(10g)は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(115℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 206)。
【0076】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オール:
GP2に従って、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒド(3.0g、15.8mmol)および臭化エチルマグネシウム(7.9ml、THF中2M、15.8mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オール(1.7g)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1~97:3)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(130℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M(-H2O)+ 202)。
【0077】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オール:
GP2に従って、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒド(2.5g、13.1mmol)および臭化イソプロピルマグネシウム(13.1ml、THF中1M、13.1mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オール(2.5g)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1~97:3)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(130℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 234)。
【0078】
シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル(シクロプロピル)メタノール:
GP2に従って、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-カルバルデヒド(2.0g、10.5mmol)および臭化イソプロピルマグネシウム(10.0ml、THF中1.26M、12.6mmol)から出発して、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル(シクロプロピル)メタノール(1.1g)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1~97:3)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(130℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 232)。
【0079】
1-(シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-イル)エタン-1-オール:
GP2に従って、シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-カルバルデヒド(2.1g、11.2mmol)および臭化メチルマグネシウム(15ml、THF中1.4M、21.0mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-イル)エタン-1-オール(1.3g)は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(115℃~135℃、0.1mbar)後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 206)。
【0080】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オン:
GP3に従って、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オール(2.4g、11.7mmol)およびデス・マーチンペルヨージナン(5.7g、13.4mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オン(0.9g、98%純度)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃、0.1mbar)による精製後に異性体(1Z,5E,9E)、(1Z,5E,9Z)および(1Z,5Z,9E)の混合物(それぞれ、6%-35%-57%)として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 204)。
【0081】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オン:
GP3に従って、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オール(1.2g、5.5mmol)およびデス・マーチンペルヨージナン(3.0g、7.1mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)プロパン-1-オン(1.0g、95%純度)は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(115℃、0.1mbar)後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 218)。
【0082】
【表8】
【0083】
1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オン:
GP3に従って、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オール(1.0g、4.3mmol)およびデス・マーチンペルヨージナン(2.4g、5.6mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)-2-メチルプロパン-1-オン(750.0mg、96%純度)は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(115℃、0.1mbar)後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 232)。
【0084】
【表9】
【0085】
シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル(シクロプロピル)メタノン:
GP3に従って、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル(シクロプロピル)メタノール(0.9g、3.8mmol)およびデス・マーチンペルヨージナン(1.6g、3.8mmol)から出発して、シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル(シクロプロピル)メタノン(400.0mg、75%純度)は、バルブ・ツー・バルブ蒸留(110℃、0.1mbar)後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 230)。
【0086】
【表10】
【0087】
1-(シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-イル)エタン-1-オン:
GP3に従って、1-(シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-イル)エタン-1-オール(1.0g、4.9mmol)およびデス・マーチンペルヨージナン(2.7g、6.3mmol)から出発して、1-(シクロドデカ-1,4,8-トリエン-1-イル)エタン-1-オン(350.0mg、94%純度)は、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル 99:1)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留(100℃、0.1mbar)による精製後に異性体混合物として得られた。
GC-MS分析は、それぞれの異性体についての分子イオンを示す(M+ 204)。
【0088】
【表11】
【0089】
実施例3
賦香性組成物の製造
3種の賦香性組成物(A、B、C)を、以下の成分の混合により製造した:
【表12】
【0090】
【表13】
【0091】
香料B)中の1-((1Z)-シクロドデカ-1,5,9-トリエン-1-イル)エタン-1-オンの存在は、香料A)を初期のウッディ-シダーおよびパウダリー/バイオレットの特徴を大きく増強するとともに、トップノートのフレッシュさを失わせずにアンバーリーな温かさを加えることにより変えた。香料B)のウッディ、アンバーリー、およびパウダリーなノートの持続性も、香料A)と比べて増強された。
【0092】
香料C)中の1-(4,8-シクロドデカジエン-1-イル)-1-エタノンの存在は、香料A)をファッティおよびダスティなノートの付与によってより弱くかつより大幅にフレッシュさが低い芳香へと変えた。香料A)のウッディ、アンバーリー、およびパウダリーなノートの持続性も損なわれた。
【0093】
全体的に、香料B)は、香料C)と比べた場合に、より強く、大幅によりウッディ-シダーであり、よりパウダリーであり、より温かく、そしてファッティおよびダスティではなかった。ウッディ、アンバーリー、およびパウダリーなノートの持続性も大きく増強された。全体的に、該組成物はすべての段階でより力強かった。