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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】吸気構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20220323BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
B62D25/20 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019010057
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020117078
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗近 純一
(72)【発明者】
【氏名】梅原 典恵
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086539(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061846(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0296075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/00
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ブロワに連結された吸気ダクトに車室内の冷気を導く吸気構造であって、
車室の床面を構成するアンダーボディと、
前記吸気ブロワの前方において前記アンダーボディの上に幅方向に並んで設けられる二つのシートと、
前記二つのシートの座面間に配され、前記アンダーボディと対向するセンタープレートと、
を備え、
前記二つのシートそれぞれの幅方向内側側面と、前記アンダーボディと、前記センタープレートと、で囲まれた空間が、前端が車室内に開口されるとともに後端が前記吸気ダクトに至る吸気通路として機能する、
ことを特徴とする吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、吸気ブロワに連結された吸気ダクトに車室内冷気を導く吸気構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
自動車の中には、大型バッテリや燃料電池等の発熱体を搭載するものがある。かかる車両では、車室内の空気(冷気)を用いて、発熱体を冷却することがある。この場合、車室内には、車室内冷気を発熱体に導くための吸気通路または吸気ダクト等が配置される。こうした吸気通路等は、車室内の美観や居住性を阻害しないように配置される必要がある。
【0003】
特許文献1には、車室の後部に3人掛けのシートを設け、このシートの構成部品であるシートパッドの内部に吸気ダクトを内蔵する技術が開示されている。かかる技術によれば、吸気ダクトが乗員の目に触れないため、車室内の美観や居住性が阻害されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-155227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術の場合、シートパッド内に吸気ダクトを埋め込むために複雑な製造手順を踏む必要があり、手間であったり、コスト増加を招いたりしていた。また、特許文献1の技術では、樹脂からなる吸気ダクトや当該吸気ダクトの周囲を覆って保護する硬質部材等、吸気ダクトのために専用に設けられた部材が多数必要であり、部品点数の増加や車両重量の増加を招いていた。
【0006】
そこで、本明細書では、より簡易な構成の吸気構造を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する吸気構造は、吸気ブロワに連結された吸気ダクトに車室内の冷気を導く吸気構造であって、車室の床面を構成するアンダーボディと、前記吸気ブロワの前方において前記アンダーボディの上に幅方向に並んで設けられる二つのシートと、前記二つのシートの座面間に配され、前記アンダーボディと対向するセンタープレートと、を備え、前記二つのシートそれぞれの幅方向内側側面と、前記アンダーボディと、前記センタープレートと、で囲まれた空間が、前端が車室内に開口されるとともに後端が前記吸気ダクトに至る吸気通路として機能する、ことを特徴とする。
【0008】
車両において、当然に設けられる、シート、アンダーボディ、センタープレートで囲まれた空間を吸気通路とすることで、吸気通路のために専用部材を設ける必要がなく、軽量で簡易な構成の吸気構造が得られる。
【0009】
この場合、前記二つのシートそれぞれの前記座面は、その前側角部がR形状となっており、前記センタープレートの前端は、前記前側角部の形状に合わせて、前方に進むにつれ幅広になるラッパ形状であり、前記吸気通路の前部も、前方に進むにつれ幅広になるラッパ形状であってもよい。
【0010】
前角部がR形状という、シートにとって一般的な形状を利用することで、特別な設計変更をすることなく、ラッパ形状という吸気通路の入口にふさわしい形状が得られる。
【0011】
また、さらに、前記シートの前記座面の後端かつ幅方向内側端面に取り付けられるベルト受けを備えており、前記吸気通路の後部は、前記ベルト受けの分だけ、幅狭になっていてもよい。
【0012】
ベルト受けという、シートにとって一般的な付属物を利用することで、特別な設計変更をすることなく、吸気通路の出口断面を狭めることができ、吸気通路をより望ましい形状にできる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示する吸気構造によれば、その構造をより簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】吸気構造周辺の概略平面図である。
図2】吸気通路周辺の分解斜視図である。
図3図1のA-A端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して吸気構造10について説明する。図1は、車両に搭載された吸気構造10周辺の概略平面図である。また、図2は、後述する吸気通路28周辺の分解斜視図であり、図3は、図1のA-A端面図である。なお、図1では、センタープレート44にハッチングを施している。
【0016】
本例の吸気構造10は、車両に搭載された発熱体(図示せず)、例えばバッテリ等を冷却するために車室12内の空気(冷気)を吸気ブロワ24を用いて吸引するためのものである。吸気構造10は、車室12内冷気を吸引する吸気ブロワ24と、吸気ブロワ24に連結された吸気ダクト26と、車室12内冷気を吸気ダクト26まで導く吸気通路28と、を備えている。この吸気構造10の説明に先だって、車両の後部の構造について簡単に説明する。
【0017】
車室12の後部には、後部座席を構成する右シート30R及び左シート30Lが車幅方向に並んで設置されている。なお、以下の説明では、左右を区別しない場合には、添字アルファベットを省略して「シート30」と呼ぶ。二つのシート30の背後には、車室12と荷室14を隔てるデッキボード16が設けられている。デッキボード16は、図3に示す通り、車室12の床面から斜め後方に立ち上がる傾斜部16aと、車両後方へと延びる水平部16bと、を有する。この傾斜部16aの背後の空間が荷室14となる。また、車室12及び荷室14の底面には、それらの床面として機能するアンダーボディ18が設けられている。アンダーボディ18は、金属材料からなる薄板である。
【0018】
吸気ブロワ24は、車幅方向略中央であって、デッキボード16の傾斜部16aのすぐ背後に設けられている。この吸気ブロワ24の前面からは、吸気ダクト26が延びている。吸気ダクト26は、樹脂等からなるパイプ部材であり、傾斜部16aに沿うように、吸気ブロワ24からアンダーボディ18近傍まで、前下がりに延びている。この吸気ダクト26の前端は、後述するシートクッション32の後端近傍、すなわち、吸気通路28の後端近傍に到達している。
【0019】
吸気ダクト26と車室12との間には、吸気通路28が設けられる。こうした吸気通路28は、通常、車室12内の美観や居住性を阻害しないように配置されることが望ましい。こうした要望を満たすために、本例では、吸気通路28を、シート30とアンダーボディ18とセンタープレート44を利用して構成している。以下、これについて詳説する。
【0020】
初めに、吸気通路28を構成するシート30、センタープレート44の構成について説明する。右シート30Rと左シート30Lは、所定の間隔をあけて、車幅方向に並んで設置されている。各シート30は、1人掛け用のシートであり、着座者が着座するシートクッション32と、着座者の状態を支えるシートバック34と、を有している。なお、アンダーボディ18のうち、このシート30の設置箇所は、座高を確保するため、上方に膨らんでいる。
【0021】
シートクッション32は、さらに、アンダーボディ18に固定されたクッションフレーム(図示せず)と、当該クッションフレームの上に載置されるクッションパッド38と、を有している。クッションパッド38は、適度な柔軟性を有した材料、例えば、軟質ポリウレタン発泡体等からなる。
【0022】
シートクッション32は、上述した通り、着座者が着座する部位であり、その上面が座面となる。シートクッション32の座面は、大部分が平坦であるが、その幅方向の両端近傍は、着座者の臀部をホールドするように上方に盛り上がっている。また、シートクッション32は、平面視で略正方形であり、その前側角部は、緩やかにラウンドしたR形状となっている。シートクッション32の後側かつ幅方向内側の角部付近には、シートベルトのバックル金具が着脱自在に挿し込まれるベルト受け46が固着されている。なお、図1に示す通り、このベルト受け46の側面は、シートクッション32の幅方向内側端面よりも内側に飛び出ている。
【0023】
シートクッション32の後端からは、シートバック34が立脚している。シートバック34も、シートクッション32と同様に、バックフレーム(図示せず)とバックフレームの前面に取り付けられるバックパッド42とを有している。このシートバック34は、デッキボード16の傾斜部16aに沿うように後上がりに傾斜している。
【0024】
右シート30Rの座面と、左シート30Lの座面との間には、センタープレート44が設けられている。センタープレート44は、例えば、樹脂等からなるプレート部材である。センタープレート44は、二つのシート30の座面間の隙間を塞ぐように略水辺方向に延びるプレート部材であり、例えば樹脂等からなる。このセンタープレート44は、シート30に着座する着座者が、荷物や飲み物等を置くテーブルとして機能する。
【0025】
センタープレート44の幅方向両端は、シートクッション32の幅方向内側の側面に密着している。また、センタープレート44の後端は、デッキボード16の傾斜部16aに接続されている。さらに、センタープレート44の前部は、シートクッション32の前側角部の形状に沿うように、前方に進むにつれ幅広に広がるとともに、シートクッション32の前面を覆うように僅かに下方に垂れ下がっている。ただし、このセンタープレート44の垂れ量は、シートクッション32の厚みよりも十分に小さく、センタープレート44の前部下端とアンダーボディ18との間には、十分な隙間が形成されている。
【0026】
このセンタープレート44は、図3に示すように、アンダーボディ18との間に間隔をあけて、アンダーボディ18と対向している。別の見方をすると、二つのシートの間には、シートクッション32の幅方向内側側面と、センタープレート44と、アンダーボディ18と、で囲まれた空間が形成されている。本例では、この空間を、車室内空気を吸気ダクト26に導く吸気通路28として用いている。吸気通路28の前端は、車室12内に開口されており、後端は、デッキボード16の傾斜部16aまで到達している。また、吸気ダクト26の前部は、傾斜部16aを貫通して、吸気通路28内に入り込んでいる。結果として、吸気通路28の後部と吸気ダクト26の前部は、流体連結されている。そのため、車室12内から吸気通路28に流れ込んだ冷気は、吸気ダクト26を経て吸気ブロワ24により吸い込まれる。
【0027】
以上の説明から明らかな通り、本例では、アンダーボディ18、シート30、センタープレート44で吸気通路28を構成している。かかる構造とする理由について従来技術と比較して説明する。従来でも、車室12内の冷気を荷室14に導くための流体通路を後部座席周辺に設けることが提案されている。しかしながら、従来の流体通路の多くは、樹脂等で構成されたパイプ部材を利用していた。こうしたパイプ部材は、見栄えが悪いため、かかるパイプ部材を用いる場合には、パイプ部材に加え、当該パイプ部材を隠すための意匠部材も別途必要となる。つまり、従来技術では、通常の部品に加え、流体通路を設けるためにパイプ部材や意匠部材といった専用部材が必要となる。こうした専用部材の利用は、部品点数やコストの増加を招くだけでなく、車両重量の増加も招く。
【0028】
また、一部では、シートのパット内に吸気ダクトを埋め込むことも提案されている。この場合、吸気ダクトが外部から見えにくくなるため、見栄えを向上できる。しかしながら、シートのパッド内に、パイプ部材である吸気ダクトを埋め込もうとすると、製造工程が煩雑となり、生産コストの増加を招く。また、この場合であっても、吸気ダクト等の専用部品を別途、用意する必要があり、重量増加などの問題を招いていた。
【0029】
本例では、繰り返し述べているようにシート30と、アンダーボディ18と、センタープレート44とで囲まれた空間を吸気通路28としている。このシート30、アンダーボディ18、センタープレート44は、いずれも、吸気の要否とは関係なく、車両に設けられる部品である。別の言い方をすると、シート30、アンダーボディ18、センタープレート44は、いずれも吸気通路28の一部として機能する以外の役割を有した部品である。かかる部品で吸気通路28を構成することで、吸気通路28のために専用部品を設ける必要がなく、部品点数を低減できる。そして、結果として、コストや車両重量を低減できる。
【0030】
ところで、こうした吸気通路28は、上流側は大きな断面積を、下流側は小さな断面積を有することが望ましい。本例の吸気通路28は、シートクッション32の前端まで延びている。そして、シートクッション32の前側角部は、緩やかにラウンドしたR形状をしており、センタープレート44の前部もこの前側角部の形状に合わせて緩やかにラウンドしたR形状となっている。その結果、吸気通路28の前部は、前方に進むにつれ幅広となる略ラッパ形状となっている。そして、これにより、吸気通路28の上流側の断面積を大きくすることができる。
【0031】
また、上述した通り、シートクッション32の後端近傍には、ベルト受け46が設けられている。このベルト受け46の幅方向内側側面は、シートクッション32の内側側面よりも内側に突出している。かかるベルト受け46があることで、吸気通路28の幅が狭められ、吸気通路28の下流側の断面積が小さくなる。
【0032】
こうしたシートクッション32の前側角部のR形状やベルト受け46は、いずれも、特別な構成ではなく、通常のシート30で当然に存在する構成である。本例では、こうした当然に存在する構成を吸気通路28の形状に関係させることで、特別な設計変更などすることなく、望ましい形状(上流側はラッパ形状、下流側はすぼまった形状)の吸気通路28を得ることができる。
【0033】
また、本例では、アンダーボディ18を吸気通路28の一部として利用しているため、アンダーボディ18に取り付けられる各種部品の配置の自由度が向上する。すなわち、本例のアンダーボディ18には、各種情報を授受するためのアンテナ48(図3参照)が固着されている。吸気通路28として、専用のパイプ部材を設けた場合、このアンテナ48は、パイプ部材(吸気通路28)を避けた位置に設置しなければならず、その配置の自由度が低下する。一方、本例のように、アンダーボディ18を吸気通路28の一部として利用する場合、吸気通路28の位置に関わらず、所望の位置にアンテナ48を設置できる。
【0034】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、シート30と、アンダーボディ18と、センタープレート44とで囲まれた空間を吸気通路28として利用するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。したがって、各部品の形状、個数などは、適宜、変更されてもよい。例えば、本例では、一人掛けシートを二つ設けているが、二人掛け用のベンチシートと、一人掛けシートと、を車幅方向に並べる構成としてもよい。また、シート30の個数は、二つに限らず、より多数でもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 吸気構造、12 車室、14 荷室、16 デッキボード、16a 傾斜部、16b 水平部、18 アンダーボディ、24 吸気ブロワ、26 吸気ダクト、28 吸気通路、30 シート、32 シートクッション、34 シートバック、38 クッションパッド、42 バックパッド、44 センタープレート、46 ベルト受け、48 アンテナ。
図1
図2
図3