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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】マルチフレーム人工弁装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019229287
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2018006538の分割
【原出願日】2013-07-22
(65)【公開番号】P2020049266
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】61/676,812
(32)【優先日】2012-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/797,526
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー.ブラックマン
(72)【発明者】
【氏名】コーディ エル.ハートマン
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0204785(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0218619(US,A1)
【文献】国際公開第2010/057262(WO,A1)
【文献】米国特許第07381218(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側及び流出側を有する弁であって、前記弁は、
本体フレーム管腔を画定する概ね管状形及び本体フレーム内側表面を有する筒状構造に形成された、本体フレームと、
前記本体フレームと同軸にかつ前記本体フレーム内部に入れ子状に収まり、複数のポストを含む、葉状体フレームであって、前記ポストの部分を含む前記葉状体フレームの部分は、前記本体フレーム内側表面との係合によって保持されておらず、前記本体フレームと前記葉状体フレームの前記ポストは、前記弁の前記流出側で結合している、葉状体フレームと、
前記葉状体フレームの前記複数のポストによって保持された、複数の葉状体と
を備える、弁。
【請求項2】
前記複数のポストは、完全に前記本体フレームの内部に置かれ、前記本体フレームとの係合によって保持されていない前記葉状体フレームの部分が前記複数のポストの少なくとも一部を含む、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記複数のポストは、少なくとも部分的に前記本体フレームから外部へ延びる、請求項1に記載の弁。
【請求項4】
前記葉状体フレームと前記本体フレームとの間に位置するフィルムを含み、さらに、前記ポストを含む前記葉状体フレームの部分は、前記葉状体フレームと前記本体フレームとの間に位置する前記フィルムに結合していない、請求項1に記載の弁。
【請求項5】
前記本体フレーム及び前記葉状体フレームは異なる剛性を有する、請求項1に記載の弁。
【請求項6】
前記複数の葉状体のそれぞれは、前記葉状体がそれぞれU字形のベースを有するように、前記葉状体フレームに結合している、請求項1に記載の弁。
【請求項7】
弁であって、前記弁は、
本体フレーム管腔を画定する概ね管状形及び本体フレーム内側表面を有する筒状構造に形成された、本体フレームと、
前記本体フレームと同軸にかつ前記本体フレーム内部に入れ子状に収まり、前記本体フレームと部分的に係合した複数のポストを含む、葉状体フレームであって、前記本体フレームと前記葉状体フレームの前記ポストは、前記弁の流出側で結合している、葉状体フレームと、
前記葉状体フレームの前記複数のポストによって保持された、複数の葉状体と
を備える、弁。
【請求項8】
前記葉状体フレームの前記複数のポストと前記本体フレームとの前記係合は、前記葉状体フレームへ支持を与え、前記複数の葉状体への荷重を前記葉状体フレームへ、その後前記本体フレームへ移転することを可能にする、請求項7に記載の弁。
【請求項9】
前記本体フレーム及び前記葉状体フレームは異なる剛性を有する、請求項7に記載の弁。
【請求項10】
前記複数の葉状体のそれぞれは、前記葉状体がそれぞれU字形のベースを有するように、前記葉状体フレームに結合している、請求項7に記載の弁。
【請求項11】
フロー管腔を画定するマルチパートフレームを備える弁であって、前記フロー管腔を通して流体が選択的に流れることができ、前記マルチパートフレームは、
直円柱の形状を有する概ね管状形を有する外側フレームであって、外側フレーム管腔を画定する、外側フレームと、
複数の継ぎ目ポストを画定する葉状体フレームであって、前記葉状体フレームは、前記外側フレーム管腔の内部に少なくとも部分的に受容され、前記弁の作動中、前記継ぎ目ポストの部分を含む前記葉状体フレームの部分が前記外側フレームの内側表面との係合によって保持されないよう、前記外側フレームに固定的に結合されており、前記外側フレームと前記葉状体フレームの前記継ぎ目ポストは、前記弁の流出側で結合している、葉状体フレームと、
前記葉状体フレームに結合された複数の葉状体であって、前記葉状体がそれぞれU字形のベースを有し、開放位置と閉鎖位置との間を移動可能であり、前記フロー管腔を選択的に閉鎖及び開放する、複数の葉状体と
を含む、弁。
【請求項12】
前記葉状体フレーム及び前記外側フレームの間に位置する被覆材料を更に含む、請求項11に記載の経カテーテル弁。
【請求項13】
前記葉状体フレーム及び前記外側フレームは、前記弁の作動中、互いに対して屈曲するように構成された、請求項11に記載の経カテーテル弁。
【請求項14】
前記外側フレーム及び前記葉状体フレームは異なる剛性を有する、請求項11に記載の弁。
【請求項15】
前記複数の継ぎ目ポストは、前記弁の作動中、前記外側フレームに対して内側に及び外側に屈曲するように構成された、請求項11に記載の経カテーテル弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年7月27に出願された仮出願第61/676812号及び2013年3月12日に出願された非仮出願第13/797526号(その全体が参照により本出願に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概略的には、人工弁、より具体的には埋植のための合成可撓性葉状型人工弁装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自然弁の機能及び性能を模倣しようとする生体弁が、これまで開発されてきた。可撓性葉状体は、ウシの心膜などの生物組織から製造される。いくつかの弁設計において、生物組織は、埋植されたとき葉状体を支持し寸法的安定を与える比較的剛性のフレームに縫い付けられる。生体弁は、優れた血行力学及び生体力学的性能を短期間与えることができるが、特に石灰化及び弁膜尖破断を生じやすく、再手術及び置換が必要になる。
【0004】
より耐久性のある可撓性葉状型人工弁(本出願においては合成葉状型弁(SLV)と呼ぶ)を提供するために、生物組織の代用品として特にポリウレタンなどの合成材料を使用する試みが行われてきた。しかし、合成葉状型弁は、特に次善の設計であり耐久性のある合成材料が欠けているため故障するのが早いので、有効な弁置換術の選択肢とはなっていない。
【0005】
葉状体をフレームに結合するために、フレーム(生物及び合成)への個々の葉状体の縫付け及び合成葉状体に関してのみは射出成形及びフレームへの重合体の浸漬コーティングを含めて、多数の製造法が使用されてきた。多くの事例において、結果として得られた葉状体は、フレームにおいて支持されて、葉状体がフレームに結合される取付け縁とフラップが移動できるようにする自由縁とを有するフラップを形成する。フラップは、流体圧力の影響を受けて移動する。作用時において、葉状体は上流の流体圧力が下流の流体圧力を上回ったときに開放し、下流の流体圧力が上流の流体圧力を上回ったときに閉鎖する。葉状体の自由縁は下流の流体圧力の影響を受けて接合して、弁を閉鎖して、下流の血液が弁を通過して逆流するのを防止する。
【0006】
葉状体の開閉の反復的負荷を受ける弁の耐久性は、部分的には、葉状体とフレームとの間の荷重の配分によって決まる。更に、閉鎖位置のとき葉状体には相当の荷重が与えられる。葉状体の機械的故障は、例えば、可撓性の葉状体が比較的剛性のフレームによって支持される場所である取付け縁において生じる可能性がある。葉状体の開閉の反復的負荷は、部分的には葉状体の材料に応じて、疲労、クリープ又はその他のメカニズムによる材料の破損を引き起こす。取付け縁における機械的故障は、合成葉状体において特によく見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より耐久性のある可撓性葉状型人工弁が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示される実施形態は、心臓弁置換術などの弁置換術のための装置、システム及び方法に関する。より具体的には、開示される実施形態は、生物又は合成葉状体材料とマルチパート支持部材即ちフレームとを有する可撓性葉状型弁装置及び弁装置を製造し埋植する方法に関する。
【0009】
1つの実施形態によれば、弁は、葉状体フレームと、本体フレームと、弁のサイズ及び機能に適する任意の数の葉状体とを備える。別の実施形態によれば、弁を製造する方法は、本出願において説明するように葉状体フレーム及び本体フレームを生体適合性材料に合わせるステップと、それによって葉状体を形成するステップとを含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、弁は、本体フレーム管腔(body frame lumen)を形成する概ね管状形を形成する本体フレームと、各々ベースを形成する複数のU字形部と複数のポストとを形成する概ね環状形を有する葉状体フレームであって、葉状体フレームが本体フレーム管腔と同軸に、かつ少なくとも実質的に本体フレーム管腔内に配置される、葉状体フレームと、本体フレームに結合された第1フィルムと、U字形部の各々に結合されこれを横切って延びて葉状体を形成する第2フィルムと、を含む。各葉状体は、葉状体自由縁を有し、第1フィルム及び第2フィルムの少なくとも一方は、少なくとも部分的に本体フレームを葉状体フレームに結合し、葉状体自由縁は、隣接する葉状体自由縁と当接するように作用すると共に開放位置と閉鎖位置との間で移動可能である。
【0011】
マルチフレーム人工弁を製造する方法は、本体フレーム管腔を形成する概ね環状形を形成する本体フレームを用意するステップと、各々ベースを形成する複数のU字形部と複数のポストとを形成する概ね環状形を形成する葉状体フレームを用意するステップと、フィルムを用意するステップと、フィルムの第1層を管状形に形成するステップと、フィルムの第1層の環状形に被せて葉状体フレームを同軸に配置するステップと、葉状体フレーム及びフィルムの第1層の環状形の周りにフィルムを巻き付けるステップであって、フィルムがU字形部の各々を横切って延びてU字形部の中に葉状体を形成するステップと、第1層及び第2層を相互に及び葉状体フレームに接着するステップと、U字形部の中に配置された葉状体をクランプ留めして葉状体を囲繞するステップと、葉状体フレームに被せてフィルムの第3層を形成するステップと、葉状体フレームが本体フレーム管腔内に同軸に配置されるようにフィルムの第3層に被せて及び葉状体フレームに被せて本体フレームを配置するステップと、本体フレーム及びフィルムの第3層に被せてフィルムの第4層を形成するステップと、第3層及び第4層を相互に及び本体フレームに接着するステップと、を含む。
【0012】
添付図面は、本開示をよりよく理解するためのものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本出願において説明する実施形態を図解し、説明と一緒に、本開示において論じる原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】葉状体フレーム及び本体フレームを備える実施形態の弁の斜視図である。
図1B図1Aの実施形態の弁の側面図である。
図1C】開放形態にある図1Aの実施形態の弁の軸方向断面図である。
図1D】閉鎖形態にある図1Aの実施形態の弁の軸方向断面図である。
図2A】フラット配置になるように広げられた図1Aの実施形態の弁の図である。
図2B】フラット配置になるように広げられた図1Aの実施形態の弁の図の分解図である。
図3図3Aは、1つの実施形態の弁の側面断面図である。図3Bは、図3Aの詳細図である。
図4】1つの実施形態に従って体内に在る1つの実施形態の弁の側面図である。
図5】ワイヤを葉状体フレームに形成するための1つの実施形態の巻付けジグの斜視図である。
図6A】弁を組み立てる実施形態の側面図である。
図6B】弁を組み立てる実施形態の側面図である。
図6C】弁を組み立てる実施形態の側面図である。
図6D】弁を組み立てる実施形態の斜視図である。
図6E】弁を組み立てる実施形態の斜視図である。
図6F】弁を組み立てる実施形態の斜視図である。
図6G】弁を組み立てる実施形態の斜視図である。
図6H】弁を組み立てる実施形態の側面図である。
図7A】1つの実施形態に従った延伸PTFEの走査電子顕微鏡画像である。
図7B】別の実施形態に従った延伸PTFEの走査電子顕微鏡画像である。
図7C図7Bの延伸PTFEの走査電子顕微鏡画像の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の様々な形態は、意図される機能を果たすために構成された多様な方法及び装置によって実現できることが、当業者には容易に分かるだろう。言い換えると、意図される機能を果たすために他の方法及び装置を本出願に組み込むことができる。また、本出願において参照する添付図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本開示の様々な形態を図解するために誇張される場合があり、この点に関して図面は限定的なものとして解釈すべきではないことが分かるはずである。
【0015】
本出願においては、様々な原理及び考えに関連して実施形態を説明するが、説明する実施形態は、理論によって拘束されるべきではない。例えば、本出願において、実施形態を、人工弁より具体的には人工心臓弁に関連して説明する。しかし、本開示の範囲内の実施形態は、同様の構造及び/又は機能のどのような弁又は機構にも応用できる。更に、本開示の範囲内の実施形態は、心臓以外の用途に応用できる。
【0016】
人工弁に関連して本出願において使用する場合、葉状体と言う用語は、一方向弁の可撓性構成要素であり、葉状体は、圧力差の影響を受けて開放位置と閉鎖位置との間を移動するように作動する。開放位置において、葉状体は、弁を通過して血液が流れるようにする。閉鎖位置において、葉状体は、実質的に弁を通過する逆量を遮断する。複数の葉状体を備える実施形態において、各葉状体は、少なくとも1つの隣接する葉状体と協働して、血液の逆流を遮断する。血液における圧力差は、例えば、葉状体が閉鎖されたとき葉状体の片側において流体圧力が高くなることによって典型的に生じる圧力差など、心臓の心室又は心房の収縮によって生じる。弁の流入側の圧力が弁の流出側の圧力より高くなると、葉状体は開いて、血液が弁を通過して流れる。血液が弁を通過して隣の室又は血管へ流れると、流入側の圧力は、流出側の圧力に等しくなる。弁の流出側の圧力が弁の流入側の圧力より高くなると、葉状体は閉鎖位置へ戻って、弁を通過する血液の逆流を防止する。
【0017】
本出願において使用する場合、薄膜と言う用語は延伸フッ素化合物など(但し、これに限定されない)の単一組成を持つ材料のシートを意味する。
【0018】
本出願において使用する場合、複合材料と言う用語は、延伸フッ素重合体など(但しこれに限定されない)の薄膜とフッ素エラストマーなど(但し、これに限定されない)などのエラストマーの組合せ体を意味する。エラストマーは薄膜の多孔質構造内に吸収するか、薄膜の片面又は両面にコーティングするか、または薄膜へのコーティングと薄膜内への吸収を組み合わせることができる。
【0019】
本出願において使用する場合、ラミネートと言う用語は、薄膜、複合材料又はエラストマーなどその他の材料及びその組合せの複数層を意味する。
【0020】
本出願において使用する場合、フィルムと言う用語は、薄膜、複合材料又はラミネートの1つ又はそれ以上を総称的に意味する。
【0021】
本出願において使用する場合、生体適合性材料と言う用語は、生体適合性重合材など(但し、これに限定されない)の合成材料又はウシの心膜など(但し、これに限定されない)の生物材料を含めて生体適合性特性を持つ任意の材料を総称的に意味する。生体適合性材料は、本出願において説明するように様々な実施形態において第1フィルム及び第2フィルムを含むことができる。
【0022】
自然弁孔及び組織孔と言う用語は、中に人工弁を配置できる解剖学的構造を意味する。この種の解剖学的構造は、心臓弁が外科的に取り除かれていない又は取り除かれている場所を含むが、これに限定されない。人工弁を受け入れることができるその他の解剖学的構造は、静脈、動脈、導管及び側路を含むが、これらに限定されない。さらに、弁孔又は埋植部位は、弁を受け入れることができる合成又は生物管路の中の場所を意味することもできる。
【0023】
本出願において使用する場合、「結合(couple)」は、直接的か間接的かを問わずまた永久的か一時的かを問わず、接合、結合、接続、取付け、付着又は接着を意味する。
【0024】
本出願に示す実施形態は、心臓弁など(但し、これに限定されない)の人工弁置換術のための様々な装置、システム及び方法を含む。弁は、一方向弁として作動し、弁は、弁孔を形成し、この中へ、葉状体は、流体の圧力差に反応して、血流を許容するように開放し、弁孔を塞いで血流を防止するように閉鎖する。
【0025】
実施形態に従えば、弁は、葉状体フレームによって支持される葉状体を有し、葉状体フレームは、本体フレームと同軸でありかつ少なくとも部分的に本体フレーム内に入れ子状に納まる。本体フレーム及び葉状体フレームの各々は、特定の目的に適する異なる物理的特性を持つことができる。実施形態によれば、本体フレームは、組織孔に当接しこれに固定的に係合しながら弁に寸法的安定性を与えるように、比較的剛性にすることができる。葉状体フレームは、本体フレームに比べて低い剛性を持つことができる。葉状体フレームが本体フレームに比べて剛性が低いことの利点は、葉状体への荷重速度を低速化して、葉状体への応力レベルを減少でき、それによって、弁の耐久性を改良できることである。本出願において使用する場合、設計において一般に使用されるように、剛性は、本体によって与えられる変形に対する強度の尺度である。剛性は、特に、材料特性、物体の形状及び物体における境界条件の関数である。葉状体フレーム130の剛性(図1A)は、技術上既知の多様な方法によって測定できる。1つの方法に従えば、葉状フレームの軸に沿ってケーブルを同時に引っ張れるように、葉状体フレームを変曲点136の周りで拘束して又は本体フレーム120によって保持した状態で、ケーブルを、3つのポスト131の各々に結合して、まとめることができる。軸へ向かって3つのポストをそらすためにケーブルに加える必要がある力の量が、剛性の尺度となる。同じことを、変曲点136に対向するダイアモンド形開口部122の頂点など、本体フレーム120の等間隔の3つの点にケーブルを結合して、本体フレームに関しても実施できる。
【0026】

図1A及び1Bは、それぞれ、1つの実施形態に従った弁100の斜視図及び側面図である。図1C及び1Dは、それぞれ開放形態及び閉鎖形態の弁100の軸方向断面図である。図2Aは、図1Aの実施形態を図解しており、弁100は、概ね管状形の弁100の要素をよりよく図解するために長手方向に切断され、拡げられている。図2Bは、図1Aの実施形態を図解しており、概ね管状形の弁100の要素をよりよく図解するために長手方向に切断され、拡げられ、部分的に分解されている。
【0027】
弁100は、本体フレーム120と、葉状体フレーム130と、本体フレーム120を被覆する第1フィルム160と、葉状体フレーム130を被覆して葉状体を形成する第2フィルム162とを備える。
【0028】
フィルム
フィルム160は、概略的には、本体フレーム120及び葉状体フレーム130に結合するように構成された任意のシート様の生体適合性材料である。葉状体140は、フィルム160によって構成することもできる。1つの実施形態において、フィルム160は、概ね管状の材料から形成され、本体フレーム120及び葉状体フレーム130を結合し、かつ葉状体140を形成できる。
【0029】
フィルム160は、特定の目的に適する1つ又はそれ以上の生体適合性材料に総称的に使用される。また、本体フレーム120に結合されたフィルムが葉状体フレーム130に結合されたのと同じフィルムでなくてもよく、または同じフィルムが葉状体140として作用することができるが、いくつかの実施形態においては、同じフィルムが、本体フレーム120及び葉状体フレーム130に結合されて、葉状体140を形成する。
【0030】
フィルム160は、薄膜、複合材料又はラミネートの1つ又はそれ以上を含むことができる。様々なタイプのフィルム160の詳細については、下で論じる。
【0031】
本体フレーム
本体フレーム120は、図1A、1Bに示すように、本体フレーム内側表面129を有する本体フレーム管腔123を形成する概ね管状形の部材である。本体フレーム120は、弁孔102を形成する。本体フレーム120は、葉状体フレーム130に対して構造的耐荷重支持を与える。更に、本体フレーム120は、埋植部位における受容組織に確実に係合するように構成できる。
【0032】
本体フレーム120は、概略的に生体適合性の任意の金属または重合体材料を含むことができる。例えば、本体フレーム120は、ニチノール、コバルトニッケル合金、ステンレス鋼、及びポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチル共重合体、延伸PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、その他の合金又は重合体など(但し、これに限定されない)又は本出願において説明するように機能するための適切な物理的及び機械的特性を有するその他の任意の生体適合性材料を含むことができる。
【0033】
例えば、図1A~1D及び2A~2Bに示すように、弁100は、開口部122を有するステントを形成する本体フレーム120を含む。ステントの開放枠組は、幾何学形状及び/又は線形又は正弦曲線の蛇行した連続体などの再現可能あるいは再現不可能の任意の数の形体を形成できる。開放枠組は、エッチング、切断、レーザーカット又は打抜きによって材料のチューブ又はシートにすることができ、シートは、その後実質的に円筒形構造体へ形成できる。別の実施形態において、本体フレーム120は、中実壁を持つことができる。又は、ワイヤ、屈曲可能な帯状材又はその連続体などの細長い材料を折り曲げて又は編んで、実質的に円筒形の構造体に形成できる。例えば、本体フレーム120は、ステント又はステントグラフト型構造又は従来の縫付けフレームを備えることができる。
【0034】
実施形態によれば、本体フレーム120は、埋植部位に確実に係合するように構成できる。1つの実施形態において、弁100は、更に、図1Bに示すように、例えば図4に示すように位置を保持するために組織孔150に縫い付けるように縫合糸を受け入れるように作用する、本体フレーム120の周りに結合された縫付けカフ170を含む。別の実施形態において、本体フレーム120は、弁100を固定するために組織孔150などの埋植部位に係合するように構成された1つ又はそれ以上の固定具(図示せず)を備えることができる。別の実施形態において、本体フレーム120は、他の手法で埋植部位に固定できる。人工弁を埋植するための従来の手術法を使用して、実施形態に従った弁100を埋植できることが分かるはずである。いくつかの実施形態に従った弁は、血管内手術法を用いて埋植できることが分かるはずである。
【0035】
弁100を埋植部位に結合するための他の要素又は手段を予想できる。例えば、限定的ではなく、機械的及び接着手段などの他の手段を使用して、弁100を合成又は生物導管に結合できる。
【0036】
葉状体フレーム
葉状体フレーム130は、図1A及び2A~2Bに示すように設定された反復的パターンを形成する概ね環状形の部材を備える。葉状体フレーム130は、ワイヤ、リボン、カットチューブ又は特定目的に適する他の任意の要素を備えることができる。図2A~2Bに示すように、葉状体フレーム130は、相互に接続された3つのU字形部132を備えることができる。U字形部132の各々は、ベース134を形成する2つの側面133を形成する。各側面133は、自由端135を有する。この実施形態において、ベース134は、下で更に説明する変曲点136を形成する。1つのU字形部132の自由端132は隣接するU字形部132の自由端135と相互接続されて、ポスト131を形成する。
【0037】
葉状体140を支持する比較的剛性の低い葉状体フレーム130は、より剛性の葉状体フレーム130に比べて開閉する葉状体が受ける負荷をより減少できる。比較的低い剛性特性を有する葉状体フレーム130は、葉状体の加速を減速し、葉状体140に対する閉鎖応力を減少できる。さらに、葉状体フレーム130は、葉状体フレーム130が屈曲して手術による配置を容易にできるように、弾性変形可能にすることができる。
【0038】
葉状体フレーム130は、概略的に生体適合性である弾性変形可能な任意の金属または重合体材料など(但し、これに限定されない)を含むことができる。葉状体フレーム130は、ニチノール、ニッケルチタン合金など形状記憶材料を含むことができる。葉状体フレーム130に適する他の材料としては、他のチタン合金、ステンレス鋼、コバルトニッケル合金、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチル共重合体、他の合金又は重合体など(但し、これに限定されない)又は本出願において説明する葉状体フレーム130として機能するための適切な物理的及び機械的特性を有する概略的に生体適合性の任意の他の材料を含む。
【0039】
1つの実施形態によれば、葉状体フレーム130は、荷重を受けて屈曲し、荷重が取り除かれたとき元の形状を保持するように作用する形状記憶材料を含む。葉状体フレーム130と本体フレーム120は、同じ材料又は異なる材料を含むことができる。
【0040】
葉状体
葉状体フレーム130のU字形部132の各々は、内側領域137を形成する。各内側領域137は、葉状体フレーム130の側面133及びベース134に結合できる第2フィルム162などの生体適合性材料を備える。第2フィルム162は、葉状体140を形成する。各葉状体140は、葉状体自由縁142を形成する。
【0041】
1つの実施形態によれば、葉状体140は、生体適合性重合体など、生物由来ではなくかつ特定目的のために充分に適合しかつ強い生体適合性材料を含むことができる。1つの実施形態において、葉状体140は、複合材料を形成するためにエラストマーと組み合わされた薄膜を含む。他の実施形態によれば、葉状体140を構成する生体適合性材料は、ウシの心膜など(これに限定されない)生物材料を含む。
【0042】
葉状体140の形状は、部分的には葉状体フレーム130の形状及び葉状体自由縁142によって形成される。葉状体140の形状は、また、下に説明するような弁100の製造に使用される構造及び工程(但し、これに限定さない)によっても形成できる。例えば、1つの実施形態によれば、葉状体140の形状は、部分的には、葉状体140に設定された形状を与えるために成形及び切り揃え工程を用いる葉状体140の成形にも依存する。
【0043】
1つの実施形態において、実質的に葉状体フレーム130全体は、本体フレーム内側表面129に隣接する。従って、葉状体140が完全開放位置にあるとき、弁100は、図1Cに示すように実質的に円形の弁孔102を示し、葉状体フレーム130は、弁孔102の中へ最小限にしか伸びない。流体の流れは、葉状体140が開放位置にあるとき、弁孔102を通過できる。
【0044】
葉状体140は、葉状体140が開閉するとき、概略的には、U字形部132のベース134の周りで屈曲する。1つの実施形態において、弁100が閉鎖した時、各葉状体自由縁142のほぼ半分は、図1Dに示すように隣接する葉状体140葉状体自由縁142の隣り合う半分に当接する。図1Dの実施形態の3つの葉状体140は、3重点148において出会う。弁孔102は、葉状体140が閉鎖位置のとき塞がれて、流体の流れを止める。
【0045】
葉状体140は、例えば心室又は心房の収縮によって生じた血液の圧力差によって作動するように構成でき、この種の圧力差は、典型的には、弁100が閉鎖した時弁の片側で増大する流体圧力の結果生じる。弁100の流入側における圧力が弁100の流出側における圧力を上回ると、葉状体100は開いて、血液は弁を通過して流れる。血液が弁を通過して隣接する室又は血管へ流れ込むと、圧力は等しくなる。弁100の流出側の圧力が弁100の流入側の圧力を上回ると、葉状体140は、閉鎖位置へ戻り、弁100の流入側を通過して血液が逆流するのを防止する。
【0046】
葉状体フレーム130は、特定の目的に適する任意の数のU字形部従って葉状体を備えることができる。1つ、2つ、3つ又はそれ以上のU字形部132を備える葉状体フレーム130が想定される。
【0047】
弁フィルム
図1Aに示すように、本体フレーム120は、葉状体フレーム130の周りに同軸に配置され、図2Aに示すように、弁100の巻かれていない図において葉状体フレームと層を成す。弁100は、葉状体フレーム130の少なくとも一部を本体フレーム120に結合するフィルムを備えることができる。
【0048】
フィルム160は、特定目的に適する多様な手法で葉状体フレーム130及び本体フレーム120に結合できる。例えば、限定的にはなく、本体フレーム120は、第1組成を有する第1フィルム161の重なり層で包むことができる。葉状体フレーム130は、第2組成を有する第2フィルム162の重なり層で包むことができる。
【0049】
フィルム160は、葉状体フレーム130及び本体フレーム120の内側又は外側表面に結合できる。1つの実施形態において、フィルム160は、葉状体フレーム130及び本体フレーム120の両方の内側表面及び外側表面の両方に結合できる。別の実施形態において、フィルム160は、葉状体フレーム130の内側表面及び本体フレーム120の外側表面に結合して、葉状体フレーム及び本体フレーム120の少なくとも一部をフィルム160の間に挟むか又は逆にして、葉状体フレーム130と本体フレームをフィルム160によって結合できる。
【0050】
フィルム160は、葉状体140が開放位置にあるとき弁孔102を通過する以外に弁100を通過して又は横切って血液が流れるのを防止するように構成できる。従って、フィルム160は、フィルム160が被覆する本体フレーム120及び葉状体フレーム130及びその間の間隙空間における血流に対するバリアを作る。
【0051】
フィルム160は、例えばテーピング、熱収縮、接着及び技術上既知の他の工程の1つ又はそれ以上を用いて、本体フレーム120及び葉状体フレーム130の内側又は外側表面の単一又は複数個所において固定又は結合できる。いくつかの実施形態において、複数の薄膜/複合層即ちラミネートを使用し、本体フレーム120及び葉状体フレーム130に結合して、フィルム160の少なくとも一部を形成できる。
【0052】
フィルム160は、本出願において説明する機能を果たすために適する物理的及び機械的特性を有する任意の材料を含む。本体フレーム120に結合される第1フィルム161は、上述のように葉状体140が備える第2フィルム162と同じ材料又は異なる材料を含むことができる。同様に、フィルム160は、材料組成において均質であるか否かを問わない。フィルム160の異なる部分は、設定された物理的及び機械的特性を与えることができる異なる材料を含むことができる。
【0053】
葉状体フレームの係合及び留め具
1つの実施形態によれば、フィルム160によって本体フレーム120に結合されない葉状体フレーム130の部分は、本体フレーム内側表面129に押圧係合(urging engagement)できる。1つの実施形態によれば、葉状体フレーム130は、ばね付勢を持つことができ、葉状体フレーム130は、本体フレーム120に付勢押圧係合する。
【0054】
1つの実施形態によれば、ポスト131は、図1Aに示すように本体フレーム120の内側表面129に当接する。更に別の実施形態によれば、ポスト131は、本体フレーム120によって形成された係合要素(図示せず)によって本体フレーム内側表面129と結合される。
【0055】
1つの実施形態によれば、図1A及び3A~3Bに示すように、ポスト131は、ポスト131が図2Aに示すように本体フレーム120によって形成された谷部(valley)128内に在ることによって本体フレーム120に対して位置づけられる。谷部128は、ポスト131を本体フレーム120に対して優先的に位置付けるように、ポスト131を谷部128の頂点と整列させるように作用できる。ポスト131は、完全に本体フレーム120内部に置くか、又は少なくとも部分的に本体フレーム120から外部へ延びることができる。
【0056】
葉状体フレーム130のポスト131と本体フレーム120の係合は、葉状体フレーム130へ支持を与えることができる。ポスト131が本体フレーム120と係合することによって、葉状体140への荷重を葉状体フレームへ、その後本体フレーム120へ移転できる。葉状体フレーム130と本体フレーム120の係合の度合いは、本体フレーム120によって葉状体フレーム130へ与えられる支持の度合いを決定する。支持の度合いは特定の目的に合わせて設定できる。
【0057】
他の実施形態において、ポスト131の部分を含む葉状体フレームの部分は、第1フィルム160に結合されず、本体フレーム内側表面129との係合によって保持されず、弁の作動時に、特に弁が閉鎖しているとき又は閉鎖したときに、葉状体140の負荷の下でポスト131が内向きに屈曲できるようにする。ポスト131の屈曲は、葉状体自由縁142が接合して、葉状体が閉鎖されたとき密封を形成できるようにする。様々な実施形態において、弁の作動時にポスト131が内向きに屈曲する度合いは、接合の度合いを決定する。この度合いは特定の目的に合わせて設定できる。
【0058】
1つの実施形態によれば、1つ又はそれ以上の留め具(図示せず)又はいくつかの他の同様の係合機構が、ポスト131を本体フレーム120に固定して、設定された量の構造的剛性を葉状体フレーム120に追加することができる。従って、葉状体フレーム130に対する負荷は、少なくとも部分的に本体フレーム120に移転又は分配できる。この点に関して、留め具は、葉状体フレーム130と本体フレーム120をインターロック、接続、締結又は一緒に保持するように構成された任意の構造を備える。葉状体フレーム130を本体フレーム120に接続する留め具は、葉状体フレーム130に対する荷重の少なくとも一部を本体フレーム120へ移転するように作用する。
【0059】
本体フレームと葉状体フレームの比較
弁100の実施形態において、本体フレーム120及び葉状体フレーム130を含むことによって、本体フレーム120及び葉状体フレーム130の各々について特定の目的に適した異なる物理的特性を与える手段が与えられる。1つの実施形態によれば、本体フレーム120は、葉状体フレーム130に比べて剛性が低い。本体フレーム120は、図4に示すように組織孔150など(但し、これに限定されない)の埋植部位に係合したとき、生理学的負荷を受けてより小さい直径へ著しく反動しない(recoil)又は変形しないために充分な剛性を持つ。
【0060】
本体フレーム120及び葉状体フレーム130の物理的特性は、部分的には、本体フレーム120及び葉状体フレーム130のサイズ、形状、厚み、材料特性、並びに、フィルムの様々な物理的特性及び層又は重ねの数並びに本体フレーム120と葉状体フレーム130の結合によって決まる。
【0061】
フィルム
葉状体140を構成する第2フィルム162は、生体適合性重合体など、充分なコンプライアンス及び可撓性を有する任意の生体適合性材料を含むことができる。第2フィルム162は、エラストマーと組み合わされて複合材料を形成する薄膜を含むことができる。1つの実施形態によれば、第2フィルム162は、小繊維マトリクス内に複数の空間を備える延伸フッ素重合体薄膜及びエラストマー材料を含む複合材料を含む。複数タイプのフッ素重合体薄膜及び複数タイプのエラストマー材料を組み合わせてラミネートを形成することができ、これも本開示の範囲に属することが分かるはずである。また、エラストマー材料は、複数のエラストマー、無機質フィラーなどの複数タイプの非エラストマー成分、治療薬、放射線不透過マーカー及びその類似品を含むことができ、これも本開示の範囲内に属することも、分かるはずである。
【0062】
1つの実施形態によれば、複合材料は、多孔質延伸PTFE薄膜から作られた延伸フッ素重合体材料、例えばBacinoによる米国特許第7306729号明細書において概略的に説明されるものを含む。
【0063】
上述の延伸フッ素化合物材料を形成するために使用された延伸可能フッ素重合体は、PTFEホモポリマーを含むことができる。別の実施形態において、PTFE、延伸可能修正PTFE(expandable modified PTFE)及び/又はPTFEの延伸共重合体の混合物を使用できる。適切なフッ素重合体材料の非限定的例は、例えば、Brancaによる米国特許第5708044号明細書、Baillieによる米国特許第6541589号明細書、Sabol他による米国特許第7531611号明細書、Fordによる米国特許出願第11/906877号明細書及びXu他による米国特許出願第12/410050号明細書において説明される。
【0064】
延伸フッ素重合体薄膜は、所望の葉状体性能を得るために適する任意の微小構造を備えることができる。1つの実施形態によれば、延伸フッ素重合体は、1つの実施形態に従った図7Aの走査電子顕微鏡画像に示すように、Goreによる米国特許第3953566号明細書に説明されるような小繊維によって相互接続された結節点の微小構造を備える。小繊維は、結節点から複数方向へ延び、薄膜は、概ね均質の構造を有する。このような微小構造を有する薄膜は、2未満、場合により1.5未満である、2つの直交する方向におけるマトリクス引張り強さの比を示す。本出願に示す延伸フッ素重合体薄膜の実施形態は、ほとんどが約1μm未満の直径を有する小繊維を含有する。本出願に示す延伸フッ素重合体薄膜の他の実施形態は、ほとんどが0.1μm未満の直径を有する小繊維を含有する。本出願において示す実施形態は、ほとんどが約1μm未満から約0.1μm未満の小繊維を含む薄膜は、葉状体材料として使用された場合少なくとも心臓弁の耐久性及び耐用期間(但し、これに限定されない)を著しく改良する。本出願において示す延伸フッ素重合体薄膜の実施形態は、実施形態に従って約5μm未満、約1μm未満及び0.10μm未満の平均流路口径を持つことができる。
【0065】
別の実施形態において、延伸フッ素重合体薄膜は、1つの実施形態に従った図7Bの走査電子顕微鏡画像に示すように、例えばBacinoによる米国特許7306729号明細書において概略的に教示されるような実質的に小繊維のみの微小構造を有する。図7Cは、図7Bの走査電子顕微鏡画像の拡大図であり、より明確に、実質的に小繊維のみを有する均質の微小構造を示す。実質的に小繊維のみを有する延伸フッ素重合体薄膜は、20m/g超え、又は25m/g超えなどの表面積を持つことができ、いくつかの実施形態においては、少なくとも1.5x10MPaの2つの直交する方向におけるマトリクス引張り強さの積及び/又は4未満あるいは1.5未満の2つの直交する方向におけるマトリクス引張り強さの比を有する高い均衡のとれた強度を有する材料を提供できる。本出願において示す延伸フッ素重合体薄膜の実施形態は、ほとんどが約1μm未満の直径を有する小繊維を含有する。本出願において示す延伸フッ素重合体薄膜の別の実施形態は、ほとんどが約0.1μm未満の直径を有する小繊維を含有する。本出願において示す実施形態は、ほとんどが約1μm未満から約0.1μm未満の小繊維を含む薄膜が、葉状体材料として使用されたとき少なくとも心臓弁の耐久性及び耐用期間(但し、これに限定されない)を著しく改良することを示す。本出願に示す延伸フッ素重合体薄膜の実施形態は、実施形態に従って約5μm未満、約1μm未満及び0.10μm未満の平均流路口径を持つことができる。
【0066】
延伸フッ素重合体薄膜は、所望の葉状体性能を得るために適する任意の厚み及び質量を持つように仕立てることができる。例えば、限定的ではなく、葉状体140は、約0.1μmの厚みを有する延伸フッ素重合体薄膜を備える。延伸フッ素重合体薄膜は、約1.15g/mの面積当たり質量を持つことができる。本発明の1つの実施形態に従った薄膜は、長手方向に約411MPa及び横断方向に315MPaのマトリクス引張り強さを持つことができる。
【0067】
薄膜の孔又は材料内に又は薄膜の層の間に付加的材料を組み込んで、葉状体の所望の特性を強化できる。本出願において説明する複合材料は、所望の葉状体性能を得るために適する任意の厚み及び質量を持つように仕立てることができる。実施形態に従った複合材料は、フッ素重合体薄膜を含み、約1.9μmの厚み及び約4.1g/mの面積当たり質量を持つことができる。
【0068】
エラストマーと組み合わされて複合材料を形成する延伸フッ素重合体薄膜は、心臓弁の葉状体など、高サイクル屈曲インプラント(high -cycle flexural implant)用途に使用するために必要な性能属性を持つ本開示の要素を提供する。例えば、エラストマーを付加することによって、延伸PTFEのみの材料にみられる剛化(stiffening)を排除又は減少することによって葉状体140の疲労性能を改良できる。更に、材料が、シワ又は折り目など性能を損なう可能性のある永続的変形を受ける可能性を減少できる。1つの実施形態において、エラストマーは、延伸フッ素重合体薄膜の多孔質構造内の孔隙量又は空間の実質的に全てを充填する。別の実施形態において、エラストマーは、少なくとも1層のフッ素重合体の気孔の実質的に全ての中に存在する。エラストマーが気孔を充填する又は実質的に全ての気孔の中に存在することによって、異物が複合材料の中へ望ましくなく組み込まれる可能性のある空間を減少する。この種の異物の例としては、血液に触れることによって薄膜に引き込まれる可能性あるカルシウムがある。例えば心臓弁の葉状体において使用される場合カルシウムが複合材料に組み込まれると、開閉を反復するとき機械的損傷が生じて、葉状体における孔の形成及び血行力学の劣化を導く可能性がある。
【0069】
1つの実施形態において、延伸PTFEと組み合わされるエラストマーは、Chang他による米国特許第7462675号明細書(参照によりその全体が本出願に組み込まれる)において説明されるような、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性共重合体である。上述のように、エラストマーは延伸フッ素重合体薄膜と組み合わされて、エラストマーが実質的に延伸フッ素重合体薄膜内の空隙又は気孔の全てを埋めて複合材料を形成する。このように、延伸フッ素重合体薄膜の気孔をエラストマーで充填することは、多様な方法で実行できる。1つの実施形態において、延伸フッ素重合体薄膜の気孔を充填する方法は、延伸フッ素重合体薄膜の気孔の中へ部分的又は完全に流れ込んで溶媒を蒸発させてフィラーを残すのに適する粘度及び表面張力を持つ溶液を生成するのに適する溶媒においてエラストマーを溶解するステップを含む。
【0070】
別の実施形態において、延伸PTFEは、エラストマーが気孔の実質的に全てに存在する気孔を備える。複合材料は、約10%~90%の範囲で約80%未満の重量パーセントの延伸PTFEを含む。
【0071】
1つの実施形態において、複合材料は、3層、即ち延伸PTFEの外側2層及びその間に配置されたフッ素エラストマーの内側1層を備える。付加的フルオロエラストマーが適切である可能性があり、これについてはChangによる米国特許出願公開第2004/0024448号明細書(参照によりその全体が本出願に組み込まれる)において説明される。
【0072】
別の実施形態において、延伸フッ素重合体薄膜の気孔を充填する方法は、分散によってフィラーを送達して部分的または完全に延伸フッ素重合体薄膜の気孔を充填するステップを含む。
【0073】
別の実施形態において、延伸フッ素重合体薄膜の気孔を充填する方法は、多孔質延伸フッ素重合体薄膜を、エラストマーが延伸フッ素重合体薄膜の気孔へ流れ込める熱及び/又は圧力の条件の下でエラストマーのシートと接触させるステップを含む。
【0074】
別の実施形態において、延伸フッ素重合体薄膜の気孔を充填する方法は、まずエラストマーの初期重合体を気孔に充填しその後少なくとも部分的にエラストマーを硬化することによって、延伸フッ素重合体薄膜の気孔内のエラストマーを重合体化するステップを含む。
【0075】
エラストマーの最小重量パーセントに達した後、フッ素重合体又は延伸PTFEから構成された葉状体は、エラストマーの比率を増大すると概ね性能が上がり、その結果サイクル寿命が著しく増大する。1つの実施形態において、延伸PTFEと組み合わされたエラストマーは、Chang他による米国特許第7462675号明細書及び当業者であれば知っているであろう他の参考文献において説明されるようなテトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの熱可塑性共重合体である。葉状体140に使用するのに適する他の生体適合性重合体としては、ウレタン、シリコン(オルガノポリシロキサン)、シリコン-ウレタン共重合体、スチレン/イソブチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリエチレンコポリ(ビニルアセテート)、ポリエステル共重合体、ナイロン共重合体、フッ素化炭化水素重合体及び上記の各々の共重合体又は混合物の群を含むが、これらに限定されない。
【0076】
縫付けカフ(Sewing Cuff)
弁100は、更に、図1Bに示すように(図を明確にするために図1Aには図示せず)1つの実施形態によれば本体フレーム外側表面127の周りに縫付けカフ170を備える。縫付けカフ170は、埋植部位への結合のための縫合糸を受け入れる構造を与える。縫付けカフ170は、二重ベロアポリエステルなど(但し、これに限定されない)の任意の適切な材料を含むことができる。縫付けカフ170は、ベースフレーム120の周りに円周上に又はベースフレーム120からぶら下がる弁周囲に配置できる。
【0077】
その他の考慮事項
1つの実施形態によれば、弁100は、埋植した時左心室において索枝を被覆しないことによって、大動脈弁置換術において発生するような心臓刺激伝導系の干渉を防止するように構成できる。例えば、弁100は、約25mm未満又は約18mm未満の長さを持つことができる。弁100は、また、1未満のアスペクト比を持つことができる。アスペクト比は、弁100の長さと機能直径(functional diameter)との間の関係を説明する。但し、弁100は、任意の長さで及びより概略的には任意の所望の寸法で構成できる。
【0078】
弁100は、更に生物活性剤を含むことができる。生物活性剤は、弁100が埋植された後に生物活性剤の放出を制御するためにフィルム160の一部または全体にコーティングできる。生物活性剤は、血管拡張剤、抗凝固剤、抗血小板、ヘパリンなど(但しこれに限定されない)抗血栓材を含むが、これに限定されない。他の生物活性材は、ビンカ化アルカロイド(即ちビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタクセル、エピジポドフィロトキシン(即ち、エトポシド、テニポシド)、抗生剤(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びミトミシン、酵素(Lアスパラギンを体系的に代謝させかつ自身のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪うLアスパラギナーゼ)などの天然物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)llb/llla抑制剤及びビトロネクチン受容体拮抗剤などの抗血小板剤、窒素マスタード(メクロルエタミン、シクロフォスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘクサメチルメラニン及びチオテパ)、アルキルスルフォン酸ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンスダカルバジン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクシウリジン及びシタラビン)、プリン類似体及び関連抑制剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤、プラチナ配位化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド、ホルモン(即ち、エストロゲン)、抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及びその他のトロンビン抑止剤)、繊維素溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化剤、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、移行抑制剤、分泌抑制剤(ベレベルジン)、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニソロン、6aメチルプレドニソロン、トリアムンシノロン、ベータメタゾン及びデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サルチル酸誘導体即ちアスピリン、パラアモノフェノール誘導体即ちアセトミノフェン、インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラック)、ヘテロアリル酢酸(トルメチン、ジクロフェナック及びケトロラック)、アリルプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニールブタゾン及びオキシフェンタトラゾン)、ナブメタン、金化合物(アウラノフィン、アウロチオグルコース、チオリンゴ酸金ナトリウム)などの抗炎症剤、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506),シロリムス(ラパミシン)、アゾチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管形成剤、血管内皮成長因子(VEGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、アンジオテンシン受容体遮断剤、一酸化窒素供与体、アンチセンスオリジオヌクレオチド及びその化合物、細胞周期抑制剤、mTOR抑制剤及び成長因子受容体シグナル伝達キナーゼ抑制剤、レチノイド、サイクリン/CDK抑制剤、HMGコエンザイムレダクターゼ抑制剤(スタチン)及びプロテアーゼ抑制剤、を含むが、これらに限定されない。
【0079】
製造方法
本出願において示す実施形態は、本出願において説明する実施形態の弁の製造方法にも関する。様々な実施形態を製造するために、巻付けジグ及び2ピース型葉状体心棒を使用できる。図5を参照すると、巻付けジグ590は、弁の弁孔を形成する構造的形状及びワイヤを葉状フレーム130の所望の形状に成形しやすくするように構成された葉状体フレームガイド591を備える。
【0080】
図5を参照すると、葉状体フレーム130を製造する方法は、ワイヤを成形して葉状体フレーム130を形成するステップを含むことができる。巻付けジグ590を用いて葉状体フレーム130を形成できる。ワイヤはポスト及びガイドの周りに折り曲げられて、ヒートセットされる。ワイヤの両端は結合される。
【0081】
図6A~6Hを参照すると、弁100を製造する方法の1つの実施形態は、第2フィルム162の第1層例えば本出願において説明する複合材料を図6Aに示すように2ピース心棒597の周りに管状に巻き付けるステップと、第2フィルム162の第1層に被せて葉状体フレーム130を配置するステップと、図6Bに示すように葉状体フレーム130に被せて第2フィルム162の第2層を形成するステップと、図6Cに示すように、葉状体140になる葉状体フレーム130のU字形部132の周りで葉状体クランプ596を第2フィルム162と押圧係合させるステップと、図6D~6Eに示すように葉状体クランプを使って葉状体を成形するステップと、図6Fに示すように葉状体フレーム130に被せて第1フィルム161を含む第3層を形成するステップと、図6Gに示すように第3層及び葉状体フレーム130の周りに本体フレーム120を配置するステップと、図6Hに示すように本体フレーム120に被せて第1フィルム161を含む第4層を巻き付けるステップと、組立体を熱硬化するステップと、を含む。
【0082】
図6Eを参照すると、2ピース心棒595は、管状薄膜又は合成材料を成形して葉状体140を形成するための心棒を一緒に形成する葉状体クランプ506とベースモールド597とを備える。葉状体クランプ596は、葉状体クランプ596のシームに沿って輪郭付き溝594を備えることができ、ポスト131は、葉状体フレーム130における所望のばね付勢又は内向き屈曲を容易にするように溝の中に配置される。
【実施例
【0083】
例えば、1つの実施形態の弁は下記のように製造した。
【0084】
葉状体フレームは、ニチノールワイヤ(直径0.508mm(0.020”))を図5に示すように巻付けジグに巻き付けることによって構成した。図2Bに示すパターンが得られたら、フレームを450℃に設定したオーブンの中で10分間形状設定(shape set)した。ワイヤの両端を結合した。葉状体フレームに粗面処理ステップを施して、葉状体フレームへの第2フィルムの接着を改良した。葉状体フレームを、約5分間、アセトンの超音波槽の中へ沈めた。葉状体フレーム表面に、当業者には周知のプラズマ処理を加えた。
【0085】
FEP粉末(Dalkin America、ニューヨーク州オレンジバーグ)を、葉状体フレームに塗布した。葉状体フレームを、320℃に設定した強制空気オーブンの中で約3分間加熱した。このようにして、粉末を溶融して、薄いコーティングとしてフレーム全体に付着させた。葉状体フレームをオーブンから取り出して、室温まで冷却した。
【0086】
316テンレス鋼のチューブから約0.508mm(0.02”)の壁厚み、約2.54cm(1.0”)の直径及び2cmの長さを持つ本体フレームをレーザーカットした。ダイアモンド形パターンをチューブにカットして、図2Bに示すような管状形本体フレームを形成した。上に説明したのと同じ表面処理及びTFE粉末コーティングのステップを本体フレームに施した。
【0087】
第2フィルム162を入手した。延伸PTFEの薄膜は、Bacino他による米国特許第7306729号明細書における概略的教示に従って製造できる。延伸PTFE薄膜は、1.15g/mの面積当たりの質量、79.7MPaの沸点、約1.016μmの厚み、長手方向に410.9MPa及び横断方向に315.4MPaのマトリクス引張り強さを持つことができる。延伸PTFE薄膜にフルオロエラストマーを吸収させて、複合材料を形成した。
【0088】
Chang他による米国特許第7462675号明細書に説明されるようなテトラフルオロエチレンとペルフルオロ(メチルビニルエーテル)を含む共重合体であるフッ素エラストマーを入手した。この共重合体は、基本的に約65~70重量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び相補的に約35~30重量パーセントのテトラフルオロエチレンから構成される。
【0089】
この共重合体を、2.5%の濃度のNovec HFE7500(3M、ミネソタ州セントポール)の中で溶融した。延伸PTFE薄膜を(離型用ポリプロピレンフィルム(polypropylene release film)によって支持しながら)、マイヤーバー(mayer bar)を用いて調合した溶液でコーティングして、145℃に設定された対流式オーブンの中で30秒間乾燥し、それによって、吸収合成材料を生成した。2回のコーティングステップの後、最終的な延伸PTFE/フッ素エラストマー即ち合成材料は、約4.08g/mの面積当たり質量、28.22重量パーセントのフッ素重合体、15.9KPaのドームバースト強さ及び1.89μmの厚みを有する。
【0090】
15層の合成材料である第2フィルム162を、エラストマーが多い側を心棒の反対へ向けて図6Aに示す結合直径25mmのアルミニウム心棒組立体の周りに巻き付けた。複合材料の層を、各々、心棒の長手軸に沿って合成材料の横断方向を向くように、心棒の周りに円周方向に巻き付けた。心棒組立体の周りに巻かれた各付加的層を、同じ向きにした。
【0091】
葉状体フレームをそのワイヤ巻き状態から裏返して、図6Bに示すように心棒に同軸に位置付けた。
【0092】
薄膜材料の付加的な5層を含む第2フィルム162の第2層を、エラストマー豊富な面を葉状体フレームへ向けて葉状体フレームに被せて複合心棒組立体の周りに巻き付けた。その後、図6C~6Eに示すように葉状体クランプ596を位置付けた後、葉状体フレーム130のU字形部132(その後葉状体140になる)の周りで第2フィルム162に対して葉状体クランプ596を締めることによって、葉状体を設定された形状に成形した。
【0093】
5層の薄膜材料を含む第1フィルム161を含む第1層を、図6Fに示すようにエラストマー豊富な面を外向きにして、複合心棒組立体の周りに巻き付けた。その後、本体フレームを、図6Gに示すように、心棒に被せて葉状体フレームに対して作用可能な関係に位置付けた。付加的な5層の複合材料を含む第1フィルム161を含む第2層を、図6Gに示すように各層のエラストマー豊富な面を本体フレームへ向けて本体フレームの周りに巻き付けた。
【0094】
複合心棒組立体を熱処理して、葉状体形状に硬化し、生体適合性材料を強固にした。第1フィルム161及び第2フィルムを、図1A~2Bに示す形態に従って切り揃えた。
【0095】
テスト方法
下に特定の方法及び設備について説明するが、当業者が適切と判断する任意の方法又は設備を代わりに利用できることが分かるはずである。
【0096】
沸点及び平均流路口径
沸点及び平均流路口径を、毛管流ポロメーターModel CFP 1500AEXL(Porous Materials,Inc.、米国ニューヨーク州イサカ)を用いてASTM F31 6-03の概略的教示に従って測定した。サンプル薄膜をサンプルチェンバーの中へ入れて、約20.1dynes/cmの表面張力を有するSilWick Silicone Fluid(Porous Materials,Inc.から入手可能)で湿潤させた。サンプルチェンバーの底部クランプは、約2.54cmの直径の穴を有した。試験液は、イソプロピルアルコールである。Capwinソフトウェアバージョン7.73.012を用いて、下の表に示すように下記のパラメータを設定した。本出願において使用する場合、平均流路口径及び口径は、交換可能に使用する。
パラメータ 設定点
Maxflow(cm/m) 200000
Bublflow(cm/m) 100
F/PT(旧bubltime) 50
Minbpress(PSI) 0
Zerotime(秒) 1
V2incr(cts) 10
Preginc(cts) 1
Pulse delay(秒) 2
Maxpre(PSI) 500
Pulse width(秒) 0.2
Mineqtime(秒) 30
Presslew(cts) 10
Flowslew(cts) 50
Eqiter 3
Aveiter 20
Maxpdif(PSI) 0.1
Maxfdif(PSI) 50
Sartp(PSI) 1
Sartf(cm/m) 500
【0097】
気孔内のエラストマーの存在
気孔内のエラストマーの存在は、当業者には既知のいくつかの方法、例えば表面及び/又は断面視覚又はその他の分析によって測定できる。これらの分析は、複合材料からエラストマーを除去する前又はその後に実施できる。
【0098】
小繊維の直径
小繊維の平均直径は、図7A~Cの走査電子顕微鏡(SEM)写真など、多数の小繊維を示すために適する倍率を有する顕微鏡写真を検査することによって、推定した。複合材料の場合、エラストマー又は気泡を充填しているその他の材料を任意の適切な手段によって引き出して小繊維を露出する必要があるかも知れない。
【0099】
延伸PTFE薄膜の質量、厚み及び密度
薄膜の厚みは、薄膜をKafer FZ1000/30厚みスナップゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH、ドイツ連邦共和国フィリンゲン・シュヴェニンゲン)の2枚のプレートの間に配置することによって測定した。
【0100】
薄膜サンプルを型抜きして、約2.54cm×15.24cmの長方形を形成して、重量(Mettler-Toledo分析用天秤AG204型を用いて)及び厚み(Kafer FZ1000/30厚みスナップゲージを用いて)測定した。これらのデータを用いて、下記の公式を使って密度を計算した。p=m/(w*l*t)。ここで、p=密度(g/cm)、m=質量(g)、W=幅(cm)、l=長さ(cm)及びt=厚み(cm)。3つの測定値の平均を記録した。
【0101】
延伸PTFE薄膜のマトリクス引張り強さ(MTS)
引張り破断荷重を、平面グリップ及び0.445kNロードセルを備えるINSTRON 122張力試験機を用いて測定した。ゲージ長は約5.08cmであり、クロスヘッド速度は約50.8cm/分であった。サンプル寸法は、約2.54cm×約15.24cmである。最高強度測定のために、サンプルの長い」方の寸法を最高強度方向へ向けた。直交MTS測定のために、サンプルの大きい方の寸法を最高強度方向に直角に向けた。各サンプルを、Mettler Toledo秤AG204型を用いて計量し、その後Kafer FZ1000/30厚みスナップゲージを用いて厚みを測定した。代わりに、厚みを測定するための任意の適切な手段を使用できる。その後、引張りテスターを用いて、サンプルを個々にテストした。各サンプルの3つの異なる断面を測定した。3つの最大荷重(即ちピーク力)測定値の平均を記録した。下記の公式を用いて長手及び横断マトリクス引張り強さ(MTS)を計算した。MTS=(最高荷重/断面積)*(PTFEのかさ密度)/(多孔質薄膜の密度)。ここで、PTFEのかさ密度は、約2.2g/cmとした。
【0102】
以上の説明において、装置及び/又は方法の構造及び機能の細部と一緒に様々な対案を含めて多数の特徴及び利点を示した。開示は、例示とすることのみを意図しており、網羅的であることを意図しない。特に構造、材料、要素、構成部品、形状、サイズ及び部品の配列に関して、特許請求の範囲を表現する用語の広義の一般的意味によって示される全範囲で、開示の原則内の組合せを含めて様々な修正を加えることができることが、当業者には明白であろう。これらの様々な修正が特許請求の範囲の主旨及び範囲から逸脱しない範囲で、これらの修正が包含される。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
本体フレーム管腔を画定する概ね管状形を形成する本体フレームと、
各々ベースを形成する複数のU字形部及び複数のポストを形成する概ね環状形を有する葉状体フレームであって、前記本体フレーム管腔と同軸にかつ少なくとも部分的に前記本体フレーム管腔内部に配置される、葉状体フレームと、
前記本体フレームに結合された第1フィルムと、
前記U字形部の各々に結合されかつこれを横切って延びて、葉状体を形成する第2フィルムであって、各葉状体が葉状体自由縁を有し、前記第1フィルム及び前記第2フィルムの少なくとも一方が、少なくとも部分的に前記本体フレームを前記葉状体フレームに結合し、前記葉状体自由縁が隣接する葉状体自由縁と当接するように作用すると共に開放位置と閉鎖位置との間で移動可能である、第2フィルムと、
を備える、
弁。
[2]
前記本体フレームが前記葉状体フレームよりも剛性が高いことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[3]
前記第1フィルムと前記第2フィルムが前記本体フレーム及び前記葉状体フレームを間に挟むことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[4]
前記第1フィルム及び第2フィルムの少なくとも一方が、2層よりも多いフッ素重合体の層を有するラミネートを含むことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[5]
前記第1フィルム及び第2フィルムの少なくとも一方が、2層よりも多いフッ素重合体の層を有するラミネートを含むことを特徴とする、
項目4に記載の弁。
[6]
前記フッ素重合体の層が延伸フッ素重合体を含むことを特徴とする、
項目5に記載の弁。
[7]
前記延伸フッ素重合体がエラストマーを吸収することを特徴とする、
項目6に記載の弁。
[8]
前記エラストマーがペルフルオロメチルビニルエーテル及びテトラフルオロエチレンを含むことを特徴とする、
項目7に記載の弁。
[9]
前記延伸フッ素重合体が延伸PTFEを含むことを特徴とする、
項目6に記載の弁。
[10]
前記弁の長さ対前記弁の機能直径のアスペクト比が1未満であることを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[11]
前記本体フレームの長さが約20mm未満であることを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[12]
前記葉状体フレームが作動時に内向きに屈曲することを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[13]
前記葉状体フレームが形状記憶材料を含むことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[14]
前記葉状体フレームが金属材料を含むことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[15]
前記第2フィルムが、複数の気孔を有する少なくとも1層のフッ素重合体薄膜と、少なくとも1層のフッ素重合体薄膜の前記気孔の実質的に全ての中に存在するエラストマーとを有する複合材料を含むことを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[16]
前記複合材料が重量で約10%~90%の範囲のフッ素重合体薄膜を含むことを特徴とする、
項目15に記載の弁。
[17]
前記エラストマーが(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)を含むことを特徴とする、
項目15に記載の弁。
[18]
前記エラストマーが、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの共重合体を含むことを特徴とする、
項目15に記載の弁。
[19]
前記フッ素重合体薄膜が延伸PTFEを含むことを特徴とする、
項目15に記載の弁。
[20]
前記第1フィルムと前記第2フィルムが同一であることを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[21]
前記第1フィルムと前記第2フィルムの組成が異なることを特徴とする、
項目1に記載の弁。
[22]
第2フィルムの第1層を管状形に形成するステップと、
前記第2フィルムの前記第1層に近接するように葉状体フレームを配置するステップと、
前記葉状体フレーム及び前記第2フィルムの前記第1層に被せて第2フィルムの第2層を形成するステップであって、前記管状形が前記第1層及び第2層を含む、ステップと、
前記管状形をクランプ留めして葉状体を成形するステップと、
前記葉状体フレームに被せて第1フィルムの第3層を形成するステップと、
前記第1フィルムの前記第3層の周りにかつ前記葉状体フレームに被せて本体フレームを配置するステップと、
前記本体フレームに被せて前記第1フィルムの第4層を配置するステップと、
を含む、
マルチフレーム人工弁を製造する方法。
[23]
本体フレームを配置するステップが、本体フレーム管腔を画定する概ね管状形を形成する本体フレームを配置するステップを含み、
葉状体フレームを配置するステップが、各々ベースを形成する複数のU字形部及び複数のポストを形成する概ね環状形を有する葉状体フレームを配置するステップを含み、
前記葉状体フレーム及び前記第2フィルムの前記第1層に被せて第2フィルムの第2層を形成するステップが、前記U字形部の各々に前記U字形部の各々を横切って延びる第2フィルムを巻き付けて、それぞれが葉状体自由縁を有する葉状体を前記U字形部の中に形成するステップを含み、
前記葉状体フレームに被せて本体フレームを配置するステップが、前記葉状体フレームが前記本体フレーム管腔内に同軸に配置されるように、前記葉状体フレームに被せて前記本体フレームを配置するステップを含み、
前記葉状体フレームの周りに第1フィルムの第3層を形成するステップが、前記U字形部の各々に前記U字形部の各々を横切って延びる第1フィルムを巻き付けるステップを含み、
前記本体フレームに被せて第1フィルムの第4層を配置するステップが、前記本体フレーム上にかつ前記本体フレームの周りに第1フィルムを巻き付けるステップを含む、
ことを特徴とする、
項目22に記載の方法。
[24]
本体フレーム管腔を画定する概ね環状形を形成する本体フレームを用意するステップと、
各々ベースを形成する複数のU字形部及び複数のポストを形成する概ね環状形を有する葉状体フレームを用意するステップと、
フィルムを用意するステップと、
前記フィルムの第1層を管状形に形成するステップと、
フィルムの前記第1層の前記管状形に被せて前記葉状体フレームを同軸に配置するステップと、
前記葉状体フレーム及びフィルムの前記第1層の前記環状形の周りに前記フィルムを巻き付けるステップであって、前記フィルムが前記U字形部の各々を横切って延びて、前記U字形部の中に葉状体を形成する、ステップと、
前記第1層及び前記第2層を相互に及び前記葉状体フレームに接着するステップと、
前記U字形部に配置された前記葉状体をクランプ留めして前記葉状体を囲繞するステップと、
前記葉状体フレームに被せて前記フィルムの第3層を形成するステップと、
前記葉状体フレームが前記本体フレーム管腔内に同軸に配置されるように、前記フィルムの前記第3層に被せてかつ前記葉状体フレームに被せて前記本体フレームを配置するステップと、
前記本体フレーム及び前記フィルムの前記第3層に被せて前記フィルムの第4層を形成するステップと、
前記第3層及び前記第4層を相互に及び前記本体フレームに接着するステップと、
を含む、
マルチフレーム人工弁を製造する方法。
[25]
前記フィルムの前記第1、第2、第3及び第4層の1つ又はそれ以上を形成するステップが、前記フィルムの前記第1、第2、第3及び第4層の前記1つ又はそれ以上を複数回巻き付けるステップを含むことを特徴とする、
項目24に記載の方法。
[26]
フィルムを用意するステップが、複数の気孔を有する少なくとも1層のフッ素重合体薄膜と、前記少なくとも1層のフッ化重合体薄膜の前記気孔の実質的に全ての中に存在するエラストマーとを有する複合材料を用意するステップを含むことを特徴とする、
項目24に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C