(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】複数の糸を湿潤するための装置、およびこのような装置のための調量ポンプ
(51)【国際特許分類】
D01D 5/096 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
D01D5/096 A
(21)【出願番号】P 2019537822
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 EP2018050126
(87)【国際公開番号】W WO2018130445
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】102017000243.6
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017000760.8
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ユングブルート
(72)【発明者】
【氏名】ディートリヒ ヴィッツラー
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232124(JP,A)
【文献】特表2015-504988(JP,A)
【文献】特表2013-518694(JP,A)
【文献】米国特許第06543580(US,B1)
【文献】韓国公開特許第2003-0037245(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D01H 1/00-17/02
D06B 1/00-23/30
D06C 3/00-29/00
D06G 1/00- 5/00
D06H 1/00- 7/24
D06J 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体によって複数の糸を湿潤するための装置であって、前記糸に対応配置された複数の湿潤手段(1.1~1.6)と、複数の圧送管路(5.1~5.6)によって前記湿潤手段(1.1~1.6)に接続されている1つの調量ポンプ(6)とが設けられており、前記調量ポンプ(6)は、前記流体の複数の調量流を発生させるための複数の圧送手
段と、前記圧送管路(5.1~5.6)が接続されている複数のポンプ出口(7.1~7.6)とを有しており、前記圧送手段は、
少なくとも1つの遊星歯車セットによって構成され、前記遊星歯車セットは、ハウジングプレート(12.1,12.2)の間に配置され
ており、駆動軸(19)に保持された太陽歯車(10)と、複数の遊星歯車(9.1~9.6)と、を有する装置において、
前記遊星歯車セッ
トの前記遊星歯車(9.1~9.6)が、センタリングプレート(11.1)によって、互いに隣接した前記ハウジングプレート(12.1,12.2)の間において自由に案内されており、前記遊星歯車セッ
トの前記遊星歯車(9.1~9.6)は、それぞれ1つの貫流開口(13)を有しており、かつ前記遊星歯車(9.1,9.2)の前記貫流開口(13)は、通路系(14)によって少なくとも1つのポンプ入口(17)に接続されている
ことを特徴とする、複数の糸を湿潤するための装置。
【請求項2】
前記通路系(14)は、前記ハウジングプレート(12.1,12.2,12.3)における複数のハウジング孔(15,16.2,16.3)を有していて、該ハウジング孔(15,16.2,16.3)は、前記遊星歯車セッ
トの前記遊星歯車(9.1,9.2)の前記貫流開口(13)に開口している、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
複数の前記遊星歯車セッ
トは、前記ハウジングプレート(12.1~12.4)の間に保持されており、かつ前記ハウジング孔は、前記ハウジングプレート(12.1~12.4)のうちの1つのハウジングプレートにおける複数の入口孔(16.2,16.3)と、互いに隣接した前記遊星歯車セッ
トの間に配置された前記ハウジングプレート(12.1~12.4)における複数の軸方向の分配孔(15)とを有している、
請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングプレート(12.1~12.4)は、前記遊星歯車セッ
トに向けられた側に複数の分配溝(18.1,18.2)を有しており、該分配溝(18.1,18.2)はそれぞれ、前記貫流開口(13)のうちの1つの貫流開口と、前記遊星歯車セッ
トの複数の流入ゾーン(27.1,27.2)のうちの1つの流入ゾーンとの間において延びている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記遊星歯車セッ
トは、駆動軸(19)に結合されており、かつ前記駆動軸(19)は、ステップモータ(31)に連結されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ステップモータ(31)は、ハウジング(32)で前記ハウジングプレートのうちの外側のハウジングプレート(12.1)に保持されており、前記駆動軸(19)は、前記ステップモータ(31)のロータ(34)に直接結合されている、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記ハウジングプレート(12.2~12.4)のうちの1つのハウジングプレートにおける、前記遊星歯車セッ
トのうちの1つの遊星歯車セットに対応配置されたポンプ出口(7.1~7.6)は、それぞれコネクタ接続部(24)として形成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
糸を湿潤するための装置において使用するための調量ポンプであって、別個のポンプ出口(7.1~7.6)が対応配置されている複数の圧送手段が設けられており、前記圧送手
段は、
少なくとも1つの遊星歯車セットによって構成され、前記遊星歯車セットは、ハウジングプレート(12.1,12.2)の間に配置され
、駆動軸(19)に保持された太陽歯車(10)と、複数の遊星歯車(9.1~9.6)とを有し、前記遊星歯車セッ
トの前記複数の遊星歯車(9.1~9.6)は、センタリングプレート(11.1)によって、互いに隣接した前記ハウジングプレート(12.1,12.2)の間において案内されており、前記遊星歯車セッ
トの前記遊星歯車(9.1~9.6)は、それぞれ1つの貫流開口(13)を有しており、かつ前記遊星歯車(9.1~9.6)の前記貫流開口(13)は、通路系(14)によって少なくとも1つのポンプ入口(17)に接続されている、
調量ポンプ。
【請求項9】
前記通路系(14)は、前記ハウジングプレート(12.1,12.2,12.3)における複数のハウジング孔(15,16.2,16.3)を有しており、該ハウジング孔(15,16.2,16.3)は、前記遊星歯車セッ
トの前記遊星歯車(9.1,9.2)の前記貫流開口(13)に開口している、
請求項8記載の調量ポンプ。
【請求項10】
複数の前記遊星歯車セッ
トは、前記ハウジングプレート(12.1~12.4)の間に保持されており、かつ前記ハウジング孔は、前記ハウジングプレート(12.1~12.4)のうちの1つのハウジングプレートにおける複数の入口孔(16.2,16.3)と、互いに隣接した前記遊星歯車セッ
トの間に配置された前記ハウジングプレート(12.1~12.4)における複数の軸方向の分配孔(15)とを有している、
請求項9記載の調量ポンプ。
【請求項11】
前記ハウジングプレート(12.2~12.4)は、前記遊星歯車セッ
トに向けられた側に複数の分配溝(18.1,18.2)を有しており、該分配溝(18.1,18.2)はそれぞれ、前記貫流開口(13)のうちの1つの貫流開口と、前記遊星歯車セッ
トの複数の流入ゾーン(27.1,27.2)のうちの1つの流入ゾーンとの間において延びている、
請求項8から10までのいずれか1項記載の調量ポンプ。
【請求項12】
前記遊星歯車セッ
トは、駆動軸(19)に結合されており、かつ前記駆動軸(19)は、ステップモータ(31)に連結されている、
請求項8から11までのいずれか1項記載の調量ポンプ。
【請求項13】
前記ステップモータ(31)は、ハウジング(32)で前記ハウジングプレートのうちの外側のハウジングプレート(12.1)に保持されており、前記駆動軸(19)は、前記ステップモータ(31)のロータ(34)に直接結合されている、
請求項12記載の調量ポンプ。
【請求項14】
前記ハウジングプレート(12.2~12.4)のうちの1つのハウジングプレートにおける、前記遊星歯車セッ
トのうちの1つの遊星歯車セットに対応配置されたポンプ出口(7.1~7.6)は、それぞれコネクタ接続部(24)として形成されている、
請求項8から13までのいずれか1項記載の調量ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の、複数の糸を湿潤するための装置、および調量ポンプ、特に糸を湿潤するための装置において使用するための調量ポンプに関する。
【0002】
合成糸を製造および加工する場合に、糸を流体によって湿潤することが一般的に知られている。したがって合成糸の製造時には溶融紡糸後に、流体が使用され、これによって糸のフィラメントのまとまりを保証することができる。これに対して合成糸の後処理のためのテクスチャリングプロセスにおいては、流体は、先行して加熱された糸を冷却するために使用される。流体が、糸への油剤供給のために使用されるか、または糸の冷却のために使用されるかとは無関係に、流体を、高い調量精度で連続的に、走行する糸に供給することが必要である。さらに溶融紡糸時、およびテクスチャリング加工時においても、糸のグループは互いに平行に並んで案内され、かつ処理され、これによって流体は、複数の湿潤手段において、並行して等しい調量において供給されねばならない。
【0003】
冒頭に述べた形式の、複数の糸を湿潤するための装置、および冒頭に述べた形式の調量ポンプは、例えば欧州特許出願公開第1039011号明細書(EP 1039011 A2)に基づいて公知である。
【0004】
公知の装置では、流体の調量流は、調量ポンプの複数の圧送手段によって生ぜしめられる。圧送手段は、遊星歯車セットの歯車対によって形成され、このとき複数の遊星歯車セットが、ハウジングプレートの間に保持されている。このときそれぞれの遊星歯車セットは、太陽歯車と複数の遊星歯車とから形成され、このとき太陽歯車は、駆動軸に配置されており、かつ遊星歯車は、ハウジングプレート内に回転可能に支持された軸によって案内されている。ハウジングプレートにはポンプ出口が形成されており、これらのポンプ出口はそれぞれ、遊星歯車セットの流出ゾーンに接続されている。ポンプ出口のそれぞれには、別個の圧送管路を介して調量ポンプに接続されている湿潤手段が対応配置されている。
【0005】
これによって公知の装置を用いて、複数の糸を互いに並行して流体で湿潤することができる。糸への油剤供給のためおよび糸の冷却のためには、オイル・水エマルジョンから成る流体が使用される。しかしながらこのようなエマルジョンは、滞留時間が制限されているという欠点を有している。したがって比較的長い滞留時間では、流体内にバクテリアが発生することがあり、このようなバクテリアは、ガス放出を、ひいては気泡形成を惹起する。
【0006】
公知の、複数の糸を湿潤するための装置では、いまや、調量ポンプのデッドスペース内に溜まった残留流体自体が、このようなガス放出を生ぜしめることがあるということが観察されている。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、複数の糸を湿潤するための装置、および冒頭に述べた形式の調量ポンプを改良して、流体の僅かな調量流で可能な限り均一な湿潤を、複数の糸において並行して実施することができる、装置および調量ポンプを提供することである。
【0008】
この課題は本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備えた、複数の糸を湿潤するための装置、および請求項7に記載の特徴を備えた調量ポンプによって解決される。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
本発明は、歯車対におけるデッドスペースが、主として、歯車とハウジング壁との間において生じる先端クリアランスによって影響される、という知見に基づいている。このような先端クリアランスを遊星歯車セットにおいて可能な限り小さく構成するために、遊星歯車セットの遊星歯車は本発明によればそれぞれ、センタリングプレートによって、互いに隣接したハウジングプレートの間において、軸に支承されることなく、自由に案内されている。これによって本発明は、ハウジングプレートにおけるさらに追加的なデッドスペースである、遊星歯車のジャーナルガイドを意識的に省いている。そして逆に本発明は、遊星歯車に形成された貫流開口を、流体を該当する歯車対に供給するために使用している。このように構成されていると、遊星歯車の周囲においては常にフラッシングが行われ、このフラッシングによって、遊星歯車セットの軸方向間隙における流体の堆積が阻止される。したがって本発明に係る装置は、オイル含有の流体エマルジョンを、複数の糸を湿潤するために調量して個々の糸に供給するために、特に適している。このようにして、1本の糸を湿潤するために0.05ml/分~5ml/分の範囲における最小の調量流量を、好適に実現することができる。
【0011】
複数の糸を、調量された流体流によって均一に湿潤するために、流体は遊星歯車セットにおいて等しい形式で歯車対に供給される。そのために本発明の好適な発展形態では、通路系は、ハウジングプレートにおける複数のハウジング孔を有していて、該ハウジング孔は、遊星歯車セットの遊星歯車の貫流開口に開口している。
【0012】
多数の糸を同時に湿潤するために、好ましくは、互いに平行に並んでいる複数の遊星歯車セットが使用される。そのためにハウジング孔は、ハウジングプレートのうちの1つのハウジングプレートにおける複数の入口孔と、互いに隣接した遊星歯車セットの間に配置されたハウジングプレートにおける複数の軸方向の分配孔とを有している。このように構成されていると、流体を軸方向において、遊星歯車セットのそれぞれに、遊星歯車の貫流開口を通して直接供給することができる。
【0013】
遊星歯車セットの流入ゾーンの充填は、好ましくは複数の分配溝によって保証され、これらの分配溝は、本発明の好適な発展形態によれば、ハウジングプレートの、遊星歯車に向けられた側に形成されている。このとき分配溝はそれぞれ、遊星歯車の貫流開口のうちの1つの貫流開口と、遊星歯車セットの複数の流入ゾーンのうちの1つの流入ゾーンとの間において延びている。
【0014】
流体の僅かな量の調量流をも、糸に連続的に供給できるようにするために、本発明の好適な発展形態では、遊星歯車セットは、駆動軸に結合されており、かつ駆動軸は、ステップモータに連結されている。このように構成されていると、高い精度と均一性とを備えた低い回転数をも生ぜしめることができる。
【0015】
特にコンパクトなユニットを形成することができる構成では、ステップモータは、ハウジングで調量ポンプの外側のハウジングプレートに保持されており、かつこの外側のハウジングプレートにおいて駆動軸は、ステップモータのロータに直接結合されている。このように構成されていると、遊星歯車セットの駆動軸は、直接、ステップモータのモータ軸として作用する。
【0016】
複数の糸を湿潤するためのこのような装置は、12~32本の糸の範囲における比較的多数の糸のために好適に使用され、かつこれによって全部で12~32の圧送管路を相応の数のポンプ出口に接続することができるので、本発明の特に好適な発展形態では、ハウジングプレートのうちの1つのハウジングプレートにおける、遊星歯車セットのうちの1つの遊星歯車セットに対応配置されたポンプ出口は、それぞれコネクタ接続部として形成されている。このように構成されていると、例えばホース管路を簡単な差込み結合によって、ポンプ出口に直接保持することができる。これによって、高い取付けコストを必要とする高価なねじ山式ロック装置が不要になる。
【0017】
したがって本発明に係る調量ポンプは、流体の、比較的多数の均一に生ぜしめられた調量流を発生させるために、特に適している。このときハウジングプレート毎におけるポンプ出口の高い密度を得るために、遊星歯車セットは、好ましくは複数の遊星歯車を備えて構成されている。遊星歯車セット毎における遊星歯車の数は、2~6の遊星歯車の範囲である。
【0018】
次に添付の図面を参照しながら、本発明に係る装置および本発明に係る調量ポンプの実施形態について詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】複数の糸を湿潤するための本発明に係る装置の1実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示された実施形態の本発明に係る調量ポンプを概略的に示す縦断面図である。
【
図3】
図1に示された実施形態の本発明に係る調量ポンプを概略的に示す別の縦断面図である。
【
図4】
図1に示された実施形態の本発明に係る調量ポンプを概略的に示す横断面図である。
【
図5】本発明に係る調量ポンプを駆動するためのステップモータを概略的に示す横断面図である。
【
図6】本発明に係る調量ポンプの別の実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【
図7】
図6に示された実施形態を概略的に示す別の縦断面図である。
【
図8】
図6に示された実施形態を概略的に示す横断面図である。
【0020】
図1には、本発明に係る、複数の糸を湿潤するための装置の1実施形態が概略的に示されている。本実施形態は、複数の湿潤手段1.1~1.6を有している。湿潤手段の数は一例である。基本的に湿潤手段の数は、互いに平行に並んで1つのグループとして同時に湿潤されるべき糸の数に合わせられている。このとき湿潤手段1.1~1.6として例えば湿潤体2が示されており、この湿潤体2は、一方の側に開放した湿潤溝3を有している。この湿潤溝3には調量孔4が開口している。調量孔4は、圧送管路5.1~5.6のうちの1つの圧送管路に接続されている。
【0021】
湿潤体2として形成された、
図1に示された湿潤手段は、一例である。基本的にこのような湿潤手段は、糸への油剤供給のために、または例えば糸を冷却するために使用することができる。使用事例に応じて湿潤手段は、相応に構成されている。したがって例えば糸を冷却するためには、長く引き伸ばされた湿潤溝が使用され、これらの湿潤溝には流入領域において流体が供給される。
【0022】
湿潤手段1.1~1.6のそれぞれの湿潤手段は、別個の圧送管路5.1~5.6を介して調量ポンプ6に接続されている。そのために調量ポンプ6は、複数の圧送手段を有しており、これらの圧送手段にはそれぞれ、複数のポンプ出口7.1~7.6のうちの1つのポンプ出口が対応配置されている。ポンプ出口7.1~7.6には、圧送管路5.1~5.6が接続されている。
【0023】
調量ポンプ6は、ポンプ入口17および供給管路30を介して、ここでは図示されていない流体リザーバに接続されており、この流体リザーバは、湿潤のために設けられた流体を貯えている。調量ポンプ6は、例えばステップモータとして形成されていてよい電動機31を介して駆動される。
【0024】
調量ポンプ6の構造および圧送手段の構造については、以下において
図2~
図4を参照しながら詳しく述べる。
【0025】
図2および
図3にはそれぞれ、調量ポンプ6が縦断面図で示されており、かつ
図4には、調量ポンプ6が横断面図で示されている。図面のうちの1つの図面を特に参照するのではない場合、以下の記載はすべての図面に対するものである。
【0026】
調量ポンプ6は、複数のハウジングプレート12.1~12.4から成っており、これらのハウジングプレート12.1~12.4はこの場合円形横断面を有している。ハウジングプレート12.1~12.4は、その間に複数の遊星歯車セット8.1~8.3を閉じ込めており、これらの遊星歯車セット8.1~8.3はそれぞれ、センタリングプレート11.1~11.3の内部において取り囲まれている。ハウジングプレート12.1~12.4およびその間に位置しているセンタリングプレート11.1~11.3は、圧密にまとめられている。
【0027】
遊星歯車セット8.1~8.3のそれぞれの遊星歯車セットは、複数の圧送手段を形成しており、これらの圧送手段については、以下において
図4における図示を用いて詳しく記載する。
【0028】
図4における図示から分かるように、遊星歯車セットのうちの1つの遊星歯車セット、ここでは遊星歯車セット8.1は、2つの外側の遊星歯車9.1,9.2と、中心に配置された太陽歯車10とを有している。太陽歯車10は、軸ハブ結合部29を介して、駆動軸19の周囲に保持されている。遊星歯車9.1,9.2は、互いに向かい合って位置するように太陽歯車10の両側に配置されていて、かつ太陽歯車10と噛合している。遊星歯車9.1,9.2はそのためにセンタリングプレート11.1内において、軸によって支承されることなく、自由に案内される。太陽歯車10と遊星歯車9.1,9.2の噛合部の直前および直後の領域に、センタリングプレート11.1はそれぞれ1つの自由空間を有しており、これらの自由空間は、流入ゾーンおよび流出ゾーンとして作用する。太陽歯車10が反時計回り方向に駆動される場合には、遊星歯車9.1と太陽歯車10との間における上側領域に第1の流入ゾーン27.1が形成される。噛合部とは反対に位置している側には、流出ゾーン28.1が形成されている。流入ゾーンは、専門分野では吸込み室と呼ばれ、かつ流出ゾーンは吐出室と呼ばれる。反対に位置している側において第2の流入ゾーン27.2が、遊星歯車9.2と太陽歯車10との間における噛合部の下に形成されている。これに対して歯係合部の上側には、流出ゾーン28.2が位置している。
【0029】
これによって
図4に示された遊星歯車セット8.1は、流体の2つの別個の調量流を生ぜしめる2つの圧送手段を形成する。遊星歯車9.1,9.2の数は、一例である。したがって太陽歯車10には、2つよりも多くの遊星歯車が対応配置されてよい。
【0030】
図4における図示からさらに分かるように、流入ゾーン27.1,27.2にはそれぞれ1つの分配溝18.1,18.2が対応配置されており、これらの分配溝18.1,18.2はそれぞれ、ハウジングプレート12.2の一方の側に形成されている。このとき分配溝18.1,18.2は、流入ゾーン27.1,27.2からそれぞれ、遊星歯車9.1,9.2に形成されている貫流開口13に延びている。
【0031】
流入ゾーン27.1,27.2の充填についてさらに述べるために、以下において
図2を参照する。
【0032】
図2における図示から分かるように、遊星歯車セット8.1~8.3のすべての遊星歯車9.1,9.2は、それぞれ1つの貫流開口13を有している。貫流開口13は、好ましくは遊星歯車9.1,9.2の中央領域に形成されている。貫流開口13は、通路系14を介してポンプ入口17に接続されている。この場合通路系14は、ハウジングプレート12.1,12.2,12.3における複数のハウジング孔によって形成される。そのために軸方向に延びる複数の分配孔15.1,15.2が形成されており、これらの分配孔15.1,15.2は、ハウジングプレート12.2,12.3を貫通していて、かつ遊星歯車セット8.1~8.3における遊星歯車9.1;9.2の貫流開口13を互いに接続している。
【0033】
駆動軸19によって貫通される外側のハウジングプレート12.1には、ポンプ入口17が形成されている。ポンプ入口17は、入口通路16.1を介して、ハウジングプレート12.1の内部における入口室20に接続されている。入口室20は、駆動軸19に対して同心に形成されていて、かつ外方に向かってシール部材21によってシールされている。入口室20は、ハウジング孔として斜めに配置された2つの入口孔16.2,16.3を通って、第1の遊星歯車セット8.1の遊星歯車9.1,9.2における貫流開口13に接続されている。これによってポンプ入口17を介して供給された流体を、すべての遊星歯車セット8.1~8.3の遊星歯車における貫流開口13に供給することができる。
【0034】
既に
図4に示されかつ記載されたように、ハウジングプレート12.3,12.4は、遊星歯車セット8.2,8.3に向けられた側に同様に複数の分配溝18.1,18.2を有しており、これによって遊星歯車9.1,9.2の貫流開口13を、遊星歯車セット8.2,8.3の流入ゾーン27.1,27.2に接続することができる。
【0035】
図4における図示から分かるように、遊星歯車セット8.1の流出ゾーン28.1,28.2は、ハウジングプレート12.2におけるそれぞれ1つの軸方向の出口孔26.1,26.2を介して、それぞれ1つのポンプ出口に接続されている。
【0036】
図3における図示から分かるように、軸方向の出口孔26.1,26.2はそれぞれ、ハウジングプレート12.2の半径方向の出口孔25.1,25.2に開口している。半径方向の出口孔25.1,25.2は、ハウジングプレート12.2の周囲に形成されたポンプ出口7.1,7.2に接続されている。本実施形態では、ポンプ出口7.1,7.2はそれぞれ、圧送管路の管路端部の直接的な結合を可能にするコネクタ接続部24を有している。
【0037】
しかしながらここで強調して述べておくと、ポンプ出口7.1~7.6はねじ山を備えて形成されていてもよい。
【0038】
ハウジングプレート12.3,12.4に形成されたポンプ出口7.3~7.6は、同じ形式でそれぞれ1つの半径方向の出口孔25.1,25.2および軸方向の出口孔26.1,26.2を介して、遊星歯車セット8.2,8.3の流出ゾーン28.1,28.2に接続されている。
【0039】
遊星歯車セット8.1,8.3を駆動するために設けられた駆動軸19は、ハウジングプレート12.1,12.2,12.3を貫通していて、かつ一方の端部でハウジングプレート12.4に回転可能に支持されている。ここでは詳しく示されていない駆動端部で、駆動軸19は電動機に結合されている。
図5には、駆動軸19を駆動するための可能な実施形態が示されている。
【0040】
図5には、電動機が横断面図で概略的に示されており、この電動機は、本実施形態ではステップモータであってよい。電動機31は、モータハウジング32を有しており、このモータハウジング32は、ハウジングプレート12.1に直接保持されている。駆動軸19は、自由な駆動端部33で電動機31の内部に進入している。駆動端部33の周囲には、ロータ34が配置されており、このロータ34は、ステータ35と共働する。このようにして駆動軸19を、電動機31によって直接駆動することができる。
【0041】
図1に示された本発明に係る、複数の糸を湿潤するための装置では、調量ポンプ6は電動機31によって設定された回転数で駆動される。このときポンプ入口17と供給管路30とを介して、流体が遊星歯車セット8.1~8.3によって吸い込まれ、かつそれぞれの流入ゾーン27.1,27.2に供給される。このとき流体は、それぞれ遊星歯車9.1,9.2の貫流開口13内に達し、かつ軸方向間隙を均一に貫流する。太陽歯車10の回転によって、係合している遊星歯車9.1,9.2が駆動され、これによって流体は流入ゾーンから流出ゾーンに圧送される。次いで調量された流体流は、ポンプ出口7.1~7.6を介して圧送管路5.1~5.6内に達し、かつ湿潤手段1.1~1.6に供給される。遊星歯車セット8.1~8.3の、センタリングプレート11.1~11.3内において、軸によって支承されることなく自由に案内された遊星歯車9.1,9.2によって、極めて僅かな先端クリアランス、ひいては極めて僅かなデッドスペースが生ぜしめられる。さらに遊星歯車セット8.1~8.3における軸方向間隙の連続的なフラッシングが保証されており、これによって連続的な流体流がポンプ内部において発生する。これによって本発明に係る装置は、糸を湿潤するために、ほぼ均一な調量された流体流による連続的な作動を可能にする。したがって高い調量精度を長い耐用寿命にわたって保証することができる。
【0042】
図1に示された実施形態による本発明に係る装置は、圧送手段を形成するための複数の遊星歯車セットを有する調量ポンプによって作動される。このとき遊星歯車セットのそれぞれは、2つの遊星歯車と1つの太陽歯車とから成っている。この構成は一例である。したがって、
図1に示された本発明に係る装置の湿潤手段に流体を供給するために、より多くの遊星歯車を備えた遊星歯車セットを使用することも可能である。調量ポンプ6のこのような実施形態が、
図6、
図7および
図8に複数の見方で示されている。
図6および
図7には、それぞれ調量ポンプ6の縦断面図が示されており、
図8には、調量ポンプ6の横断面図が示されている。したがってこれらの図面のうちの1つの図面を特に参照するのではない場合、以下の記載はすべての図面に対するものである。
【0043】
図6~
図8に示された調量ポンプ6の実施形態は、同様に円形の横断面を有しているハウジングプレート12.1,12.2から成っている。しかしながらここで述べておくと、ハウジングプレート12.1,12.2の外輪郭は、任意の形状を、例えば角張った形状を有することもできる。ハウジングプレート12.1,12.2は、その間に1つの遊星歯車セット8.1を閉じ込めており、この遊星歯車セット8.1は、センタリングプレート11.1の内部に取り囲まれている。ハウジングプレート12.1,12.2およびその間に位置しているセンタリングプレート11.1は、圧密にまとめられている。
【0044】
図8における図示から分かるように、遊星歯車セット8.1は、本実施形態では6つの外側の遊星歯車9.1~9.6と、中心に配置された太陽歯車10とを有している。太陽歯車10は、軸ハブ結合部29を介して駆動軸19の周囲に保持されている。遊星歯車9.1~9.6は、太陽歯車10の周囲にわたって均一に分配配置されており、かつ太陽歯車10と係合している。遊星歯車9.1~9.6は、そのためにセンタリングプレート11.1内において、軸によって支承されることなく自由に案内されている。これによって遊星歯車セット8.1は、全部で6つの圧送手段を形成しており、これによりポンプ出口7.1~7.6において糸を湿潤するための流体の6つの別個の調量流を生ぜしめることができる。このようにして調量ポンプの本実施形態は、本発明に係る装置の、
図1に示された構成において、全部で6つの湿潤手段に流体を供給するために直接使用することができる。このとき遊星歯車セット8.1の歯車セットの機能形式は、
図4に示された実施形態と同一であるので、ここでは上に述べた記載を参照するものとする。したがって遊星歯車9.1~9.6と太陽歯車10との間における歯車対のそれぞれには、1つの流入ゾーン27と1つの流出ゾーン28とが対応配置されている。遊星歯車9.1~9.6に対応配置された流入ゾーン27は、それぞれ分配溝18を介して、遊星歯車9.1~9.6のうちの1つの遊星歯車における貫流開口13に接続されている。
【0045】
したがって遊星歯車9.1~9.6のそれぞれは、別個の貫流開口13を有しており、これらの貫流開口13は、
図6における図示から分かるように、一緒に通路系14を介してポンプ入口17に接続されている。この場合通路系14は、複数のハウジング孔によって形成されており、これらのハウジング孔は、ハウジングプレート12.1内において、入口孔16.2~16.7として、中央の入口室20から、遊星歯車セット8.1に向けられた側壁に至るまで延びている。入口孔16.2~16.7はそれぞれ、遊星歯車9.1~9.6における貫流開口13のうちの1つの貫流開口に開口している。ポンプ入口17は、入口通路16.1を介して入口室20に接続されている。本実施形態においてポンプ入口17は、コネクタ接続部24を備えて形成されており、これによって供給管路の管路端部の直接的な結合が可能である。
【0046】
駆動軸19によって貫通される外側のハウジングプレート12.1には、ポンプ入口17が形成されている。駆動軸19および入口室20は、ハウジングプレート12.1内においてシール部材21によって外方に向かってシールされている。
【0047】
既に
図8における図示から分かるように、遊星歯車セット8.1の流出ゾーン28は、ハウジングプレート12.2におけるそれぞれ1つの軸方向の出口孔26を介して、ポンプ出口7.1~7.6のうちの1つのポンプ出口に接続されている。
【0048】
図7における図示から分かるように、軸方向の出口孔26はそれぞれ、ハウジングプレート12.2の半径方向の出口孔25に開口している。半径方向の出口孔25は、ハウジングプレート12.2の周囲に形成されたポンプ出口7を、該当する歯車対のそれぞれの流出ゾーンに接続している。これによって本実施形態は全部で6つのポンプ出口を有しており、このとき
図7には単にポンプ出口7.1,7.4だけが示されている。本実施形態においてポンプ出口7.1,7.4も同様にそれぞれ1つのコネクタ接続部24を有しており、このコネクタ接続部24は、圧送管路の管路端部の直接的な結合を可能にする。
【0049】
図6および
図7における図示から分かるように、駆動軸19は一方の端部でハウジングプレート12.2に支持されている。ここでは図示されていない反対側に位置している端部で駆動軸19は、駆動装置に連結されている。遊星歯車セット8.1の太陽歯車10と駆動軸19との結合は、本実施形態では軸ハブ結合部29によって行われている。
【0050】
これによって作動時には全部で6つの圧送手段を形成することができ、これらの圧送手段は、均一に調量された6つの流体流を生ぜしめ、かつポンプ出口7.1~7.6を介して流出させる。したがって、
図1に示された装置を構成するためには、ただ1つの遊星歯車セット8.1しか備えていない調量ポンプの実施形態も適している。
【0051】
ここで述べておくと、本発明に係る調量ポンプの図示された実施形態におけるハウジング孔の構成は、単に例である。このとき重要なのは、ポンプ入口が遊星歯車における貫流開口に接続されていることである。このとき通路系の設計上の構成を変化させるために、複数のポンプ入口を使用することも可能である。可能な限り問題のない湿潤をガス放出なしに得るためには、遊星歯車を介した流体の供給が特に好適である。このようにして、最小のデッドスペースで遊星歯車セットに組み込まれている遊星歯車の周囲における均一なフラッシングが達成される。