IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピルキントン グループ リミテッドの特許一覧 ▶ 日本板硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図1
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図2
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図3
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図4
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図5
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図5A
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図6
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図7
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図8
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図9
  • 特許-合わせガラスとその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】合わせガラスとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220323BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20220323BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C03C27/12 M
H05B3/20 355A
B32B17/10
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019539266
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2018050157
(87)【国際公開番号】W WO2018134608
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】1712058.5
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】P 2017008689
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100204401
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 睦美
(72)【発明者】
【氏名】リー フランシス メラー
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー チャンバーレイン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム シドンズ
(72)【発明者】
【氏名】小川 良平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 永史
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080406(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/039747(WO,A1)
【文献】特開2016-060668(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162107(WO,A1)
【文献】特開2013-056811(JP,A)
【文献】特開2015-168584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
B60S 1/00- 1/68
B60J 1/00
H05B 3/20
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-第1の縁と、前記第1の縁に対向している第2の縁と、を有する外側ガラスシート(1)と、
-前記外側ガラスシートとは反対側に配置され、前記外側ガラスシートと実質的に同じ形状を有する内側ガラスシート(2)と、
-前記外側ガラスシートと前記内側ガラスシートとの間に配置された中間層(3)であって、
-前記第1の縁側の端部に沿って延びる第1の母線(312)と、
-前記第2の縁側の端部に沿って延びる第2の母線(313)と、
-前記第1の母線および前記第2の母線を接続するように配置された複数の電熱線(6)と、
-両母線の間に少なくとも前記複数の電熱線を支持するためのシート状基板(311)と、を備える、発熱層(31)を有する、中間層(3)と、を備え、
-前記中間層が、前記発熱層に隣り合う接着剤層(33)をさらに備え、
-厚さ方向における前記電熱線の中心から前記外側ガラスシートの外面(S1)までの距離(Z1)、および厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの内面(S4)までの距離(Z4)が異なり、かつ、厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)、および厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)が異なり、かつ前記接着剤層(33)の厚さが、100マイクロメートル以下であることを特徴とする、合わせガラス。
【請求項2】
前記接着剤層(33)の前記厚さまたは前記基板(311)の厚さのうちのより小さい厚さを有するいずれかが、10~100マイクロメートルの範囲内である、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記外側ガラスシートの厚さおよび前記内側ガラスシートの厚さが、異なっている、請求項1または請求項2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記発熱層が、前記外側ガラスシート側または前記内側ガラスシート側のいずれかにおいて、前記厚さ方向において前記中間層の中心から配置されている、請求項1~3のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項5】
少なくとも前記複数の電熱線が、前記外側ガラスシートまたは前記内側ガラスシートと接触するように配置されている、請求項1~4のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記発熱層が、前記外側ガラスシートと接触している、請求項1~5のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記発熱層が、前記内側ガラスシートと接触している、請求項1~のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記中間層が、前記発熱層を挟む一対の接着剤層をさらに備え、前記一対の接着剤層のそれぞれの厚さが、異なっている、請求項1~のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記一対の接着剤層の前記接着剤層の厚さ、または前記基板の厚さが、5~100マイクロメートルである、請求項8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
-前記複数の電熱線の表面が、黒化処理に供され、
-前記複数の電熱線(6)が、前記外側ガラスシート側に配置され、
-前記基板(311)が、前記内側ガラスシート側に配置されている、請求項1~9のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項11】
厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記外側ガラスシートの前記内面(S2)までの距離(Z2)、または厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの前記外面(S3)までの距離(Z3)が、400マイクロメートル以下である、請求項1~10のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記外側ガラスシートの前記内面(S2)までの前記距離(Z2)、または前記厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの前記外面(S3)までの前記距離(Z3)が、5マイクロメートル以上である、請求項1~11のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記電熱線が、銅、タングステン、銀、もしくはモリブデン、またはそれらの合金を含む、請求項1~12のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記電熱線が、少なくとも90質量パーセントの純度の銅、タングステン、またはモリブデンからなる、請求項1~13のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項15】
各電熱線の断面が、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、または台形の形状を有する、請求項1~14のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項16】
各電熱線が、3マイクロメートル以上かつ500マイクロメートル以下の幅を有する、請求項1~15のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項17】
各電熱線が、1マイクロメートル以上かつ100マイクロメートル以下の厚さを有する、請求項1~16のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項18】
前記母線および前記複数の電熱線を、一体的に形成することができる、請求項1~17のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項19】
隣り合う電熱線間の間隔が、1~4mmである、請求項1~18のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項20】
前記複数の電熱線(6)が、印刷され、エッチングされ、転写され、または予備成形される、請求項1~19のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項21】
前記基板(31)、前記接着剤層(33)、または前記一対の接着剤層(32、33)が、膜、楔膜、エンボス膜として設けられるか、またはスプレーされる、請求項1~20のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項22】
前記基板が、PETまたはPVBまたは可塑剤を含まないPVBを含む、請求項1~21のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項23】
前記接着剤層(33)または前記一対の接着剤層(32、33)が、PVB、または接着制御添加剤を有するPVBを含む、請求項1~22のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項24】
前記基(311)、前記接着剤層(33)、または前記一対の接着剤層(32、33)に、赤外線吸収層を設けることができる、請求項1~23のいずれかに記載の合わせガラス。
【請求項25】
合わせガラスを製造する方法であって、
第1の縁と、前記第1の縁に対向している第2の縁と、を有する外側ガラスシートを設けるステップと、
前記外側ガラスシートの反対側に内側ガラスシートを配置するステップであって、前記内側ガラスシートは前記外側ガラスシートと実質的に同じ形状を有する、内側ガラスシートを配置するステップと、
前記外側ガラスシートと前記内側ガラスシートとの間に中間層を配置するステップであって、前記中間層は、前記第1の縁側の端部に沿って延びる第1の母線と、前記第2の縁側の端部に沿って延びる第2の母線と、を備える発熱層を有する、中間層を配置するステップと、
前記第1の母線および前記第2の母線を接続するように複数の電熱線を配置するステップと、
両母線の間に少なくとも前記複数の電熱線を支持するためのシート状基板(311)を配置するステップと、を含み、
前記中間層が、前記発熱層に隣り合う接着剤層(33)をさらに備え、
厚さ方向における前記電熱線の中心から前記外側ガラスシートの外面(S1)までの距離(Z1)、および厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの内面(S4)までの距離(Z4)が異なり、かつ、厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)、および厚さ方向における前記電熱線の前記中心から前記内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)が異なり、かつ前記接着剤層(33)の厚さが、100マイクロメートル以下であることを特徴とする、方法。
【請求項26】
前記発熱層が、前記外側ガラスシートまたは前記内側ガラスシートと接触するように配置されている、請求項25に記載の合わせガラスを製造する方法。
【請求項27】
前記外側ガラスシートと、前記中間層と、前記内側ガラスシートと、を一緒に高温高圧下で所定の時間積層するステップをさらに含む、請求項25~26のいずれかに記載の合わせガラスを製造する方法。
【請求項28】
陸上、水上、または空中での輸送のための車両における、請求項1~24に記載の合わせガラスの使用。
【請求項29】
建築物における、請求項1~24に記載の合わせガラスの使用。
【請求項30】
デジタルサイネージまたは冷蔵庫のドアにおける、請求項1~24に記載の合わせガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスと、合わせガラスを製造する方法と、に関する。
【0002】
陸上、水上、または空中の建物または車両用の合わせガラスは、曇り取りまたは霜取りが必要な場合があることが知られている。気温が低い日や寒い気候では、自動車のウインドシールドが曇り、運転に支障をきたすことがある。そのため、ウインドシールドの曇りを解消するために様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ウインドシールド内に母線および電熱線を配置して抵抗熱によってウインドシールドの温度を上昇させて、乗客の視界を確保するためにウインドシールドは曇り取りまたは霜取りされることが開示されている。特許文献2には、ウインドシールドの内側に配置された母線および電熱線、ならびに母線と1プライの層間材料との間に配置された接着剤層が開示されている。
【0003】
先行技術文献
文献1:US2016/0311402(A1)(Dai Nippon Printing Co Ltd,Suetsugu)。
文献2:WO2016/038372(A1)(Pilkington Group Limited,Chamberlain)
【発明の概要】
【0004】
発明が解決しようとする課題
本発明者らは、合わせガラスに関連した以下の課題を発見した。電熱線に電流を流して合わせガラスを加熱すると、合わせガラスを通して見たときに外側の物体が波状に見える。その原因を調査すると、本発明者らは、電熱線の周囲の樹脂層が熱によって歪み、その歪みが中間層の屈折率を変化させることを発見した。
【0005】
本発明の目的は、電熱線周囲の過度な温度上昇を防止することができる合わせガラスを提供することによって、この課題を解決することにある。
【0006】
課題を解決するための手段
本発明は、第1の態様において、第1の実施形態において、第1の縁と、第1の縁に対向している第2の縁と、を有する外側ガラスシートと、外側ガラスシートとは反対側に配置され、外側ガラスと実質的に同じ形状を有する内側ガラスシートと、外側ガラスシートと内側ガラスシートとの間に配置された中間層であって、その中間層が、第1の縁側の端部に沿って延びる第1の母線と、第2の縁側の端部に沿って延びる第2の母線と、第1の母線および第2母線を接続するように配置された複数の電熱線と、両母線の間に少なくとも複数の電熱線を支持するためのシート状基板(311)と、を備える、発熱層を有する、中間層と、を備え、その中間層が、発熱層に隣り合う接着剤層(33)をさらに備え、厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの表面(S1、S2)までの距離(Z1、Z2)、および厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの表面(S3、S4)までの距離(Z3、Z4)が異なり、厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)、および厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)が異なり、かつ接着剤層(33)の厚さまたは基板(311)のうちのより小さい厚さを有するいずれかが、400マイクロメートル以下、好ましくは380マイクロメートル以下である、合わせガラスを提供する。
【0007】
合わせガラスにおいて、接着剤層(33)の厚さまたは基板(311)の厚さのうちのより小さい厚さを有するいずれかは、10~100マイクロメートルの範囲内にある。
【0008】
合わせガラスにおいて、外側ガラスシートの厚さおよび内側ガラスシートの厚さは異なっている場合がある。
【0009】
合わせガラスにおいて、発熱層は、外側ガラスシート側または内側ガラスシート側のいずれかにおいて、厚さ方向において中間層の中心から配置することができる。
【0010】
合わせガラスにおいて、発熱層は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートと接触するように配置することができる。
【0011】
合わせガラスにおいて、中間層は、発熱層に隣り合う接着剤層をさらに備えることができる。
【0012】
合わせガラスにおいて、発熱層は、両母線の間に少なくとも複数の電熱線を支持するためのシート状基板と、複数の電熱線と、を備え、少なくとも複数の電熱線は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートと接触するように配置することができる。
【0013】
合わせガラスにおいて、発熱層は外側ガラスシートと接触することができる。
【0014】
合わせガラスにおいて、発熱層は、内側ガラスシートと接触するように配置することができる。
【0015】
合わせガラスにおいて、中間層は、発熱層を挟む2つの接着剤層を備えることができ、各接着剤層の厚さは異なる。
【0016】
合わせガラスにおいて、一対の接着剤層のうちのより小さい厚さを有する接着剤層の厚さ、または基板の厚さは、5マイクロメートル~300マイクロメートル、より好ましくは10マイクロメートル~100マイクロメートル、最も好ましくは20マイクロメートル~50マイクロメートルであり得る。
【0017】
合わせガラスにおいて、発熱層は、両母線の間に少なくとも複数の電熱線を支持するためのシート状基材と、複数の電熱線と、を備えることができ、複数の電熱線の表面を黒化処理に供することができ、複数の電熱線は外側ガラスシート側に配置することができ、基板は内側ガラスシート側に配置することができる。
【0018】
合わせガラスにおいて、厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)または厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)は、400マイクロメートル以下、好ましくは380マイクロメートル以下、好ましくは300マイクロメートル以下、好ましくは200マイクロメートル以下、さらに好ましくは139マイクロメートル以下、最も好ましくは90マイクロメートル以下である。
【0019】
合わせガラスにおいて、厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)または厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)は、5マイクロメートル以上、好ましくは11マイクロメートル以上、より好ましくは31マイクロメートル以上、最も好ましくは51マイクロメートル以上である。
【0020】
合わせガラスにおいて、複数の電熱線は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートのいずれかと接触していてもよい。
【0021】
合わせガラスにおいて、複数の電熱線は、銅、タングステン、銀、もしくはモリブデン、またはそれらの合金を含むことができる。
【0022】
合わせガラスにおいて、複数の電熱線は、純度少なくとも90質量パーセント、より好ましくは99質量パーセントの銅、タングステン、またはモリブデンからなり得る。
【0023】
合わせガラスにおいて、各電熱線の断面は、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、または台形の形状を有することができる。
【0024】
合わせガラスにおいて、各電熱線は、3マイクロメートル以上かつ500マイクロメートル以下、より好ましくは5マイクロメートル以上かつ20マイクロメートル以下、最も好ましくは8マイクロメートル以上かつ15マイクロメートル以下の幅を有し得る。
【0025】
合わせガラスにおいて、各電熱線は、1マイクロメートル以上かつ100マイクロメートル以下、より好ましくは3マイクロメートル以上かつ20マイクロメートル以下、最も好ましくは8マイクロメートル以上かつ12マイクロメートル以下の厚さを有し得る。
【0026】
合わせガラスにおいて、母線と複数の電熱線とを一体的に形成することができる。
【0027】
合わせガラスにおいて、隣り合う電熱線の間隔は、好ましくは1~4mm、より好ましくは1.25~3mm、最も好ましくは1.25~2.5mmである。
【0028】
合わせガラスにおいて、複数の電熱線を印刷、エッチング、転写、または予備成形することができる。
【0029】
合わせガラスにおいて、基板、接着剤層、または一対の接着剤層は、膜、楔膜、エンボス膜として設けることができるか、またはスプレーすることができる。
【0030】
合わせガラスにおいて、基板はPETまたはPVB、より好ましくは可塑剤を含まないPVBを含むことができる。
【0031】
合わせガラスにおいて、接着剤層または一対の接着剤層は、PVB、より好ましくは接着制御添加剤を有するPVBを含むことができる。
【0032】
合わせガラスにおいて、基板、接着剤層、または一対の接着剤層には、赤外線吸収層を設けることができる。
【0033】
本発明は、第2の態様において、第1の実施形態において、合わせガラスを製造する方法であって、
第1の縁と、第1の縁に対向している第2の縁と、を有する外側ガラスシートを設けるステップと、
外側ガラスシートの反対側に内側ガラスシートを配置するステップであって、内側ガラスシートは外側ガラスシートと実質的に同じ形状を有する、内側ガラスシートを配置するステップと、
外側ガラスシートと内側ガラスシートとの間に中間層を配置するステップであって、中間層は、第1の縁側の端部に沿って延びる第1の母線と、第2の縁側の端部に沿って延びる第2の母線と、を含む発熱層を有する、中間層を配置するステップと、
第1の母線および第2の母線を接続するように複数の電熱線を配置するステップと、
両母線の間に少なくとも複数の電熱線を支持するためのシート状基板(311)を配置するステップと、を含み、
中間層が、発熱層に隣り合う接着剤層(33)をさらに備え、
厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの表面(S1、S2)までの距離(Z1、Z2)、および厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの表面(S3、S4)までの距離(Z3、Z4)がは異なり、また、厚さ方向における電熱線の中心から外側ガラスシートの内面(S2)までの距離(Z2)、および厚さ方向における電熱線の中心から内側ガラスシートの外面(S3)までの距離(Z3)が異なり、かつ接着剤層(33)の厚さまたは基板(311)の厚さのうちのより小さい厚さを有するいずれかが、400マイクロメートル以下、好ましくは380マイクロメートル以下である、方法を提供する。
【0034】
合わせガラスを製造する方法において、接着剤層(33)の厚さまたは基板(311)の厚さのうちのより小さい厚さを有するいずれかが、10マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲内にある。
【0035】
合わせガラスを製造する方法において、中間層は、発熱層に隣り合う第2の接着剤層をさらに備えることができる。
【0036】
合わせガラスを製造する方法において、複数の電熱線は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートと接触するように配置することができる。
【0037】
合わせガラスを製造する方法において、発熱層は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートと接するように配置することができる。
【0038】
合わせガラスを製造する方法において、複数の電熱線は、外側ガラスシートまたは内側ガラスシートと接触するように配置することができる。
【0039】
合わせガラスを製造する方法において、一対の接着剤層は、発熱層を挟むことができる。
【0040】
合わせガラスを製造する方法において、複数の電熱線は、銅、タングステン、もしくはモリブデン、またはそれらの合金を含むことができる。
【0041】
合わせガラスを製造する方法において、複数の電熱線は、純度少なくとも90質量パーセント、より好ましくは99質量パーセントの銅、タングステン、またはモリブデンからなり得る。
【0042】
合わせガラスを製造する方法において、各電熱線の断面は、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、または台形の形状を有することができる。
【0043】
合わせガラスを製造する方法において、各電熱線は、3マイクロメートル以上かつ500マイクロメートル以下、より好ましくは5マイクロメートル以上かつ20マイクロメートル以下、最も好ましくは8マイクロメートル以上かつ15マイクロメートル以下の幅を有し得る。
【0044】
合わせガラスを製造する方法において、各電熱線は、1マイクロメートル以上かつ100マイクロメートル以下、より好ましくは3マイクロメートル以上かつ20マイクロメートル以下、最も好ましくは8マイクロメートル以上かつ12マイクロメートル以下の厚さを有し得る。
【0045】
合わせガラスを製造する方法において、母線と複数の電熱線とを一体的に形成することができる。
【0046】
合わせガラスを製造する方法において、隣り合う電熱線の間隔は、好ましくは1~4mm、より好ましくは1.25~3mm、最も好ましくは1.25~2.5mmである。
【0047】
合わせガラスを製造する方法において、印刷、エッチング、転写によって、または予備成形された電線として、複数の電熱線を設けるステップを含む。
【0048】
合わせガラスを製造する方法において、基板、接着剤層、または一対の接着剤層は、膜、楔膜、エンボス膜として設けることができるか、またはスプレーすることができる。
【0049】
合わせガラスを製造する方法において、基板は、PETまたはPVB、より好ましくは可塑剤を含まないPVBを含むことができる。
【0050】
合わせガラスを製造する方法において、接着剤層または一対の接着剤層は、PVB、より好ましくは接着制御添加剤を有するPVBを含むことができる。
【0051】
合わせガラスを製造する方法において、基板、接着剤層、または一対の接着剤層には、赤外線吸収層を設けることができる。
【0052】
上記合わせガラスを製造する方法において、外側ガラスシートと、中間層と、内側ガラスシートとを、一緒に高温高圧下で所定の時間積層するステップをさらに含む。
【0053】
本発明は、第3の態様において、第1の実施形態において、陸上、水上、または空中での輸送のための車両における合わせガラスの使用を提供する。
【0054】
本発明は、第3の態様において、第2の実施形態において、建築物における合わせガラスの使用を提供する。
【0055】
本発明は、第3の態様において、第3の実施形態において、デジタルサイネージまたは冷蔵庫のドアにおける合わせガラスの使用を提供する。
【0056】
発明の効果
本発明の合わせガラスは、電熱線周囲の過度な温度上昇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の第1の実施形態における合わせガラスの平面図である。
図2図1のラインA-Aで切った横断面図である。
図3】金型が通過する炉の側面図である。
図4】金型の平面図である。
図5】本発明の別の実施形態における合わせガラスの横断面図である。
図5A】本発明の別の実施形態における合わせガラスの横断面図である。
図6】本発明の別の実施形態における合わせガラスの横断面図である。
図7】本発明の別の実施形態における合わせガラスの横断面図である。
図8】本発明の別の実施形態における合わせガラスの横断面図である。
図9】本発明の実施例および比較例における合わせガラス断面温度分布を示す図である。
図10】電熱線の中心からそれぞれ表面S1、S2、S3、S4までの距離Z1、Z2、Z3、Z4を有する、電熱線を通る横断面における合わせガラスを示す図である。
【0058】
発明を実施するための最良の形態
以下、ウインドシールドに適用された本発明の一実施形態における合わせガラスの図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態におけるウインドシールドの平面図であり、図2図1の横断面図である。図1および図2に示すように、本実施形態におけるウインドシールドは、外側ガラスシート1と、内側ガラスシート2と、ガラスシート1、2の間に配置された中間層3と、を備えている。内側ガラスシート2の上端部および下端部において切欠き21、22を形成することができ、各切欠き21、22において中間層3から延びる接続部材41、42を露出させることができる。以下は各部材の説明である。
【0059】
合わせガラス
1.合わせガラスの概要
1-1.ガラスシート
各ガラスシート1、2は、任意の形状、例えば下縁12が上縁11よりも長い長矩形の形状を有することができる。上記したように、内側ガラスシート2の上端部および下端部において円弧状の切欠きを形成することができる。以下の説明では、内側ガラスシート2の上端部において形成された切欠きは、第1の切欠き21と称し、下端部において形成された切欠きは第2の切欠き22と称する。当該技術分野において一般的な任意のガラスシートを、各ガラスシート1、2として使用することができる。例としては、熱線吸収ガラス、一般的な透明ガラス、またはUVグリーンガラスが挙げられる。しかしながら、これらのガラスシート1、2は、自動車に関する国家安全基準に規定されている可視光線透過率のレベルを実現しなければならない。例えば、必要な日射吸収率が外側ガラスシート1によって満たされ、可視光線透過率に関する安全基準が内側ガラスシート2によって満たされるように、調整を行うことができる。以下は、透明ガラス、熱線吸収ガラス、およびソーダ石灰ガラス組成物の例である。
【0060】
透明ガラス
SiO:70~73質量%
Al:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
O:13~15質量%(式中、Rはアルカリ金属である)
Feに換算した全酸化鉄(T-Fe):0.08~0.14質量%
【0061】
熱線吸収ガラス熱線吸収ガラス用組成物は、Feに換算した全酸化鉄(T-Fe)の百分率を0.4~1.3質量%に変え、CeOの百分率を0~2質量%に変え、TiOの百分率を0~0.5質量%に変え、そしてT-Fe、CeO、およびTiOの量を増加させることによってガラスの骨格成分(主にSiOおよびAl)を減少させることにより、透明ガラス用組成物から得ることができる。
【0062】
【表1】
【0063】
上記のように、各ガラスシート1、2は矩形を形成することができ、上縁11対下縁12の長さの比は1:1.04~1:1.5であり得る。例えば、上縁が1,200mmであるとき、下縁は1,250~1,800mmであることができる。より具体的には、上縁は1,195mmであることができ、下端は1,435mmであることができる。上記の比は、ウインドシールドを正面から投影するときの二次元平面の比である。
【0064】
すなわち、図1では下縁12が長い例を示しているが、本発明は、上縁11が長いウインドシールドにも適用することができる。例えば、コンパクトで一人乗りの乗用車のためのウインドシールドでは、上縁が500mmであるとき、下縁は350~450mmであることができる。より具体的には、上縁は500mmであることができ、下縁は425mmであることができ。
【0065】
本実施形態における合わせガラスの厚さに関して特に制限はないが、軽量化の観点から、外側ガラスシート1と内側ガラスシート2の両方の合計厚さは、2~6mmであることができ、好ましくは2.4~4.6mm、より好ましくは2.6~3.9mm、最も好ましくは2.7~3.7mmであることができる。重量を減少させるためには、外側ガラスシート1と内側ガラスシート2の両方の合計厚さを薄くする必要があるが、各ガラスシートの厚さに関して特に制限はない。例えば、外側ガラスシート1の厚さおよび内側ガラスシート2の厚さは、以下のようにして決定することができる。
【0066】
外側ガラスシート1は、主として、外部の危険に対する耐久性および耐衝撃性を必要とする。例えば、合わせガラスが自動車のウインドシールドとして使用される際には、小石のような小さい飛翔物体に対する耐衝撃性が要求される。このシートが厚いと、重量が不適当に増加する。この観点から、外側ガラスシート1の厚さは、好ましくは1.0~3.0mmであり、より好ましくは1.6~2.3mmである。厚さはガラスの使用目的に基づいて決定することができる。
【0067】
内側ガラスシート2の厚さは、外側ガラスシート1の厚さと同じであり得る。しかしながら、合わせガラスの重量を減少させる観点からは、外側ガラスシート1よりも薄くすることができる。ガラス強度を考慮すると、厚さは、好ましくは0.6~2.0mm、好ましくは0.8~1.8mm、よりさらに好ましくは0.8~1.6mm、最も好ましくは0.8~1.3mmである。内側ガラスシート2の厚さは、ガラスの使用目的に基づいて決定することができる。
【0068】
下記の中間層3における電熱線6を、厚さ方向において中間層3の中心に配置するとき、両ガラスシート1、2の厚さは異なっていてもよい。各ガラスシートの厚さは主として意図する用途によって決まる。
【0069】
1-2.中間層
以下、中間層3について説明する。中間層3は、好ましくは、発熱層31と、発熱層31を挟む一対の接着剤層32、33と、からなる3つの層である。本実施形態の説明では、外側ガラスシート1側に配置された接着剤層は第1接着剤層32と称し、内側ガラスシート2側に配置された接着剤層は第2の接着剤層33と称する。
【0070】
1-2-1.発熱層
最初に、発熱層31について説明する。発熱層31は、シート状基板311と、基材311上に配置された、第1の母線312と、第2母線313と、複数の電熱線6とからなる。基板311は、ガラスシート1、2に対応する矩形に形成することができる。しかしながら、ガラスシート1、2と同じ形状を有する必要はなく、ガラスシート1、2より小さくてもよい。図1に示すように、内側ガラスシート2の切欠き21、22が垂直方向において邪魔されないように、切欠き21、22間の長さより短い場合がある。基板311の水平方向の長さは、ガラスシート1、2の幅よりも短い場合がある。
【0071】
第1の母線312は、基板311の上縁に沿って延びるように形成される。第2の母線313は、基板311の下縁に沿って延びるように形成され、第1の母線312より長くてもよい。中間層3がガラスシート1、2に挟まれているとき、母線312、313は、切欠き21、22によって露出されないように、上記した切欠き21、22の内側に位置している。各母線312、313の幅は、好ましくは5~50mmであり、より好ましくは10~30mmである。母線312、313の幅が5mm未満であるとき、電熱線によって大量の熱が生成されるヒートスポット現象が発生する可能性がある。母線312、313の幅が50mmより大きいと、視野が母線312、313によって遮られる可能性がある。各母線312、313は、基板311に沿って正確に形成することができる。言い換えれば、基板311の縁は完全に平行ではなく湾曲していてもよい。
【0072】
電熱線6は、母線312、313の間に延在し、接続するように形成される。電熱線6は、実質的に平行であってもよく、または、例えば、台形形状の全域加熱のために扇形に広がっていてもよい。電熱線6は直線状である必要はない。それらは波形などの様々な形状をとることができる。電熱線6が正弦波形状であると、熱分布がより均一になり、電熱線6によるウインドシールド越しの視野の光学的な妨害を防止することができる。
【0073】
各電熱線6の幅は、好ましくは3~500マイクロメートル、より好ましくは5~20マイクロメートル、よりさらに好ましくは8~15マイクロメートルである。幅が狭いほど、目立ちにくくなり、本実施形態のウインドシールドにおける使用にとってより好適である。隣り合う電熱線6の間隔Lは、好ましくは1~4mm、より好ましくは1.25~3mm、よりさらに好ましくは1.25~2.5mmである。電熱線6の間隔は、VHX-200(Keyence Corporation製)などの顕微鏡下で1,000倍の倍率で測定することができる。電熱線6が正弦波状に形成されているときは、電熱線6の中心線間の距離を電熱線6の間隔として使用される。
【0074】
以下、発熱層31として使用される材料について説明する。基板311は、母線312、313と電熱線6の両方を支持するために使用される透明フィルムである。使用される材料に関しては特に制限はない。例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、およびナイロンが挙げられる。使用することができる他の材料としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)およびエチレンビニルアセテート(EVA)が挙げられる。母線312、313と電熱線6の両方を同じ材料を使用して製造することができる。様々な材料を使用することができる。例としては、銅(または錫メッキ銅)、タングステン、および銀が挙げられる。
【0075】
次に、母線312、313および電熱線6を形成するために使用される方法について説明する。母線312、313および電熱線6は、基板311上に細い予め形成された線を配置することによって形成することができる。しかしながら、電熱線6の幅をさらに狭くするために、電熱線6は、基板311上にパターンを形成することによって形成することができる。その方法に特に制限はない。印刷、エッチング、および転写などの様々な方法を使用することができる。母線312、313および電熱線6は、個別にまたは一体的に形成することができる。ここで、「一体的」とは、材料がシームレスで界面がないことを意味する。
【0076】
以下はエッチングを実施した例である。最初に、基板311上にプライマー層を介して金属箔をドライラミネートする。金属箔は銅であることができる。次いで、フォトリソグラフィ法を使用して金属箔を化学エッチングすることによって、母線312、313と電熱線6の両方を有するパターンを基板311上に一体的に形成することができる。電熱線6の幅がより狭いとき(例えば15マイクロメートル以下)は、好ましくは薄い金属箔を使用する。薄い金属層(例えば5マイクロメートル以下)を基板311上に堆積またはスパッタリングし、次いでフォトリソグラフィを使用してパターニングすることができる。なお、内側ガラスシート2側上の電熱線6の表面は、車両の内側からの電熱線の視認性を低下させるために黒色にし得る、ことに注目すべきである。黒化プロセスで使用される材料は、窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、またはニッケルクロムであり得る。これらの材料のいずれかを使用して電熱線をメッキすることによって、黒化を実行することができる。
【0077】
1-2-2.接着剤層
両接着剤層32、33は、発熱層31を挟みかつガラスシート1、2に結合されたシート状の部材である。接着剤層32、33は、両ガラスシート1、2と同じ大きさに形成される。接着剤シート32、33においては、内側ガラスシート2における切欠き21、22と同じ形状を有し、かつ切欠き21、22の位置に対応する、切欠きを形成することができる。これらの接着剤層32、33は様々な材料で作製することができる。例としては、ポリビニルブチラール(PVB)およびエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ガラスシートに十分に接着し、優れた耐穿孔性を有することから好ましい。発熱層31と接着剤層32、33との間に界面活性剤層を設けることができる。界面活性剤は、両方の層の表面を改変し、接着強度を向上させる。剛性を増大させ、形成皺が回避または低減されるように、接着剤層は、可塑剤を使用せずに提供することができる。
【0078】
1-2-3.中間層の厚さ
中間層3の全厚に関して特に制限はないが、0.3~6.0mmが好ましく、0.5~4.0mmがより好ましく、0.6~2.0mmがさらにより好ましい。発熱層31における基材311の厚さは、好ましくは5~200マイクロメートル、より好ましくは10~100マイクロメートルである。各接着剤層32、33の厚さは、発熱層31の厚さより大きいことが好ましい。それは、好ましくは0.01~1.0mm、より好ましくは0.1~0.38mmである。第2の接着剤層33が基材311に密着するためには、母線312、313およびそれらの間に挿入された電熱線6の厚さは、好ましくは1~100マイクロメートル、より好ましくは3~20マイクロメートル、最も好ましくは10~12マイクロメートルである。母線32、313は、金属箔からエッチングしてもよく、印刷してもよく、または金属シートから、例えば銅もしくは錫メッキされた銅から作製してもよい。
【0079】
両接着剤層32、33の厚さは異なる。厚さの差は、下記のように意図される用途に応じて決めることができる。図2に示す例では、第2の接着剤層33の厚さを薄くしているが、第1の接着剤層32の厚さを薄くする場合もある。例えば、接着剤層32、33間で、接着剤層のより薄い方の厚さDは、好ましくは5~300マイクロメートル、好ましくは5~200マイクロメートル、より好ましくは20~100マイクロメートルである。
【0080】
発熱層31および接着層32、33の厚さは、次のようにして測定することができる。最初に、合わせガラスの横断面を、(例えばKeyence Corporation製VH-5500を使用して)倍率175倍の顕微鏡下で観察する。次いで、発熱層31および接着剤層32、33の厚さを視覚的に識別し測定する。両眼像差を排除するために、5回測定し、その平均値を発熱層31および接着剤層32、33の厚さとして使用する。
【0081】
中間層3を構成する発熱層31および接着剤層32、33の厚さは、全面にわたって一定である必要はない。例えば、ヘッドアップディスプレイに使用される合わせガラスでは楔形であり得る。この場合、中間層3を構成する発熱層31および接着剤層32、33は、合わせガラスの上縁部または下縁部に沿って最大厚に達し、そこで測定される。中間層3が楔形であるとき、外側ガラスシート1と内側ガラスシート2は平行に配置されないが、この配置は本発明のガラスシートに含まれる。例えば、本発明において、外側ガラスシート1および内側ガラスシート2は、発熱層31と接着剤層32、33とから構成される中間層3を含むことができ、その中間層の厚さは、1m当たり3mmの割合で増加する。
【0082】
1-3.部材の接続
以下、接続部材について説明する。接続部材41、42は、母線312、313の両方および接続端子(アノード端子またはカソード端子、図示せず)に接続され、導電材料を使用してシート形態に形成される。電源電圧は、12Vより高く、例えば13.5Vまたは48Vであってもよく、接続端子に印加することができる。以下の説明では、第1の母線312に接続される接続部材を第1の接続部材41と称し、第2の母線313に接続される接続部材を第2の接続部材42と称する。両接続部材41、42の構成は同じであってもよいため、以下では主に第1の接続部材41に焦点を当てて説明する。
【0083】
第1の接続部材41は、矩形であり、第1の母線312と第2の接着層33との間に挿入される。それは、はんだなどの固定材5によって、第1の母線312に固定される。固定材5は、下記のようにウインドシールドの組み立て中にオートクレーブ中で固定することができる。したがって、それは、好ましくは例えば150℃以下の低融点のはんだである。第1の接続部材41は、外側ガラスシート1の上縁に沿って第1の母線312から延びており、内側ガラスシート2に形成された第1の切欠き21によって露出される。露出部分では、電源から延びるケーブルは、はんだなどの固定材を使用して、接続端子と接続される。接続部材41、42のどちらも、ガラスシート1、2の端部からは突出しておらず、切欠き21、22によって露出された内側ガラスシート2の部分において接続端子に固定される。両接続部材41、42は薄い材料から作製されるため、その屈曲端部は、図2に示すように、固定材5を使用して、母線312に固定することができる。切欠き21、22の利点は、図2に示すように、接続部材41、42がガラスシート1、2の端部から突出しない点にある。接続部材41、42がフレキシブルコネクタである場合、切欠き21、22は図8に示すように小さくてもよい。フレキシブルコネクタは、切欠き21、22を使用せずに、合わせガラスを製造することを可能にする。
【0084】
1-4.隠蔽層
図1に示すように、黒色セラミックなどの暗色セラミックから作製された隠蔽層7が、合わせガラスの周縁に積層される。この隠蔽層7は、車両の内側または車両の外側から視野を遮蔽する。それは、合わせガラスの四つの縁全てに沿って積層される。母線312、313は、隠蔽層7によって覆われた位置に配置される。図中、参照番号7は隠蔽層7の内縁を示している。
【0085】
隠蔽層7は、S2上、すなわち外側ガラスシート1の内面、またはS4上、すなわち内側ガラスシート2の内面、またはS2とS4の両方の上に存在することができる。表面参照を図10に示す。この層はセラミックまたは他のタイプの材料で作製することができる。例えば、以下の構成を使用することができる。
【表2】
【0086】
セラミックは、スクリーン印刷法を使用して形成することができ、またはガラスシートにフィルムを転写し、次いで転写されたフィルムを焼成することによって作り出すことができる。セラミックは、355メッシュのポリエステルスクリーン、20マイクロメートルのコーティング厚、20Nmの張力、80度のスキージ硬度、75°の取り付け角度、および300mm/sの印刷速度を使用してスクリーン印刷法で形成することができる。次いで得られた隠蔽層を乾燥炉中150℃で10分間乾燥させる。
【0087】
セラミック印刷の代わりに、隠蔽層7は、ガラスシートに固定された暗色樹脂から作製された隠蔽フィルムであることができる。
【0088】
合わせガラスを製造する方法
2.ウインドシールド製造方法
以下、本発明によるウインドシールドの製造方法について説明する。レール炉、先進プレス曲げ、またはボックス炉、および積層装置を含む、任意の既知の装置を使用することができる。最初に、ガラスシート製造ラインの一例について説明する。
【0089】
ここで、金型について図3および図4を参照しながら詳細に説明する。図3は金型が通過する炉の側面図であり、図4は金型の平面図である。図4に示すように、金型800は、両ガラスシート1、2の外形に適合する枠状の金型ユニット810を有する。この金型ユニット810は枠形状であるため、鉛直方向に内側を貫通する内部空間820が存在する。両ガラスシート1、2の周縁は、金型ユニット810の上面に置かれる。内部空間820を介して、下方に配置されたヒーター(図示せず)からガラスシート1、2に熱が加えられる。熱はガラスシート1、2を軟化させ、ガラスシート1、2は重力により下方に湾曲し始める。遮蔽シート840を金型ユニット810の内周縁に配置して熱遮蔽を提供する。これは、ガラスシート1、2が受ける熱を調整するために使用することができる。ヒーターは、金型800の下方に配置される必要はない。ヒーターは、金型の上方に配置することもできる。
【0090】
平らな外側ガラスシート1および内側ガラスシート2の上に隠蔽層7を印刷した後、外側ガラスシート1および内側ガラスシート2を互いに重ね合わせ、金型800によって支持しながら、図3に示した加熱炉802を通過させる。軟化点温度に近い温度まで、加熱炉802の内部に熱を加えると、両ガラスシート1、2は重力により周縁から下方に湾曲し始め、湾曲した形状が形成される。次に、両ガラスシート1、2を加熱炉802から徐冷炉803に搬送し、そこで徐冷を行う。その後、両ガラスシート1、2が、徐冷炉803から搬出され、冷却される。
【0091】
このようにして外側ガラスシート1および内側ガラスシート2が形成されると、外側ガラスシート1と内側ガラスシート2との間に中間層3が挿入される。より具体的には、外側ガラスシート1、第1の接着剤層32、発熱層31、第2の接着剤層33、および内側ガラスシート2の順に積層される。このとき、図2に示すように、第1の母線312が形成された発熱層31の表面は、第2の接着層33に面している。発熱層31の垂直端部は、内側ガラスシート2における切欠き21、22の内側に配置される。第1および第2の接着剤層32、33における切欠きも、内側ガラスシート2における切欠き21、22と位置合わせする。外側ガラスシート1は、内側ガラスシート2における切欠き21、22によって露出される。次に、発熱層31と第2の接着剤層33との間にある各切欠き21、22から接続部材41、42が挿入される。このとき、各接続部材41、42には、固定材5として低融点はんだが適用され、各母線312、313の上部にはんだが置かれる。場合によっては、接続部材41、42は、内側ガラスシート2を導入する前に、母線312、313にはんだ付けされたフレキシブルコネクタであってもよい。母線312、313は、電熱線6と一体的に形成されてもよく、場合によっては金属シートを備えていてもよい。
【0092】
両ガラスシート1、2と、中間層3と、接続部材41、42と、からなる積層体をゴム袋に入れ、真空中70~110℃で予備結合させる。予備結合は、切欠きに適する別の方法を使用して実施することができる。以下はその一例である。積層体をオーブン中で45~65℃に加熱する。次いで、ロールを使用して0.45~0.55MPaの圧力を積層体に加える。再び、積層体をオーブン中で80~105℃に加熱し、次いでロールを使用して積層体に0.45~0.55MPaの圧力をかける。これで予備結合が完了する。フレキシブルコネクタに適する方法では、予備結合は、真空リングを使用して行ってもよい。
【0093】
次いで、本結合を行う。予備結合された積層体を、オートクレーブ中において、8~15atm下、100~150℃の温度で結合させる。例えば、積層体を、14atm下、135℃で結合させることができる。あるいは、積層体を125℃で結合させることができる。予備結合中および結合中には、接着剤層32、33の間に挿入された発熱層31を有する接着剤層32、33はガラスシート1、2に結合されている。また、接続部材41、42上のはんだも溶融し、接続部材41、42が母線312、313に固定される。このようにして、本実施形態における合わせガラスが製造される。湾曲したウインドシールドを製造するために使用することができる別の方法はプレス曲げ法である。
【0094】
産業用途
3.ウインドシールドの使用
この構成を有するウインドシールドを車体に取り付け、接続端子を接続部材41、42に固定する。その後、接続端子に通電すると、接続部材41、42および母線312、313を介して電熱線6に電流が流れて発熱する。この熱は、ウインドシールドの内面S4の曇りを除去するか、またはウインドシールドの外面S1の霜を取る。
【0095】
合わせガラスの使用
本発明による合わせガラスは、建築用途にも適しており、加熱されたグレージング建築物の安全性またはセキュリティを向上させる。本発明による合わせガラスはまた、冷蔵庫のドア、白物家電、および家具を含む他の加熱グレージング用途での使用にも適する。
【0096】
技術的効果
4.技術的効果
本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1)接着剤層32、33の厚さが異なり、かつ発熱層31が外側ガラスシート1または内側ガラスシート2のいずれかにより近いため、発熱層31により近いガラスシート1、2に向かってより多くの熱が発生する。接着剤層32、33は樹脂材料から作製されるため、熱伝導率はガラスシート1、2よりも低い。しかしながら、ガラスシート1、2の熱容量は樹脂材料の熱容量よりも大きいため、発熱層31からガラスシート1、2への放熱を促進することができる。これにより、発熱層31の周囲の接着剤層32、33の温度が過度に上昇することが防止される。
【0097】
発熱層31からガラスシート1、2への放熱が不十分であると、発熱層31の表面における接着剤層32、33の温度が局所的に過度に上昇する。その結果、密度が変化し、接着剤層32、33が材料の膨張に起因して歪む可能性がある。接着剤層の屈折率も変化する場合がある。これは、合わせガラスを介して車両の外側を見たときにうねりの問題を発見した本発明者らの一人が導き出したものである。本実施形態では、発熱層31の周囲の接着剤層32、33の温度が過度に上昇するのを抑制することができる。その結果、接着剤層32、33の変形を抑制することができ、合わせガラスを通して見られる車外の物体がちらついたりゆらめいたりすることを防止することができる。本発明者らは、温度が上昇しないようにすることで中間層内の温度差を抑えることができるため、屈折率の差が小さくなり、光学的歪み(ゆらめき)が抑制される3ステッププロセスを発見した。
【0098】
(2)図2に示すように、発熱層31が内側ガラスシート2により近いほど、内側ガラスシート2はより強く加熱され、内側ガラスシート2の曇りを防止することができる。発熱層31が外側ガラスシート1により近いほど、外側ガラスシート1がより強く加熱され、外側ガラスシート1をより効果的に霜取りすることができる。
【0099】
(3)母線312、313および電熱線6は同じ材料で作製することができるため、母線312、313および電熱線6の線膨張係数を同じにすることができる。これにより、次のような利点がある。母線312、313および電熱線6が異なる材料から作製されると、それらは異なる線膨張係数を有する。これらの部材を別々に作製して互いに取り付けると、熱サイクル試験における厳しい環境変化などの下では、電熱線は、母線から剥がれ、合わせガラスを構成する2枚のガラスシートが互いに分離することがある。本実施の形態における母線312、313および電熱線6が同じ材料から作製されている場合は、これらの問題は防止することができる。
【0100】
(4)母線312、313および電熱線6が一体的に形成されている場合は、接触不良を解消し、ひいては両者間の加熱不良を解消することができる。以下はこれらの加熱不良の詳細な説明である。ガラスのシートを加熱して曇りを解消するとき、加熱温度の上限値を保つために、例えば70~80℃に保つために、電流値を制限し、ガラスの割れを防止する。上で説明した接触抵抗に起因して局所的な加熱が発生した場合、これらの場所では加熱温度に関する上限値を使用して電流値を制御しなければならない。結果として、全ての電熱線による熱の発生を十分に制御することはできない。しかしながら、局所的な過熱も防止しながら十分な熱を発生させるために、上記構成における電熱線を全体として制御することができる。
【0101】
(5)母線312、313および電熱線6が接着剤層32、33に挟まれるように配置され、かつガラスシート1、2の間に配置されている、発熱層31。その結果、発熱層31は、両ガラスシート1、2に確実に固定することができる。また、母線312、313および電熱線6を第2の接着剤層33で覆うことにより、ガラスシートとの接触を防ぐことができる。その結果、ガラスの割れを防止することができる。
【0102】
(6)本実施形態では、母線312、313は、2つの接続部材41、42を使用して外部端子に接続される。この配置の代替として、幅広の母線を調製し、母線の不要な部分を切断しかつ角度を付け、これらの部分を、切欠き部21、22によって露出させて接続部材として役立てることができる。しかしながら、切断された母線の角度付き部分は局所的な加熱を受ける可能性がある。本実施形態では、分離した接続部材41、42は、各母線312、313に対して固定されるため、局所的な加熱を防ぐことができる。
【0103】
(7)本実施形態では、母線312、313は、ガラスシート1、2の上縁11および下縁12に沿ってそれぞれ配置される。その結果、母線312、313を隠蔽層7によって視界から遮蔽することができ、ウインドシールドの全体的な外観が改善される。
【0104】
発明を実施するための他のモード
5.変形例
以上、本発明の実施の形態について上で説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な改良が可能である。以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0105】
<5.1>上記の実施形態では、母線312、313は、隠蔽層7によって隠されるように形成された。しかしながら、それらは隠蔽層7によって隠蔽される必要はない。つまり、隠蔽層7を設ける必要はない。
【0106】
<5.2>上記実施形態では、中間層3は、合計して3つの層、すなわち、発熱層31、および一対の接着剤層32、33からなっていた。しかしながら、中間層3は、母線312、313および電熱線6から単に構成することができる。そのため、発熱層31において基板311さえも設ける必要はない。
【0107】
また、図5に示すように、単一の接着剤層33を設けることができる。図5に示す例では、発熱層31は外側ガラスシート1に接するように配置され、接着剤層33は発熱層31と内側ガラスシート2との間に配置される。発熱層31では、基板311は外側ガラスシート1側に配置され、電熱線6は内側ガラスシート2側に配置される。この構成では、発熱層31からの熱は、外側ガラスシート1に向かって効果的に放熱される。これにより、接着剤層33の温度が過剰レベルまで上昇しないように防止することができる。この例では、発熱層31は外側ガラスシート1と接触している。しかしながら、その積層は、以下の順序で:すなわち、図5Aに示すように、外側ガラス板1、接着剤層33、発熱層31、および内側ガラスシート2の順序で実施することもできる。
【0108】
また、図6に示すように、発熱層31の配向は、基板311が外側ガラスシート1側に配置され、電熱線6が内側ガラスシート2側に配置されるように、変えることができる。この場合、電熱線を支持する基板311は、接着剤層33と同じ材料、例えばPVBで作製することができる。基板311と接着剤層33とは、製造プロセス中(例えばオートクレーブステップ中)に一体化させて、それらの間にある目に見える界面を排除することができる。図5は、基板311と接着剤層33とが一体化されておらず、それらの間に界面を見ることができる。
【0109】
<5.3>上記実施形態では、中間層3の内側の発熱層31(または電熱線6)の位置は、中間層3の厚さ方向における中心よりも外側ガラスシート1または内側ガラスシート2に近い。この状況では、外側ガラスシート1および内側ガラスシート2の厚さは異なる。例えば、図7に示すように、内側ガラスシート2の厚さは増加させることができる。厚い方の内側ガラスシート2の熱容量は、薄い方の外側ガラスシート1の熱容量よりも大きいため、発熱層31からの熱は内側ガラスシート2に向かってより容易に放散され、これにより、接着剤層32、33の温度が過度のレベルまで上昇することが防止される。外側ガラスシート1の厚さも内側ガラスシート2の厚さよりも大きい場合があることに注目すべきである。
【0110】
<5.4>発熱層31は任意の形状であり得る。例えば、基板311上に母線312、313の両方および電熱線6が予め形成された発熱層31を、所望の形状に切断し、ガラスシート1、2の間に配置することができる。ガラスシート1、2の湾曲した縁に一致するように基板311の縁を湾曲させることができる。発熱層31の形状は、ガラスシート1、2の形状と完全に一致する必要はない。発熱層は、ガラスシート1、2の形状より小さい形状を有することができ、曇り取り効果を必要とする部分にのみ配置することができる。ガラスシート1、2は矩形以外の形状を有することもできる。
【0111】
上記の実施形態では、母線312、313および電熱線6は、基板311上に配置される。しかしながら、電熱線6のみを基板上に配置してもよい。例えば、母線312、313を接着剤層32、33の間に配置することができる。
【0112】
<5.5>少なくとも1本のバイアス線もまた、隣り合う電熱線6を接続することができる。これにより、電熱線6が断線したときでも、隣り合う電熱線6に電流を流すことができる。バイアス線の本数や配置に関して特に制限はない。例えば、それらは斜めに延びていてもよく、波形などの任意の形状を有することができる。バイアス線は、電熱線6と同じ金属材料で形成することができ、電熱線6と一体的に形成することができる。
【0113】
<5.6>内側ガラスシート2における、連結部材41、42の配置および切欠き21、22の構成に関して特に制限はない。例えば、図8に示すように、接続部材41、42ほど厚くない切欠き21、22は、内側ガラスシート2に形成することができ、母線312、313から延びる接続部材41、42は、切欠き21、22内で曲げることができ、かつ内側ガラスシート2の表面に結合させることができる。これにより、接続部材41、42が、合わせガラスの端部から平面方向において突き出ることを防止することができる。場合によっては、切欠きは存在しない。
【0114】
<5.7>ガラスシート1、2の形状に関しては特に制限はない。ガラスシートの断面は、上縁11、下縁12、左縁13、および右縁14によって画定される任意の形状であることができ、矩形を含むがこれに限定されない。縁11~14のそれぞれは、直線または曲線であることができる。
【0115】
<5.8>電熱線6を平行に配置する必要はない。例えば、それらはメッシュ状の不規則な形状を形成してもよい。上記の実施形態では、電熱線6は、電極として役立つ母線312、313に対して平行に接続される。しかしながら、それらは直列に接続されてもよい。また、母線312、313の間には、任意の数の曲がった電熱線6を配置することができる。電熱線6は、任意のパターンに、例えば扇形、蛇行、またはメッシュに構成することができる。ワイヤ間の間隔Lは変えることができる。
【0116】
<5.9>上記の実施形態では、母線312、313は、ガラスシートの上縁および下縁に沿ってそれぞれ配置された。しかしながら、母線はまた、ガラスシートの左縁および右縁に沿って配置することもでき、それらの間に電熱線は水平に走行する。
【0117】
<5.10>上記の実施形態では、本発明の合わせガラスを、自動車のウインドシールドとして取り付けた。しかしながら、本発明の合わせガラスは、サイドガラスまたはリアガラスとしても適用することもできる。車両に関する制限は特にない。自動車に加えて、合わせガラスは、電車などの他の車両において、また建築物の窓ガラスとして、使用することができる。
【実施例
【0118】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0119】
本発明の実施例および比較例の合わせガラスは、以下のようにして準備した。実施例および比較例は以下の構成を有する。
内側ガラスシート:厚さ2.1mm、熱伝導率1W/(m・K)
電熱線:外径25マイクロメートル
中間層(接着剤層):PVB、厚さ0.76mm
外側ガラスシート:厚さ2.1mm、熱伝導率1W/(m・K)
【0120】
この例では、電熱線は内側ガラスシートと接触するように配置した。比較例では、電熱線は厚さ方向において中間層の中心に配置した。
【0121】
実施例および比較例の評価は以下のようにして行った。実施例および比較例では電熱線に電流を流し、同じ抵抗および電圧に関して、実施例および比較例の合わせガラスにおいて、横断面温度分布をシミュレーションした。図9にその結果を示す。図9において、垂直方向は合わせガラスの厚さ方向に対応している。
【0122】
比較例では、図9に示すように、電熱線近傍の温度が62℃以上の高温であった。実施例では、電熱線が内側ガラスシートに近いため、接着剤層の温度は58.3℃以下であり、電熱線からの熱が放散されやすく、電熱線近傍の温度の上昇が防止された。したがって、実施例における中間層は歪みが少なく、ウインドシールドを通して見た外部の物体は波状に見えることはありそうにない。
【0123】
図10に示した実施例では、接着剤層33は、厚さ250マイクロメートル、100マイクロメートル、75マイクロメートル、50マイクロメートル、20マイクロメートル、または10マイクロメートルのPVBの層である。例えば、接着剤層は、厚さ50マイクロメートル±5%の商品名Mowitalおよび製品コードLP BF 6-050でKuraray Co,Ltd,Ote Center Building,1-1-3 Otemachi,Chiyoda-ku,Tokyo 100-8115,Japanから入手可能である。驚くべきことに、50マイクロメートル程度の薄い接着剤層は、内側ガラスシートの接合面S3を結合するのに十分であり、それによって得られる合わせガラスは、自動車の窓ガラスの強度に関する必要な国家試験に合格し、同時に、自動車の運転者にとって許容可能なレベルまで光学的歪みを減少させる。
【0124】
図面の参照番号の説明
1:外側ガラスシート
2:内側ガラスシート
3:中間層
11、12:上縁、下縁
13、14:左縁、右縁
21、22:切欠き
31:発熱層
311:基板
312、313:第1の母線、第2の母線
32:第1の接着剤層
33:第2の接着剤層、接着剤層
41、42:接続部材
5:固定材
6:電熱線
7:隠蔽層
800:金型
802:加熱炉
803:徐冷炉
810:金型ユニット
840:シールドシート
D:接着剤層のうちの小さい方の厚さ
L:隣り合う電熱線の間の間隔
S1:外側ガラスシートの外面
S2:外側ガラスシートの内面
S3:内側ガラスシートの外面
S4:内側ガラスシートの内面
Z1:電熱線の中心から外側ガラスシートの外面までの距離
Z2:電熱線の中心から外側ガラスシートの内面までの距離
Z3:電熱線の中心から内側ガラスシートの外面までの距離
Z4:電熱線の中心から内側ガラスシートの内面までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図6
図7
図8
図9
図10