(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】布地および該布地から製造された作業着
(51)【国際特許分類】
D03D 15/47 20210101AFI20220323BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20220323BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220323BHJP
A41D 31/24 20190101ALI20220323BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20220323BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20220323BHJP
D03D 15/513 20210101ALI20220323BHJP
D03D 15/533 20210101ALI20220323BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20220323BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
D03D15/47
A41D13/00 102
A41D31/00 502A
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/00 503E
A41D31/00 503F
A41D31/24
D02G3/04
D03D15/283
D03D15/513
D03D15/533
D04B1/16
D04B21/16
(21)【出願番号】P 2019546394
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018054117
(87)【国際公開番号】W WO2018153844
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502036011
【氏名又は名称】テイジン・アラミド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】レギーネ ツムロー-ネーベ
(72)【発明者】
【氏名】ユタ クラッベ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208930(JP,A)
【文献】特表2015-524517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191856(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104736750(CN,A)
【文献】特表2009-503278(JP,A)
【文献】特開2003-213535(JP,A)
【文献】特開2011-058124(JP,A)
【文献】特開2001-011749(JP,A)
【文献】特開2002-069796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
A41D13/00-31/32
D01F1/00-9/04
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープルファイバーブレンドで製造されたステープルファイバー糸を含む布地であって、前記ブレンドがメタアラミドステープルファイバー、パラアラミドステープルファイバーおよびポリ乳酸ステープルファイバーを含む、前記布地。
【請求項2】
前記ブレンドが、そのブレンドの質量に対して
・ 30~90質量%のメタアラミドステープルファイバー、
・ 5~60質量%のパラアラミドステープルファイバー、および
・ 5~40質量%のポリ乳酸ステープルファイバー
を含む、請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記メタアラミドステープルファイバーが30~140mmの単一の長さを有し、前記パラアラミドステープルファイバーが30~140mmの単一の長さを有し、且つ前記ポリ乳酸ステープルファイバーが30~140mmの単一の長さを有する、請求項1または2に記載の布地。
【請求項4】
前記メタアラミドステープルファイバーが0.8~7dtexの線密度を有し、前記パラアラミドステープルファイバーは0.8~7dtexの線密度を有し、且つ前記ポリ乳酸ステープルファイバーが0.8~7dtexの線密度を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項5】
前記ブレンドが、そのブレンドの質量に対して5質量%までの帯電防止ステープルファイバーを追加的に含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項6】
前記帯電防止ステープルファイバーが、長さ30~140mmおよび線密度0.8~7dtexを有する、請求項5に記載の布地。
【請求項7】
前記メタアラミドステープルファイバーがポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)ステープルファイバーであり、前記パラアミドステープルファイバーがポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーまたはポリ(p-フェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーであり、且つ前記ポリ乳酸ステープルファイバーがポリ-L-乳酸ステープルファイバーまたはポリ-D-乳酸ステープルファイバー、またはポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸とのラセミ混合物で製造されたステープルファイバー、またはポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸とのステレオコンプレックスで製造されたステープルファイバーである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項8】
前記糸が、前記ブレンドからリング紡績またはエアジェット紡績によって製造される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項9】
前記布地が、織物または編物である布地である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項10】
前記布地が、綾織または平織の組織を有する織物である布地である、請求項9に記載の布地。
【請求項11】
前記布地が坪量50~350g/m
2を有する、請求項1から
10までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項12】
前記ブレンドが、そのブレンドの質量に対して最大95%のアラミドステープルファイバー、好ましくは最大90%のアラミドステープルファイバー、より好ましくは最大80%のアラミドステープルファイバー、または最大70%のアラミドステープルファイバーを含む、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の布地。
【請求項13】
請求項1から
12までのいずれか1項に記載の少なくとも1つの布地を含む衣料品。
【請求項14】
作業着を製造するための、請求項1から
12までのいずれか1項に記載の布地の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布地(textile fabric)および該布地から製造された作業着に関する。
【背景技術】
【0002】
布地は公知である。この種の布は特に熱保護性であるべきであり、且つ十分な機械的特性、例えば十分な引裂強さも示すべきである。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0138523号明細書(US2011/0138523 A1)は、着用者が単層の保護衣料品として使用するための、熱、火炎およびアーク保護性の布を開示しており、該布は織り合わせられた経糸と緯糸とを含み、ここで前記の経糸および緯糸は、8~33質量%のメタアラミドステープルファイバー、65~90質量%のパラアラミドステープルファイバーおよび2質量%の帯電防止ステープルファイバーのブレンドを含み、前記の経糸および緯糸は同一であり且つ着用者とは反対の布の側と着用者に面する布の側を含み、ここで前記布はその両側でアブレーション型の熱保護を提供する。1つの例において、綾織りのK2/1Z組織を有し且つ坪量230g/m2を有する布が、経糸の引裂耐性67.87Nおよび緯糸の引裂耐性34.4Nを示す(ISO 13937-1:2000の試験手順を使用して測定)。
【0004】
欧州特許第1740746号明細書(EP1740746 B1)は、保護着の単独の層または外側の層として使用するための耐熱および耐炎布を記載している。この布は60~90質量%のメタアラミドステープルファイバーと5~40質量%のパラアラミド繊維とのブレンドを有する繊維を含む。この布はポリラクチドステープルファイバーを含まない。
【0005】
国際公開第02/40755号(WO02/40755 A2)は、高温耐性の連続的な無機フィラメントのコアおよびステープルファイバーの第1および第2のシースを含む、耐火性コアスパンヤーンを記載している。第1のシースは、少なくとも1つの防火繊維を有する天然および合成のステープルファイバーを含む。第2のシースのステープルファイバーは、天然ステープルファイバーまたは合成ステープルファイバーから選択される。国際公開第02/40755号は、メタアラミドステープルファイバーおよびパラアラミドステープルファイバーと、ポリ乳酸ステープルファイバーとのブレンドについて記載していない。
【0006】
さらに、ステープルファイバー複合材DuPont(商標) Nomex(登録商標)IIIAが公知であり、それは93%のNomex(登録商標)のメタアラミドステープルファイバー、5%のKevlar(登録商標)パラアラミドステープルファイバー、および2%の帯電防止ステープルファイバーからなる。DuPontのインターネット発表によれば、ステープルファイバー複合材DuPont(商標) Nomex(登録商標)IIIA製の布は、消防士のステーションウェアのための規格NFPA 1975に合致し、且つ摩耗および引裂に耐性がある。
【0007】
しかしながら、より良好な機械的特性を有する、特により高い引裂耐性および摩耗耐性を有する熱保護性の布地について継続する需要があり、なぜなら、前記の布はできるだけ長期間着用できるように、できるだけ高い摩耗耐性および引裂強さを有するべき作業着を製造するために使用されるからである。さらには、より良好な着心地を有する熱保護布地について継続する需要があり、なぜなら、前記の布は身体的疲労状態で着用されることが多く、その身体的疲労が作業着によってもたらされる不快感によってさらに高められるべきではないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2011/0138523号明細書
【文献】欧州特許第1740746号明細書
【文献】国際公開第02/40755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の基礎を成す課題は、布製の衣料品、特に作業着において、より高い引裂強さおよびより高い着心地を示す布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題は、ステープルファイバーブレンドで製造されたステープルファイバー糸を含む布地であって、前記ブレンドがメタアラミドステープルファイバー、パラアラミドステープルファイバーおよびポリ乳酸ステープルファイバーを含む、前記布地によって解決される。
【0011】
意外なことに、本発明による布地は、メタアラミドステープルファイバーと、パラアラミドステープルファイバーと、帯電防止ステープルファイバーとからなるステープルファイバー混合物から製造されたステープルファイバー糸で製造された比較用布地よりも、摩耗および引裂に対してより高い耐性を示す。従って、本発明による布地を含む衣料品は、損傷するまでより長い期間着用できる。
【0012】
さらに、本発明による布地の摩耗耐性についてのより高い値は、メタアラミドステープルファイバーと、パラアラミドステープルファイバーと、帯電防止ステープルファイバーとからなるステープルファイバー混合物から製造されたステープルファイバー糸で製造された比較用布地の坪量と比べて、より低い坪量の布地で得ることができる。従って、本発明による布地を含む衣料品は、比較用布地を含む衣料品よりも高い着心地で着用できる。選択的に、布地の坪量が比較用布地の坪量の値まで高められた本発明による布地を含む衣料品は、比較用布地を含む衣料品と同じ着心地ではあるがさらに長期間着用でき、なぜなら本発明の布地を用いた衣料品の摩耗および引裂の耐性がさらにより高められているからである。
【0013】
ポリ乳酸は、メタアラミドおよびパラアラミドとは対照的に、本質的には耐熱性および耐炎性ではないにも関わらず、本発明による布地は意外にも放射熱、対流熱および接触熱に関する最低限の要求を満たす。
【0014】
最後に、本発明による布地を含む衣料品が廃棄されなければならない場合、その布地のポリ乳酸成分は完全にリサイクルされることができ、なぜなら、ポリ乳酸は完全に生分解性であり堆肥をもたらすからである。その堆肥は、トウモロコシを育てるための下地として使用され得る。トウモロコシを発酵させて乳酸にすることができ、それを重合してポリ乳酸にすることができ、そのポリ乳酸からステープルファイバーを製造できる。従って、本発明による布地は、再生可能な成分を含有する。
【0015】
本発明の範囲内で、「ステープルファイバー」との用語は、フィラメント糸の切断または破壊から得られた、限られた長さの繊維を意味する。
【0016】
本発明の範囲内で、「メタアラミドステープルファイバー」との用語は、メタアラミドフィラメント糸を切断または破壊することから得られたステープルファイバーを意味し、「メタアラミド」との用語は、メタ配向した芳香族ジアミンとメタ配向したジカルボン酸ハロゲン化物との重縮合により得られたポリマーを意味し、ここで前記ポリマーは、アミド結合を有する繰り返し単位を示し、且つ好ましくは前記アミド結合の少なくとも85%が芳香環のメタ配向位置にある。
【0017】
本発明の範囲内で、「パラアラミドステープルファイバー」との用語は、パラアラミドフィラメント糸を切断または破壊することから得られたステープルファイバーを意味し、「パラアラミド」との用語は、パラ配向した芳香族ジアミンとパラ配向したジカルボン酸ハロゲン化物との重縮合により得られたポリマーを意味し、その繰り返し単位はアミド結合を有し、且つ好ましくは前記アミド結合の少なくとも65%、より好ましくは少なくとも95%、およびさらにより好ましくは少なくとも99%、および最も好ましくは100%が、芳香環のパラ配向位置にある。
【0018】
本発明の範囲内で、「アラミドステープルファイバー」との用語は、アラミドフィラメント糸の切断または破壊から得られた、ステープルファイバーを意味する。アラミドとの用語は、芳香族部分が互いにアミド結合によって接続されているポリマーを意味する。通常、アラミドは芳香族ジアミンと芳香族二ハロゲン化物との重縮合によって合成される。アラミドは、メタアラミド、パラアラミドおよびアラミドコポリマー、例えばコポリマー[コ-ポリ(パラフェニレン/3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド)](Technora(登録商標))を含む。
【0019】
本発明の範囲内で、「ポリ乳酸ステープルファイバー」との用語は、ポリ乳酸フィラメント糸の切断または破壊から得られたステープルファイバーを意味し、「ポリ乳酸」との用語は、ラクチドの繰り返し単位を有するポリマーを意味し、従って「ポリラクチド」とも称される。
【0020】
本発明の範囲内で、「ステープルファイバーブレンド」との用語は、メタアラミドステープルファイバーと、パラアラミドステープルファイバーと、ポリ乳酸ステープルファイバーとの均質混合物を意味し、ステープルファイバーブレンドの各体積要素内で、同じ質量比のパラアラミドステープルファイバー対メタアラミドステープルファイバー対ポリ乳酸ステープルファイバーが存在する。前記の均質混合物は例えば、メタアラミドステープルファイバー、パラアラミドステープルファイバーおよびポリ乳酸ステープルファイバーを、空気中で混ぜ合わせることによって得ることができる。
【0021】
本発明の範囲内で、「ステープルファイバー糸」との用語は、メタアラミドステープルファイバーとパラアラミドステープルファイバーとポリ乳酸ステープルファイバーとのステープルファイバーブレンドから、ステープルファイバー糸を製造するための任意の公知の方法によって、例えばリング紡績によって、またはオープンエンド紡績、例えばエアジェット紡績によって製造された糸を意味する。
【0022】
本発明の範囲内で、「布地」との用語は、ステープルファイバーのブレンドが糸へと紡績され、それが特定の布の構造に配置されているものを意味する。
【0023】
本発明による布地の好ましい実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して
・ 30~90質量%のメタアラミドステープルファイバー、
・ 5~60質量%のパラアラミドステープルファイバー、および
・ 5~40質量%のポリ乳酸ステープルファイバー
を含む。
【0024】
本発明による布地のより好ましい実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して
・ 40~85質量%のメタアラミドステープルファイバー、
・ 5~50質量%のパラアラミドステープルファイバー、および
・ 5~30質量%のポリ乳酸ステープルファイバー
を含む。
【0025】
本発明による布地の最も好ましい実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して
・ 50~85質量%のメタアラミドステープルファイバー、
・ 10~40質量%のパラアラミドステープルファイバー、および
・ 5~25質量%のポリ乳酸ステープルファイバー
を含む。
【0026】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して最大95%のアラミドステープルファイバー、好ましくは最大90%のアラミドステープルファイバー、より好ましくは最大80%のアラミドステープルファイバー、または最大70%のアラミドステープルファイバーを含む。
【0027】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して少なくとも40%のメタアラミドステープルファイバー、好ましくは少なくとも50%のメタアラミドステープルファイバーおよびより好ましくは少なくとも60%のメタアラミドステープルファイバーを含む。
【0028】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して最大85%のメタアラミドステープルファイバー、より好ましくは最大75%のメタアラミドステープルファイバー、または最大65%のメタアラミドステープルファイバーを含む。
【0029】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して少なくとも10%のパラアラミドステープルファイバー、好ましくは少なくとも20%のパラアラミドステープルファイバーおよびより好ましくは少なくとも30%のパラアラミドステープルファイバーを含む。
【0030】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して最大50%のパラアラミドステープルファイバー、より好ましくは最大40%のパラアラミドステープルファイバー、または最大35%のパラアラミドステープルファイバーを含む。
【0031】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して少なくとも10%のポリ乳酸ステープルファイバー、好ましくは少なくとも15%のポリ乳酸ステープルファイバーおよびより好ましくは少なくとも20%のポリ乳酸ステープルファイバーを含む。
【0032】
本発明による布地の実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して最大35%のポリ乳酸ステープルファイバー、より好ましくは最大30%のポリ乳酸ステープルファイバー、または最大25%のポリ乳酸ステープルファイバーを含む。
【0033】
先述のとおり、「ステープルファイバー」との用語は、フィラメント糸の切断または破壊から得られた、限られた長さの繊維を意味する。ステープルファイバーが破壊により得られる場合、そのステープルファイバーは、適用された破壊技術、例えばけん切について特徴的な長さ分布を示す。好ましくは、ステープルファイバーは、フィラメント糸を、使用された切断装置において存在する単一の長さへと切断することによって得られる。これは、単一の長さを有するステープルファイバーをもたらす。
【0034】
本発明による布地の好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは30~140mmの単一の長さを有し、パラアラミドステープルファイバーは30~140mmの単一の長さを有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは30~140mmの単一の長さを有する。
【0035】
本発明による布地のより好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは30~130mmの単一の長さを有し、パラアラミドステープルファイバーは30~130mmの単一の長さを有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは30~130mmの単一の長さを有する。
【0036】
本発明による布地の最も好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは30~120mmの単一の長さを有し、パラアラミドステープルファイバーは30~120mmの単一の長さを有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは30~120mmの単一の長さを有する。
【0037】
本発明による布地の好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは0.8~7dtexの線密度を有し、パラアラミドステープルファイバーは0.8~7dtexの線密度を有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは0.8~7dtexの線密度を有する。
【0038】
本発明による布地のより好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは0.8~6dtexの線密度を有し、パラアラミドステープルファイバーは0.8~6dtexの線密度を有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは0.8~6dtexの線密度を有する。
【0039】
本発明による布地の最も好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは0.8~5dtexの線密度を有し、パラアラミドステープルファイバーは0.8~5dtexの線密度を有し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは0.8~5dtexの線密度を有する。
【0040】
本発明による布地の好ましい実施態様において、前記ブレンドは、そのブレンドの質量に対して5質量%までの、好ましくは0~4質量%の、最も好ましくは0~3質量%の帯電防止ステープルファイバーを追加的に含む。好ましくは、帯電防止ステープルファイバーは、帯電防止繊維形成ポリマーとして、ポリエステル、カーボンまたは鋼、またはそれらの混合物を含む。
【0041】
本発明による布地の好ましい実施態様において、帯電防止ステープルファイバーは、長さ30~140mmおよび線密度0.8~7dtexを有する。
【0042】
本発明による布地のより好ましい実施態様において、帯電防止ステープルファイバーは、長さ30~130mmおよび線密度0.8~6dtexを有する。
【0043】
本発明による布地の最も好ましい実施態様において、帯電防止ステープルファイバーは、長さ30~120mmおよび線密度0.8~5dtexを有する。
【0044】
好ましくは、ステープルファイバーブレンドに含まれるメタアラミドステープルファイバーは、好ましくは1cmあたり2~13の捲縮、より好ましくは1cmあたり3~10の捲縮の範囲の捲縮数(crimp value)を有する捲縮を示す。
【0045】
好ましくは、ステープルファイバーブレンドに含まれるパラアラミドステープルファイバーは、好ましくは1cmあたり2~13の捲縮、より好ましくは1cmあたり3~10の捲縮の範囲の捲縮数を有する捲縮を示す。
【0046】
好ましくは、ステープルファイバーブレンドに含まれるポリ乳酸ステープルファイバーは、好ましくは1cmあたり3~13の捲縮、より好ましくは1cmあたり5~10の捲縮の範囲の捲縮数を有する捲縮を示す。
【0047】
本発明による布地の好ましい実施態様において、ステープルファイバーブレンドに含まれる、アラミドステープルファイバーを含むステープルファイバーは、1cmあたりの捲縮数2~13の捲縮、好ましくは1cmあたりの捲縮数3~10の捲縮を示し、且つポリ乳酸ステープルファイバーは、1cmあたりの捲縮数3~13の捲縮、好ましくは1cmあたりの捲縮数4~10の捲縮を示す。
【0048】
本発明による布地の好ましい実施態様において、メタアラミドステープルファイバーは、好ましくはジメチルアセトアミド中にポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)を含む溶液から紡績されたポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)ステープルファイバーであり、パラアミドステープルファイバーは、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーまたはポリ(p-フェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーであり、且つポリ乳酸ステープルファイバーは、ポリ-L-乳酸ステープルファイバーまたはポリ-D-乳酸ステープルファイバー、またはポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸とのラセミ混合物で製造されたステープルファイバー、またはポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸とのステレオコンプレックスで製造されたステープルファイバーである。
【0049】
同一の化学組成ではあるが異なる繰り返し単位の構成のマクロ分子は、ステレオコンプレックスと称される分子間錯体を形成できる。ポリラクチドのステレオコンプレックスの形成は、ポリ-L-乳酸(PLLA)とポリ-D-乳酸(PDLA)とのエナンチオマー鎖の非共有結合相互作用に起因して生じ、且つより高い熱安定性をもたらす。好ましくは、PLLAおよびPDLAは選択的にステレオコンプレックスに配置されて、結晶構造を形成する。
【0050】
本発明による布地の好ましい実施態様において、糸は、リング紡績またはエアジェット紡績によって前記ブレンドから製造される。
【0051】
本発明による布地は原則として、特定の布構造に配置され且つ衣料品を形成するために適した、繊維の任意のネットワークであってよい。
【0052】
好ましくは本発明による布地は、織物または編物である布地である。
【0053】
さらには、本発明による布地が、綾織または平織の組織を有することが好ましい。
【0054】
本発明による布地が綾織または平織の組織を有し、少なくとも1つの経糸系および少なくとも1つの緯糸系を含み、前記少なくとも1つの経糸系および少なくとも1つの緯糸系は、ステープルファイバーの同じブレンドを有する糸またはステープルファイバーの異なるブレンドを有する糸を含むことも好ましい。
【0055】
好ましくは、本発明による布地は、50~400g/m2、より好ましくは80~380g/m2、および最も好ましくは100~350g/m2の坪量を有する。
【0056】
本発明による布地の有利な特性はそれ自体、前記布地を使用して製造される衣料品に変換される。そのような衣料品は、本発明による少なくとも1つの布地を含む。改善された摩耗耐性およびピリング耐性のおかげで、そのような衣料品は作業着に特に適している。従って、作業着を製造するための前記布地の使用も、本発明の一部である。
【0057】
本発明を以下の限定されない実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0058】
試料の準備:
例1(本発明による)
a) ステープルファイバーブレンドの製造(例1)
以下:
・ 型式Twaron 1070のポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバー25質量%、長さ40mm、線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数4~8の捲縮を有する、
・ 型式TeijinConex T BL1のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)ステープルファイバー65質量%、ジメチルアセトアミド中のポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)を含む溶液から紡績され、長さ50mmおよび線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数3~7の捲縮を有する、および
・ RMB fibers AG(CH)から入手されたポリ乳酸ステープルファイバー「ingeo」10質量%、長さ38mm、線密度1.5dtex、テナシティ38cN/tex、破断点伸び40%、1cmあたりの捲縮数7の捲縮、および沸騰水収縮率5.4%を有する、
からなるステープルファイバーの均質なブレンドを、上記のステープルファイバーを上記の質量パーセンテージで均質に混合することによって製造した。
【0059】
b) ステープルファイバー糸の製造(例1)
段階a)において得られたステープルファイバーブレンドから、2つのNm 40/1ステープルファイバー糸を製造した。前記2つのNm 40/1ステープルファイバー糸を撚り合わせて、Nm 40/2ステープルファイバー撚糸が得られた。
【0060】
c) 織布の製造(例1)
段階b)において得られたNm 40/2ステープルファイバー撚糸から、DIN EN ISO 7211-1に準拠する構造2/1 Zを有する織布、つまりZ方向における2つの上昇部と1つの降下部とを示す綾織物を製造し、ここで、経糸と緯糸との両方が段階b)において得られたステープルファイバー糸からなる。その布地は、糸密度191糸/10cmを有する経糸と、糸密度182糸/10cmを有する緯糸とからなる。糸密度は、DIN EN ISO 1049-2に準拠して測定された。
【0061】
前記織布の坪量は202g/m2であり、DIN EN ISO 12127に準拠して測定された。
【0062】
比較例1(CE1)
a) 比較用ステープルファイバーブレンドの準備(CE1)
以下:
・ ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド) DuPont(商標) Kevlar(登録商標)ステープルファイバー5質量%、単一の長さ50mm、線密度1.7dtexを有する、
・ ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド) DuPont(商標) Nomex(登録商標)ステープルファイバー93質量%、長さ50mm、線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数 の捲縮を有する、および
・帯電防止ステープルファイバー2質量%、単一の長さ50mm、線密度1.7dtexを有する、
からなる、DuPont(米国)から入手される商品名Nomex(登録商標)IIIAの比較用ステープルファイバーブレンドを準備した。
【0063】
b) 比較用ステープルファイバー糸の製造(CE1)
段階a)において準備されたNomex(登録商標)IIIAステープルファイバー混合物から、1つのNm 60/1ステープルファイバー糸および1つのNm 60/1ステープルファイバー糸を製造した。前記2つのステープルファイバー糸を撚り合わせて、比較用Nm 60/2ステープルファイバー撚糸が得られた。
【0064】
c) 比較用織布の製造(CE1)
DIN EN ISO 7211-1に準拠する構造2/1 Zを有する比較用布地、つまりZ方向における2つの上昇部と1つの降下部とを示す綾織物を製造し、ここで、経糸と緯糸との両方が段階b)において得られた比較用ステープルファイバー撚糸からなる。前記布地は、糸密度386糸/10cmを有する経糸と、糸密度244糸/10cmを有する緯糸とからなる。糸密度は、DIN EN ISO 1049-2に準拠して測定された。その比較用布地の坪量は225g/m2であり、DIN EN ISO 12127に準拠して測定された。
【0065】
比較例2(CE2)
a) 比較用ステープルファイバーブレンドの準備(CE2)
以下:
・ 型式Twaron 1072のポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバー60質量%、長さ50mm、線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数4~9の捲縮を有する、および
・ 型式TeijinConex YE5のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)ステープルファイバー40質量%、ジメチルアセトアミド中のポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)を含む溶液から紡績され、長さ50mmおよび線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数3~7の捲縮を有する、
からなる比較用ステープルファイバーブレンドを、上記のステープルファイバーを上記の質量パーセンテージで均質に混合することによって製造した。
【0066】
CE2のステープルファイバー糸の製造工程b)およびCE2の織布の製造工程c)を、比較例1(CE1)と同様に実施する。
【0067】
前記織布の10cmあたりの糸数は188の経糸および199の緯糸であり、DIN EN ISO 1049-2に準拠して測定された。
【0068】
前記織布の坪量は204g/m2であり、DIN EN ISO 12127に準拠して測定された。
【0069】
比較例3(CE3)
a) 比較用ステープルファイバーブレンドの準備(CE3)
以下:
・ 型式Twaron 1072のポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバー40質量%、長さ50mm、線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数4~9の捲縮を有する、および
・ 型式TeijinConex YE5のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)ステープルファイバー60質量%、ジメチルアセトアミド中のポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)を含む溶液から紡績され、長さ50mmおよび線密度1.7dtex、および1cmあたりの捲縮数3~7の捲縮を有する、
からなる比較用ステープルファイバーブレンドを、上記のステープルファイバーを上記の質量パーセンテージで均質に混合することによって製造した。
【0070】
CE3のステープルファイバー糸の製造工程b)およびCE3の織布の製造工程c)を、比較例1(CE1)と同様に実施する。
【0071】
前記織布の10cmあたりの糸数は188の経糸および179の緯糸であり、DIN EN ISO 1049-2に準拠して測定された。
【0072】
前記織布の坪量は204g/m2であり、DIN EN ISO 12127に準拠して測定された。
【0073】
明確化のために、例1および比較例(CE1~CE3)のステープルファイバーブレンドの組成を表1に示す。
【0074】
【0075】
方法
前記織布の特性および比較用織布の特性を以下のとおりに測定した:
・ 本発明による織布および比較用織布の両方の引張強さ[N]および破断点伸び[%]を、DIN EN ISO 13934-1に準拠して測定した、
・ 本発明によるステープルファイバー糸の引張強さ[N]をDIN EN ISO 13934-1に準拠して測定した、
・ 本発明による織布および比較用織布の両方の引裂強さ[N]をDIN EN ISO 13937-2に準拠して測定した、
・ 本発明による織布および比較用織布の両方のピリング耐性を、DIN EN ISO 12945-2に準拠して、特定のサイクル数の後に測定し、ここで、評価1は最低のピリング耐性および評価5は最高のピリング耐性を表す、
・ 本発明による織布および比較用布地の両方の摩耗耐性を、DIN EN ISO 12947-2に準拠して、試料中で2つの糸の完全な破壊が検出されるまでの特定のサイクル数の後に測定し、ここで、各々3つの試料が測定され、その3つの試料の摩耗耐性の算術平均値が計算された、
・ 本発明による織布の対流熱をISO 9151に準拠して測定し、伝熱係数tHTI[秒]、つまり、布地の上の特定の距離に取り付けられた熱量計が24℃の温度上昇を測定するまでの時間[秒]が得られ、ここで、布地は80kW/m2で燃焼するブンゼンバーナー上の特定の距離に配置されている、
・ 本発明による織布の放射熱を、ISO 6942に準拠して測定し、t24℃,20kW/m2[秒]およびt24℃,40kW/m2[秒]、つまり、布地の片側上で24℃の温度上昇が測定されるまでの時間[秒]が得られ、ここで、布地を、20kW/m2または80kW/m2で放射する放射熱源から較正された距離に配置して、作業の際の放射熱の、第二度熱傷が予期される破過時間を模倣する、
・ 本発明による織布の接触熱を、ISO 12127に準拠して測定し、t閾値[秒]、つまり、布地の下の特定の距離に取り付けられた熱量計が10℃の温度上昇を測定するまでの時間[秒]が得られ、ここで、布地は温度250℃を有するドラムと接触されている、
・ 織布の180℃での熱収縮[%]、および
・ 織布の250℃での熱収縮[%]。
【0076】
引張強さ[N]、破断点伸び[%]、および引裂強さ[N]について、標準偏差がもたらされ、ここで、各々5つの試料を経糸方向および緯糸方向に測定した。
【0077】
実験結果
実験1
実験1において、2つの織布(本発明による例1および比較例1)を試験して、それらの特性を比較する。結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
表2から、以下を結論付けることができる:
本発明による織布の摩耗耐性(120000サイクル)は、比較用織布の摩耗耐性(70000~80000サイクル)よりも33%~42%高い。
【0080】
本発明による織布の経糸引裂耐性、つまり経糸引裂強さ(72.2N)は、比較用織布の経糸引裂強さ(54.4N)より33%高く、且つ本発明による織布の緯糸引裂強さ(75.9N)は、比較用織布の緯糸引裂強さ(54.7N)より39%高い。
【0081】
本発明による織布の、引裂および摩耗に対するより高い耐性は、布の坪量202g/m2で、つまり比較用織布の布の坪量(225g/m2)よりも10%低い布の坪量で得られる。
【0082】
本発明による織布は、本質的に耐熱性および耐炎性ではないポリ乳酸を10質量%含有するにもかかわらず、本発明による織布は、
・ tHTIとして表される対流熱5.1秒(B1と評価される)、
・ t24℃,20kW/m2として表される放射熱11.2秒(C1と評価される)、および
・ t閾値として表される接触熱7.2秒(F1と評価される)
を示す。前記の評価はDIN EN ISO 11612に定義されており、且つその織布が熱および火炎保護着についての最低限の要求を満たすことを意味する。
【0083】
実験2
実験2において、3つの織布(本発明による例1および比較例2および3)を試験して、それらの特性を比較する。CE3は例1と似た比較例である。それは、同様の量のパラアラミドステープルファイバーおよびメタアラミドステープルファイバーを含有するが、ポリ乳酸ステープルファイバーは含有しない。結果を表3に示す。
【0084】
【0085】
表3から、以下を結論付けることができる:
本発明による例1の摩耗耐性は120000サイクルで、比較用織布の値(CE2: 60000; CE3: 80000サイクル)より50%~100%高い値を示す。
【0086】
本発明による例1のピリング耐性は、CE2およびCE3のピリング耐性よりも少なくとも1レベル高く、より大きなサイクル数では、例1と、CE2およびCE3との間の違いがより明らかになる。5000および7000サイクルの場合、その差は2レベルである。
【0087】
例1とCE3との比較は、ポリ乳酸ステープルファイバーを有する例1が、より良好なピリング耐性および摩耗耐性を有することを示す。