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特許7044803癌の治療のための化合物、組成物およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】癌の治療のための化合物、組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/6615 20060101AFI20220323BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220323BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61K31/6615
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019554918
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018059213
(87)【国際公開番号】W WO2018189210
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】17305438.8
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17306456.9
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516365507
【氏名又は名称】アンスティテュ・ギュスターヴ・ルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・アプシェ
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・ピアソン
(72)【発明者】
【氏名】マチルド・ブールピカント
(72)【発明者】
【氏名】ザフィアリソア・ドロール・レンコ
(72)【発明者】
【氏名】ムーアド・アラミ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・ダリグラン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105998697(CN,A)
【文献】Phytochemistry Letters,2014年,9,82-85
【文献】Molecular Cancer Therapeutics,2006年,5(11),2666-2675
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/6615
A61P 35/00
A61P 37/04
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬としての使用のための、式:
【化1】
または
【化2】
示される化合物。
【請求項2】
対象における、癌の治療における使用、癌の転移予防における使用、および/または癌の再発予防における使用のための請求項に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1つの別の抗癌剤および/または放射線療法と組み合わせた、請求項に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
癌が癌腫、肉腫、リンパ腫、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、白血病および多発性骨髄腫から選択される、請求項またはに記載の使用のための化合物。
【請求項5】
癌腫が黒色腫、肺癌または乳癌である、請求項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
少なくとも1つの別の抗癌剤が、化学療法剤、免疫チェックポイントブロッカーおよび抗癌ワクチンから選択される、請求項3~5のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項7】
それを必要とする対象における抗癌免疫応答を刺激するための使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化3】
で示される化合物および薬学的に許容される担体を、好ましくは、同時に、別々にまたは連続して使用される少なくとも1つの別の抗癌剤と共に、含む組成物。
【請求項9】
対象における、癌の治療、癌の転移予防、および/または癌の再発予防における使用のための、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
癌細胞によるパイオニア翻訳産物(PTP)由来抗原の提示、典型的には産生および提示を誘導または増加させるための、式:
【化4】
で示される化合物のインビトロまたはエクスビボでの使用。
【請求項11】
対象が哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項2~7のいずれかに記載の使用のための化合物、または請求項またはに記載の組成物。
【請求項12】
式:
【化5】
で示される化合物と、少なくとも1つの別の抗癌剤とを、別個の容器に含むキット。
【請求項13】
請求項または11のいずれかに記載の組成物を調製するための、請求項12に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、一般に、医薬および癌治療の分野に関する。本発明は、より具体的には、イソギンゲチンの誘導体であり、それぞれ典型的に医薬として使用される新規化合物に関する。特に、本発明は、患者の癌細胞による、(抗原)ペプチド、好ましくはパイオニア翻訳産物(PTP)由来抗原の提示、典型的には産生および提示を増加させ、患者における免疫応答を誘導または刺激するためのこれら新規化合物の使用に関する。免疫応答は、典型的には腫瘍抗原に対して、より一般的には患者が患っている癌性腫瘍に対するものである。
本開示はまた、特に医薬組成物を調製するための、および/またはそれを必要とする患者における癌治療の効率を可能にするまたは改善するためのそのような化合物の使用に関する。本発明の化合物のそれぞれは、少なくとも1つの別の抗癌剤、典型的には化学療法薬、および/または放射線療法と組み合わせて、患者における、癌の治療、癌転移の予防および/または癌の再発の予防のために実際に有利に使用することができる。
本発明はまた、患者における癌、癌転移および/または癌の再発を予防または治療する方法を開示する。本発明はさらに、本発明による組成物の調製および/または本明細書に記載の方法の実施に適したキットを提供する。
【0002】
発明の背景
すべての有核細胞は、クラスI主要組織適合性複合体(MHC-I)経路介して表面に抗原ペプチド(AP)を提示する。APは8~10個のアミノ酸であり、固有の細胞活性を反映している(Caron et al.)。その提示は、免疫細胞(主に細胞傷害性CD8+ T細胞(CTL)とCD4+ Tヘルパー細胞)による潜在的に危険な要素の監視を誘導しているため、APは現在開発されている治療用抗癌ワクチンの標的である。有望であるにもかかわらず、腫瘍関連抗原(TAA)を標的とする治療用ワクチンによる臨床試験の結果は期待を満たしていない。主な失敗は、免疫抑制機構と最適ではない抗原の選択に関連している(Mellman et al.; Burg et al.)。腫瘍の免疫選択を促進し、予後不良と相関する重要な事象の1つは、腫瘍細胞によるMHCクラスI抗原提示の喪失またはダウンレギュレーションである(Watson et al.; Liu et al.)。これらは、MHCクラスI経路のコンポーネントに欠陥があるために、CTLおよびナチュラルキラー細胞の認識を逃れる可能性ががある(Leone et al.)。MHCクラスI抗原提示の全体的な減少とともに、MHCIクラスI免疫ペプチド(MIP)と呼ばれる細胞表面に提示される抗原の性質は、免疫認識にとって非常に重要である。乳癌のHer/neuや結腸癌のCEAなど、特定のTAAが特定され免疫療法で標的化されている癌では、腫瘍細胞表面でのこのTAA発現の喪失が免疫回避につながる(Lee et al.; Kmieciak et al.)。それに対抗するため、現在の戦略は、標的となる癌ペプチドの範囲を拡大し、MHC抗原提示を復活させることを目指している。
【0003】
MIPのダイナミクスを理解するためには、MHCクラスI提示経路のAPの供給源に焦点を当てることができる。内因的なAPは、厳密には老化タンパク質の分解に由来すると考えられていた。ただし、別の供給源を提案するモデルがこの概念に疑問を呈している。1996年、J. Yewdellのグループは、不安定なコンフォメーションに起因して急速に分解した産物として最初に記載された、欠陥リボソーム産物(DRIP)の概念を紹介した(Yewdell et al、1996)。さらに最近、発明者は、APの主要な供給源が、イントロンがスプライシングされる前に生じる先駆的翻訳イベントに由来し、完全長タンパク質の翻訳イベントとは独立していることを示す、異なる視点からその概念を調べた(Apcher et al.、2011)。生成した非標準(non-canonical)ペプチドは、イントロン配列、3’または5’UTR領域、および代替リーディングフレームに由来する。これらのポリペプチドは、Pioneer Translation Products(PTP)と呼ばれる。PTPの発見は、MHCクラスI経路に関与する適切なポリペプチドを生成することにより、MIPを形成することを部分的に目的とする複雑な翻訳の核メカニズムの存在を示唆している。さらに、PTPは癌の進行のダイナミクスに役割を果たすとみられる。マウスに接種した場合に、その表面にPTP由来抗原を提示する癌細胞が、腫瘍成長の減少につながる特定のT細胞によって認識されることが示されている。さらに、モデルエピトープを含む精製PTPは、マウスにペプチドワクチンとして注射すると、抗癌免疫応答を効率的に促進する(Duvallet et al.)。
【0004】
前駆体-mRNA(pre-mRNA)スプライシングは、200を超えるたんぱく質との複合体である、5つの小さな核RNA(snRNA)U1、U2、U4、U5およびU6で構成される保存されたおよび動的なマルチタンパク質複合体である、スプライソソームによって核内で触媒される。スプライソソーム複合体の調節解除は、異常な腫瘍細胞の増殖と進行に寄与する多くの癌の異常なスプライシングパターンを伴うことを報告する研究が増えている。2011年以降、骨髄単球性白血病、骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、乳癌、または多発性骨髄腫を含むいくつかの癌で、スプライソソームの再発変異が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、本明細書において、患者における癌の治療、癌転移の予防、および/または癌の再発予防に使用するための新しい化合物について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明者らは、医薬として使用するための、式
【化1】
(I)
[式中、
およびRは、Na、H、-CH、-CH-CH、-CH-CH=CH、n-CH-CH-CH、P(O)(O-CH-CH、P(O)(OH)またはP(O)(ONa)の群から独立して選択され;
、R、R、RおよびRは同時にHではなく、RがP(O)(ONa)またはP(O)(OH)でありR、RおよびRのそれぞれがHであるとき、Rは-CHではなく、Rが-CHでありR、RおよびRのそれぞれがHであるとき、Rは-CHでもHでもなく;
、RおよびRは、独立して、H、CH、-CH-CH、-CH-CH=CHおよびC2n+1(n=3~10)の群から独立して選択される]
で示される化合物を記載する。
【0007】
本化合物、ならびにその立体異性体または薬学的に許容されるその塩は、医薬として有利に使用することができる。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明は、RがNaであり、RがP(O)(ONa)であり、R、RおよびRのそれぞれがHである式(I)の特定の化合物に関する(本明細書では一般に「IP2」またはより具体的には「IP2-6Na」と称する)
【化2】
【0009】
別の好ましい実施形態では、本発明は、RがHであり、RがP(O)(ONa)であり、R、RおよびRのそれぞれがHである式(I)の特定の化合物に関する(本明細書では一般に「IP2」またはより具体的には「IP2-4Na」と称する)
【化3】
【0010】
本明細書に記載の好ましい態様において、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)、またはその立体異性体または薬学的に許容される塩は、癌の治療、癌転移の予防および/または患者の癌の再発予防に使用するためのものである。
【0011】
さらに、癌細胞による、(抗原)ペプチド、好ましくはパイオニア翻訳産物(PTP)由来の抗原の提示、典型的には産生および提示を誘導または増加させるための、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)の、インビボ、インビトロまたはエクスビボでの使用について記載する。
【0012】
式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)により、医師は患者の免疫系を刺激することにより、癌細胞の増殖を予防または制御、好ましくは減少させることができる。さらに、他の癌治療の有効性を高めることができるという利点もある。発明者は本明細書において、本化合物がさらに、癌の転移および/または再発のリスクを低減できることを実証する。
【0013】
また、本明細書は、および好ましくは同時に、別々に、または順次に使用される少なくとも1つの別の抗癌剤とともに、式(I)のそのような化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)と、薬学的に許容される担体を含有する組成物を記載する。そのような組成物は、典型的には、患者における癌の治療、癌の転移予防、および/または癌の再発予防に使用するためのものである。
【0014】
また、本明細書は、本明細書に記載の化合物、典型的には式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)、または組成物を患者に投与するステップを含む、患者の癌を治療する方法を記載する。
【0015】
また、本明細書は、特に、本明細書に記載の組成物を調製するための、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)、および好ましくは別個の容器内の少なくとも1つの別の抗癌剤を含むキット、ならびにその使用を記載する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な記載
本発明らは、本発明の文脈において初めて記載され、「式(I)の化合物」として特定される、ビフラボノイドイソギンゲチン誘導体を作製した。
【化4】
(I)
[式中、
およびRは、Na、H、-CH、-CH-CH、-CH-CH=CH、n-CH-CH-CH、P(O)(O-CH-CH、P(O)(OH)またはP(O)(ONa)の群から独立して選択され;
、R、R、RおよびRは同時にHではなく、RがP(O)(ONa)またはP(O)(OH)でありR、RおよびRのそれぞれがHであるとき、Rは-CHではなく、Rが-CHでありR、RおよびRのそれぞれがHであるとき、Rは-CHでもHでもなく;
、RおよびRは、独立して、H、CH、-CH-CH、-CH-CH=CHおよびC2n+1(n=3~10、好ましくは3~8である)の群から独立して選択される]。
【0017】
「ヒドロキシメチル」は、式-OMeで示される基を意味し、Meはメチル(-CH)を表す。
「水酸化ナトリウム」は、Naがナトリウムを表す式-ONaで示される基を意味する。
n=3~10であるC2n+1基は、飽和の直鎖または分岐鎖の脂肪族基である「アルキル」基を指す。例えば、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル基が挙げられる。好ましくは、nは3~8または3~6である。
【0018】
式中、RがNaであり、RがP(O)(ONa)であり、R、RおよびRのそれぞれがHである、式(I)の特定の化合物もまた、本明細書において「IP2」分子として、またはより具体的には「IP2-6Na」、またはナトリウム8-(2-メトキシ-5-(5-オキシド-4-オキソ-7-(ホスホナトオキシ)-4H-クロメン-2-イル)フェニル)-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキシド-4-オキソ-4H-クロメン-7-イルホスフェートとして特定される:
【化5】
【0019】
式中、RがHであり、RがP(O)(ONa)であり、R、RおよびRのそれぞれがHである式(I)で示される別の特定の化合物も、本明細書では一般に「IP2」分子またはより具体的には「IP2-4Na」またはナトリウム5-ヒドロキシ-8-(5-(5-ヒドロキシ-4-オキソ-7-(ホスホナトオキシ)-4H-クロメン-2-イル)-2-メトキシフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イルホスフェートとして特定される:
【化6】
【0020】
式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)、ならびにその立体異性体または薬学的に許容される塩は、医薬として有利に使用することができる。
【0021】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合う、過度の毒性やその他の合併症なしに、患者の組織との接触に適している、または患者に投与できる組成物、化合物、塩などを意味する。例えば、薬学的に許容される塩には、ナトリウム、カリウム、塩化物、アンモニウム、酢酸塩などが含まれる。
【0022】
発明者は、本明細書において、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)が癌に対する能動的な免疫調節剤として有利に使用できることを実証する。
発明者らは、ヒトおよびマウスの癌細胞株で発現したPTP由来抗原モデルの抗原提示を調べ、イソギンゲチン、より好ましくはIP2、によるin vitro処理によりこの抗原の提示が増加することを観察した。さらに、発明者は、肉腫を有するマウスのDMSOに溶解したイソギンゲチンによるin vivo治療が、免疫依存的に腫瘍成長を遅らせることを示した。その効果を改善するため、水に溶解するイソギンゲチン誘導体IP2を試験したところ、驚くべきことに、それがイソギンゲチン自体よりもはるかに強力な癌増殖阻害剤であることを観察した。免疫不全のNu/Nuマウスでは、天然物や誘導体は腫瘍成長に影響を及ぼさないため、それらの効果は免疫応答に依存していると結論付けた。これらの結果は、PTP由来抗原の提示を調節できることを示しており、発明者は、イソギンゲチンの他の誘導体に反して、抗癌反応を促進し、癌を治療するために使用することができる、IP2スプライシング阻害剤または式(I)で示される化合物という、市場開発に新しい有望な分子を提供する。
【0023】
本明細書に記載の好ましい態様では、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)は、癌の治療で使用するため、癌の転移予防で使用するため、および/または患者の癌の再発予防に使用するためのものである。
【0024】
本明細書に記載される別の好ましい態様において、式(I)の化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)は、それを必要とする患者における抗癌免疫応答を刺激するために使用されるものである。
【0025】
さらに好ましい態様において、式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)は、癌細胞によるパイオニア翻訳産物(PTP)の提示、典型的には産生および提示、を誘導または増加するために使用するためのものである。
【0026】
本発明の化合物は、半合成または全合成など、当業者に周知の方法によって得ることができる。式(I)で示される化合物を製造する方法の例は、本明細書の実験部分に記載され、さらに図5に示され(式(I)で示される化合物は図5の化合物「2」および「2’」に対応する)、一般に「IP2」として表される。式(I)で示される化合物は人工物であり、自然界にはみられないものである。
【0027】
式(I)で示される化合物は、典型的には、mRNAスプライシングの一般的な阻害剤として記載されているビフラボノイドであるイソギンゲチンから調製することができ、典型的にはイチョウ(Ginko biloba L.)の葉から抽出される。イソギンゲチンの抽出方法は、特にKang et al (1990) and in Lee et al (1995)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
式(I)の化合物は、慣用の化学反応を使用する化学合成によって調製することもできる。
【0029】
本発明のさらなる目的は、別の抗癌剤、典型的には別の化学療法剤に関して、癌または癌を患っている患者の耐性を低下させるための、式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)(またはその立体異性体または薬学的に許容される塩)の使用である。
【0030】
本明細書では、少なくとも1つの別の抗癌剤、典型的には別の化学療法薬、および/または放射線療法と組み合わせて、癌を治療し、癌の転移を予防し、および/または癌の再発を予防するために使用するための、本発明の式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)(またはその立体異性体もしくは薬学的に許容される塩)、またはそのような化合物と薬学的に許容される担体を含有する組成物を記載する。
【0031】
「対象」という用語は、任意の患者、好ましくは哺乳動物を意味する。
哺乳動物の例としては、ヒトおよび非ヒトの動物、たとえば家畜(ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマなど)、非ヒト霊長類(サルなど)、ウサギ、およびげっ歯類(たとえば、マウスやラット)が挙げられる。治療は、好ましくは、年齢や性別を問わず、それを必要とするヒトを患者として意図する。
【0032】
「対象」という用語は、典型的には、患者、特に腫瘍を有する患者を意味する。本開示で特に明記しない限り、腫瘍は癌性のまたは悪性の腫瘍である。特定の態様において、対象は、化学療法および/または放射線療法などの癌の治療を受けている対象、または癌を発症するリスクがあるか、またはリスクがあると疑われる対象である。
対象は、例えば、癌を患っており、癌治療、典型的には化学療法に耐性のあるヒトである。
【0033】
対象は、完全な慣用的な治療プロトコルの一部、例えば、全治療プロトコルの少なくとも1サイクル、例えば、全治療プロトコルの2サイクルを受けた対象でありうる。
【0034】
癌または腫瘍は、あらゆる種類の癌または腫瘍であり得る。腫瘍は、典型的には、特に上皮、神経外胚葉または間葉起源の固形腫瘍である。癌はまた、典型的には、癌腫、肉腫、リンパ腫、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、白血病および多発性骨髄腫、好ましくは癌腫、肉腫、芽細胞腫、リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫から選択される。癌は転移癌であってもなくてもよい。
【0035】
癌は、例えば、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ ALL)、ホジキン病、ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、胃腸癌、腎癌、卵巣癌、肝臓癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、脳癌、中枢神経系癌、膵臓癌、多形性膠芽腫、子宮頸癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、悪性肝癌、乳癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、軟組織肉腫、副鼻腔NK/T細胞リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性リンパ球性白血病からなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0036】
好ましい実施形態では、癌は、肺癌、乳癌、尿生殖器癌(前立腺癌、膀胱癌、精巣癌、子宮頸部癌または卵巣癌など)および肉腫(骨肉腫、または小児軟部肉腫を含む軟部肉腫、神経芽細胞腫、骨髄腫および黒色腫など)からなる群から選択される。
【0037】
より好ましくは、癌は、黒色腫、肺癌(非小細胞肺癌(またはNSCLC)および小細胞肺癌(またはSCLC)を含む)および乳癌から選択される。
【0038】
さらにより好ましくは、癌腫は黒色腫または肺癌である。
【0039】
一態様では、癌は肺癌、典型的には小細胞肺癌または非小細胞肺癌である。
【0040】
別の態様では、癌は白血病、典型的には急性骨髄性白血病(AML)または慢性リンパ性白血病である。
【0041】
さらなる態様では、癌は結腸癌、典型的には結腸癌腫である。癌は大腸癌(colorectal cancer)でもあり得る。
【0042】
さらなる態様において、癌は小児癌であり、典型的には小児肉腫、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、脳癌、または中枢神経系癌である。
【0043】
本明細書に記載の特定の態様では、抗癌剤は、化学療法剤、免疫チェックポイントブロッカー、および抗癌ワクチン(本明細書では「癌ワクチン」とも呼ばれる)から選択される。これらの薬剤は、典型的には、癌を治療するための「慣用の」薬剤とされる。
【0044】
化学療法剤は、典型的には、例えば、抗腫瘍/細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、プラチンベースの成分、特定のキナーゼ阻害剤、ホルモン、サイトカイン、抗血管新生剤、抗体、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤および血管破壊剤から選択される薬剤である。
【0045】
抗腫瘍剤または細胞毒性抗生物質は、例えば、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン)、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、プリカマイシンおよびヒドロキシ尿素から選択することができる。
【0046】
アルキル化剤は、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、テモゾロミドブスルファン、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、チオテパ、マイトマイシン、ジアジコン(AZQ)、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミンおよびウラムスチンから選択することができる。
【0047】
代謝拮抗剤は、例えば、ピリミジン類似体(例えば、フルオロピリミジン類似体、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FUDR)、シトシンアラビノシド(シタラビン)、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、カペシタビン);プリン類似体(例、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、クロファラビン);葉酸類似体(例:メトトレキサート、葉酸、ペメトレキセド、アミノプテリン、ラルチトレキセド、トリメトプリム、ピリメタミン)から選択することができる。
【0048】
トポイソメラーゼ阻害剤は、例えば、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドから選択することができる。
【0049】
有糸分裂阻害剤は、例えば、タキサン[パクリタキセル(PG-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセル)(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ラロタキセル、カバジタキセル、オルタタキセル、テセタキセル、またはタキソプレキシン];紡錘体毒またはビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンまたはビンフルニンなど);メベンダゾール;およびコルヒチンから選択できる。
【0050】
プラチンベースの成分は、例えば、白金、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチンおよび四硝酸トリプラチンから選択することができる。
【0051】
特定のキナーゼ阻害剤は、例えば、ベムラフェニブなどのBRAFキナーゼ阻害剤;MAPK阻害剤(ダブラフェニブなど);MEK阻害剤(トラメチニブなど);および、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブまたはカルボザンチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤から選択することができる。
【0052】
タモキシフェン、抗アロマターゼ、または抗エストロゲン薬も、典型的に、ホルモン療法として使用できる。
【0053】
免疫療法として使用可能なサイトカインは、例えば、IL-2(インターロイキン-2)、IL-11(インターロイキン-11)、IFN(インターフェロン)α(IFNa)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択できる。
【0054】
抗血管新生剤は、例えばベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブおよびエベロリムスから選択することができる。
【0055】
抗体、特にモノクローナル抗体(mAb)は、抗CD20抗体(抗pan B細胞抗原)、抗Her2/Neu(ヒト上皮成長因子受容体-2/NEU)抗体;癌細胞表面を標的とする抗体(リツキシマブやアレムツズマブなど);成長因子を標的とする抗体(ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブなど);アゴニスト抗体(抗ICOS mAb、抗OX40 mAb、抗41BB mAbなど);およびイムノコンジュゲート(90Y-イブリツモマブ チウキセタン、131I-トシツモマブ、またはアド-トラスツズマブ エムタンシンなど)から選択できる。
【0056】
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、例えば、2’-デオキシ-5-アザシチジン(DAC)、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、1-β-D-アラビノフラノシル-5-アザシトシンおよびジヒドロ-5-アザシチジンから選択することができる。
【0057】
血管破壊剤は、例えば、フラボン酢酸誘導体、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)およびフラボン酢酸(FAA)から選択することができる。
【0058】
その他の化学療法薬としては、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブなど)、DNA鎖切断化合物(チラパザミンなど)、チオレドキシンレダクターゼとリボヌクレオチドレダクターゼの両方の阻害剤(xcytrinなど)、およびThl免疫応答のエンハンサー(チマルファシンなど)が挙げられる。
【0059】
好ましい実施形態では、化学療法薬または化学療法剤は、抗腫瘍/細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、プラチンベースの成分、特定のキナーゼ阻害剤、抗血管新生剤、抗体およびDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤から選択される。
【0060】
免疫チェックポイントブロッカーは、典型的には、免疫チェックポイントを標的とする抗体である。そのような免疫チェックポイントブロッカーは、抗CTLA4(イピリムマブおよびトレメリムマブ)、抗PD-1(ニボルマブおよびペンブロリズマブ)、抗PD-L1(アテゾリズマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブ)、抗PD-L2および抗Tim3から有利に選択することができる。
【0061】
癌ワクチンは、例えば、(抗原)ペプチド、特にPTPを含むワクチン組成物;ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(Gardasil(登録商標)、Gardasil9(登録商標)、Cervarix(登録商標)など);前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)sipuleucel-Tに対する免疫応答を刺激するワクチン(Provenge(登録商標));腫瘍溶解性ウイルス;およびtalimogene laherparepvec(T-VECまたはImlygic(登録商標))から選択することができる。
【0062】
別の特定の態様では、(「慣用の」)癌治療は放射線照射である(本明細書では「放射線療法」とも呼ばれる)。放射線療法は、典型的には、X線(「XR」)、ガンマ線、および/またはUVC線から選択された光線を伴うものである。
【0063】
いくつかの抗癌剤を含む治療は、予防または治療する具体的な癌に応じて癌専門医によって選択される。
【0064】
特定の黒色腫は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、IFNα、ダカルバジン、BRAF阻害剤、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ソラフェニブ、テモゾロミド、電気化学療法、TNFαおよび/またはフォテムスチンで慣用的に治療されている黒色腫である。
【0065】
特定の実施形態では、黒色腫は、以前に記載された細胞傷害性従来療法に耐性の黒色腫である。
【0066】
特定の乳癌は、乳房腫瘍を除去するための外科手術の前後、好ましくはそのような外科手術の前に、慣用的に、アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブ、抗PARP(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ)、抗PI3K(ホスホイノシチド3-キナーゼ)、mTOR(哺乳動物のラパマイシンの標的)阻害剤、ビノレルビン、ゲムシタビン、抗エストロゲン、および/または抗アロマターゼで処置される乳癌である。
【0067】
特定の実施形態では、乳癌は、前述の慣用の療法に耐性の乳癌である。
【0068】
特定の肺癌は、XRおよびプラチンまたはパーメトレキセドのいずれかで慣用的に処置される肺癌である。
【0069】
特定の初期のNSCLCは、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド、タキサン、アバスチン[抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体]、エルロチニブおよび/またはゲフィチニブで慣用的に治療されるNSCLCである。特定の実施形態では、肺癌は慣用の療法に耐性がある。
【0070】
本開示はさらに、本発明の式(I)の化合物、好ましくは「IP2」の、医薬組成物または医薬を調製するための使用に関し、前記組成物は、対象の免疫系を刺激することにより、それを必要とする患者において、癌の治療または癌治療の効率の改善が可能である。本発明の化合物は、特に、前述の少なくとも1つの別の抗癌剤または他の治療活性化合物と組み合わせて、および/または放射線治療とともに、癌の治療、癌の転移予防および/または対象の癌の再発を防ぐために有利に用いることができる。
したがって、本明細書はまた、典型的には、好ましくは前記癌の治療において、少なくとも1つの別の抗癌剤と同時、個別または連続的に使用するための組み合わせ製剤として、式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)と、薬学的に許容される担体を含む組成物を記載する。
【0071】
本明細書はまた、(i)癌を予防または治療する方法、(ii)抗癌剤に対する癌の感受性を高める方法、および(iii)抗癌剤に対する癌の抵抗性を低下させる方法であって、前記方法はそれぞれ、有効量、典型的には治療有効量の、少なくとも1つの式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」化合物(IP2-6NaまたはIP2-4Na)、または好ましくは、本明細書に記載の癌の予防または治療において古典的に使用される抗癌剤と一緒に(併用製剤として)使用される上記で定義した医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を記載する。
別の特定の態様において、前記方法はさらに、癌または癌治療の副作用を予防または治療するための、有効量の別の治療活性化合物を投与することを含む。
【0072】
本明細書で使用される「治療」または「治療する」とは、治療される対象の自然経過を変えようとする治療的介入を意味し、予防(予防(prophylactic))または治療目的のいずれかで実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本発明の組成物および方法は、癌の発生を遅らせるか、癌の進行、典型的には腫瘍成長、を遅らせるために用いられる。
【0073】
典型的には、治療は、対象の免疫系の治療的反応、典型的にはCD4+および/またはCD8+ T細胞応答を誘導する。
【0074】
T細胞応答の誘導とは、典型的には、特定の抗原に向けられたT細胞応答が誘発されることを意味する。前記誘導の前に、前記T細胞応答は存在していなかったか、検出レベル以下であったか、機能していなかった。T細胞応答の増強とは、本明細書では、特定の抗原に対するT細胞の全体的作用が、増強前のT細胞の全体的作用と比較してより高くおよび/またはより効率的になることを意味する。例えば、前記増強の後、前記抗原に向けられたより多くのT細胞が生成され得る。結果として、追加的に生成されたT細胞の作用が、前記抗原に対する全体的な作用を増加させる。あるいは、前記増強は、前記抗原に向けられたT細胞の作用の増加を含み得る。前記T細胞は、例えば、前記抗原とより強くおよび/またはより速く反応し得る。もちろん、前記強化の結果は、前記T細胞の作用の増加と共に追加のT細胞の生成でもあり得る。あるいは、前記増強は、追加のT細胞の生成、またはT細胞の作用の増加のみを含んでもよい。
【0075】
本明細書に記載の別の目的は、典型的には特定の標的、好ましくは腫瘍抗原または癌/腫瘍細胞または組織に対して、対象において免疫応答を生じさせる方法に関し、この方法は、その対象に本発明の式(I)で示される化合物またはそのような化合物を、典型的には有効量で含む本発明の組成物を注射することを含む。
【0076】
治療的免疫応答の検出は、ELISA、ELISPOT、遅延型過敏症応答、細胞内サイトカイン染色、および/または細胞外サイトカイン染色などの技術により、当業者が容易に決定することができる。
【0077】
本明細書で使用される「有効量または用量」または「治療有効量または用量」は、癌を、予防、除去、遅延するか、対象において前記疾患により引き起こされる、またはそれに関連する1つまたはいくつかの症状または障害を軽減または遅延させる、あるいは、患者(好ましくはヒト)において測定可能な免疫応答を誘導する、本発明の化合物の量を意味する。本発明の化合物およびその医薬組成物の有効量、より一般的には投与計画は、当業者によって決定および適合化され得る。有効用量は、慣用の技術を使用して、同様の状況下で得られた結果を観察することにより決定できる。本発明の化合物の治療有効用量は、治療または予防される疾患、その重さ、投与経路、併用される任意の療法、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴などに応じて異なる。
【0078】
典型的には、患者に投与される化合物の量は、ヒト患者について、約0.01mg/kg~500mg/kg体重の範囲であり得る。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、0.1mg/kg~100mg/kg、例えば0.5mg/kg~10mg/kgの本発明の化合物を含む。
【0079】
特定の態様において、本発明の化合物は、非経口経路、経口経路、または静脈内(IV)、腫瘍内(IT)または腹腔内(IP)注射により対象に投与することができる。本発明の化合物またはナノ粒子は、数日間連続して、例えば連続2~10日間、好ましくは連続3~6日間、毎日(1日1回)対象に投与することができる。前記治療は、1、2、3、4、5、6、または7週間、または2、3週間ごと、または1、2、3ヶ月ごとに繰り返されてもよい。あるいは、例えば1、2、3、4または5週間の2つの治療サイクルの間に任意に中断期間を設けて、いくつかの治療サイクルを実行することができる。本発明の化合物は、例えば、週に1回、2週間に1回、または月に1回の単回投与として投与することができる。治療は1年に1回または数回繰り返され得る。
【0080】
用量は、当業者が決定できる適切な間隔で投与することができる。量の選択は、投与経路、投与期間、投与時間、選択された式(I)で示される化合物の排出速度、または前記化合物と組み合わせて使用される様々な製品、患者の年齢、体重と健康状態、と患者の病歴、および医療において知られているその他の情報を含む複数の要因に依存する。
【0081】
投与経路は、さまざまな経路で実施できる。たとえば、経口でも非経口でもよい。
【0082】
典型的には、全身注射、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、皮下などによって実施される。医薬組成物は、上記の経路の1つまたはいくつかに適合している。医薬組成物は、好ましくは、注射により、または適切な無菌溶液の静脈内注入により、または消化管を介した液体または固体の投与形態で投与される。
【0083】
医薬組成物は、医薬的に適合性の溶媒またはビヒクル中の溶液として、または当該分野で公知の方法で固体ビヒクルを含む丸薬、錠剤、カプセル、粉末、坐薬などとして、場合により、持続性および/または遅延放出をもたらす投与形態またはデバイスを介して、製剤化することができる。このタイプの製剤としては、セルロース、脂質、炭酸塩またはデンプンなどの試薬が有利に使用される。
【0084】
製剤に使用できる試薬またはビヒクル(液体および/または注射可能および/または固体)は、賦形剤または不活性ビヒクル、すなわち薬学的に不活性で非毒性のビヒクルである。
【0085】
例えば、医薬用途に適合し、当業者に知られている、生理食塩水、生理学的、等張性および/または緩衝溶液を挙げることができる。組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、防腐剤などから選択される1つまたは複数の試薬またはビヒクルを含んでもよい。
【0086】
経口投与に適した本発明の製剤はそれぞれ、所定量の活性成分を含む、カプセル、サシェ、錠剤またはロゼンジなどの個別の単位の形態、粉末または顆粒の形態;水性液体または非水性液体の溶液または懸濁液の形態;または、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンの形態であってよい。
【0087】
非経口投与に適した製剤は、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性成分の無菌の油性または水性製剤を含むことが便利である。そのような製剤はいずれも、他の薬学的に適合性で無毒性の補助剤、例えば安定剤、酸化防止剤、結合剤、染料、乳化剤、または香料を含むこともできる。
【0088】
本発明の製剤は、薬学的に許容される担体および場合により他の活性成分または治療成分と共に、活性成分、即ち式(I)で示される化合物、好ましくは「IP2」を含む。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。これらの抗癌剤のほとんどの安全で効果的な投与方法は、当業者に知られている。さらに、それらの投与は標準的な文献に記載されている。
【0089】
本発明の別の目的は、本発明の式(I)で示される少なくとも1つの化合物、好ましくは「IP2」、および好ましくは少なくとも1つの別の抗癌剤、典型的には化学療法薬を別個の容器に含むキットである。このキットはさらに、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための、例えば、対象における癌の予防または治療、癌の転移の予防または治療、および/または癌の再発の予防または治療のための、本発明の組成物を調製するための説明書を含むことができる。
【0090】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の組成物を調製するための本発明のキットの使用に関する。
【0091】
別の特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法、特に患者における癌の治療、癌の転移予防、および/または癌の再発予防のための方法のいずれかを実施するのに適している。
【0092】
本発明のさらなる態様および利点は、単なる例示として考慮される、以下の実験の節と図面に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1図1:イソギンゲチン処置は、癌細胞におけるイントロン由来抗原の抗原提示を増加させる。(A)ヒト黒色腫細胞株A375、(B)ヒト肺癌細胞株A549、(C)正常肺線維芽細胞株MRC5の、2,5μMおよび6,25μMイソギンゲチンによる処置した後のB3Z特異的T細胞活性化。(D)マウス黒色腫細胞株B16F10の6,25μMおよび15μMイソギンゲチンで処理した後のB3Z特異的T細胞活性化。(E)マウス肉腫細胞株MCA205の15μMおよび25μMイソギンゲチンで処理した後のB3Z特異的T細胞活性化。
図2図2:イソギンゲチン処置は、癌細胞におけるイントロン由来抗原の抗原提示を増加させる。(A)グロビン-SL8-イントロン構築物、(B)グロビン-SL8-エクソン構築物、(C)オボアルブミン構築物で予めトランスフェクトしたMCA205細胞の6,25μM、15μM、25μMイソギンゲチンで処理した後のB3Z特異的T細胞活性化。(D)グロビン-SL8-イントロン構築物、(E)グロビン-SL8-エクソン構築物、(F)オボアルブミン構築物で予めトランスフェクトしたB16F10細胞の6,25μM、15μM、25μMイソギンゲチンで処理した後のB3Z特異的T細胞活性化。データは平均値±SEMとして示す。* P <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(対応のないスチューデントt検定)。
図3図3:イソギンゲチン処置は、in vivoで腫瘍成長を遅くする。(A)実験の設定。(B)MCA205グロビン-SL8-イントロン細胞をマウスの脇腹に皮下接種した。5日後および15日後に、6mg/kg、12mg/kgまたは18mg/kgのイソギンゲチンを腹腔内注射した。腫瘍サイズは、27日目まで3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの6匹の腫瘍サイズをマウスの面積(mm2)で表す。データは平均値±SEMとして示す。* p <0.05(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。
図4図4:イソギンゲチン誘導体IP2は、in vitroでイントロン由来抗原のMHCクラスI提示を効率的に増加させ、in vivoで免疫依存的に腫瘍の成長を抑制する。イントロン由来SL8抗原を発現するMCA205細胞を15μM、25μM、および35μMの、(A)IP2または(B)IM2P2、(C)生成物10で処理した後のB3Z特異的T細胞活性化。(D)MCA205グロビン-SL8-イントロン細胞をC56BL/7マウスの脇腹に皮下接種した。5日後と15日後、PBSまたは18mg/kgのイソギンゲチン、IP2、またはM2P2を腹腔内に注射した。腫瘍サイズは、27日目まで3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの6匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表す。データは平均値±SEMとして示す。* p <0.05、** p <0.01(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。(E)MCA205グロビン-SL8-イントロン細胞を、ヌードnu/nuマウスの脇腹に皮下接種した。5日後と15日後、PBS、18mg/kgのイソギンゲチンまたはIP2を腹腔内に注射した。腫瘍サイズは、27日目まで3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの6匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表す。データは平均値±SEMとして示す。
図5図5:イソギンゲチン誘導体の合成スキーム。
図6図6:イソギンゲチン誘導体の合成スキーム。
図7図7:スプライシング阻害は、癌細胞におけるエクソンおよびイントロン由来の抗原MHC-I提示を増加させる。(A)ヒト黒色腫A375、ヒト肺癌A549、または正常ヒト肺線維芽細胞MRC5細胞株(すべてイントロン由来SL8ペプチドおよびH2-Kb分子を一時的に発現させ、上流を2,5μMまたは6,25μMイソギンゲチンで18時間処理した)、または(B)マウス肉腫MCA205またはマウス黒色腫B16F10細胞株(両方とも、イントロン由来SL8ペプチドを一時的に発現させ、上流を6,25μM、15μMまたは25μMイソギンゲチンで18時間処理した)と共培養した後のB3Z SL8特異的T細胞活性化。スプライシングする必要のない、上流を6,25μM、15μMまたは25μMのイソギンゲチンで18時間処理した(C)エクソン由来SL8ペプチドまたは(D)Ova cDNA構築物を一時的に発現する、MCA205またはB16F10細胞との共培養後のB3Z活性化。T細胞アッセイを非飽和条件で実行し、結果でMHC-I分子の発現を考慮されることを保証するために、各条件でフリーのSL8ペプチドを追加した。各グラフは、少なくとも4つの独立した実験の代表である。データは平均値±SEMとして示す。* P <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(対応のないスチューデントt検定)。
図8図8:細胞表面でのH2-Kb分子の発現。(A)イソギンゲチンで処理したMCA205およびB16F10細胞でのH2-Kb発現のフローサイトメトリー分析。(B)イソギンゲチンで処理したA375、A549およびMRC5細胞で一時的に発現させたH2-Kb発現のフローサイトメトリー分析。
図9図9:イソギンゲチンスプライシング阻害剤は、イントロン由来SL8を有する腫瘍の成長を免疫依存的に減少させる。(A)実験設定。いずれもグロビンSL8イントロン構築物を安定的に発現する(B)肉腫MCA205または(C)黒色腫B16F10細胞の、または(D)MCA205野生型(WT)または(E)B16F10 WT細胞(免疫能のあるC57BL/6マウスの脇腹に皮下接種し、接種後5、10、15日目に、12mg/kgまたは18mg/kgのイソギンゲチンを腹腔内注射した)の成長。腫瘍サイズは、確立された倫理的エンドポイントに達するまで3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの6匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表す。免疫不全Nu/Nu ヌードマウスの脇腹に皮下接種し、接種後5、10および15日目に、マウスに18mg/kgのイソギンゲチンを腹腔内注射した、(F)MCA205グロビン-SL8-イントロン、(G)B16F10グロビン-SL8-イントロン、(H)MCA205 WTまたは(I)B16F10 WT腫瘍のサイズ(面積(mm2))。エンドポイントに到達する前の日のデータを示す。データは平均値±SEMとして示す。* p <0.05、** p <0.01(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。
図10図10:イソギンゲチン誘導体IP2およびM2P2(本明細書では「IM2P2」とも呼ばれる)の合成および活性。(A)イソギンゲチン、(B)IP2(IP2-6NaおよびIP2-4Na)および(C)M2P2化合物の分子構造。(D)B16F10グロビン-SL8-イントロンまたは(E)MCA205グロビン-SL8-イントロンを15μMイソギンゲチン、35μM IP2または35μM M2P2で48時間処理した。RNAを抽出し、スプライシングされていない(イントロン)およびスプライシングされた(エクソン)グロビン-SL8-イントロンRNAを増幅するプライマーを用いてqRT-PCRを実施した。データは、少なくとも3回の独立した実験の、2-ΔΔCtイントロンと2-ΔΔCtエクソンの比の平均値±SEMとして示す。15μMまたは35μMの(F)IP2または(G)M2P2で処理したMCA205またはB16F10細胞で実行したMTTアッセイ。データは、少なくとも3回の独立した実験の対照条件と比較した生存細胞の割合の平均値±SEMとして表す。* P <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(対応のないスチューデントt検定)。
図11図11:IP2治療は腫瘍の成長を抑え、生存期間を延長する。マウスの(A)肉腫MCA205または(B)黒色腫B16F10細胞株(いずれも、イントロン由来SL8ペプチドを一時的に発現させ、15μMまたは35μMのIP2(左パネル)またはM2P2(右パネル)で上流処理)と共培養した後のB3Z SL8特異的T細胞活性化。データは平均値±SEMとして示す。* P <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(対応のないスチューデントt検定)。いずれもグロビン-SL8-イントロン構築物を安定して発現する(C)MCA205(左パネル)または黒色腫B16F10細胞(右パネル)、または(D)MCA205 WT(左パネル)または(E)B16F10 WT(右パネル)(免疫能のあるC57BL/6マウスの脇腹に皮下接種し、接種後5、10、15日目に、18mg/kgのイソギンゲチン、M2P2またはIP2、または24 mg/kgまたは36 mg/kgのIP2を腹腔内注射した)の成長。腫瘍サイズは、確立された倫理的エンドポイントに達するまで3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの少なくとも6匹のマウスの面積(mm2)での腫瘍サイズを表する。データは平均値±SEMとして示す。* p <0.05、** p <0.01(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。(E)MCA205グロビン-SL8-イントロン細胞(免疫適格C57BL/6マウスの脇腹に皮下接種し、PBSまたは18mg/kgのM2P2またはIP2のイソギンゲゲチンを腹腔内注射した)のカプランマイヤープロット。ログランク(Mantel-Cox)テストを実施した。
図12図12:IP2は細胞表面でのH2-Kb分子の発現に影響を与えず、アポトーシスを誘発しない。IP2およびM2P2で処理した(A)MCA205および(B)B16F10細胞でのH2-Kb発現のフローサイトメトリー分析。(C)35μMまたは1000μMのIP2で18時間処理した、初期、後期、およびトータルの、アポトーシスMCA205およびB16F10細胞のフローサイトメトリー分析。
図13図13:IP2治療効果は免疫応答に依存する免疫不全Nu/Nuヌードマウスの脇腹に皮下接種し、5、10、15日目に18、24、36mg/kgのIP2を腹腔内注射した、(A)MCA205グロビン-SL8-イントロン(左パネル)、MCA205 WT(右パネル)、(B)B16F10グロビン-SL8-イントロン(左パネル)またはB16F10 WT(右パネル)の増殖曲線。(C、左パネル)免疫適格マウスの脇腹に接種後、5、10、15日目にPBSまたは24mg/kgのIP2で処理し、さらに3日ごとにin vivo抗CD8またはアイソタイプで処理した、MCA205グロビン-SL8-イントロンの増殖曲線。各線は、各グループの少なくとも6匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表する。Cの右パネルは、27日目の腫瘍の大きさを表している。データは、平均値±SEMで示している。* p <0.05、** p <0.01(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。(D)予めMCA205グロビンSL8イントロンを接種し、IP2(左パネル)またはイソギンゲチン(右パネル)で処理した無腫瘍C57BL/6マウスに100日以内に接種した、MCA205グロビン-SL8-イントロン細胞またはB16F10 WT細胞の増殖曲線。各線は、各グループの少なくとも4匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表する。
図14図14:IP2治療は、確立された腫瘍からの腫瘍成長を低減する免疫適格性C57BL/6マウスの脇腹に皮下接種した、グロビン-SL8-イントロン構築物を安定して発現する肉腫15×105 MCA205細胞の増殖。腫瘍を10日間進行させた後、ランク付けし、同等の腫瘍量のグループに割り当てた。腫瘍サイズに従って6匹のマウスを、腫瘍サイズ40mm2のグループ(正方形)、腫瘍サイズ50mm2のグループ(三角形)および腫瘍サイズ100mm2のグループ(円)の3つのグループにした。11日目に、すべてのマウスに24 mg/kgのIP2-4Naを腹腔内注射した。この処置を3~4日ごとに5回繰り返した。並行して、確立された倫理的エンドポイントに達するまで、腫瘍のサイズを3~4日ごとに評価した。各線は、各グループの6匹のマウスの腫瘍サイズを面積(mm2)で表す。
【実施例
【0094】
材料と方法
細胞培養
MCA205マウス肉腫細胞株は、標準条件下で、1%グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%FBS(Life Technologies)の存在下、RPMI 1640培地(Life Technologies)中、5%CO2下、37℃で培養する。B16F10マウス黒色腫細胞株、MRC5ヒト線維芽細胞株およびA375ヒト黒色腫細胞株を、標準条件下で、1%グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%FCSを含むDMEM培地(Life Technologies)中、5%CO2下、37℃で培養する。A549ヒト肺癌細胞株は、標準条件下で、1%Hepes、1%ピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSの存在下、DMEM/F12 + Glutamax I中、5%CO2下、37℃で培養する。安定なMCA205-グロビン-SL8-イントロン細胞株は、選択のため、2mg/ml G418(Life Technologiesより入手したジェネティシン)を添加して、MCA205細胞株と同じ条件下で培養する。安定なB16F10-グロビン-SL8-イントロン細胞株は、選択のため、2mg/ml G418(Life Technologiesより入手したジェネティシン)を添加して、B16F10細胞株と同じ条件下で培養する。SL8/Kb特異的(B3Z)T細胞レポーターハイブリドーマを、標準条件下で、1%グルタミン、0.1%β-ガラクトシダーゼ、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%FCSの存在下、RPMI 1640培地(Life Technologies)中、5%CO2下、37℃で培養する。
【0095】
T細胞アッセイ
MCA205およびB16F10マウス細胞株は、各製造元のプロトコルに従って、トランスフェクション試薬jetPRIME(Ozyme)またはGeneJuice(Millipore)を用い、プラスミドYFP-グロビン-SL8-イントロンまたはPCDNA3 emptyプラスミド(ネガティブコントロール)でトランスフェクトする。A375、A549およびMRC5ヒト細胞株は、製造元のプロトコルに従って、トランスフェクション試薬jetPRIME(Ozyme)を用い、マウスH2-Kb分子をコードするプラスミドを12時間トランスフェクトした後、プラスミドYFP-グロビン-SL8-イントロンでトランスフェクションする。トランスフェクションの24時間後、細胞を異なる用量のイソギンゲチン(Merk Millipore)、IP2またはIM2P2(本明細書では「M2P2」とも呼ばれる)で一晩処理する。次に、細胞をPBS 1Xで3回洗浄し、5×10細胞を1×10 B3Z細胞と共培養する。陽性対照ウェルには、4μg/mlの合成ペプチドSL8を添加する。次に、細胞を5%COで37℃にて一晩インキュベートする。細胞を1200rpmで5分間遠心分離し、PBS 1Xで2回洗浄し、次の溶解バッファーで振とうしながら4℃で5分間溶解する:0.2%TritonX-100、0.2%DTT、0.5M K2HPO4、0.5M K2HPO4。溶解物を3000rpmで10分間遠心分離し、上清を96ウェルオプティプレート(Packard Bioscience、Randburg、SA)に移す。33mMのメチルウンベリフェリβ-D-ガラクトピラノシド(MUG)を含む暴露緩衝液を添加し、プレートを室温で3時間インキュベートする。最後に、FLUOstar OPTIMA(BMG LABTECH Gmbh、Offenburg、Germany)を使用して、β-ガラクトシダーゼ活性を測定する。結果は平均±SEMとして表す。* P <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(対応のないスチューデントt検定)。
【0096】
腫瘍播種と治療
C57BL/6J雌マウスはHarlanから入手する。NU/NUヌードマウスは、Charles Riverから入手する。7週齢で、マウスの右脇腹に5×10 MCA205-グロビン-SL8-イントロン細胞または4×10 B16F10-グロビン-SL8-イントロン細胞を、マトリゲル(VWR)とともに皮下注射する。投与の5日後に、マウスを、PBS、イソギンゲチン(Merk Milllipore)、IP2またはIM2P2で腹腔内治療する。投与の15日後、マウスを再び同じ薬物で腹腔内治療する。腫瘍の面積を、27日目まで3~4日ごとに記録する。動物実験はすべて、フランスおよびヨーロッパの法律および規制に従って実施した。結果は平均±SEMとして表す。* p <0.05、** P <0.01、*** P <0.001(すべてのグループを比較するTukeyの多重比較検定によるANOVA)。
【0097】
結果
イソギンゲチン処置は、癌細胞におけるイントロン由来抗原の抗原提示を増加させる。
最近の研究において、発明者は、パイオニア翻訳産物(「PTP」)が、in vitroでの内因性MHCクラスI経路のペプチドの主要な供給源であることを示した。癌細胞表面での提示PTP由来抗原を調節するために、発明者は、黒色腫A375、肺癌A549、および正常線維芽細胞肺MRC5細胞株に対するイソギンゲチン処置の影響を試験した。その目的のために、すべての細胞は、MHCクラスI Kb分子およびβ-グロビン遺伝子構築物内のイントロンからのSL8エピトープをそれぞれ一時的に発現させる。図1A、1Bおよび1Cに示すように、天然のイソギンゲチン化合物は、試験した癌細胞株でイントロンPTP依存の抗原提示の増加を引き起こし、用量依存的な効果を示す。同様に、同じ実験を、マウスの腫瘍細胞株である、1つの黒色腫(B16F10)および1つの肉腫(MCA205)細胞株で行った。いずれのマウス細胞株も、β-グロビン遺伝子構築物内のイントロンに由来するPTP-SL8エピトープを一時的に発現させた。ヒト細胞株での以前の結果と一致して、イソギンゲチンは、マウス細胞株において、用量依存的効果を示し、PTP依存的抗原提示の増加を誘発する。これらの結果は、PTP抗原またはPTP由来抗原の産生と提示を、イソギンゲチン処理によって癌細胞株において積極的に調節できることを示している。発明者は、この分子をPTPの産生と提示に依存する特定の抗腫瘍免疫応答を強化するための能動的な免疫調節剤として使用できるという仮説を支持する。
【0098】
スプライシングイベントは、イソギンゲチン処理後の癌細胞におけるエクソンおよびイントロン由来の抗原提示の効率的な増加に必要である。
イソギンゲチンがイントロンコード領域の細胞表面でのSL8エピトープの提示を増加させるという事実は、pre-mRNAがスプライシングされた機構が対になっていないときの抗原提示の源であるという考えを支持する。そして、発明者は、イソギンゲチンが、エクソンコード領域からの抗原性エピトープの増加を誘発するが、スプライシングする必要のないcDNA構築物からは誘発しないと推測する。その目的のため、上記の両方のマウス細胞株は、β-グロビン遺伝子構築物内のエクソンからPTPs-SL8エピトープを一時的に発現するか、SL8エピトープがその右側にあるOva cDNAを一時的に発現させた。予想どおり、天然のイソギンゲチン化合物は、試験した癌細胞株においてエクソンおよびイントロン-PTP依存的な抗原提示の増加を引き起こし、用量依存的な効果を示し(図2A、2B、2D、2E)、一方、Ova cDNA構築物によってコードされたSL8エピトープの産生には効果を示さなかった(図2Cおよび2F)。これらの結果は、イソギンゲチンが癌細胞におけるPTP抗原またはPTP由来抗原の提示のブースターとして作用するためには、スプライシングが必要であることを示している。
【0099】
イソギンゲチン処置は、in vivoでの腫瘍成長を遅くする。
上記の結果は、エクソンまたはイントロン配列によってコードされるPTP依存性抗原の供給源とは無関係に、イソギンゲチンの天然物が、処置された腫瘍細胞株の細胞表面でのin vitroでの産生および提示を増加できることを示している。次の明白な疑問は、DMSOに溶解しなければならないイソギンゲチンが、in vivoで腫瘍の成長とCD8+ T細胞の増殖に同じ効果をもたらすかどうかを確認することであった。その目的のため、β-グロビン遺伝子のイントロンからのSIINFEKL(SL8)エピトープ(グロビン-イントロン-SL8)を安定して発現するMCA205肉腫細胞をマウスに皮下接種した。この接種の5日後、マウスに規定用量のイソギンゲチンを腹腔内にワクチン接種した。次いで、10日後に同じ用量を再度注射した。その間、腫瘍の成長を2~3日ごとにモニターした(図3A)。発明者は、6および18mg/kgのイソギンゲチンで処置したマウスで、接種後27日目に腫瘍成長の有意な50%の減少を観察した(図3B)。この効果に対する免疫応答の要件を評価するために、発明者は、以前に記載したのと同じ設定で免疫不全nu/nuマウスで18mg/kgのイソギンゲチン処置の影響を試験し、腫瘍成長に効果がないことを観察した(図4D)。これらの結果は、イソギンゲチン処置後の腫瘍サイズの縮小に、生体内での能動的な免疫応答の存在が必要であることを示している。発明者らは次に、抗腫瘍応答を増加させるために、イソギンゲチンの誘導体を生成することにした。事実、イソギンゲチンは水に不溶であり、DMSO溶媒にしか溶けないため、腹腔内の薬物動態の効率は低い。
【0100】
天然イソギンゲチン製品からの誘導体化合物:合成スキーム
毒性のある担体または共溶媒(DMSO)を使用せずに、イソギンクゲチンをより広範なin vivoでの検証に利用できるようにするには、その溶解度を高める戦略を見つける必要があると考えられた。本発明の化合物は、イチョウ(Ginko biloba L.)の葉から抽出される、より一般的にはビフラボノイドと呼ばれる、小さなポリフェノール分子である市販のイソギンゲチンから調製した。DMSOに溶解した天然物がマウスに十分に吸収されない可能性があることを考慮して、発明者は、天然化合物を共溶媒に溶解させるよりも優れた薬物動態を有する、スプライソソームの阻害剤および癌細胞株に対する能動的な免疫調節剤を意味する、その機能を保持する誘導体化合物を生成することにした。
【0101】
スキーム1(図5)に示される、IP2化合物(2および2’)の合成は、イソクロロゲチンからジエチルクロロホスファイトのin situ形成を用いたリン酸化により、1を得る。さらに、ヨードトリメチルシランによるエチルエステル保護基の切断によりリン酸中間体を得、これをすぐに水酸化ナトリウムで処理し、リン酸二ナトリウムプロドラッグ2および2’への実用的な経路が完結する。2および2’の水溶性は、親化合物であるイソギンゲチンの溶解度よりもかなり高いことがわかった。
【0102】
IM2P2(誘導体4)の合成は、スキーム1に示したように行った。1の残りの2つのフェノール基を、ヨウ化メチルを使用してアルキル化して化合物3を得る。これを、1から2および2’を調製するのと同様の条件下で処理してリン酸二ナトリウムプロドラッグ4を得る一方、塩基性条件下でも反応させて化合物5を得た。
【0103】
プロドラッグ8は、6から、C4位のフェノール基をリン酸化し、続いて7のエチル基をヨウ化トリメチルシリルで切断し、得られたリン酸と水酸化ナトリウムを水中で反応させることにより、3段階で合成し、リン酸ナトリウムプロドラッグ8を得た。
【0104】
スキーム1(図5参照)
【化7】
【0105】
塩基性条件下、大過剰(5当量)のヨウ化メチルでイソギンゲチンを処理すると、完全にメチル化された化合物11が得られた[スキーム2(図6)参照]。3当量のMeIを使用すると、カラムクロマトグラフィーで容易に分離されるトリアルキル化生成物9と10の混合物が生成した。イソギンゲチンと塩化ピリジニウムとの反応ではエーテル開裂が可能で、ポリフェノール化合物12が得られた。
スキーム2(図6参照)
【化8】
【0106】
イソギンゲチン誘導体IP2は、in vitroでイントロン由来抗原のMHCクラスI提示を効率的に増加させ、in vivoで免疫依存的に腫瘍成長を劇的に減少させる。
腫瘍細胞株に対する能動的な免疫調節剤としての新しい化合物を試験するために、発明者は、最初にそれらをインビトロアッセイで試験することを決めた。本明細書でともに「IP2」とも呼ばれる誘導体2および/または2’、および「IM2P2」と呼ばれる誘導体4、はいずれも水に溶解することができた。β-グロビン遺伝子のイントロンに由来するPTP-SL8エピトープを一時的に発現するMCA205細胞(グロビン-イントロン-SL8)を、15μM、25μMまたは35μMのIP2で処理した後、発明者は、PTP依存の抗原提示の増加を観察した(図4A)。対照的に、15μM、25μM、35μMのIM2P2(図4B)または化合物10の製品(図4C)で発明者のPTPエンコード構築物を発現するMCA205細胞を処理しても、発明者のPTP由来抗原の提示は増加しない。次に、発明者は、抗腫瘍成長および特定の抗腫瘍免疫応答の誘導因子に関して、これらの誘導体の効果をin vivoで調べることにした。その目的のために、β-グロビン遺伝子のイントロン設定からSIINFEKL(SL8)エピトープを安定的に発現するMCA205肉腫細胞(グロビン-イントロン-SL8)をマウスに皮下接種した。次に、この接種の5日後に、マウスの各グループにそれぞれ18mg/kgのイソギンゲチン、IP2またはIM2P2を腹腔内にワクチン接種した。10日後、同じ用量の各化合物を再び注射した。その間、腫瘍の成長を2~3日ごとにモニターした(図3A)。18mg/kgのIP2で処理したマウスのグループでは、18mg/kgのイソギンゲチンで処理したマウスのグループと比較して、腫瘍成長の劇的な減少が観察された(図4D)。並行して、反対に、18mg/kgのIM2P2で処置したマウスは、腫瘍成長の減少を示さなかった(図4D)。
【0107】
腫瘍成長の減少がPTP依存的な特定の抗腫瘍免疫応答によるものであることを実証するために、発明者はNu/Nu無胸腺ヌードマウスにおける化合物の効果に注目した。その目的のため、β-グロビン遺伝子(グロビン-イントロン-SL8)のイントロン設定からSIINFEKL(SL8)エピトープを安定的に発現するMCA205肉腫細胞をマウスに皮下接種した。次に、この接種の5日後に、マウスの各グループにそれぞれ18mg/kgのイソギンゲチン、IP2およびIM2P2を腹腔内ワクチン接種した。それから10日後に、同じ用量の各化合物を再び注射した。その間、腫瘍の成長は2~3日ごとにモニターした(図3A)。図4Eは、使用した化合物のいずれも、これらの免疫不全マウスの肉腫細胞株の腫瘍成長に効果を有し、スプライシング阻害剤である天然物イソギンゲチンの選択された誘導体が癌に対する能動的な免疫調節薬であるとされ新しい化学療法の治療として使用できるという事実をサポートしさらにその事実を明らかにするものである。
【0108】
考察
本発明は、IP2として本明細書で特定された生成物が抗腫瘍免疫応答、したがって腫瘍増殖に対して非常に好ましい効果を有することを初めて実証する。発明者らは実際に、天然物イソギンゲチンの特定の誘導体が、in vitroおよびin vivoで抗腫瘍免疫応答の強力な刺激物質であることを実証した。この種の作用機序を示すこのような小分子は前例のないものである。発明者のデータは、標的分子療法の枠組み内で新しい抗癌治療の適用に道を開くものである。
【0109】
Pre-mRNAスプライシングは、すべての哺乳類細胞の正常な機能に不可欠な重要なメカニズムである。過去数年間、いくつかの研究において、さまざまな癌における異常なスプライシング活性に関連する主要なスプライソソーム因子の突然変異や過剰発現の存在が報告された。数年前、発明者は、スプライソソームの阻害がMHCクラスI PTP依存性抗原提示を増加させるといういくつかの証拠も提供した。これらの発見は、抗癌治療の潜在的な標的としてスプライソソームに焦点を当てている。小分子がスプライソソームを阻害すること、特にスプライソソーム因子SF3B1機能を阻害することがすでに報告されている。これらの小分子の正確なメカニズムはまだ完全には理解されていないが、使用する化合物によっては腫瘍サイズを40~80%縮小することで癌治療に効果的であることが報告されている。これまでにヒトで試験された唯一のものはE7107である。これは毒性の問題のため中止された。本化合物は、SF3B1と相互作用することによりスプライソソームを阻害することが知られている。その研究において、発明者は、本明細書に記載の天然物イソギンゲチンの特定の誘導体化合物IP2を使用してスプライソソーム活性を調節することにより、特定の抗腫瘍免疫応答が誘導できるというin vitroおよびin vivoの証拠を提供する。
【0110】
スプライソソームの特定の成分を阻害するこれらの異なる化合物の効果を調べる代わりに、発明者らは、スプライソソーム複合体の形成を抑制することが報告されている別のクラスのインヒビターを調べることにした。イソギンゲチンは、スプライソソームのアセンブリの初期段階で干渉することが報告されており、強力な腫瘍細胞浸潤阻害剤であると報告されている。実際、イソギンゲチンはプレスプライソソームのA複合体がより大きな触媒前スプライソソームB複合体を形成することを阻害することが実証されている。発明者らは、In vitroおよびin vivoでイソギンゲチンの誘導体IP2を使用してできるだけ早くスプライソソームの形成を阻害することにより、PTP依存エピトープに対するCD8+ T細胞増殖を特異的に誘導することにより、抗腫瘍抗原提示が非常に有意に増加したことを実証した。発明者は、本明細書において、癌、特に黒色腫および肉腫に対する新しい化学療法剤としてIP2を使用できることを報告する。
【0111】
さらなる結果
スプライシング阻害は、癌細胞のイントロンとエクソンに由来する抗原の提示を増加させる
癌細胞は、細胞表面でMHCクラスI(MHC-I)分子に提示される、抗原性の低下とT細胞認識の回避につながるペプチドのプールと量を形成するさまざまな細胞内メカニズムを示す。発明者は、PTPがin vitroの内因性MHC-I経路のペプチドの主要な供給源であることを示した。さらに、彼らは、スプライシング阻害剤イソギンゲチンでHEK細胞を処理することにより、PTP依存抗原提示に対するスプライシング阻害の好ましい影響の最初の証拠を提供した。後者は、そのアセンブリの初期段階でスプライソソームを阻害することが報告されている。癌細胞株の抗原性と免疫認識を改善するために、発明者は、イソギンゲチンが癌細胞表面での腫瘍関連PTP由来抗原(TA-PTP)の発現と提示を積極的に調節できるかどうかを調べた。その目的のために、ヒト黒色腫細胞株A375、ヒト肺癌細胞株A549および正常ヒト線維芽細胞肺細胞株MRC5を、β-グロビン遺伝子構築物内のイントロンからMHC-I H2-Kb分子およびPTP-SL8エピトープを一時的に発現させ(グロビン-SL8-イントロン)、異なる濃度のイソギンゲチンで18時間処理した。すべての結果は、処置で細胞表面でのH2-Kb分子の全体的な発現の変調によって偏らないよう、SL8ペプチドの細胞外添加有り無しでのB3Z活性化の比率に基づいて表した。3つの細胞型で、イソギンゲチンでの処置は用量依存的にイントロン由来SL8抗原提示を増加させる(図7A)。使用したイソギンゲチンの濃度は、処置で生存率が80%を超えることが示されているため、ヒト細胞に対して毒性はなかった(table 1)。
【表1】
【0112】
並行して、グロビン-SL8-イントロン構築物を一時的に発現させ、ていたマウス黒色腫B16F10および肉腫MCA205細胞株で同じ実験を行った。前の結果と一致して、イソギンゲチンは用量依存的にイントロン由来のSL8抗原提示の増加を誘発する(図7B)。効率的な投与により、これらの細胞株の細胞生存率は50%を超える(table 2)。
【表2】
【0113】
PTP提示に対するイソギンゲゲチンの影響をさらに調べるために、マウス肉腫細胞株と黒色腫細胞株を両方とも、β-グロビン遺伝子構築物内のエクソンからPTP-SL8エピトープを一時的に発現する(グロビン-SL8-エクソン)か、Ova cDNAを一時的に発現させた。後者の構築物では、SL8エピトープが正しい設定で検出されるため、スプライシングの必要がない。発明者らは、イソギンゲチンがMCA205およびB16F10癌細胞株のエクソン由来SL8抗原提示を用量依存的に増加させ(図7C)、スプライシング阻害剤はOva cDNA構築物でコードされたSL8エピトープの産生に影響を与えないこと(図7D)を観察した。したがって、イソギンゲチンがPTP依存性の抗原提示に影響を与えるには、スプライシングイベントが必要と思われる。これは、MHC-I抗原提示経路のさらに下流ではなく、PTPの産生段階でのイソギンゲチンの作用を示唆している。これらの結果とともに、発明者は、細胞表面でのH2-Kb分子の発現がイソギンゲチンで処理した細胞株で異なる影響を受けること、すなわちMCA205では減少する(図8A、左パネル)、B16F10では増加する(図8A、右パネル)、ヒト細胞株では安定である(図8B)ことを示した。
【0114】
全体として、これらの結果は、天然物イソギンゲチンが、エピトープ設定とは無関係に、すなわちエクソン配列またはイントロン配列で、試験した細胞株とは無関係に、癌細胞におけるPTP由来抗原提示のブースターとして作用することを示している。このことは、癌細胞におけるMHC-I抗原の産生および提示のためのスプライシングイベントの重要性を明らかにした。最後に、発明者のデータは、スプライシングされた機構が対になっていない場合、pre-mRNAが抗原提示の源であるという考えを支持している。
【0115】
イソギンゲチン処置は、イントロン由来SL8エピトープが発現し、その作用が免疫応答に依存している場合、in vivoで腫瘍の成長を遅くする。
細胞表面での抗原の豊富さは、CD8+ T細胞応答の規模の大きさを決定し、免疫優性を定義する際の重要なパラメーターであることが実証されている(Doherty et al.、2006)。SL8ペプチドは、in vivoで免疫原性が高いことが広く示されている。インビトロでのSL8特異的T細胞活性化に注目して、発明者は、スプライシング阻害後の癌細胞表面でのSL8発現の豊富さの変化を観察した。この仮説をin vivoで試験するために、発明者は最初に、イントロン由来SL8ペプチドを発現する腫瘍の成長に対するイソギンゲチン処置の影響に注目した。その目的のために、グロビン-イントロン-SL8構築物を安定して発現するMCA205肉腫細胞およびB16F10黒色腫細胞の両方をマウスに皮下接種した。腫瘍接種後5、10、および15日目に、マウスに規定用量のイソギンゲチンを腹腔内注射し、腫瘍成長をモニターした(図9A)。MCA205グロビン-SL8-イントロン(MCA205 GI)腫瘍を有するマウスにおいて、発明者は、12および18mg/kgのイソギンゲチンで処理した場合、接種後27日目に腫瘍サイズの50%以上の有意な減少を観察した(図9B)。B16F10グロビン-SL8-イントロン(B16F10 GI)腫瘍の成長に対するイソギンゲチン処置の影響は、MCA205 GIよりも低いた、この薬物は依然として腫瘍の成長を大幅に遅らせる(図9C)。イソギンゲチン処置後のin vivoでのSL8の過剰発現と腫瘍成長の減少との関連を評価するために、発明者はMCA205またはB16F10野生型(WT)細胞を接種したマウスで同じ実験を行った。12および18 mg/kgのイソギンゲチンでの処置後も、MCA205 WT(図9D)またはB16F10 WT(図9E)腫瘍成長の有意な減少は観察されなかった。これらの結果は、免疫優性エピトープ(本明細書におけるSL8ペプチド)の発現は、イソギンゲチンがin vivoで腫瘍成長に影響を与えるために必要であることを示唆している。
【0116】
さらに、発明者は、イソギンゲゲチンが腫瘍の成長を抑えるための免疫応答の要件について評価した。免疫不全Nu/Nuヌードマウスに、グロビン-イントロン-SL8またはWTを安定して発現するMCA205またはB16F10細胞を皮下接種し、前述と同じ設定で処置した(図9A)。4種類の腫瘍のそれぞれの成長に対して、イソギンゲチン処置の効果は観察されなかった(図9F-I)。
【0117】
全体的に、これらの結果は、イソギンゲチン処置後の腫瘍サイズの減少には、in vivoでの活性な免疫応答の存在が必要であることを示しており、免疫優性エピトープの発現の増加が抗腫瘍免疫応答を促進することを示唆している。
【0118】
天然のイソギンゲチンの化合物誘導体(生成物IP2およびM2P2、後者は本明細書において「IM2P2」とも称される)は水溶性であり、スプライシングを阻害し、毒性が低い。
天然のイソギンゲチンの誘導体を合成し、スプライシングを阻害する能力、in vitroでPTP由来抗原を増加させる能力、およびin vivoで腫瘍成長を減少させる能力について試験した。誘導体IP2(図10BのIP2-6NaおよびIP2-4Naを参照)およびM2P2(図10C)は、イチョウ(Ginko biloba L.)の葉から抽出される、一般的にビフラボノイドと呼ばれる市販のイソギンゲゲチン(図10A)から合成した。図5に合成スキームを示す。簡単に言うと、IP2、即ち化合物2および2’(スキーム中の名称)の合成は、ジエチルクロロホスファイトのin situ形成を用いたリン酸化により、1を得た。さらに、ヨードトリメチルシランによるエチルエステル保護基の切断によりリン酸中間体を得、これをすぐに水酸化ナトリウムで処理し、リン酸二ナトリウムプロドラッグ2および2’への実用的な経路を完結させた。M2P2分子の合成では、化合物1の残りの2つのフェノール基をヨウ化メチルを用いてアルキル化し、化合物3を得た。化合物1から化合物2および2’を調製する同様の条件下で、化合物3を処理してリン酸二ナトリウムプロドラッグ4を得る一方、塩基性条件下でも反応させて化合物5を得た。
【0119】
IP2およびM2P2の水溶性は、親化合物であるイソギンゲチン(データは示さず)よりもかなり高いことが判明した。さらに、発明者は、MC2205およびB16F10細胞におけるグロビン-SL8-イントロン遺伝子産物のスプライシングを阻害するIP2およびM2P2の能力を試験した。興味深いことに、IP2とM2P2は、各細胞株で2つの異なるスプライシング阻害のパターンをもたらす。IP2処置は、イソギンゲチン処置のように、両細胞において非スプライシングRNA産物の存在を増加させる。対照的に、M2P2処理はB16F10細胞のスプライシングに影響を与えないが、IP2およびイソギンゲチン処理と比較してMCA205のスプライシングに強い影響を及ぼす(図10Dおよび10E)。したがって、IP2とM2P2は、スプライシングを阻害するメカニズムが異なるようである。重要なことに、発明者は、試験した遺伝子産物について、IP2のスプライシングパターンが、イソギンゲチンのパターンと類似していることを観察した。さらに、癌細胞は、例えば腫瘍抑制遺伝子の発現を妨げることにより、増殖に役立つスプライシング機構の欠損を獲得できることが示されている。これらの欠陥は、すべての腫瘍で同じ性質を持っているわけではないため、スプライシング阻害剤が異なった腫瘍タイプで効果が異なることを説明できる。IP2とM2P2はどちらも、試験した用量では、MCA205とB16F10 WT細胞に毒性を示さない(図10Fと10G)。全体として、発明者は、本明細書において初めて、水溶性であり、細胞生存率に影響を与えない用量で2つの異なるモデル細胞株においてスプライシングに異なる影響を与えることができる2つの新しい薬物を提供し、特定した。
【0120】
イソギンゲチン誘導体IP2は、in vitroでのイントロン由来抗原のMHC-I提示を効率的に増加させ、in vivoでの腫瘍成長を減少させ、生存期間を延長する。
イソギンゲチンと比較してIP2およびM2P2化合物の潜在的な免疫調節効果を試験するために、2つの分子をまずin vitroでPTP由来抗原のMHC-I提示を増加させる能力について試験した。その目的のために、MCA205およびB16F10細胞を、グロビン-イントロン-SL8構築物を一時的に発現させ、15μMまたは35μMのIP2またはM2P2で処理した。IP2で処置した場合、発明者がイソギンゲチン処理後に観察したのと同様、MCA205およびB16F10細胞でのイントロンSL8由来抗原提示が増加する(図11AおよびB、左パネル)一方、M2P2は。MCA205での提示が減少し、B16F10細胞では影響は見られない(図11AおよびBの右パネル)。これらの結果は、グロビン-SL8-イントロン遺伝子スプライシングを阻害するIP2およびM2P2のそれぞれの能力と興味深い相関関係がある。実際、M2P2は、B16F10において、スプライシングにもSL8抗原提示にも影響を与えない。逆に、M2P2はMCA205のスプライシングを強力に阻害し、SL8の提示に悪影響を及ぼす。これらの結果とともに、発明者らは、細胞表面でのH2-Kb分子の発現がIP2およびM2P2で処理された細胞株では影響を受けないことを示した(図12Aおよび12B)。したがって、イントロン由来のエピトープの提示にプラスの影響を与える処置には、スプライシングの厳密な調節が必要と思われる。これらの結果は、イソギンゲチン誘導体IP2が、天然物と同様にin vitroでPTP由来抗原の提示のブースターとして作用することを示している。
【0121】
次に、IP2およびM2P2分子のin vivoでの抗腫瘍効果を試験した。前にイソギンゲチン処置で行われたように、グロビン-イントロン-SL8構築物またはWTを安定して発現するMCA205肉腫細胞またはB16F10黒色腫細胞をマウスに皮下接種した。腫瘍接種後5、10、および15日目に、マウスの各グループをそれぞれ18mg/kgのイソギンゲチン、IP2またはM2P2で腹腔内処置した。この用量では、IP2による処置後、イソギンゲチン処置と比較してMCA205 GI腫瘍成長の有意な減少を観察したが、M2P2処置の影響は認められなかった(図11C、左パネル)。さらに、B16F10 GI腫瘍の成長の減少は、18 mg/kgのイソギンゲチンまたはIP2での処置により認められたが、M2P2は成長に対する影響は認められなかった(図11C、右パネル)。IP2処置は腫瘍の成長を抑制し、水溶性であるため、発明者はマウスに注射する用量を増やすことを決めた。IP2の用量を増やしても、24mg/kgでのMCA205 GIに対する抗腫瘍効果は改善しなかったが、36mg/kgでのB16F10 GIでは増大した(図11C)。驚くべきことに、イソギンゲチンおよびM2P2処置は、MCA205 WTまたはB16F10 WTのいずれの腫瘍成長にも影響を与えなかったが、IP2処置は両方の腫瘍成長を遅らせる(図11D)ことを示した。発明者は、IP2は高用量でも腫瘍細胞のアポトーシスを誘発しないことを確認した(図12C)。最後に、IP2処置はマウスの生存期間を延長することが示され、腫瘍接種の100日後も生存者の50%以上が生存した(図11E、下パネル)。同時に、イソギンゲチンで処置したマウスの約30%が生存した(図11E、中央のパネル)。M2P2処置は生存に対する影響は認められない(図11E、上のパネル)。
全体として、これらの結果は、in vitroで観察されたPTP由来抗原の提示の増加と処置後のin vivoでの腫瘍成長の減少との相関関係を示している。興味深いことに、イソギンゲチンとは対照的に、IP2処置は、PTPに由来する高度に免疫優性のSL8エピトープを有しない腫瘍の成長を遅らる。発明者は、スプライシング阻害剤IP2が、抗腫瘍応答を促進する細胞表面での免疫優性エピトープの出現を増大すると考える。
【0122】
IP2処置の有効性は免疫反応に依存し、長期にわたる抗腫瘍反応を引き起こす。
免疫系の要件、特に腫瘍に対するIP2の有効性に対するT細胞応答の要件を調べるために、発明者は、T細胞を欠損し、B細胞とNK細胞を欠損していない、Nu/Nu無胸腺ヌードマウスにおける効果に注目した。前にイソギンゲチンで試験したように、グロビン-イントロン-SL8構築物またはWTを安定して発現するMCA205またはB16F10細胞をマウスに皮下接種した。腫瘍接種後5、10、15日目に、マウスの各グループを、免疫適格マウスで観察された腫瘍増殖に対して最も効率的なIP2の用量で腹腔内処置した。したがって、MCA205GI、MCA205 WTおよびB16F10 GIまたはWTを有するマウスを、それぞれ18mg/kg、24mg/kgおよび36mg/kgで処置した。各条件で、腫瘍成長に対するIP2処置の影響は認められなかった(図13AおよびB)。
さらに、IP2の有効性に対するCD8+ T細胞の特定の要件を評価するために、発明者は、マウスにおけるin vivo CD8+ T細胞枯渇の影響を試験した。マウスにMCA205 GI細胞を皮下接種した後、抗CD8+ T細胞抗体またはアイソタイプ2A3による計画的な処置を行った。5日目、10日目および15日目にIP2処置を前と同様に投与した。興味深いことに、抗CD8+ T細胞抗体処置は、IP2処置の抗腫瘍効果を完全に無効にした(図13C)。したがって、この結果は、腫瘍成長に対するIP2処置の効果がCD8+ T細胞応答に依存していることを裏付けており、CD8+ T細胞応答は腫瘍細胞に対する抗原駆動型細胞傷害活性を裏付けている。
最後に、MCA205 GIを接種し、続いて上記のようにIP2で処置したマウスの約50%は、処置後に腫瘍がなくなった。最初の腫瘍接種の100日後、これらのマウスの右脇腹にMCA205 GI腫瘍細胞を、左脇腹にB16F10細胞を再接種した。B16F10腫瘍は時間とともに成長したが、MCA205 GIはマウスでは成長しなかった(図13D)。これらの結果は、IP2処置後、マウスがMCA205 GI腫瘍に特異的な長期抗腫瘍反応を発現したことを示している。
【0123】
IP2(IP2-4Na)処置は、確立された腫瘍からの腫瘍成長を低減する
特定の抗腫瘍CD8+ T細胞の増殖を促進することにより腫瘍成長の調節に対する特定のIP2の有効性を評価するために、発明者は、in vivoでの確立された腫瘍に対するIP2の影響を試験した。グロビン-イントロン-SL8構築物を安定して発現するMCA205肉腫腫瘍細胞(15.105)を皮下注射し、10日間進行させた後、IP2処置の開始前にランク付けして同等の腫瘍量のグループに割り当て、腫瘍サイズ40 mm2、50 mm2、100 mm2の3つのグループにした。その後、3~4日ごとに、各グループのマウスをそれぞれ24mg/kgのIP2で腹腔内処置した。この用量では、試験したグループに関係なく、非処置のマウスと比較して、IP2処置後に、MCA205 GI腫瘍成長の顕著な減少が観察された(図14)。腫瘍サイズが100mm2(丸印)に達した場合でも、24 mg/kgのIP2を5回投与すると、未処置のマウス(黒丸印)と比較して、生存期間が約30日間長くなり有意な腫瘍退縮を誘発することができた(グレーの丸印)。
結論として、免疫調節剤としてIP2を使用するこれらすべての実験は、この分子が長期抗腫瘍応答を誘導することにより、マウスが非常に早期に処置される場合(腫瘍が触知できる場合)に完全な腫瘍拒絶を誘導するのに効率的であることを示し、また、IP2処置が確立された腫瘍の腫瘍成長を減少させることができることを示している。
【0124】
全体として、これらの結果は、イソギンゲチンやIP2などの特定のスプライシング阻害剤が抗腫瘍免疫応答を積極的に調節する能力を明らかにしている。さらに、これらの結果によって、in vitroおよびin vivoでPTP由来抗原が効率的に提示されCD8+ T細胞により認識されること、および細胞表面での抗原提示の量的または質的変化が癌に対するCD8+ T細胞応答につながり得ることが確認される。
【0125】
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