(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】電流を放出するための放電装置
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20220323BHJP
H01R 39/27 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H02K13/00 U
H01R39/27
(21)【出願番号】P 2019565950
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2018062854
(87)【国際公開番号】W WO2018219658
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】102017209340.4
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518329468
【氏名又は名称】シュンク・カーボン・テクノロジー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Schunk Carbon Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Au 62,4822 Bad Goisern,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】フーバー, フロリアン
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-133913(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01136340(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第10013491(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015110428(DE,A1)
【文献】特開2009-148034(JP,A)
【文献】特開2001-305896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
H01R 39/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(11、67、81、84)を伴って実現される機械のロータ部品から、機械のステータ部品へと電流を放出するための放電装置(10、66、78、83、93、98)であって、接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)と、支持体(13、27、34、70、88)と、スプリング機構(14)とを備え、前記支持体がステータ部品に導電態様で接続可能であり、前記接点要素が主にカーボンから形成され、前記接点要素が、軸方向に移動可能な態様で前記支持体上に受け入れられるとともに、前記支持体に導電態様で接続され、前記接点要素の摺接面(15、26、45、58、80)と前記シャフトの軸方向シャフト接触面(16、82)との間に導電性摺動接点(17)をもたらすべく前記スプリング機構によって前記接点要素に接触力を印加でき、前記摺接面が摺動接触をもたらすのに役立つ、放電装置(10、66、78、83、93、98)において、
前記接点要素がディスク形状を成し、前記摺接面は、少なくとも環状であるとともに、前記シャフト接触面に対して同軸的に配置可能であり、前記支持体がベースプレート(21、28、35、71、89)を有し、スプリング要素が前記接点要素の接触圧側面(19)と単に接触した状態で前記ベースプレートと接触圧側面(19)との間に配置され、前記接触圧側面は、前記摺接面を有する
前記導電性摺動接点側から離れる方向を向く
前記ディスク形状の接点要素の外端面であることを特徴とする放電装置(10、66、78、83、93、98)。
【請求項2】
前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は、一体部品を成して実現され、主にカーボンから成ることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記支持体(13、27、34、70、88)は、スチール、アルミニウム、銅、又は、これらの材料の合金を含めて、金属から形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記支持体(13、27、34、70、88)及び前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は共に合わさって前記接点要素のための回転防止ロック(42)を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項5】
前記スプリング機構(14)は、螺旋スプリング、圧縮スプリング、ディスクスプリング(18、77、90)、リーフスプリング、円錐スプリング、環状スプリング、又は、ダイヤフラムスプリングを含めて、スプリング要素を有し、前記スプリング要素が前記摺接面(15、26、45、58、80)に対して同軸的に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項6】
前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は、異なる材料混合物を有する少なくとも2つの層(95、96、100、101、102)から構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項7】
前記層(95、96、100、101、102)が軸方向で背面を合わせて形成され、前記摺接面(15、26、45、58、80)は、60wt%未満の銅含有量を有する摺動層(95、100)によって形成され、前記接触圧側面(19)は、80wt%を超える銅含有量を有する接合層(96、101)によって形成され、前記摺動層と前記接合層との間に拡張層(102)が形成されることを特徴とする請求項6に記載の放電装置。
【請求項8】
前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は、焼結により前記層(95、96、100、101、102)間に輪郭を成す移行領域(97)を伴って実現されることを特徴とする請求項6又は7に記載の放電装置。
【請求項9】
前記支持体(13、27、34、70、88)は、軸方向に延びる少なくとも1つの案内要素アセンブリ(39)を有し、この案内要素アセンブリ(39)上で前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)が軸方向に摺動できることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項10】
前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は、その外周(41、54、92)に、前記案内要素アセンブリ(39)内に挿入される案内輪郭を有することを特徴とする請求項9に記載の放電装置。
【請求項11】
前記接点要素(12、24、31、43、46、49、51、53、57、61、63、74、79、87、94、99)は、前記案内要素アセンブリ(39)又は前記シャフト(11、67、81、84)の案内ピン(85)が係合する案内凹部(23、33、47、50、52、56、62)を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の放電装置。
【請求項12】
前記案内凹部(23、33、47、50、52、56、62)及び前記案内要素アセンブリ(39)が対応する断面を有することを特徴とする請求項11に記載の放電装置。
【請求項13】
前記案内要素アセンブリ(39)が前記摺接面(15、26、45、58、80)と同軸的に配置されることを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項14】
前記案内要素アセンブリ(39)は、少なくとも1つの案内要素(22、29、36、73)を有することを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項15】
前記案内要素(22、29、36、73)は、前記支持体(13、27、34、70、88)のベースプレート(21、28、35、71、89)と一体である又は前記ベースプレートに差し込まれることを特徴とする請求項14に記載の放電装置。
【請求項16】
前記支持体(13、27、34、70、88)が一体部品を成して実現されることを特徴とする請求項14又は15に記載の放電装置。
【請求項17】
前記案内凹部(23、33、47、50、52、56、62)の内面が前記案内要素(22、29、36、73)の外面(30)と導電接触することを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項18】
前記案内要素(22、29、36、73)は、前記シャフト接触面(16、82)に対して同心的に前記支持体(13、27、34、70、88)上に配置されることを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項19】
前記案内要素は、前記シャフト接触面に対して偏心して前記支持体上に配置されることを特徴とする請求項14から18のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項20】
径方向に延びる少なくとも1つの溝(60、64)が前記摺接面(58)に形成されることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項21】
前記接点要素(53、87)は、少なくとも1つの導電撚り配線(55、91)又は可撓性の平坦な金属テープによって前記支持体(88)に接続されることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項22】
前記摺接面(80)は錐体の形状を成し、それに対応して形成されるシャフト接触面(82)と接触するようになることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の放電装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の放電装置を備える機械(10、66、78、83、93、98)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械のロータ部品、特にシャフトを伴って実現されるロータ部品から、機械のステータ部品へと電流を放出するための放電装置、及び、放電装置を備える機械に関し、放電装置は、接点要素と、支持体と、スプリング機構とを備え、支持体がステータ部品に導電可能な態様(以下、「導電態様」と称する)で接続可能であり、接点要素が主にカーボンから形成され、接点要素は、軸方向に移動可能な態様で支持体上に受け入れられるとともに、支持体に導電態様で接続され、接点要素の摺接面とシャフトの軸方向シャフト接触面との間に導電性摺動接点をもたらすべくスプリング機構によって接点要素に接触力を印加でき、前記摺接面が摺動接触をもたらすのに役立つ。
【背景技術】
【0002】
前述の種類の放電装置は、従来技術から様々な実施形態で知られている。特に、カーボンブラシを使用して低周波直流電流を放出することが知られており、前記カーボンブラシは、シャフトの周囲で径方向に分布してスリップリング上に配置されるとともに、接続撚り配線を介してステータに電気的に接続される。支持体又はブラシホルダに受け入れられるカーボンブラシは、低い電気抵抗により電流を放出することができるため、軸受本体又は軸受リングに対する表面損傷を引き起こす可能性のあるシャフトの支持ポイントを横切る望ましくない電流経路(放電)によるスポット溶融を回避できる。
【0003】
用語「シャフト」は、用語「ロータ部品」又は「車軸」に関する同意語として使用される。そのため、用語「シャフト」は、それを介して機械の固定されたステータ部品又は機械部品へと電流を放出できる全ての回転機械部品を指す。
【0004】
また、放電装置は、交流電流又は動作電流が車軸を通じて流れ得る鉄道技術において頻繁に使用される。例えば、ドイツ特許第10 2010 039 847号明細書は、導電性のエンドキャップがシャフト又は一対の車輪の車軸の軸方向端部に装着されるとともにブラシホルダにより支持されてシャフトに対して軸方向に配置される複数のカーボンブラシと接触させられ得る放電装置を開示する。各カーボンブラシは、撚り配線を介して接地ケーブルに対して直接に接続され、また、カーボンブラシの摺接面に対して接触力を及ぼすためにスプリングが使用される。
【0005】
自動車両などの電気機械では、一般に、電流を放出するための同様の手段が必要とされる。モータ駆動シャフト又は接続されたギアシャフト又は他の機能的構成要素では、連続的に変動する交流電圧又は交流電流及び高周波電流パルスが生じる可能性があり、それにより、ロータシャフト又はギアシャフトの軸受ポイントを損傷させる可能性もあり、そのため、放電装置が一般に必要とされる。しかしながら、既知の放電装置は、それらが設計により多くの設置スペースを要するという不都合を有する。カーボンブラシの代わりにファイバ又はワイヤメッシュが使用される解決策が知られているが、ファイバ及びワイヤメッシュは、摺動接点の非常に小さい接触面に起因して高い境界抵抗を有し、僅かな電流しか放出できない。しかしながら、シャフトにより大きな接触面を形成するためには複数のカーボンブラシが必要とされ、それぞれのカーボンブラシは、それらがどのように配置されるかにより、ブラシホルダを必要とし、比較的大きな設置スペース及び対応する設置作業を伴う。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、低い境界抵抗を有するとともに、設置が容易で、僅かな設置スペースで済む放電装置を提案することである。
【0007】
前記目的は、請求項1の特徴を有する放電装置と、請求項23の特徴を有する機械とによって達成される。
【0008】
機械のロータ部品、特にシャフトを伴って実現されるロータ部品から、機械のステータ部品へと電流を放出するための本発明に係る放電装置は、接点要素と、支持体と、スプリング機構とを備えている。支持体はステータ部品に導電態様で接続可能である。接点要素は主にカーボンから形成されて、軸方向に移動可能な態様で支持体上に受け入れられるとともに、支持体に導電態様で接続されている。接点要素は、シャフトと接触する摺接面を備えており、該摺接面とシャフトの軸方向シャフト接触面との間に導電性摺動接点をもたらすべく、スプリング機構によって接点要素に接触力が印加される。前記摺接面が摺動接触をもたらすのに役立つ。接点要素はディスク形状を成し、摺接面が、少なくとも環状であるとともに、好ましくは円形であり、シャフト接触面に対して同軸的に配置可能である。支持体はベースプレートを有し、スプリング要素が、ベースプレートと接点要素の接触圧側の面との間に配置される。前記接点要素の前記接触圧側の面(以下、「接触圧側面」と称する)は、摺接面を有する接触面側から離れる方向(接触面の反対側)を向いている面である。
【0009】
したがって、放電装置は、機械の回転シャフト又は車軸に装着されるように構成される。放電装置は、シャフトの軸方向の端部に配置されてもよく、シャフトの軸方向端部又はシャフトの端面にあるシャフトの軸方向シャフト接触面と接点要素との間で接触を確立することによって導電性摺動接点をもたらしてもよい。このとき、スプリング機構を用いて、シャフトの回転軸の方向に作用する接触力を接点要素に印加することができ、それにより、接点要素の摺接面がシャフト接触面に押し付けられる。接点要素がディスク形状を成すため、すなわち、接点要素がディスク又はプレートの形状を成して実現されるため、従来の接触ストリップと比べて設置スペースを節約できる。これは、接点要素がその軸方向に関して比較的短い又は薄いからである。更に、接点要素のディスク形状又はプレート形状は、少なくとも環状の摺接面を伴う接点要素を実現できるようにし、その結果、摺接面をシャフト接触面に対して同軸的に配置できる。摺接面は、シャフト又はシャフト接触面の回転する結果として、円形形状となる。したがって、低い境界抵抗の摺接が可能となる比較的大きい摺接面を実現できる。しかしながら、接点要素の輪郭が摺接面を越えて突出するように接点要素のディスク形状又はプレート形状を選択することもできる。この場合、接点要素を多角形にすることもできるが、その場合も依然として円形の摺接面を有する。大きい摺接面により摺動接触の磨損が減少するため、接点要素を、従来技術で知られている摺接面が小さく、長さが長く、かつかなり速く摩耗する接点要素ではなく、ディスク形状とし、または薄くすることができる。また、単一のディスク形状の接点要素で十分に大きい摺動接触をもたらすことができるため、低い境界抵抗を達成することができ、複数の接点要素をシャフトに装着する必要がない。したがって、放電装置は、僅かな設置スペースしか必要とせず、設置も容易である。
【0010】
本発明に係る支持体はベースプレートを有し、該ベースプレートと接点要素の接触圧側面との間にスプリング要素が配置され、前記接触圧側面は、摺接面を有する接触面側から離れる方向を向く。その結果、スプリング要素は、単にベースプレートと接点要素との間に配置される。放電装置の特に簡単な実施形態において、放電装置は、互いに差し込まれ得る僅か3つの構成要素から構成されてもよい。これは、放電装置の組み立てを特に簡単にする。スプリング機構又はスプリング要素がディスクスプリングなどの特に平坦なスプリングである場合、放電装置の設置スペースを更に一層減らすことができる。ベースプレートは、単にネジ接続、プラグ接続、又は、接着接続によって機械のステータ部品に取り付けられ得る。また、ステータ部品に対する前記接続によって又はベースプレートに対する接地ケーブルの直接的な接続によってもベースプレートの導電接続を実現することもできる。
【0011】
ディスク形状の接点要素の外径又は最大外径は、接点要素の厚さの倍数であってもよい。接点要素の外径/厚さ比率は、2:1、3:1、4:1、5:1又は10:1であってもよい。
【0012】
例えば、シャフトの軸方向端部に対する接点要素の摺接面又は端面は、接点要素がその径方向寸法において、軸方向端部でシャフトの直径を越えて突出するようなサイズを有してもよい。更に、摺接面が完全な円の形態を成してもよい。接点要素は、その径方向サイズがシャフトの軸方向端部の直径に近づく又は対応するように構成されてもよく、これは、それにより、特に大きい摺動接点を形成できるからである。
【0013】
接点要素は、一体部品として実現されてもよく、また、主にカーボンから構成されてもよい。例えば、接点要素は、プレス加工及び焼成又は焼結によって形成されるカーボン成形体であってもよい。接点要素は、グラファイト、カーボンブラック、カーボンファイバ、又は、これらの材料の混合物から構成されてもよく、また、金属鉄、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、銀、アルミニウム、及び/又は、クロムの粒子、及び、結合剤又は結合相を含んでもよい。
【0014】
支持体は、金属、好ましくは、スチール、アルミニウム、銅、又は、これらの材料の合金から構成されてもよい。この場合、例えば射出成形により、又は、これらの材料から形成される半完成品の簡単な機械的加工により、支持体を低コストで大量に容易に製造できる。支持体は、例えば螺合によって固定された導電態様で機械のステータ部品又はハウジング部品に直接に接続されてもよい。また、接地ケーブルを支持体に容易に取り付ける又は設置することができる。支持体は、一体部品を成して又は複数部品で実現されてもよい。
【0015】
支持体及び接点要素は互いに合わさって、接点要素の回転防止ロックを形成するようにしてもよい。この方法により、支持体をステータに固定するよう取り付けるとともに、接点要素を、回転シャフトとの接触状態を確保しつつ回転しないように固定された態様で、支持体上に配置することができる。さもなければ、接点要素は、特に摺接面の環形状及び同軸配置に起因して、シャフトと共に回転する場合があり、このことは、シャフトと摺動接触しないことを意味する。回転防止ロックは、接点要素が支持体上で軸方向に移動でき、且つ支持体に対する接点要素の径方向移動が防止されるように、接点要素の形状がぴったりとフィットする態様で支持体上に収容することによって実現され得る。
【0016】
スプリング機構は、スプリング要素、好ましくは、螺旋スプリング、圧縮スプリング、ディスクスプリング、リーフスプリング、円錐スプリング、環状スプリング、又は、ダイヤフラムスプリングを有してもよく、このスプリング要素は、摺接面に対して又はシャフトの回転軸に対して同軸的に配置されてもよい。このようにすることにより、スプリング機構を用いてシャフトの回転軸の方向で作用する接触圧力又はスプリング力を接点要素に及ぼすことができ、したがって、接触力をもたらすことができる。
【0017】
接点要素は、異なる材料混合物を有する少なくとも2つの層から構成されてもよい。そのため、接点要素は、異なる物理特性、したがって異なる機能性を有する少なくとも2つの層を有してもよい。
【0018】
層が軸方向で背面を合わせて形成されてもよく、この場合、摺接面は、60wt%未満の銅含有量を有する摺動層によって形成されてもよく、また、接触圧側面は、80wt%を超える銅含有量を有する接合層によって形成されてもよく、好ましくは、摺動層と接合層との間に拡張層が形成されてもよい。例えば、接合層は、最大で9wt%のスズ又は亜鉛の添加と僅か3wt%のグラファイト含有量とを伴って90~99wt%の銅含有量を有してもよく、これにより、接合層が半田付け可能及び溶接可能となる。このようにすると、接合層は、無鉛半田との特に良好な湿潤性を呈し、溶接可能にもなる。更に、接合層は100MPaを超える高い曲げ強度を有し、これは、引張、剪断、及び、圧縮の機械的応力に対する高い耐性を接合層に与える。摺動層も50wt%以下の銅含有量を有してもよく或いは更には銅が完全に無くてもよい。これは、僅かな摩耗で良好な摺動特性をもたらし、したがって、長い寿命及び化学安定性をもたらす。構造的に、異なる層は、それらの等方性/異方性に関して異なってもよい。接合層が等方性であってもよく、一方、摺動層が等方性又は異方性のいずれかであってもよい。この場合、特に摺動面と平行な好ましいグラファイトの配向性により、摺動層で使用されるグラファイトの潤滑効果を最適に使用できる。等方性/異方性によって摺動層の熱膨張挙動を調整できる。随意的な拡張層は、摺動層及び接合層の熱膨張係数間の任意の差を釣り合わせるのに役立ち得る。
【0019】
接点要素は、焼結により層間に輪郭を成す移行領域を伴って実現されてもよい。接点要素が焼結により形成される場合には、それに応じて選択される粉末混合物からそれぞれの層を容易に形成することができる。更に、それぞれの層間の移行領域に輪郭が形成され、それにより、層が軸方向でかみ合ってもよい。最初に、金型において対応して輪郭付けられたダイを用いて第1の層を凝集し、その後、粉末混合物の形態で第2の層を充填してそれを凝集することによって、輪郭を形成することができる。
【0020】
支持体は、軸方向に延びる少なくとも1つの案内要素アセンブリを有してもよく、この案内要素アセンブリ上で接点要素を軸方向に摺動させることができる。案内要素アセンブリは、軸方向で又はシャフトの回転軸の方向で連続するプロファイルを形成してもよく、それにより、接点要素の軸方向移動性が確保される。案内要素アセンブリの軸方向の長さは、常に、接点要素がスプリング機構によって軸方向に移動されている際に接点要素が案内要素アセンブリから外れることなく接点要素を磨損によって部分的に又は完全に消耗できるようになっていてもよい。
【0021】
接点要素は、その外周に、案内要素アセンブリ内に挿入される案内輪郭を有してもよい。したがって、案内要素アセンブリは、接点要素の外周を部分的に又は完全に取り囲んでもよい。接点要素の外周又は案内輪郭は、多角形或いは部分的に又は完全に円形であってもよい。例えば、案内要素アセンブリが係合する切り欠き又は溝が外周に軸方向で形成されてもよい。原理的には、接点要素は、それがその外周で案内要素アセンブリのみによってベースプレート上に支持されるように構成されてもよい。
【0022】
接点要素は、案内要素アセンブリ又はシャフトの案内ピンが係合できる案内凹部を有してもよい。案内凹部は、接点要素の長手方向軸に沿って形成される孔であってもよく、したがって、接点要素は環状の摺接面を形成する。案内凹部は、接点要素の貫通穴又は接点要素の止まり穴形状の凹部であってもよい。随意的に又はもう1つの方法として、案内凹部は、接点要素の中心孔であってもよく、それにより、接点要素をシャフトの案内ピン上へ又は段付き直径上へ押し込むことができる。したがって、シャフトは、接点要素を径方向で固定するのに役立ち得る。
【0023】
案内凹部及び案内要素アセンブリが対応する断面を有してもよい。これにより、接点要素を案内でき、したがって、軸方向に移動できる。また、選択された断面形状に応じて、対応する断面が回転防止ロックを形成してもよい。例えば、断面は、円形、正方形、長方形、又は、多角形であってもよい。したがって、円形孔の代わりに、多角形の案内凹部及びそれに対応して形成される案内ピンが設けられてもよく、これらは協働して回転防止ロックを形成する。この場合、案内凹部と案内要素アセンブリとの間に隙間嵌めが形成されてもよい。
【0024】
案内要素アセンブリが摺接面と同軸的に配置されてもよい。これは、接点要素を常にシャフトの回転軸に対して同心的にシャフトの軸方向端部に配置できるようにする。その結果、摺接面の重心は、常に、シャフト接触面の重心に対応でき、その場合、両方の重心をシャフトの回転軸上に位置させることもできる。また、接点要素が回転対称であってもよい。
【0025】
案内要素アセンブリは、少なくとも1つの案内要素、好ましくは複数の案内要素を有してもよい。案内要素は、例えば、支持体の単純なピン形状の突起であってもよい。更に、案内要素が支持体のネジであってもよい。案内要素は、多角形断面を伴う突起であってもよく、また、基本的に任意の断面形状を有してもよい。更に、適切な場合には、前述の断面形状を有する複数の案内要素が使用されてもよい。
【0026】
案内要素は、支持体のベースプレートと一体であってもよく又はベースプレートに差し込まれてもよい。簡単な実施形態において、案内要素は、ベースプレートの孔内に単に挿入されるピンであってもよい。同様に、ピン形状の案内要素が突起の態様でベースプレートと一体であってもよい。ベースプレートは、ネジが挿入される又は螺合される中心孔を有してもよい。
【0027】
支持体が一体成形された案内要素を有する場合には、支持体が一体部品を成して実現されてもよい。支持体は、単に、射出成形によって又は半完成品の機械加工によって形成されてもよい。案内凹部の内面が案内要素の外面と導電接触してもよい。これにより、低い境界抵抗で電流を接点要素から支持体へ伝えることができる。例えば、案内凹部が孔である場合、孔の内面は、案内要素としてのピン又はジャーナルの外面と導電接触してもよい。内面及び外面又はそれぞれの直径は、常に低い境界抵抗を確保する隙間嵌めを形成してもよい。単に、接点要素のカーボンによって、及び、その結果有利な内面及び外面の摩擦対によって、軸方向移動可能性が確保されてもよい。
【0028】
案内要素は、シャフト接触面に対して同心的に支持体上に配置されてもよい。その結果、案内要素は、常に、シャフト接触面と同心的に配置されてもよい。
【0029】
これに加えて又は代えて、案内要素は、シャフト接触面に対して偏心して支持体上に配置されてもよい。しかしながら、その場合には、複数の案内要素が存在すべきであり、また、前記案内要素は、案内要素が常にシャフトの回転軸に対して一様に、例えば互いに等距離で分布されるような態様でシャフト接触面に対して同心的に支持体上に配置されるべきである。
【0030】
軸方向に延びる少なくとも1つの溝が摺接面に形成されてもよい。更に、中心から径方向外側に延びる複数の溝が、例えば、摺接面に形成されてもよい。溝は、接点要素の最大摩耗深さに対応する深さを有してもよい。溝を用いて、形成された摺動接点上の油又は擦り減った粒子が収集されて溝内で径方向に排出されてもよい。溝は、螺旋状に延びてもよく、或いは、摺接面の中心に対してパッサン(passant)の態様で配置されてもよい。
【0031】
電流の特に良好な放出は、接点要素が少なくとも1つの導電撚り配線又は可撓性の平坦な金属テープによって支持体に接続される場合に可能になる。撚り配線は、製造中に接点要素内に配置され得る、或いは、例えば半田又は接着によって接点要素に取り付けられ得る。好ましくは、接点要素は、接点要素の外周に取り付けられて等距離で離間される複数の撚り配線を有する。撚り配線は、端子又はネジを用いて或いは半田付けによって容易に支持体に取り付けられてもよい。撚り配線を使用することにより、境界抵抗を更に一層低減できる。また、撚り配線は、機械のステータ部品に直接に接続されてもよい。本発明に係る機械は、本発明に係る放電装置を有する。機械の有利な実施形態は、装置請求項1に従属する請求項の特徴から明らかである。
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の有利な実施形態について更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】シャフト上の放電装置の第1の実施形態の断面図である。
【
図2】放電装置の第1の実施形態に係る接点要素の平面図である。
【
図4】放電装置の第1の実施形態に係るベースプレートの平面図である。
【
図8】ベースプレートの第2の実施形態の平面図である。
【
図10】接点要素の第3の実施形態の平面図である。
【
図12】接点要素の第4の実施形態の平面図である。
【
図14】接点要素の第5の実施形態の平面図である。
【
図16】接点要素の第6の実施形態の平面図である。
【
図18】接点要素の第7の実施形態の平面図である。
【
図20】接点要素の第8の実施形態の平面図である。
【
図22】接点要素の第9の実施形態の平面図である。
【
図24】接点要素の第10の実施形態の平面図である。
【
図26】シャフト上の放電装置の第2の実施形態の断面図である。
【
図27】シャフト上の放電装置の第3の実施形態の断面図である。
【
図28】シャフト上の放電装置の第4の実施形態の断面図である。
【
図29】シャフト上の放電装置の第5の実施形態の断面図である。
【
図30】シャフト上の放電装置の第6の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、シャフト11上の放電装置10の断面図を示す。放電装置10は、接点要素12、支持体13、及び、スプリング機構14から構成される。接点要素12は、主にカーボンから成り、円形であるとともに、シャフト11の端側面又は軸方向シャフト接触面16と接触する摺接面15を有し、導電性摺動接点17がもたらされる。スプリング機構14は、接点要素12の接触圧側面19と接触してシャフト11の回転軸20に対して軸方向で接点要素12に接触力を及ぼすディスクスプリング18により形成される。支持体13は、その上に案内要素22が形成されたベースプレート21から構成されており、この例では案内要素22は円形である。案内要素22が環状の形状であることから、接点要素12は、案内凹部23を有し、該案内凹部23と案内要素22により、接点要素12が支持体13上で回転軸20の軸方向に移動できるように、案内要素22が支持体13に組み合わせられる。ディスクスプリング18は、案内要素22上へ押し込まれてベースプレート21に当接する。ベースプレート21及び案内要素22は、金属から一体的な部品として作製され、電気機械(図示せず)の所定の構成要素に取り付けられる。全体的に見ると、このようにして、接点要素12により、シャフト11から支持体13へと至る低い境界抵抗を伴う良好な導電接続をもたらすことができる。また、放電装置10を特に素早く簡単に電気機械に設置できる。
【0035】
図2及び
図3は、環状の回転対称な接点要素24を示す。接点要素24は、端面25に摺接面を形成する。
【0036】
図4及び
図5は、一体部品を成して実現されるとともに、ピン形状又はボルト形状の案内要素29が一体的に設けられた長方形のベースプレート28を有する支持体27を示す。
図2の接点要素を案内要素29の外表面30上へ押し込むことができる。
【0037】
図6~
図9の組み合わせ図は、ディスク形状を成すとともに案内凹部33を形成する中心孔32を有する接点要素31を示す。支持体34が案内ピン37を案内要素36としてベースプレート35上に有し、前記案内ピン37は孔32に対応する。更に、案内ピン37と共に案内要素アセンブリ39を形成する二次案内ピン38がベースプレート35に形成される。案内ピン38は、接点要素31の外周41の溝40内に係合でき、それにより、支持体34上に接点要素32のための回転防止ロック42を形成する。
【0038】
図10及び
図11は接点要素43を示し、この接点要素43は、それが凹陥部44を有するという点において
図6の接点要素とは異なる。凹陥部44は、摺接面45に形成されるとともに、ネジ(図示せず)のネジ頭を受けるのに役立ち、ネジは、接点要素43を支持体又はベースプレートに取り付けるのに役立ち得るとともに接点要素をその上で案内することができる。
【0039】
図12及び
図13は、3つの案内凹部47を有する接点要素46を示し、案内凹部47は、接点要素46に形成されるとともに、シャフト(図示せず)の回転軸48に対して偏心して等しい距離で離間される。
【0040】
図14及び
図15は、スロット形状の案内凹部50を有する接点要素49を示す。
【0041】
図16及び
図17は、多角形案内凹部を有する接点要素51を示す。
【0042】
図18及び
図19は、撚り配線55(部分的に示される)を有する接点要素53を示し、撚り配線55は、接点要素53からその外周54で抜け出して、支持体(図示せず)に接続され得る。中心案内凹部56と等距離で配置される撚り配線55とが接点要素53を支持体に中心付ける。
【0043】
図20及び
図21は接点要素57を示し、この接点要素57は、それがシャフト(図示せず)の回転軸59に対して径方向に延びる溝60を摺接面58に有するという点において
図2の接点要素とは異なる。溝の径方向深さTは、接点要素57の摩耗長さに対応する。
【0044】
図22及び
図23は接点要素61を示し、この接点要素61は、それが比較的小さい案内凹部62を有するという点において
図20の接点要素とは異なる。
【0045】
図24及び
図25は接点要素63を示し、この接点要素63は、それがシャフト(図示せず)の回転軸65に対してパッサン(passant)の態様で延びる溝64を有する、すなわち、これらの溝が回転軸65と交差せずに依然として径方向に配置されるという点において
図20の接点要素とは異なる。
【0046】
図26は、中心凹部69を端面68に有するシャフト67上の放電装置66を示す。放電装置66は、ベースプレート71及びこのベースプレートに案内要素73として取り付けられるネジ72を有する支持体70と、ネジ72のネジ頭76を受けるのに役立つ凹陥部75を有する放電装置66の接点要素74とから構成される。凹陥部69も、接点要素74が摩耗するときにネジ頭76が端面68と接触しないようになるのに十分大きい。接触力を及ぼすためのディスクスプリング77が接点要素74とベースプレート71との間に配置される。
【0047】
図27は、円錐状の摺接面80を形成する接点要素79を有する放電装置78を示す。シャフト81も摺接面80と適合する円錐状のシャフト接触面82を形成する。このようにすると、接点要素79をシャフト81に容易に中心付けることができる。
【0048】
図28は、ジャーナル85を端面86に有するシャフト84上の放電装置83を示す。放電装置83は、ジャーナル85上に押し込まれる環状の接点要素87と、ベースプレート89を有する支持体88と、ディスクスプリング90と、接点要素87からその外周92で抜け出してベースプレート89に取り付けられる撚り配線91とを備える。したがって、特に良好な導電接続を接点要素87とベースプレート89との間でもたらすことができる。
【0049】
図29は放電装置93を示し、この放電装置93は、それが摺動層95と接合層96とを有する接点要素94を有するという点において
図1の放電装置とは異なる。摺動層95は60wt%未満の銅含有量を有し、また、接合層96は80wt%を超える銅含有量を有する。摺動層95と接合層96との間の移行領域97が輪郭付けられる。接点要素94は、異なる粉末混合物を焼結することによって形成される。
【0050】
図30は放電装置98を示し、この放電装置98は、それが摺動層100と接合層101とを有する接点要素99を有し且つこれらの層間に拡張層102が形成されているという点において
図29の放電装置とは異なる。拡張層102は、摺動層100及び接合層101の異なる熱膨張係数を釣り合わせる。