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特許7044812粒状の物品を殺菌および/または滅菌する方法
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  • 特許-粒状の物品を殺菌および/または滅菌する方法 図1
  • 特許-粒状の物品を殺菌および/または滅菌する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】粒状の物品を殺菌および/または滅菌する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/26 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A23L3/26
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020002857
(22)【出願日】2020-01-10
(62)【分割の表示】P 2019510278の分割
【原出願日】2017-08-17
(65)【公開番号】P2020078308
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】16185056.5
(32)【優先日】2016-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501003320
【氏名又は名称】ビューラー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Buehler AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, CH-9240 Uzwil, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス メネゼス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘアシェ
(72)【発明者】
【氏名】アラスデアー キュリー
(72)【発明者】
【氏名】ニクラウス シェーネンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シャイヴィラー
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0216106(US,A1)
【文献】特許第6646787(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00-3/54
B01J 19/00-19/32
A01C 1/00-1/08
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の物品(1)を殺菌および/または滅菌する方法であって、以下のステップ、すなわち
a)電子ビーム(5)を生成するステップと、
b)前記電子ビーム(5)により処理領域(3)内で前記物品(1)を殺菌および/または滅菌するステップと
を有し、その際に、
-前記電子ビーム(5)の電子が、80keV~300keV範囲にあるエネルギを有しており、
-前記電子ビーム(5)は、前記処理領域(3)内で、1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲にある平均電子流密度を有しており、
-前記物品(1)は、5ms~25msの範囲にある処理時間の間、前記電子ビーム(5)にさらされる、
粒状の物品(1)を殺菌および/または滅菌する方法。
【請求項2】
前記物品(1)を、ステップb)の前に個別化する、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記個別化を、振動を励起している振動面によって達成する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記振動面は、1つまたは複数の溝を有している、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記個別化を、前記物品が滑り落ちる滑り面によって達成する、請求項からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記物品(1)が前記処理領域(3)を通って自由落下する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記物品の処理量が、100kg/h~1000kg/hの範囲である、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記物品(1)が、1m/s~5m/s範囲にある速度(v)で前記処理領域(3)を通って移動する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記物品(1)を、
物、朝食用シリアル、スナック、ッツ、アーモンド、ピーナッツバター、カカオ豆、チョコレート、ョコレートパウダー、チョコレートチップ、カカオ製品、豆果、コーヒー、子、香辛料ブレンド茶、ドライフルーツ、ピスタチオ、ドライプロテイン製品、ベーカリ製品、砂糖、ジャガイモ製品、生地から作った製品、ベビーフード、乾燥卵製品、イズ製品、増粘剤、酵母、酵母エキス、ゼラチンまたは酵素
から成る群から選択する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記物品(1)を、
-反芻動物、家禽、水生動物たは家畜のためのペレット、飼料、または混合飼料
から成る群から選択する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記物品(1)を、
片またはペレットの形のPET
ら成る群から選択する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム(電子線)により粒状の物品を殺菌および/または滅菌する方法に関する。
【0002】
以下において、特に粒および/または薄片から成る物品が「粒状」と呼ばれる。この場合、粒状物は、たとえば球形、プレート形または多角形の形状を有していてよい。これは、挽いて粉にされた粒状物でもよい。殺菌および/または滅菌により、たとえば微生物を少なくともほとんど殺すか、無害化することができる。特に、少なくとも5のオーダだけ有害な微生物の減少を達成することができる。
【0003】
粒状の物品を殺菌および/または滅菌する装置が、たとえば欧州特許第1080623号明細書(EP1080623B1)から公知である。この装置は、振動フィーダを含んでいる。この振動フィーダにより、種物を個別化して透明なカーテンを形成することができる。このカーテンは、次いで電子照射野を通ってガイドされる。この電子照射野は、電子加速器により形成され、たとえば種物の滅菌を行うことができる。
【0004】
米国特許第5801387号明細書(US5801387A)からは、粒状の物品を殺菌および/または滅菌する別の装置が公知である。この明細書における発明の実施形態では、粒状の物品が振動フィーダにより水平方向の空気流内へと調量され、次いで電子ビームにさらされる。次いで、真空ポンプおよびフィルタによって分粒が実施される。
【0005】
さらに、独国特許出願公開第102012209434号明細書(DE102012209434A1)は、流動性の製品を振動フィーダ装置および回転しているブラシローラにより個別化し、回転させる装置を開示している。粒状物は、次いで自由落下しながら電子照射野を通過する。
【0006】
欧州特許第0513135号明細書(EP0513135B1)には、種物がセルホイール通過部により鉛直方向の落下縦穴内に導入され、この種物に落下縦穴において垂直方向の落下中に電子ビームが照射される装置が開示されている。
【0007】
欧州特許第0705531号明細書(EP0705531B1)からは、種物を(詳細に説明しない)調量装置によりプロセスチャンバに導入し、このプロセスチャンバ内で種物が垂直方向で電子ビームを通って落下する別の装置が公知である。
【0008】
米国特許第6486481号明細書(US6486481B1)に開示されている装置は、振動テーブルを含んでいる。この振動テーブル上でポリマ材料が運動し、電子ビームにさらされる。しかしこのことは、殺菌または滅菌のために行われるのではなく、ポリマ材料の分子量を減じるために行われる。
【0009】
本発明の課題は、先行技術から公知の欠点を克服することにある。特に、粒状の物品を効果的、確実かつできるだけ簡単に、迅速かつ廉価に殺菌および/または滅菌することができる方法を提供することが望ましい。
【0010】
この課題および別の課題は、粒状の物品を殺菌および/または滅菌する本発明に係る方法により解決される。この方法は、以下のステップを有している;
a)電子ビームを生成するステップ、
b)処理領域において電子ビームによる物品を殺菌および/または滅菌するステップ。
【0011】
電子ビームの電子は、本発明によれば、80keV~300keV、好適には140keV~280keV、特に好適には180keV~260keVの範囲にあるエネルギを有している。これよりも小さな電子エネルギでは、十分な殺菌および/または滅菌が生じない。これよりも高い電子エネルギによっても、著しく高い殺菌度および/または滅菌度は達成されない。
【0012】
さらに、本発明によれば、処理領域内の電子流密度は、1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲にある。この範囲において、十分な殺菌および/または滅菌が達成される。
【0013】
同様に、本発明によれば、物品が、5ms~25msの範囲にある処理時間の間、電子ビームにさらされる。十分な殺菌および/または滅菌のためには、ある程度の最低処理時間が必要である。過度に長い処理時間は、言及するほど高められた殺菌度および/または滅菌度を示さなかった。
【0014】
物品は、たとえば、たとえばダイズのような穀物、朝食用シリアル、スナック、たとえばドライココナッツのようなナッツ、アーモンド、ピーナッツバター、カカオ豆、チョコレート、チョコレート液、チョコレートパウダー、チョコレートチップ、カカオ製品、豆果、コーヒー、たとえばパンプキンシードのような種子、香辛料(たとえば、特にスライスしたターメリック)、ブレンド茶、ドライフルーツ、ピスタチオ、ドライプロテイン製品、ベーカリ製品、砂糖、ジャガイモ製品、生地から作った製品、ベビーフード、乾燥卵製品、たとえばダイズ豆のようなダイズ製品、増粘剤、酵母、酵母エキス、ゼラチンまたは酵素のような食料品であってよい。
【0015】
択一的には、物品は、たとえば反芻動物、家禽、水生動物(特に魚)または家畜のためのペレット、飼料、または混合飼料のようなペットフードであってもよい。
【0016】
しかし、物品が、たとえばプラスチックであって、たとえば薄片またはペレットの形の、たとえばPETのようなプラスチックであることも可能であり、本発明の枠内である。
【0017】
物品が、電子ビームにより、1kGy(グレイ)~45kGy(グレイ)、好適には8kGy~30kGy、特に好適には10kGy~16kGyの範囲にある線量にさらされると有利である。
【0018】
有利には、物品は、ステップb)における処理の前に個別化される。この個別化により、物品の各個別の粒が電子ビームにより捕捉され、したがって殺菌および/または滅菌されることを確実にすることができる。個別化は、たとえば、振動を励起し、任意で1つまたは複数の溝を有している振動面によって達成することができる。択一的または付加的には、個別化は、物品が滑落ちる滑り面により達成することができる。
【0019】
同様に、物品が、処理領域を通って自由落下すると有利である。この場合、物品の個別の粒状物の軌道が、その速度と、この粒状物に作用する重力と、場合によっては物品を取り囲んでいるプロセスガスとによってのみ規定される場合、物品は「自由落下する」と云われる。特に、物品の粒状物は、面上で処理領域を通って滑るのではない。自由落下時に、速度は処理量に依存しないので、同一の速度でたとえば100kg/h~1000kg/hの範囲の処理量を達成することができる。
【0020】
多くの物品にとって、特に多数の香辛料にとって、物品が、1m/s~5m/s、好適には2m/s~4m/s、特に好適には2m/s~3m/sの範囲にある速度で処理領域を通って移動すると有利であることが判った。物品の速度が高ければ高いほど、達成可能な処理量は大きくなる。しかし他方では、物品が、殺菌および/または滅菌されるように、十分な長さの間、電子ビーム内にとどまるようにするために、速度を過度に高く選択してはならない。
【0021】
以下に本発明を2つの実施例および図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る第1の方法に関する概略図である。
図2】本発明に係る第2の方法に関する概略図である。
【0023】
図1に示した第1の実施例では、概略的に、たとえば香辛料、ピスタチオまたはアーモンドのような粒状の個別化された物品1が、1m/s~5m/sの範囲の加速する速度で処理領域3を通って自由落下する。この処理領域3で、物品1は、電子源4により生成された電子ビーム(電子線)により殺菌および/または滅菌される。電子ビームは、80keV~300keVの範囲のエネルギの電子を含んでおり、処理領域3内で、1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲の平均電子流密度を有している。物品1は、5ms~25msの範囲の処理時間の間、この処理を受ける。これにより、物品1は、1kGy~45kGyの範囲の線量にさらされる。
【0024】
図2は、第2の実施例を概略的に示している。この実施例では、個別化された粒状の物品1が搬送ベルト2上に調量される。搬送ベルト2は、物品1を電子源4の下方にある処理領域3へと搬送する。この電子源4は、処理領域3内で、80keV~300keVの範囲のエネルギの電子および1015-1・cm-2~2.77・1015-1・cm-2の範囲の平均電子流密度を有する電子ビームを生成する。物品1は、5ms~25msの範囲の処理時間の間、この処理を受ける。これにより、物品1は、1kGy(グレイ)~45kGy(グレイ)の範囲の線量にさらされる。
【0025】
これらの方法により、粒状の物品1は、効果的かつ確実に、しかしそれにもかかわらずできるだけ簡単、迅速かつ廉価に滅菌および/または殺菌され得る。
図1
図2