(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】放射性廃棄物管理システムおよび放射性廃棄物管理方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20220323BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20220323BHJP
G21F 9/00 20060101ALI20220323BHJP
G01T 1/00 20060101ALI20220323BHJP
G01T 1/16 20060101ALN20220323BHJP
G01T 1/02 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
B65G1/137 B
G21F9/36 G
G21F9/36 F
G21F9/00 Z
G01T1/00 D
G01T1/16 A
G01T1/02 A
(21)【出願番号】P 2020127576
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】太田 正幹
(72)【発明者】
【氏名】富田 文夫
(72)【発明者】
【氏名】西崎 雅則
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-032030(JP,A)
【文献】特開2017-161282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
G21F 9/36
G21F 9/00
G01T 1/00
G01T 1/16
G01T 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の放射性廃棄物の画像情報を取得する撮影装置と、
前記放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報を取得する放射線量率計測装置と、
遠隔操作され、複数の前記放射性廃棄物を貯蔵容器内に搬送するクレーンと、
前記貯蔵容器に設定した基準となる原点に対する前記クレーンのX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の操作履歴情報に基づいて前記貯蔵容器内における前記放射性廃棄物それぞれの
XYZ座標上の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記画像情報と前記放射線量率情報と前記位置情報とを紐付けて記憶装置に記憶するデータ作成装置と、
を有する放射性廃棄物管理システム。
【請求項2】
前記データ作成装置は、前記画像情報と前記放射線量率情報と前記位置情報と前記放射性廃棄物を収納した前記貯蔵容器の保管場所を特定する情報とを紐付けて前記記憶装置に記憶する、
請求項1に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項3】
前記データ作成装置は、前記放射性廃棄物それぞれを特定する個体IDと前記貯蔵容器それぞれを特定する貯蔵容器IDと前記画像情報と前記放射線量率情報と前記位置情報とを紐付けて前記記憶装置に記憶する、
請求項1または2に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項4】
前記データ作成装置は、前記放射性廃棄物を一の貯蔵容器から他の貯蔵容器に詰め替える際、詰め替え前の貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDと詰め替え後の貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDとを紐付けて
前記記憶装置に記憶する、
請求項3に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項5】
前記放射性廃棄物の重量を示す重量情報を取得する重量計測装置を有し、
前記データ作成装置は、前記重量情報を前記個体IDと紐付けて
前記記憶装置に記憶する、
請求項3に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項6】
前記画像情報には、前記放射性廃棄物の立体形状、表面形状、色、刻印の少なくともいずれか一つが含まれる、
請求項1に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項7】
新たに撮影された放射性廃棄物の画像情報の特徴量と前記記憶装置に記憶されている放射性廃棄物の画像情報の特徴量との相関性を示す指数を演算し、前記指数が指定された値より大きい場合、新たに撮影された放射性廃棄物を登録済みの放射性廃棄物と判断し、前記指数が指定された値より小さい場合、新たに撮影された放射性廃棄物を未登録の放射性廃棄物と判断する照合装置を有し、
前記データ作成装置は、前記放射性廃棄物が未登録の放射性廃棄物であると判断された場合、前記画像情報、前記放射線量率情報、前記位置情報を紐付けて前記記憶装置に記憶する、
請求項1に記載の放射性廃棄物管理システム。
【請求項8】
撮影装置で放射性廃棄物の画像情報を取得する工程と、
放射線量率計測装置で前記放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報を取得する工程と、
遠隔操作されるクレーンにより複数の前記放射性廃棄物を貯蔵容器に搬送する工程と、
前記貯蔵容器に基準となる原点を設定する工程と、
前記原点に対する前記クレーンのX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の操作履歴情報に基づいて前記貯蔵容器内における前記放射性廃棄物それぞれの
XYZ座標上の位置を示す位置情報を取得する工程と、
前記撮影装置で撮影した前記放射性廃棄物の画像情報と、前記放射線量率計測装置で計測した前記放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報と、前記貯蔵容器内における前記放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報と、を紐付けて記憶装置に記憶する工程と、
を含む放射性廃棄物管理方法。
【請求項9】
請求項8記載の放射性廃棄物管理方法に加えて、
前記画像情報と前記放射線量率情報と前記位置情報に、前記放射性廃棄物を収納した前記貯蔵容器の保管場所を特定する情
報を紐付けて
前記記憶装置に記憶する工程と、
指定された放射線量率に該当する放射性廃棄物を前記記憶装置に記憶された情報に基づいて特定する工程と、
特定された前記放射性廃棄物が収納されている貯蔵容器の保管場所、および、前記貯蔵容器内における前記放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報を表示装置に表示する工程と、
特定された前記放射性廃棄物を前記貯蔵容器から取り出し、大容量処分容器に詰め替える工程と、
を含む放射性廃棄物管理方法。
【請求項10】
前記大容量処分容器に複数の前記放射性廃棄物を収納した際の収納率が指定された基準値以上になるように、前記大容量処分容器内における前記放射性廃棄物それぞれの収納位置を解析するシミュレーション工程と、
前記シミュレーション工程で求めた前記放射性廃棄物それぞれの収納位置に基づいて、前記放射性廃棄物を前記大容量処分容器に詰め替える工程と、
を含む請求項9に記載の放射性廃棄物管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物管理システムおよび放射性廃棄物管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物を特定する個体IDや放射線量率のデータを記録したRFIDを放射性廃棄物に貼り付けることにより放射性廃棄物を管理する方法がある。しかし、RFIDは、強い放射線を浴びると破損しやすい。また、RFIDは、放射性廃棄物を処分容器に詰め替える際に脱落することもある。また、放射線量の高い放射性廃棄物にRFIDを貼り付ける際に、作業者が被ばくするという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、放射性廃棄物を特定する個体IDと放射性廃棄物の画像情報と放射線量率とを紐付けたデータベースを構築し、放射性廃棄物の画像情報とデータベースの画像情報とを比較することにより放射性廃棄物を特定する管理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射性廃棄物は、遮蔽機能を有した貯蔵容器に収納され、一次保管場所に保管される。放射性廃棄物の放射線量率は、時間とともに低減する。放射線量率が基準値以下になった放射性廃棄物は、大容量処分容器に詰め替えられ、二次保管場所もしくは最終保管場所に搬送される。
【0006】
一次保管時に計測した放射性廃棄物の放射線量率と計測後の経過時間とから、一次保管した放射性廃棄物の放射線量率が基準値以下になったか否かを推定できる。しかしながら、一次保管場所には、放射性廃棄物が収納された大量の貯蔵容器が存在する。また、一つの貯蔵容器に複数の放射性廃棄物が収納されることもある。したがって、放射線量率が基準値以下になった放射性廃棄物が、どの貯蔵容器のどの位置に収納されているかを特定するためには多大な作業時間を要する。
【0007】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、放射性廃棄物の収納場所を容易に特定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態に係る放射性廃棄物管理システムは、撮影装置と放射線量率計測装置とクレーンと位置情報取得手段とデータ作成装置とを有する。撮影装置は、計測対象の放射性廃棄物の画像情報を取得する。放射線量率計測装置は、放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報を取得する。クレーンは、遠隔操作され、複数の放射性廃棄物を貯蔵容器内に搬送する。位置情報取得手段は、貯蔵容器に設定した基準となる原点に対するクレーンのX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の操作履歴情報に基づいて貯蔵容器内における放射性廃棄物それぞれのXYZ座標上の位置を示す位置情報を取得する。データ作成装置は、画像情報と放射線量率情報と位置情報とを紐付けて記憶装置に記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る放射性廃棄物管理システムの構成図である。
【
図2】実施形態1に係る放射性廃棄物管理システムの記憶装置に記憶される情報について説明するための図である。
【
図3】実施形態1に係る放射性廃棄物管理方法の登録処理を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係る放射性廃棄物管理方法の照合処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る放射性廃棄物管理方法の詰め替え処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る放射性廃棄物管理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、実施形態に係る放射性廃棄物管理システムについて、図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る放射性廃棄物管理システム1の構成図である。
図1に示されるように、放射性廃棄物管理システム1は、撮影装置11、放射線量率計測装置12、重量計測装置13、位置情報取得手段14、照合装置20、データ作成装置30、記憶装置40、表示装置50を備える。
【0011】
撮影装置11は、例えば、レーザースキャン装置、CCDカメラ等である。撮影装置11は、計測対象の放射性廃棄物の立体形状、表面形状、色、刻印等の画像情報を取得する。放射線量率計測装置12は、放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報を取得する装置である。撮影装置11と放射線量率計測装置12とは、放射性廃棄物を複数の方向から計測できるように複数配置される。複数の方向とは、例えば、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の3方向である。重量計測装置13は、放射性廃棄物の重量を示す重量情報を取得する装置である。
【0012】
放射性廃棄物は、クレーンによって吊り上げられ、貯蔵容器内に搬送される。貯蔵容器とは、遮蔽材等で放射線を遮蔽する構造を有する放射性廃棄物を保管するための容器である。位置情報取得手段14は、放射性廃棄物それぞれの貯蔵容器内における位置を示す位置情報を取得する。
【0013】
位置情報は、例えば、貯蔵容器に基準となる位置を原点として設定し、放射線廃棄物の原点に対する位置をXYZ座標で表した情報である。具体的には、クレーンを操作すると、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のクレーンの操作履歴情報が記憶装置40に記憶される。記憶装置40は、クレーンの操作履歴情報に基づいて、放射性廃棄物それぞれの貯蔵容器内における位置を示す位置情報(XYZ座標)を演算して記憶する。位置情報取得手段14は入力手段を備え、記憶装置40から放射性廃棄物それぞれの貯蔵容器内における位置を示す位置情報(XYZ座標)を取得する。入力手段は、例えば、無線通信装置、有線通信装置、USBインタフェース等である。
【0014】
なお、位置情報取得手段14は、放射性廃棄物それぞれの貯蔵容器内における位置を示す位置情報を作業者による手入力によって取得してもよい。この場合、位置情報取得手段14は、例えば、キーボードである。また、位置情報は、貯蔵容器内の上段、中断、下段のような簡易的な情報であってもよい。
【0015】
照合装置20は、画像認識プログラムおよび本システムの専用アプリケーションプログラムを使用して、撮影装置11が撮影した放射性廃棄物が、記憶装置40に登録済か否かを判断する。
【0016】
データ作成装置30は、放射性廃棄物を特定する個体IDを未登録の放射性廃棄物に付与する。そして、データ作成装置30は、個体ID、撮影装置11が撮影した放射性廃棄物の画像情報、放射線量率計測装置12が計測した放射性廃棄物の放射線量率を示す放射線量率情報、重量計測装置13が計測した放射性廃棄物の重量を示す重量情報、を紐付けて記憶装置40に記憶する。また、データ作成装置30は、放射性廃棄物を収納する貯蔵容器内における放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報(XYZ座標)、放射性廃棄物を収納した貯蔵容器の保管場所を特定する情報、を紐付けて記憶装置40に記憶する。また、データ作成装置30は、放射性廃棄物が収納された貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDを付与し、貯蔵容器の立体形状、表面形状、色、刻印等の画像情報画像情報とともに、放射性廃棄物の個体ID等と紐付けて記憶装置40に記憶する。また、データ作成装置30は、放射性廃棄物を詰め替える際、詰め替え前の貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDと詰め替え後の大容量処分容器を特定する大容量処分容器IDとを、放射性廃棄物の個体IDと紐付けて記憶装置40に記憶する。
【0017】
記憶装置40内では、
図2に示されるように、放射性廃棄物を特定する個体IDを示す情報D1、放射線量率を計測した計測日時を示す情報D2、画像情報D3、放射線量率情報D4、重量情報D5、位置情報D6、貯蔵容器の保管場所を特定する情報等を含むその他の情報D7が紐付けられて記憶される。
【0018】
表示装置50は、液晶ディスプレイもしくはヘッドマウントディスプレイである。表示装置50には、放射性廃棄物を特定する個体IDを示す情報D1、放射線量率等を計測した計測日時を示す情報D2、画像情報D3、放射線量率情報D4、重量情報D5、位置情報D6、貯蔵容器の保管場所を特定する情報等を含むその他の情報D7が表示される。
【0019】
次に、放射性廃棄物管理システム1による放射性廃棄物の管理方法について説明する。
図3は、実施形態に係る放射性廃棄物管理方法における登録処理を示すフローチャートである。最初に、登録対象となる放射性廃棄物について各種の計測を行う(ステップS11)。具体的には、撮影装置11により放射性廃棄物の画像を撮影し、放射線量率計測装置12により放射性廃棄物の放射線量率を計測し、重量計測装置13により放射性廃棄物の重量を計測する。放射性廃棄物の表面形状が他の放射性廃棄物と近似している場合、個体差の識別を容易にするために、放射性廃棄物の表面に刻印や傷等を施したり塗料を吹き付けてもよい。
【0020】
次に、計測した放射性廃棄物が登録済であるか否かを判断するために、計測した放射性廃棄物の画像情報と記憶装置40に蓄積されている画像情報とを照合する(ステップS12)。この照合処理については、
図4を参照して説明する。
【0021】
照合装置20は、撮影装置11で新たに撮影された放射性廃棄物の画像情報の特徴量と記憶装置40に蓄積されている放射性廃棄物の画像情報の特徴量とを比較する(ステップS31)。そして、照合装置20は、新たに撮影された放射性廃棄物の画像情報の特徴量と記憶装置40に蓄積されている放射性廃棄物の画像情報の特徴量との相関性を示す指数が所定の値以上である場合(ステップS32:Yes)、その放射性廃棄物は登録済であると判断する(ステップS33)。そして、照合装置20は、その放射性廃棄物は登録済であることを表示装置50に表示する(ステップS34)。また、照合装置20は、最も高い相関性を有する画像情報を特定し、特定した画像情報と紐付けられた放射性廃棄物の個体ID、前回の計測日時、放射線量率等の情報を表示装置50に表示する。
【0022】
一方、照合装置20は、撮影された放射性廃棄物の画像情報の特徴量と記憶装置40に蓄積されている放射性廃棄物の画像情報の特徴量との相関性を示す指数が所定の値未満である場合(ステップS32:No)、その放射性廃棄物は未登録の放射性廃棄物であると判断する(ステップS35)。そして、照合装置20は、計測した放射性廃棄物が未登録であることを表示装置50に表示し(ステップS36)、ステップS13に移行する。
【0023】
図3に戻り、データ作成装置30は、個体ID、計測日時、画像情報、放射線量率情報、重量情報を紐付けて記憶装置40に記憶する(ステップS13)。
【0024】
次に、データ作成装置30は、放射性廃棄物の放射線量率が基準値未満であるか否かを判断する(ステップS14)。放射線量率が基準値以上である場合(ステップS14:No)、放射性廃棄物は専用エリアに搬送され、その放射線量率に応じた遮蔽効果を有する専用容器に収納され、保管される(ステップS20)。一方、放射線量率が基準値未満である場合(ステップS14:Yes)、放射性廃棄物を所定の貯蔵容器に収納する(ステップS15)。
【0025】
貯蔵容器には、複数の放射性廃棄物が収納されることがある。この場合、データ作成装置30は、貯蔵容器内における放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報を個体ID等と紐付けて記憶装置に記憶する(ステップS16)。例えば、位置情報は、貯蔵容器に基準となる位置を原点として設定し、射線廃棄物の原点に対する位置をXYZ座標で表した情報である。
【0026】
貯蔵容器に放射性廃棄物を収納した後、貯蔵容器について各種の計測を行う(ステップS17)。具体的には、撮影装置11により貯蔵容器の画像を撮影し、放射線量率計測装置12により貯蔵容器の表面の放射線量率を計測し、重量計測装置13により貯蔵容器の重量を計測する。貯蔵容器の表面形状は他の貯蔵容器と近似しているので、個体差の識別を容易にするために、貯蔵容器の表面に刻印等を施す。
【0027】
次に、データ作成装置30は、貯蔵容器の各種の計測情報を放射性廃棄物の個体ID、貯蔵容器の貯蔵容器ID、計測日時等と紐付けて記憶装置40に記憶する(ステップS18)。
【0028】
次に、データ作成装置30は、貯蔵容器の放射線量率が基準値未満であるか否かを判断する(ステップS19)。放射線量率が基準値以上である場合(ステップS19:No)、貯蔵容器は専用エリアに搬送され、その放射線量率に応じた遮蔽効果を有する専用容器に収納され、保管される(ステップS20)。
【0029】
一方、放射線量率が基準値未満である場合(ステップS19:Yes)、貯蔵容器は所定の場所(一次保管場所)に保管される(ステップS21)。データ作成装置30は、貯蔵容器の保管場所の情報を放射性廃棄物の個体ID等と紐付けて記憶装置40に記憶する。
【0030】
貯蔵容器内の放射性廃棄物の放射線量率は、時間とともに減少する。放射線量率が基準値未満になった放射性廃棄物は、大容量処分容器に詰め替えられる(ステップS22)。大容量処分容器は、貯蔵容器に比べて放射線の遮蔽効果が低く、収納量の大きな容器である。大容量処分容器は、例えば、コンテナ等である。大容量処分容器への詰め替え処理については、
図5を参照して説明する。
【0031】
最初に、作業者は、放射線量率が基準値未満に低減していると予想される放射性廃棄物の収納場所を検索する(ステップS51)。具体的には、作業者は、ステップS11での放射線量率の計測値と計測後の経過時間とに基づいて、放射性廃棄物それぞれの現在の放射線量率をシミュレーションにより推定し、該当する放射性廃棄物の個体IDを特定する。作業者の操作により、放射性廃棄物管理システム1は、該当する放射性廃棄物の個体IDと紐付けられた放射性廃棄物が収納されている貯蔵容器の保管場所の情報と貯蔵容器内における該当する放射性廃棄物の位置情報(XYZ座標)とを表示装置50に表示する(ステップS52)。作業者は、この表示を見ることにより、該当する放射性廃棄物が収納されている貯蔵容器の保管場所と、貯蔵容器内における該当する放射性廃棄物の位置を把握することができる。
【0032】
次に、作業者は、ステップS52の表示に基づいて、クレーンを遠隔操作して、該当する放射性廃棄物を貯蔵容器から取り出し、放射線量率を計測する(ステップS53)。放射線量率の計測値が基準値以上であった場合(ステップS53:No)、作業者は、その放射性廃棄物を貯蔵容器に戻す(ステップS54)。
【0033】
一方、放射線量率が基準値未満であった場合(ステップS53:Yes)、作業者は、大容量処分容器に複数の放射性廃棄物を詰め込む際の収納率の高い詰め込み方をシミュレーションする(ステップS55)。放射性廃棄物は、それぞれ形状が異なっている。放射性廃棄物の詰め込み順序、詰め込み位置、詰め込み角度等を工夫することにより、放射性廃棄物間の隙間を小さくし、一つの大容量処分容器に収納可能な放射性廃棄物の量を増やすことができる。例えば、モンテカルロ法を利用したシミュレーションプログラムを利用して、詰め替え対象の放射性廃棄物の組み合わせ、詰め込み順序、詰め込み位置、詰め込み角度等を変えて収容率を演算する。そして、収容率が基準値以上となる収容方法を求める。放射性廃棄物それぞれの大容量処分容器内における詰め込み位置は、表示装置50に表示される(ステップS56)。
【0034】
作業者は、放射性廃棄物を貯蔵容器から大容量処分容器に詰め替える際、ステップS56の表示に基づいて、クレーンを遠隔操作して、該当する複数の放射性廃棄物を大容量処分容器に詰め替える(ステップS57)。大容量処分容器に収納された放射性廃棄物は、二次保管場所もしくは最終保管場所に搬送される。
【0035】
以上に説明したように、実施形態に係る放射性廃棄物管理システム1は、画像情報と放射線量率情報と貯蔵容器内における放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報とを紐付けて記憶装置40に記憶するデータ作成装置30を有している。これにより、放射性廃棄物管理システム1は、指定された放射線量率に該当する放射性廃棄物の収納場所を容易に特定することができる。
【0036】
また、データ作成装置30は、貯蔵容器内における放射性廃棄物それぞれの位置を示す位置情報と放射性廃棄物を収納した貯蔵容器の保管場所を特定する情報を紐付けて記憶装置40に記憶している。これにより、放射性廃棄物管理システム1は、指定された放射線量率に該当する放射性廃棄物が収納されている貯蔵容器の保管場所、および、貯蔵容器内における放射性廃棄物の位置を特定することができる。これにより、指定された放射線量率に該当する放射性廃棄物を貯蔵容器から大容量処分容器に詰め替える作業時間を短縮することができる。
【0037】
また、データ作成装置30は、放射性廃棄物を一の貯蔵容器から他の貯蔵容器に詰め替える際、詰め替え前の貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDと詰め替え後の貯蔵容器を特定する貯蔵容器IDとを、個体IDと紐付けて記憶装置に記憶する。これにより、放射性廃棄物の保管履歴情報を得ることができる。
【0038】
また、実施形態に係る放射性廃棄物管理方法は、大容量処分容器に放射性廃棄物を収納した際の収納率が指定された基準値以上になるように、大容量処分容器内における放射性廃棄物それぞれの収納位置を解析するシミュレーション工程を含んでいる。このシミュレーション結果に基づいて放射性廃棄物を大容量処分容器に詰め替えることにより、大容量処分容器内における放射性廃棄物の収納率を向上することができる。
【0039】
なお、上述した放射性廃棄物の計測作業および貯蔵容器への収納作業は、高放射線量廃棄物を対象とする場合、汚染拡大防止および作業者の被ばく低減の観点から、水中で行うことが望ましい。
【0040】
また、上記の説明では、ステップS31の処理において、画像情報に基づいて登録済か否かを判断する場合について説明したが、画像情報、重量情報、放射線量率の情報を組み合わせて、登録済か否かを判断してもよい。
【0041】
また、上記の説明では、放射性廃棄物を貯蔵容器から取り出し、大型処分容器に詰め替える場合について説明したが、放射性廃棄物を貯蔵容器に収納したまま、貯蔵容器を大型処分容器に収納してもよい。貯蔵容器の形状が同じである場合、ステップS55のシミュレーション工程を省略してもよい。
【0042】
(実施形態2)
実施形態2では、簡易型の放射性廃棄物管理装置について説明する。
図6は、放射性廃棄物管理装置2の構成図である。
【0043】
放射性廃棄物管理装置2は、物理的にはスマートフォンのような携帯端末である。放射性廃棄物管理装置2は、撮影装置211、照合装置220、表示装置250を備える。撮影装置211、照合装置220、表示装置250は、実施形態1で説明した放射性廃棄物管理システム1の撮影装置11、照合装置20、表示装置50と同じ機能を有している。表示装置250は、液晶ディスプレイもしくはヘッドマウントディスプレイである。
【0044】
照合装置220は、無線通信回線を介して放射性廃棄物管理システム1の記憶装置40と接続される。照合装置220は、画像認識プログラムおよび本システムの専用アプリケーションプログラムを使用して、撮影装置211が撮影した放射性廃棄物が、記憶装置40に登録済か否かを判断する。具体的には、照合装置220は、撮影装置211で撮影された放射性廃棄物の画像情報の特徴量と記憶装置40に蓄積されている放射性廃棄物の画像情報の特徴量との相関性を示す指数を演算する。そして、照合装置220は、相関性を示す指数が指定された値より大きい場合、放射性廃棄物を登録済みの放射性廃棄物であると判断する。また、照合装置220は、相関性を示す指数が指定された値より小さい場合、撮影装置211で撮影された放射性廃棄物を未登録の放射性廃棄物であると判断する。
【0045】
また、照合装置220は、相関性を示す指数が指定された値より大きい場合、記憶装置40に蓄積されている放射性廃棄物の画像情報の中から最も高い相関性を有する画像情報を特定する。照合装置220は、特定した画像情報と紐付けられた放射性廃棄物の個体ID、前回の計測日時、放射線量率等の情報を表示装置250に表示する。また、照合装置220は、相関性を示す指数が所定の値より小さい場合、計測した放射性廃棄物が未登録であることを表示装置250に表示する。
【0046】
放射線量が低い放射性廃棄物の場合、短時間であればクレーンを使用しないで作業者が撮影等の確認作業をすることもある。放射性廃棄物管理装置2は、小型軽量であるので持ち運びが容易であり、操作性が良い。したがって、確認作業を短時間で行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…放射性廃棄物管理システム
2…放射性廃棄物管理装置
11…撮影装置
12…放射線量率計測装置
13…重量計測装置
14…位置情報取得手段
20…照合装置
30…データ作成装置
40…記憶装置
50…表示装置
211…撮影装置
220…照合装置
250…表示装置