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特許7044848液処理装置、純水製造システム及び液処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】液処理装置、純水製造システム及び液処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20220323BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20220323BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220323BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
B01D61/02 510
B01D61/12
B01D61/58
C02F1/44 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020173516
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 清一
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-051663(JP,A)
【文献】特開平08-108048(JP,A)
【文献】国際公開第2014/007262(WO,A1)
【文献】特開2018-130679(JP,A)
【文献】特開2017-124382(JP,A)
【文献】特開2017-113652(JP,A)
【文献】特開2003-200160(JP,A)
【文献】特開平09-155344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜を備え、被処理液である淡水が前記逆浸透膜を透過する透過液と前記透過液以外の濃縮液とに分離される液処理ユニットと、
逆浸透膜を備え、前記濃縮液が前記逆浸透膜を透過する回収液と前記回収液以外の排液とに分離される液回収ユニットと、
前記濃縮液の液圧を、前記液回収ユニットにおける前記回収液と前記排液への分離可能状態が継続するように前記液回収ユニットの入口部分での液圧を1.0MPa以上1.8MPa以下に昇圧して、前記液処理ユニットから前記液回収ユニットへ前記濃縮液を直接的に送液する昇圧手段と、
を有する液処理装置。
【請求項2】
前記昇圧手段が、
前記被処理液を加圧する被処理液ポンプと、
前記透過液の流量を調整する透過液バルブと、
を有する請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記昇圧手段が、
前記被処理液を加圧する被処理液ポンプと、
逆浸透膜を備え、前記透過液が前記逆浸透膜を透過する二次透過液と前記透過液以外の二次濃縮液とに分離される液処理第二ユニットと、
前記濃縮液の流量を調整する濃縮液バルブと、
を有する請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記昇圧手段が、
前記濃縮液を加圧する濃縮液ポンプと、
前記濃縮液ポンプで加圧された前記濃縮液の流量を調整する濃縮液バルブと、
を有する請求項1に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記液処理ユニットにおいて、前記透過液の流量を前記被処理液の流量で除した液回収率が75%以上90%以下である請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記昇圧手段は、前記液回収ユニットの圧力損失の増加に応じて、前記濃縮液の液圧を高くする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液処理装置と、
前記液処理装置で生成された前記透過液から純水を生成する純水製造ユニットと、
を有する純水製造システム。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の液処理装置を用いて被処理液を処理する液処理方法であって、
前記昇圧手段において、前記液回収ユニットの圧力損失の増加に応じて、前記濃縮液の液圧を高くする液処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、液処理装置、純水製造システム及び液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、純水を製造するための純水製造装置(超純水を製造するための超純水製造装置を含む)では、原水として、市水、井水、工業用水等の淡水が用いられることが多い。これらの淡水は、逆浸透膜(RO膜)を備えた液処理装置に供給され、供給水中の微粒子・微生物、無機塩、イオン、有機物等の不純物を逆浸透膜により除去する処理が行われる。そして、逆浸透装置では、不純物が除去された透過水と、透過水以外の濃縮水とが生成される。
【0003】
実際の液処理装置では、逆浸透膜を備えたモジュールが、供給水の流れ方向に直列で複数配置されることが多い。これにより、被処理水を複数のモジュールに順に通すことで、モジュールを単体で用いる場合と比較して、被処理水の回収率を高めることができる。なお、この「回収率」は、生成された透過水の量を、供給された被処理水の量で除した割合である。具体例としては、モジュール単体での回収率が10~20%程度である場合でも、複数のモジュールを用いることで、回収率を75~90%程度に上げることができる。ただし、回収率をこれよりも高くすると、濃縮水中のスケール成分の濃度が、実際にスケールが発生する程度に高くなるおそれがある。
【0004】
ここで、たとえば特許文献1には、第1のRO膜分離装置の濃縮水を第2のRO膜分離装置で膜分離処理する逆浸透膜分離方法として、第2の逆浸透膜分離装置に導入される水の酸化還元電位が200~600mVとなるように第2のRO膜分離装置の給水に還元剤を添加する構成が記載されている。特許文献1には、これにより、第2のRO膜分離装置の給水に適切な添加量で還元剤を添加して、第1のRO膜分離装置の濃縮水中に濃縮された酸化剤の必要量が残留するようにその一部を還元処理することにより、酸化剤による膜劣化を防止した上で、膜汚染を防止することができる点も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-201313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成では、第2のRO膜分離装置で生成された透過水を、第1のRO膜分離装置に被処理水として供給することで、第1のRO膜分離装置で生成された濃縮水の再利用が可能である。すなわち、第1のRO膜分離装置が、被処理水を、逆浸透膜を透過した透過液と、この透過液以外の濃縮液と、に分離する液処理ユニットとして機能しうる。そして、第2のRO膜分離装置が、濃縮液を、逆浸透膜を透過した再利用液と、この再利用液以外の排液と、に分離する液回収ユニットとして機能しうる。
【0007】
第1のRO膜分離装置で生成された濃縮水では、スケール成分やその他の不純物の濃度が高い。すなわち、第2のRO膜分離装置には、スケール成分が高濃度の水が送られることになる。したがって、スケールの発生を防止するために、スケール抑制剤等を注入する等のスケール対策を講じる必要がある。
【0008】
また、第2のRO膜分離装置への供給水、すなわち第1のRO膜分離装置からの濃縮水であるため、第2のRO膜分離装置への供給水の水量は、第1のRO膜分離装置への供給水の水量よりも少ない。
【0009】
また、第1のRO膜分離装置で得られた濃縮水はスケール発生の限界近くまで濃縮されているので、第2のRO膜分離装置は第1のRO膜分離装置と比べ著しくスケールが起きやすい。このため、第1のRO膜分離装置と第2のRO膜分離装置は独立して運転したほうが、洗浄やRO膜(逆浸透膜)交換等のメンテナンスのために好都合である。そのため、第1のRO膜分離装置と第2のRO膜分離装置の間にはタンクやピットを設置して独立して運転可能とするのが一般的である。
【0010】
したがって、第1のRO膜分離装置から排出された濃縮水を、一時的に濃縮水槽に貯留し、貯留された濃縮水を、ポンプを用いて昇圧した後に第2のRO膜分離装置へ送ることが行われる。
【0011】
しかし、第1のRO膜分離装置から排出された濃縮水を、濃縮水槽に貯留させると、濃縮水は濃縮水槽に滞留されるので、濃縮水中の不純物が濃縮水槽に溜まって不純物の濃度が高くなるおそれがある。たとえば、濃縮水中の不溶解物質が凝集した状態の濃縮水を第2のRO膜分離装置に供給すると、第2のRO膜分離装置において、ファウリング、すなわち逆浸透膜に凝集成分等が付着し、逆浸透膜の細孔が塞がれてしまう現象が生じることがある。そして、第2のRO膜分離装置においてファウリングが進行すると、第2のRO膜分離装置の圧力損失が高くなるので、相対的に濃縮水の供給圧力が不足することになり、第2のRO膜分離装置における水処理を十分に行えないことになる。また、第2のRO膜分離装置の逆浸透膜の交換時期が早まることにもなる。
【0012】
このように、逆浸透膜を備えた液処理ユニットで生じた濃縮液を、液回収ユニットで回収液と排液と、に分離し、回収液を液処理ユニットに再度供給する構成において、不具合の発生を抑制して、効率的な液処理を行うことが望まれる。
【0013】
本願の目的は、逆浸透膜を備えた液処理ユニットで生じた濃縮液を、液回収ユニットで回収液と排液と、に分離する構成において、不具合の発生を抑制して、効率的な液処理を長期にわたって維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一態様の液処理装置では、逆浸透膜を備え、被処理液が前記逆浸透膜を透過する透過液と前記透過液以外の濃縮液とに分離される液処理ユニットと、逆浸透膜を備え、前記濃縮液が前記逆浸透膜を透過する回収液と前記回収液以外の排液とに分離される液回収ユニットと、前記濃縮液の液圧を、前記液回収ユニットにおける前記回収液と前記排液への分離可能状態が継続するように昇圧して、前記液処理ユニットから前記液回収ユニットへ前記濃縮液を直接的に送液する昇圧手段と、を有する。
【0015】
液処理ユニットで生成された濃縮液の液圧が、昇圧手段によって昇圧される。そして、昇圧された濃縮液が、液回収ユニットに供給される。濃縮液では、たとえば被処理液と比較して不純物の濃度が高いが、濃縮液は昇圧されているので、液回収ユニットにおいて、効率的に濃縮液を回収液と排液とに分離できる状態を維持できる。
【0016】
昇圧手段は、濃縮液を液処理ユニットから液回収ユニットへ直接的に送液し、液処理ユニットと液回収ユニットの間に、濃縮液槽(タンク)等がない構造である。すなわち、液処理ユニットから液回収ユニットへ供給される濃縮液が、供給途中で滞留せず、不純物の濃度上昇が抑制される。このため、液回収ユニットにおいて、不純物濃度が高いことに起因する不具合、たとえばファウリングやスケーリングの発生を抑制し、効率的な液処理を長期にわたって維持することが可能となる。
【0017】
第二態様の液処理装置では、第一態様の液処理装置において、前記昇圧手段が、前記被処理液を加圧する被処理液ポンプと、前記透過液の流量を調整する透過液バルブと、を有する。
【0018】
すなわち、昇圧手段を、被処理液ポンプと透過液バルブとを含む簡単な構成で実現できる。液処理ユニットと液回収ユニットの間にポンプやバルブを設けないので、液処理ユニットと液回収ユニットとを配管で直結して濃縮液を液処理ユニットから液回収ユニットに供給することができる。
【0019】
第三態様の液処理装置では、第一態様の液処理装置において、前記昇圧手段が、前記被処理液を加圧する被処理液ポンプと、逆浸透膜を備え、前記透過液が前記逆浸透膜を透過する二次透過液と前記透過液以外の二次濃縮液とに分離される液処理第二ユニットと、前記濃縮液の流量を調整する濃縮液バルブと、を有する。
【0020】
すなわち、昇圧手段を、被処理液ポンプと液処理第二ユニットと濃縮液バルブとを含む簡単な構成で実現できる。液処理ユニットで生成された透過液を、液処理第二ユニットで再度液処理するので、透過液よりもさらに不純物が除去された第二透過液を生成すること可能である。また、液処理第二ユニットの昇圧効果が高いために液回収ユニットの供給圧が高くなりすぎるような場合でも、濃縮液バルブが設けられているので、液回収ユニットへの濃縮液の供給圧を、濃縮液バルブを用いて適正な圧力に調整できる。
【0021】
第四形態の液処理装置では、第一形態の液処理装置において、前記昇圧手段が、前記濃縮液を加圧する濃縮液ポンプと、前記濃縮液ポンプで加圧された前記濃縮液の流量を調整する濃縮液バルブと、を有する。
【0022】
すなわち、昇圧手段を、濃縮液ポンプと濃縮液バルブとを含む簡単な構成で実現できる。濃縮液ポンプは濃縮液を直接的に加圧するので、効率的に濃縮液を所望の圧力に昇圧できる。
【0023】
第五態様の液処理装置では、第一~第四のいずれか一つの態様の液処理装置において、前記液処理ユニットにおいて、前記透過液の流量を前記被処理液の流量で除した液回収率が75%以上90%以下である。
【0024】
液回収率を75%以上90%以下とすることで、被処理液から透過液を可能な限り多く生成すると共に、透過液の水質悪化を抑制し、さらに、濃縮液において過度に不純物が濃縮されることを抑制できる。
【0025】
第六態様の液処理装置では、第一~第五のいずれか一つの態様の液処理装置において、前記昇圧手段は、前記液回収ユニットの圧力損失の増加に応じて、前記濃縮液の液圧を高くする。
【0026】
液回収ユニットの圧力損失が増加すると、濃縮液の液圧が高くなるので、液回収ユニットにおいて、濃縮液を回収液と排液とに分離する効率の低下を抑制できる。また、本液回収ユニットの安定運転を実現できる。
【0027】
第七態様の純水製造システムでは、第一~第六のいずれか一つの態様の液処理装置と、前記液処理装置で生成された前記透過液から純水を生成する純水製造ユニットと、を有する。
【0028】
この純水製造装置では、第一~第七のいずれか一つの態様の液処理装置を有しているので、効率的な液処理を行い、透過液を生成することが可能である。
【0029】
純水製造ユニットでは、この透過液を用いて、効率的に純水を製造することが可能である。
【0030】
第八態様の液処理方法では、第一~第五のいずれか一つに記載の液処理装置を用いて被処理液を処理する液処理方法であって、前記昇圧手段において、前記液回収ユニットの圧力損失の増加に応じて、前記濃縮液の液圧を高くする。
【0031】
すなわち、この液処理方法では、第一~第五のいずれか一つに記載の液処理装置を用いているので、液回収ユニットにおいて、不純物濃度が高いことに起因する不具合、たとえばファウリングやスケーリングの発生を抑制し、効率的な液処理を長期にわたって維持することが可能となる。
【0032】
また、液回収ユニットの圧力損失が増加すると、濃縮液の液圧を高くするので、液回収ユニットにおいて、濃縮液を回収液と排液とに分離する効率の低下を抑制できる。また、液回収ユニットの安定運転を実現できる。
【発明の効果】
【0033】
本願では、逆浸透膜を備えた液処理ユニットで生じた濃縮液を、液回収ユニットで回収液と排液と、に分離する構成において、不具合の発生を抑制して、効率的な液処理を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は第一実施形態の液処理装置の一例である脱塩装置を備えた超純水製造システムを示す構成図である。
図2図2は第一実施形態の液処理装置の一例である脱塩装置を示す構成図である。
図3図3は第一実施形態の液処理装置の一例である脱塩装置の水処理ユニットを示す構成図である。
図4図4は第一実施形態の液処理装置の一例である脱塩装置の水回収ユニットを示す構成図である。
図5図5は脱塩装置における水処理ユニットおよび水回収ユニットの圧力を運転時間の経過と共に示すグラフである。
図6図6は第一比較例の脱塩装置を示す構成図である。
図7図7は第一比較例の脱塩装置における水処理ユニットおよび水回収ユニットの圧力を運転時間の経過と共に示すグラフである。
図8図8は第二比較例の脱塩装置を示す構成図である。
図9図9は第一実施形態の脱塩装置における水処理ユニットおよび水回収ユニットの圧力を運転時間の経過と共に示すグラフである。
図10図10は第一実施形態の変形例の液処理装置の一例である脱塩装置を示す構成図である。
図11図11は第二実施形態の液処理装置の一例である脱塩装置を示す構成図である。
図12図12は第二実施形態の脱塩装置における水処理ユニットおよび水回収ユニットの圧力を運転時間の経過と共に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して第一実施形態の脱塩装置24と、この脱塩装置24を備えた超純水製造システム12について説明する。脱塩装置24は、本開示の技術に係る水処理装置の一例である。
【0036】
以下において、単に「流れ方向」というときは、被処理水の流れ方向をいう。また、単に「上流」及び「下流」というときは、被処理水の流れ方向の「上流」及び「下流」をそれぞれ意味する。
【0037】
図1に示すように、超純水製造システム12は、前処理装置14、一次純水装置16、純水タンク18及び二次純水装置20を含んでいる。
【0038】
前処理装置14は、超純水の製造に用いられる原水を前処理する。前処理装置14としては、例えば、凝集沈殿処理装置、マイクロフィルターや限外ろ過装置等の濁質除去装置、活性炭吸着装置が設置される。原水としては、たとえば市水、井水、工業用水等の淡水が用いられる。ただし、原水の不純物の濃度によっては、図1に一点鎖線で示すように、前処理装置14による前処理を行うことなく、一次純水装置16に原水を送ることも可能である。なお、本開示の技術においては、前処理された原水も「原水」として記述する。
【0039】
前処理装置14で前処理された処理水に対し、一次純水装置16において、吸着、濾過、イオン交換等の各処理が施されることで、前処理装置14では除去しきれなかった不純物が除去され、一次純水が生成される。本実施形態では、脱塩装置24が一次純水装置16に含まれている。脱塩装置24は、被処理水を逆浸透膜56(詳細は後述する)に通すことで被処理水から不純物を除去し、逆浸透膜56を透過した透過水と、透過水以外の濃縮水とを得る装置である。脱塩装置24の前段には、常圧式脱気装置が設置される場合がある。また、一般的に、脱塩装置24の後段には、紫外線照射装置、混床式イオン交換装置、電気再生式イオン交換装置、脱気膜装置等が設置される。一次純水装置16で生成された一次純水が、純水タンク18に一時的に貯められた後に、二次純水装置20に送られる。
【0040】
一時純水に対し、二次純水装置20において、吸着、濾過、イオン交換等の各処理が施され、一次純水装置16では除去しきれなかった不純物がさらに除去されて、二次純水が生成される。二次純水は、ユースポイント22に送られて使用される。なお、一時純水の段階でユースポイント22に送る構成としてもよい。
【0041】
図2に示すように、脱塩装置24は、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28を有している。第一水処理ユニット26には、上流側から、原水配管30によって被処理水が供給される。被処理水は、前処理装置14に供給された原水であってもよいし、この原水に対し所定の処理が施された水であってもよい。以下では、被処理水として原水が用いられている場合を例として説明する。
【0042】
原水配管30には、上流側から、原水ポンプ32及び原水バルブ34が設けられている。
【0043】
原水ポンプ32は、第一水処理ユニット26に供給される原水の圧力を高めて第一水処理ユニット26に供給するポンプである。後述する第一比較例及び第二比較例の原水ポンプ120と比較して高い圧力を原水に作用させ、水回収ユニット28の連続的な運転が可能となるように、出力範囲が設定されている。
【0044】
図3に示すように、第一水処理ユニット26は、1つ又は複数のバンク50を有している。図3に示す例では第一バンク50A、第二バンク50B及び第三バンク50Cの3つのバンクを有している。複数のバンクを有する構成の場合、流れ方向に沿って直列で複数のバンク50が配置される。
【0045】
バンク50のそれぞれは、1つ又は複数のベッセル52を有している。図3に示す例では、第一バンク50Aは4つ、第二バンク50Bは2つ、第三バンク50Cは1つのベッセル52を有している。バンク50が複数のベッセル52を有する構成の場合は、流れ方向に対し並列で複数のベッセル52が配置される。
【0046】
ベッセル52は、複数のモジュール54を有している。図3に示す例では、1つのベッセル52において、流れ方向に沿って直列で4つのモジュール54A~Dが配置されている。
【0047】
モジュール54のそれぞれは、内部に逆浸透膜56を備えている。モジュール54に流入した被処理水は、逆浸透膜56を透過する透過水と、この透過水以外の濃縮水とに分離される。たとえば、1つのベッセル52内で最も上流側のモジュール54Aで生成された透過水は、図2に示すように、処理水配管38を経て第一水処理ユニット26から一次純水装置16に送られる。これに対し、モジュール54で生成された濃縮水は、上流側から2番目のモジュール54Bに流入し、再度、逆浸透膜56を透過する透過水と、この透過水以外の濃縮水とに分離される。このように、1つのベッセル52内では、被処理水を透過水と濃縮水に分離する動作が繰り返し行われわる。
【0048】
第一バンク50Aのベッセル52で生成された濃縮水は、一旦合流された後、第二バンク50Bの複数のベッセル52のいずれかに被処理水として流入する。そして、第二バンク50Bのベッセル52においても同様に、モジュール54によって透過水と濃縮水とに分離され、透過水は処理水配管38を経て一次純水装置16に送られ、濃縮水は合流された後、第三バンク50Cのベッセル52においても、複数のモジュール54によって、透過水と濃縮水とに分離され、透過水は処理水配管38を経て第一水処理ユニット26から一次純水装置16に送られる。これに対し、モジュール54で生成された濃縮水は、図2に示すように、濃縮水配管36を通って水回収ユニット28に送られる。
【0049】
このように、1つのベッセル52では、被処理水の流れ方向に沿って直列に配置された4つのモジュール54の全てで、逆浸透膜56を通過しなかった被処理水が濃縮水となる。これに対し、いずれか1つのモジュール54において逆浸透膜56を透過した被処理水は透過水となる。
【0050】
第一水処理ユニット26は、被処理水の流れ方向に沿って直列で複数のモジュール54が配置されているので、直列で1つのモジュール54が配置された構成と比較して、第一水処理ユニット26の回収率を高めることができる。たとえば、モジュール54の単体での回収率が10~20%である場合、第一水処理ユニット26の全体での回収率は75~90%となる。すなわち、スケールの発生の起きる条件に近いところまで水回収率を高めて行う。具体的には、例えば、ランゲラーインデックスが0以下が好ましく、-1~0がより好ましく、-0.5~0がさらに好ましく、また、シリカ濃度が80~120ppm程度まで濃縮するのが好ましい。
【0051】
また、第一水処理ユニット26の第一バンク50Aでは、被処理水の流れ方向に並列で複数のベッセル52、すなわちモジュール54が配置されているので、並列で1つのモジュール54が配置された構成と比較して、より多くの被処理水の処理が可能である。また、下流側に向かうにしたがって、並列方向に配置されるモジュール54の数は少なくなっている。すなわち、並列方向に配置されるモジュール54の数は、第一バンク50Aでは4つ(4列)、第二バンク50Bでは2つ(2列)、第三バンク50Cでは1つ(1列)である。下流側に向かうにしたがって、モジュール54で処理する被処理水の量は少なくなっていくので、このように、並列方向に配置されるモジュール54の数を下流側に向かって少なくしても、被処理水の処理には影響しない。すなわち、構成の簡素化を図りつつ、被処理水を確実に処理することが可能である。なお、第一水処理ユニット26は、流れ方向に対し並列で複数配置されていてもよい。
【0052】
図4に示すように、水回収ユニット28は、1つ又は複数のバンク50を有している。図4に示す例では第一バンク50D及び第二バンク50E及びの2つのバンク50を有している。複数のバンク50を有する構成の場合、被処理水の流れ方向に沿って直列で複数のバンク50が配置される。
【0053】
水回収ユニット28におけるそれぞれのバンク50は、1つ又は複数のベッセル52を有しており、複数のベッセル52を有するバンク(図4に示す例では第一バンク50D)では、ベッセル52は被処理水の流れ方向に並列に配置される。ベッセル52は、複数のモジュール54を有しており、1つのベッセル52において、被処理水の流れ方向に沿って直列で4つのモジュール54A~54Dが配置されている。
【0054】
水回収ユニット28においても、第一水処理ユニット26と同様に、1つのベッセル52では、被処理水の流れ方向に沿って直列に配置された4つのモジュール54の全てで、逆浸透膜56を通過しなかった被処理水が濃縮され、排水となる。これに対し、いずれか1つのモジュール54において逆浸透膜56を透過した透過水は回収水となる。水回収ユニット28に供給される被処理水は、第一水処理ユニット26において生成された濃縮水であるので、第一水処理ユニット26の被処理水である原水よりも流量が少ない。したがって、水回収ユニット28は第一水処理ユニット26よりも小型化することが可能である。なお、水回収ユニット28も、流れ方向に対し並列で複数配置されていてもよい。
【0055】
第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とは、濃縮水配管36で直結されており、水回収ユニット28には、第一水処理ユニット26で生成された濃縮水が被処理水とし直接的に供給される。そして、水回収ユニット28において、濃縮水は、逆浸透膜56を透過した回収水と、回収水以外の排水とに分離される。回収水は、脱塩装置24から回収されて他の装置に送られてもよいが、本実施形態では、回収水は再利用水となる。すなわち、回収水は、回収水配管46を通って、原水ポンプ32よりも上流側の原水配管30に戻され、脱塩装置24で再利用される。
【0056】
図2に示すように、脱塩装置24は、処理水バルブ40を有している。処理水バルブ40は、第一水処理ユニット26から透過水が処理水として流れ出る処理水配管38に設けられている。この処理水バルブ40を調整することで、処理水配管38の圧力損失を調整し、処理水の流量を増減させることができる。
【0057】
本実施形態では、上記したように、原水ポンプ32の出力が、第一比較例及び第二比較例の原水ポンプ120よりも高められている。そして、原水ポンプ32と濃縮水配管36と処理水バルブ40とで、昇圧手段の一例を成している。
【0058】
さらに、脱塩装置24は、排水バルブ44を有している。排水バルブ44は、水回収ユニット28から濃縮水が排水として流れ出る排水配管42に設けられている。排水バルブ44を調整することで、排水配管42の圧力損失を調整することができる。
【0059】
原水配管30には、原水バルブ34と第一水処理ユニット26の間に原水圧センサ60が設けられており、原水配管30を流れる水の圧力を検知できる。
【0060】
処理水配管38には、第一水処理ユニット26と処理水バルブ40との間に、処理水圧センサ62及び処理水流量センサ64が設けられている。処理水圧センサ62は、処理水配管38を流れる処理水の水圧を検出でき、処理水流量センサ64は、処理水配管38を流れる処理水の流量を検出できる。
【0061】
濃縮水配管36には、濃縮水圧センサ66及び濃縮水流量センサ68が設けられている。濃縮水圧センサ66は、濃縮水配管36を流れる濃縮水の水圧を検知できる。濃縮水流量センサ68は、濃縮水配管36を流れる濃縮水の流量を検知できる。
【0062】
回収水配管46には、回収水圧センサ70が設けられている。回収水圧センサ70は、回収水配管46を流れる回収水の水圧を検知できる。
【0063】
排水配管42には、排水圧センサ72及び排水流量センサ74が設けられている。排水圧センサ72は水回収ユニット28と排水バルブ44の間に設けられており、排水配管42を流れる排水の水圧を検知できる。排水流量センサ74は排水バルブ44よりも下流側に設けられており、排水配管42を流れる排水の流量を検知できる。
【0064】
回収水配管46には、回収水圧センサ70が設けられており、回収水配管46を流れる回収水の圧力を検知できる。
【0065】
本実施形態では、第一水処理ユニット26、水回収ユニット28、処理水バルブ40、排水バルブ44、原水圧センサ60、処理水圧センサ62、処理水流量センサ64、濃縮水圧センサ66、濃縮水流量センサ68、排水圧センサ72、排水流量センサ74が、単一のスキット76内に集約されて設置されている。
【0066】
次に、第一実施形態の脱塩装置24の作用及び液処理方法を、比較例の脱塩装置及び液処理方法と比較しつつ説明する。なお、以下に示す第一比較例及び第二比較例において、第一実施形態と同様の要素等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
第一実施形態の脱塩装置24では、被処理水としての原水が第一水処理ユニット26に供給される。第一水処理ユニット26では、原水が、逆浸透膜56(図3参照)を透過した透過水と、この透過水以外の濃縮水とに分離される。濃縮水は、被処理水中の不純物が濃縮された水であり、濃縮水配管36を通って、水回収ユニット28に供給される。
【0068】
水回収ユニット28では、供給された濃縮水が、逆浸透膜56(図4参照)を透過した回収水と、この回収水以外の排水とに分離される。回収水は、濃縮水から不純物が除去された水である。この回収水を、第一水処理ユニット26に再度供給して被処理水(再利用水)として再利用可能であり、効率的な処理水の生成が可能である。なお、回収水を脱塩装置24における被処理水以外の用途に用いてもよい。
【0069】
ところで、本開示の技術の水処理装置において用いられる原水には、スケール成分が含まれており、脱塩後の濃縮水ではスケール成分の濃度が上昇している。また、原水には、スケール成分の他にも、水回収ユニット28においてファウリングやスケーリングの原因となる各種の不純物、すなわちファウリング成分やスケール成分も含まれている。原水が第一水処理ユニット26によって透過水と濃縮水とに分けられるので、濃縮水では、ファウリング成分やスケール成分の濃度が原水よりも高くなっている。
【0070】
本実施形態のように、液処理装置が脱塩装置24である場合には、たとえば原水のフラックスが0.6m/dである場合、第一水処理ユニット26の入口部分での運転圧力(以下、「入口運転圧力」という)は1.0MPa以上1.5MPa以下に設定される。これに対し水回収ユニット28では、濃縮水のファウリング成分の濃度が高いため、第一水処理ユニット26と異なる回収率、たとえば30%以上65%以下として運転される。この場合、濃縮水ではファウリング成分の濃度が高いので、第一水処理ユニット26と比較して水回収ユニット28では、入口運転圧力としてより高い圧力に設定される。たとえば濃縮水のフラックスが0.6m/dである場合、水回収ユニット28の入口部分での運転圧力は1.0MPa以上1.8MPa以下に設定される。換言すれば、原水ポンプ32の能力としては、上記の入口運転圧力が達成できる程度の能力が求められる。
【0071】
図5には、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28のそれぞれを運転させるために作用させる必要供給圧力の時間変化が示されている。第一水処理ユニット26の必要供給圧力の数値範囲は、上記したように1.0MPa以上1.5MPa以下である。第一水処理ユニット26では、運転の時間経過に伴って徐々にファウリングが進行するため、これに合わせて必要供給圧力も徐々に高くなっていく。同様に、水回収ユニット28の必要供給圧力の数値範囲は1.0MPa以上1.8MPa以下であり、第一水処理ユニット26の必要供給圧力と同様に、運転の時間経過に伴うファウリングの進行により、徐々に高くなっていく。
【0072】
運転開始時では、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とで必要供給圧力の値は同一(図5の例では1MPa)である。原水及び濃縮水の両方にファウリング成分が含まれているので、運転時間経過に伴って必要供給圧力は上昇するが、特に濃縮水の方が原水よりもファウリング成分の濃度が高いので、水回収ユニット28の必要供給圧力の上昇割合が大きい。
【0073】
所定の時間間隔で(図5の例では1~3M)で、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28のそれぞれのクリーニングを行うことで、ファウリング成分を除去できる。これにより、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28の両方で必要供給圧力は小さくなるが、クリーニング直後であっても、運転開始時又はその1段階前のクリーニング直後よりはわずかに高い。したがって、このような定期的なクリーニングを繰り返し行って第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28の回復を図っても、実質的に必要供給圧力は運転に伴い徐々に上昇していく。そして、図5において1~3Yで示すように、この必要供給圧力が所定の値(第一水処理ユニット26では1.5MPa、水回収ユニット28では1.8MPa)に達すると、モジュール54を交換する。なお、逆浸透膜56の交換時期は、たとえば、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28の運転コストがより少なくなるように設定できる。
【0074】
以上の説明から分かるように、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28の入口運転圧力は、運転開始時は同じであるが、以降は、第一水処理ユニット26よりも水回収ユニット28の方が大きい。
【0075】
ここで、図6に示す第一比較例の脱塩装置104について説明する。
【0076】
第一比較例の脱塩装置104では、濃縮水配管106が中間で2つ、すなわち上流部分106Aと、下流部分106Bとに分断されている。上流部分106Aと下流部分106Bの間には濃縮水タンク108が設けられており、第一水処理ユニット26で生成された濃縮水は、濃縮水タンク108に一時的に貯留される。濃縮水タンク108に貯留された濃縮水の量は、水位センサ116で検知した水位から算出できる。
【0077】
濃縮水配管106の上流部分106Aには、濃縮水バルブ110が設けられており、第一水処理ユニット26から濃縮水タンク108に流れる濃縮水の量を調整できるようになっている。
【0078】
濃縮水配管106の下流部分106B、すなわち濃縮水タンク108と水回収ユニット28の間には、濃縮水ポンプ112、濃縮水バルブ114及び濃縮水圧センサ78が設けられている。濃縮水ポンプ112を作動させることにより、濃縮水タンク108に貯留された濃縮水を加圧して、水回収ユニット28に供給できる。また、濃縮水バルブ114の開度を調整することにより、所望の圧力及び流量で濃縮水を水回収ユニット28に供給できる。上記したように、水回収ユニット28の必要供給圧力は、第一水処理ユニット26の必要供給圧力よりも大きいが、濃縮水を濃縮水ポンプ112で昇圧することで、水回収ユニット28に対する濃縮水の供給圧力として、必要供給圧力を確保できる。したがって、第一比較例の脱塩装置104の原水ポンプ120は、第一実施形態の脱塩装置24の原水ポンプ34よりも出力が低くて済む。
【0079】
第一比較例の脱塩装置104では、このように濃縮水配管106の途中に濃縮水タンク108が設けられており、この濃縮水タンク108と水位センサ116とで1つのスキット118Bに設置されている。そして、第一水処理ユニット26、濃縮水バルブ110、原水圧センサ60、処理水圧センサ62、濃縮水圧センサ66、処理水流量センサ64、濃縮水流量センサ68が1つのスキット118Aに設置され、水回収ユニット28、排水バルブ44、排水圧センサ72が1つのスキット118Cに設置されている。
【0080】
濃縮水が高濃度のスケール成分を有している場合、水回収ユニット28において、スケール成分の析出を抑制することが望まれる。たとえば、濃縮水にスケール抑制剤を注入してスケール成分の濃縮率を向上させることで回収水の量を多くし、結果的に回収率を高めることが可能である。また、濃縮水にpH調整剤を注入して、pHを調整することもある。第一比較例の脱塩装置104では、濃縮水タンク108を有しているので、これらの薬剤の注入が容易である。
【0081】
ところで、第一比較例の脱塩装置104では、濃縮水を一時的に濃縮水タンク108に貯留するので、水回収ユニット28におけるファウリング抑制を図るための濃縮水ポンプ112による濃縮水の加圧管理や、濃縮水バルブ114の制御による濃縮水の流量管理をそれぞれ別々に行う。さらには、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とは、運転の必要供給圧力の上昇程度(時間当たりの上昇量)も異なるので、水回収ユニット28を第一水処理ユニット26と異なる運転条件(被処理水の供給圧、供給量等)で運転管理する。
【0082】
しかしながら、第一比較例の脱塩装置104では、第一水処理ユニット26から水回収ユニット28への濃縮水の流れが濃縮水タンク108によって分断されているため、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28では、異なる運転管理下に置く必要が生じる。
【0083】
しかも、第一比較例のように濃縮液を濃縮水タンク108に貯留すると、濃縮水に含まれる不純物はスケールが起きる限界近くまで濃縮されているので、不純物が濃縮水タンク108内に滞留し、例えば、水分の蒸発や炭酸の溶解等の影響によって、濃縮液の不純物濃度が一時的に且つ局所的に飽和濃度を超えることがある。しかも、濃縮された濁質分が核となってスケールの析出を促進させる恐れがある。したがって、タンク内の濃縮水中にはスケールした微粒子が運転継続とともに次第に増加するようになる。また、たとえば、原水に添加された凝集剤が濃縮水タンク108内で濃縮されることがある。また、濃縮水タンク108では、原水中に含まれていたミネラル成分が濃縮水タンク108内で濃縮され、生菌等の微生物にとって栄養豊富な状態になっていることがあり、この場合は微生物の繁殖を招きやすい。そして、この状態の濃縮水を水回収ユニット28に供給すると、スケールや濃縮された凝集剤や微生物等の不溶解成分によって、水回収ユニット28のモジュール54内でのスケーリングやファウリングが助長されるおそれがある。
【0084】
図7には、第一比較例の脱塩装置104において、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28のそれぞれを運転させるために必要な必要供給圧力の時間変化が示されている。第一比較例の脱塩装置104では、水回収ユニット28の運転が可能な圧力が得られるように濃縮水ポンプ112で濃縮水を昇圧する。
【0085】
第一比較例の脱塩装置104においても、運転開始時の必要供給圧力は、図5に示す例と同じ(1MPa)である。しかし、水回収ユニット28における必要供給圧力の上昇程度(時間当たりの上昇率)は、図5に示す例よりも大きい。このため、膜交換(実際上はモジュール54(図3及び図4参照)の交換)をする基準として設定した圧力(1.8MPa)の上限に達する時間が短い。また、たとえば、1~3Yの時間間隔で見ると、この状態で水回収ユニット28の運転を続けるには、頻繁にクリーニングを行う必要が生じている。
【0086】
このように濃縮水タンク108を備えることで生じる不都合を解消するには、たとえば、図8に示す第二比較例の脱塩装置124を用いることが考えられる。この脱塩装置124では、第一比較例の脱塩装置104と同様に原水ポンプ120を有しているが、この原水ポンプ120の出力は、第一実施形態の原水ポンプ32の出力よりも低い。但し、第一水処理ユニット26において原水(被処理水)を処理水と濃縮水とに分離するために必要な水圧を原水に作用させる程度の出力は有している。
【0087】
第二比較例の脱塩装置124では、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とが濃縮水配管36で直結されており、濃縮水が第一水処理ユニット26と水回収ユニット28との間で滞留しない。したがって、濃縮水タンク108(図6参照)に滞留した不溶解成分によって、水回収ユニット28にファウリングが生じやすくなる事態も抑制できる。
【0088】
しかしながら、第二比較例の脱塩装置124では、第一比較例の脱塩装置104において設けられた濃縮水ポンプ112(図6参照)は設けられていない。したがって、水回収ユニット28への濃縮水の供給圧力は、結果的に原水ポンプ32が担うことになる。ところが、第二比較例の脱塩装置124において、原水ポンプ32の供給能力は、第一水処理ユニット26を運転できる(原水を透過水と濃縮水とに分離できる)程度、具体的には1.0MPa以上1.5MPaに設定されている。第一水処理ユニット26において圧力損失があるので、水回収ユニット28から流出した濃縮水の実際の圧力はさらに低くなる。水回収ユニット28の必要供給圧力は1.0MPa以上1.8MPaであるので、水回収ユニット28において濃縮水を回収水と排水とに分離するには圧力が不足する場合が生じる。
【0089】
これに対し、第一実施形態の脱塩装置24では、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とが濃縮水配管36で直結されており、第一水処理ユニット26から水回収ユニット28に濃縮水が流れる経路に濃縮水が滞留する部位がない。濃縮水が滞留しないので、濃縮水中の凝集成分の凝集を抑制できる。これにより、水回収ユニット28でのファウリングを抑制できる。その結果、水回収ユニット28の運転に必要な圧力の上昇も抑制でき、水回収ユニット28を流れる被処理水(濃縮水)の流量を多く確保できる。そして、第一水処理ユニット26に対し回収水を確実に戻すと共に、水回収ユニット28のクリーニングや膜交換の頻度を少なくして、効率的な液処理を長期間にわたって行うことが可能である。
【0090】
図9には、第一実施形態の脱塩装置24において第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28における必要供給圧力の時間変化が示されている。
【0091】
また、表1には、第一比較例、第二比較例、第一実施形態及び後述する第二実施形態において、動作開始時と動作開始から3年経過時の各種状態が示されている。
【0092】
【表1】
【0093】
第一実施形態の脱塩装置24では、第一比較例の脱塩装置104と比較して、原水ポンプ32の出力が高く設定されている。そして、処理水バルブ40の開度を調整することで、第一水処理ユニット26における入口運転圧力を所望の圧力に設定できるようになっている。具体的には、第一水処理ユニット26に対する供給圧力は1.2MPa以上2.0MPa以下となるように設定される。第一水処理ユニット26では被処理水が流入し濃縮水として流出する場合に所定の圧力損失(たとえば0.2MPa程度)があるので、水回収ユニット28へ供給される濃縮水の供給圧力もその分低くなっている。しかし、水回収ユニット28において濃縮水の分離に必要な圧力範囲である1.0MPa以上1.8MPa以下の圧力範囲は維持されている。
【0094】
このように、第一実施形態の脱塩装置24では、原水ポンプ32の出力を、第一比較例及び第二比較例の原水ポンプ120よりも高く設定することで、水回収ユニット28に対する被処理水(濃縮水)の供給圧力を確保している。あらたにポンプを追加することなく簡単な構成で昇圧手段を構成し、水回収ユニット28の運転に求められる被処理水の圧力を確保すると共に、水回収ユニット28における確実な運転を実現できる。
【0095】
しかも、水回収ユニット28は、時間経過に応じてファウリングが進行し圧力損失が高くなるが、原水ポンプ32の出力も徐々に高めることで、濃縮水の圧力、すなわち水回収ユニット28への供給圧を高める。このため、運転時間が経過しても、水回収ユニット28でのファウリングを抑制でき、濃縮液を回収液と排液とに分離する効率の低下を抑制できる。液回収ユニット28において、時間経過に伴って圧力損失が高くなる影響を少なくし、液回収ユニット28の安定運転を実現できる。
【0096】
さらに、第一実施形態の脱塩装置24では、処理水バルブ40を有しており、処理水配管38を流れる透過水(処理水)の圧力を調整できる。これにより、濃縮水配管36を流れる濃縮水の水圧を調整し、適切な水圧で濃縮水を水回収ユニット28に供給することが可能である。たとえば、水回収ユニット28のファウリングの進行に伴って、第一水処理ユニット26に対する原水の供給圧力を上げた場合に、処理水バルブ40の開度を小さくすることで、濃縮水の水圧を確保すると共に、処理水の過度の圧力上昇を抑制できる。
【0097】
また、原水ポンプ32の出力と、処理水バルブ40の開度とを適切に設定することで、第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28における回収率を所望の値に調整することが容易である。
【0098】
さらには、濃縮水配管36に濃縮水タンク108を設けないので、構造の簡素化を図ると共に、脱塩装置24を低コストで運転することが可能である。濃縮水タンク108を設けないことで、第一水処理ユニット26から水回収ユニット28へ連続的に濃縮水が流れるので、水回収ユニット28を第一水処理ユニット26と異なる運転管理下に置く必要もない。
【0099】
また、第一比較例の脱塩装置104では、図6に示したように、3つのスキット118A、118B、118Cを有しているので、設置場所の制約を受けやすく、設置コストの上昇を招くおそれがある。これに対し、第一実施形態の脱塩装置24では、濃縮水タンク108がなく、1つのスキット76として構成できるので、設置場所の自由度が高くなると共に、設置コストを低減できる。さらに、ポンプの台数としても、第一実施形態の脱塩装置24では原水ポンプ32の1台で済むので、第一比較例の脱塩装置104のように、原水ポンプ120と濃縮水ポンプ112の2台のポンプを用いる構成と比較して、設置スペースが少なくて済む。
【0100】
なお、原水には、上記したようにスケール成分が含まれているが、このスケール成分の濃度と、第一水処理ユニット26内での最適な被処理液の流量とを調整することで、第一水処理ユニット26における回収率として75%以上90%以下の範囲を達成することが可能である。なお、水回収の効率のみを考えると、この回収率はより高いことが好ましいが、あまりに高く設定するとスケールが生じるおそれが高くなるため、スケールを抑制する観点からは、回収率の上限として90%程度、好ましくは80%程度に設定する。
【0101】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。第一実施形態の変形例において、第一実施形態と同様の要素については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0102】
図10には、第一実施形態の変形例の脱塩装置84が示されている。第一実施形態の変形例の脱塩装置84では、第一実施形態の脱塩装置24における処理水バルブ40(図2参照)に代えて、第二水処理ユニット86が配置されている。
【0103】
この第二水処理ユニット86は、第一水処理ユニット26と同様に、内部に1つ又は複数のバンク50(図3参照)を備えると共に、バンク50は1つ又は複数のベッセル52を備えている。第二水処理ユニット86には、第一水処理ユニット26の透過水が被処理水として供給される。そして、この透過水が、ベッセル52の複数のモジュール54に備えられた逆浸透膜56を透過した第二透過水と、第二透過水以外の濃縮水とに分離される。
【0104】
また、濃縮水配管36に濃縮水バルブ88が設けられている。濃縮水バルブ88の開度を調整することで、濃縮水配管36を流れる濃縮水の水圧及び流量を調整できる。第二実施形態では、昇圧手段が、原水ポンプ32、第二水処理ユニット86及び濃縮水バルブ88を含む構成である。
【0105】
なお、図10では、各配管に設けられる圧力計及び流量計の図示を省略しているが、たとえば、第一実施形態の脱塩装置24と同様に、各配管の適所に圧力計及び流量計が設けられる。
【0106】
このような構成とされた第一実施形態の変形例の脱塩装置84においても、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とは濃縮水配管36で直結されており、濃縮水が滞留する部位がない。濃縮水が滞留しないので、濃縮水中の凝集成分の凝集を抑制できる。そして、水回収ユニット28でのファウリングを抑制でき、水回収ユニット28の圧力損失の上昇も抑制できるので、水回収ユニット28の運転に必要な圧力上昇も抑制でき、水回収ユニット28を流れる被処理水(濃縮水)流量を多く確保できる。
【0107】
しかも、第一実施形態の変形例の脱塩装置84では、第二水処理ユニット86を有している。第二水処理ユニット86は第一水処理ユニット26の下流側に位置しており、第一水処理ユニット26の処理水が、第二水処理ユニット86によってさらに第二処理水と濃縮水とに分離される。したがって、第一実施形態の変形例の脱塩装置84で得られる第二処理水としては、第一実施形態の脱塩装置24で得られる処理水よりもさらに不純物の少ない水が得られる。
【0108】
第一実施形態の変形例の脱塩装置84では、濃縮水配管36に濃縮水バルブ88が設けられている。脱塩装置84の原水ポンプ32は、第一比較例及び第二比較例の原水ポンプ120よりも高い圧力を被処理水に作用させるが、濃縮水バルブ88の開度を調整することで、第一水処理ユニット26から水回収ユニット28に供給される濃縮水の圧力及び流量を適切な範囲に調整できる。
【0109】
そして、第一実施形態の変形例の脱塩装置84では、原水ポンプ32、第二水処理ユニット86及び濃縮水バルブ88を設ける簡単な構成で、水回収ユニット28の運転に求められる被処理水の圧力を確保すると共に、水回収ユニット28における確実な運転を実現できる。
【0110】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態と同様の要素については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0111】
図11に示すように、第二実施形態の脱塩装置204では、処理水配管38に処理水バルブ40(図2参照)や第二水処理ユニット86(図10参照)は設けられていない。
【0112】
また、濃縮水配管36には、第一水処理ユニット26側から順に濃縮水ポンプ206及び濃縮水バルブ208が設けられている。濃縮水ポンプ206は、濃縮水配管36を流れる濃縮水を昇圧して、水処理ユニットに供給することが可能である。濃縮水バルブ208は、濃縮水ポンプ206で昇圧された濃縮水の圧力及び流量を調整できる。第二実施形態では、昇圧手段が、濃縮水ポンプ206及び濃縮水バルブ208を含む構成である。
【0113】
なお、図11では、各配管に設けられる圧力計及び流量計の図示を省略しているが、たとえば、第一実施形態の脱塩装置24と同様に、各配管の適所に圧力計及び流量計が設けられる。
【0114】
このような構成とされた第二実施形態の脱塩装置204においても、第一水処理ユニット26と水回収ユニット28とは濃縮水配管36で直結されており、濃縮水が滞留する部位がない。濃縮水が滞留しないので、濃縮水中の凝集成分の凝集を抑制できる。そして、水回収ユニット28でのファウリングを抑制でき、水回収ユニット28の圧力損失の上昇も抑制できるので、水回収ユニット28の運転に必要な圧力上昇も抑制でき、水回収ユニット28を流れる被処理水(濃縮水)流量を多く確保できる。
【0115】
第二実施形態の脱塩装置204では、濃縮水配管36に濃縮水ポンプ206が設けられている。原水ポンプ32の圧力の一部は濃縮水に作用しているが、この圧力を用いつつ、濃縮水ポンプ206によって濃縮水を昇圧し、水回収ユニット28に供給することが可能である。すなわち、原水ポンプ32の圧力の足りない分を、圧縮水ポンプ206を用いて適切に補い、圧縮水が所定の圧力を有する状態を実現できる。そしてこれにより、原水ポンプ32では、濃縮水を水回収ユニット28での水処理を考慮して昇圧する必要がない(第一水処理ユニット26での水処理ができる程度の加圧で十分である)ので、原水ポンプ32の小型化を図ることができる。濃縮水を直接的に加圧するので、効率的に所望の圧力に昇圧できる。
【0116】
図12には、第二実施形態の脱塩装置84において第一水処理ユニット26及び水回収ユニット28における必要供給圧力と、第一水処理ユニット26から排出される濃縮水圧力が示されている。
【0117】
第二実施形態の脱塩装置204では、第一水処理ユニット26の入口供給圧力が1.0MPa以上1.8MPa以下となるように原水ポンプ32の出力が設定されている。このため、第一水処理ユニット26の出口での濃縮水の圧力は、第一水処理ユニット26の圧力損失の分だけ低下する。図12に示す例では、第一水処理ユニット26の出口の濃縮水圧力は、第一水処理ユニット26のへの必要供給圧力から低下している。しかし、濃縮水配管36に設けられた濃縮水ポンプ206によって濃縮水を加圧するので、水回収ユニット28の必要供給圧力まで濃縮水を昇圧できる。
【0118】
そして、第二実施形態の脱塩装置204では、濃縮水ポンプ206及び濃縮水バルブ208を設ける簡単な構成で、水回収ユニット28の運転に求められる被処理水の圧力を確保すると共に、水回収ユニット28における確実な運転を実現できる。
【0119】
上記説明では、本開示の技術の液処理装置が脱塩装置である例を挙げているが、逆浸透膜を用いて原水から不純物を除去する装置に広く適用可能である。
【0120】
また、液処理装置における処理対象としての被処理液は、上記した市水、井水、工業用水等の淡水に限定されず、たとえば海水であってもよい。さらには、被処理液の溶媒も水に限定されない。
【0121】
上記した超純水製造システム12は、本開示の技術における純水製造システムの一例である。生成される水の不純物濃度に応じて、たとえば二次純水装置20を省略することで、純水製造システムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0122】
12 超純水製造システム(純水製造システムの一例)
14 前処理装置
16 一次純水装置
18 純水タンク
20 二次純水装置
22 ユースポイント
24 脱塩装置(液処理装置の一例)
26 第一水処理ユニット(液処理ユニットの一例)
28 水回収ユニット(液回収ユニットの一例)
30 原水配管
32 原水ポンプ(被処理液ポンプ、昇圧手段の一例)
34 原水バルブ
36 濃縮水配管(昇圧手段の一例)
38 処理水配管
40 処理水バルブ(昇圧手段の一例)
42 排水配管
44 排水バルブ
46 回収水配管
50 バンク
52 ベッセル
54 モジュール
56 逆浸透膜
76 スキット
84 脱塩装置(液処理装置の一例)
86 第二水処理ユニット(液処理第二ユニットの一例)
88 濃縮水バルブ(昇圧手段の一例)
204 脱塩装置(液処理装置の一例)
206 濃縮水ポンプ(昇圧手段の一例)
208 濃縮水バルブ
【要約】
【課題】逆浸透膜を備えた液処理ユニットで生じた濃縮液を、液回収ユニットで回収液と排液と、に分離する構成において、不具合の発生を抑制して、効率的な液処理を維持する。
【解決手段】脱塩装置12(液処理装置)は、逆浸透膜を備え、被処理液が逆浸透膜を透過する透過液と透過液以外の濃縮液とに分離される第一水処理ユニット26(液処理ユニット)と、逆浸透膜を備え、濃縮液が逆浸透膜を透過する回収液と回収液以外の排液とに分離される水回収ユニット28(液回収ユニット)と、濃縮液の液圧を、液回収ユニットにおける回収液と排液への分離可能状態が継続するように昇圧して、液処理ユニットから液回収ユニットへ濃縮液を直接的に送液する昇圧手段と、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12