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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】臓器を撮像する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 ZDM
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020521505
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018077957
(87)【国際公開番号】W WO2019076775
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】1717026.7
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518360874
【氏名又は名称】パースペクトゥム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーヴィング,ベンジャミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハットン,クロエ
(72)【発明者】
【氏名】プロフェッサー サー ブレイディ,ジョン マイケル
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-092685(JP,A)
【文献】特開2014-091051(JP,A)
【文献】特開2016-007270(JP,A)
【文献】特表2011-512963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0075900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126795(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0366500(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234237(US,A1)
【文献】特表2014-530686(JP,A)
【文献】特開2006-095279(JP,A)
【文献】I.A. Popescu, B. Irving, A.Borlotti, E. Dall'Armellina, and V. Grau,Myocardial scar quantification using SLIC superpixels - Parcellation based on tissue characteristic strain,proceeding of the 7th international workshop on statistical atlases and computational modeling of the heart,2016年,pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の内臓における変化を定量化する方法であって、
第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含み、内臓の第1画像を有する第1医療MRIスキャンを第1時点で取得することと、
第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含み、前記内臓の第2画像を有する第2医療MRIスキャンを、前記第1時点の前又は後であってよい第2時点で取得することであって、前記第1のボクセルの組及び前記第2のボクセルの組の中の各ボクセルは、定量的なT1値、定量的なT2*値、補正としてT2*を使用するT1に基づくcT1値、又はPDFF値、あるいは、T1、T2*及び/又はPDFF値の組み合わせ、のいずれかを供給する、ことと、
画像コンテンツに基づいて前記内臓の前記第1画像の少なくとも部分を第1のサブ領域の組に分割することであり、該第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、前記第1のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、前記第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、前記内臓の前記第1画像を分割することと、
前記内臓の前記第1画像を分割することの前又は後で、前記第1医療MRIスキャン及び前記第2医療MRIスキャンをアライメントすることと、
前記第1のサブ領域の組に基づいて前記内臓の前記第2画像の少なくとも部分を第2のサブ領域の組に分割することであり、該第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、前記第2のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、前記第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、前記内臓の前記第2画像を分割することと、
前記内臓の前記第1画像内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、前記内臓の前記第2画像内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することと、
前記T1値、前記T2 値、前記cT1値、又は前記PDFF値、のいずれかにおける前記サブ領域についての差である、前記メトリックの前記第1値と前記メトリックの前記第2値との間の差を評価し、それによって、前記第1時点と前記第2時点との間に当該サブ領域で起こった変化の指標を供給することと
を有する方法。
【請求項2】
被験者の内臓における変化を定量化する方法であって、
第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含み、内臓の第1画像を有する第1医療MRIスキャンを第1時点で取得することと、
第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含み、前記内臓の第2画像を有する第2医療MRIスキャンを第2時点で取得することであって、前記第1のボクセルの組及び前記第2のボクセルの組の中の各ボクセルは、定量的なT1値、定量的なT2*値、補正としてT2*を使用するT1に基づくcT1値、又はPDFF値、あるいは、T1、T2*及び/又はPDFF値の組み合わせ、のいずれかを供給する、ことと、
前記第1医療MRIスキャン及び前記第2医療MRIスキャンをアライメントし、次いで、前記内臓の前記第1画像及び前記内臓の前記第2画像をまとめて、前記内臓の前記第1画像及び前記内臓の前記第2画像の少なくとも部分の画像コンテンツに基づいて分割することであり、前記内臓の前記第1画像を分割することは、第1のサブ領域の組をもたらし、該第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、複数のボクセルを有する第1領域表現によって定義され、前記第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わず、前記内臓の前記第2画像を分割することは、第2のサブ領域の組をもたらし、該第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、複数のボクセルを有する第2領域表現によって定義され、前記第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わず、前記第1のサブ領域の組及び前記第2のサブ領域の組は対応する、前記内臓の前記第1画像及び前記内臓の前記第2画像を分割することと、
前記内臓の前記第1画像内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、前記内臓の前記第2画像内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することと、
前記T1値、前記T2 値、前記cT1値、又は前記PDFF値、のいずれかにおける前記サブ領域についての差である、前記メトリックの前記第1値と前記メトリックの前記第2値との間の差を評価し、それによって、前記第1時点と前記第2時点との間に当該サブ領域で起こった変化の指標を供給することと
を有する方法。
【請求項3】
前記第1データセットは、3D体積画像、2D画像スライスのスタック、又は単一の2D画像スライスのうちの1つであり、
前記第2データセットは、3D体積画像、2D画像スライスのスタック、又は単一の2D画像スライスのうちの1つである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1医療MRIスキャンは、前記第1データセットからの第1スライスであり、前記第2医療MRIスキャンは、前記第2データセットからの第2スライスであり、
前記方法は、
前記内臓を示す前記第1スライスの部分を前記第1スライスの他の部分からセグメント化することによって、前記内臓の前記第1画像を導出することと、
前記内臓を示す前記第2スライスの部分を前記第2スライスの他の部分からセグメント化することによって、前記内臓の前記第2医療MRIスキャンを導出することと
を更に有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記画像コンテンツに基づいて前記内臓の少なくとも部分を分割することは、
前記第1のボクセルの組の強度及び/又は前記第2のボクセルの組の強度に基づいて分割することを有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記内臓の前記第1画像及び/又は前記内臓の前記第2画像を分割することは、前記内臓の区分定数表現を生成することを有し、これによって、各サブ領域は局所的に類似している、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記内臓の前記第1画像及び/又は前記内臓の前記第2画像を分割することは、前記セグメント化の後に、前記内臓内のスーパーピクセルクラスタリングを更に有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記内臓の前記第1画像及び/又は前記内臓の前記第2画像を分割することは、前記内臓内の局所的類似性の表現を生成することを更に有し、類似性は、複数のイメージングモダリティ、又はテクスチャ、のいずれかに基づき定義される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記アライメントすることは、
前記第1医療MRIスキャン及び前記第2医療MRIスキャンを定義する画像コンテンツ派生情報をアライメントすること、
前記内臓の前記第1画像及び前記内臓の前記第2画像を定義する画像コンテンツ派生情報をアライメントすること、又は
サブ領域の境界上にある点、及び/若しくは前記内臓の境界上にある点を明示的にアライメントするように変換を使用すること
のいずれかを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1時点及び前記第2時点は、前記内臓が、形状、又は少なくとも1つのサブ領域の特性、のいずれかを変化させるのに十分な時間によって分離される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記メトリックは、少なくとも1つのサブ領域にわたる空間テクスチャの要約統計である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記内臓の前記第1画像の複数のサブ領域について、及び前記内臓の前記第2画像の対応するサブ領域について、前記メトリックを評価することと、
各サブ領域について前記メトリックの前記第1値と前記メトリックの前記第2値との間の前記差を評価し、それによって複数の差値を供給することと、
前記サブ領域の空間プロット上又はグラフ上のいずれかに前記複数の差値をプロットし、これによって、前記グラフ又は前記空間プロットは、前記第1時点と前記第2時点との間の各サブ領域での変化の視覚投影を供給する、ことと
を更に有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
第3時点で前記内臓の第3医療スキャンを取得することであり、該第3医療スキャンは前記内臓の第3画像を有する、ことと、
前記第3医療スキャンと、前記第1医療MRIスキャン及び前記第2医療MRIスキャンのうちの少なくとも一方とについて、請求項1又は2に記載の方法を繰り返すことと、
前記第1時点、前記第2時点、及び前記第3時点の間にサブ領域で起こった変化の視覚投影を供給するように、空間プロット上又はグラフ上のいずれかに、前記内臓の前記第1画像、前記第2画像、及び前記第3画像の間の前記メトリックの差値をプロットすることと
を更に有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
変化の閾値を定義することと、
少なくとも1つのサブ領域について、前記メトリックの前記第1値と前記メトリックの前記第2値との間の前記差を前記変化の閾値と比較し、それによって、前記変化の閾値が前記少なくとも1つのサブ領域について超えられているかどうかを識別することと、
前記メトリックが前記変化の閾値を超えているサブ領域を示すオーバーレイにより前記第1医療MRIスキャン又は前記第2医療MRIスキャンを表示することと
を更に有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記変化の閾値を超える変化がある前記内臓のパーセンテージを計算することを更に有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
変化の閾値を定義することと、
前記サブ領域について、前記メトリックの前記第1値、前記第2値、及び第3値の間の差を前記変化の閾値と比較し、それによって、前記変化の閾値が前記サブ領域について超えられているかどうかを識別することと、
前記第2医療MRIスキャン及び/又は前記第3医療スキャンについて、前記変化の閾値を超える変化がある前記内臓のパーセンテージを計算することと、
前記第2医療MRIスキャン及び/又は前記第3医療スキャンについて、前記変化の閾値を超える変化がある前記内臓の前記パーセンテージをプロットすることと
を更に有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第1時点で被験者の第1医療スキャンを取得し、該第1医療スキャンは、第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含み、内臓の第1画像を有し、
前記第1時点の前又は後であってよい第2時点で前記被験者の第2医療スキャンを取得し、該第2医療スキャンは、第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含み、前記内臓の第2画像を有し、
前記第1のボクセルの組及び前記第2のボクセルの組の中の各ボクセルが、定量的なT1値、定量的なT2*値、補正としてT2*を使用するT1に基づくcT1値、又はPDFF値、あるいは、T1、T2*及び/又はPDFF値の組み合わせ、のいずれかを供給する
よう構成される医療MRIイメージングデバイスと、
画像コンテンツに基づいて前記内臓の前記第1画像の少なくとも部分を第1のサブ領域の組に分割することであり、該第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、前記第1のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、前記第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、前記内臓の前記第1画像を分割することと、
前記内臓の前記第1画像を分割することの前又は後で、前記第1医療スキャン及び前記第2医療スキャンをアライメントすることと、
前記第1のサブ領域の組に基づいて前記内臓の前記第2画像の少なくとも部分を第2のサブ領域の組に分割することであり、該第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、前記第2のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、前記第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、前記内臓の前記第2画像を分割することと、
前記内臓の前記第1画像内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、前記内臓の前記第2画像内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することと、
前記T1値、前記T2 値、前記cT1値、又は前記PDFF値、のいずれかにおける前記サブ領域についての差である、前記メトリックの前記第1値と前記メトリックの前記第2値との間の差を評価し、それによって、前記第1時点と前記第2時点との間に当該サブ領域で起こった変化の指標を供給することと
によって、前記内臓における変化を定量化するよう構成されるプロセッサと
を有する医療スキャニングシステム。
【請求項18】
実行可能なプログラムコードが記憶されている非一時的なコンピュータプログラム製品であって、
前記プログラムコードは、請求項1乃至16のうちいずれか一項に記載の方法に従って内臓における変化を定量化するよう動作可能である、
非一時的なコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記非一時的なコンピュータプログラム製品は、ハードディスク、CD-ROM、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、リード・オンリー・メモリ(ROM)、プログラム可能リード・オンリー・メモリ(PROM)、消去可能なプログラム可能リード・オンリー・メモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラム可能リード・オンリー・メモリ(EEPROM)、及びフラッシュメモリを含むグループからの少なくとも1つを有する、
請求項18に記載の非一時的なコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を測定するために使用されるシステムの分野に関係がある。
【背景技術】
【0002】
医療イメージングの分野では、様々な技術が、人の解剖学的構造を調べるために使用可能である。次の例は、医療スキャンを提供するために使用されることがあるスキャンのタイプであり、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波(US)、磁気共鳴イメージング(MRI)、単光子放出断層撮影(SPECT)、及び陽子放出断層撮影(PET)がある。スキャンの各タイプは、「イメージングモダリティ」と呼ばれる。
【0003】
医療スキャンは「データセット」をもたらす。典型的なデータセットは、多くの空間位置の夫々での変数の値に関するデジタル情報を含む。ほとんどのデータセットは、3次元(3D)空間内の位置に関するデジタル情報を提供する。例えば、CTスキャンは、患者の胸部の又は頭部の画像を供給し得る。
【0004】
データが存在する3Dデータセットの最小単位は、「ボクセル」と呼ばれる3次元空間である。ボクセルは、2次元画像における「ピクセル」の3Dバージョンと同等とみなされ得る。3Dデータセットを通る面は、通常、「スライス」と呼ばれる。
【0005】
3Dデータセットが以下で論じられる場合に、データセットの最小単位はボクセルである。ボクセルサイズは、モダリティ及びスキャンタイプにわたって大いに変化する。2Dデータセットが以下で論じられる場合に、データセットの最小単位はピクセルである。2Dデータセットによれば、LiverMultiscanにより取得される2Dスライスは、厚さが8mmであり、連続するスライスどうしの間隔が15mmである。典型的なピクセルサイズは、1mm×1mmである。
【0006】
医療スキャンの解析は、様々な医療科目をサポートする。医療スキャンにおける構造及び組織タイプの認識は、高度に熟練したスタッフによって行われる。そのようなスタッフは、通常は、放射線技師又は、スキャナの訓練されたオペレータ、のいずれかである。放射線技師は、他の医療従事者、例えば、患者を助けるために必要な介入に関して決定を行うことに関わる者、の作業への情報の入力として、医療スキャンを使用することがある。
【0007】
図1は、人体における内臓の簡略化された例を表す。人体の胴体10が平面図で、例えば、横たわっている人に対してスキャンが実行される場合に、示されている。図1のビューは、通常、「冠状」(coronal)ビューと呼ばれる。図1では、肝臓120及び脾臓130が見える。既知のMRI又はCTスキャンは、臓器全体のそのようなビューを供給することができる。
【0008】
図2は、既知のシステムで使用され得る方法200を示す。
【0009】
オペレータは、通常、関心のある臓器を選択する(210)。次いで、求められている情報に応じて、オペレータは、スキャニングモードを選択する(220)。次いで、選択されたスキャニングモードによるスキャン(230)は、関心のある1つ以上の選択された臓器の適切な画像を供給すべきである。いくつかの場合に、任意のステップとして、関心のある同じ1つ以上の選択された臓器の繰り返しスキャン240が含まれることがある。オペレータは、例えば、臓器の大域的な変化を探すとの決定に基づいて、繰り返しスキャンを実行すると決定し得る。
【0010】
生体器官は、局所解析のために、連続したサブ領域に分割され得る(以下の非特許文献1を参照)。「クラスタ化」のような様々な他の方法が、腫瘍又は臓器の部位を評価するために利用可能である。時間にわたる臓器の大域的記述の変化は、臨床医が疾患の経年的な進行を見分けることを助け得る(非特許文献2を参照)。脳イメージングでは、特定の解剖学的部位の形状変化が時間にわたってモニタされ得る(非特許文献3を参照)。全体的な臓器形状の変化がモニタされ得る(非特許文献4を参照)。これらの方法は、関心領域の大域的しか提供することができない。
【0011】
本明細書の残りでは、内臓(visceral organ)は、胸部又は腹部の臓器を意味すると理解される。内臓の例は、肝臓、膵臓、脾臓又は腎臓である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Irving et al. 2016. mask SLIC: Regional Superpixel Generation with Application to Local Pathology Characterisation in Medical scans. arXiv:1606.09518
【文献】O’Connor et al. 2016. Imaging Intratumor Heterogeneity: Role in Therapy Response, Resistance, and Clinical Outcome
【文献】Raz et al. 2005. Regional Brain Changes in Ageing healthy Adults: General Trends, Individual Differences and Modifiers
【文献】Heimann and Meinzer. 2009. Statistical shape models for 3D medical scan segmentation: A review
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様に従って、添付の請求項1に記載の方法が提供される。本発明の第2の態様に従って、添付の請求項2に記載の方法が提供される。本発明の第3の態様に従って、添付の請求項18に記載の医療スキャニングシステムが提供される。本発明の第4の態様に従って、添付の請求項19に記載の非一時的なコンピュータプログラム製品が提供される。従属請求項は、任意の実施形態の詳細を与える。
【0014】
本発明のこれら及び他の態様は、以降で記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明される。
【0015】
本発明の更なる詳細、態様、及び実施形態は、単なる一例として、図面を参照して記載される。図面中、同じ参照番号は、同じ又は機能的に類似した要素を特定するために使用される。図中の要素は、簡潔さ及び明瞭さのために表され、必ずしも実寸通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】人体における内臓の簡略化された例を表す。
図2】先行技術の方法の例の略フローチャートを表す。
図3】a及びbは夫々、データセットからの医療スキャンのスライスの例を表す。
図4】本発明に従うセグメント化された分割画像の例を表す。
図5図4のセグメント化された分割画像内の変化の例を表す。
図6】本発明に従う方法の略フローチャートである。
図7】本発明に従う他の方法の略フローチャートである。
図8】実施形態に従う方法の略フローチャートである。
図9】他の実施形態に従う方法の略フローチャートである。
図10】MRIスキャンデータセットから取得された3次元医療スキャンのスライスの例である。
図11】クロスハッチをオーバーレイされた図10のスライスを表す。
図12図11のクロスハッチオーバーレイを表す。
図13】内臓の画像にわたる変化の分布を表す。
図14】5つの時点にわたるパーセンテージ変化を表す。
図15】医療画像の複数のサブ領域の時間にわたる展開を表す。
図16】本発明に従う医療スキャニングシステムを表す。
図17】本発明に従う医療スキャニングシステムの詳細を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、被験者の内臓における変化を定量化する方法及び装置を提供する。
【0018】
本発明の第1の態様に従って、被験者の内臓における変化を定量化する方法は、第1時点で第1医療スキャンを取得することを有する。第1医療スキャンは、第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含む。第1医療スキャンは、内臓の第1画像を有する。方法はまた、第2時点で第2医療スキャンを取得することを有し、第2医療スキャンは、第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含む。第2医療スキャンは、内臓の第2画像を有する。第2時点は、第1時点の前又は後であってよい。第1医療スキャンにおける内臓の第1画像の少なくとも部分は、画像コンテンツに基づいて第1のサブ領域の組に分割され、第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、第1のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義される。第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない。第1医療スキャンは、内臓の第1画像を分割することの前又は後で、第2医療スキャンとアライメントされる。
【0019】
方法はまた、内臓の前記第2画像の少なくとも部分を第2のサブ領域の組に分割することを有する。第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、第2のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない。内臓の第2画像の少なくとも部分を分割することは、第1のサブ領域の組に基づく。
【0020】
方法は、内臓の第1画像内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、内臓の第2画像内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することを更に有する。メトリックの第1値とメトリックの第2値との間で差が評価され、それによって、第1時点と第2時点との間にサブ領域で起こった変化の指標を供給する。
【0021】
本発明者は、既知の技術による医療スキャンの大域的評価が、医療スキャンを解釈する者に医療スキャン内の変化を見逃させることがある、と気づいた。例えば、肝臓のような大きい内臓は、(i)肝臓の1つの又はいくつかの領域における肯定的な変化、及び(ii)同じ肝臓の他の領域における否定的な変化、をもたらす時間にわたる変化を受けることがある。しかし、肝臓全体にわたって行われる如何なる大域的な測定も、肝臓にわたる「平均化」(averaging out)により、小さい変化しか示さないことがある。上記の本発明の特定の方法は、例えば、MRIスキャナにより取得されたデータセットに基づいて、時間にわたる内臓の異なる状態に関する正確な情報をもたらす測定を提供し得る。
【0022】
多くの内臓において、異常は、内臓のほんの部分内で局所的であり、制限されている。そのような場合に、如何なる有意味な変化も、ほんの局所的であり、そのような変化のスケールは、前もって知られること又は合理的に推定されることが不可能であるような程度である可能性がある。変化は、例えば、異常な局所領域から判断される局所異常性の範囲に及び/又は疾患の深刻度に関係があり得る。本発明者は、それらのパラメータの両方に対して有意味な変化を検出し測定する方法を導き出した。既知のシステムは、臓器内の全ての局所領域が時間にわたってどのように展開するかの直接的な指標を提供しない。よって、既知のシステムによれば、臓器における局所的な変化は全て、内臓を記述する全体的な記述的統計においてあまりにも頻繁に見逃されることがある。
【0023】
本発明の第2の態様に従って、被験者の内臓における変化を定量化する方法は、第1時点で第1医療スキャンを取得することを有する。第1医療スキャンは、第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含む。第1医療スキャンは、内臓の第1画像を有する。方法はまた、第2時点で第2医療スキャンを取得することを有し、第2医療スキャンは、第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含む。第2医療スキャンは、内臓の第2画像を有する。方法は、第1医療スキャン及び第2医療スキャンをアライメントすることを有する。次いで、内臓の第1画像及び内臓の第2画像は、内臓の第1画像及び内臓の第2画像の少なくとも部分の画像コンテンツに基づいて、まとめて分割される。内臓の前記第1画像を分割することは、第1のサブ領域の組をもたらす。第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、複数のボクセルを有する第1領域表現によって定義され、第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない。内臓の第2画像を分割することは、第2のサブ領域の組をもたらす。第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、複数のボクセルを有する第2領域表現によって定義され、第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない。第1のサブ領域の組及び第2のサブ領域の組は対応する。方法は、内臓の第1画像内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、内臓の第2画像内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することを更に有する。メトリックの第1値とメトリックの第2値との間で差が評価され、それによって、第1時点と第2時点との間にサブ領域で起こった変化の指標を供給する。
【0024】
本発明の第2の態様に従う上記の方法は、第1医療スキャン及び第2医療スキャンのアライメントにおいて第1の態様の方法と相違する。その上、第1画像及び第2画像の分割は、一方の画像が、他方の画像について分離して以前に導出されたサブ領域に基づいて分割されるのではなく、まとめて行われる。
【0025】
図3aは、第1データセットからの第1医療スキャンの第1スライスの例を表す。
【0026】
図3aで、第1スライス305は第1医療スキャンである。第1スライス305は、第1データセットの1つのスライスである。第1データセットは、3D体積画像であってよく、第1スライス305のような、1~1000のスライスの中のどれを有してもよい。第1スライス305は、その最も基本的なサブユニットとしてボクセルを有する。なお、第1データセットは、3D体積画像、2D画像スライスのスタック、又は単一の2D画像スライスのうちのいずれか1つであってよい。
【0027】
被験者の胴体の輪郭320が、第1スライス305において見える。輪郭320内には、内臓の第1画像310がある。第1画像として示される内臓は、例えば、肝臓であってよい。第1画像310の取得は第1時点であり、第1画像310は第1のボクセルの組を含む。
【0028】
図3bで、第2スライス405は第2医療スキャンである。第2スライス405は、第2データセットの1つのスライスである。第2データセットは、他の3D体積画像であってよく、やはり、第2スライス405のような、1~1000のスライスの中のどれを有してもよい。第2スライス405は、その最も基本的なサブユニットとしてボクセルを有する。なお、第2データセットは、3D体積画像、2D画像スライスのスタック、又は単一の2D画像スライスのうちのいずれか1つであってよい。
【0029】
被験者の胴体の輪郭420が、第2スライス405において見える。輪郭420内には、内臓の第2画像410があり、この画像410は、図3aに示される同じ内臓の画像である。第2画像410による第2スライス405の取得は第2時点であり、第2時点は、第1時点の前又は後であってよい。第2画像410は第2のボクセルの組を含む。
【0030】
第1時点及び第2時点は、内臓が、形状、又は少なくとも1つのサブ領域の特性、のいずれかを変化させるのに十分な時間によって分離されてよい。典型的に、第1時点及び第2時点は、少なくとも一日によって分離されるが、一年又は数年といった分離も可能である。形状の変化は、例えば、スキャン画像に示される身体の臓器及び/又は周囲部分が、例えば、数ヶ月にわたって、失われるか又は肥大するかのいずれかの場合に、起こり得る。
【0031】
図4は、本発明に従って、内臓のセグメント化された分割画像の例を400で表す。
【0032】
図4は先と同じく、図3aからの内臓の第1画像310を示す。第1画像310は、図3aに示される第1スライス305の残り部分からセグメント化されている。セグメント化は、内臓を記述する第1画像310の第1の画像ボクセルの組の中の第1サブセットを提供するが、第1スライス305の第1の画像ボクセルの組の残りを捨てる。
【0033】
セグメント化に続いて、第1画像310は、次いで、分割される。分割は、第1の画像ボクセルの組を、第1のサブ領域の組を形成する複数のサブ領域に分ける。第1サブ領域420、第2サブ領域430、及び第3サブ領域440は、第1のサブ領域の組からの例である。第1のサブ領域の組は「重なり合わない」。それにより、サブ領域のどれも、第1のサブ領域の組の中の如何なる他のサブ領域とも重なり合わない。
【0034】
図4では、第1画像310の全体が分割されている。しかし、第1画像310のほんの一部が分割されることが代替的に可能である。
【0035】
第1のサブ領域の組への第1画像310の分割は、画像コンテンツに基づく。画像ボクセルの第1サブセットの実際のボクセル値が、サブ領域間の境界を決めるために使用されてよい。故に、分割は、内臓又はその内部構造の前もって定義されたモデルを必要としない。実際のボクセル値が分割の計算において使用されるが、分割の空間的接近を保つように正則化項も存在してよい。
【0036】
このようにして、第1のサブ領域の組の中の特定のサブ領域は、一般に、そのサブ領域にわたって類似した値のボクセルを有する。故に、例えば、第1サブ領域420にわたるボクセルは、通常は、類似した値を有することになる。そのため、しばしば、サブ領域間の境界は、内臓自体内の解剖学的構造と完全には一致しない。このアプローチは、脳内の予め定義された解剖学的構造の形状が考慮される、非特許文献3のような既知の技術のそれと対照的である。
【0037】
また図4には、図3bからの内臓の第2画像410も示されている。
【0038】
第2画像410は、図3bに示される第2スライス405の残り部分からセグメント化されている。セグメント化は、内臓を記述する第2画像410の第2の画像ボクセルの組の中の第2サブセットを提供するが、第2スライス405の第2の画像ボクセルの組の残りを捨てる。
【0039】
図4における比較図から分かるように、第2画像410の輪郭は、第1画像310の輪郭とはいくつかの様相において相違する。例えば、第1画像310及び第2画像410の夫々の上縁を参照されたい。
【0040】
図4に表されるように、第2画像410は分割されている。分割は、画像ボクセルの第2サブセットを、第2のサブ領域の組を提供する複数のサブ領域に分ける。第1サブ領域460、第2サブ領域470、及び第3サブ領域480は、第2のサブ領域の組の例である。第2のサブ領域の組は「重なり合わない」。それにより、第2の組の中のサブ領域のどれも、第2の組の中の如何なる他のサブ領域とも重なり合わない。
【0041】
内臓は、第1時点と第2時点との間で変化している。なお、図4からは、第2画像410の第1サブ領域460、第2サブ領域470、及び第3サブ領域480が、第1画像310の第1サブ領域420、第2サブ領域430、及び第3サブ領域440に夫々対応することが概して認識可能である。
【0042】
第1画像310に対する第2画像410のアライメントが実行されている。そのアライメントは、第1画像310の分割の前又は後に行われてよい。上記の本発明の第1の態様に従って、第2画像410の分割は、第1のサブ領域の組に基づき、第1画像310の分割後に行われる。アライメントは、画像レジストレーションによって実行されてよい。画像レジストレーションは、医療スキャンのセクションが同じ対象の他の医療スキャンの対応するセクションとの位置的対応に至らされることを確かにするためにスキャン画像の解釈において使用される技術である。
【0043】
代替案として、上記の本発明の第2の態様に従って、第1画像310に対する第2画像410のアライメントは、如何なる分割よりも前に行われてよい。次いで、第1画像310及び第2画像410の分割が、第1画像310の及び第2画像410のコンテンツに基づいて、一緒にまとめて実行されてよい。いずれかのサブ領域の境界の形状及び位置に関する決定は、両方の画像上の関連する位置での画像コンテンツに基づいて行われる。画像コンテンツに基づいて内臓の少なくとも部分を分割することは、第1のボクセルの組の強度及び/又は第2のボクセルの組の強度に基づいて分割を行うことを有してよい。
【0044】
図4では、第2画像410の全体が分割されている。しかし、第2画像410のほんの一部が分割されることも可能である。一般に、第1画像310と少なくとも同じくらい第2画像410は分割される。
【0045】
第1画像310及び第2画像410の比較は、第1時点と第2時点との間の内臓に対する変化に関する有益な情報を提供することができる。第1のサブ領域の組の中の少なくとも1つのサブ領域について、メトリックが評価される。評価の結果は、第1のサブ領域の組の中の少なくとも1つのサブ領域の夫々についてのメトリックの第1値である。次いで、メトリックは、第2のサブ領域の組の中の1つ以上の対応するサブ領域について評価され、それらのサブ領域の夫々についてのメトリックの第2値をもたらす。
【0046】
メトリックが第1のサブ領域の組の中の複数のサブ領域について評価される場合に、結果は、内臓の第1画像310の各サブ領域についての「第1値」になる。次いで、内臓の第2画像410の対応するサブ領域についてのメトリックの評価は、第2のサブ領域の組からの夫々の対応するサブ領域について、「第2値」をもたらす。
【0047】
内臓に対する変化に関する有益な情報は、次いで、各サブ領域について、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差を評価することによって、導出可能である。サブ領域ごとのメトリックの差値は、それによって、第1時点と第2時点との間にサブ領域で起こった変化の指標を与える。
【0048】
以下の表1は、上記の様々なパラメータの限定されない数値例を示す。単位「cT1」は、患者の肝臓内の鉄濃度が「正常」であった場合にMRIスキャナによって測定されることになるT1緩和時間である。よって、cT1は、「鉄補正(iron-corrected)T1緩和時間」とこの分野で時々呼ばれている。
【表1】
表1では、第1画像310は、分割後に6つのサブ領域を有している。表1の左の列を参照されたい。サブ領域は、1~6の番号を付けられている。頭書き「cT1の変化(ms)」の下にある第1の列は、第1スキャンとその後の第2スキャンとの間のサブ領域ごとのcT1値の変化を示す。cT1値は、最初の画像、すなわち、第1スキャンからのボクセル値である。cT1値は、内臓における変化が測定されるべきである基点を提供する。
【0049】
サブ領域4についてのみ、cT1値は増大している。サブ領域1~3及び5については、cT1値は減少している。表中の値は、サブ領域1~3、5及び6についてのcT1の変化の程度の容易な認識を可能にする。cT1値は、領域3について、他の領域のいずれについてよりも大いに変化している。
【0050】
頭書き「cT1の変化(ms)」の下の列は、第2、第3、第4及び第5スキャンの時点で検出される、原スキャンに対する変化を示す。サブ領域3は、cT1値の最大の変化を示し続けた。しかし、サブ領域5についてのcT1値の大きい変化は、最後の2つのスキャンにおいて明らかになった。
【0051】
表1は、各サブ領域における変化の量が大いに変動したことを明らかに示す。その変動は、異なるサブ領域の間に、更には、いくつかのサブ領域についてのその後のスキャンの間にもあった。臓器全体についてのcT1変化の平均値をもたらした先行技術のアプローチは、表1に示される特有の変化のいずれも示さなかった。
【0052】
表2は、5つの異なる内臓についての結果を示す。これらの臓器は、5人の異なる人々のものであってもよい。表中の入力は、閾値を超えるcT1値の増大を示した各臓器のパーセンテージボリュームと、他の閾値を超えるcT1値の減少を示した各臓器のパーセンテージとを示す。表2の中央にある3つの列は、4つの異なる時点での各臓器の4つのスキャンから導出されたデータを与える。
【表2】
表2の行5の臓器5は、臓器の28%がcT1値の増大を示す場合を示す。しかし、臓器の52%は、cT1値の減少を示す。臓器にわたる平均cT1値を生成する既知のシステムは、非常に有意味な変化を示してこなかった。しかし、本発明によれば、cT1値のより極端な変化が臓器の部分で実際に起きたことは、明らかである。また、臓器のどの部分がそのような変化を示しているのか、及び個々の変化がどれくらいであるか、も明らかである。
【0053】
このように、本発明は、臓器における変化の定量的な推定を可能にする。かような推定は、さもなければ、臓器全体にわたるcT1値の変化の平均化により、連続したスキャンの間でほとんど変化を示さない臓器において、特に有益である。放射線技師は、本発明によって導出されるような情報を導き出して、それを他の医療従事者へ渡すことができる。他の医療従事者は、例えば、cT1値の減少を内臓の状態の改善と、そしてcT1値の増加を悪化と解釈し得る。
【0054】
図5は、図4のセグメント化された分割画像内の変化の例を500で表す。
【0055】
図5は、もう一度第1画像310を示す。図5はまた、第1のサブ領域の組の中の第1サブ領域420、第2サブ領域430、及び第3サブ領域440を示す。第1サブ領域420及び第2サブ領域430の夫々は、異なる形態のシェーディングによりマークされている。シェーディングは、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差についての値の範囲を示す。図5は第1画像310を示すが、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差は、代替的に、第2画像410上のオーバーレイとして表示されてもよい。第2画像410がより最近の画像である場合には、第2画像410のかような表示が好ましいことがある。
【0056】
第1サブ領域420、第2サブ領域430、及び第3サブ領域440が夫々、表1中のサブ領域2、3、及び4であり、第2画像410が、頭書き「cT1の変化(ms)」の下の左の列において言及されている「第2スキャン」であった場合に、第1画像310のシェーディングは、例えば、
(i)-20から-50ミリ秒の間にあるcT1変化について、第1サブ領域420に示されるように縦縞、
(ii)-50から-100ミリ秒の間にあるcT1へんかについて、第2サブ領域430に示されるように横波縞、
(iii)cT1の変化が数値的に正である、すなわち、0ミリ秒よりも大きいときに、第3サブ領域440に示されるようにシェーディング無し
であってよい。
【0057】
図6は、本発明の第1の態様に従う方法600の略フローチャートである。
【0058】
610で、第1医療スキャン305が第1時点で取得される。620で、内臓の第2医療スキャン405が第2時点で取得される。
【0059】
630で、内臓の第1画像310は、第1のサブ領域の組に分割される。640で、第1医療スキャン305及び第2医療スキャン405はアライメントされる。これは、第1画像310を分割すること630の前又は後であってよい。650で、内臓の第2画像410は、第1のサブ領域の組に基づいて、第2のサブ領域の組に分割される。
【0060】
660で、メトリックの第1値が、第1画像310内のサブ領域について評価され、メトリックの第2値が、第2画像410内の対応するサブ領域において評価される。
【0061】
670で、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差が評価され、第1時点と第2時点との間の1つ以上のサブ領域での変化の指標をもたらす。
【0062】
ステップ670の結果は、更なる閾検出ステップを受けてよい。かような更なる閾検出ステップは、次いで、図5に示される様々なシェーディングとして示される情報をもたらす。
【0063】
図7は、本発明の第2の態様に従う方法700の略フローチャートである。
【0064】
710で、第1医療スキャン305が第1時点で取得される。720で、第2医療スキャン405が第2時点で取得される。730で、第1医療スキャン305及び第2医療スキャン405はアライメントされる。
【0065】
740で、内臓の第1画像310及び内臓の第2画像410は、例えば同時、まとめて分割される。第1画像310の分割は第1のサブ領域の組をもたらす。第2画像410の分割は第2のサブ領域の組をもたらす。
【0066】
750で、メトリックの第1値が、第1画像310内のサブ領域について評価され、メトリックの第2値が、第2画像410内の対応するサブ領域において評価される。
【0067】
760で、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差が評価され、第1時点と第2時点との間の1つ以上のサブ領域での変化の指標をもたらす。
【0068】
ステップ760の結果は、更なる閾検出ステップを受けてよい。かような更なる閾検出ステップは、次いで、図5に示される様々なシェーディングとして示される情報をもたらす。
【0069】
[スキャン及び画像の取得;アライメント;並びに分割]
第1画像310を含む第1医療スキャン及び第2画像410を含む第2医療スキャンを取得するステップに対しては、様々なアプローチが可能である。分割ステップ及びアライメントステップに対しても、様々なアプローチが可能である。第1医療スキャン及び第2医療スキャンは、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャンにより取得されてよい。次いで、かようなスキャンの各ボクセルは、定量的なT1値、定量的なT2値、補正としてT2値を使用するT1値に基づくcT1値、又はプロトン密度脂肪率(Proton Density Fat Fraction,PDFF)値、のいずれかをもたらす。代替的に、T1値、T2値及び/又はPDFF値の組み合わせが与えられてもよい。メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差は、その場合に、T1値、T2値、cT1値、又はPDFF値、のいずれかにおける任意のサブ領域についての差である。
【0070】
内臓の第1画像310及び/又は内臓の第2画像410を分割することは、内臓の区分定数表現(piece-wise constant representation)を生成することを更に有してよく、これによって、各サブ領域は局所的に類似している。
【0071】
第1画像310内及び/又は第2画像410内の内臓を分割することは、セグメント化後に、内臓内で、スーパークラスタリングを有してよい。
【0072】
第1画像310内及び/又は第2画像410内の内臓を分割することは、内臓内の局所類似性の表現を生成することを有してよい。類似性は、複数のイメージングモダリティ、又はテクスチャ、のいずれかに基づいて定義される。
【0073】
第1医療スキャン及び第2医療スキャンをアライメントすることは、内臓の第1画像310及び内臓の第2画像410のサブ領域を定義する画像コンテンツ派生情報をアライメントすることを有してよい。なお、アライメントすることは、第1画像310及び第2画像410の内臓を定義する画像コンテンツ派生情報をアライメントすることを有してもよい。代替的に、アライメントすることは、サブ領域の境界上にある点及び/又は内臓の境界上にある点を明示的にアライメントするために変換を使用することを有してもよい。
【0074】
[メトリック]
メトリックは、少なくとも1つのサブ領域にわたる空間テクスチャの要約統計であってよい。メトリックは、内臓の第1画像310の複数のサブ領域について、及び内臓の第2画像410の対応するサブ領域について、評価されてよい。
【0075】
メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差がサブ領域ごとに評価されてよく、それによって、複数の差値をもたらす。これらの差値はプロットされてよい。複数の差値は、サブ領域の空間プロット上又はグラフ上のいずれかにプロットされてよい。グラフ又は空間プロットは、第1時点と第2時点との間の各サブ領域での変化の視覚投影を供給する。
【0076】
メトリックに対して、変化の閾値が定義されてよい。この場合に、メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差は、少なくとも1つのサブ領域について変化の閾値と比較されてよい。この比較は、それによって、変化の閾値が少なくとも1つのサブ領域について超えられているかどうかを識別する。内臓の第1画像310及び内臓の第2画像410は、次いで、メトリックが変化の閾値を超えているサブ領域を示すオーバーレイを有して表示され得る。
【0077】
その上、本発明は、変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージを計算することを有してよい。変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージは、次いでプロットされ得る。プロットは、サブ領域の空間プロット又はグラフのいずれかであってよい。
【0078】
1つのメトリックが記載されてきたが、方法は、他のメトリックにより繰り返されてもよい。他のメトリックは、上記のメトリックが適用されたサブ領域のうちのほんの一部にしか適用されなくてよい。
【0079】
[第3及び更なる医療スキャン]
説明の簡単のために、上記の図3a、図3b、図4及び図5における詳細な実施形態は、たった2つの医療スキャンの議論に制限されていた。しかし、本発明は、2よりも多い医療スキャンに適用することとして企図される。本発明者は、内臓の所与の領域における変化が、異なる期間にわたって、多種多様な方法で起こり得ると気づいた。例えば、内臓の所与の領域は、2つ以上の連続したスキャンの間でcT1値の増大を示すが、次いで、更なる2つ以上の連続したスキャンの間で減少を示すことがある。
【0080】
既知のシステムによれば、臓器におけるかような居所的変化を認識することは、困難又は不可能である場合がある。これは特に、変化の方向、すなわち、ミリ秒におけるcT1値の増大又は減少が、一連の医療スキャンの中の様々な1つの間で変化する場合に当てはまる。ここで、医療スキャン、すなわち、データセットは、時々、数年の期間にわたって取得されることがある。利用可能な医療スキャンはまた、広範な、例えば、MRIスキャン、CTスキャン及び2D X線を有し得る。
【0081】
いくつかの環境で、医療スキャンは、内臓の特定の部分を示す先の医療スキャンの評価の後に続けて内臓のその特定の部分について取得された単一MRIスライスなどの単一2Dスライスを有してよい。1つの典型的なシナリオでは、患者は呼吸しており、よって、医療スキャン中に動いている可能性がある。よって、単一2Dスライスは、特定の正確な時点でMRIにより取得され得る。その時間は、例えば、スキャナのオペレータが、動きが最低限であると考えるとき、例えば、吐き出すことの後又は前であってよい。
【0082】
このように、本発明は、第3時点で少なくとも第3医療スキャンを取得してよい。第3医療スキャンは、内臓の第3画像を供給する。本発明の第1又は第2の態様、すなわち、請求項1又は2の方法は、その場合に、内臓の第3医療スキャン及び第3画像により繰り返されてよい。本発明の第1の態様によれば、第3及びその後の画像についてのメトリックは、第1画像との比較において評価されてよい。本発明の第2の態様によれば、分割は、サブ領域を導出する場合に、3つ以上の画像を考慮してよい。本質的に、請求項1又は2の方法ステップは、内臓の第3画像を含む第3医療スキャンと、第1医療スキャン及び第2医療スキャンのうちの少なくとも一方とを用いて繰り返される。
【0083】
内臓の第1画像、第2画像、及び第3画像の間のメトリックの差値は、プロットされ得る。プロットは、グラフ又は空間プロットのいずれかであってよい。かようなプロットは、第1時点、第2時点、及び第3時点の間にサブ領域で起こった変化の視覚投影を供給する。
【0084】
3つ以上の医療スキャンが利用可能である場合に、変化の閾値は先と同じく、内臓の画像のサブ領域について定義され得る。次いで、メトリックの第1値、第2値、及び第3値の間の差は、サブ領域についての変化の閾値と比較され得る。この比較は、変化の閾値がサブ領域について超えられているかどうかを識別する。変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージは、第2医療スキャン及び/又は第3医療スキャンにおける画像について、計算され得る。次いで、プロットは、第2画像及び/又は第3画像について行われ得る。プロットは、変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージを示すことができる。
【0085】
[詳細な実施形態の方法]
図8は、実施形態に従う方法800の略フローチャートである。図8の方法800は、異なる時点で取得された3つ以上の医療スキャンについての差計算の詳細な実施形態を提供する。
【0086】
810で、内臓の医療スキャンが複数の時点で取得される。医療スキャンは、上述されたようにデータセットの部分として取得される。それらの医療スキャンにおける内臓の画像は、次いで、上記の方法600又は方法700を参照して上述されたアライメント及び分割を用いて分割される。
【0087】
820で、内臓の各画像内の複数のサブ領域について、メトリックが評価される。ステップ820は、ステップ810で取得された3つ以上の医療スキャンにおける内臓の画像に対してという点を除いて、ステップ660又はステップ750に対応する。
【0088】
830で、内臓の各連続画像内のサブ領域ごとに、メトリックの差が評価される。例えば、6つのスキャンがある場合には、内臓の第1画像のサブ領域についてのメトリックの値から始まって、第2から第6のスキャンの夫々における内臓の画像の間の差を評価することが可能である。上記の表2の各行は、各臓器についての4つのスキャンを示す。従って、表2の各行には、内臓の画像ごとに3つの差値が存在する。
【0089】
840で、メトリックの差値は、内臓の各連続画像間でプロットされ、夫々の連続する医療スキャンの時点の間のサブ領域での変化の視覚投影をもたらす。故に、例えば、表2中の値から始まって、2次元プロットが、第1スキャンから第2スキャンまで、第1スキャンから第3スキャンまで、及び第1スキャンから第4スキャンまでのメトリックの変化を示しながら、臓器ごとに生成されてよい。
【0090】
図9は、他の実施形態に従う方法900の略フローチャートである。図9の方法900は、複数の医療スキャンについて、閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージを導出する方法の詳細な実施形態を提供する。
【0091】
910で、内臓の医療スキャンが複数の時点で取得される。医療スキャンは、上述されたようにデータセットの部分として取得される。医療スキャンにおける内臓の画像は、次いで、上記の方法600又は方法700を参照して上述されたアライメント及び分割を用いて、分割される。メトリックの値は、次いで、内臓の各画像内の関心のある各サブ領域について取得される。ステップ660、750、及び820を再び参照されたい。
【0092】
920で、メトリックの値の間の差は、サブ領域ごとに、変化の閾値と比較される。930で、変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージが計算される。その計算は、内臓の各連続画像について、あるいは、内臓の第1画像から累積的に、実行されてよい。ステップ920は、例えば、上記の表1中の入力に適用されてよい。
【0093】
940で、変化の閾値を超える変化があった内臓のパーセンテージがプロットされる。
【0094】
[アライメント及び分割に対する代替アプローチ]
本発明の第1及び第2の態様の方法は、上記に並びに請求項1及び2において記載され、図6及び図7においてフローチャート形式で表されてきた。しかし、本発明者は、アライメントステップ及び分割ステップに対する第3の代替アプローチを考えている。第3のアプローチは、本発明の第1及び第2の態様のいくつかのステップを置き換えることを伴う。第3のアプローチは、請求されていないが、完全のために以下の段落で記載される。
【0095】
アライメント及び分割に対する第3のアプローチでは、アライメントは、内臓の第1画像310及び内臓の第2画像410の両方を分割した後に、第1医療スキャン及び第2医療スキャンをアライメントすることを有する。次いで、第1のサブ領域の組と第2のサブ領域の組との間で対応が生成される。この第3のアプローチによれば、第1画像310及び第2画像410は、本発明の第2の態様の方法の合わせ分割と対照的に、全体的に別々に分割され得る。メトリックを計算することができるように、対応は、メトリック値が、第1画像310内のサブ領域及び第2画像410内の対応するサブ領域について比較されることを可能にする。
【0096】
[本発明の応用の例]
図10は、MRIスキャンデータセットから取得される3次元医療スキャンのスライスの例である。
【0097】
図10(1000)には、データセットからの単一スライス1005が示されている。内臓の画像1010は、図10の中央左に、不規則領域の周りの濃い輪郭によって示されている。画像1010は、スライス1005の残り部分からセグメント化されている。画像1010は、実際には、肝実質を示す。
【0098】
画像1010内には、第1サブ領域1020、第2サブ領域1030、及び第3サブ領域1040が例として示されている。画像1010の境界内の全てのサブ領域の暗さは、図10の右にあるスケールでの値に対応する。スケールは、ミリ秒でのcT1値の変化を示す。示されている値は、図3及び図7に関して説明された第1医療スキャン画像310及び第2医療スキャン画像410のような、ほんの2つの医療スキャン画像の間でのcT1値の変化であってよい。しかし、示されている値は、図8及び図9に関して論じられるように、一連の3つ以上の医療スキャン画像のうちのいずれか2つの間のcT1値の変化であってもよい。いくつかの場合に、3つ以上の医療画像によれば、最も有益なプロットは、単に最初の画像と最後の画像との間ではなく、最初の画像と中間の画像との間のcT1値の差を示すプロットであり得る。
【0099】
図11は、クロスハッチがオーバーレイされた図10のスライス1005を表す。
【0100】
先と同じく、1000にはスライス1005が示されている。図11でマークされているサブ領域の例は、第1サブ領域1120、第2サブ領域1130、及び第3サブ領域1140である。
【0101】
第1サブ領域1120、第2サブ領域1130、及び第3サブ領域1140は、図10の第1サブ領域1020、第2サブ領域1030、及び第3サブ領域1040に対応する。しかし、第1サブ領域1120、第2サブ領域1130、及び第3サブ領域1140は、このとき、サブ領域内の変化があるバンドを示すクロスハッチングによりマークされている。クロスハッチングマーキングのスケールは、図11においてスライス1005の左上に示される。例えば、第1サブ領域1120のクロスハッチマーキングは、cT1値の変化が-50msから-30msの範囲にあることを示す。
【0102】
図11のプロットは、方法800のステップ840に記載されるプロットに対応してよい。
【0103】
図12は、図11のクロスハッチオーバーレイを表す。先と同じく、1200には画像1010が示されている。また、図12には、図11からの第1サブ領域1120、第2サブ領域1130、及び第3サブ領域1140が示されている。図12は、画像1010の外にある医療スキャン画像1000の部分が、画像1010及び画像1010内のサブ領域をより明らかに目立たせるために、プロットから捨てられている点で、図11と相違する。
【0104】
図13は、内臓の画像にわたる変化の分布を表す。
【0105】
図13において1300で示されている画像にわたる変化の分布は、画像内のスーパーピクセルにわたる変化の分布に基づいてよい。図13で使用される形で、プロットは、示されている曲線の下に1の面積を有するように正規化されている。
【0106】
図13のプロットの例では、サブ領域のほとんどが、cT1値の増大を示している。縦軸(従来の「y軸」)の右にある曲線の部分を参照されたい。しかし、縦軸の左にある曲線の部分から分かるように、サブ領域のごく一部は、cT1値の減少を示している。
【0107】
図13に示される医療スキャンにわたる変化の分布は、上記の方法600、700又は800のいずれかから導出される情報の代替ビューを提供する。
【0108】
図13に示される変化の分布には閾値が適用され得る。閾値は、閾値のために選択された値に対応する「cT1の変化(ms)」軸(従来の「x軸」)上の点のある縦線として現れる。
【0109】
図14は、5つの時点にわたるパーセンテージ変化を表す。
【0110】
図14で、グラフ1400は、横軸に沿って0から5としてマークされている時点を示す。第1医療画像以降のパーセンテージ変化は、縦軸に示されている。
【0111】
四角で表されているプロットは、第1閾値を超えるcT1値の増大を示している、内臓、ここでは肝臓のパーセンテージを示す。
【0112】
丸で表されているプロットは、第2閾値を超えるcT1値の減少を示している内臓のパーセンテージを示す。故に、例えば、時点2での第3スキャンで、内臓の15%よりも多い部分が、第1閾値を超えるcT1値の増大を示している。しかし、時点2での第3スキャンで、内臓のほんの約2%は、第2閾値を超えるcT1値の減少を示している。
【0113】
図14に示されるプロットは、図9のステップ940を参照して記載されるものの例であってよい。図14に示されるパーセンテージ値は、上記の表2のいずれかの行に示される値と同じ一般的な形のパーセンテージ結果である。
【0114】
図15は、医療スキャンの複数のサブ領域の時間にわたる展開を表す。1500で、図15は、6つのサブ領域を示すプロットの例を表す。サブ領域は、3Dプロットの「y軸」と通常呼ばれている軸に沿って、図15で「セグメント」と標記されている。3Dプロットの「x軸」と通常呼ばれている軸上には、ベースラインcT1値を確立する最初のスキャン後に異なる時点で実行された5つのスキャン「スキャン2」、・・・「スキャン5」がマークされている。
【0115】
cT1の変化の値は、3Dプロットの「z軸」と通常呼ばれている軸上に示されている。図15は、例えば、セグメント3が「スキャン2」の時間によってcT1値の大幅な減少を示したことを明らかにする。また、セグメント5は、cT1値の大幅な減少を示したが、その減少の大部分は「スキャン4」の後に起こった。
【0116】
図16は、本発明に従う医療スキャニングシステム1600を表す。図16は、医療イメージングデバイス1610を示す。医療イメージングデバイス1610はMRIスキャナであってよい。医療イメージングデバイス1610は、医療画像データベース1620とリンクされる。次いで、医療画像データベース1620は、コンピュータシステム1630とリンクされる。医療イメージングデバイス1610、医療画像データベース1620、及びコンピュータシステム1630は一緒に、本発明の方法を実装し得る。
【0117】
図16は、医療イメージングデバイス1610、医療画像データベース1620及びコンピュータシステム1630を示すが、本発明は、それらの要素のうちのほんの一部によって実行されてよい。例えば、本発明の方法は、医療画像データベース1620で保持されている様々な種類のスキャンに適用されてよい。スキャンのいくつかは、医療イメージングデバイス1610に由来しなくてもよく、他のソースに由来してもよい。代替的に、コンピュータシステム1630は、本発明による使用の目的のために取得されていない医療スキャンを含む一連のデータセットに対して本発明の方法を適用してもよい。故に、本発明は、本発明以外の目的のために収集された過去のデータセットに適用されてもよい。
【0118】
図17は、本発明に従って、医療スキャニングシステム1600の詳細を1700で表す。図17に示されるコンピュータシステム1630は、図16に示されるコンピュータシステム1630に対応する。プロセッサ1740、通信モジュール1750、及び記憶ユニット1760は、コンピュータシステム1630の部分を形成している。通信モジュール1750は、コンピュータシステム1630を図16の医療画像データベース1620及び医療イメージングデバイス1610並びに/又は医療スキャンを含むデータセットの他のソースへリンクしてよい。
【0119】
図16及び図17を考えると、プロセッサ1740及び医療イメージングデバイス16010は一緒に、本発明の第3の態様に従う医療スキャニングシステムを提供するよう構成されてよい。医療イメージングデバイス1610は、異なる時点で被験者の内臓の医療スキャンを取得する。医療イメージングデバイス1610は、第1時点で被験者の第1医療スキャンを取得するよう構成され、第1医療スキャンは第1データセットの部分であり、第1のボクセルの組を含み、第1医療スキャンは内臓の第1画像を有する。医療イメージングデバイス1610はまた、第2時点で被験者の第2医療スキャンを取得するよう構成され、第2医療スキャンは第2データセットの部分であり、第2のボクセルの組を含み、第2医療スキャンは内臓の第2画像を有し、第2時点は第1時点の前又は後であってよい。
【0120】
プロセッサ1740は、
(i)第1医療スキャン内の内臓の第1画像310の少なくとも部分を画像コンテンツに基づいて第1のサブ領域の組に分割することであり、第1のサブ領域の組の中の各サブ領域は、複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、第1のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、ことと、
(ii)内臓の第1画像310を分割することの前又は後で、第1医療スキャン及び第2医療スキャンをアライメントすることと、
(iii)第1のサブ領域の組に基づいて内臓の第2画像410の少なくとも部分を第2のサブ領域の組に分割することであり、第2のサブ領域の組の中の各サブ領域は、第2のボクセルの組の中の複数のボクセルを有する領域表現によって定義され、第2のサブ領域の組の中の他のサブ領域と重なり合わない、ことと、
(iv)内臓の第1画像310内のサブ領域についてメトリックを評価して該メトリックの第1値を供給し、内臓の第2画像410内の対応するサブ領域について前記メトリックを評価して該メトリックの第2値を供給することと、
(v)メトリックの第1値とメトリックの第2値との間の差を評価し、それによって、第1時点と第2時点との間にサブ領域で起こった変化の指標を供給することと
によって、内臓における変化を定量化するよう構成される。
【0121】
上記の医療スキャニングシステム1600は、本発明の第1の態様の方法を実装するよう構成されるが、医療スキャニングシステム1600のプロセッサ1740は、更に又は代わりに、添付の請求項2で特定されている本発明の第2の態様の方法を実装するよう構成され得る。
【0122】
本発明の第4の態様に従って、非一時的なコンピュータプログラム製品が提供される。非一時的なコンピュータプログラム製品は、実行可能なプログラムコードが記憶されており、プログラムコードは、上記の方法のいずれかに従って内臓における変化を定量化するよう動作可能である。
【0123】
非一時的なコンピュータプログラム製品は、ハードディスク、CD-ROM、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、リード・オンリー・メモリ(ROM)、プログラム可能リード・オンリー・メモリ(PROM)、消去可能なプログラム可能リード・オンリー・メモリ(EPROM)、電気的消去可能なプログラム可能リード・オンリー・メモリ(EEPROM)、及びフラッシュメモリを含むグループからの少なくとも1つを有する。
【0124】
本発明は、添付の図面を参照して記載されてきた。しかし、本発明は、添付の図面で表されているような、本明細書で記載される具体例に限られないことが認識されるだろう。更に、本発明の表されている実施形態は、ほとんどの部分について、当業者に知られている電子部品及び回路を用いて実装され得るので、詳細は、本発明の基礎をなす概念の理解及び評価のために、かつ、本発明の教示を不明瞭に又は逸らさないように、上記の通り必要と考えられるよりも広い範囲で説明されない。
【0125】
本発明は、コンピュータシステムで実行されるコンピュータプログラムであって、コンピュータシステムのようなプログラム可能な装置で実行される場合に本発明に従う方法のステップを実行し、あるいは、プログラム可能な装置が本発明に従うデバイス又はシステムの機能を実行することを可能にするコード部分を少なくとも部分を含むコンピュータプログラムで実装されてよい。
【0126】
コンピュータプログラムは、特定のアプリケーションプログラム及び/又はオペレーティングシステムのような、命令のリストである。コンピュータプログラムは、例えば、サブルーチン、関数、プロシージャ、オブジェクトメソッド、オブジェクト実施、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共有ライブラリ/動的負荷ライブラリ、及び/又はコンピュータシステムでの実行のために設計された命令の他のシーケンス、のうちの1つ以上を含んでよい。
【0127】
コンピュータプログラムは、コンピュータ可読伝送媒体を介してコンピュータシステムへ伝送されるか、あるいは、有形な非一時的コンピュータ可読記憶媒体の中に記憶されてよい。コンピュータプログラムの全て又はいくつかは、恒久的に、着脱可能に、又は遠隔で情報処理システムに結合されたコンピュータ可読媒体で提供されてもよい。
【0128】
コンピュータプロセスは、通常、実行(ランニング)プログラム又はプログラムの部分、現在のプログラム値及び状態情報、及びオペレーティングシステムによってプロセスの実行を管理するために使用されるリソースを含む。オペレーティングシステム(OS)は、コンピュータのリソースの共有を管理し、それらのリソースにアクセスするために使用されるインターフェイスをプログラマに提供するソフトウェアである。オペレーティングシステムは、システムデータ及びユーザ入力を処理し、タスク及び内部システムリソースをサービスとしてシステムのユーザ及びプログラムに割り当てて管理することによって応答する。
【0129】
コンピュータシステムは、例えば、少なくとも1つの処理ユニット、関連するメモリ、及び多数の入出力(I/O)デバイスを含んでよい。コンピュータプログラムを実行する場合に、コンピュータシステムは、コンピュータプログラムに従って情報を処理し、結果として現れる出力情報をI/Oデバイスを介して生成する。
【0130】
上記の明細書では、本発明は、本発明の実施形態の具体例を参照して記載されてきた。しかし、様々な改良及び変更が、添付の特許請求の範囲で示されている本発明の範囲から外れることなしに、それらの実施形態において行われ得ることは明らかである。当業者であれば、論理ブロック間の境界は、例示にすぎず、代替の実施形態は、論理ブロック又は回路素子を融合させるか、あるいは、様々な論理ブロック又は回路素子に機能性の代わりの分解を課し得ると気づくだろう。よって、本願で表されているアーキテクチャは、単なる例であり、実際には、多くの他のアーキテクチャが、同じ機能性を実現するように実装可能であることが理解されるべきである。
【0131】
同じ機能性を実現するための構成要素の如何なる配置も、所望の機能性が実現されるように有効に「関連付けられる」。従って、特定の機能性を実現するように組み合わされる本願の如何なる2つの構成要素も、アーキテクチャ又は中間の構成要素に関わらず、所望の機能性が実現されるように互いと「関連付けられる」と考えられ得る。同様に、そうして関連付けられた如何なる2つの構成要素も、所望の機能性を実現するよう互いに「動作上接続」又は「動作上結合」されると見なされ得る。
【0132】
更に、当業者であれば、上記の動作間の境界は単なる例であると気づくだろう。複数の動作は、単一の動作にまとめられてもよく、単一の動作は、更なる動作に分配されてよく、動作は、時間的に少なくとも部分的に重なり合って実行されてよい。更に、代替の実施形態は、特定の動作の複数のインスタンスを含んでもよく、動作の順序は、様々な他の実施形態で変更されてよい。
【0133】
なお、他の改良、変形、及び代替も可能である。明細書及び図面は、従って、制限の意味ではなく例示の意味で考えられるべきである。特段別なふうに述べられない限り、「第1」及び「第2」などの語は、そのような語が表す要素どうしを任意に区別するために使用される。よって、そのような語は、そのような要素の時間的な又は他の優先度を示すことを必ずしも意図していない。特定の手段が相互に異なる請求項に挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用されえないことを示すものではない。
図1
図2
図3a-3b】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17