(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】両面粘着テープ、電子機器部品及び電子機器
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220323BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20220323BHJP
C09J 133/08 20060101ALN20220323BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J133/08
(21)【出願番号】P 2020529391
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007043
(87)【国際公開番号】W WO2020175368
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019031869
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 明史
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁季
(72)【発明者】
【氏名】石堂 泰志
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛幸
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181486(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/156816(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/131082(WO,A1)
【文献】特開2017-133002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、
前記発泡体基材の気泡の平均長径が150μm以下であり、
前記両面粘着テープの25%圧縮強度が500kPa以下であり、
前記両面粘着テープは、発泡体基材厚み/両面粘着テープ厚みが0.5以上であり、
前記両面粘着テープは、凝集力試験によるずれ量が35μm以上110μm以下である、両面粘着テープ。
【請求項2】
前記発泡体基材の発泡倍率が2cm
3/g以上5cm
3/g以下である、請求項1記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記アクリル粘着剤層を構成するアクリル粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率が4×10
5Pa以下であり、かつ、140℃における貯蔵弾性率が3×10
4Pa以上である、請求項1又は2記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記アクリル粘着剤層を構成するアクリル粘着剤はアクリル共重合体であり、前記アクリル共重合体の重量平均分子量が40万以上120万以下である、請求項1、2又は3記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記アクリル粘着剤層のゲル分率が20%以上80%以下である、請求項1、2、3又は4記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
電子機器部品の固定に用いられる、
請求項1、2、3、4又は5記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
両面粘着テープ貼付部分の曲率半径が5mm以上1000mm以下である、電子機器部品の固定に用いられる、
請求項1、2、3、4又は5記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
曲面部に
請求項1、2、3、4又は5記載の両面粘着テープが貼り付けられている、電子機器部品。
【請求項9】
曲率半径が5mm以上1000mm以下である部分に
請求項1、2、3、4又は5記載の両面粘着テープが貼り付けられている、電子機器部品。
【請求項10】
請求項8又は9記載の電子機器部品を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着テープ及び該両面粘着テープを用いた電子機器部品、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置又は入力装置を搭載した携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)においては、組み立てのために両面粘着テープが用いられている。具体的には、例えば、携帯電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために両面粘着テープが用いられている。このような両面粘着テープは、例えば、額縁状等の形状に打ち抜かれ、表示画面の周辺に配置されるようにして用いられる(例えば、特許文献1、2)。また、車輌部品(例えば、車載用パネル)を車両本体に固定する用途にも両面粘着テープが用いられている。
【0003】
携帯電子機器の部品を固定するために用いられる両面粘着テープには、高い粘着力のみならず、落下等の強い衝撃によっても両面粘着テープの割れや界面剥離を起こさない、高い耐衝撃性が要求される。耐衝撃性に優れる両面粘着テープとしては、例えば、特許文献1及び2に、基材層の少なくとも片面にアクリル系粘着剤層が積層一体化されており、該基材層が特定の架橋度及び気泡のアスペクト比を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-242541号公報
【文献】特開2009-258274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の携帯電子機器は意匠性に優れた曲面を多用したデザインが採用されている。このような携帯電子機器の曲面を持った部品に両面粘着テープを貼り付けるためには、曲面に追従できる高い柔軟性が要求される。また、曲面に貼り付けられた両面粘着テープは圧着具合が不均一となることによる応力やテープが元の形状に戻ろうとする応力がかかるため、この応力によっても剥離しない耐反発性も要求される。更に、上記の通り、携帯電子機器の部品を固定するために用いられる両面粘着テープには、高い耐衝撃性が必要とされるが、耐衝撃性を高めるためには両面粘着テープを硬くする必要があり、柔軟性と耐衝撃性はトレードオフの関係にある。そのため、高い耐衝撃性と柔軟性と耐反発性を兼ね備えた両面粘着テープを得ることは困難である。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、電子機器部品固定用途や車輌部品固定用途に好適に用いることができる、高い柔軟性、耐衝撃性及び耐反発性を兼ね備えた両面粘着テープ及び該両面粘着テープを用いた電子機器部品、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープであって、前記発泡体基材の気泡の平均長径が150μm以下であり、前記両面粘着テープの25%圧縮強度が500kPa以下であり、前記両面粘着テープは、発泡体基材厚み/両面粘着テープ厚みが0.5以上であり、前記両面粘着テープは、凝集力試験によるずれ量が35μm以上110μm以下である、両面粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の両面粘着テープは、発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層を有する両面粘着テープである。
両面粘着テープの基材として発泡体基材を用いることで、被着体の凹凸や曲面に追従する高い柔軟性と、落下等の衝撃によって割れや剥離が起き難い、高い耐衝撃性を発揮することができる。
【0009】
本発明の両面粘着テープは、25%圧縮強度が500kPa以下である。
両面粘着テープの25%圧縮強度を上記範囲とすることで、柔軟性を向上させることができる。柔軟性をより向上させる観点から、上記25%圧縮強度は480kPa以下であることが好ましく450kPa以下であることがより好ましく、400kPa以下であることが更に好ましく、350kPa以下であることが更により好ましく、300kPa以下であることが特に好ましく、250kPa以下であることがとりわけ好ましく、200kPa以下であることがことさら好ましく、150kPa以下であることが非常に好ましく、100kPa以下であることが最も好ましい。上記25%圧縮強度の下限は特に限定されないが、耐衝撃性とのバランスの観点から、好ましくは50kPa、より好ましくは70kPaである。上記25%圧縮強度は、上記発泡体基材の種類、発泡倍率及び気泡の平均長径や上記アクリル粘着剤層を構成するアクリル粘着剤の種類によって制御することができる。
なお、25%圧縮強度は、JISK 6767に準拠して測定できる。具体的には、2cm×2cmに裁断した両面粘着テープを重ね合わせて厚み10mmの積層体を作製し常温下に1時間放置した後、常温下で、この積層体の厚み方向に10mm/minの速さで元の厚みの50%まで圧縮し、得られたS-Sカーブから25%圧縮強度を算出することができる。
【0010】
本発明の両面粘着テープは、発泡体基材厚み/両面粘着テープ厚みが0.5以上である。
発泡体基材の厚みと両面粘着テープの厚みとの比が上記範囲であることで、柔軟性及び耐衝撃性を高めることができる。また、上記25%圧縮強度を同時に満たすことで更に耐反発性を高めることができる。柔軟性、耐衝撃性及び耐反発性を更に向上させる観点から、上記発泡体基材厚み/両面粘着テープ厚みは0.65以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.85以上であることが更に好ましい。上記発泡体基材厚み/両面粘着テープ厚みの上限は特に限定されないが、取り扱い性の観点から0.99以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.9以下であることが更に好ましい。
【0011】
本発明の両面粘着テープは、凝集力試験によるずれ量が35μm以上110μm以下である。
凝集力試験によるずれ量が35μm以上であることで、両面粘着テープが適度な硬さとなり、高い粘着力と柔軟性を発揮することができる。また、凝集力試験によるずれ量が110μm以下であることで、両面粘着テープが柔らかくなりすぎず、高い耐反発性を発揮することができる。柔軟性と耐反発性を更に向上させる観点から、上記凝集力試験によるずれ量は45μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以下であることが好ましく、90μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましい。上記凝集力試験によるずれ量は上記アクリル粘着剤層を構成するアクリル粘着剤の種類や上記アクリル粘着剤層の厚み等によって制御することができる。
【0012】
凝集力試験は、以下の方法により測定することができる。
図1に、両面粘着テープの凝集力試験の様子を表した模式図を示す。まず、発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層が形成された両面粘着テープを作製する。次いで、
図1に示すように、20mm×40mmにカットした両面粘着テープ1を用いて、幅25mm×長さ5mmのステンレス板(SUS#304)21及び幅30mm×長さ300mm×厚さ23μmのPETフィルム22を貼り合わせる。23℃において、一方のステンレス板21の一端を固定し、PETフィルム22の一端を200gの重り23により水平方向に3分間引っ張る。このとき、両面粘着テープ1が引っ張り方向にずれた変位量を測定する。なお、両面粘着テープの長手方向を、
図1における引張方向とする。
【0013】
上記発泡体基材は、気泡の平均長径が150μm以下である。
発泡体基材の気泡の平均長径を従来の発泡体基材を有する両面粘着テープよりも小さくすることで、同じ発泡倍率であっても気泡によって形成される区画(セル)の数を増やすことができる。セルの数が増えると、落下による衝撃や曲面に貼り付けた際の応力を分散することができるため、両面粘着テープの強度が向上し、耐衝撃性と耐反発性を高めることができる。一方で、気泡の平均長径を小さくした場合であっても、発泡倍率が同じであれば柔軟性は気泡の平均長径が大きいものと変わらないため、耐衝撃性と耐反発性を高めながらも柔軟性を維持することができる。
耐衝撃性と耐反発性をより高める観点から、上記発泡体基材の気泡の平均長径は140μm以下が好ましく、135μm以下であることがより好ましく、125μm以下であることが更に好ましく、120μm以下であることが更により好ましく、110μm以下であることが特に好ましい。上記発泡体基材の気泡の平均長径の下限は0より大きければ特に限定されないが、耐衝撃性、耐反発性及び柔軟性とのバランスの観点から40μmであることが好ましい。上記発泡体基材の気泡の平均長径は、発泡時の巻取り速度差による伸びを制御することによって制御することができる。
【0014】
上記発泡体基材の気泡の平均長径及び平均短径は、以下の方法により測定することができる。
まず、発泡体基材を50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃を用いてMD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する。次いで、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、「VHX-900」等)を用いて、200倍の倍率で切断面の拡大写真を撮影し、MD方向に2mmの範囲(厚み×2mmの範囲)に存在する全てのセルについてMD方向の気泡径を測定する。この操作を5回繰り返し、得られたすべての気泡径を平均することでMD方向の平均気泡径を算出する。次いで、発泡体基材をTD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する以外は同様の方法でTD方向の平均気泡径を得る。得られたMD及びTD方向の平均気泡径のうち大きいほうを気泡の平均長径、短いほうを気泡の平均短径とする。
なお、MD(Machine Direction)とは、発泡体基材をシート状に押出加工する際の押出方向をいい、TD(Transverse Direction)とはMDに対して垂直な方向をいう。
【0015】
上記発泡体基材は、気泡アスペクト比(短径/長径)が好ましくは0.65以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上、更により好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.85以上、とりわけ好ましくは0.9以上である。発泡体基材の気泡アスペクト比が上記範囲であることで、MDとTD方向で、気泡によって形成される区画(セル)の数の差が小さくなり、テープ方向による耐衝撃性と耐反発性の差が小さくなるため結果としてテープ全体の耐衝撃性と耐反発性を高めることができる。上記気泡アスペクト比の上限は特に限定されないが、通常1以下であり、例えば0.97以下である。
なお、上記気泡アスペクト比は上記気泡の平均短径を平均長径で除することにより算出することができる。
【0016】
上記発泡体基材は、発泡倍率が2cm3/g以上5cm3/g以下であることが好ましい。
上記発泡体基材の発泡倍率が上記範囲内であると、得られる両面粘着テープの柔軟性をより高めることができ、上記25%圧縮強度を満たしやすくすることができる。柔軟性と耐衝撃性及び耐反発性とのバランスをとる観点から、上記発泡体基材の発泡倍率は、2.5m3/g以上であることがより好ましく、3cm3/g以上であることが更に好ましく、3.5cm3/g以上であることが更により好ましく、4.7cm3/g以下であることがより好ましく、4.5cm3/g以下であることが更に好ましい。
上記発泡体の発泡倍率は、上記発泡体基材の材料、厚み、発泡剤部数等により調整することができる。
なお、上記発泡体基材の発泡倍率は、上記発泡体の密度の逆数から算出できる。例えば、JIS K 7222に準拠して測定することができる。
【0017】
上記発泡体基材は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン発泡体、ウレタン発泡体等が挙げられる。なかでも、上記の物性を達成しやすいことからポリオレフィン発泡体であることが好ましい。上記ポリオレフィン発泡体としては、例えば、ポリエチレン系発泡体、ポリプロピレン系発泡体、エチレン-プロピレン系発泡体等が挙げられる。なかでも、ポリエチレン系発泡体が好適である。
【0018】
上記ポリオレフィン発泡体を構成するポリオレフィン樹脂は特に限定されないが、重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリオレフィン樹脂が好ましい。なかでも、メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン樹脂がより好ましい。上記メタロセン化合物として、例えば、カミンスキー触媒等が挙げられる。
【0019】
上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン樹脂として、例えば、上記メタロセン化合物を用いて、エチレンと、必要に応じて配合される他のα-オレフィンとを共重合することにより得られたポリエチレン樹脂等が挙げられる。上記他のα-オレフィンとして、例えば、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等が挙げられる。
【0020】
上記メタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン樹脂は、他のオレフィン樹脂と併用されてもよい。上記他のオレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0021】
上記発泡体基材は、架橋されていることが好ましい。上記発泡体基材を架橋することで、耐衝撃性を高めることができる。
上記発泡体基材を架橋する方法は特に限定されず、例えば、上記発泡体基材に電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法、上記発泡体基材に予め配合しておいた有機過酸化物を加熱により分解させる方法等が挙げられる。
【0022】
上記発泡体基材の製造方法は特に限定されないが、例えば、基材樹脂と発泡剤とを含有する発泡性樹脂組成物を調製し、押出機を用いて発泡性樹脂組成物をシート状に押出加工する際に発泡剤を発泡させ、得られた発泡体基材を必要に応じて架橋する方法が好ましい。
【0023】
上記発泡体基材の厚みは、特に限定されないが、好ましい下限は30μm、より好ましい下限は50μm、更に好ましい下限は70μm、更により好ましい下限は100μm、特に好ましい下限は150μm、とりわけ好ましい下限は200μmである。上記発泡体基材の厚みが上記下限以上であると、得られる両面粘着テープの耐衝撃性をより向上させることができる。上記発泡体基材の厚みは、特に限定されないが、好ましい上限は700μm、より好ましい上限は600μm、更に好ましい上限は500μm、更により好ましい上限は400μm、特に好ましい上限は300μm、とりわけ好ましい上限は270μmである。上記発泡体基材の厚みが上記上限以下であると、得られる両面粘着テープの柔軟性をより向上させることができる。本発明において、発泡体基材および粘着剤層の厚みは以下の方法によって測定することができる。
まず、テープを50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃を用いてMD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する。次いで、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、「VHX-900」等)を用いて、200倍の倍率で切断面の拡大写真を撮影し、テープの厚さ方向の全長を測定する。この操作をMD方向に2mmの範囲でランダムに5点測定し、すべての全長を平均することで、テープの厚みを算出する。次いで、同様の方法で発泡体基材の厚さ方向の全長を測定し、すべての全長を平均することで、発泡体基材の厚みを算出する。粘着剤層の厚みは、上記テープ厚みから発泡体基材厚みの差を取ることで算出する。
【0024】
上記アクリル粘着剤層を構成するアクリル粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率が4×105Pa以下であることが好ましい。
アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることで、アクリル粘着剤が適度に柔らかくなるため、得られる両面粘着テープの粘着力と柔軟性をより向上させることができる。得られる両面粘着テープの粘着力と柔軟性を更に向上させる観点から、上記アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は3.5×105Pa以下であることがより好ましく、3×105Pa以下であることが更に好ましく、2.8×105Pa以下であることが更により好ましく、2.7×105Pa以下であることが特に好ましい。上記アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率の下限は特に限定されないが、耐衝撃性、耐反発性とのバランス及び取り扱い性の観点から2×105Paであることが好ましい。上記アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率はアクリル粘着剤の原料モノマーのガラス転移温度によって調節することができる。
なお、上記アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率は、粘弾性スペクトロメーター(例えば、アイティー計測制御社製、DVA-200等)を用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で-40℃~140℃の動的粘弾性スペクトルを測定した時の、23℃における貯蔵弾性率として得ることができる。
【0025】
上記アクリル粘着剤は、140℃における貯蔵弾性率が3×104Pa以上であることが好ましい。
高温における貯蔵弾性率は、長期間における流動性と相関がある。アクリル粘着剤の140℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることで、粘着剤が長期間経っても流動しにくい、つまり、長期間応力がかかっても変形しにくいことから、得られる両面粘着テープの耐反発性をより高めることができる。得られる両面粘着テープの耐反発性を更に向上させる観点から、上記アクリル粘着剤の140℃における貯蔵弾性率は3.1×104Pa以上であることがより好ましく、3.2×104Pa以上であることが更に好ましい。上記アクリル粘着剤の140℃における貯蔵弾性率の上限は、特に限定されないが、例えば1×105Paである。上記アクリル粘着剤の140℃における貯蔵弾性率を上記範囲に制御する方法としては、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)を狭くする方法が挙げられる。また、粘着付与樹脂の軟化点、含有量等を調整する方法、上記アクリル粘着剤層のゲル分率を調整する方法等も挙げられる。
なお、上記アクリル粘着剤の140℃における貯蔵弾性率は上記アクリル粘着剤の23℃における貯蔵弾性率と同様の方法で動的粘弾性スペクトルを測定した時の、140℃における貯蔵弾性率として得ることができる。
【0026】
上記アクリル粘着剤は特に限定されないが、上記各パラメータを満たしやすいことから、ブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートとを含むモノマー混合物を共重合して得られるアクリル共重合体であることが好ましい。
全モノマー混合物に占めるブチルアクリレートの含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。ブチルアクリレートの含有量がこの範囲内であると、高い粘着力と凝集力とを両立することができる。
全モノマー混合物に占める2-エチルヘキシルアクリレートの含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。2-エチルヘキシルアクリレートの含有量がこの範囲内であると、高い粘着力と凝集力とを両立することができる。
【0027】
上記モノマー混合物は、必要に応じてブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート以外の共重合可能な他の重合性モノマーを含んでいてもよい。
上記共重合可能な他の重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が13~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等の官能性モノマーが挙げられる。
【0028】
上記モノマー混合物を共重合して上記アクリル共重合体を得るには、上記モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、リビングラジカル重合等が挙げられる。なかでも、分子量分布を狭くでき、高温での貯蔵弾性率を高めることができることから、低温重合又はリビングラジカル重合が好ましい。
【0030】
上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましい下限が40万、好ましい上限が120万である。重量平均分子量が上記範囲であることで、上記アクリル粘着剤層の凝集力が高まり、両面粘着テープの粘着力がより向上する。重量平均分子量のより好ましい下限は50万、より好ましい上限は110万である。
重量平均分子量を上記範囲に調整するためには、重合開始剤、重合温度等の重合条件を調整すればよい。
なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
上記アクリル粘着剤層は、粘着付与樹脂を含有してもよい。
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量がこの範囲内であると、高い粘着力を発揮することができる。
【0033】
上記アクリル粘着剤層は、架橋剤が添加されることにより上記アクリル粘着剤層を構成する樹脂(上記アクリル共重合体及び/又は上記粘着付与樹脂)の主鎖間に架橋構造が形成されていることが好ましい。アクリル粘着剤層に架橋構造が形成されることで、貯蔵弾性率を上記範囲に制御しやすくすることができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の添加量は、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限が0.1重量部、より好ましい上限が3重量部である。
【0034】
上記アクリル粘着剤層は、ゲル分率が20%以上であることが好ましい。
アクリル粘着剤層のゲル分率が上記範囲であることで、上記凝集力試験によるずれ量を満たしやすくすることができる。ずれ量を更に満たし易くする観点から、上記アクリル粘着剤層のゲル分率は、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、更により好ましくは35%以上、特に好ましくは40%以上である。上記アクリル粘着剤層のゲル分率の上限は特に限定されないが、得られる両面粘着テープの粘着力と柔軟性とを両立できる観点から、好ましくは80%、より好ましくは75%、更に好ましくは70%、更により好ましくは65%である。
【0035】
上記アクリル粘着剤層の厚みは特に限定されないが、片面のアクリル粘着剤層の厚みの好ましい下限は10μm、好ましい上限は100μmである。上記アクリル粘着剤層の厚みが上記範囲内であることで、上記ずれ量を上記範囲に調節しやすくすることができ、より高い柔軟性と耐衝撃性と耐反発性とを兼ね備えた両面粘着テープとすることができる。上記アクリル粘着剤層の厚みのより好ましい下限は15μm、更に好ましい下限は20μm、更により好ましい下限は25μm、より好ましい上限は80μm、更に好ましい上限は70μm、更により好ましい上限は60μmである。
【0036】
本発明の両面粘着テープは、両面粘着テープの総厚みが好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、更に好ましくは100μm以上、更により好ましくは150μm以上であり、好ましくは900μm以下、より好ましくは700μm以下、更に好ましくは500μm以下、更により好ましくは400μm以下である。両面粘着テープの総厚みが上記範囲であることで、より取り扱い性に優れ、高い柔軟性と耐衝撃性と耐反発性とを兼ね備えた粘着テープとすることができる。
【0037】
本発明の両面粘着テープの製造方法として、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、上記アクリル粘着剤、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤等に溶剤を加えてアクリル粘着剤Aの溶液を作製して、このアクリル粘着剤Aの溶液を発泡体基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去してアクリル粘着剤層Aを形成する。次に、形成されたアクリル粘着剤層Aの上に離型フィルムをその離型処理面がアクリル粘着剤層Aに対向した状態に重ね合わせる。
次いで、上記離型フィルムとは別の離型フィルムを用意し、この離型フィルムの離型処理面にアクリル粘着剤Bの溶液を塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去することにより、離型フィルムの表面にアクリル粘着剤層Bが形成された積層フィルムを作製する。得られた積層フィルムをアクリル粘着剤層Aが形成された発泡体基材の裏面に、アクリル粘着剤層Bが発泡体基材の裏面に対向した状態に重ね合わせて積層体を作製する。そして、上記積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層を有し、かつ、アクリル粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた両面粘着テープを得ることができる。しかし、発泡体基材を用いる場合、粘着剤を基材に直接塗布する製造方法は基材の厚みばらつきや、表面粗さが大きい場合均一に粘着剤を塗布できない可能性がある。
【0038】
また、本発明の両面粘着テープの製造方法としては、他にも以下のような方法が挙げられる。
まず、同様の要領で積層フィルムを2組作製し、これらの積層フィルムを発泡体基材の両面のそれぞれに、積層フィルムのアクリル粘着剤層を発泡体基材に対向させた状態に重ね合わせて積層体を作製する。その後、この積層体をゴムローラ等によって加圧することによって、発泡体基材の両面にアクリル粘着剤層を有し、かつ、アクリル粘着剤層の表面が離型フィルムで覆われた両面粘着テープを得る。
【0039】
本発明の両面粘着テープの用途は特に限定されないが、電子機器部品の固定に特に好適に用いることができる。
このような、電子機器部品の固定に用いられる本発明の両面粘着テープもまた、本発明の1つである。
【0040】
本発明の両面粘着テープは、柔軟性と耐衝撃性と耐反発性に優れることから、電子機器部品の中でも特に曲面を持った部品の曲面部に貼り付けて用いる際に大きな効果を発揮する。上記曲面を持った部品の両面粘着テープを貼り付ける部分の曲率半径は、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、1000mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましく、250mm以下が更に好ましい。
このような、両面粘着テープ貼付部分の曲率半径が5mm以上1000mm以下である、電子機器部品の固定に用いられる本発明の両面粘着テープもまた、本発明の1つである。
また、曲面部に本発明の両面粘着テープが貼り付けられている電子機器部品及び曲率半径が5mm以上1000mm以下である部分に本発明の両面粘着テープが貼り付けられている、電子機器部品もまた、本発明の1つである。
更に、上記電子機器部品を有する電子機器もまた、本発明の1つである。
【0041】
これらの用途における本発明の両面粘着テープの形状は特に限定されないが、長方形、額縁状、円形、楕円形、ドーナツ型等が挙げられる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、電子機器部品固定用途や車輌部品固定用途に好適に用いることができる、高い柔軟性、耐衝撃性及び耐反発性を兼ね備えた両面粘着テープ及び該両面粘着テープを用いた電子機器部品、電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】両面粘着テープの凝集力試験を説明する模式図である。
【
図2】両面粘着テープのPUSH粘着力試験を説明する模式図である。
【
図3】両面粘着テープの落下衝撃試験を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(発泡体基材(A)の調製)
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂100重量部、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド3重量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1質量部及び酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.5重量部、を単軸押出機に供給して130℃で溶融混練して、厚み180μmの原反シートとして押出した。
【0046】
次に、上記原反シートを、その両面に加速電圧150kVの電子線を8.8Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させ、発泡シートを得た。次いで、全体の厚さが100μmとなるように、110℃でMD及びTDに延伸し、厚さ100μmのポリオレフィン発泡体を得た。
【0047】
(発泡体基材(B)~(K)の調製)
発泡剤添加量を1.5~4.0質量部数、架橋時の線量を3.0~10.5Mradとなるように調整した点以外は発泡体基材(A)と同様の方法で表1、2に示す厚みを有する発泡体基材(B)~(K)を得た。
【0048】
(気泡の平均長径、平均短径及び気泡アスペクト比の測定)
まず、発泡体基材を50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃を用いてMD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断した。次いで、デジタルマイクロスコープ(VHX-900、キーエンス社製)を用いて、200倍の倍率で切断面の拡大写真を撮影し、MD方向に2mmの範囲(厚み×2mmの範囲)に存在する全てのセルについてMD方向の気泡径を測定した。この操作を5回繰り返し、得られたすべての気泡径を平均することでMD方向の平均気泡径を算出した。次いで、発泡体基材をTD方向に平行かつMD方向とTD方向が成す面に対して垂直な面で切断する以外は同様の方法でTD方向の平均気泡径を得た。得られたMD及びTD方向の平均気泡径のうち大きい方を気泡の平均長径、短い方を平均短径とした。また、得られたすべての気泡の平均長径及び平均短径から気泡アスペクト比(短径/長径)を算出した。結果を表1、2に示した。
【0049】
(発泡倍率の測定)
得られた発泡体基材について、ミラージュ社製の電子比重計(商品名「ED120T」)を使用して、JISK-6767に準拠した方法で測定した密度から発泡倍率を算出した。結果を表1、2に示した。
【0050】
(アクリル粘着剤(a)の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にブチルアクリレート42重量部、2-エチルヘキシルアクリレート55重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加し、60℃で8時間重合させ、アクリル共重合体の溶液を得た。得られたアクリル共重合体について、GPC法により重量平均分子量を測定したところ、110万であった。
得られたアクリル共重合体の溶液に含まれるアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル15重量部、酢酸エチル(不二化学薬品社製)125重量部、イソシアネート系架橋剤1.5重量部を添加し、攪拌して、アクリル粘着剤(a)を得た。なお、重合ロジンエステル、イソシアネート系架橋剤及びGPCの測定機器と測定条件は以下の通りとした。
重合ロジンエステル:D-135、軟化点135℃、荒川化学工業社製
イソシアネート系架橋剤:コロネートL45、東ソー社製
<GPCの測定機器及び測定条件>
ゲルパミエーションクロマトグラフ:e2695 Separations Module(Waters社製)
検出器:示差屈折計(2414、Waters社製)
カラム:GPC KF-806L(昭和電工社製)
標準試料:STANDRAD SM-105、昭和電工社製
サンプル流量:1mL/min
カラム温度:40℃
【0051】
(アクリル粘着剤(b)の調製)
イソシアネート系架橋剤の添加量を0.9重量部とした以外はアクリル粘着剤(a)の調製方法と同様にして、アクリル粘着剤(b)を得た。
【0052】
(アクリル粘着剤(c)の調製)
イソシアネート系架橋剤の添加量を1.8重量部とした以外はアクリル粘着剤(a)の調製方法と同様にして、アクリル粘着剤(c)を得た。
【0053】
(アクリル粘着剤(d)の調製)
イソシアネート系架橋剤の添加量を1.6重量部とした以外はアクリル粘着剤(a)の調製方法と同様にして、アクリル粘着剤(d)を得た。
【0054】
(アクリル粘着剤(e)の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にブチルアクリレート82重量部、エチルアクリレート10重量部、2-エチルヘキシルアクリレート5重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加した。5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得た。得られたアクリル共重合体について、上記アクリル粘着剤(A)の調製と同様にして重量平均分子量を測定したところ、120万であった。
得られたアクリル共重合体の溶液に含まれるアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル系樹脂15重量部、テルペンフェノール系樹脂10重量部、ロジンエステル系樹脂10重量部、酢酸エチル(不二化学薬品社製)125重量部、イソシアネート系架橋剤1.8重量部を添加し、攪拌して、アクリル粘着剤(E)を得た。なお、重合ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂及びイソシアネート系架橋剤については以下のものを用いた。
重合ロジンエステル系樹脂:D-135、軟化点135℃、荒川化学工業社製
テルペンフェノール系樹脂:T-160、軟化点160℃、ヤスハラケミカル社製
ロジンエステル系樹脂:A-75、軟化点75℃、荒川化学工業社製
イソシアネート系架橋剤:コロネートL45、東ソー社製
【0055】
(アクリル粘着剤(f)の調製)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にブチルアクリレート78重量部、2-エチルヘキシルアクリレート19重量部、アクリル酸3重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部、及び、酢酸エチル80重量部を加え、窒素置換した後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を添加した。5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得た。得られたアクリル共重合体について、上記アクリル粘着剤(a)の調製と同様にして重量平均分子量を測定したところ、91万であった。
得られたアクリル共重合体の溶液に含まれるアクリル共重合体の固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル系樹脂15重量部、テルペンフェノール系樹脂10重量部、ロジンエステル系樹脂10重量部、酢酸エチル(不二化学薬品社製)125重量部、イソシアネート系架橋剤2.2重量部を添加し、攪拌して、アクリル粘着剤(f)を得た。なお、重合ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂及びイソシアネート系架橋剤については以下のものを用いた。
重合ロジンエステル系樹脂:D-135、軟化点135℃、荒川化学工業社製
テルペンフェノール系樹脂:T-160、軟化点160℃、ヤスハラケミカル社製
ロジンエステル系樹脂:A-75、軟化点75℃、荒川化学工業社製
イソシアネート系架橋剤:コロネートL45、東ソー社製
【0056】
(アクリル粘着剤(g)の調製)
ブチルアクリレートの添加量を60重量部に、2-エチルヘキシルアクリレートの添加量を37重量部に変更したこと以外はアクリル粘着剤(f)の調製方法と同様にして、アクリル粘着剤(g)を得た。重量平均分子量は53万であった。
【0057】
(アクリル粘着剤(h)の調製)
イソシアネート系架橋剤の添加量を2.0重量部とした以外はアクリル粘着剤(a)の調製方法と同様にして、アクリル粘着剤(h)を得た。
【0058】
(貯蔵弾性率の測定)
得られたアクリル粘着剤について、粘弾性スペクトロメーター(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で-40℃~140℃の動的粘弾性スペクトルを測定した。得られた動的粘弾性スペクトルから23℃における貯蔵弾性率(G’(23℃))と140℃における貯蔵弾性率(G’(140℃))を決定した。結果を表1、2に示した。
【0059】
(ゲル分率の測定)
得られたアクリル粘着剤を0.1gこそぎ取って酢酸エチル50ml中に浸漬し、振とう機で温度23度、120rpmの条件で24時間振とうした。振とう後、金属メッシュ(目開き#200メッシュ)を用いて、酢酸エチルと酢酸エチルを吸収し膨潤したアクリル粘着剤を分離した。分離後の粘着剤組成物を110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の金属メッシュを含むアクリル粘着剤の重量を測定し、下記式を用いてアクリル粘着剤のゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W1-W2)/W0
(W0:初期アクリル粘着剤重量、W1:乾燥後の金属メッシュを含むアクリル粘着剤重量、W2:金属メッシュの初期重量)
【0060】
(実施例1)
厚み150μmの離型紙を用意し、この離型紙の離型処理面にアクリル粘着剤(A)を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmのアクリル粘着剤層を形成した。このアクリル粘着剤層を、発泡体基材(A)(ポリエチレン樹脂、気泡の平均長径、短径をそれぞれを132μm、90μm、発泡倍率を3cm3/g、厚み100μmに調整したもの)の表面と貼り合わせた。次いで、同様の要領で、発泡体基材(A)の反対の表面にも上記と同じアクリル粘着剤層を貼り合わせた。これにより、厚み150μmの離型紙で覆われた表1に示すテープ厚の両面粘着テープを得た。
【0061】
(実施例2~12、比較例1~7)
発泡体基材及びアクリル粘着剤を表1、2に示したものに代えた以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
【0062】
(25%圧縮強度の測定)
得られた両面粘着テープについてJISK-6767に準拠して25%圧縮強度を算出した。結果を表1、2に示した。
【0063】
(凝集力試験によるずれ量)
図1に示すように、20mm×40mmにカットした両面粘着テープ1を幅25mm×長さ5mmの2枚のステンレス板(SUS#304)21及び幅30mm×長さ300mm×厚さ23μmのPETフィルム22に貼り合わせた。次いで、一方のステンレス板21の一端を固定し、PETフィルム22の一端を200gの重り23により水平方向に温度23℃の条件で、3分間引っ張った。その後、両面粘着テープ1が引っ張り方向にずれた変位量を測定した。結果を表1、2に示した。
【0064】
<評価>
実施例、比較例で得られた両面粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0065】
(1)PUSH粘着力の評価
得られた両面粘着テープについて下記方法によりPUSH粘着力を測定した。PUSH粘着力とは粘着面に対して垂直な方向に力をかけた際の粘着力である。PUSH粘着力は同じ両面テープでも圧着する圧力により変化する。なぜならば、圧力によってテープの粘着面と被着体界面の密着度合いが変化するからである。そのため、高い圧力を加えた方が密着度合いは高くなり、PUSH粘着力も高くなる。言い換えると、両面テープが柔軟なほど低い圧力を加えた場合でも粘着面と被着体界面の密着度合いが損なわれず、高い圧力を加えた場合の粘着力との差が小さくなる。よって、PUSH粘着力を測定することで、両面粘着テープの柔軟性を測る指標とすることができる。
図2に、両面粘着テープのPUSH粘着力試験の模式図を示す。得られた両面粘着テープ1を外径が46mm×61mm、内径が44mm×59mmのロの字に打ち抜き、幅1mmの枠状の試験片を作製した。次いで、
図2(a)に示すように、中央部分に38mm×50mmの四角い穴のあいた厚さ2mmのステンレス板4に対して離型紙を剥がした試験片を四角い穴がほぼ中央に位置するように貼り付けた。そして、試験片の上面から50mm×70mm、厚さ4mmのガラス板3を試験片がほぼ中央に位置するように貼り付け、試験装置を組み立てた。
その後、試験装置の上面に位置するステンレス板側から0.1MPaの圧力を10秒間加えて上下に位置するステンレス板と試験片とを圧着し、常温で24時間放置した。
放置後、
図2(b)に示すように、作製した試験装置を裏返して支持台に固定し、四角い穴を通して試験片の四角い穴のほぼ中央部分を10mm×10mm四方のステンレス棒を用いて10mm/minの速度でゆっくりと荷重5をかけていき、荷重により試験片とガラス板が剥がれた時の荷重の値を計測した。これをPUSH粘着力(低圧着)とした。
次いで、圧着の条件を0.3MPa、10秒間とした以外はPUSH粘着力(低圧着)と同様の操作で測定を行い、PUSH粘着力(通常)を得た。
得られた結果から、(100×PUSH粘着力(低圧着)/PUSH粘着力(通常))を算出し、下記基準で評価した。
◎:95%以上
○:92%以上95%未満
△:73%以上92%未満
×:73%未満
【0066】
(2)耐衝撃性(落下衝撃試験)の評価
図3に、両面粘着テープの落下衝撃試験の模式図を示す。得られた両面粘着テープ1を外径が46mm×61mm、内径が44mm×59mmのロの字に打ち抜き、幅1mmの枠状の試験片を作製した。次いで、
図3(a)に示すように、中央部分に38mm×50mmの四角い穴のあいた厚さ2mmのステンレス板4に対して離型紙を剥がした試験片を四角い穴がほぼ中央に位置するように貼り付けた。そして、試験片の上面から50mm×70mm、厚さ4mmのガラス板3を試験片がほぼ中央に位置するように貼り付け、試験装置を組み立てた。
その後、試験装置の上面に位置するステンレス板側から0.3MPaの圧力を10秒間加えて上下に位置するステンレス板と試験片とを圧着し、常温で24時間放置した。
放置後、
図3(b)に示すように、作製した試験装置を裏返して支持台に固定し、四角い穴を通過する大きさの150gの重さの鉄球6を四角い穴のほぼ中央を通過するように落とした。鉄球を落とす高さを徐々に高くしていき、鉄球の落下により加わった衝撃により試験片とガラス板が剥がれた時の鉄球を落した高さ(cm)を計測した。
得られた計測値を両面粘着テープの厚み(μm)で割った値を算出し、下記基準で耐衝撃性を評価した。
◎:0.2以上
○:0.16以上0.2未満
△:0.1以上0.16未満
×:0.1未満
【0067】
(3)ギャップ追従性の評価
得られた両面粘着テープについて下記方法によりギャップ追従性を評価した。ギャップ追従性の評価では、貼り合わせた被着体間に意図的にスペーサーを挿入し、両面テープの厚み方向に引張力を加える。この時、テープには元の形状に戻ろうとする応力がかかるため、この状態で両面粘着テープの剥がれの有無や発泡体基材及び粘着剤の伸びを測定することで耐反発性を評価することができる。即ち、テープの剥がれがないほど耐反発性に優れており、粘着剤ではなく発泡体基材が伸びるほど、粘着剤と被着体界面にかかる応力が小さくなるため剥がれにくく、耐反発性に優れていることになる。
得られた粘着テープを1cm×1cmにカットし、125mm×50mm、厚さ10mmの2枚のポリカーボネート板で挟み込んで積層体を得た。得らえた積層体の上面から0.3MPaの圧力を10秒間加えて両面粘着テープとポリカーボネート板を圧着した。圧着した直後、積層体のポリカーボネート板の間に両面粘着テープの厚みの1.5倍の厚みを有するアルミ板を挿入し、粘着テープの発泡体基材及びアクリル粘着剤層の伸びを測定した。下記基準でギャップ追従性を評価した。
◎:発泡体基材の伸びが50%以上
○:発泡体基材が伸びており、伸びが50%未満
△:発泡体基材が伸びていない
×:界面で剥離している部分がある
【0068】
【0069】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、電子機器部品固定用途や車輌部品固定用途に好適に用いることができる、高い柔軟性、耐衝撃性及び耐反発性を兼ね備えた両面粘着テープ及び該両面粘着テープを用いた電子機器部品、電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 両面粘着テープ
21 ステンレス板
22 PETフィルム
23 重り
3 ガラス板
4 ステンレス板
5 荷重
6 鉄球