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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】水性疎水性シリカ分散体
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20220323BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220323BHJP
   C09D 7/42 20180101ALI20220323BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220323BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220323BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220323BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220323BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220323BHJP
   C09C 1/30 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D5/00 Z
C09D7/42
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
C09D133/00
C09D175/04
C09C1/30
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020540464
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 CN2019072987
(87)【国際公開番号】W WO2019144910
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】62/621,684
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】コイ チャンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ラン エイチ.グエン
(72)【発明者】
【氏名】カビータ ケー.ペイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジェイコブズ
(72)【発明者】
【氏名】ティエンチー リウ
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ ジェイ.モネロ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリカ エム.サンチェス ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】梅原 崇
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-253014(JP,A)
【文献】特開2005-313039(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181676(WO,A1)
【文献】特開2016-124715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09C 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される少なくとも5wt%の親水性粒子状シリカを含む、水性ベース分散体;
ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む疎水性シリカであって、少なくとも60のメタノール数を有する、疎水性シリカ;並びに
少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有し、かつ酸化エチレン及び酸化プロピレンオリゴマー基を有する第一級アミン又は第二級アミンである、分散剤、
の混合物を含み、分散体中の粒子状シリカの合計の量が少なくとも15wt%である、水性疎水性シリカ分散体。
【請求項2】
ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される、追加の粒子状シリカをさらに含み、追加の粒子状シリカが50より小さいメタノール数を有する、請求項1に記載の水性疎水性シリカ分散体(ただし、追加の粒子状シリカが親水性粒子状シリカと同一である場合を除く)
【請求項3】
化エチレン量体と酸化プロピレン量体とのモル比が0.1~11である、請求項1に記載の水性疎水性シリカ分散体。
【請求項4】
疎水性粒子状シリカが、a)粒子形態であり、少なくとも90%の空隙率、120kg/m~150kg/mの粒子密度、及び700m/g~800m/gのBET表面積を有する疎水性シリカエアロゲル、又はb)疎水性ヒュームドシリカ、を含む、請求項1に記載の水性疎水性シリカ分散体。
【請求項5】
分散体中の、疎水性シリカ:水の重量比が、少なくとも1:10である、請求項1に記載の水性疎水性シリカ分散体。
【請求項6】
重合体成分、及び請求項1~5のいずれか1項に記載の水性疎水性シリカ分散体、の混合物を含む、水性コーティング組成物。
【請求項7】
重合体成分が、アクリル配合物、ビニル配合物、ポリウレタン配合物及びアクリル/ポリウレタンハイブリッド配合物からなる群から選択される、請求項6に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
コーティング組成物が、乾燥された場合に、a)粒子状シリカを含有しない乾燥された対照組成物のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度、b)粒子状シリカを含有しない乾燥された対照組成物の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢、又はそれらの両方を有する、請求項6に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の水性コーティング組成物を用いてコーティングされた、基材。
【請求項10】
a)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む、疎水性シリカ、b)少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有し、かつ酸化エチレン及び酸化プロピレンオリゴマー基を有する第一級アミン又は第二級アミンである、分散剤、並びにc)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される親水性粒子状シリカを少なくとも5%含む、水性ベース分散体、
を混合して、第一の混合物を形成することを含み、疎水性シリカが少なくとも60のメタノール数を有し、水性疎水性シリカ分散体の合計のシリカ含有量が少なくとも15wt%である、水性疎水性シリカ分散体を調製する方法。
【請求項11】
混合が、追加の粒子状シリカを第一の混合物と混合して、第二の混合物を形成することをさらに含み、追加の粒子状シリカが、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択され、追加の粒子状シリカが、50より小さいメタノール数を有する、請求項10に記載の方法(ただし、追加の粒子状シリカが親水性粒子状シリカと同一である場合を除く)
【請求項12】
疎水性シリカが、疎水性シリカ:水の比で、少なくとも1:10で、水性疎水性シリカ分散体中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
化エチレン量体と酸化プロピレン量体とのモル比が0.1~11である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
疎水性粒子状シリカが、a)粒子形態であり、少なくとも90%の空隙率、120kg/m~150kg/mの粒子密度、及び700m/g~800m/gのBET表面積を有する疎水性シリカエアロゲル、又はb)疎水性ヒュームドシリカ、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
成分a)、b)及びc)が、同時に互いに混合されない、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の方法によって、水性疎水性シリカ分散体を製造すること;及び
水性疎水性シリカ分散体を、重合体成分と組み合わせること、
を含む、水性コーティング組成物を調製する方法。
【請求項17】
重合体成分が、水性の溶液又は分散体の形態であり、アクリル配合物、ビニル配合物、ポリウレタン配合物及びアクリル/ポリウレタンハイブリッド配合物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
コーティング組成物が、硬化された場合に、a)疎水性シリカを含有しない硬化された対照組成物の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢、b)粒子状シリカを有さない硬化された対照組成物のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度、又はそれらの両方を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年1月25日に提出された米国仮出願第62/621684号から優先権を主張し、その全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
コーティングは、硬い及び柔軟な多くの組成物の基材に、多岐にわたる特性を与えるために使用される。腐食及び擦傷保護、熱的及び電気的絶縁、並びに改善した見栄えは、広範のコーティング用途の中の、わずかな例である。
【0003】
コーティング産業が発展するにつれて、目標及び要求はより厳しくなってきている。例えば、特に屋内の及び建築の使用に重点を置いて、揮発性有機化合物(VOC)の排出を減少させることが重要である。産業上の利用は、最適化されたメンテナンスサイクル時間のための、耐食性及び他の保護特性の改善を目的としている。
【0004】
平坦な表面をコーティングするとき、重要な考慮すべきことは、与えられる光沢(グロス)の程度である。幾つかの例において、光は気を散らせるか、目に対して刺激性であるか、又はさもなければ望ましくない場合がある。木、革又は他の平坦な基材の場合、高い光沢は所望の触覚性能に干渉する場合がある。慣例的には、透明なコーティングを、つや消し効果を提供することができる別のコーティングを用いて被覆することによって、光沢を弱める場合がある。このことは、コスト、労働投入量及び仕事を完了するためにかかる総時間を増加させる。別の手法はつや消し剤に依拠し、典型的には、つや消し剤は固体粒子状添加剤の形態であり、コーティング配合物と組み合わせることができ、光沢を減少させる。公知のつや消し剤は、無機粒子、例えば金属酸化物を含有する粒子等を含む。これらの中で、シリカは適した作用剤であると、しばしば考えられている。
【0005】
粒子状シリカは低密度を有するため、特殊な技術は、扱いを容易にし、また安全リスクを減少させるために、乾式シリカを扱う必要がある場合がある。乾式シリカ粒子を扱う難しさは、シリカの液体分散体を使用することで減少させることができる。このような分散体は、コーティングを製造するために、また他の用途において、使用される場合があり、他の用途とは、シリカ粒子を表面全体に均一に供給することが望ましい用途である。例えば、2017年4月13日にDoshi名義で公開され、また参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0101773号明細書は、シリカエアロゲルスラリー及び分散体を開示していて、それらはバッティング(batting)に適用することができ、その熱的絶縁特性を強化する。スラリーはバッティング層の間に積層することができ、サンドイッチ又は多層構造を形成する。
【0006】
2009年12月22日にFieldに発行された米国特許第7635411号明細書は、柔軟な絶縁ブランケットを調製するための、エアロゲル及び繊維を含有するスラリーの使用を説明している。
【0007】
2002年11月12日にFieldに発行され、また参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6478864号明細書は、樹脂、疎水性金属酸化物粒子、及びキャリアを含む表面コーティング組成物を開示していて、樹脂は、セルロース系、アルキド系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系及びそれらの混合物であり;疎水性金属酸化物粒子は、例えばシリカ、シリカエアロゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア及びマグネシアであり;キャリアは、典型的には有機溶媒、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系及びエーテル系である。基材、典型的には木、への適用の後、組成物は、耐湿性、耐有機アルコール性、及び低光沢(50グロスユニット以下)の特徴を示す。多くの場合において、利用されるつや消し剤は、部分的に又は完全に疎水性エアロゲルであって、シリル化剤を用いてヒドロゲルの表面を改質して、また表面を改質されたゲルを乾燥させることによって得られるエアロゲルである。米国特許第6478864号明細書において具体的に参照されるのは、国際公開第98/23366号(2008年12月30日にSchwertfegerらに発行された米国特許第7470725号明細書に対応)の教示に従って調製されたシリカエアロゲルである。両文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0008】
2004年4月13日にFieldに発行され、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6720368号明細書によれば、チキソトロピーを有するつや消しのペイント配合物は、トリメチルシリル、ビニルジメチルシリル、アクリルジメチルシリル及びジメチルシリルからなる群から選択される表面部分を有する疎水性金属酸化物を含有する、樹脂系及びつや消し剤を含む。ペイント配合物が基材に適用された後に、アンチサグメーターを用いて測定されるとき、ペイント配合物は約75ミクロン(μm)のノッチ高さで垂れない程度のチキソトロピック特性を有する。
【0009】
2008年12月9日にFieldに発行され、また参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7462654号明細書は、防食表面コーティング組成物を説明していて、それは樹脂系及び疎水性金属酸化物エアロゲルを含み、湿式プロセスによって製造され、また少なくとも約350m2/gの表面積を有する。
【発明の概要】
【0010】
シリル化剤を用いたシリカの表面処理は、コーティング又は分散体に、所望の特性を依然として提供することができる疎水性粒子を提供する。水性媒体中の疎水性表面処理されたシリカ粒子の分散は、分散剤を必要とする。このような分散剤は、媒体中の疎水性シリカと、より極性のある水分子との間の界面を媒介する。しかし、このような分散剤は、コーティング若しくは分散体の親水性シリカ成分の分散に干渉する場合があるか、又は分散体を用いて調製されたコーティングの最終特性若しくは他の項目に有害である場合がある。
【0011】
従って、とりわけ高い装填レベルにおいて、疎水性及び親水性シリカの両方が分散した水性分散体を有することが望ましい。加えて、このような水性分散体は、コーティング又は他の表面処理における使用のために適切であることが望ましく、ここでコーティング又は他の表面処理は、特性、例えば光沢、耐水性及び他の望ましい特性を基材に与えるものである。
【0012】
一般的な作用剤、例えばヒュームド(焼成)シリカ、沈降シリカ又はワックス等は、コーティングにおける光沢を減少させるために使用される場合がある。光沢の要求がより低くなるに伴い、一方で、慣例的なつや消し剤の必要な装填レベルはより高くなる。同様に、これらの高い装填要求はプロセスの難しさ及び/又は性能の不足をもたらす場合がある。
【0013】
上で議論された通り、米国特許第6478864号明細書は、金属酸化物を包含するコーティング組成物を説明している。それらの中で、疎水性金属酸化物粒子、例えば疎水性エアロゲルであって、事前の溶媒交換及び続く乾燥を伴わない水性ゲルの表面修飾によって得られ、Schwertfegerらによって提供されるプロトコル(実施態様)において説明されている(国際公開第98/23366号又はその英語に相当するもの、すなわち米国特許第7470725号明細書)疎水性エアロゲルが、親水性金属酸化物粒子と比較するとき、優れた耐水性及び耐アルコール性を提示するために示されている。この材料を包含するコーティングは、つや消し効果を有すると説明されている。しかし、参照は、開示されている様々な作用剤のつや消し特性又は性能を判別しておらず、また分散体又はコーティング組成物中のこれらの材料の包含において起こり得る難しさについて全く触れていない。
【0014】
好ましい実施態様において、疎水性粒子状シリカを使用することができ、ここで疎水性粒子状シリカは、粒子状の疎水性エアロゲル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ又はコロイダルシリカであってよい。本明細書において説明される、水性シリカ分散体、コーティング分散体及び組成物は、親水性粒子状シリカ、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、及び/又は沈降シリカ、もまた含有する。多くの実施態様において、粒子状シリカは、適切な分散体において提供される。疎水性及び親水性粒子状シリカの組み合わせは、様々な用途のための分散体において使用することができ、例えば、様々なコーティング系において、特に水ベース及び/又は透明又は顔料配合物、例えばアクリル系、ビニル系、ポリウレタン系、ポリウレタン/アクリル混成物、又は本分野において公知である若しくは開発された他のもの等、の分散体において使用することができる。疎水性及び親水性シリカの分散体は、疎水性、耐水性、及び(疎水性エアロゲルの場合には)テキスタイル(織物、ブランケット及び他のバッティング構造を含む)に追加の熱的絶縁性を提供するためか、又はブランケット構造を作り出すために使用することができる。
【0015】
ある実施態様において、水性疎水性シリカ分散体は水性ベース分散体の混合物を含み、ここで水性ベース分散体は、少なくとも5wt%、例えば少なくとも10wt%又は少なくとも15wt%の親水性粒子状シリカを、疎水性粒子状シリカ及び分散剤とともに含む。疎水性粒子状シリカは、少なくとも60、好ましくは少なくとも70、例えば少なくとも80又は少なくとも90のメタノール数を有する。分散体中の粒子状シリカの合計の量は、少なくとも15wt%である。分散剤は、少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基を含み、また2~20のHLB比を有する。
【0016】
代わりに又は加えて、水性疎水性シリカ分散体は、少なくとも5wt%の親水性粒子状シリカ、疎水性シリカ及び分散剤を含み、親水性粒子状シリカは、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択され、疎水性シリカは、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含み、疎水性シリカは、少なくとも60のメタノール数を有し、また分散剤は、少なくとも1つのカチオン性又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有する。水性疎水性シリカ分散体中のシリカの合計の量は、少なくとも15wt%である。
【0017】
水性コーティング組成物又は分散体は、本明細書において説明される水性疎水性シリカ分散体、及び重合体成分の任意の実施態様を含んでよく、またこのような水性コーティング組成物又は分散体は基材をコーティングするために使用することができる。水中ペレット化のための浴は、水性疎水性シリカ分散体を含んでよい。テキスタイル又はバッティングは、水性疎水性シリカ分散体を含む処理組成物を用いて処理することができる。
【0018】
本明細書において説明される任意の実施態様による水性疎水性シリカ分散体は、コーティング組成物を形成するために、重合体成分と組み合わせることができる。コーティング組成物は、所定の方法を使用して表面に適用することができ、また硬化させることができ、それによってコーティングされた表面を製造する。コーティングされた表面の60°で測定された光沢は、対照コーティング表面の光沢(60℃)より、少なくとも15%低くあることができる。対照コーティング表面は、粒子状シリカを用いずに製造されるが、同一の仕方に適用される(すなわち、所定の方法におけるものと同一のプロトコルを用いて、同一の型の装置を使用して)対照コーティング組成物を用いて、製造される。
【0019】
代わりに又は加えて、コーティング組成物を調製する方法は、コーティング組成物を形成するために、本明細書において説明される任意の実施態様による水性疎水性シリカ分散体を、重合体成分と組み合わせせることを含む。
【0020】
代わりに又は加えて、水性疎水性シリカ分散体を調製する方法は、混合物を形成するために、a)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む、疎水性シリカ、b)少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有する、分散剤、並びにc)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される親水性粒子状シリカを少なくとも5%含む、水性ベース分散体、を混合することを含む。疎水性シリカは少なくとも60のメタノール数を有し、また水性疎水性シリカ分散体の合計のシリカ含有量は少なくとも15wt%である。
【0021】
本明細書における分散体又は方法の任意の実施態様において、水性ベース分散体は、酸性の及び/又は塩基性の安定化剤、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は塩酸を含んでよい。水性疎水性シリカ分散体は、10%より少ないC1~C4アルキルアルコールを含んでよく、及び/又は追加の粒子状シリカ、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカを含んでよく、追加の粒子状シリカは50より少ないメタノール数を有してよい。分散剤は、酸化エチレン及び酸化プロピレンオリゴマーを含んでよく、また酸化エチレン量体と酸化プロピレン量体とのモル比は、0.1~11であってよい。
【0022】
疎水性粒子状シリカは、粒子状の疎水性シリカエアロゲルを含んでよく、エアロゲルは、少なくとも90%の空隙率、120kg/m3~150kg/m3の粒子密度、及び700m2/g~800m2/gのBET表面積を有する。代わりに又は加えて、疎水性粒子状シリカは、疎水化処理されたヒュームドシリカ、例えば、シロキサン化合物、ヘキサメチルジシラザン、又はアルキルトリアルコキシ若しくはアルキルジアルコキシシランを用いて処理されたヒュームドシリカを含んでよい。疎水性シリカの親水性シリカに対する重量比は、5:95から95:5であってよい。分散体中の、疎水性シリカの水に対する重量比は、少なくとも1:10であってよい。
【0023】
本明細書において説明される、コーティング組成物又は分散体の任意の実施態様において、合計の粒子状シリカ含有量は、合計の固形分に対して、0.1wt%~30wt%であってよく、及び/又は組成物は少なくとも1つの追加のつや消し剤をさらに含んでよい。重合体成分は透明であってよく、またアクリル配合物、ビニル配合物、ポリウレタン配合物又はアクリル/ポリウレタン混成配合物を含んでよい。乾燥されるとき、結果として生じるコーティングは、同様の仕方であるが粒子状シリカを用いずに調製される乾燥された対照組成物又は分散体の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢を有することができる。
【0024】
本明細書において説明される任意の実施態様によるコーティング組成物又は分散体は、単層又は複数層で表面に適用することができる。コーティング組成物を調製するとき、重合体成分は、水性溶液又は分散体の形態であってよい。コーティング組成物を用いてコーティングされた表面は、対照コーティング表面のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度を有することができる。対照コーティング表面は、対照コーティング組成物を用いて調製され、ここで対照コーティング組成物は、同一の組成を有するが、粒子状シリカを用いずに、同様の仕方に適用される、すなわち、本明細書において提供される実施態様によるコーティング組成物と同様のプロトコルを用いて、同様の型の装置を使用する。
【0025】
本発明の実行は、多くの利点を与える。例えば、本明細書において説明される、分散体、処理組成物及びコーティング組成物は、容易に調製することができ、しばしば市販の前駆体に依拠することができ、また標準のプロトコルによって適用及び硬化することができる。
【0026】
利用される疎水性シリカ材料は、広く使用されるシリカと比較して、改善されたつや消し性能を提供することができる。さらに、それらは、調製プロセスにおいて有意な難点を伴わずに、他のつや消し剤と組み合わせて使用することができる。効率的な光沢の低減は、疎水性粒子状シリカの少ない装填量であっても得ることができ、コスト低減を実現する。同様に、少ない装填量はまた、選択肢、柔軟性、及び他の性能付加を組み込むための自由度を、沈殿防止化合物を必要とすることなく、増加させる。
【0027】
疎水性シリカは、使用の際に、又はコーティング系、処理系、若しくはそれらの成分の製造の間に、種々の型のコーティング及び処理組成物に加えることができる。それは、多くの媒体において、優れた分散均一性、高い透明性、鮮明さ及び配合物柔軟性を提示する。長いコーティング寿命、少ない水分吸着、良好な貯蔵寿命及び減少したVOC排出は、他の魅力的な性状である。特に、エアロゲルは、極度の疎水性、高い空隙率及び優秀な光拡散特性をもたらすことができる。
【0028】
ヒュームドシリカ等の親水性粒子状シリカと併せて使用するとき、本明細書において説明される疎水性シリカは、機械的性状について負の影響をほとんど又は全く有さず、例えばそれらの光沢のある相対物に、少なくとも相当する及び時にはそれより優れた、Konig硬度、鉛筆硬度、並びに他の特性、の特性を有するコーティングをもたらす。達成された弱められた光沢は、輝き、ぎらつき及びミラー効果を減少させる又は排除することができ、視覚疲労を軽減し、及び/又は所望の見栄えを実現する。しばしば、つや消し仕上げは、時間とともに見栄えが悪くなる傾向が少なく、小さな擦傷又は他の欠陥をより良く隠すことができ、また木、革及び他の平坦な表面に、魅力ある触覚又は視覚効果をもたらすことができる。
【0029】
幾つかの場合において、つや消しコーティングは、高い耐磨耗性、耐腐食性、耐化学性及び/又は耐汚染性、UV及び/又は高温安定性及び/又は水の存在下若しくは湿潤条件における安定性、を提示することができる。多くの場合において、特に水媒介配合物のため、不快なVOC排出無しに、それらの適用がなされる。
【0030】
つや消しのための代わりの実践が、光沢があるベース上への低光沢のトップコートの適用を必要とすると一方で、コーティング系に、その硬化の前に容易に組み込むことができるつや消し剤は、おおいに、コーティングプロセスを単純化し、労働コストを減少させ、添加の待機時間を排除し、また複数のコーティングを乾燥させることに関連する意図しない損傷のための機会を減少させる。
【0031】
代わりに又は加えて、本明細書における任意の実施態様による水性疎水性シリカ分散体は、テキスタイル若しくはバッティングのための処理組成物を調製するために使用することができるか、又は水中ペレット化のための浴として採用することができる。代わりに又は加えて、このような水性疎水性シリカ分散体は、湿式ブランケットを製造するための組成物を調製するために使用することができる。
【0032】
構成の様々な詳細及び要素の組み合わせを含む、上の及び他の本発明の特徴、並びに他の利点は、今、より詳細に、添付の図面の参照によって説明され、請求の範囲において指摘される。本発明に形態を与える詳細な方法及び器具は、例示によって示されるが、本発明を限定するものではない、と理解される。本発明の原理及び特徴は、本発明の範囲から逸脱することのない、様々な及び多数の実施態様において、採用することができる。
【0033】
添付の図面において、異なる図を通して、符号は同一の部分を参照する。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。図面中、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】対照ポリウレタンベースコーティング(A)、CAB-O-SPERSE(登録商標)PG 022ベース分散体とエアロゲル1つとの組み合わせを使用して調製したポリウレタンベースコーティング(1.5wt%エアロゲル、B、及び3.0wt%エアロゲル、C)、エアロゲルと粒子状シリカとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、D、及び3.0w%エアロゲル、E)、及びエアロゲルとワックスとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、F、3.0wt%エアロゲル、G)の、20°における光沢の棒グラフである。
図2】60°における光沢の棒グラフであって、図面中に付される符号は、図1の説明において記載されるものと対応する。
図3】対照ポリウレタンベースコーティング(A)、CAB-O-SPERSE PG 022ベース分散体とエアロゲル1つとの組み合わせを使用して調製したポリウレタンベースコーティング(1.5wt%エアロゲル、B、及び3.0wt%エアロゲル、C)、エアロゲルと粒子状シリカとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、D、及び3.0w%エアロゲル、E)、及びエアロゲルとワックスとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、F、3.0wt%エアロゲル、G)の、ヘイズの棒グラフである。
図4】対照ポリウレタンベースコーティング(A)、CAB-O-SPERSE PG 022出発分散体とエアロゲル1つとの組み合わせを使用して調製したポリウレタンベースコーティング(1.5wt%エアロゲル、B、及び3.0wt%エアロゲル、C)、エアロゲルと粒子状シリカとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、D、及び3.0w%エアロゲル、E)、及びエアロゲルとワックスとを組み合わせたコーティング(1.5wt%エアロゲル、F、3.0wt%エアロゲル、G)について測定された、Konig硬度データの棒チャートである。
図5】対照コーティング(A)、本発明の例示的実施態様によって調製されるコーティング(B~G)、及び慣例的なつや消し剤を使用して調製される比較コーティング(H~M)についての、20°における光沢の棒グラフであり、以下の通りである。すなわち、Bは樹脂配合物中の1.9%水性疎水性シリカ分散体Pであり、Cは樹脂配合物中の3.7%水性疎水性シリカ分散体Pであり、Dは樹脂配合物中の7.4%水性疎水性シリカ分散体Pであり、Eは樹脂配合物中の1.8%水性疎水性シリカ分散体Qであり、Fは樹脂配合物中の3.7%水性疎水性シリカ分散体Qであり、Gは樹脂配合物中の7.4%水性疎水性シリカ分散体Qであり、Hは樹脂配合物中の5%比較用Rであり、Iは樹脂配合物中の10%比較用Rであり、Jは樹脂配合物中の20%比較用Rであり、Kは樹脂配合物中の5%比較用Sであり、Lは樹脂配合物中の10%比較用Sであり、Mは樹脂配合物中の20%比較用Sである。
図6】60°における光沢の棒グラフであって、図面中に付される符号は、図5の説明において記載されるものと対応する。
図7図5及び6に関して説明された通りの、対照ポリウレタンコーティング、本発明の例示的実施態様によって調製されたコーティング、及び慣例的なつや消し剤を使用して調製された比較コーティングの、ヘイズの棒チャートである。
図8図5及び6に関して説明された通りの、対照コーティング、本発明の例示的実施態様によって調製されたコーティング、及び慣例的なつや消し剤を使用して調製された比較コーティングについての、フラッシュオフKonig硬度の棒チャートである。
図9図5及び6に関して説明された通りの、対照コーティング、本発明の例示的実施態様によって調製されたコーティング、及び慣例的なつや消し剤を使用して調製された比較コーティングについての、Konig硬度変化の棒チャートである。
図10】対照アクリルコーティング(AA)、本発明の例示的実施態様によって調製されるアクリルベースコーティング(AB、AC、AD)、及び慣例的なつや消し剤を用いて調製された比較アクリルベースコーティング(AE、AF、AG)の、Konig硬度の時間に伴う変化の棒チャートのシリーズである。ここで、AB及びAEは樹脂に対して1.84wt%、AC及びAFは樹脂に対して3.69wt%、AD及びAGは樹脂に対して7.38wt%の固体つや消し剤である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
1つの実施態様において、水性疎水性シリカ分散体は、少なくとも5wt%、例えば、少なくとも10wt%又は少なくとも15wt%の、最初の親水性粒子状シリカ及び疎水性粒子状シリカを含む。疎水性粒子状シリカは、少なくとも60、好ましくは70、例えば、少なくとも80又は少なくとも90のメタノール数を有する。分散体中における粒子状シリカの合計の量は、少なくとも15wt%である。分散体は、カチオン性の又はカチオン化可能な少なくとも1つの基及び2~20のHLB比を有する分散剤を含む。
【0036】
水性疎水性シリカ分散体の溶媒は、少なくとも70%の水、例えば、少なくとも80%の水、少なくとも90%の水、少なくとも95%の水又は少なくとも99%の水を含む。追加の溶媒、とりわけ短鎖のアルキルアルコールの使用は、基材上にコーティングを堆積させて、短鎖のアルキルアルコールを用いて調製された分散体及び配合物が乾燥又は硬化されるとき、望ましくない有機種の蒸発をもたらすことができる。それにもかかわらず、より高沸点の溶媒は、水性疎水性シリカ分散体とともに使用される、樹脂及び配合物の他の成分の分散を補助することができる。水性疎水性シリカ分散体は、消泡剤をさらに含んでもよい。
【0037】
シリカ、すなわち二酸化ケイ素(SiO2)を基本構造単位として有する無機材料は、多様な分子形態、例えば単量体、二量体、オリゴマー、環状体及び重合体を含む分子形態で存在する。加えて、シリカは、非晶質、結晶質、水和物、溶媒和化合物又は乾燥体であることができ、また多様な粒子状及びアグリゲート状態で存在することができる。
【0038】
ここで特別興味深いのは、典型的には2nm~20nmの粒子サイズを有し、気相から形成される材料である、「焼成」又は「ヒュームド」シリカである。このようなシリカは、本明細書における水性疎水性シリカ分散体及び他の組成物中の、親水性シリカとして、又は適切な表面処理を伴って、疎水性シリカとして、使用することができる。ある製造プロセスにおいて、シリカ(通例、砂)を、約2000℃で蒸発して、また冷却して無水非晶性シリカ粒子を形成する。代わりに、シリカは、還元剤(例えば、コークス)の存在の下で、約1500℃で昇華してSiOを形成することができ、それは酸化して粒子状シリカを形成することができる。ヒュームドシリカを製造する他の方法は、例えば、高温でのSiCl4の酸化、又はメタン若しくは水素の存在の下におけるSiCl4の燃焼、を含む。
【0039】
ヒュームド金属酸化物を製造するための、よく文献化されている方法は、水素及び酸素の炎中における、適切な供給原料蒸気(例えば、ヒュームドアルミナのための塩化アルミニウム、又はヒュームドシリカのための四塩化ケイ素)の加水分解を伴う。おおよそ球形の溶融した粒子は燃焼プロセスで形成され、また粒子径をプロセスパラメーターの制御を通して変化させることができる。これらの溶融した球状体、初期粒子ともいわれる球状体は、それらの接触点で衝突を受けることによって互いに融合し、分岐鎖、3次元鎖状アグリゲートを形成する。アグリゲートの形成は、初期粒子間の融合の結果であるため、不可逆であると考えられる。冷却及び捕集の間、アグリゲートはさらなる衝突を受け、その衝突は、幾つかの機械的もつれをもたらし、アグロメレートを形成する。これらのアグロメレートは、ファンデルワールス力によって弱く結合されていると考えられ、また適切な媒体中の適当な分散によって戻す、すなわち、非アグロメレート化することができる。
【0040】
焼成シリカ粒子を製造する代わりの方法は、例えば米国特許第4755368、6551567及び6702994号明細書、米国特許出願公開第2011/0244387号明細書、Muellerらの”Nanoparticle synthesis at high production rates by flame spray pyrolysis”(Chemical Engineering Science、58:1969(2003))、Naitoらの”New Submicron Silica Produced by the Fumed Process”(NIP 28:International Conference on Digital Printing Technologies and Digital Fabrication 2012、2012、p.179~182において公開)、並びにKodas及びHampden-Smithの、Aerosol Processing of Materials、Wiley-VCH、1998、において説明されるように開発されていて、その全ての内容は参照によって組み込まれる。焼成シリカ粒子を調製するための他の方法は公知である。
【0041】
幾つかの実施態様において、本明細書において説明される、分散体及びコーティングにおける使用のための焼成シリカは、50m2/g~550m2/g、例えば、75m2/g~150m2/g、150m2/g~250m2/g、250m2/g~350m2/g又は350m2/g~400m2/gのBET表面積を有する。質量平均アグリゲートサイズは、光子相関分光法によって測定されるとき、130ナノメートル(nm)~240nm、例えば150nm~210nmであってよい。
【0042】
ヒュームドシリカの非限定的実施例は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SIL(登録商標)ヒュームドシリカ、Wacker Chemie AGから入手可能であるHDK(登録商標)ヒュームドシリカ製品、及びEvonik Industries、Essen、Germanyから入手可能であるAEROSIL(登録商標)ヒュームドシリカ、を含む。
【0043】
ヒュームドシリカ以外の粒子状シリカもまた、本明細書における水性疎水性シリカ分散体及び本明細書における他の組成物中の親水性シリカとして、又は適切な表面処理を用いて疎水性シリカとして、採用することができる。ある実施例において、親水性粒子状シリカはコロイダルシリカである。当分野において公知である通り、シリカ粒子等のコロイド状金属酸化物粒子は、典型的には、アグリゲートされていない、個別に分離した(初期の)粒子、典型的には、球形又はほぼ球形であるが、他の形(例えば、一般的に、楕円形、正方形、又は長方形断面を有する形状)を有してもよい。アグリゲートされたコロイダルシリカもまた、本明細書において提供される分散体及びコーティングにおいて採用することができる。コロイダルシリカは、商業的に入手可能であるか、又は様々な出発材料(例えば、湿式プロセス型シリカ)からの公知の方法によって調製することができる。コロイダルシリカ粒子は、典型的には、沈降金属酸化物粒子と類似の仕方(すなわち、水性媒体からコアギュレートされる)で製造されるが、液体媒体(しばしば水単独、又は共溶媒及び/又は安定化剤を伴う)中で分散されたまま残存する。金属酸化物粒子は、例えば、約9~約11のpHを有するアルカリケイ酸水溶液に由来するケイ酸から調製することができ、ケイ酸アニオンは重合を受け、水性分散体の形態で、所望の平均粒子サイズを有する分離したシリカ粒子を製造する。典型的には、コロイダルシリカ出発材料はゾルとして利用可能となり、それは適切な溶媒中のコロイダルシリカの分散体であり、多くの場合、適切な溶媒は水単独、又は共溶媒及び/又は安定化剤を伴う。例えば、Stoeberらの”Controlled Growth of Monodisperse Silica Spheres in the Micron Size Range”、Journal of Colloid and Interface Science、26、1968、pp.62~69、Akitoshi Yoshidaの”Silica Nucleation, Polymerization, and Growth Preparation of Monodispersed Sols”、Colloidal Silica Fundamentals and Applications、pp47~56(H.E.Bergna&W.O.Roberts編集、CRC Press:Boca Raton、Fla.、2006)及びIler、R.K.、The Chemistry of Silica、p866、(John Wiley&Sons:New York、1979)を見よ。本発明における使用のために適切な、商業的に入手可能なコロイダルシリカの非限定的な例は、Nissan ChemicalのSNOWTEX(登録商標)製品、W.R.Grace&Co.から入手可能であるLUDOX(登録商標)製品、Nyacol Nanotechnologies,Inc.から入手可能であるNexSilTM及びNexSilTMAシリーズ製品、Fuso Chemicalから入手可能であるQuartronTM製品、及びAkzoNobelから入手可能であるLevasil(登録商標)製品、を含む。本明細書において提供される水性分散体を用いる使用のために適切なコロイダルシリカの典型的な初期粒子サイズは、5nm~300nm、例えば10nm~100nm、20nm~80nm、30nm~250nm、60nm~200nm、150nm以下、130nm以下又は100nm以下である。
【0044】
沈降シリカもまた、本明細書における水性疎水性シリカ分散体及び他の組成物中の、親水性シリカとして、又は適切な表面処理を用いて疎水性シリカとして、使用することができる。沈降シリカ粒子は、慣例的な技術を利用して製造することができ、また高い塩濃度、酸又は他の凝固剤の影響下において、水性媒体からの所望の粒子のコアギュレーションによってしばしば形成される。シリカ粒子は、当業者にとって公知である慣例的な技術によって、ろ過、洗浄、乾燥、及び他の反応生成物から分離される。沈降粒子は、しばしばアグリゲートされる、すなわち多数の初期粒子が互いにコアギュレートし、やや球形のアグリゲートされたクラスターを形成する、という意味である。当業者は、このようなアグリゲートされたクラスターは、ヒュームド又は焼成で調製された粒子とは構造的に異なり、初期粒子が互いに融合した、アグリゲートされた初期粒子の鎖状構造であることを、たやすく認識するであろう。商業的に入手可能である沈降シリカの非限定的な例は、PPG Industries,Inc.のHi-Sil(登録商標)製品、WR Grace&Co.のPerkasil(登録商標)製品、Solvay S.A.のZeosil(登録商標)製品、JM Huber Corp.のHubersil(登録商標)製品及びEvonik Industriesから入手可能であるSIPERNAT(登録商標)製品、を含む。本明細書の水性分散体における使用のための沈降シリカは、20m2/g~450m2/g、例えば30m2/g~400m2/g、60m2/g~250m2/g又は80m2/g~200m2/gの(BET)表面積を有してよい。
【0045】
親水性シリカ成分又はその一部は、本明細書において「出発」(starting)又は「ベース」(base)分散体、配合物又は組成物、と一般にいわれる分散体中に、提供することができる。本明細書において使用される「分散体」(dispersion)は、異なる組成物(又は状態)の連続相中で、わずかに又は全く沈降を伴わずに、粒子が分散した系をいう。多くの場合において、本明細書において使用される分散体は水性であり、また具体的な実施例においては、少なくとも50wt%、例えば50wt%~95wt%、例えば50wt%~80、85又は90wt%、の量で水を含有する。
【0046】
水性疎水性シリカ分散体中の親水性シリカの量は変化させることができる。多くの実施態様において、シリカは、分散体中に、少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも15wt%又は少なくとも20wt%、例えば5wt%~40wt%、10wt%~30wt%、15wt%~25wt%以下、5wt%~20wt%、10wt%~17wt%、5wt%~12wt%若しくは5wt%~10wt%、の量で存在する。具体的な実施例は、10wt%~35wt%、例えば12wt%~30wt%、10wt%~25wt%又は15wt%~20wt%の親水性シリカ装填量を利用する。他の装填レベルを選択することもできる。
【0047】
親水性粒子状シリカ及び水に加えて、出発分散体は消泡剤を含んでよい。分散体は、追加の分散剤及び界面活性剤無しでもよく、例えば塩酸若しくは他のもの等の酸、又はアンモニア、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム若しくは他のもの等の塩基を用いて、静電気的に安定化されてよい。酸及び塩基の組み合わせも同様に使用することができる。
【0048】
親水性粒子状シリカ分散体は、3.5~10.5又は11の例示的なpH値を有する、酸性又は塩基性であってよい。幾つかの実施において、選択される出発分散体は、7より低い、例えば6以下、例えば4以下、例えば3~9又は5~8等のpHを有する。他の実施において、出発分散体は、7~11、例えば8~10.5のpHを有する。シリカ含有分散体は、採用された親水性シリカの特質、すなわち装填量、pH、粘度、最終用途及び/又は他のパラメーターに関して最適化することができ、またヒュームドシリカ、コロイダルシリカ又は沈降シリカを含んでよい。さらなる実施態様において、出発分散体は2種類以上のシリカを含有する。ヒュームドシリカを含む、商業的に入手可能である既製の分散体は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SPERSE製品、及びEvonik Industriesから入手可能であるAERODISP(登録商標)製品を含む。シリカもまた、適切なミキサー又はミル、例えばローターステーターミルを用いて、水中に分散することができる。
【0049】
1つの実施態様において、水性疎水性シリカ分散体は、親水性粒子状シリカの分散体、例えば上で説明される通りのベース分散体と、疎水性粒子状シリカとを混合することによって製造される。疎水性シリカの全体の量は、ベース分散体中に、一度に、又は幾つかの実施態様においては複数の増分に分けて、組み入れることができる。
【0050】
ある実施態様において、疎水性粒子状シリカを提供するために、未処理のヒュームドシリカ粒子、沈降シリカ粒子又はコロイダルシリカ粒子(典型的には親水性)は、シリカ表面に結び付く又は共有結合する作用剤を用いて処理する、例えば幾らかの疎水的性質を付与するための作用剤を添加することができる。シリカ処理剤は、任意の適切なシリカ処理剤であってよく、またシリカ粒子の表面に共有結合することができるか、又は非共有結合性のコーティングとして存在することができる。典型的には、シリカ処理剤は、シリカに共有結合されているか、又はシリカに対して非共有結合性であるかのいずれかである。
【0051】
多くの場合において、シリカ処理剤は、シリコーン流体、例えば非官能基化されたシリコーン流体若しくは官能基化されたシリコーン流体、環状シロキサン、疎水化シラン、官能基化されたシラン、シラザン、又は例えば当分野において公知である他のシリカ処理剤、であってよい。
【0052】
特定の実施態様において、シリカ処理剤は疎水化シランを含む。例えば、シリカ処理剤は式R4-nSiXnの化合物であってよく、式中、nは1~3であり、それぞれのRは、水素、C1~C18アルキル基、C3~C18ハロアルキル基及びC6~C14芳香族基からなる群から独立に選択され、またそれぞれのXは独立にC1~C18アルコキシ基又はハロゲンである。特定の実施態様において、シリカ処理剤は官能基化されたシランを含む。官能基化されたシランは、アクリル酸、メタクリル酸、アミノ、無水物、エポキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、硫黄、ビニル、イソシアン酸及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含んでよい。特定の実施態様において、シリカ処理剤はシラザンを含み、例えばシリカ処理剤は、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、環状シラザン及び類似のものであってよい。ヒュームドシリカの処理はまた、粒子について電荷の逆転、例えば負から正への逆転をもたらすことができる。本明細書における様々な実施態様において、疎水性シリカとして使用するための、シリカのための好ましい疎水性処理剤は、ヘキサメチルジシラザン、アルキルトリアルコキシシラン及びアルキルジアルコキシシラン、例えば、オクタメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン及びシロキサン化合物を含み、シロキサン化合物は、環状シロキサン、シリコーン流体及びシロキサン重合体を含むがそれらに限定されず、シロキサン重合体はポリジメチルシロキサン及び官能基化されたシロキサン重合体、例えば単官能及び二官能ヒドロキシ末端PDMS並びにジメチルシロキサン共重合体を含み、ジメチルシロキサン共重合体は、メチルヒドロシロキサン及び/又はメチルヒドロキシシロキサン量体を含む。
【0053】
疎水性シリカは、Cabbot CorporationからCAB-O-SILの名前の下に、、Wacker Chemie AGからHDKの名前の下に、及びEvonik IndustriesからAerosilの名前の下に、商業的に入手可能である。模範的な疎水性ヒュームドシリカは、CabotのCAB-O-SIL TS-720、TS-382及びTS-530シリカを含む。商業的な疎水性沈降シリカは、PPG Industries, Inc.からAgilonの名前の下に、及びEvonik IndistriesからCoupsilの名前の下に、入手可能である。疎水性コロイダルシリカは、米国特許第7811540、8202502、8435474、8455165及び8895145号明細書、並びに米国出願公開第2008/0070146号明細書において説明される通り製造することができ、それらの全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0054】
代わりに又は加えて、疎水性粒子状シリカは疎水性エアロゲルである。本明細書において使用されるとき、用語「エアロゲル」(aerogel)は、分散媒体として空気を有するゲルをいう。使用することができる適切なエアロゲルは、例えば米国特許第7470725号明細書において説明されていて、その全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。この特許において教示される通り、エアロゲルは、ヒドロゲルの表面を修飾すること、及び修飾されたゲルを乾燥させることによって調製することができる。
【0055】
本明細書において開示される多くの実施において、エアロゲルは十分に(完全に又は全体的に)疎水性である。このようなエアロゲルは、非常に高い程度の内表面被覆率を提示し、それは理論的に可能な被覆率の程度に近い。本明細書において使用されるとき、被覆率の程度は、エアロゲルの、内表面積の平方ナノメートル毎の有機表面基の数である。被覆率の程度の決定は、米国特許第7470725号明細書において説明される通り行うことができる。
【0056】
典型的には、採用されるエアロゲルは、高い空隙率、例えば少なくとも90%、例えば90%~95%、例えば91%~95%;92%~95%;93%~95%;又は94%~95%の空隙率、を有する。95%より高い空隙率を有するエアロゲルもまた利用することができる。
【0057】
好ましくは、疎水性エアロゲルは粒子状材料(粒状)として提供される。利用することができる模範的なエアロゲルは、下の表1中に示される特性を有する。
【0058】
【表1】
【0059】
公知である通り、不透明な材料は、透明でも半透明でもない。どちらかといえば、不透明な表面に向けた全ての可視光波は、全く伝達されずに、吸収及び/又は反射される。これに対して、透明な及び半透明な材料は可視光波を通過させる。半透明の場合には、しかし、光は拡散し、一般的に、半透明な材料の他面に面する物体は明瞭には見えない。
【0060】
多くのエアロゲルは商業的に入手可能である。具体的な実施において、粒子形態の適切なエアロゲルは、例えばEnova(登録商標)エアロゲルの名称の下で、Cabot Corporationから入手可能である。具体的な実施例は、ENOVA MT1100エアロゲル、ENOVA MT1200エアロゲル、ENOVA IC3130エアロゲル、ENOVA IC3110エアロゲル、ENOVA IC3120エアロゲル、ENOVA IC3100エアロゲル及びENOVA LA1000エアロゲル、を含む。
【0061】
水性疎水性シリカ分散体は、親水性粒子状シリカ及び疎水性粒子状シリカの両方を含み、少なくとも60、好ましくは少なくとも70、例えば少なくとも80又は少なくとも90のメタノール数を有する。任意の特定の理論によって拘束されるものではないが、親水性シリカ上の残留疎水性基は、一方で、疎水性粒子状シリカの分散を促進すると考えられる。水性疎水性シリカ分散体は、50以下、例えば最大で40又は最大で30のメタノール数を有する追加の粒子状シリカを、さらに含むことができる。このようなシリカは、上で説明される通り、部分的に疎水化することができる。
【0062】
好ましくは、水性疎水性シリカ分散体は、10wt%より少ないC1~C4アルキルアルコール、例えば5wt%より少ない、1wt%より少ない、0.1wt%より少ないアルコール又は0.01wt%より少ないアルコールを含有する。水性疎水性シリカ分散体が、他の成分と任意選択で組み合わせられ、また溶媒が蒸発又は乾燥される最終使用用途において使用されるとき、アルコールの使用、例えばメタノール、エタノール、並びにアルコールの様々な異性体、例えばブタノール及びプロパノールの使用は、望ましくない揮発性種の蒸発をもたらす。
【0063】
追加の粒子状シリカ又はアルコールの存在とは独立して、水性疎水性シリカ分散体は分散剤を有する。親水性粒子状シリカは疎水性シリカを十分に分散させる必要がない。好ましくは、分散剤は、疎水性シリカ上の任意の残留シラノール基と相互に作用することができる、カチオン性の又はカチオン化可能な基を含み、また水性媒体と相互に作用することができる親水性基と、カチオン性の又はカチオン化可能な基に加えて疎水性シリカの表面と相互に作用することもまたできる基との、両方も含む。カチオン性の又はカチオン化可能な基は、第一級若しくは第二級アミン又はホスフィンであってよい。好ましくは、分散剤は、2~20、例えば2~5、5~10、10~15又は15~20のHLBを有する。より好ましくは、分散剤は酸化エチレン(EO)及び酸化プロピレン(PO)オリゴマー基を有し、最も好ましくは、0.1~11、例えば0.2~7、0.5~9、1~8、2~10.5又は3~6のEO/PO比である。酸化プロピレン基は、疎水性シリカ表面との相互作用によって分散を促進することができるが、水性溶媒中で可溶性のままであり、追加の分散剤に関する分散をさらに安定化する。分散剤は、400~4000、例えば500~1200、800~1500、1300~2000、1500~2200、1800~3000又は2500~3500の重量平均分子量を有することができる。カチオン性の分散剤は、水性疎水性シリカ分散体を使用して製造されたコーティングにおいて、親水性シリカ分散体をゲル化させることなく、及びもや(ヘイズ、haziness)に繋がることなく、うまく疎水性シリカを分散させることを見出した。任意の特定の理論によって拘束されるものではないが、分散体中の、親水性及び疎水性シリカの分離によってもやがもたらされると考えられる。さらに、本明細書における、模範的な及び好ましい実施態様の分散剤は、水性疎水性シリカ分散体を使用して製造されたコーティングにおける耐水性に寄与すると考えられる。
【0064】
さらに、ヒュームドシリカ、疎水性粒子状シリカ、特には疎水性ヒュームドシリカ又はエアロゲル等の親水性シリカを含有することは、塩基性分散体と組み合わせるとき、所望のつや消し効果、鮮明さ、及びそのうまい組み込みを可能とするレオロジー特性を生み出す光拡散特性をもたらすことができ、その結果、とても透明であることができる安定なシリカ分散体及びコーティングをもたらすことを見出した。さらに、水性疎水性シリカ分散体中のアルコールの量を限定することは、コーティング組成物又は分散体が硬化する間に環境へ開放される揮発種の量を減少させる。このことは、本明細書において提供される水性疎水性シリカ分散体を採用するコーティング組成物及び分散体を、屋内での使用のためにより適切にするか、又は極端に大きい表面積とする。
【0065】
上で説明されたもの等の他の原料もまた、疎水性シリカ粒の添加の前、最中又は後に、ベース分散体中に導入することができる。実施例は、溶媒、添加剤、安定化剤、乳白剤、顔料及びそのようなものを含むが、それらに限定されない。沈殿防止剤を添加することができるが、多くの場合、必要とされない。幾つかの状況において、1つ又は複数の追加の原料、例えば乳白剤が、例えばエアロゲル粒子中に存在する。
【0066】
典型的には、使用される疎水性シリカ成分及び/又は他の原料は、混合プロセスによって、適切な混合手段、例えばBYK-Chemie及びEigerから入手可能であるミキサー等の高速度ミキサーを使用して、出発分散体に添加される。低度、中度及び高度の撹拌を採用することができる。最終使用用途のために所望される粒子サイズに依存して、水性疎水性シリカ分散体を粉砕することが適当である。適切な混合装置、速度、期間及び/又は他の条件は、ルーチンの実験法によって決定することができる。
【0067】
コーティング用途のために、疎水性シリカは、単独で又は少なくとも1つの他の固体材料と組み合わせて使用することができ、典型的には、つや消し用途において公知であって、例えばワックス又は追加の粒子状シリカ等であって、50より少ない、例えば30より少ないメタノール数を有する、例えば沈降シリカ、コロイダル又はヒュームドシリカである。このようなシリカもまた、表面処理することができ、水性疎水性シリカ分散体の疎水性シリカより、依然として低い疎水性であることができる。
【0068】
メタノールの数は、Rhesca Wet-101P粉末濡れ性試験機(Rhesca Co.Ltd.)を使用して、製造者の教えに従って、60mLの出発溶液、300rpmのかき混ぜ速度、2mL/分のメタノール流動速度を使用して、測定することができる。出発溶液は、サンプルを添加する前に、少なくとも5分間、1000rpmでかき混ぜることによって脱ガスされる。典型的には、測定は、30%メタノールの出発溶液中において0.1gのサンプルを用いて、行われる。しかし、サンプルの疎水性によっては、多少の疎水性出発溶液を採用することができる。試験は、メタノールを有する出発溶液を滴定することによって行われ、最初は出発溶液の頂上に位置するサンプルが溶液中で濡れ始める又は沈み始めるとき、メタノール数は、溶液中のメタノールの量である。代わりに、粉体の臨界メタノール数は、既知のメタノール濃度を有するメタノール-水溶液の界面に、慎重にサンプルを注ぐことによって決定することができる。サンプルが溶液中で濡れない場合、そのメタノール数は、溶液中のメタノールの濃度より高い。
【0069】
疎水性シリカ成分を出発(親水性シリカ含有)分散体と組み合わせることによって得られる水性疎水性シリカ分散体において、疎水性シリカは、水性疎水性シリカ分散体の合計の重量に対して1~20wt%、例えば1wt%~5wt%;5wt%~20wt%;10wt%~20wt%;15wt%~20wt%;5wt%~10wt%;5wt%~15wt%;又は15wt%~20wt%の量で存在してよい。ベース分散体中に存在する、疎水性シリカ:親水性シリカ(50より小さいメタノール数を有する追加のシリカを含む)の重量比は、5:95~95:5、例えば10:90~90:10、15:85~85:15、20:80~80:20、30:70~70:30、35:65~65:35、40:60~60:40又は45:55~55:45であってよい。水性疎水性シリカ分散体中の粒子状シリカの合計の量は、少なくとも15wt%、例えば少なくとも16wt%、少なくとも17wt%、少なくとも18wt%、少なくとも19wt%、少なくとも20wt%、少なくとも22wt%又は少なくとも25wt%、例えば15wt%~35wt%、18wt%~30wt%又は18wt%~28wt%である。水性疎水性シリカ分散体中で、疎水性シリカは、疎水性シリカ:水の質量比で、少なくとも1:10、例えば少なくとも1:9、少なくとも1:8、少なくとも1:7又は少なくとも1:6、例えば1:10~2:9又は1:10~1:5若しくは1:6で存在してよい。
【0070】
光沢は光反射の関数である。すなわち、より多い光が反射される及び向けられるほど、表面はより強い光沢をあらわす。つや消し剤、例えばミクロンサイズの焼成シリカの添加は、任意の角度で光散乱をもたらす表面上のマイクロラフネス、及びそれゆえに光沢の減少、を引き起こす。コーティング組成物中にこのような大きい粒子を組み込むことの不利な点の1つは、時間を経ると、それらがコーティング中で過度の沈殿を示すことである。疎水性シリカ粒子の添加とともに、このような沈殿の問題は排除されることが見出された。しかし、高い空隙率、疎水性及び空気溜まりのために、疎水性シリカ粒子は、分散体の上部に浮く傾向がある場合があり、またもやがかかった又は(透明というよりはむしろ)半透明の相分離の出現を引き起こす。分散体の(疎水性及び親水性)粒子状シリカの合計の割合を、水性疎水性シリカ分散体の合計の重量に対して、15wt%以上、例えば20wt%、25wt%、30wt%以上に保持することによって、相分離の挙動を軽減又は排除することができることが、さらに見出された。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、固形分がこの臨界値を超えているとき、粒子は、フロキュレート又はゲル化を妨げるのには十分強いが、任意のコーティング配合物中に注入するのには十分弱いウェブを形成する。
【0071】
水性疎水性シリカ分散体は、7~9.5、例えば7.5~9等のpHを有してよい。
【0072】
水性疎水性シリカ分散体は、数時間、数日又は数週の間、安定であることができる。ある実施例において、水性疎水性シリカ分散体は、50℃において、少なくとも2、3、4、5、6、7又は8週の間、例えば2週~8週又は4週~8週以上の間、安定である。安定な分散体は、好ましくは流体状態であるが、静止時は分散体の粘度を増加させるシリカ網目であるけれども、撹拌又はかき混ぜることによって容易に粉砕されて分散体を流動性の又はポンプ操作可能な流体に戻す、シリカ網目を形成することもできる。安定性は適切な量の溶媒の添加によって高めることができ、好ましくは所望の最終使用配合物において一般に使用されるものであり、例えば、コーティング配合物は、ジメチルエタノールアミン又はグリコールエーテル溶媒、例えばジプロピレングリコールアルキルエーテル、例えばジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DPnB)、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(PnB)及びジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)を一般に採用する。
【0073】
別の実施態様において、本明細書における開示は、コーティング組成物、つや消しコーティング及びそれらを製造するための方法に関する。多くの実施態様において、コーティング組成物は、重合体(樹脂)成分、親水性シリカ成分及び疎水性シリカ成分を含む。
【0074】
重合体成分は、コーティング及びペイント産業において公知の又は開発された、1つ又は複数の配合物を有することができる。1つの又は複数の成分系を採用することができる。多くの場合、系は、水性である、及び/又は透明なコーティングをもたらす。本明細書において使用されるとき、重合体、樹脂、コーティング系等に適用される場合の、用語「水ベースの」(water-based)、「水媒介の」(water-borne)又は「減水性の」(water-reducible)は、重合体、樹脂、系等が、水性媒体中に存在するか、又は水性媒体中に分散若しくは溶解することができる組成物、分散体又は配合物をいう。透明コーティングは透き通っている。多くの実施態様において、重合体の成分は、硬質化時に、光沢のあるコーティングをもたらす。
【0075】
重合体の系は、しばしば、所望の最終使用のために、コーティングされた表面、適用技術、屋内又は屋外環境、硬化された製品の特性及び/又は他の検討事項、の種類によって、配合される。ポリウレタン系、ビニル系、アクリル系及び混成系、例えばポリウレタン/アクリル混成系等は、本明細書において提供される様々な実施態様を実施するのに使用することができる、可能な例のごく一部である。
【0076】
樹脂の種に加えて、重合体の成分は、他の原料、例えばペイント及びコーティング配合物等に使用される原料、を含んでよい。従って、溶媒、界面活性剤、硬化剤、乳化剤、顔料及び/又は他の添加剤であってよい。
【0077】
水性疎水性シリカ分散体は、「コーティング」分散体、配合物又は組成物を製造するために、重合体成分、例えば水媒介の透明なコーティングの用途において使用される重合体成分と組み合わせられる。水ベースのコーティングのための適切な重合体成分の例は、ポリウレタン、アクリル、ビニル、エポキシ重合体、混成物、例えばポリウレタン/アクリル混成物、及び当分野において公知である他のもの、を含むが、それらに限定されない。1成分系において、重合体成分は、全体の系を表す。多成分系において、重合体成分は、系中の、1つ、複数又は全ての要素を表すことができる。
【0078】
当分野において公知の、又は具体的な状況のために開発若しくは適合された、入手可能な設備及び技術を使用して、水性疎水性シリカ分散体は、任意の所望のシークエンスにおいて、重合体成分と組み合わせることができる。例えば、水性疎水性シリカ分散体は1つ又は複数の重合体成分に添加することができるか、又は成分は水性疎水性シリカ分散体に添加することができる。多成分系において、幾つか又は全ての成分は、同時に添加することができる。他には、1つの重合体成分が水性疎水性シリカ分散体と最初に組み合わせられ、結果として生じる組成物が残留組成物と組み合わせられる。
【0079】
溶媒、例えば水、水ベースの溶媒、アルコールベースの溶媒、グリコールベースの溶媒、水溶性アセテートベースの溶媒、ケトンベースの溶媒又は当分野において公知の他のものは、混合プロセスの1つ又は複数の工程を促進するために使用することができる。他の原料、例えば硬化剤、レオロジー改質剤、沈殿防止剤、安定化剤及び/又は他の添加剤はまた、例えば重合体の成分の一部として存在していてよく、又は水性疎水性シリカ分散体と重合体成分とを組み合わせるために行われる混合操作の前、最中若しくは後に導入することができる。幾つかの状況において、本明細書において説明されるコーティング組成物は、粒子状シリカ以外の固体材料を含んでよい。その例は、着色顔料、乳白剤、添加つや消し剤等を含む。
【0080】
典型的には、疎水性シリカ分散体及び重合体成分は、任意の適切な器具、例えばBYK-Chemie及びEigerから入手可能である高速ミキサー、を使用して混合される。混合速度、混合時間、成分が組み合わせられる順番、全量を1回の工程で添加するか又は複数回(2以上)の工程で添加するかどうか、及び他のパラメーターは、変えることができ、またルーチンの実験によって細かく調整できる。
【0081】
幾つかの実施において、コーティング組成物のpHは、少なくとも7、例えば7.5~9.5、例えば8~9である。
【0082】
典型的には、親水性シリカ、疎水性シリカ及び重合体成分、例えば上で説明されたもの、を含むコーティング組成物は、適用されるまでの間、しばしば安定である。幾つかの実施態様において、少なくとも15分の間、しばしばより長く、例えば30分、45分、1時間以上、例えば2、3又は数時間、時には1日以上であっても、このような分散体は安定なままである。使用の際ではなくて製造の際に、親水性及び疎水性シリカ成分を組み込んで製造された既製の分散体は、数か月、多くの場合は1年以上の間、安定であることができる。
【0083】
粘度、所望の光沢レベル、混合技術及び/又は設備、分散体の安定性若しくは寿命、及び/又は他の検討事項等の因子に応じて、コーティング組成物中に存在する(本明細書において「装填する」ともいう)疎水性シリカ及び他のシリカ添加剤の量を変えることができる。許容されるレオロジー特性を併せ持った良好なつや消し効果は、0.1wt%~30wt%、例えば0.5wt%~5wt%、1wt%~10wt%、5wt%~15wt%、15wt%~25wt%又は25wt%~30wt%の、合計の固体に対する合計のシリカ装填量によって得ることができる。合計の固体量は、典型的には、水性疎水性シリカ分散体に由来する固体材料と、重合体成分中に存在する固体(例えば分散剤又は重合体)とを含む。所与のコーティング組成物(例えば、添加されるシリカ又は他のつや消し剤)の調製において使用される任意の他の固体添加剤もまた、合計の固体量の決定において考慮される。追加のシリカつや消し剤はコーティング組成物中に含まれるため、水性疎水性シリカ分散体に由来する親水性及び疎水性シリカ:ヒュームドシリカ等の他のつや消し剤の比は、5:95~95:5、例えば10:90~90:10、15:85~85:15、20:80~80:20、30:70~70:30、35:65~65:35、40:60~60:40又は45:55~55:45であってよい。
【0084】
具体的な実施態様において、コーティング組成物は、親水性ヒュームドシリカ、疎水性エアロゲル及び別の又は「追加の」つや消し剤、例えばワックス、他のシリカ、例えば沈降シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ(例えば、出発分散体中に存在する任意のヒュームドシリカに対して異なる特性を有するヒュームドシリカ)、別の種類のエアロゲル、光沢を減少させることが知られている他の物質、物質の組み合わせ等、を含有する。追加のつや消し剤は、疎水性シリカ成分に対して使用される仕方に対して、同一の、類似の又は異なる仕方で、コーティング組成物中に導入することができる。
【0085】
コーティング組成物は、基材、例えば金属、プラスチック、木、金属、ビニル、コンクリート、様々な建築材料、革、人工革等、をコーティングするために使用することができる。
【0086】
屋内用及び屋外用の両方の基材を、例えば、当分野において公知であるか、製造者によって推奨されるか、又はルーチンの実験法によって決定される、適切な重合体成分を選択することによって、コーティングすることができる。例えば、幾つかの状況は、幾らかの柔軟性を提示するコーティング、及び多少脆くないコーティングから利益を得ることができ、他のものは非常に頑丈なコーティングから利益を得ることができる。
【0087】
任意選択である最初の工程として、表面は洗浄することができるか、又はさもなければ調製してもよい。
【0088】
コーティング組成物は、当分野において公知である又はルーチンの実験法によって決定される技術及び設備、製造者によって提供されるガイドライン、先行経験等を使用して、1つ又は複数の層に適用される。公知であるか、又は具体的な状況のために開発若しくは改造された、ローラー、ブラシ、スプレー、特殊な設備又は他の器具、及び/又は技術、が利用可能である。コーティングプロセスは、塗布器によって制御することができ、また必要な層の数を減少させることができる又は最小化させることができる、高いフィルムのビルドアップをしばしば有する。多くの状況において、本明細書において説明されるコーティング組成物は、良好な濡れ性を有し、またコーティングされる表面との強い結合を形成する。高い固体含有量及び少量のVOC排出は、適用するプロセスの他の性質である。具体的な実施において、コーティング組成物は一(単一の)コーティング系として適用される、言い換えれば、ベース及びトップコートを必要としない。フィルムは、単一の層から、又は2つ以上の層を重ねることによって作られ、その場合、次の層を加える前に、乾燥時間が必要となる場合がある。今、つや消し剤はコーティング組成物中に組み込まれているため、異なる材料からできた及びつや消し剤を含有する、追加のコーティングを要求する必要はもはやない。乾燥プロセスのための全体の待機時間は、有意に減少する。
【0089】
一度表面に適用されると、フィルムは硬化することが可能となる。硬化処理は、経験に基づいて製造者の推奨によって行うことできるか、又はルーチンの実験法によって確立することができる。多くの場合、硬化は、親水性及び疎水性シリカを含有しない対照フィルムの硬化より、長くはかからない。本明細書において使用されるとき、コーティング組成物又は結果として生じる乾燥フィルムに適用されるとき、用語「対照」(control)は、シリカを用いずに調製されるコーティング組成物又は結果として生じる乾燥フィルムをいう。
【0090】
硬化のために必要となる典型的な時間は、(高温状態で)約2分~室温で約7日の範囲であってよい。多くの場合、硬化は、室温で、2時間から約8~10時間の後に完了する。幾つかの場合において可能な速い硬化速度は、気泡形成を減少又は排除することができる。当分野において公知である通り、又は製造者によって推奨される通り、特定の重合体の系を選択することは、硬化速度に影響を及ぼすことができる。
【0091】
硬化は、典型的には、周囲の条件で起こる。より高い又はより低い温度もまた採用することができる。本明細書において説明される疎水性シリカ成分は、広い範囲の温度、例えば室温~300OF、幾つかの場合、室温~100、150、200又は250OFに対応することに留意することが重要である。
【0092】
追加のコーティングが必要となる状況が生じる場合があり、例えば、(ヒュームドシリカ及びエアロゲルを含有する)コーティング組成物の前に1つ又は複数の層の状態で基材に適用されるプライマー(ベース)コート、及び/又は硬化若しくは硬質化されたコーティング組成物の上に適用されるトップコート若しくは仕上げコーティング、の使用を保証する。本明細書において説明されるつや消し効果及び/又は他の特性を得るために必要ではないが、機械特性をさらに改質するため、耐磨耗性、見栄えを良くするため、及び/又は他の理由のために、トップコートを追加することができる。複数の層が適用される場合、乾燥工程は適用の間に可能である。
【0093】
一般に、親水性及び/又は疎水性シリカが、本明細書において説明されるコーティング組成物「からなる」、「から本質的になる」、又は「を含む」コーティング又は層中に存在するとしても、同一の又は異なる疎水性シリカ及び/又は親水性シリカもまた、別のコーティング層、例えばトップコート又はベースコート中に、このようなトップコート又はベースコートが使用される場合、存在してよい。
【0094】
親水性シリカ及び疎水性シリカを含有するコーティング層は、2ミクロン(μm)~20mmの厚さを有してよく、例えば2μm~3、4、5、6、7、8、9若しくは10μm、10μm~15若しくは20μm、20μm~20、25、30、35、40、45若しくは50μm;50μm~55、60、65、70、75、80、85若しくは100μm、100μm~150、200、250若しくは300μm;300μm~400若しくは500μm;500μm~600、700若しくは800μm;800μm~900μm若しくは1mm;1mm~1.5若しくは2mm;2mm~3、4若しくは5mm;5mm~6、7、8、9若しくは10mm;10mm~12、13若しくは15mm;又は15mm~17、18若しくは20mm、の厚さを有してよい。1つ又は複数のコーティング層を採用することができ、結果として、(基材との境界面から、周囲の雰囲気と接触する最も上の表面までで測定して)少なくとも2μmの厚さ、本明細書において全体フィルム厚さともいう厚さを有する全体乾燥フィルムをもたらす。他の層及び/又はフィルム厚さを採用することができる。
【0095】
本明細書において説明されるコーティングの特性は、当分野において公知の通り、例えば標準の手順によって、例えばASTM規格、製造者の推奨事項、及び/又は他の試験製品及び/又はプロトコル、によって評価することができる。
【0096】
本明細書において開示されるコーティングの重要な性状は、それらのつや消し外観又は減少した光沢に関する。光沢を測定するための商業的な機器及び/又は技術は、利用可能であり、また周知である。例えば、光沢及びつや特性は、例えばASTM D-3928等の規格又はプロトコルによって、例えばペイント及びコーティングの試験のために利用可能なLenetaチャートを使用して評価することができる。多くの場合、光沢は光沢計を使用して評価され、光沢計は、光沢の強度を測定する定量化可能な手段を提供するために設計された機器であり、その中で正確な照明及び観察条件が画定される。光沢計において、照明源及び観測受け取り角の両方の配置は、全体の反射角の小さい範囲に渡って測定することを可能とする。得られた測定データは、画定された屈折率を有する黒色ガラス標準からの反射光の量に関する。標本についての入射光に対する反射光の比は、光沢標準についての比に対して、時にはグロスユニット(GU)として与えられる。測定角は、入射光と垂線との間の角をいう。3つの測定角(20°、60°及び85°)は、多くのコーティング用途をカバーするために、特定され、また見出される。角は、予期される光沢範囲に基づいて選択される。
【0097】
多くの実施において、本明細書において説明されるコーティングは、乾燥されるとき、粒子状シリカを用いないこと以外は同一の方法及び同一の組成物を用いて調製された対照コーティングの光沢より、低い光沢を有する。幾つかの場合において、60°で測定された光沢は、対照コーティングの光沢と比較して、少なくとも15%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、例えば40%~90%以上、50%~80%又は60%~70%減少する。
【0098】
添加されるつや消し剤の量、及び/又は他の組成物パラメーターを調節することによって、光沢を所望のレベルに変えることができる。これは、ルーチンの実験法によって、製造者の推奨事項、先行経験又は他の因子に単純に従うことによって、達成することができる。幾つかの実施において、所望の光沢レベルを成し遂げるために必要な疎水性シリカ、例えば疎水性シリカエアロゲル又は疎水性ヒュームドシリカの量は、同じ所望の光沢レベルを成し遂げるために必要となる親水性シリカ、例えばヒュームドシリカ又は沈降シリカのそれよりも少ない。
【0099】
ヘイズは、典型的には、ヘイズ-グロス反射計を用いて測定される。反射計は、ペイントコーティング、プラスチック、バインダー、顔料及び金属表面(鏡面反射)上の鏡面光沢及び反射ヘイズを測定するために設計されている。技術は、画定された角度で照らされたサンプル表面を有し、また反射光は光電的に測定される。照明の適切な角の選択(幾何配置)は、同一の表面の具体的な光沢レベル、すなわちつやが無いか、中間であるか又は高光沢であるか、に応じる。
【0100】
疎水性及び親水性シリカを含むコーティングは、本明細書において記載される通り、しばしば、これらの材料を用いないが同一の重合体成分に基づく対照コーティングのヘイズ値より、高いヘイズ値を有する。
【0101】
様々な方法及び設備が、コーティングに関する他の特性を調査するために開発されてきたか又は開発されていて、また本明細書において開示されるコーティングを研究するために使用することができる。例えば、Konig及び/又は鉛筆硬度は、親水性及び疎水性シリカ、例えばヒュームドシリカ及びエアロゲルの添加によって、有意にはネガティブに影響を及ぼされないことを見出した。本明細書における様々な実施態様による、コーティングにおける親水性シリカ及び疎水性シリカの使用は、粒子状シリカを用いないが同一の仕方で製造された対照コーティングに対して、6%より多くは、例えば5%より多くは、4%より多くは又は3%より多くは、Konig硬度を減少させるに及ばない。すなわち、コーティングは、対照コーティングのKonig硬度の、少なくとも94%、例えば少なくとも95%等の高さのKonig硬度を有することができる。実際に、幾つかの実施態様において、粒子状シリカの使用はKonig硬度を増加させる。
【0102】
幾つかの実施において、本明細書において説明されるコーティングは、割れ、剥離又は他のネガティブな硬化を伴わずに、比較的広い温度範囲に耐えることができる。例示的温度は、-120OF~300OF、例えば-120OF~室温、-100OF~室温、-75OF~室温、-50OF~室温、-20OF~室温、又は室温~100OF、室温~150OF、室温~200OF、室温~250OF若しくは室温~300OFである。
【0103】
多くのコーティングは、例えば米国特許第6478864号明細書において説明される技術によって評価されるように、耐水性及び/又は耐アルコール性を有することが見出されている。他の実施態様において、コーティングは、疎水性及び親水性シリカが組み合わせられること並びにおそらくそれらの相乗効果によってもたらされる、耐食性を提供することができる。
【0104】
本明細書において説明される実施態様によるコーティングを特徴づける、他の魅力的な特性は、予期される黄変を伴わない紫外線(UV)安定性、鮮明さ及びコンクリート中の水分からくる減少した赤変、ポリウレタンと類似した高い耐磨耗性及び耐擦傷性、耐久性、熱及び温度変化に対する許容性、耐汚染性及び耐衝撃性、並びに他のもの、を含むがこれらに限定されない。
【0105】
幾つかの実施態様において、望ましいコーティング特性、例えば低光沢、高い鮮明さ又は低いヘイズ、機械特性及び他の特性は、原料の比、親水性及び疎水性シリカの具体的な種類、選択されるベース分散体、混合条件、粘度、安定性又は前駆分散体の他の性状等を最適化することによって、成し遂げられる。
【0106】
他の固体、例えばワックス又は沈降シリカ等のつや消し剤、を添加することは、例えば疎水性エアロゲル及び親水性ヒュームドシリカのみを含有する比較用のコーティングと比較して、結果として生じるコーティングの特性に影響することができる。水性疎水性シリカ分散体の親水性粒子状シリカ及び疎水性粒子状シリカ以外のつや消し剤を導入することは、幾つかの場合において、前駆分散体の粘度の許容できない増加を伴わずに、光沢を低下させることができることを見出した。
【0107】
幾つかの場合において、本明細書において説明されるコーティングは、耐水性/耐湿性、耐アルコール性、耐汚染性、耐食性、耐吸塵性及び/又は他の特性を有する。
【0108】
本明細書において提供される水性疎水性シリカ分散体はまた、ブランケット及び他の柔軟な絶縁構造体、例えばDoshiらの米国特許出願公開第2017/0101773号明細書及びRouanetらの米国特許第7635411号明細書において説明されるもの、を調製するために使用することができ、その両方の全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。処理スラリーは、追加の原料、例えばバインダー、繊維及び他の添加剤を、水性疎水性シリカ分散体と組み合わせることによって調製することができる。他の添加剤は、乳白剤、粘度調整剤、硬化剤、バインダーが硬質化する際の速度を速める又は遅くする作用剤、機械強度を増進する作用剤又は材料、粘度調整剤、pH調整剤、可塑剤、潤滑剤、強化剤、難燃剤及び他のものを含むが、これらに限定されない。他の原料の組み合わせもまた利用することができる。追加の原料は、高い繊維構造体、バッティング又は他の基材の上に粒子状シリカをより保持するため、及び色又は難燃性等の他の望ましい性質を与えるために、役立つことができる。
【0109】
適切なバインダーは、石膏、セメント若しくはその成分、マグネシウム塩、ケイ酸塩、重合体、ラテックス組成物、及び他の有機若しくは無機材料、又はこのようなものを含む組成物を含むが、これらに限定されない。繊維は、ミネラルウール繊維、生体溶解性繊維、炭素繊維、重合体ベースの繊維、金属繊維、セルロース繊維、植物由来の繊維、又は連続的に製造されたガラス若しくは岩石繊維の、織られた、織られていない若しくは切られた形態を含んでよい。
【0110】
繊維は、任意の形、例えば丸い形、多葉形、ストリップの形状、又はモミの木若しくはダンベルと類似した形を有する形を有してよい。繊維は中空であってよく、また平坦又は捲縮であってよい。典型的な繊維は、引き伸ばされた、例えば円筒(円柱)形状を有し、1より大きい、例えば5、8又は20より大きい、長さの直径に対する比を有する。繊維は、織られているか、織られていないか、切られているか又は連続していてよい。繊維は、1つ又は複数の成分、例えば1つの材料の芯及び第二の材料のおおいを有してよい。繊維は、束ねられていないか、切断されているか、束ねられているか、又は網若しくはスクリムの形に共に連結されていてもよい。繊維は、慣例的な添加剤、例えば帯電防止剤、染料、顔料若しくは近赤外線(IR)乳白剤、又は2つ以上のこれらの混合物によって改質されてもよい。
【0111】
バインダー、繊維及び添加される他の原料の量は、具体的な用途及び他の因子に応じることができる。従って、他の原料が、処理スラリー中に、混合物の合計の重量の0wt%より多い量で存在してよく、例えば2wt%より多い、例えば5wt%より多い、10wt%より多い、15wt%より多い、20wt%より多い又は25wt%より多い量で存在してよい。それらは、処理スラリー中に、90wt%より少ない量で存在してよく、例えば75wt%より少ない又は50wt%より少ない量で存在してよい。
【0112】
バッティングは、織られているか、又は織られていなくてよく、また任意の適切な材料、例えばガラス繊維などの金属酸化物繊維、ミネラルウール繊維、生体溶解性セラミック繊維、炭素繊維、重合体ベースの繊維、金属繊維、セルロース繊維、植物由来の繊維、又はこれらの任意の組み合わせから製造することができる。バッティングは、柔軟であってよく、また2以上の層から作られてよい。
【0113】
バッティングは、様々なプロセスによって、処理スラリーを用いて、コーティングされるか、又は浸透されるかしてよい。多くの実施態様において、バッティングの単層又は複数層は、スラリーを浸透している。ある実施例において、スラリーは、第一のバッティング層に適用され、次いで第二のバッティング層によって覆われる。次いで、スラリーは、第二のバッティング層に適用され、またプロセスは所望の層の回数、繰り返される。さらなる実施において、選択される方法は、スケールアップ又は産業プロセス、例えば風成及び/又はロールツーロール製造等のために適切である。
【0114】
スラリーをバッティングに適用するために考え出された具体的な技術は、バッティングをスラリー中に浸すこと又は浸漬すること、例えば浴撹拌を伴って若しくは伴わないで、バッティング全体にスラリーを注ぐこと、注入、スラリーを用いたバッティングへの噴霧又はペイント、及び/又は他のプロセス、例えば当分野において公知であるもの、を含むが、これらに限定されない。バッティングをスラリー中に漬けることは、複数(2以上)層のバッティングに染み込ませる際に特に有用である場合がある。具体的な実施において、漬けることは、全体の漬ける期間のために又はより短い時間間隔のために、振とう、かき混ぜること又は撹拌の別の適切な方式の下で行うことができる。浸漬浴の断続する撹拌もまた採用することができる。
【0115】
バッティングにスラリーを適用することは、周囲条件で、例えば室温及び/又は大気圧又は他の適切な条件で、行うことができる。例えば、バッティングは、室温より高い温度で処理することができる。例えばバッティング中で開放している網を通してスラリーが貫通することを促進するために、圧力差を使用することができる。
【0116】
処理されたバッティングは、例えば室温で又は室温より高い温度で、空気又は特殊な雰囲気、例えば不活性ガスを使用して、乾燥することができる。乾燥は、スラリーを単純に乾燥させることによってか、又はオーブン、乾燥室、スラリーを含有するバッティングに向けたガスフロー、処理されたバッティングを通して真空を引くこと、若しくは任意の他の適切な乾燥装置、例えば当分野において公知であるもの、を使用することによって、行うことができる。具体的な実施例において、乾燥工程は、スケールアップのために若しくは産業的製造プロセスのために適切な設備及び/又は技術を使用して行われる。
【0117】
代わりに又は加えて、処理スラリーは、ワイヤスクリーン、フィルター、又は当業者にとって公知である他の装置若しくは方法を使用して脱水することによって、バッティングを使用せずに、直接ブランケットに形成することができる。脱水中の穏やかなかき混ぜは、密度差による、様々な成分の分離を減少させることができる。ある実施態様において、処理スラリーは、当業者にとって公知である任意の適切な湿式技術、例えば米国特許第5399422において開示されている技術を使用して、ワイヤスクリーンにおけるフィルタリングによって脱水される。複数層構造体もまた、層を予備形成すること及びそれらを共に積層すること又は複数の層を順次形成することによって、調製することができる。様々な層は、同一の又は異なる組成を有することができる。
【0118】
結果として生じるフィルターをかけられた1つ又は複数の混合物は、次いで、水を除去しウェブ密度を増加させるためにプレスすることができ、所定の温度及び圧力で乾燥することができ、また所定の温度及び/又は圧力でカレンダー加工することができ、本発明のブランケットを形成することができる。フィルターをかけられた、エアロゲル粒子及び繊維の混合物は、任意の公知の方法及び/又は機器によって、所定の温度で、プレス又は乾燥することができる。ロータリープレスは、ウェブの脱水及び圧縮のために使用することができる。乾燥は、蒸気加熱シリンダーによって、高粘度空気乾燥によって、又は放射熱によって、達成することができる。好ましくは、フィルターをかけられた混合物は、湿潤剤が揮発又は分解する温度で乾燥され、その結果、疎水性シリカ粒子の疎水性が満足に取り戻される。加えて、乾燥プロセスはまた、幾らか又は全ての繊維を、互いに及び/又はシリカと、結合させることができる。好ましくは、フィルターをかけられた混合物は、少なくとも100℃の温度で、より好ましくは少なくとも120℃の温度で、さらに乾燥される。乾燥された混合物は、ウェブの形態であってよく、次いで、ホットカレンダーを用いて、好ましくはホットカレンダーロールを用いて、少なくとも部分的に、さらに熱的に結合して、強い及び比較的無塵のブランケット又は複合体材料を形成することができる。乾燥された混合物/ウェブはまた、所定の温度及び時間で、所定の密度にカレンダー処理することができる。
【0119】
別の実施態様において、水性疎水性シリカ分散体は、テキスタイルのためのコーティングを調製するために、使用することができる。テキスタイルは、当業者にとって公知である任意の形態であってよく、繊維、ヤーン、スレッド、プライヤーン、繊維及び/又はヤーンから製造された織物、並びに繊維、ヤーン、及び/又は織物から製造された最終製品を含むが、これらに限定されない。テキスタイル材料は、繊維、ヤーン又は織物であってよい。テキスタイル材料は、織布、編物、クロ―シェ編みされた編物、接着布及び/又は不織布であってよい。テキスタイル材料は、片面又は両面のいずれかが、織られた、編まれた、クローシェ編みされた、メルトブローされた、接着された及び/又はニードルパンチされた不織布、及びポーラテリーフリース(polar terry fleece)、又はループ織物(loop fabric)、であってよい。テキスタイル材料は、紡糸、電界紡糸、メルトブロー、延伸又は押出されてよい。テキスタイル材料はメッシュであってよい。
【0120】
水性疎水性シリカ分散体は、テキスタイルをコーティングするために使用することができ、テキスタイルは、1つ又は複数の、レーヨン、ナイロン、非アクリル系オレフィン、アクリル系ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ビスコース、炭素繊維、アラミド、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリ乳酸、アクリロニトリル、ウール、コットン、セルロース、シルク、リネン、ビスコース、ヘンプ、ラミー及びジュート、を含む。代わりに又は加えて、テキスタイル材料は、伸縮性ヤーン又はフリースを含んでよい。
【0121】
テキスタイルは、水性疎水性シリカ分散体を用いて、又は水性疎水性シリカ分散体から調製された処理分散体を用いて、当業者にとって公知である任意の方法を使用して、処理することができる。例えば、テキスタイルは、その形状に応じて、浸されるか、ナイフコートされるか、ロールコーティングされるか、たんぽずりされる(padded)か、カレンダー処理されるか、押出コーティングされるか、又は泡仕上げコーティングされてよい。
【0122】
様々な添加剤を水性疎水性シリカ分散体と組み合わせて、テキスタイルのための処理分散体を形成することができる。適切な添加剤は、ブランケット及びバッティングと併せた使用について上で議論された添加剤、抗菌剤、樹脂及び当業者にとって公知である他のもの、を含む。
【0123】
水性疎水性シリカ分散体中の疎水性及び親水性シリカは、疎水性、触覚特性、又は疎水性エアロゲルの場合には、断熱特性を、テキスタイルに与えることができる。代わりに又は加えて、シリカは、ミシン等の処理設備との、又はテキスタイル自体との、テキスタイルの摩擦係数を減少させることができる。
【0124】
別の実施態様において、水性疎水性シリカ分散体は、重合体の水中ペレット化のために使用することができる。特定の重合体は、輸送及び貯蔵の間に、重合体から作られたペレットが互いに付着する傾向がある、という問題を有する。これは、下流処理工程、例えばブレンド、貯蔵及び梱包において、問題をしばしば引き起こす。防着(anti-tacking)又は粘着防止(antiblock)剤を用いて、これらのペレットをコーティング又は分粒することは、このような付着を妨げる又は緩和することができる。ペレットの極度の粘着性のために、それらは、多数のホールを有するダイプレートを通って浴中に、溶解状態で、しばしば押し出される。水性疎水性シリカ分散体は、追加のバインダーを含む必要がない浴として、使用することができる。適切な重合体は、ポリオレフィン、ポリエステル及び他の熱可塑性重合体を含む。しかし、ペレット化する場合がある任意の材料は、本明細書において開示される水性疎水性シリカ分散体の使用から利益を得ることができる。例えば、Bootheらに発行された米国特許第8303871号明細書は、材料、例えばワックス、アスファルト、粘着剤、ゴムベースの配合物、高いメルトフローのポリオレフィン、及び非重合体の有機及び/又は無機化合物等の材料のための、ペレタイザーを開示している。疎水性シリカを重合体の表面に付着させる表面相互作用は、親水性シリカについてのものと異なるため、疎水性シリカの使用は、水中ペレット化を使用して処理することができる重合体の種類を、広げることができる。
【0125】
本明細書において開示される水性疎水性シリカ分散体はまた、懸濁重合の間に、重合体中にシリカを組み込むために使用することができる。水性疎水性シリカ分散体は、次いで重合することができる単量体を用いて、配合することができる。
【0126】
本明細書において開示される水性疎水性シリカ分散体はまた、押出を経て、重合体中にシリカを組み込むために使用することができる。模範的な方法は、欧州特許第1401924号明細書において開示されていて、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0127】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに説明される。
【0128】
実施例
水性疎水性シリカ分散体を含有するコーティング配合物の特性を調査するために、幾つかの実験を行った。一般的には、「出発」又は「ベース」組成物中に、典型的には分散体中に、ヒュームドシリカを提供した。ベースに疎水性粒子状シリカ材料を添加して、水性疎水性シリカ分散体を形成した。次いで、コーティング用途のために適切な樹脂系を水性疎水性シリカ分散体と組み合わせて、「最終」又は「コーティング」配合物を製造した。コーティング配合物を、硬化前及び硬化後に、その特性、例えば粘度、光沢、硬度及びコーティング配合物の開発及び製造に関する他の性状等の特性、について調査した。
【0129】
下の実施例において、3つの市販のベース組成物を利用した。第一は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SPERSE PG 022分散体であって、3.8のpH、100センチポアズ(cP)より低い粘度、1.125の比重及び20wt%の固体含有量(装填量)、の特徴を示すベース分散体であった。ベース分散体中の固体は、親水性ヒュームドシリカであって、約200m2/gの表面積、サブミクロンの粒子サイズ、0.2ミクロンより小さい平均を有する均一な粒子サイズ分布、及びカチオン性の表面電荷、の特徴を示した。
【0130】
第二は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SPERSE 1015A分散体であって、6.0のpH、40cPの最大粘度及び1.089の比重、の特徴を示した。それは、小さい表面積(約90m2/g)のヒュームドシリカを含有していて、ヒュームドシリカは、水酸化アンモニウムによって安定化された水性媒体中で、負に帯電する粒子(20ナノメートル(nm)のおおよその平均粒子サイズ)の特徴を示した。ヒュームドシリカの装填量は、約15%であった。
【0131】
第三は、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SPERSE 2017A分散体であって、150cPの最大粘度、9.8のpH、及び1.099の比重、の特徴を示した。それは、約200m2/gのBET表面積を有し、水酸化アンモニウムを用いて安定化された水性媒体中で17wt%の量であるヒュームドシリカ、を含む。
【0132】
ベース分散体はまた、CAB-O-SIL EL-90及びM-5ヒュームドシリカを用いて、直接調製した。L-90シリカは90m2/gの公称BET表面積を有し、M-5シリカは200m2/gの公称BET表面積を有する。
【0133】
実施例におけるつや消し剤は、ENOVA MT1100、IC3120及びIC3130エアロゲルの指定の下にCabot Corporationから入手可能である半透明のエアロゲル、ENOVA MT1200エアロゲルの指定の下にCabot Corporationから入手可能である不透明なエアロゲル、ポリジメチルシロキサンを用いて処理されたCAB-O-SIL TS-720シリカ、並びにヘキサメチルジシラザンを用いて処理されたCAB-O-SIL TS-530シリカ、を含む。エアロゲル材料は、80より大きいメタノール数を有する。TS-720シリカは、約72のメタノール数を有する。TS-530シリカは、約63のメタノール数を有する。
【0134】
つや消し組成物を調製するときに添加される他の固体は、例えばZEOTHIX(登録商標)95シリカの指定の下にEvonik Industries AGから入手可能である微細化した沈降シリカ、を含んでいた。典型的には、レオロジー改質剤、平滑剤及びつや消し剤として使用されるZEOTHIX 95は、8.5ミクロンの報告された平均粒子サイズ及び180m2/gの(BET)表面積、を有する。
【0135】
特に配合物について主に考慮すべきものが分散の容易さであるとき、既にベース中に存在するヒュームドシリカに加えて、作用剤として使用したのは、疎水化したヒュームドシリカであって、それは125m2/gの典型的な表面積を有し、CAB-O-SIL TS-610シリカの指定の下にCabot Corporationから入手可能であり、また極性樹脂系及び非極性樹脂系の諜報のために適切と考えられる、ヒュームドシリカであった。このシリカは、約37のメタノール数を有する。
【0136】
幾つかの実験において添加される別の材料は、92℃~141℃の範囲の融解ピークを示し、また液体インク又は他の水ベースの及び溶媒ベースの系のために推奨される、ポリウレタン微細化ワックス合金であった。この材料は、Shamrock Technologies、Newark、NJから、S-363の指定の下に、商業的に入手可能である。
【0137】
ポリウレタン-アクリルコーティング配合物について、選択する系は、空気乾燥コーティングのための高い固体量の水媒介ウレタン/アクリル共重合体であって、典型的には、汎用及び自動車用プラスチック、金属コーティング、床仕上げ並びにニスのブラシかけのために使用され、NeoPac R-9699水媒介ウレタン/アクリル共重合体の指定の下に、DSM Coating Resins、LLC、PO Box 615 8000 AP Zwolle、The Netherlandsから商業的に入手可能であるウレタン/アクリル共重合体であった。
【0138】
別の利用する樹脂系は、空気乾燥の水媒介ウレタン配合物であって、NeoRez R-960水媒介ウレタンの指定の下に、DSM Coating Resins、LLC、PO Box 615 8000 AP Zwolle、The Netherlandsから入手可能であり、また高性能の(硬度、柔軟性、耐薬品性及び耐磨耗性が必要とされる)使用のために推奨されるウレタン配合物である。NeoRez R-960水媒介ウレタンの脂肪族骨格は、外装コーティング用途においてその使用を可能とするUV耐性をもたらすと考えられる。NeoRez R-960樹脂に基づく透明なコーティングは、高性能の慣例的な溶媒媒介ウレタンラッカーと比較して遜色がないことが報告されている。
【0139】
また使用するのは、木の仕上げのための改質されたアクリル系エマルションであって、Neocryl(登録商標)A-6016水媒介アクリルの指定の下にDSM Coating Resinsから入手可能であるアクリル系エマルションである。耐傷つき性、靭性及び非常に透明な及び光沢のある耐水性フィルムを形成することで知られるNeocryl A-6016水媒介アクリルは、そのUV安定性、高い光沢、良好な湿潤吸着性及び耐薬品性のために、産業的なキッチンキャビネット及び家具仕上げとしてしばしば使用される。
【0140】
また使用したのは、Permutex EVO EX-RU-92-605樹脂の指定の下に、Stahl(登録商標)Holdings B.Vから入手可能であるポリウレタンポリカーボネート樹脂、アクリル系の、DSM Coating Resinsから入手可能であるNeocryl E-160樹脂、及びNeocryl XK-98エマルション、DSM Coating Resinsから入手可能であるアニオン性アクリル系共重合体エマルション、であった。Neocryl XK-98エマルションは、透明な及び着色された両方のトップコートのために、またPVCコーティングのために、推奨される。全ての樹脂は、製造者によって提供されたまま使用した。
【0141】
上で述べた樹脂及び固体粒子状材料に加えて、水性疎水性シリカ分散体及び/又はコーティング配合物は、溶媒、レオロジー改質剤、界面活性剤、硬化剤、及び/又は固体を分散するのに及び一般にコーティング配合物を製造するのにしばしば使用する他の原料、を含んでいた。下の実施例において使用する具体的な分散剤は、DisperBYK 190化合物(BYK Chemie)、スチレン、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックを、約3のEO:PO比で有する非イオン性分散剤;DisperBYK 192化合物(BYK Chemie);Solsperse 46000化合物(Lubrizol Corporation)、ポリオキシエチレンを含有する非イオン性分散剤;Jeffamine M-2070化合物(Huntsman)、約2000の重量平均分子量、31/10の酸化プロピレン/酸化エチレン(EO/PO)モル比及び13.8のHLB値を有する単官能基の第一級アミン;Jeffamine M600化合物(Huntsman)、約600の重量平均分子量、1/9の酸化プロピレン/酸化エチレン(EO/PO)モル比及び2のHLB値を有する単官能基の第一級アミン;Jeffamine ED900化合物(Huntsman)、わずかに2より大きいだけのEO/PO比及び約900の重量平均分子量を有する二官能基の第一級アミン;Surfonamine L-300化合物(Huntsman)、約58/8のEO/PO比、約3000の重量平均分子量及び約17.1のHLBを有する単官能基の第一級アミン;Surfonamine B-200化合物、約6/29のEO/PO比及び約2000の重量平均分子量を有する単官能基の第一級アミン;並びにPetrolite D1038化合物(Baker Hughes Inc.)、非イオン性アルキルポリオキシエチレンエステル、であった。下の実施例において使用する追加の化合物は、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、コーティング産業において使用され、またポリウレタン及びエポキシ樹脂のための硬化剤として使用される;BYK-024シリコーンベースの消泡剤(BYK Chemie);BYK-346添加剤、水性コーティングにおいてしばしば利用されるシリコーン界面活性剤(BYK Chemie);ブチルセロソルブ(Dow);Dehydran(登録商標)1293消泡剤(BASF)、改質されたポリシロキサン;並びにDowanol DPMグリコールエーテル、Dowanol PnBグリコールエーテル及びDowanol DPnBグリコールエーテル等の溶媒、を含んでいた。
【0142】
他に具体的にしない限り、下の表中に示される量はグラム(g)で表記する。
【0143】
水性疎水性シリカ分散体のための原料を、他に記載しない限りは、Dispermat(CV、CV-3又はD51580)混合機を用いて混合した。一般に、樹脂ベースの配合物のための原料を、オーバーヘッドの実験室混合機を用いて混合した。典型的には、固体を徐々に添加し、それぞれの添加の後、混合工程、また多くの場合には、分散体の粘度の評価を行って、次の添加に先立って、それが依然としてかき混ぜることができることを保証した。
【0144】
樹脂を有する水性疎水性シリカ分散体配合物のための原料を、Stir-Pak Speed Controller(モデル #SSC30、部品 #50007-00)に取り付けられたStir-Pak Heavy Duty Mixer Head(モデル #SSM36、部品 #50007-40)を用いて、混合した。速度制御器の設定は1~10であり、1は混合機ヘッドの最小rpmによって規定される最低rpmにあたり、この場合60rpmであり、また10は混合機ヘッドの最高rpmにあたり、この場合6000rpmである。かき混ぜるとき、小さい渦が生まれる。サンプルの粘度によっては、速度制御器上の数を、低粘度に伴って減少させる、及び増加した粘度に伴って増加させる必要がある。
【0145】
下の実施例における分散度(グラインドの細かさ、fineness of grind)の評価は、Hegmanグラインド法の使用が望ましい。使用したHegmanグラインドメーターはPaul N.Gardner Co.,Inc.によって提供され、また評価は製造者の指導に従って行った。ENOVA MT1100及びMT1200エアロゲルを含有する適切なサンプルは、少なくとも4又は5のグラインドを示した。他のエアロゲルを含有する適切なサンプルは、少なくとも2又は3のグラインドを示した。サンプルが適切なHegmanグラインドを示さなかった場合、適切なHegmanグラインドが成し遂げられるまで同一の条件で混合を続けた。
【0146】
粘度の測定は、Brookfield粘度計、モデルDV-I+を使用して、以下の手順を採用して行った。機器の電源を入れた後、チラーの電源を入れ、また温度を25℃に設定する。次いで、機器ディスプレイによって指示される自動ゼロプロセスを使用して機器をゼロに設定する。選択するスピンドル(RVスピンドルセット、RV-1~RV-7)が強調されるまで、「セットスピンドル」ファンクションを押すことによって、スピンドルを選択する。「セットスピンドル」ファンクションを再び押して、セレクションを入れる。小さいサンプルカップを、試験する分散体/配合物で部分的に満たす。ディスク型形状を使用する場合、ディスクを分散体/配合物中に配置し、また穏やかに回転させて、ディスク下にトラップされている場合がある空気を開放する。弾丸型の形状は、スピンドルに直接取り付けることができる。次いで、サンプルカップを機器上の被覆されたホルダー中に配置し、また、まだ取り付けていない場合には、形状をスピンドルにねじで取り付ける。ピペットを使用して、サンプルカップを上端から約2.5mmまで満たし、また速度を10rpmに設定する。モーターの電源を入れ、10rpmで1分間、系を平衡させる。このことを20rpm、50rpm及び100rpmで繰り返す。100rpmで1分間平衡させた後、試験を完了してモーターの電源を切る。
【0147】
下で説明される実験を行う中で、結果として生じる材料をフィルムの製造に使用することができる場合、例えばそれを分注することができ、また気泡をフィルムから逃がすことができる場合、粘度は満足なものと考えた。粘度が満足なものでなかった場合、材料が適切となるまで同一の条件の下で、混合を続けた。
【0148】
フィルムを、適切な基材、例えばLeneta試験チャート、冷間圧延鋼(CRS)板又は当分野において公知である他のもの、の上にキャストした。一般に、基材に対するコーティング分散体又はコーティング組成物の適用を、BYKによって製造された3ミルウェットドローダウンバー(3 mil wet drawdown bar)を用いて、実施した。
【0149】
加熱硬化は、一般に、150OFで30分間、次いで室温で10分間のフラッシュオフサイクルで行った。これらの操作は、溶媒及び他の添加剤等の有機材料の除去、並びにコーティングの硬質化のために役立つ。使用する設備は、Grieve2ドア溶媒評価オーブンであった。
【0150】
様々なサンプルのヘイズ値を、BYKのグロス及びヘイズメーターを用いて、測定した。他に記載しない限り、鋼基材上の3ミル厚さ(ウェット)ドローダウンコーティング上で、BYKのグロス及びヘイズメーターを使用して、20°、60°及び85°で、光沢を評価した。
【0151】
Konig硬度を、BYK-Gardner Konig硬度試験機を用いて、製造者の指導によって、測定した。鉛筆硬度を、ASTM D3363、鉛筆試験によるフィルム硬度のための試験方法、によって決定した。両試験を、鋼基材上にドローダウンされたフィルム上で実施した。上で説明した加熱硬化法の後に、単点Konig硬度試験を実施した。経時的なKonig硬度の変化を、室温で乾燥可能であるコーティング上で、測定した。
【0152】
実施例1
ポリウレタン-アクリル分散体を調製し、分散体の性状(例えば粘度)、光沢及び硬化製品の他の特性に関して調査した。
【0153】
水性疎水性シリカ分散体I及びIIを経てつや消し剤を提供した。両水性疎水性シリカ分散体のための出発材料は、Cab-O-Sperse PG 022分散体であった。
【0154】
両水性疎水性シリカ分散体は、表1に示す特性を有するENOVA MT1100半透明エアロゲルを含有していた。このエアロゲルに加えて、分散体IIは、ZEOTHIX 95微細化沈降シリカもまた含有していた。
【0155】
分散体I及びIIの調製に次ぐプロトコルに関する詳細を、下の表2に提示する。
【0156】
【表2】
【0157】
分散体I及びIIを、表3において説明される通り、ポリウレタン-アクリル組成物(NeoPac R-9699水媒介ウレタン/アクリル共重合体)に、添加して、組成物I及びIIを形成した。
【0158】
【表3】
【0159】
追加の原料を、表B(実施例1)の組成物I及びIIに、表C(実施例1)に示す通りに添加し、また結果として生じたコーティング分散体I及びIIの粘度を測定した。また表4に示すのは、同一の樹脂成分を使用するが、水性疎水性シリカ分散体が存在しない状況で、調製した対照組成物である。
【0160】
【表4】
【0161】
沈降シリカの添加に伴って、より目立った粘度の増加が観察された。しかし、対照配合物に対して、コーティング分散体I又はII中に存在するつや消し剤の使用に伴って観察された粘度の増大は、許容範囲内であった。
【0162】
上で説明される通り調製されたコーティングI及びIIを、ヘイズ、光沢及びKonig硬度について評価した。結果を表5及び6に示す。
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
データは、対照に対して、つや消し剤がヘイズ又はKonig硬度を有意には変化させないことを示唆する。しかし、光沢は、コーティングI及びコーティングIIの両方において、かなり減少した。
【0166】
実施例2
以下の水性疎水性シリカ分散体I、II及びIIIを、実施例1において説明したものと同一のベース分散体、すなわちCAB-O-SPERSE PG 022分散体から出発して、調製した。3つの配合物は、それぞれ、(I)ENOVA MT1100エアロゲル;(II)同じENOVA MT1100エアロゲル及びZeothix 95沈降シリカの組み合わせ;並びに(III)ENOVA MT1100エアロゲル及びS363微細化ワックス材料の組み合わせ、を含んでいた。使用した手順を表7に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
3つの分散体を、下の実施例3において説明される通り、さらに評価した。
【0169】
実施例3
上の実施例2において調製した分散体I、II及びIIIを、ポリウレタン系(NeoRez R-960水媒介ウレタン)と併せて使用して、幾つかのコーティング組成物を調製した。指定「低」及び「高」は、選択する相対的な装填量をいう。
【0170】
対照及び実験用ウレタンベースコーティング組成物の調製に次ぐプロトコルを、表8において詳しく述べる。分散度には、上で説明したHegmanグラインド法の使用が望ましい。
【0171】
【表8】
【0172】
様々なコーティング組成物について観察されたpH及び粘度の値を、下の表9に示す。
【0173】
【表9】
【0174】
3ミルウェットドローダウンバーを使用して、Leneta 2Cチャート上にコーティング組成物をキャストアウトすることによって、試験板を調製した。硬化操作は、室温で10分間のフラッシュオフ及び150OFで30分間の加熱サイクルを有していた。結果として生じたコーティングは、下の表10及び図1~4に示す特性を有していた。
【0175】
【表10】
【0176】
一般に、全ての実験用サンプルは、対照サンプルに対して、光沢の減少を示した。本実施例中で試験されたポリウレタン系において、半透明のエアロゲルと微細化ワックスとの組み合わせは、特に水性疎水性シリカ分散体が高いレベルで添加されたとき(サンプルG)、対照コーティングに対して有意なつや消し効果を与えるように見えた。エアロゲル及び沈降シリカが高いレベルで添加されたとき(サンプルE)、光沢の良好な減少がまた観察された。データは、第三の作用剤(沈降シリカ又はワックス)をコーティング組成物の調製中に添加したときの、増加したつや消し効果についてのあり得る傾向を指し示すように思われる。
【0177】
添加したつや消し剤は、ヘイズ値の幾らかの増加をもたらすように見え、サンプルG(III-高)において最大の増加を有した。
【0178】
全ての実験用サンプルについて、Konig硬度のわずかな増加が観察され、サンプルD(II-低)、E(II-高)及びG(III-高)において、やや高い値が観察された。
【0179】
実施例4
下の表11において提示する手順によって、ベース分散体、すなわちCAB-O-SPERSE 1015A分散体を、ENOVA MT1100エアロゲル及びCAB-O-SIL TS-610シリカと組み合わせる。
【0180】
【表11】
【0181】
結果として生じる水性疎水性シリカ分散体を、ポリウレタン-アクリル系(NeoPac R-9699ブランド重合体)中で評価する。シリカ装填量の2つの異なるレベル及びシリカを有さない対照組成物、を有する未硬化のコーティング組成物を調製するための手順を、表12に提供する。
【0182】
【表12】
【0183】
3ミルウェットドローダウンバーを使用して、コーティング組成物をLeneta 2Cチャート上にキャストアウトし、次いで硬化する。光学的特性の測定のために、室温で10分間のフラッシュオフ及び150OFで30分間の加熱サイクルを行った。水性疎水性シリカ分散体を用いて調製されたコーティングは、シリカを用いずに調製された対照組成物より、60°での測定で、少なくとも15%低い光沢を示すことが予期される。
【0184】
実施例5
下の表13において提示する手順によって、ベース分散体、すなわちCAB-O-SPERSE 1015A分散体を、ENOVA MT1100エアロゲル及びCAB-O-SIL TS-610シリカと組み合わせる。
【0185】
【表13】
【0186】
表14に提示する手順に示す通り、結果として生じる水性疎水性シリカ分散体を、ポリウレタン樹脂系(NeoRez R-960水媒介ウレタン)に添加して、コーティング分散体B~Dを調製する。対照サンプルAを、シリカが存在しない状況で、調製する。シリカ分散体を樹脂に直接添加して、次いで予備混合した溶媒を添加することによって、サンプルDを調製する。予備混合した溶媒を樹脂に直接添加して、次いで水性疎水性シリカ分散体を添加することによって、サンプルB及びCを調製する。
【0187】
【表14】
【0188】
上で説明される3ミルウェットドローダウンバーを使用して、上で説明されるコーティング組成物をACT Bonderite(登録商標)1000ブランドCRS板(ACT Test Panel Technologiesから入手可能)上にキャストすることによって、対照及び3つの実験用コーティング(フィルム)を調製する。光学的特性評価のためのサンプルについて、フラッシュオフ工程は室温で10分であり;加熱サイクルは150OFで30分間である。水性疎水性シリカ分散体を用いて調製したコーティングは、シリカを用いずに調製したコーティングより低い光沢を示すこと、並びに溶媒及びシリカの添加の順序は、光沢的及び硬度特性について、わずかな効果しか有さないか、又は全く効果を有さないことが予期される。
【0189】
実施例6
下の表15における手順によって、Cabot CorporationのCAB-O-SIL EL-90親水性ヒュームドシリカ及びTS-530ヘキサメチルジシラザン処理疎水性ヒュームドシリカを用いて、水性疎水性シリカ分散体を調製する。
【0190】
【表15】
【0191】
下の表16における手順によって、結果として生じる水性疎水性シリカ分散体をアクリル組成物に添加する。シリカを有さない対照分散体もまた調製する。
【0192】
【表16】
【0193】
先に説明された方法を使用して、3ミルウェットドローダウンバーを用いて、Leneta 2Cチャート上に、組成物をキャストして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、組成物を乾燥させる。シリカを含有するコーティングは、シリカを用いずに調製されたコーティングより、60°で少なくとも15%低い光沢を示すことが予期される。
【0194】
実施例7
表1において説明されるエアロゲルは、光学的特性が異なってもよい。この実施例を行って、ポリウレタン系中で、半透明な及び不透明な様々なエアロゲルの間のあり得る違いを評価した。
【0195】
ベース分散体、すなわちCab-O-Sperse 1015A分散体を使用して、2つの水性疎水性シリカ分散体、半透明のエアロゲル、すなわちENOVA MT1100エアロゲルを含有するP、及び不透明なエアロゲル、すなわちENOVA MT1200エアロゲルを含有するQ、を調製した。CAB-O-SIL TS-610シリカを、両分散体に添加した。分散体P及びQの調製に次ぐプロトコルに関する詳細を、表17に提示する。
【0196】
【表17】
【0197】
表18において提示する手順を使用して、水性疎水性シリカ分散体P及びQをポリウレタン樹脂系(NeoRez R-960重合体)に添加して、コーティング組成物B~Gを調製した。追加のつや消し組成物が存在しない状況で、対照サンプルAを調製した。
【0198】
【表18】
【0199】
分散体Pの添加に伴って、より目立った粘度の増加が観察されたが、分散体Qは、対照に対してより許容される粘度範囲内に留まった。
【0200】
上で説明された通り調製されたコーティング配合物A~Gを、光沢、ヘイズ、Konig硬度及び鉛筆硬度について、評価した。結果を表19~21に示す。
【0201】
【表19】
【0202】
【表20】
【0203】
【表21】
【0204】
表22において提示する手順を使用して、2つの比較製品、すなわちR(TS-100シリカ)及びS(S363ワックス)を、ポリウレタン樹脂系(NeoRez R-960重合体)に添加して、コーティング配合物H~Mを調製した。
【0205】
【表22】
【0206】
化合物Sよりも化合物Rの添加に伴って、より目立った粘度の増加が観察された。
【0207】
上で説明された手順によって調製されたコーティング配合物H~Mを、光沢、ヘイズ、Konig硬度及び鉛筆硬度について、評価した。結果を表23~25に示す。
【0208】
【表23】
【0209】
【表24】
【0210】
【表25】
【0211】
データを図5~9に提示する。サンプルの詳細を下に示す。
A 対照
B 樹脂配合物中の1.9%水性疎水性シリカ分散体P
C 樹脂配合物中の3.7%水性疎水性シリカ分散体P
D 樹脂配合物中の7.4%水性疎水性シリカ分散体P
E 樹脂配合物中の1.8%水性疎水性シリカ分散体Q
F 樹脂配合物中の3.7%水性疎水性シリカ分散体Q
G 樹脂配合物中の7.4%水性疎水性シリカ分散体Q
H 樹脂配合物中の5%比較つや消し剤R(TS-100シリカ)
I 樹脂配合物中の10%比較つや消し剤R
J 樹脂配合物中の20%比較つや消し剤R
K 樹脂配合物中の5%比較つや消し剤S(S363微細化ワックス)
L 樹脂配合物中の10%比較つや消し剤S
M 樹脂配合物中の20%比較つや消し剤S
【0212】
結果は、比較つや消し剤S及びRは、対照に対して、ヘイズに影響を及ぼしたが、Konig又は鉛筆硬度には影響を及ぼさないことを、示唆する。しかし、光沢は、対照に対して、全ての配合物においてかなり減少した。
【0213】
実施例8
Neocryl A-6016水媒介アクリル系の指定の下にDSMから入手可能である、透明な水媒介アクリル系中で、エアロゲルの性能もまた調査した。
【0214】
使用した水性疎水性シリカ分散体は、実施例7における分散体Qと同一のものであり、つや消し剤R(TS-100シリカ)を、比較配合物AE~AG中に使用した。表26において説明される手順を使用して、配合物を調製した。
【0215】
【表26】
【0216】
上の表26は、不透明なエアロゲル分散体Qに基づく水性疎水性シリカ分散体は、全てのレベルにおいて、アクリル系中に組み込むことが容易であったが(配合物AB、AC及びAD)、粉末形態で使用したつや消し剤Rは、コーティング分散体中に組み込むのがますます困難になった(AE、AF及びAG)ことを示す。
【0217】
先に説明した方法によって、3ミルドローダウンバーを使用して、ACT Bonderite 1000ブランドCRS板(ACT Test Panel Technologiesから入手可能)上に、配合物をコーティングして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、配合物を乾燥させた。表27は、エアロゲルベースの分散体並びに粉末形態のつや消し剤Rの両方を組み込むことによって、光沢レベルが減少したことを示す。いずれのつや消し剤も、鉛筆硬度に影響を及ぼさなかった。
【0218】
【表27】
【0219】
別の実験において、前に示す通りドローダウンフィルムを調製した後、フィルムを置いて周囲の温度だけで乾燥させ、またKonig硬度の変化を経時的に記録した。図10においてもまた示す通り、つや消し剤Rを使用する比較配合物(AE、AF及びAG)は、特に早い段階において、より低いKonig硬度を示したが、配合物AB、AC及びAD中の、不透明なエアロゲルベースのつや消し剤は、アクリル対照(AA)と非常に類似していて、エアロゲルつや消し粒子とアクリル系との良好な比較性を示唆する。
【0220】
表28はフィルムの耐水性の結果を示す。対照と比較して、全ての配合物がより良好な耐水性、すなわち、1時間の水との接触の後に、フィルムの膨れが無いこと、及び周囲の温度で1時間乾燥した後の、フィルム強度の良好な回復、を示した。特に、コーティング分散体ABは、室温で24時間の後、水に対する軟化を全く示さなかった。
【0221】
【表28】
【0222】
実施例9
下の表29における手順によって、Cabot CorporationのCAB-O-SPERSE 2017A分散体及びEnova IC3120エアロゲルを使用して、水性疎水性シリカ分散体を調製した。
【0223】
【表29】
【0224】
下の表30における手順によって、結果として生じた水性疎水性シリカ分散体を、ポリエステル組成物に添加した。
【0225】
【表30】
【0226】
結果として生じたコーティング組成物を、Hegmanグラインドメーターを使用して、分散度について、評価した。グラインドが十分である場合、先に説明された方法を使用して、Bonderite 1000板上に組成物をキャストして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、乾燥させた。結果として生じたコーティングは、40.0のKonig硬度、並びに20°及び60°で、それぞれ5.4及び19.8の光沢を有していた。外観において、コーティングはつやが無いのではなく、つやがあるが、それは透明ではなく、白濁していた。D1038分散剤は、カチオン基を有さず、また、特に追加の成分をコーティング組成物に添加するとき、疎水性及び親水性粒子状エアロゲルの適切な分散を促進しない場合がある。
【0227】
実施例10
下の表31における手順によって、Cabot CorporationのCAB-O-SPERSE 2017Aシリカ分散体並びにEnova IC3130及びIC3120エアロゲルを用いて、水性疎水性シリカ分散体を調製した。
【0228】
【表31】
【0229】
表32において説明する通り、結果として生じた水性疎水性シリカ分散体を、ポリウレタン組成物に添加した。
【0230】
【表32】
【0231】
結果として生じたコーティング組成物を、Hegmanグラインドメーターを使用して、分散度について、評価した。グラインドが十分であった場合、先に説明された方法を使用して、Bonderite 1000板上に組成物をキャストして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、乾燥させた。結果として生じたコーティングは透明であり、良好なつや消し及び硬度特性を示し、また下の表33に記載する特性を有していた。
【0232】
【表33】
【0233】
下の表34に提示する手順によって、水性疎水性シリカ分散体をまた、ポリウレタンポリカーボネート組成物に添加した。
【0234】
【表34】
【0235】
結果として生じたコーティング組成物を、Hegmanグラインドメーターを使用して、分散度について、評価した。グラインドが十分であった場合、先に説明された方法を使用して、Bonderite 1000板上に組成物をキャストして、周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、乾燥させた。結果として生じたコーティングは透明であり、良好なつや消し及び硬度特性を示し、また下の表35に記載する特性を有していた。
【0236】
【表35】
【0237】
実施例11
下の表36における手順によって、Cabot CorporationのCAB-O-SIL EL-90親水性ヒュームドシリカ及びTS-720シロキサン処理疎水性ヒュームドシリカを用いて、水性疎水性シリカ分散体を調製した。
【0238】
【表36】
【0239】
下の表37における手順によって、結果として生じた水性疎水性シリカ分散体を、アクリル/ポリウレタン組成物に添加した。シリカを有さない対照分散体もまた調製した。
【0240】
【表37】
【0241】
結果として生じたコーティング組成物を、Hegmanグラインドメーターを使用して、分散度について評価し、それらは、それぞれ25、50及び45ミクロン(6と4との間のHegman単位)の細かさを示した。先に説明した方法を使用して、3ミルドローダウンバーを用いて、Leneta 2Cチャート上に、組成物をキャストして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、組成物を乾燥させた。結果として生じたコーティングは、下の表38に記載する特性を有していた。
【0242】
【表38】
【0243】
表39における手順によって、結果として生じた水性疎水性シリカ分散体を、アクリル共重合体組成物に添加した。シリカを有さない対照分散体もまた調製した。
【0244】
【表39】
【0245】
結果として生じたコーティング組成物を、Hegmanグラインドメーターを使用して、分散度について評価した。グラインドは、3つの分散体について、それぞれ10、50及び40ミクロン(50.8ミクロンが、4のHegmanグラインドに相当する)であった。先に説明した方法を使用して、3ミルドローダウンバーを用いて、Leneta 2Cチャート上に、組成物をキャストして、また周囲の温度で10分間及び150OFで30分間、組成物を乾燥させた。結果として生じたコーティングは、下の表40において記載する特性を有していた。
【0246】
【表40】
【0247】
実施例12
表41における手順によって、CAB-O-SPERSE PG022分散体を使用して、シリカ分散体を調製した。3つの異なる分散剤、すなわちDisperBYK190(40%)、DisperBYK(100%)及びSolsperse 46000(50%)添加剤を採用した。
【0248】
【表41】
【0249】
上の分散体の3つ全ては、分散剤の添加に際し、ゲル化した。100gのCAB-O-SPERSE 1015A分散体と3.8gのDisperBYK 192分散剤との、類似の混合物もまた、手動でかき混ぜた際にゲル化した。本実施例において採用する分散剤組成物の表面のカチオン基の欠乏は、シリカ分散体を不安定にする場合がある。
【0250】
実施例13
表42における手順によって、Cabot CorporationのEnova LA1000エアロゲルを用いて、水性疎水性シリカ分散体を調製した。
【0251】
【表42】
【0252】
結果として生じた分散体は、バッティング又はテキスタイルのためのコーティング中への配合のために、適切であった。
【0253】
実施例14
モデル3PN1010 Variac可変変圧器を備え付ける、重荷重用3.75馬力商業用ブレンダー中で、表43の規定割合に従って、水、Cabot CorporationのCAB-O-SIL L-90ヒュームドシリカ及び水酸化カリウムを使用して、水性ベースシリカ分散体を製造した。変圧器において設定を20にした混合に次いで、Jefamine M2070分散剤を、下に記載される規定割合に従って、添加した。次いで、5等分したものに、ENOVA IC3120エアロゲルを添加し、次いで、それぞれを、エアロゲルが組み込まれるまで、変圧器の設定を30~50にして混合した。分散体を、変圧器の設定を30~50にして追加の60分間混合し、次いでEigerミル及び1mmのジルコニウムビーズを使用して粉砕した。分散体は、つや消し性能を提供するための、コーティング配合物における使用のために、適切であった。
【0254】
【表43】
【0255】
実施例15
下の表44における規定割合に従って、水及びCabot CorporationのCAB-O-SIL M5ヒュームドシリカを使用して、水性ベースシリカ分散体を製造した。1000rpmでの混合に次いで、下に記載される規定割合に従ってJeffamine M2070分散剤を添加し、次いで、5等分したものに、ENOVA LA1000を添加した。分散体を1000rpmで20分間混合し、各分取したものの添加に次いで、追加の20分間混合した。分散体は、バッティング若しくはテキスタイルをコーティングする、又はバッティング若しくはテキスタイルに浸透するための、配合物における使用のために、適切であった。
【0256】
【表44】
【0257】
本発明を、その好ましい実施態様を参照して、詳細に、示し、また説明したが、形態及び詳細における様々な変化は、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を外れることなく、それらの中で作られてもよいと、当業者によって理解される。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される少なくとも5wt%の親水性粒子状シリカを含む、水性ベース分散体;
ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む疎水性シリカであって、少なくとも60のメタノール数を有する、疎水性シリカ;並びに
少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有する、分散剤、
の混合物を含み、分散体中の粒子状シリカの合計の量が少なくとも15wt%である、水性疎水性シリカ分散体。
(付記2)水性ベース分散体が、酸性の又は塩基性の安定化剤を含む、付記1に記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記3)安定化剤が、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は塩酸から選択される、付記2に記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記4)水性疎水性シリカ分散体が、10%より少ないC1~C4アルキルアルコールを含む、付記1~3のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記5)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される、追加の粒子状シリカをさらに含み、追加の粒子状シリカが50より小さいメタノール数を有する、付記1~4のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記6)分散剤が、酸化エチレン及び酸化プロピレンオリゴマーを含み、酸化エチレン量体と酸化プロピレン量体とのモル比が0.1~11である、付記1~5のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記7)疎水性粒子状シリカが、疎水性ヒュームドシリカ又は粒子形態の疎水性シリカエアロゲルを含む、付記1~6のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記8)エアロゲルが、少なくとも90%の空隙率、120kg/m 3 ~150kg/m 3 の粒子密度、及び700m 2 /g~800m 2 /gのBET表面積を有する、付記7に記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記9)疎水性シリカ:親水性シリカの重量比が、5:95~95:5である、付記1~8のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記10)分散体中の、疎水性シリカ:水の重量比が、少なくとも1:10である、付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記11)付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体を含む処理組成物を用いて処理された、テキスタイル。
(付記12)付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体を含む処理組成物を用いて処理された、バッティング(batting)。
(付記13)付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体を含む、水中ペレット化のための浴。
(付記14)重合体成分、及び付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体、の混合物を含む、水性コーティング組成物。
(付記15)合計の粒子状シリカ含有量が、合計の固形分に対して、0.1wt%~30wt%である、付記14に記載の水性コーティング組成物。
(付記16)少なくとも1つの追加のつや消し剤をさらに含む、付記14又は15に記載の水性コーティング組成物。
(付記17)重合体成分が透明である、付記14~16のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
(付記18)重合体成分が、アクリル配合物、ビニル配合物、ポリウレタン配合物及びアクリル/ポリウレタンハイブリッド配合物からなる群から選択される、付記14~17のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
(付記19)コーティング組成物が、乾燥された場合に、粒子状シリカを含有しない乾燥された対照組成物のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度を有する、付記14~18のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
(付記20)コーティング組成物が、乾燥された場合に、粒子状シリカを含有しない乾燥された対照組成物の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢を有する、付記14~19のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物。
(付記21)付記14~20のいずれか1つに記載の水性コーティング組成物を用いてコーティングされた、基材。
(付記22)付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体を、重合体成分と組み合わせて、コーティング組成物を形成すること;
所定の方法を使用して、コーティング組成物を表面に適用すること;及び
適用されたコーティング組成物を硬化させ、それによってコーティングされた表面を製造すること、
を含み、コーティングされた表面の60°で測定された光沢が、粒子状シリカを含有しないが所定の方法を使用して適用された対照コーティング組成物を用いて製造された、対照コーティング表面の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い、表面をコーティングするための方法。
(付記23)所定の方法が、単層又は複数層でコーティング組成物を適用することを含む、付記22に記載の方法。
(付記24)重合体成分が透明である、付記22又は23に記載の方法。
(付記25)重合体成分が、水性の溶液又は分散体の形態である、付記22~24のいずれか1つに記載の方法。
(付記26)重合体成分が、アクリル配合物、ポリウレタン配合物及びアクリル/ポリウレタンハイブリッド配合物からなる群から選択される、付記22~25のいずれか1つに記載の方法。
(付記27)コーティングされた表面が、粒子状シリカを含有しないが所定の方法を使用して適用された、対照コーティング組成物を用いて製造された、対照コーティング表面のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度を有する、付記22~26のいずれか1つに記載の方法。
(付記28)分散剤及び疎水性シリカを、親水性粒子状シリカを含む水性ベース分散体と組み合わせて、水性疎水性シリカ分散体を形成することをさらに含む、付記22~27のいずれか1つに記載の方法。
(付記29)付記1~10のいずれか1つに記載の水性疎水性シリカ分散体を、重合体成分と組み合わせて、コーティング組成物を形成することを含む、コーティング組成物を調製する方法。
(付記30)重合体が透明である、付記29に記載の方法。
(付記31)重合体成分が、水性の溶液又は分散体の形態である、付記29又は30に記載の方法。
(付記32)重合体成分が、アクリル配合物、ビニル配合物、ポリウレタン配合物及びアクリル/ポリウレタンハイブリッド配合物からなる群から選択される、付記29~31のいずれか1つに記載の方法。
(付記33)コーティング組成物が、硬化された場合に、粒子状シリカを有さない硬化された対照組成物のKonig硬度の、少なくとも94%の高さのKonig硬度を有する、付記29~32のいずれか1つに記載の方法。
(付記34)コーティング組成物が、少なくとも1つの追加のつや消し剤を含む、付記29~33のいずれか1つに記載の方法。
(付記35)コーティング組成物が、硬化された場合に、粒子状シリカを有さない硬化された対照組成物の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢を有する、付記29~34のいずれか1つに記載の方法。
(付記36)水性疎水性シリカ分散体を提供することが、疎水性シリカ及び分散剤を、少なくとも5wt%の親水性粒子状シリカを含む水性分散体と組み合わせて、水性疎水性シリカ分散体を製造することを含む、付記29~35のいずれか1つに記載の方法。
(付記37)a)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む、疎水性シリカ、b)少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有する、分散剤、並びにc)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される親水性粒子状シリカを少なくとも5%含む、水性ベース分散体、
を混合して、混合物を形成することを含み、疎水性シリカが少なくとも60のメタノール数を有し、水性疎水性シリカ分散体の合計のシリカ含有量が少なくとも15wt%である、水性疎水性シリカ分散体を調製する方法。
(付記38)混合が、追加の粒子状シリカを混合物と混合することをさらに含み、追加の粒子状シリカが、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択され、追加の粒子状シリカが、50より小さいメタノール数を有する、付記37に記載の方法。
(付記39)疎水性シリカが、疎水性シリカ:水の比で、少なくとも1:10で、水性疎水性シリカ分散体中に存在する、付記37又は38に記載の方法。
(付記40)分散剤が、酸化エチレン及び酸化プロピレンオリゴマーを含み、酸化エチレン量体と酸化プロピレン量体とのモル比が0.1~11である、付記37~39のいずれか1つに記載の方法。
(付記41)疎水性粒子状シリカが、疎水性ヒュームドシリカ又は粒子形態の疎水性シリカエアロゲルを含む、付記37~40のいずれか1つに記載の方法。
(付記42)エアロゲルが、少なくとも90%の空隙率、120kg/m 3 ~150kg/m 3 の粒子密度、及び700m 2 /g~800m 2 /gのBET表面積を有する、付記41に記載の方法。
(付記43)疎水性シリカ:親水性粒子状シリカの重量比が、5:95~95:5である、付記37~42のいずれか1つに記載の方法。
(付記44)水性ベース分散体が、酸性の又は塩基性の安定化剤を含む、付記37~43のいずれか1つに記載の方法。
(付記45)安定化剤が、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム又は塩酸から選択される、付記44に記載の方法。
(付記46)水性疎水性シリカ分散体が、10%より少ないC1~C4アルキルアルコールを含む、付記37~45のいずれか1つに記載の方法。
(付記47)成分a)、b)及びc)が、同時に互いに混合されない、付記37~46のいずれか1つに記載の方法。
(付記48)混合物を粉砕することをさらに含む、付記37~47のいずれか1つに記載の方法。
(付記49)付記37~48のいずれか1つに記載の方法によって、水性疎水性シリカ分散体を製造すること;及び
水性疎水性シリカ分散体を、重合体成分と組み合わせること、
を含む、水性コーティング組成物を調製する方法。
(付記50)ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ及び沈降シリカからなる群から選択される、少なくとも5wt%の、親水性粒子状シリカ;
ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカエアロゲル及び沈降シリカからなる群から選択される粒子状シリカを含む疎水性シリカであって、少なくとも60のメタノール数を有する、疎水性シリカ;並びに
少なくとも1つのカチオン性の又はカチオン化可能な基及び2~20のHLB比を有する、分散剤、
を含み、水性疎水性シリカ分散体中のシリカの合計の量が少なくとも15wt%である、水性疎水性シリカ分散体。
(付記51)疎水性シリカが、疎水性シリカ:水の比で、少なくとも1:10で、水性分散体中に存在する、付記48に記載の水性疎水性シリカ分散体。
(付記52)重合体成分と、付記50又は51に記載の水性疎水性シリカ分散体との混合物を含み、水性コーティング組成物が、乾燥された場合に、粒子状シリカを含有しない乾燥された対照組成物の60°で測定された光沢より、少なくとも15%低い60°で測定された光沢を有する、水性コーティング組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10