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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】波力発電システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/18 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
F03B13/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020543206
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 KR2019001613
(87)【国際公開番号】W WO2019156516
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0017304
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515338391
【氏名又は名称】インジン,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン ユン
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0084891(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0074001(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって油圧を発生させる油圧シリンダを含む動力変換部を含み、
前記動力変換部は、
前記油圧シリンダに一方向に力が加えられれば、第1経路に沿って流体を流動させることによって電気エネルギーを生産し、
前記油圧シリンダに他方向に力が加えられれば、前記第1経路と反対方向に前記流体をバイパスして流動させる第2経路を介して流体が流動し、前記第1経路に合流することにより電気エネルギーを生産し、
前記可動物体の3ヶ所以上の位置に連結される複数の張力伝達部材を含み、
前記張力伝達部材には、前記油圧シリンダを駆動する第1駆動部と復原力伝達部が設けられ、
前記張力伝達部材は、張力が印加されれば、前記油圧シリンダに一方向に力を加え、
前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、前記油圧シリンダに他方向に力を加えるように備えられた、波力発電システム。
【請求項2】
前記第1駆動部は、前記張力伝達部材の動きを往復直線運動に変換して前記油圧シリンダに力を伝達する、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項3】
前記第1駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項4】
前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材と反対方向に前記第1駆動部を駆動するよう、前記張力伝達部材に接続される第2駆動部と、前記第2駆動部によって駆動される弾性部を備える、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項5】
前記弾性部は、ガススプリング、空圧スプリング、油圧スプリングのいずれか1つ以上を含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項6】
前記第2駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項7】
前記第1駆動部と前記復原力伝達部は、前記複数の張力伝達部材のそれぞれに備えられる、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項8】
波に浮遊しながら波によって動く可動物体と、
前記可動物体の6自由度運動が可能なように接続し、前記可動物体の運動エネルギーを伝達する張力伝達部材を含む運動伝達部と、
前記張力伝達部材に接続される第1駆動部と、前記第1駆動部によって油圧を発生させる油圧シリンダと、前記油圧シリンダにより発生する油圧によって駆動する油圧モータと、前記油圧シリンダと前記油圧モータを接続して流体が流動される油圧回路を含む動力変換部と、
前記張力伝達部材に接続され、前記第1駆動部を介して前記油圧シリンダに前記張力伝達部材と反対方向に油圧を発生させる復原力伝達部と、
を含み、
前記第1駆動部は、前記張力伝達部材に張力が印加されれば、前記油圧シリンダに一方向に力を加え、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、前記復原力伝達部で加えられる力によって前記油圧シリンダに他方向に力を加えるように備えられた、波力発電システム。
【請求項9】
前記第1駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項10】
前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材と反対方向に前記第1駆動部に力を加えるように備えられた弾性部と第2駆動部を含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項11】
前記弾性部は、ガススプリング、空圧スプリング、油圧スプリングのいずれか1つ以上を含む、請求項10に記載の波力発電システム。
【請求項12】
前記第2駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含む、請求項10に記載の波力発電システム。
【請求項13】
前記油圧回路は、
前記油圧シリンダに一方向に力が加えられれば、前記油圧モータを駆動するように前記流体が流動される第1経路と、
前記油圧シリンダに他方向に力が加えられれば、前記流体を前記油圧シリンダの一端と他端との間で流動させる第2経路と、
を含む、請求項に記載の波力発電システム。
【請求項14】
前記第2経路は、前記油圧シリンダに前記他方向に流出した流体を前記第1経路に流入させることで、前記第1経路を介して前記油圧モータにより電気エネルギーが生産されるように形成される、請求項13に記載の波力発電システム。
【請求項15】
前記第2経路は、前記第1経路に流体を流入させることなく、前記油圧シリンダの他端と一端との間で前記流体を循環させる、請求項13に記載の波力発電システム。
【請求項16】
請求項1ないし15に記載の波力発電システムを制御する方法であって、
波に浮遊しながら波によって動く可動物体の6自由度運動エネルギーを張力伝達部材を介して動力変換部に伝達するステップと、
前記動力変換部で前記張力伝達部材に張力が印加されれば、一方向に油圧を発生させ、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、他方向に油圧を発生させるステップと、
前記一方向及び他方向に発生する油圧によってそれぞれ電気エネルギーを生産するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の本発明は、波力発電システム及びそのシステムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気を発生させる発電方法として、水力発電、火力発電、原子力発電などが挙げられるが、このような発電方法は、大規模な発電設備が求められる。それだけでなく、火力発電の場合、発電設備を可動させるために膨大な量の石油又は石炭エネルギーが必須的に供給されなければならないため、石油、石炭資源が枯渇している現時点では多くの困難が予想されており、公害も大きい問題となっている。また、原子力発電の場合、放射能の流出と核廃棄物処理という深刻な問題を抱いている。水力発電の場合に水の落差を使用するため、大規模のダムを建設しなければならないことから、周囲環境に変化を招くだけではなく、水資源の豊かな河川などが前提にならなければ建設されることができないなど、環境的な制約のある問題がある。従って、このような一般的な発電方法によって、安価、安全、かつ環境にやさしい画期的な発電方法が要求されているが、そのうちの1つが波の動きを用いて電気エネルギーを生産できるという波力発電である。
【0003】
潮満差を用いて電気エネルギーを生産する潮力発電と、海水のはやい流速を用いて電気エネルギーを生産する潮流発電、及び波の動きを用いて電気エネルギーを生産する波力発電が注目されている。特に、波力発電は、絶えずに発生する波の動きを用いて電気エネルギーを生産する技術であって、持続的にエネルギーを生産することができる。波力発電は、波による海水面の周期的な上下運動と水の粒子の前後運動をエネルギー変換装置を用いて機械的な回転運動又は軸方向運動に変換させた後も電気エネルギーに変換させる。波力発電方式として、波高の高低によるエネルギーを1次変換する方式により様々に分類し、代表的に、水面に浮かんでいる浮標が波の動きにより上下又は回転運動することで発電機を作動させる可動物体型方式が挙げられる。
【0004】
可動物体型の場合、波の動きにより動いている物体、例えば、浮標の動きが伝達され、これを往復または回転運動に変換させてから発電機を介して発電する方式であって、その一例が特許文献1(韓国特許公開第10-2015-00120896号公報)又は特許文献2(日本特許第5260092号公報)に開示されている。
【0005】
但し、波の特性上、不規則的な運動エネルギーが提供されることから、これを用いて安定的にエネルギーを生産するためには、波エネルギーを伝達する運動伝達部及び伝達された運動エネルギーを発電に用いられる回転運動エネルギーに変換する動力変換部において、電気エネルギーを効率よく生産できるシステム及び制御方法が求められている。
【0006】
前述した背景技術で説明された内容は、発明者が本発明の導出過程で保持したり習得したものであり、必ず本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術であると認められたものとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許公開第10-2015-00120896号公報
【文献】特許第5260092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施形態によれば、エネルギー変換の効率を向上させ、高い制御自由度を有する波力発電設備の制御システム及び方法を提示することにある。
【0009】
実施形態で解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されることなく、言及されない更なる課題は下記の記載によって当業者に明確に理解されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した解決しようとする課題を達成するための実施形態によれば、波力発電システムは、波に浮遊する可動物体の6自由度運動によって油圧を発生させる油圧シリンダを含む動力変換部を含み、前記動力変換部は、前記油圧シリンダに一方向に力が加えられれば、第1経路に沿って流体を流動させることによって電気エネルギーを生産し、前記油圧シリンダに他方向に力が加えられれば、前記第1経路と反対方向に前記流体をバイパスして流動させる第2経路を介して流体が流動し、前記第1経路に合流することにより電気エネルギーを生産する。
【0011】
一側面によると、前記可動物体の3ヶ所以上の位置に連結される複数の張力伝達部材を含むことができる。前記張力伝達部材には、前記油圧シリンダを駆動する第1駆動部と復原力伝達部が設けられ、前記張力伝達部材は、張力が印加されれば、前記油圧シリンダに一方向に力を加え、前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、前記油圧シリンダに他方向に力を加えるように備えられることができる。前記第1駆動部は、前記張力伝達部材の動きを往復直線運動に変換して前記油圧シリンダに力を伝達することができる。例えば、前記第1駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含むことができる。
【0012】
一実施形態によると、前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材と反対方向に前記第1駆動部を駆動するよう、前記張力伝達部材に接続される第2駆動部と、前記第2駆動部によって駆動される弾性部を備えることができる。例えば、前記弾性部は、ガススプリング、空圧スプリング、油圧スプリングのいずれか1つ以上を含むことができる。そして、前記第2駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含むことができる。
【0013】
一側面によると、前記第1駆動部と前記復原力伝達部は、前記複数の張力伝達部材のそれぞれに備えられることができる。
【0014】
一方、前述した解決しようとする課題を達成するための他の実施形態によると、波力発電システムは、波に浮遊しながら波によって動く可動物体と、前記可動物体の6自由度運動が可能なように接続し、前記可動物体の運動エネルギーを伝達する張力伝達部材を含む運動伝達部と、前記張力伝達部材に接続される第1駆動部と、前記第1駆動部によって油圧を発生させる油圧シリンダと、前記油圧シリンダにより発生する油圧によって駆動する油圧モータと、前記油圧シリンダと前記油圧モータを接続して流体が流動される油圧回路を含む動力変換部と、前記張力伝達部材に接続され、前記第1駆動部を介して前記油圧シリンダに前記張力伝達部材と反対方向に油圧を発生させる復原力伝達部とを含む。
【0015】
一側面によると、前記第1駆動部は、前記張力伝達部材に張力が印加されれば、前記油圧シリンダに一方向に力を加え、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、前記復原力伝達部で加えられる力によって前記油圧シリンダに他方向に力を加えるように備えられることができる。例えば、前記第1駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含むことができる。
【0016】
一側面によると、前記復原力伝達部は、前記張力伝達部材と反対方向に前記第1駆動部に力を加えるように備えられた弾性部と第2駆動部を含んで構成されることができる。例えば、前記弾性部は、ガススプリング、空圧スプリング、油圧スプリングのいずれか1つ以上を含むことができる。そして、前記第2駆動部は、ラックギアとピニオンギアを含むことができる。
【0017】
一側面によると、前記油圧回路は、前記油圧シリンダに一方向に力が加えられれば、前記油圧モータを駆動するように前記流体が流動される第1経路と、前記油圧シリンダに他方向に力が加えられれば、前記流体を前記油圧シリンダの一端と他端との間で流動させる第2経路とを含むことができる。そして、前記第2経路は、前記油圧シリンダに前記他方向に流出した流体を前記第1経路に流入させることで、前記第1経路を介して前記油圧モータにより電気エネルギーが生産されるように形成されることができる。又は、前記第2経路は、前記第1経路に流体を流入させることなく、前記油圧シリンダの他端と一端との間で前記流体を循環させるように形成されてもよい。
【0018】
一方、前述した解決しようとする課題を達成するための実施形態によると、波力発電システムの制御方法は、波に浮遊しながら波によって動く可動物体の6自由度運動エネルギーを張力伝達部材を介して動力変換部に伝達するステップと、前記動力変換部で前記張力伝達部材に張力が印加されれば、一方向に油圧を発生させ、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、他方向に油圧を発生させるステップと、前記一方向及び他方向に発生する油圧によってそれぞれ電気エネルギーを生産するステップとを含んで構成される。
【0019】
一側面によると、前記油圧を発生させるステップは、前記張力伝達部材には油圧シリンダを駆動させる第1駆動部と、前記張力伝達部材で張力が解除されれば、前記張力伝達部材と反対方向に前記第1駆動部に力を加える復原力伝達部が設けられ、前記油圧シリンダに一方向に力が加えられれば、流体が第1経路に沿って流動し、前記復原力伝達部によって前記油圧シリンダに他方向に力が加えられれば、前記油圧シリンダの他端と一端との間で流体が前記第1経路とバイパスされて第2経路に沿って流動されることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上で説明したように、実施形態によれば、油圧回路を用いて可動物体の動きによる発電効率を向上させることができる。
【0021】
また、急激な動きのような外乱が発生する時、発電機を動作させることなくバイパスさせることで、外乱によって波力発電システムに異常が発生することを防止することができる。
【0022】
一実施形態に係る波力発電システム及びその制御方法の効果は、以上記載したものなどに限定されず、言及されていない他の効果は、下記の記載によって当業者に明確に理解できるものである。
【0023】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の好ましい一実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明と共に本発明の技術的な思想をより理解させる役割を果たすものであるため、本発明は、図面に記載されている事項だけに限定されて解釈されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、一実施形態に係る波力発電システムの概念図である。
図2図2は、一実施形態に係る波力発電システムにおける動力変換部の構成を説明するための概念図である。
図3図3は、図2に示す動力変換部の動作を説明するための図である。
図4図4は、図2に示す動力変換部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態を例示的な図を参照して詳説する。各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同じ構成要素については、たとえ他の図面上に表示されていても、可能な限り同じ符号を有するようにしたことに留意しなければならない。また、実施形態の説明にあたり、関連する公知構成又は機能の具体的な説明が実施形態についての理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0026】
また、実施形態の構成要素を説明することにおいて、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その用語によって当該の構成要素の本質や順序などが限定されることはない。いずれかの構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」、又は「接続」されていると言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されているか又は接続されているが、各構成要素との間にさらなる構成要素が「連結」、「結合」、又は「接続」され得るものと理解されなければならない。
【0027】
以下、図1を参照して実施形態に係る波力発電システム10について説明する。参考として、図1は、一実施形態に係る波力発電システム10の概念図である。
【0028】
図1を参照すると、波力発電システム10は、可動物体110、運動伝達部120、動力変換部130、電力生産部150を含んで構成される。
【0029】
可動物体110は、波の上に浮遊しながら波の動きにより6自由度で運動する。具体的に、可動物体110は、波の動きに応じてx、y、z軸に沿って変移運動(heave、surge、sway)したり、ヨー(yaw)、ピッチ(pitch)、ロール(roll)の回転運動することで、合わせて6自由度(6 Degree of Freedom)運動することになる。
【0030】
例えば、可動物体110は、波に浮遊しながら波の動きにより動くように形成され、ブイ又は浮標である。可動物体110は、波に浮遊可能に形成された本体部111と運動伝達部120とが結合する結合部112を含んで構成される。
【0031】
可動物体110の本体部111は様々な形状に形成されるが、例えば、円盤型やチューブ型であってもよく、その他にも、円柱、多角柱、ドーム形状、円盤状などの様々な形態を有することができる。本体部111は、それぞれの形、形状、材質、機能、特性、効果、結合関係によって円盤状に構成されるが、これらに限定されることなく、様々な形に構成されてもよい。また、本体部111は、その材質が波に浮遊できる材質であればよく、これに限定されることはない。
【0032】
結合部112は、本体部111に運動伝達部120が結合されるように形成し、一例として、360度の運動角度を有するボールジョイントの形態を有してもよい。結合部112は、可動物体110が波の動きに応じて、多方向に一定の範囲内で自由に動くことができるように結合し、可動物体110の6自由度運動を伝達できるように本体部111の少なくとも互いに異なる3ヶ所以上に結合されている。但し、これは一例示に過ぎず、結合部112は、運動伝達部120が可動物体110に結合して制限された範囲内で可動物体110が自由に動くことを可能にする様々な方式の結合が可能である。また、結合部112の位置は図面により限定さることなく、本体部111の様々な位置で可動物体110が一定範囲から離脱することを防止すると共に、その一定範囲内で自由に流動できる位置であれば、多様に変更され得る。
【0033】
また、結合部112は、本体部111の下部に垂直方向に形成された隔壁形態を有する。このような結合部112は、可動物体110が波の動きにより積極的に連動するよう、水平面と垂直に形成され、結合部112に波の力が垂直に作用することで、波の動きによって可動物体110を効率よく動かせることができる。しかし、これは一実施形態に過ぎず、結合部112は、可動物体110が全ての方向に波の力を受けることができ、波の動き又はエネルギーが可動物体110の動きに効率よく伝達されるよう構成できる。
【0034】
運動伝達部120は、可動物体110に結合して可動物体110の動きを伝達するための張力伝達部材121と、張力伝達部材121を海底などに固定させる固定部材122を含む。
【0035】
張力伝達部材121は、可動物体110の波による多方向の動きを線形の往復運動に変換して動力変換部130に伝達する。一例として、張力伝達部材121は、一端が可動物体110に結合して他端が動力変換部130に接続される所定のワイヤ状である。また、張力伝達部材121は、ワイヤ、ロープ、チェーン、スプロケット、ベルトなどであってもよい。その他にも、張力伝達部材121は、可動物体110と動力変換部130を結合して動きを伝達することのできる様々な手段が使用されてもよい。
【0036】
このような張力伝達部材121は、可動物体110の6自由度運動に連動して、張力伝達部材121が可動物体110のあらゆる動きに反応して伝達できることから、最も効率よく可動物体110の運動を動力変換部130に伝達することができる。即ち、張力伝達部材121は、可動物体110が波によって多方向の力で海面を浮遊しながら、いずれか一方向に可動物体110が力を受けると、当該の力を受ける部分の一方の張力伝達部材121が引っ張られ、可動物体110で他の部分に接続された他方の張力伝達部材121は緩くなり、一方の張力伝達部材121の張力により反対に引っ張られるように構成されている。そして、このように可動物体110に波の力が多方向へ持続的に発生することで、可動物体110の動きにより張力伝達部材121が往復運動する。即ち、張力伝達部材121は、可動物体110の動きを線形の往復運動に切り替えて動力変換部130に伝達する。そして、張力伝達部材121は3ヶ所以上で可動物体110と接続し、可動物体110が一定範囲から離脱することが防止されると共に、一定範囲内で可動物体110が自由に流動されるようにし、可動物体110の運動エネルギーを全般的に伝達する役割を果たす。
【0037】
固定部材122は、海底や他の場所に設けられて張力伝達部材121を固定させると共に、張力伝達部材121の方向を変える役割をする。即ち、張力伝達部材121は、固定部材122を中心軸にして一定の範囲内で動く。また、固定部材122は、張力伝達部材121の長手方向に沿って少なくとも1ヶ所以上、複数の位置に設けられ、張力伝達部材121を固定すると共に、張力伝達部材121の方向を変えるための位置にも設けられて方向を変える。例えば、固定部材122は、複数のローラ又は滑車を含む。
【0038】
動力変換部130は、運動伝達部120から伝達される張力伝達部材121の往復運動により油圧を発生させ、これを電力生産部150に伝達する。
【0039】
電力生産部150は、動力変換部130の油圧モータ134(図2参照)によって発電機を駆動し電気エネルギーを生産する。
【0040】
一方、本実施形態には、1つの可動物体110に複数の張力伝達部材121が設けられ、複数の張力伝達部材121が1つの動力変換部130及び電力生産部150に集合される形態が示している。しかし、これは一例示に過ぎず、複数の張力伝達部材121にそれぞれ動力変換部130が接続し、又は、各張力伝達部材121ごとに複数の動力変換部130が接続していることも可能である。そして、複数の動力変換部130が1つの電力生産部150に接続されたり、複数の動力変換部130にそれぞれ電力生産部150が接続されていることも可能である。
【0041】
ここで、上述した実施形態では、波力発電システム10が沿岸(onshore)方式で設けられていると例示しているが、これは一例示に過ぎず、海岸方式によって設けられるシステムにおいても本実施形態に係る波力発電システム10を適用できる。
【0042】
以下では、図2を参照して一実施形態に係る動力変換部130の構成について詳細に説明する。参考として、図2は、一実施形態に係る波力発電システム10で一例に係る動力変換部130の構成を説明するための概念図である。
【0043】
図2を参照すると、動力変換部130は、変換体131と、張力伝達部材121によって油圧シリンダ133を一方向に駆動するための第1駆動部132を含んで構成されている。そして、張力伝達部材121によって油圧シリンダ133を反対方向に駆動するための復原力伝達部140が備えられる。
【0044】
変換体131は、運動伝達部120と動力変換部130との間に設けられ、張力伝達部材121の動きを回転運動又は往復直線運動に変換する。例えば、変換体131は、張力伝達部材121が巻回されたり接続されているように設けられ、張力伝達部材121の往復線形運動を回転運動に切り替えたり、軸方向運動に切り替える回転軸又はドラムなどを含んでもよい。但し、これは一例に過ぎず、張力伝達部材121の動きを往復回転運動又は往復直線運動に変換可能であれば、実質的に様々な手段を使用することができる。
【0045】
油圧シリンダ133は、張力伝達部材121から伝達される運動エネルギーによって油圧を発生させる。一方、図面では、油圧シリンダ133を簡略に示し、油圧シリンダ133の細部構成の説明は省略する。
【0046】
第1駆動部132は、張力伝達部材121の動きによって油圧シリンダ133を駆動するように備えられている。例えば、第1駆動部132は、ラックギア302とピニオンギア301から構成されてもよい。しかし、これは一例に過ぎず、第1駆動部132は、油圧シリンダ133を加圧できる様々な構成が用いられてもよい。
【0047】
復原力伝達部140は、第1駆動部132と同じ張力伝達部材121によって接続され、第1駆動部132に張力伝達部材121により力が加えられる方向と、反対方向に力を加えるよう備えられる。ここで、可動物体110の動きにより張力伝達部材121に張力が印加されれば、第1駆動部132及び油圧シリンダ133に一方向に力を加えることができる。但し、張力伝達部材121は、ワイヤなどの形態を有しているため、張力伝達部材121に張力が解除される場合、第1駆動部132及び油圧シリンダ133に力が加えられない。ここで、本実施形態において、張力伝達部材121で張力が解除された状態である時、復原力伝達部140が張力伝達部材121と反対方向に力を加えることで、第1駆動部132及び油圧シリンダ133に力を加えることができる。
【0048】
復原力伝達部140は、弾性部141と、弾性部141を駆動するための第2駆動部142を含んで構成される。例えば、弾性部141は、ガススプリング、油圧スプリング、又は空圧スプリングなどが用いられ、第2駆動部142は、第1駆動部132と同様に、ラックギア402とピニオンギア401が使用されてもよい。
【0049】
但し、第2駆動部142は、第1駆動部132と同じ張力伝達部材121上に設けられ、第1駆動部132に対して張力伝達部材121と反対方向に力を加えるように構成されている。詳細に、張力伝達部材121に張力が印加されれば、第1駆動部132が一方向に移動しながら油圧シリンダ133に力を加えることになる。この場合、油圧シリンダ133は、圧縮されたり膨張されてもよい。そして、張力伝達部材121で張力が解除されれば、第2駆動部142及び弾性部141が第1駆動部132と反対方向に作動することで、第1駆動部132を他方向に移動させることにより油圧シリンダ133に力が加えられる。例えば、張力伝達部材121によって油圧シリンダ133のロード側が圧縮される場合、復原力伝達部140によって油圧シリンダ133が圧縮される。勿論、上述した例とは異なって、張力伝達部材121と復原力伝達部140による油圧シリンダ133の圧縮と膨張が上述したものと反対に作動することも可能である。
【0050】
また、復原力伝達部140は、張力伝達部材121に一定の大きさ以上の張力を作用させ、引張された状態を保持する役割も行う。
【0051】
ここで、動力変換部130と復原力伝達部140は、複数の張力伝達部材121が全て接続されるように1個備えられたり、又は、複数の張力伝達部材121のそれぞれに動力変換部130と復原力伝達部140がそれぞれ備えられてもよい。
【0052】
次に、図3図4を参照して、一実施形態に係る動力変換部130の構成及び制御方法について説明する。参考として、図3及び図4は、図2に示す動力変換部130の動作を説明するための図である。
【0053】
動力変換部130は、油圧シリンダ133によって発生する油圧により流体を流動させる油圧回路135と、油圧回路135上に設けられ、電力生産部150を駆動する油圧モータ134を含む。
【0054】
油圧シリンダ133は、張力伝達部材121に張力が印加されれば、第1駆動部132(図2参照)が一方向に移動しながら油圧シリンダ133のピストンが引っ張られながら、油圧シリンダ133のロード側の内部流体が圧縮して一方向に流出される。そして、張力伝達部材121で張力が解除されれば、復原力伝達部140(図2参照)で第1駆動部132を他方向に移動させることにより、油圧シリンダ133のブラインド側の内部流体が圧縮し他方向に流出される。
【0055】
ここで、本実施形態では、張力伝達部材121によって油圧シリンダ133のロード側の内部流体が圧縮し、復原力伝達部140によって油圧シリンダ133のブラインド側の内部流体が圧縮されることを例示したが、これとは反対に作動することも可能である。
【0056】
油圧モータ134は、油圧シリンダ133で発生した油圧により駆動し、電力生産部150に接続して油圧モータ134の回転エネルギーを介して電力生産部150で電気エネルギーを発生させる。
【0057】
油圧回路135は、油圧シリンダ133によって発生する油圧により流体を流動させることで、油圧モータ134を駆動する。油圧回路135は、油圧シリンダ133に一方向に力が加えられたとき発生する油圧により流体を流動させる第1経路310と、油圧シリンダ133に他方向に力が加えられたとき発生する油圧により流体を流動させる第2経路320からなる。
【0058】
第1経路310上には油圧モータ134が設けられ、第1経路310に沿って流体が流動すれば、油圧モータ134の駆動により電力生産部150で電気エネルギーが生産される。
【0059】
また、第1経路310上には、流体を一方向に流動させるための複数のチェック弁311,312,313が備えられる。例えば、第1経路310上には、第2経路320と分地される部分にそれぞれ少なくとも1つ以上のチェック弁311,312が備えられてもよい。また、第1経路310上には、油圧モータ134の前方及び/又は後方に少なくとも1つ以上のチェック弁311,312が備えられてもよい。但し、第1経路310上に備えられるチェック弁311,312,313の位置と個数は、図面によって限定されることはない。
【0060】
第2経路320は、油圧シリンダ133の他方で流動される流体が第1経路310に対してバイパスされ、油圧モータ134を駆動させるように第2経路320の流体の移動方向に沿って端部が第1経路310に接続されるように備えられている。また、第2経路320上には、流体の流れ方向を制御する少なくとも1つ以上のチェック弁321が備えられる。図面には、第2経路320上に1つのチェック弁321が備えられていると例示したが、これは一例に過ぎず、複数のチェック弁321が備えられてもよい。
【0061】
図面において136は、流体を格納するタンク136である。タンク136は、第1経路310上に設けられ、また、油圧モータ134と接続して余分の流体を格納することができる。
【0062】
次に、上述した実施形態に係る動力変換部130の制御方法について説明する。
【0063】
まず、図3を参照すると、波に浮遊しながら波によって動く可動物体110(図1参照)の6自由度の運動エネルギーが、張力伝達部材121を介して動力変換部130に伝達される。
【0064】
ここで、張力伝達部材121に張力が印加されれば、第1駆動部132によって油圧シリンダ133へ一方向に力が加えられる。この場合、第1駆動部132によって油圧シリンダ133は、膨張又は圧縮されてもよい。そして、張力伝達部材121に張力が解除された場合、第1駆動部132で油圧シリンダ133に力を作用させることができないが、復原力伝達部140(図2参照)が第1駆動部132と反対方向に油圧シリンダ133に力を加えることになる。即ち、復原力伝達部140は、油圧シリンダ133を圧縮したり膨張させることができる。
【0065】
第1駆動部132によって油圧シリンダ133のピストンが引っ張られれば、油圧シリンダ133のロード側の内部流体が圧縮する。そして、油圧シリンダ133の一方向が高圧側になり、他方向が低圧側になって、油圧シリンダ133の一方向に流体が流出される。そして、油圧シリンダ133から流出した流体は、第1経路310に沿ってA矢印の方向に流動される。そして第1経路310に沿って流体が流動すると、油圧モータ134が駆動されながら、油圧モータ134によって電力生産部150で電気エネルギーが生産される。ここで、第1経路310上に油圧シリンダ133の他方向に隣接に設けられたチェック弁313により、油圧シリンダ133のブラインド側に形成されている低圧側にタンク136から流体が流入される。
【0066】
ここで、第2経路320上に備えられたチェック弁321は閉鎖されているため、チェック弁321により流体が第2経路320に沿って流動されることを防止する。
【0067】
そして、図4を参照すると、復原力伝達部140によって油圧シリンダ133のブラインド側の内部流体が圧縮すれば、図3に示す状態とは反対に、油圧シリンダ133の一方向が低圧側になり、他方向が高圧側になって、油圧シリンダ133の他方向に流体が流出される。そして、油圧シリンダ133から流出した流体は、第2経路320に沿ってB矢印の方向に流動する。ここで、第1経路310上に油圧シリンダ133の他方向に隣接に設けられたチェック弁313は閉鎖し、流体が油圧シリンダ133からタンク136に流出することを防止する。
そして、第2経路320に沿って流動する流体は、第1経路310と収束される部分で油圧シリンダ133のロード側に形成されている低圧側に多くの流体が流入し、残りの流体は、チェック弁311を介して第1経路310上に流動することになる。また、第1経路310上に流体が流動されることで、油圧モータ134が駆動しつつ、電力生産部150で電気エネルギーが生産される。
【0068】
本実施形態において、張力伝達部材121の動きによって第1駆動部133が一方向に移動して油圧シリンダ133を膨張(又は、圧縮)させ、復原力伝達部140によって第1駆動部133が張力伝達部材121とは反対方向に油圧シリンダ133を圧縮(又は、膨張)させるため、運動伝達部120(図1参照)の往復動きにより油圧シリンダ133が双方向に油圧を発生させることができる。そして、このように油圧シリンダ133の双方向に発生した油圧によって連続的に油圧モータ134を駆動させ、電力生産部150で電気エネルギーを生産することができる。また、油圧シリンダ133の圧縮と膨張の際に、第1経路310を介して全ての流体が流動されるため、連続的に電力生産部150で電気エネルギーを生産することができ、電気エネルギーを一定に生産することができる。
【0069】
上述したように実施形態をたとえ限定された図面によって説明したが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の説明に基づいて様々な技術的な修正及び変形を適用することができる。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順で実行されるし、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられてもよく、他の構成要素又は均等物によって置き換え又は置換されたとしても適切な結果を達成することができる。
【0070】
したがって、他の具現、他の実施例、及び特許請求の範囲と均等なものなどについても後述する請求範囲の範囲に属する。
【符号の説明】
【0071】
10:波力発電システム
110:可動物体
111:本体部
112:結合部
120:運動伝達部
121:張力伝達部材
122:固定部材
130:動力変換部
131:変換体
132:第1駆動部
133:油圧シリンダ
134:油圧モータ
135、235:油圧回路
140:復原力伝達部
141:弾性部
142:第2駆動部
310:第1経路
311、312、313:チェック弁
320:第2経路
321:チェック弁
150:電力生産部
図1
図2
図3
図4