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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】段ボール製の緩衝材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B65D81/05 500A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021103204
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2021-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521273927
【氏名又は名称】株式会社栃木カートン
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】蛯澤 清夫
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-012270(JP,A)
【文献】特開2020-070020(JP,A)
【文献】特開2020-164253(JP,A)
【文献】特開2005-313927(JP,A)
【文献】特開2016-030621(JP,A)
【文献】特開平08-164978(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02976278(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/05
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール製の緩衝材であって、
一枚の段ボール板(10)を四か所山折り(20)にすることによってできる角筒体のうち対向する一組の表面(30)と一組の側面(40)により構成され、
前記側面(40)には前記山折り(20)と平行且つ二つの山折り(20)した間の中心に一つの谷折り(50)をし、該二つの山折り(20)と前記一つの谷折り(50)によってできる形状から発揮される弾性特性を利用するとともに、
一組の前記側面(40)の一方には前記段ボール板(10)の両辺を繋ぐ係止部(60)が設けられ、
該係止部(60)は一方の前記表面(30)の一部が突出する係止舌片(61)と該係止舌片(61)を挿入するための係止口(62)を有する前記側面(40)により係止し、
前記谷折り(50)された両端に二つの小さな谷折り(50)と一つの小さな山折り(20)によって形成されるY字状に分岐した増強部(70)を各側面(40)の端部となる四隅に配置することにより、前記弾性特性の強化並びに弾性による保持力維持の向上を可能にするとともに、
該増強部(70)の端部に突き出し防止部(71)を設ける形状とすることで前記増強部(70)の一部が側面(40)より突き出さないようにしたこと、及び前記係止部(60)が前記山折り(20)と前記谷折り(50)によって前記側面(40)にできるV字状の窪み内に納められることで、前記係止部(60)が前記緩衝材の外側に段差を生じさせないことを特徴とする段ボール製の緩衝材(1)。
【請求項2】
前記山折り(20)される箇所と前記谷折り(50)される箇所に予め罫線刃による曲げ筋(81)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製の緩衝材(1)。
【請求項3】
前記段ボール板(10)が表ライナ(12)と、中芯(13)と、裏ライナ(14)とから成る素材を用い、前記中芯(13)の断面が波型となる方向に平行して折り曲げられ、前記角筒体が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の段ボール製の緩衝材(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製の緩衝材に関し、詳しくは、省スペースで保管可能な低コスト、且つ梱包する商品を衝撃から守り、その緩衝力が高められ更に係る効果を長く持続することを可能とする段ボール製の緩衝材の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緩衝材は、製品の配送時に製品同士が擦れたり箱内にぶつかったりして破損することを防ぐものであり、衝撃から製品を守るための素材である。緩衝材の種類は多く、その特長も様々で、緩衝材の種類と特長に応じて、製品に適した素材を選ぶこととなる。中でも、段ボールはリサイクル率も高く、環境負荷が少ない包装材料として外装箱に使用され、その他として緩衝固定材としても多く利用されている。
【0003】
段ボール緩衝材によれば、緩衝性能の向上、包装作業性の向上、減容化等を組み合わせた物流のトータルコストダウンの提案を図ることが可能である。また、段ボールは優れたコストパフォーマンスを持っているが、緩衝性能で比較すれば、やはり高機能の樹脂発泡材には劣る。しかし、樹脂発泡材料は一般的に、パルプ製の段ボールよりもコストが掛かる。
また、段ボール緩衝材の最も大きな特徴の一つとして、「平面材として保管できること」がある。複雑な立体形状を持った内装材も、広げれば基本的には一枚の段ボールである。物流の周辺に常につきまとう、「保管スペース」、「保管コスト」の問題も、段ボール製の緩衝材なら安価に改善が可能である。
【0004】
このような段ボール緩衝材に対し、他にも様々な緩衝材がある。例えば、気泡緩衝材(エアークッション)である。これは、空気が入った小さな丸い粒が敷き詰められているシートであり、一般的には「エアーキャップ」や「プチプチ」とも呼ばれており、緩衝材と聞くとこれを想起すると思われる。クッション性に優れ、柔軟性が高く複雑な形の製品も包むことができ、壊れやすい機械製品など、軽い物から重い物まで様々な製品の梱包に利用されている。また透明性が高く、中身が見えやすいという特徴もある。
【0005】
また、その他に、発泡シートがある。その特長は、発泡ポリエチレンをシート状に加工した緩衝材で、低密度ポリエチレンにガスを混ぜ、圧力をかけることでガスを気化発泡させて作られるものである。非常に軽く、そして柔らかいのが特徴で、薄くて曲げやすいため、複雑な形の製品の梱包にも向いている。また気泡により緩衝性に優れて、家具のガラス面の保護材などにも使用されているものである。
【0006】
さらに、巻き段ボールもある。これは、巻物状になっている柔らかい段ボールのことであり、通常の段ボールは中央の波状部分を2枚の用紙で挟み込む3層構造になっているが、巻き段ボールは用紙の1枚を省いて2層構造にすることで、丸めることを可能にしているものである。他の緩衝材よりも強度が高く、通常の段ボールよりも薄くて柔らかい点が特長である。そのため、主に通常の段ボール箱には入りきらないような大きな製品の梱包に使用され、 引っ越し時の家具の梱包や、絵画などの梱包に向いており、対象を巻いて包み込んでからカッターなどでカットして使うものである。そのほかにも、エアーピロー型緩衝材や、バラ緩衝材、紙緩衝材、などもある。
【0007】
このように、緩衝材には、沢山の種類が存在し、それぞれに特徴を有するが、段ボール製の緩衝材によれば軽くて丈夫で、値段も安く、印刷したり、自由自在に加工でき、そして役目の終わった段ボールは、新しい段ボールの原料として、リサイクル可能である。このように、緩衝材に適した段ボールであるが、一度折り曲げて成形された緩衝材を繰り返して潰すと弾性特性が衰えてしまうという問題がある。そこで、優れた弾性特性と係る弾性特性の維持を可能とする段ボール製の緩衝材が求められるところである。
【0008】
そこで、従来より、種々の技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「段ボール製緩衝具」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「梱包用ケースの内部に収容して、ケースの搬 送時に内部の梱包製品を保護するようにすることを課題とし、「解決手段として、1枚の段ボール素材によって、相対向する表面部2,4と、前記表面部2,4の対向する左右の側面に設けた伸縮性があって復元力を有する弾性側面部14,14と、一方の表面部から延長して他方の表面部に先端部が止着されているので前記弾性側面部を掛け渡すようにして設けたバンド材9,11とを、少なくとも設けた。」が公開され公知技術となっている。係る特許文献1に記載の発明は、本発明と構成が共通する点が存在する。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、弾性側面部における、弾性力が一つの谷折りにのみに依拠し、本発明のような増強部を有さない。また、かけ渡すように配置されるバンド材という突起物が存在し、スムーズな出し入れの弊害を生ずるものといえる。
【0009】
また、発明の名称を「家具転倒防止器具」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「従来の家具転倒防止具の有する問題点を解消し、家具と天井との間のスペーサ-として高度な家具転倒防止効果を奏するのみならず、設置作業が非常に容易で、家具と天井との間隔に合わせて高さを簡単に調整することができる上、構造がシンプルで安価に製造可能な家具転倒防止器具を提供することにある。」ということを目的とし、解決手段として、「家具の転倒を防止するために家具と家屋の天井との間に設置される家具転倒防止用器具であって、直方体状に形成された外箱と、その外箱の内部に嵌入される中箱と、外箱の天井面の内側に固着されており、中箱の天井面と当接した状態で高さ方向に屈曲可能な高さ調整体と、高さ調整体を所定の屈曲状態で保持するための保持手段とからなることにある。なお、本発明でいう直方体状とは、幅、奥行き、高さの何れか一つが異なる形状に限定されるものではなく、幅、奥行き、高さとも等しい立方体をも含む。」が公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、特許文献1に記載の発明と同様に、高さ調整体において、弾性力が一つの谷折りにのみに依拠し、本発明のような増強部を有さない。また、高さを調整するためのヒモ体の先端が外箱の外に突出している為、スムーズな出し入れの弊害を生ずるものといえる。
【0010】
また、発明の名称を「コーナー緩衝材」とする技術が開示されている(特許文献3参照)。
具体的には、「発泡スチロール製の従来品に代わることができ、しかも廃棄処理の問題が生じることのない梱包用スペーサーを提供する。」ことを目的とし、構成を、「支持板は、正方形状の段ボールを接着したものであり、段ボールの3枚からなる第一の層には、L字状の厚紙製のアングル板とを用意する。アングル板の断面形状とスリットの形状は一致し、アングル板の両端に支持板を嵌合させることができる。段ボール箱内部に、この梱包等スペーサーを配置すれば、段ボールや厚紙から構成されているため、廃棄処理の問題はなくなり、比較的安価に製造できる。」というものが公開され公知技術となっている。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、段ボールや厚紙から構成されているため、廃棄処理の問題はなくなり、比較的安価に製造できるという効果を発揮するものの、異なる材質を用いており、廃棄の際の分別など、煩雑な取り扱いを必要とする点で、課題を残しているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平10-309392号
【文献】特許第3799054号
【文献】特開平4-279472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、梱包する商品を衝撃から守り、その緩衝力が高められ持続することを可能とする段ボール製の緩衝材であって、また、汎用性が高く、低コストで製造でき、更には小スペースで保管可能な段ボール製緩衝材技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、段ボール製の緩衝材であって、一枚の段ボール板を四か所山折りにすることによってできる角筒体のうち対向する一組の表面と一組の側面により構成され、前記側面には前記山折りと平行且つ二つの山折りした間の中心に一つの谷折りをし、該二つの山折りと前記一つの谷折りによってできる形状から発揮される弾性特性を利用するとともに、前記一組の側面の一方には前記段ボール板の両辺を繋ぐ係止部が設けられ、該係止部は一方の表面の一部が突出する係止舌片と該係止舌片を挿入するための係止口を有する前記側面により係止し、前記係止部が前記表面及び前記側面から何ら突出させないこと並びに、前記谷折りされた両端に二つの小さな谷折りと一つの小さな山折りによって形成されるY字状に分岐した増強部を各側面の端部となる四隅に配置することにより、前記弾性特性の強化並びに弾性による保持力維持の向上を可能にする構成を採用する。
【0014】
また、本発明は、前記山折りされる箇所と前記谷折りされる箇所に予め罫線刃による曲げ筋が設けられている構成を採用することもできる。
【0015】
また、本発明は、前記段ボール板が表ライナと、中芯と、裏ライナとから成る素材を用い、前記中芯の断面が波型となる方向に平行して折り曲げられ、前記角筒体が形成される構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る段ボール製の緩衝材によれば、素材に段ボールを用いているため、ダンボールの主原料としてリサイクルでき、その回収率は90%を超えるものであり、また、段ボール古紙以外に雑誌、新聞紙、ボール紙など、様々な古紙が利用でき、二酸化炭素の排出を回避し温暖化の抑制に貢献できるという優れた効果を発揮する。
【0017】
また、本発明に係る段ボール製の緩衝材によれば、梱包される商品を衝撃から守るのみならず、増強部が設けられていることから、その緩衝力が高められ、更には、この効果を長く持続することができるという優れた効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る段ボール製の緩衝材によれば、汎用性が高く、低コストで製造できる
という優れた効果を発揮するものである。
【0019】
また、本発明に係る段ボール製の緩衝材によれば、何らの突起物が存在しないため梱包等において、緩衝材をスムーズに出し入れできるとともに、小スペースで保管が可能であるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る段ボール製の緩衝材の基本構成を説明する基本構成説斜視図である。
図2】本発明に係る段ボール製の緩衝材の基本構成を説明する折りこむ前の板状における基本構成説明展開図である。
図3】本発明に係る増強部と突き出し防止部との関係を示す増強部説明図である。
図4】本発明に係る係止部の構成を説明する構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、段ボール製の緩衝材において、折り曲げられる増強部を四隅に配置したことを最大の特徴とするものである。以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0022】
図1は、本発明に係る段ボール製の緩衝材の基本構成を説明する基本構成説斜視図である。各構成について以下詳細に説明する。
【0023】
段ボール製の緩衝材1は、段ボール製の緩衝材であって、一枚の段ボール板10を四か所山折り20にすることによってできる角筒体11のうち対向する一組の表面30と一組の側面40により構成され、前記側面40には前記山折り20と平行且つ二つの山折り20した間の中心に一つの谷折り50をし、該二つの山折り20と前記一つの谷折り50によってできる形状から発揮される弾性特性を利用するとともに、前記一組の側面の一方には前記段ボール板の両辺を繋ぐ係止部60が設けられ、該係止部60は一方の表面30の一部が突出する係止舌片61と該係止舌片61を挿入するための係止口62を有する前記側面40により係止し、前記係止部60が前記表面30及び前記側面40から何ら突出させないこと並びに、前記谷折り50された両端に二つの小さな谷折り50と一つの小さな山折り20によって形成されるY字状に分岐した増強部70を各側面40の端部となる四隅に配置することにより、前記弾性特性の強化並びに弾性による保持力維持の向上を可能にすることを基本構成とするものである。
【0024】
段ボール板10は、一般的なダンボールの3重構造のであり、ライナと呼ばれるボール紙による表ライナ12と裏ライナ14と、波形に成型された中芯13を糊で貼り合わせて段ボール板10となる。Cライナーは古紙を多く含み、Kライナーはバージンパルプの割合が多く、1平方メートル当たりの古紙や重量(g/m)によって材質が異なる。バージンパルプの割合が多い方が強度は高くなる一方、他方ではコストがかかる。ダンボールの強度は材質、フルートの種類や厚みがカギとなり、更にシングルフルートとダブルフルートで強度は大きく変わることとなるが、係るフルートの種類や厚みに関しては特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜選択すれば良い。なお図1に示した実施例は表面が250mm×195mmで側面が250mm×50mmとなる段ボール板10の例示であり、シングルのAフルート、厚さ5mmのものを用いた。
【0025】
角筒体11は、平板の段ボール板10を四か所平行に山折り20することによってできる角筒状の立体的形状であり、対向する一組の表面30と、該表面30に直行し、対向する一組の側面40と、対向する一組の開口面90により構成されるものである。
【0026】
表ライナ12は、3重構造のライナにおいて、中芯を挟み込む2枚のうちの一枚のボール紙である。ライナにはC5、C6、K5~K7に種類が分けられC5、C6は古紙が多く、K5~K7は古紙に加えバージンパルプを多く使用しているため、その分価格と強度が上がるという特性を持つ。
【0027】
中芯13は、ダンボール板10を横から見たとき、上下の平らな板の表ライナ12と裏ライナ14に挟まれた波形部分のことであり、ダンボール特有の特性を持たせるための重要なパーツである。中芯13を強くした箱の場合では、積上げた時の強度があり、また手で持ったときもしっかりしていて、ライナだけを強化したものよりも、箱全体が頑丈になる。中芯13の高さや単位長さあたりの段数(段繰率)によってフルートという種類でダンボール板はまず種類分けされるが、本発明に係る段ボール製緩衝材1においてはフルートの種類を特に限定せず、緩衝目的物の大きさや重量等から適宜選択すれば良い。なお、何ら中芯13を指定しない場合は通常芯と呼ばれる中芯13が選択され、これは中芯13を真っ直ぐに伸ばした時の単位平米あたりの重さが120gになるものである。段ボールの材質表記に中芯13の種類の記載が無い場合は、係る標準の120gが使われていると判断できるものである。なおまた、標準の中芯13が120gであるのに対して、強度が異なる次の4種類(160g、180g、180g強化芯、200g強化芯)の中芯13を選択することもできる。「強化芯」となっている中芯13は、重さが標準のものに比べて重さが同じでも、中芯13自体を薬剤で硬く強化したものであるため、同じ180gという重さでも、強化芯とそうでないものが存在する。
【0028】
裏ライナ14は、3重構造のライナにおいて、中芯を挟み込む2枚のうちの一枚のボール紙である。表ライナ12と同様にC5、C6、K5~K7に種類が分けられC5、C6は古紙が多く、K5~K7は古紙に加えバージンパルプを多く使用しているため、その分価格と強度が上がるという特性を持つ。
【0029】
なお、表ライナ12、裏ライナ14、及び中芯13とは強度的にバランスがとれることが必用である。例えば、中芯13に高い強度のもの(例えば200g強化芯)にしたから強度的には十分だと判断して、ライナに古紙含有量の多い最低材質もの(例えばC5)を用いると、折り曲げた時にライナが中芯13の硬さに負けて千切れてしまう現象がおきてしまうからである。
【0030】
山折り20は、図2において一定の長さが連続する破線で示した曲げ筋81を、該曲げ筋81が外側から見えるように折ることである。なお、折る対象物の表側から見たときに山折り20であれば、これを裏側から見れば谷折り50であるし、谷折り50も視点を変えれば山折り20である。また、これらの方法でいったん折って元に戻すと、折ったところに沿って線ができる。これを折り目または曲げ筋81という。
【0031】
表面30は、一枚の段ボール板10を四か所山折り20にすることによってできる角筒体11のうち、一対の対向する平板状部分であり、面板として外圧を直接受けたり、反発したりする面である。
【0032】
側面40は、一枚の段ボール板10を四か所山折り20にすることによってできる角筒体11のうち、一対の対向する表面30と直行する部分であり、該側面40には前記二つの山折りと平行且つ中心に一つの谷折りを有し、外圧に対して吸収及び反発する面である。なお、側面40は、一つの谷折りによって、吸収及び反発するのみならず、該谷折りの両端に増強部70を備えて係る吸収及び反発を増強していることを特徴とするものである。
【0033】
谷折り50は、図2において一定の長さと二つの点が連続する二点鎖線で示した曲げ筋を、該曲げ筋が外側から隠れるように折ることである。なお、谷折り50は、視点を変えると山折り20と同様となり、他方、山折り部20も視点を変えれば谷折り50と同様となる。実際には曲げ筋81は曲げられる方向に対応して入れられる線であるが、図2では折曲げられる位置を特定するために同一面上に示したものである。
【0034】
係止部60は、一枚の段ボール板10を四か所山折り20することによって得られる角筒体11を形成するために端辺と端辺を繋ぎとめるための係止構造であり、図4に示すように、端辺の一方に設けられる係止舌片61と該係止舌片61を挿入するための係止口62とから構成されるものである。なお、係る係止部60は、側面に配置されることによって、角筒体11から突出することなく配置される。
【0035】
係止舌片61は、一枚の段ボール板10の一方の端辺から突出した舌片状の係止部材であり、他方の端辺近傍に設けられる係止口62に挿入して段ボール板10の両端辺を係止するものである。
【0036】
係止口62は、一枚の段ボール板10の一方の端辺から突出した舌片状の係止舌片61を挿入させて係止するために他方の端辺近傍に設けられる開口穴である。
【0037】
増強部70は、本発明に係る段ボール製の緩衝材1における技術的な要部といえる部分であり、緩衝材として外力に対する力の吸収と反発力を従来の緩衝材と比べて大きく発揮させるものである。具体的には、図1に示すように側面の長手方向に二つの山折り20と一つの谷折り50によりできる形状から発揮される弾性特性を増強させ、また、その弾性力を長期間維持できるようにするものである。より具体的には、側面を構成する二つの山折り20と一つの谷折り50のうち、該一つの谷折り50の両端に二つの小さな谷折り50と一つの小さな山折り20によって形成されるY字状に分岐した折り返し部を本発明に係る段ボール製の緩衝材1の四隅に配置するものであり、係る折り返し部を複数有することで、その弾性特性を高めるものである。
【0038】
突き出し防止部71は、増強部70が折り畳まれる状態において角筒体11から突出しないように予め突出する部分を削り落としておく領域である。突き出し防止部71は、増強部70の二つの小さな谷折り50と一つの小さな山折り20において、それぞれの角度によっては角筒体11から増強部70が突き出すような状態となり得る(図3(b)参照)。そこで、そのような場合にも突出部の存在を回避するため、予め突出する部分を削り落としておくものである。
【0039】
罫線刃80は、一般的には段ボール箱を制作する際に外枠の抜きに対して折り曲げ部の折り目を入れるための刃物である。但し、刃物といっても実際に刃先があるものではなく、先端は丸まっていたり、角であったりと形状は様々な種類を有し、係る種類の選択は、素材の厚みや材質によって適宜選択すればよい。
【0040】
曲げ筋81は、基本的に流れ方向に折り曲げるため、予め罫線刃80による折り曲げ加工前の折り目を付けるものである。また、曲げ筋81をミシン目として同一長さの切れ目といえる加工などでもよい。
【0041】
開口面90は、角筒体11において、開口する面を維持するものである。側面40が外圧からの圧縮によりつぶれるとその開口面積が変化するものである。
【0042】
図2は、本発明に係る段ボール製の緩衝材1の基本構成を説明する折り込む前の板状における基本構成説明展開図である。図2では、本発明に係る段ボール製の緩衝材1が段ボール板10の状態から折り曲げられる前の板状の状態を示し、図中の実線が外形を示し、波線が山折り20部を示し、二点鎖線が谷折り50部を示している。形状については、略矩形形状であり、係止部60の係止舌片61と係止口62が設けられ、更に必要に応じて突き出し防止部71が除かれる形状となる。なお、左側、上側、及び下側には、段ボール板10を横方向から見たそれぞれ左側面図、平面図、及び底面図が示されている。ここで、底面図、平面図、及び平面図のフルートに示すように、中芯の波を横切る方向、即ち流れ方向に向かって折り曲げられることを示している。
【0043】
図3は、本発明に係る増強部70と突き出し防止部71との関係を示す増強部説明図であり、図3(a)は、増強部70の小さな山折り20部が角筒体11の開口面90と平行であって、増強部70の小さな山折り20部が側面40に対し90度となる角度Aであって増強部70が突き出さない状態を示し、図3(b)は、増強部70の小さな山折り20部が側面40に対し90度を超える角度Bであって、増強部70が突き出してしまう状態を示し、図3(c)は、増強部70の小さな山折り20部が側面40に対し90度に満たない角度Cであって、増強部70が突き出ない状態を示している。また、図3(b)の状態では、小さな一つの山折り20と小さな二つの谷折り50の長さが図3(a)及び図3(c)と比較して長くなることから、弾性力の増強等の効果を高めることができる。しかし、図3(b)では、増強部70の一部が側面40部より突き出してしまうこととなり、梱包等の際に邪魔となる。そこで、予め、係る突き出しが生じないように、当該部分となる突き出し防止部71を取り除いておくことが望ましい。
【0044】
図4は、本発明に係る係止部60の構成を説明する構成説明図であり、図4(a)は、係止部60の構成を説明するA-A′部の構成断面図であり、図4(b)は、係止部60を示す底面図を示している。図4(a)に示すとおり、係止舌片61と係止口62は、係止舌片61が係止口62に挿入された状態において、側面40に折り込まれた谷折り部50により形成されるV字状の窪み内に、係止舌片61及び係止口62が収納され、表面30部及び側面40部から突出しない構成を採用した。従って、梱包において、商品等と干渉する部分は平面的な接触のみとなり、増強部70を有することによる効果を得つつ、問題を生じさせない係止部60を構成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る段ボール製の緩衝材1によれば、梱包における製品の安定した状態を確保することができるとともに、場所を取らず、リサイクルが可能なため、運送業等に資するものであることから産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 段ボール製の緩衝材
10 段ボール板
11 角筒体
12 表ライナ
13 中芯
14 裏ライナ
20 山折り
30 表面
40 側面
50 谷折り
60 係止部
61 係止舌片
62 係止口
70 増強部
71 突き出し防止部
80 罫線刃
81 曲げ筋
90 開口面
A 角度
B 角度
C 角度
【要約】
【課題】本発明は、梱包する商品を衝撃から守り、その緩衝力が高められ持続することを可能とする段ボール製の緩衝材であって、また、汎用性が高く、低コストで製造でき、更には小スペースで保管可能な段ボール製緩衝材技術の提供を課題とするものである。
【解決手段】一枚の段ボール板を四か所山折りにすることによってできる角筒体のうち対向する一組の表面と一組の側面により構成され、二つの山折りと前記一つの谷折りによってできる形状から発揮される弾性特性を利用するとともに、前記一組の側面の一方には前記段ボール板の両辺を繋ぐ係止部が設けられ、前記係止部が前記表面及び前記側面から何ら突出させないこと並びに、前記谷折りされた両端に二つの小さな谷折りと一つの小さな山折りによって形成されるY字状に分岐した増強部を各側面の端部となる四隅に配置する構成を採用した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4