(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20220324BHJP
B22D 41/54 20060101ALI20220324BHJP
C04B 35/101 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B22D11/10 330S
B22D11/10 320D
B22D41/54
C04B35/101
(21)【出願番号】P 2019238524
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】松長 隆行
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-146464(JP,A)
【文献】特開平11-209169(JP,A)
【文献】特開平08-081256(JP,A)
【文献】特開昭63-248767(JP,A)
【文献】特開昭63-101059(JP,A)
【文献】特開2003-245770(JP,A)
【文献】特開2001-146466(JP,A)
【文献】特開2006-056735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 41/54
C04B 35/101
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料と黒鉛原料を主成分として含み、カーボンファイバーを含まず、
前記黒鉛原料は膨張黒鉛を含み(但し、前記黒鉛原料が塊状黒鉛を含む場合を除き、前記塊状黒鉛は薄片状黒鉛が複数個集合して一体化しており、且つ、前記薄片状黒鉛の集合体は耐火性原料粒子が内在しない状態で塊状をなして耐火物中に分布している)、
前記膨張黒鉛は、膨張化処理後に圧縮、粉砕、分級して平均粒径を調整されたものであり、嵩密度が0.05~0.3g/cm
3
であり、平均粒径が70~270μmであり、含有量が13.0~20質量%であり、
前記黒鉛原料は鱗状黒鉛を含み、
前記鱗状黒鉛は、平均粒径が70~270μmであり、含有量が6~19質量%であり、
前記黒鉛原料の合計含有量が26.0~32質量%であることを特徴とする連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法において、
前記耐火原料はアルミナを主成分として含み、シリカを実質的に含まないことを特徴とする連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法において、
前記耐火原料はアルミナとシリカ、又は、ジルコニアを主成分として含むことを特徴とする連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼等の連続鋳造において取鍋からタンディッシュへの溶湯の流下注入やタンディッシュからモールドへの溶湯の流下注入に使用される連続鋳造ノズルに好適な連続鋳造ノズル用耐火物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼等の連続鋳造において取鍋からタンディッシュへの溶湯の流下注入にはロングノズルが使用され、タンディッシュからモールドへの溶湯の流下注入には浸漬ノズルが使用される。これらを連続鋳造ノズルという。連続鋳造ノズルは鋼等の溶湯の流下注入に使用されるため、高い耐食性と高い耐熱衝撃性が要求される。
【0003】
耐食性、耐熱衝撃性を改善するため、膨張黒鉛を含有する連続鋳造ノズル用耐火物が使用されている。特許文献1に開示される膨張黒鉛含有れんがは、膨張黒鉛を圧縮した後、粒径1mm以下に粉砕した膨張黒鉛を含有する。これは、膨張黒鉛が嵩高いため緻密な組織が得られにくく、耐食性が低下するのに対し、耐食性を上げるために緻密に成形すると作業性が低下するという欠点を改善するのが目的である。特許文献2に開示される黒鉛含有耐火物は、粒径50μm以上、アスペクト比0.5以上5未満の膨張黒鉛を含有する。これは、混練時の分散性、成形時の充填性を確保するためには、扁平形状よりも粒形状の方が有利であるという知見に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-081256号公報
【文献】特開2001-146466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される膨張黒鉛含有れんがは、混練時の分散性及び成形時の充填性が十分でないため、作業性や耐食性が十分でない。特許文献2に開示される黒鉛含有耐火物は、膨張黒鉛の球状化プロセスを必要とするとともに、球状化していない膨張黒鉛を使用した場合よりも耐熱衝撃性が低下する。
【0006】
本開示の態様は上記実状を鑑みてなされたものであり、膨張黒鉛が本来持つ耐熱衝撃性向上効果を高いレベルで維持しつつ、膨張黒鉛の球状化プロセスがなくても混練時の分散性及び成形時の充填性を向上させることができ、したがって、作業性や耐食性を向上させることができる連続鋳造ノズル用耐火物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一の態様は、耐火原料と黒鉛原料を主成分として含み、黒鉛原料は膨張黒鉛を含み、膨張黒鉛は、嵩密度が0.05~0.3g/cm3であり、平均粒径が70~270μmであり、含有量が2~20質量%であることを特徴とする連続鋳造ノズル用耐火物に関する。
【0008】
本開示の一の態様の連続鋳造ノズル用耐火物は、嵩密度が0.05~0.3g/cm3であり、平均粒径が70~270μmである膨張黒鉛を、膨張化処理後に圧縮、粉砕、分級、適宜混合して平均粒径を調整することによって製造することができるため、球状化プロセスが不要である。この膨張黒鉛の含有量が2~20質量%であると、膨張黒鉛が本来持つ耐熱衝撃性向上効果を高いレベルで維持しつつ、混練時の分散性及び成形時の充填性を向上させることができる。さらに、緻密に成形することが容易になるため、作業性や耐食性を向上させることができる。
【0009】
(2)本開示の一の態様では、黒鉛原料は鱗状黒鉛を含み、鱗状黒鉛は、平均粒径が70~270μmであり、含有量が5~28質量%であり、黒鉛原料の合計含有量が15~32質量%であることが好ましい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
【0010】
(3)本開示の一の態様では、耐火原料はアルミナを主成分として含み、シリカを実質的に含まないことが好ましい。アルミナは加熱冷却の繰り返しに強い。また、加熱冷却の繰り返しによる割れや揮発(ガス化)による耐火物組織の緩みの原因になるシリカを含まない。したがって、加熱冷却を繰り返し受けるロングノズルに好適である。
【0011】
(4)本開示の一の態様では、耐火原料はアルミナとシリカ、又は、ジルコニアを主成分として含むことが好ましい。これらの耐火原料は浸漬ノズルや加熱冷却が1回限りのロングノズルに好適である。シリカや膨張係数が大きいジルコニアは加熱冷却の繰り返しによる割れ等の原因になりやすいが、これらの連続鋳造ノズルは使用中の温度変化がないため膨張・収縮による割れ等を生じにくく、耐火原料の高い耐熱性と高い耐食性が十分に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0013】
本実施形態の連続鋳造ノズル用耐火物は、耐火原料と黒鉛原料を主成分として含み、黒鉛原料は膨張黒鉛を含み、膨張黒鉛は、嵩密度が0.05~0.3g/cm3であり、平均粒径が70~270μmであり、含有量が2~20質量%である。
【0014】
<嵩密度>
本開示において嵩密度とはゆるみ嵩密度であり、メスシリンダーに測定対象物を静かに入れ、測定対象物の質量をその容積で除した値をいう。
【0015】
<平均粒径の定義>
本開示における平均粒径の定義は以下の通りである。JIS Z8801:2019に規定される公称目開き補助寸法系列のふるいを用いて質量基準の粒度分布を測定する。各粒度区分の代表粒子径(粒径)は、ふるいの、隣接する公称目開き寸法の中央値とする。粒径の小さい順に質量割合を積算した積算質量曲線において、積算質量が50%に相当する粒径(D50)を平均粒径とする。
【0016】
<耐火原料>
耐火原料は、一般に連続鋳造ノズルに使用されるものであればよく、主にアルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア等が使用される。耐火原料は他の成分を少量含有してもよく、例えば、SiCを3質量%程度含有してもよい。
【0017】
本実施形態の耐火原料はアルミナを主成分として含み、シリカを実質的に含まないことが好ましい。アルミナは加熱冷却の繰り返しに強く、また、加熱冷却の繰り返しによる割れや揮発(ガス化)による耐火物組織の緩みの原因になるシリカを含まないため、加熱冷却を繰り返し受けるロングノズルに好適である。なお、「シリカを実質的に含まない」とは、一般には不純物以外にシリカを意図的に添加しないことを意味するが、本願の技術的範囲では、本開示の作用効果に影響を及ぼさない範囲でのシリカの添加を許容する。
【0018】
本実施形態の耐火原料はアルミナとシリカ、又は、ジルコニアを主成分として含むことが好ましい。これらの耐火原料は浸漬ノズルや加熱冷却が1回限りのロングノズルに好適である。シリカや膨張係数が大きいジルコニアは加熱冷却の繰り返しによる割れ等の原因になりやすいが、浸漬ノズルや加熱冷却が1回限りのロングノズルは溶湯の流下注入中に温度変化がないため、膨張・収縮による割れや耐火物組織の緩みが生じにくく、耐火原料の高い耐熱性と耐食性が十分に発揮される。
【0019】
<膨張黒鉛>
本実施形態に使用される膨張黒鉛は次のようにして得ることができる。天然の鱗状黒鉛を硫酸等で酸処理し、膨張性黒鉛を得る。鱗状黒鉛の嵩密度は通常0.3g/cm3超であり、本実施形態では0.40g/cm3である。膨張性黒鉛を800~1000℃に急加熱すると黒鉛層間が急激に膨張し(膨張化処理)、膨張黒鉛を得る。膨張化処理後の膨張黒鉛の嵩密度は通常0.05g/cm3未満であり、本実施形態では0.01g/cm3である。その後膨張黒鉛を圧縮してシート化したものを粉砕する。圧縮、粉砕後の膨張黒鉛の嵩密度は通常0.05g/cm3以上であり、0.05~0.3g/cm3が好ましく、0.07~0.2g/cm3がより好ましく、0.08~0.15g/cm3がさらに好ましい。本実施形態では0.1g/cm3である。圧縮、粉砕後の膨張黒鉛を、JIS Z8801:2019に規定される公称目開き補助寸法系列のふるいを用いて分級、配合して平均粒径を調整する。平均粒径の調整方法はこれに限定されず、他の公知の方法を用いてもよい。したがって、球状化プロセスが不要である。圧縮、粉砕後の膨張黒鉛の平均粒径は70~270μmが好ましく、150~250μmがより好ましく、180~220μmがさらに好ましい。圧縮、粉砕後の膨張黒鉛の含有量は2~20質量%が好ましく、3~18質量%がより好ましく、5~13質量%がさらに好ましい。このような膨張黒鉛を含むことにより、膨張黒鉛が本来持つ耐熱衝撃性向上効果を高いレベルで維持しつつ、混練時の分散性及び成形時の充填性を向上させることができる。さらに、緻密に成形することが容易になるため、作業性や耐食性を向上させることができる。
【0020】
<鱗状黒鉛、黒鉛原料>
本実施形態の黒鉛原料は鱗状黒鉛をさらに含んでもよい。鱗状黒鉛の平均粒径は70~270μmが好ましく、100~230μmがより好ましく、130~200μmがさらに好ましい。鱗状黒鉛の含有量は5~28質量%が好ましく、6~17質量%がより好ましく、7~10質量%がさらに好ましい。膨張黒鉛と鱗状黒鉛を含む黒鉛原料の合計含有量は15~32質量%が好ましく、18~28質量%がより好ましく、19~24質量%がさらに好ましい。これにより、耐食性をさらに向上させることができる。
【0021】
<少量配合物>
本実施形態の連続鋳造ノズル用耐火物には、酸化防止や熱間強度向上等を目的として、炭化物、窒化物、ホウ化物、Al、Si等の金属、Al-Mg等の合金等を少量配合してもよい。
【0022】
<連続鋳造ノズルの製造プロセス>
本実施形態の連続鋳造ノズルの製造プロセスは慣用のものを使用することができる。具体的には、本実施形態の連続鋳造ノズル用耐火物を含む所定の連続鋳造ノズル用耐火物を用いて所定の配材パターンに成形、乾燥、焼成及び加工し、連続鋳造ノズルを得る。連続鋳造ノズル用耐火物は耐火原料と黒鉛原料を主成分として含み、黒鉛原料は膨張黒鉛を含む。連続鋳造ノズルがロングノズルの場合、耐火原料はアルミナを主成分として含み、シリカを実質的に含まない。浸漬ノズルの場合、耐火原料はアルミナとシリカ、又は、ジルコニアを主成分として含む。バインダーとしては、フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチ、タール等の有機質バインダー、又は、珪酸ソーダ、珪酸アルカリ等の無機バインダーを使用することができる。成形には冷間静水等方圧プレス(CIP成形)を利用することができる。焼成雰囲気は特に限定されず、大気雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気等から耐火物の材質に合わせて選択することができる。焼成温度は700~1200℃が好ましく、800~1100℃がより好ましい。
【0023】
以上の本実施形態の連続鋳造ノズル用耐火物は、膨張黒鉛が本来持つ耐熱衝撃性向上効果を高いレベルで維持しつつ、膨張黒鉛の球状化プロセスがなくても混練時の分散性及び成形時の充填性を向上させることができ、したがって、作業性や耐食性を向上させることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本開示の実施例について説明する。
【0025】
[実験方法]
膨張化処理により嵩密度0.01g/cm
3の膨張黒鉛を得た後、圧縮してシート化、粉砕し、嵩密度0.10g/cm
3の膨張黒鉛を得た。JIS Z8801:2019に規定される公称目開き補助寸法系列のふるいを用いて分級、配合して平均粒径が30~300μmの膨張黒鉛を得た。この膨張黒鉛を用いて、表1に示す配合割合(単位:質量%)の連続鋳造ノズル用耐火物を調製した。なお、表中の実n、比n(n=1,2・・)は、実施例n、比較例nを意味する。
【表1】
【0026】
耐火原料は主にアルミナを使用し、SiCを3.0質量%添加した。実施例1~3、比較例1~2は、膨張黒鉛の含有量を13.0質量%で固定し、平均粒径を30~300μmの間で変化させた。実施例4~6、比較例3~4は、膨張黒鉛の平均粒径を200μmで固定し、含有量を0~25.0質量%の間で変化させた。実施例7~9は、実施例2をベースとして、膨張黒鉛の平均粒径を200μm、含有量を13.0質量%で固定し、嵩密度0.40g/cm3、平均粒径150μmの鱗状黒鉛の含有量を7.0~15.0質量%の間で変化させ、黒鉛原料の合計含有量を20.0~26.0質量%の間で変化させた。
【0027】
得られた連続鋳造ノズル用耐火物について、以下の評価を行った。
【0028】
<混練性(分散性)>
得られた連続鋳造ノズル用耐火物に液体バインダーを添加、混練し、以下の基準により混練性(分散性)を評価した。
優(◎):練土全体が液体バインダーでよく濡れており、手で握ったときに形になる。
良(〇):練土全体が液体バインダーで濡れており、手で握ったときに5割以上形になるが、優(◎)よりは形になりにくい。
可(△):練土全体が液体バインダーであまり濡れておらず、手で握っても一部しか形にならない。
不可(×):練土全体が液体バインダーで濡れておらず、手で握っても形にならない。
【0029】
<耐食性>
得られた連続鋳造ノズル用耐火物に液体バインダーを添加、混練、ゴム枠に充填し、圧力1.2t/cm2でCIP成形、ゴム枠を取り外して成形体を得た。成形体を250℃で3時間保持して乾燥、切断、さや中にコークスブリーズとともに充填、1000℃で焼成して試験片を得た。試験片のサイズは25mm×25mm×200mmとし、溶銑浸漬法により耐食性を評価した。試験温度は1550℃、試験時間は合計1時間とした。侵食剤としてTDフラックス(質量比がSiO2:Al2O3:CaO=20:20:60)を1回に300g投入し、15分ごとに新しいものと入れ替えた。試験後に試験片を切断して試験片の厚み(溶損厚み)を測定し、膨張黒鉛を含まない比較例3の溶損厚みを100とする耐食性指数を下式により算出した。
耐食性指数=200-(各試験片の溶損厚み÷比較例3の溶損厚み×100)
耐食性指数が大きいほど溶損量が少なく、耐食性に優れることを意味し、以下の基準により耐食性を評価した。
優(◎):100以上
良(〇):96~99
可(△):92~95
不可(×):91以下
【0030】
<耐熱衝撃性>
耐食性評価と同じプロセスで試験片を得た。試験片のサイズは20mm×20mm×120mmとし、打撃共振法(J.W.Lemmens社製GrindoSonic MK5)により弾性率を求めた。また、JIS R2213(耐火れんがの曲げ強さの試験方法)により曲げ強度を測定し、耐熱衝撃性指数を下式により算出した。
耐熱衝撃性指数=(各試験片の曲げ強度÷弾性率)÷(比較例3の曲げ強度÷弾性率)×100
耐熱衝撃性指数が大きいほど耐熱衝撃性が高いことを意味し、以下の基準により耐熱衝撃性を評価した。
優(◎):151以上
良(〇):126~150
可(△):101~125
不可(×):100以下
【0031】
<総合評価>
上記評価において、優(◎)を3点、良(〇)を2点、可(△)を1点として合計点数を算出し、以下の基準により総合評価を行った。
優(◎):合計点数が7点以上
良(〇):合計点数が5~6点
可(△):合計点数が3~4点
不可(×):合計点数が2点以下又は各評価に1つでも不可(×)があるもの
【0032】
【0033】
<膨張黒鉛の平均粒径>
平均粒径が300μmの膨張黒鉛を含む比較例1は混練性が良(○)であるものの、耐熱衝撃性が不可(×)であり、平均粒径が30μmの膨張黒鉛を含む比較例2は混練性が不可(×)のため成形もできず、耐食性、耐熱衝撃性を評価することができなかった。これに対し、実施例1~3は膨張黒鉛の添加量を13質量%で固定し、平均粒径をそれぞれ250μm、200μm、100μmとしたものであり、いずれも総合評価は良(〇)であり、膨張黒鉛の平均粒径が大きい比較例1や平均粒径が小さい比較例2より優れる結果となった。また、混練性は、実施例1、2が良(○)、実施例3が可(△)と、膨張黒鉛の平均粒径が小さいほど低下傾向を示した。耐食性は、実施例1~3はいずれも可(△)であった。耐熱衝撃性は、実施例1が良(○)、実施例2、3が優(◎)と、膨張黒鉛の平均粒径が小さいほど向上傾向を示した。したがって、圧縮、粉砕後の膨張黒鉛の平均粒径は70~270μmが好ましく、150~250μmがより好ましく、180~220μmがさらに好ましい。
【0034】
<膨張黒鉛の含有量>
膨張黒鉛を含まず、平均粒径が150μmの鱗状黒鉛を30質量%含む比較例3は混練性、耐食性が優(◎)であるものの、耐熱衝撃性が不可(×)であり、平均粒径が200μmの膨張黒鉛を25質量%含み、平均粒径が150μmの鱗状黒鉛を5質量%含む比較例4は耐熱衝撃性が優(◎)であるものの、耐食性が不可(×)であった。これに対し、実施例4~6は膨張黒鉛の平均粒径を200μmで固定し、含有量を3質量%、8質量%、18質量%としたものであり、いずれも総合評価は良(○)であり、膨張黒鉛を含まない比較例3や膨張黒鉛が多い比較例4より優れる結果となった。また、混練性は実施例4が優(◎)、実施例5が良(○)、実施例6が可(△)、耐食性は実施例4が良(○)、実施例5、6が可(△)と、膨張黒鉛含有量が多いほど低下傾向を示した。耐熱衝撃性は実施例4が可(△)、実施例5が良(○)、実施例6が優(◎)と、膨張黒鉛含有量が多いほど向上傾向を示した。したがって、圧縮、粉砕後の膨張黒鉛の含有量は2~20質量%が好ましく、3~18質量%がより好ましく、5~13質量%がさらに好ましい。
【0035】
<鱗状黒鉛と黒鉛原料の含有量>
実施例7~9は実施例2をベースとして、鱗状黒鉛の含有量を減らしたものである。混練性と耐熱衝撃性はほとんど変化はなかった。耐食性は実施例7、8が優(◎)、実施例9が良(○)と、鱗状黒鉛の含有量が少ないほど向上傾向を示した。膨張黒鉛による耐熱衝撃性を高いレベルで維持しつつ、耐食性がさらに優れる結果となった。したがって、鱗状黒鉛の含有量は5~28質量%が好ましく、6~17質量%がより好ましく、7~10質量%がさらに好ましい。膨張黒鉛と鱗状黒鉛を含む黒鉛原料の合計含有量は15~32質量%が好ましく、18~28質量%がより好ましく、19~24質量%がさらに好ましい。また、鱗状黒鉛の平均粒径は70~270μmが好ましく、100~230μmがより好ましく、130~200μmがさらに好ましい。
【0036】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えられることができる。