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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ショットキーバリアダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20220324BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H01L29/86 301E
H01L29/48 E
H01L29/48 D
H01L29/48 F
H01L29/44 Y
H01L29/44 S
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017206978
(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公開番号】P2019079984
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 潤
(72)【発明者】
【氏名】平林 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013554(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0013554(US,A1)
【文献】佐々木公平ほか,トレンチMOS構造を設けたGa2O3ショットキーバリアダイオード,第64回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,日本応用物理学会,2017年03月01日,15p-315-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/47
H01L 29/41
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウムからなる半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、
前記ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、
前記半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、を備え、
前記ドリフト層は、平面視で前記アノード電極と重なる位置に設けられた複数のトレンチを有し、
前記複数のトレンチのうち、端部に位置するトレンチの幅が選択的に拡大されており、
前記端部に位置するトレンチの底部が湾曲しており、
前記端部に位置するトレンチの底部の曲率半径は、前記複数のトレンチのうち他のトレンチの底部の曲率半径よりも大きいことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
前記複数のトレンチの内壁が絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。
【請求項3】
前記ドリフト層上に設けられた絶縁層をさらに備え、
前記アノード電極は、前記絶縁層上に形成されるとともに、前記絶縁層に形成された開口部を介して前記ドリフト層とショットキー接触することを特徴とする請求項1又は2に記載のショットキーバリアダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショットキーバリアダイオードに関し、特に、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオードは、金属と半導体の接合によって生じるショットキー障壁を利用した整流素子であり、PN接合を有する通常のダイオードに比べて順方向電圧が低く、且つ、スイッチング速度が速いという特徴を有している。このため、ショットキーバリアダイオードはスイッチング素子の還流ダイオードなどとして利用されることがある。
【0003】
ショットキーバリアダイオードをスイッチング素子の還流ダイオードなどとして用いる場合、十分な逆方向耐圧を確保する必要があることから、シリコン(Si)の代わりに、よりバンドギャップの大きい炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)などが用いられることがある。中でも、酸化ガリウムは、バンドギャップが4.8~4.9eVと非常に大きく、絶縁破壊電界も約8MV/cmと大きいことから、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードは、スイッチング素子の還流ダイオードとして非常に有望である。酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードの例は、特許文献1や非特許文献1に記載されている。
【0004】
非特許文献1に記載されたショットキーバリアダイオードは、平面視でアノード電極と重なる位置に複数のトレンチを設け、トレンチの内壁を絶縁膜で覆った構造を有している。かかる構造により、逆方向電圧が印加されるとトレンチ間に位置するメサ領域が空乏層となるため、ドリフト層のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流を大幅に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-045969号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】トレンチMOS構造を設けたGa2O3ショットキーバリアダイオード 2017年第64回応用物理学会春季学術講演会[15p-315-13]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に記載されたショットキーバリアダイオードは、アノード電極の端部に電界が集中するため、高電圧を印加するとこの部分において絶縁破壊を起こしてしまう。例えば、非特許文献1に記載されたショットキーバリアダイオードにおいては、端部に位置するトレンチのエッジ部分に電界が集中する。
【0008】
したがって、本発明は、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードであって、電界集中による絶縁破壊が生じにくいショットキーバリアダイオードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウムからなる半導体基板と、半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、半導体基板とオーミック接触するカソード電極とを備え、ドリフト層は、平面視でアノード電極と重なる位置に設けられた複数のトレンチを有し、複数のトレンチのうち、端部に位置するトレンチの幅が選択的に拡大されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、端部に位置するトレンチの幅が拡大されていることから、当該トレンチの底部の曲率半径が拡大するか、或いは、当該トレンチを断面で見た場合に底部によって構成されるエッジ部分が2つに分離する。これにより、端部に位置するトレンチの底部に印加される電界が緩和されることから、絶縁破壊が生じにくくなる。
【0011】
本発明において、複数のトレンチの内壁は絶縁膜で覆われていても構わない。これによれば、複数のトレンチの内部をアノード電極で埋め込んだ構造を得ることができる。
【0012】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、ドリフト層上に設けられた絶縁層をさらに備え、アノード電極は、絶縁層上に形成されるとともに、絶縁層に形成された開口部を介してドリフト層とショットキー接触するものであっても構わない。これによれば、いわゆるフィールドプレート構造が得られることから、端部に位置するトレンチの底部に印加される電界がより緩和される。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、電界集中による絶縁破壊が生じにくい酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード100の構成を示す模式的な断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード200の構成を示す模式的な断面図である。
図3図3は、比較例1のシミュレーションモデルの構造を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、比較例1のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。
図5図5は、実施例1のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。
図6図6は、比較例2のシミュレーションモデルの構造を説明するための模式的な断面図である。
図7図7は、比較例2のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。
図8図8は、実施例2のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。
図9図9は、実施例3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード100の構成を示す模式的な断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード100は、いずれも酸化ガリウム(β-Ga)からなる半導体基板20及びドリフト層30を備える。半導体基板20及びドリフト層30には、n型ドーパントとしてシリコン(Si)又はスズ(Sn)が導入されている。ドーパントの濃度は、ドリフト層30よりも半導体基板20の方が高く、これにより半導体基板20はn層、ドリフト層30はn層として機能する。
【0018】
半導体基板20は、融液成長法などを用いて形成されたバルク結晶を切断加工したものであり、その厚みは250μm程度である。半導体基板20の平面サイズについては特に限定されないが、一般的に素子に流す電流量に応じて選択することになり、順方向の最大電流量が20A程度であれば、平面視で2.4mm×2.4mm程度とすればよい。
【0019】
半導体基板20は、実装時において上面側に位置する上面21と、上面21の反対側であって、実装時において下面側に位置する裏面22を有する。上面21の全面にはドリフト層30が形成されている。ドリフト層30は、半導体基板20の上面21に反応性スパッタリング、PLD法、MBE法、MOCVD法、HVPE法などを用いて酸化ガリウムをエピタキシャル成長させた薄膜である。ドリフト層30の膜厚については特に限定されないが、一般的に素子の逆方向耐電圧に応じて選択することになり、600V程度の耐圧を確保するためには、例えば7μm程度とすればよい。
【0020】
ドリフト層30の上面31には、ドリフト層30とショットキー接触するアノード電極40が形成されている。アノード電極40は、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)等の金属からなる。アノード電極40は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Pt/Au、Pt/Al、Pd/Au、Pd/Al、Pt/Ti/AuまたはPd/Ti/Auであっても構わない。一方、半導体基板20の裏面22には、半導体基板20とオーミック接触するカソード電極50が設けられる。カソード電極50は、例えばチタン(Ti)等の金属からなる。カソード電極50は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/AuまたはTi/Alであっても構わない。
【0021】
本実施形態においては、ドリフト層30には複数のトレンチ60が設けられている。トレンチ60は、いずれも平面視でアノード電極40と重なる位置に設けられており、その内壁はHfOなどからなる絶縁膜61で覆われている。トレンチ60の内部は、アノード電極40と同じ材料で埋め込まれている。本実施形態においては、ドリフト層30に複数のトレンチ60が設けられているため、アノード電極40の材料としては、モリブデン(Mo)や銅(Cu)などの仕事関数が低い材料であっても構わない。また、ドリフト層30に複数のトレンチ60が設けられていることから、ドリフト層30のドーパント濃度を5×1016cm-3程度に高めることができる。
【0022】
ドリフト層30のうちトレンチ60間に位置する部分はメサ領域Mを構成する。メサ領域Mは、アノード電極40とカソード電極50との間に逆方向電圧が印加されると空乏層となるため、ドリフト層30のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流が大幅に抑制される。
【0023】
このような構造を有するショットキーバリアダイオードにおいては、端部に位置するトレンチ60aの底部に電界が集中し、この部分が絶縁破壊しやすくなる。この点を考慮し、本実施形態によるショットキーバリアダイオード100においては、複数のトレンチ60のうち、端部に位置するトレンチ60aのトレンチ幅を選択的に拡大している。つまり、端部以外のトレンチ60の幅をW1とし、端部のトレンチ60aの幅をW2とした場合、
W1<W2
に設定されている。
【0024】
ここで、端部以外のトレンチ60の幅W1や、メサ領域Mの幅W3については、ショットキーバリアダイオード100に求められる電気特性に基づいて決定する必要があるため、自由に変更することは困難である。これに対し、端部に位置するトレンチ60aの幅W2については、ショットキーバリアダイオード100の電気特性にほとんど影響しないため、比較的自由に変更することができる。
【0025】
そして、本実施形態によるショットキーバリアダイオード100においては、端部に位置するトレンチ60aのトレンチ幅を選択的に拡大していることから、全てのトレンチ60を同じ幅(=W1)に設計した場合と比べ、端部に位置するトレンチ60aに集中する電界を緩和される。これは、端部に位置するトレンチ60aの幅W2を拡大すると、底部の曲率半径が拡大するか、或いは、トレンチ60aを断面で見た場合に底部によって構成されるエッジ部分が2つに分離するからである。その結果、端部に位置するトレンチ60aの底部近傍における絶縁破壊が生じにくくなる。
【0026】
このように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード100は、端部に位置するトレンチ60aのトレンチ幅が選択的に拡大されていることから、電界集中による絶縁破壊を防止することが可能となる。また、製造時においては、端部に位置するトレンチ60aを含む全てのトレンチ60を同時に形成することができることから、製造工程が増えることもない。
【0027】
また、本実施形態においては、トレンチ60の内壁を絶縁膜61で覆うとともに、トレンチ60の内部をアノード電極40と同じ材料で埋め込んでいるが、絶縁膜61を用いることなく、逆導電型(本実施形態ではp型)の半導体材料で埋め込んでも構わない。
【0028】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード200の構成を示す模式的な断面図である。
【0029】
図2に示すように、第2の実施形態によるショットキーバリアダイオード200は、ドリフト層30上に絶縁層70が設けられている点において、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード100と相違する。その他の構成は、第1の実施形態によるショットキーバリアダイオード100と基本的に同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
絶縁層70は、酸化シリコンなどの絶縁材料からなり、ドリフト層30の上面31を覆うように形成されているともに、トレンチ60を露出させる開口部71を有している。そして、アノード電極40は、一部が絶縁層70上に形成されるとともに、残りの部分が開口部71を介してドリフト層30とショットキー接触している。これにより、いわゆるフィールドプレート構造が得られることから、端部に位置するトレンチ60aの底部に印加される電界をより緩和することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例1】
【0032】
図1に示したショットキーバリアダイオード100と同じ構造を有する実施例1のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。半導体基板20のドーパント濃度については1×1018cm-3とし、ドリフト層30のドーパント濃度としては5×1016cm-3とした。ドリフト層30の厚みは7μmとした。また、トレンチ60の深さD及び幅W1はそれぞれ3μm及び1μmとし、メサ領域Mのメサ幅W3は2μmとし、トレンチ60の内壁に形成される絶縁膜61は、厚さ50nmのHfO膜とした。そして、端部に位置するトレンチ60aの幅W2については、10μmとした。アノード電極40の材料は金(Au)とし、カソード電極50の材料はTi/Auの積層膜とした。
【0033】
また、比較のため、図3に示すように、端部のトレンチ60aの幅を他のトレンチ60の幅W1と一致させた他は、実施例1と同じ構造を有する比較例1のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。
【0034】
図4は、比較例1のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。(a)と(b)の横方向位置は、互いに対応している。図4に示すように、比較例1のシミュレーションモデルにおいては、端部に位置するトレンチ60aの底部に電界が集中し、その最大値は8.4MV/cmであった。よって、酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cmを超えているため、この素子構造の場合、トレンチ60aの底部で絶縁破壊が発生してしまい、要求耐圧は得られない。
【0035】
図5は、実施例1のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。(a)と(b)の横方向位置は、互いに対応している。図5に示すように、実施例1のシミュレーションモデルにおいては、端部に位置するトレンチ60aの幅が拡大された結果、電界が集中するエッジ部分が2つに分離し、電界が分散された。これにより、電界の最大値は酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度以下の7.5MV/cmに緩和された。よって、この構造を用いることで、要求耐圧を満たす酸化ガリウムショットキーバリアダイオードを作製することができる。
【0036】
一方、端部以外のトレンチ60の底部においてもある程度電界が集中しているが、実施例1と比較例1との間に差は認められず、その最大値はいずれも6.8MV/cmであった。
【実施例2】
【0037】
図2に示したショットキーバリアダイオード200と同じ構造を有する実施例2のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。絶縁層70としては厚さ300nmの酸化シリコンを用い、フィールドプレート長を10μmとした。その他の点は、実施例1のシミュレーションモデルと同じ条件である。
【0038】
また、比較のため、図6に示すように、端部のトレンチ60aの幅を他のトレンチ60の幅W1と一致させた他は、実施例2と同じ構造を有する比較例2のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。
【0039】
図7は、比較例2のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。(a)と(b)の横方向位置は、互いに対応している。図7に示すように、比較例2のシミュレーションモデルにおいては、端部に位置するトレンチ60aの底部に電界が集中し、その最大値は8.1MV/cmであった。よって、この素子構造の場合、トレンチ60aの底部で絶縁破壊が発生してしまい、要求耐圧は得られない。
【0040】
図8は、実施例2のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は断面における電界強度を示す図、(b)は横方向位置と最大電界強度の関係を示すグラフである。(a)と(b)の横方向位置は、互いに対応している。図8に示すように、実施例2のシミュレーションモデルにおいては、端部に位置するトレンチ60aの幅が拡大された結果、電界が集中するエッジ部分が2つに分離し、電界が分散された。これにより、電界の最大値は酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度以下の6.9MV/cmに緩和された。よって、この構造を用いることで、要求耐圧を満たす酸化ガリウムショットキーバリアダイオードを作製することができる。
【0041】
一方、端部以外のトレンチ60の底部においてもある程度電界が集中しているが、実施例2と比較例2との間に差は認められず、その最大値はいずれも6.8MV/cmであった。
【実施例3】
【0042】
実施例1のシミュレーションモデルにおいて、端部に位置するトレンチ60aの幅W2を1μmから20μmまで変化させた実施例3のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。結果を図9に示す。
【0043】
図9に示すように、端部に位置するトレンチ60aの幅W2が他のトレンチ60の幅W1である1μmを超えると、つまり、W1<W2である場合、電界の最大値が酸化ガリウムの絶縁破壊電界強度である8MV/cm以下になることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
20 半導体基板
21 半導体基板の上面
22 半導体基板の裏面
30 ドリフト層
31 ドリフト層の上面
40 アノード電極
50 カソード電極
60 トレンチ
60a 端部に位置するトレンチ
61 絶縁膜
70 絶縁層
71 開口部
100,200 ショットキーバリアダイオード
M メサ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9