IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンワ測定株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社アルティアの特許一覧

<>
  • 特許-位置決め装置 図1
  • 特許-位置決め装置 図2
  • 特許-位置決め装置 図3
  • 特許-位置決め装置 図4
  • 特許-位置決め装置 図5
  • 特許-位置決め装置 図6
  • 特許-位置決め装置 図7
  • 特許-位置決め装置 図8
  • 特許-位置決め装置 図9
  • 特許-位置決め装置 図10
  • 特許-位置決め装置 図11
  • 特許-位置決め装置 図12
  • 特許-位置決め装置 図13
  • 特許-位置決め装置 図14
  • 特許-位置決め装置 図15
  • 特許-位置決め装置 図16
  • 特許-位置決め装置 図17
  • 特許-位置決め装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20220324BHJP
   G01C 15/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G01C15/00 103C
G01C15/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019092260
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020187028
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591073050
【氏名又は名称】シンワ測定株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(73)【特許権者】
【識別番号】000226600
【氏名又は名称】株式会社アルティア
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 晶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健二
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194536(JP,A)
【文献】特開2007-10376(JP,A)
【文献】特開平11-101643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
G01C 5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー受部と、レーザー墨出し器と、レーザー計測器と、前記レーザー墨出し器を設置する墨出し器設置部と、前記レーザー計測器を設置する計測器設置部と、を備え、
前記レーザー受部は、後側に傾斜して設けられ、
前記レーザー受部の前面部に基準線が設けられ、
前記レーザー墨出し器は、前記墨出し器設置部に設置された状態で、直交する縦ライン及び横ラインのレーザー光線を床部に照射し、
前記縦ラインは、前記基準線と上下方向において重なり、
前記横ラインは、前記計測器設置部の後端面部と上下方向において重なり、
前記レーザー計測器は、前記計測器設置部に設置された状態で、前記後端面部から被計測物までの距離を計測することを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
矩形状の枠体と、前記枠体の四隅から下方に向かって延設された脚部と、を備え、
前記レーザー受部、前記レーザー墨出し器、前記レーザー計測器、前記墨出し器設置部及び前記計測器設置部が前記枠体に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
第1の基準点と第2の基準点の位置を検知する垂直位置出し器を備え、
前記垂直位置出し器がレーザー照射器と、前記レーザー照射器の照射部から垂直に下した位置を指し示す位置指示部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記被計測物として機能する墨出し板を備え、
前記墨出し板に前記第1の基準点と前記第2の基準点とを結ぶ中心線を決定する際に標的とする位置合わせ線が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された検知デバイスの検査等をする際の検査用基準具を配置する位置の位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、周囲の安全確認、衝突防止装置、緊急自動ブレーキや踏み間違い防止装置など先進安全技術に使われるカメラやミリ波レーダーといった検知デバイスが搭載されている。これらの検知デバイスが適切に機能しない場合には、重大な事故を引き起こす原因となってしまう虞がある。
【0003】
そのため、検知デバイスが適切に機能しているか否かの検査やエーミング作業が行われている。この検査やエーミング作業を行う際は、車両から一定の距離離れた所定の位置にターゲットパターン等の検査用基準具を配置し、車両に搭載した検知デバイスが正常に検査用基準具を検知するか否かを検査する。また、検知デバイスの検知誤差等に応じ、検知デバイスの初期化や微調整を行う。
【0004】
検査やエーミング作業時の検査用基準具を配置する位置は、搭載する検知デバイスの種類や車種毎に異なる。また、車両1台に対して複数の検査用基準具を配置する必要があるため、車両や検知デバイスに対応した検査用基準具を配置する位置の位置決め作業が必要となる。
【0005】
この検査用基準具を配置する位置の位置決め装置として、車両の中心線を表示する特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された車両中心線表示装置は、車両の前後のエンブレムの左右方向の中心から下げた下げ振りの重りの下端の一方に車両中心線表示装置を配置し、車両中心線表示装置の線状レーザーポインター部から照射したレーザー光を他方の下げ振りの重りの下端に一致させ、車両の中心線を表示するものである。
【0006】
また、特許文献1の位置決め装置は、車両中心線を表示するレーザー光の上に載置されると共に、距離センサーにより、位置決め装置と車両との距離を測定し、該距離が所望となる位置となるように設置される。そして、位置決め装置に設けた鏡部に、線状レーザーポインター部からのレーザー光が照射されるように配置し、該鏡部で反射したレーザー光が、下げ振りの糸又は車両中心線表示装置に設けた基準線に一致するように、位置決め装置を水平面に対して回動(傾動)させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-194536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、下げ振りの糸をエンブレムの左右方向の中心に貼り付ける必要があり、また、下げ振りの重りの下端に線上レーザーポインター部からのレーザー光が照射されるように位置決め装置を水平面に対して回動(傾動)させる際に、下げ振りが振り子運動を行わないように静止させる必要があった。そのため、下げ振りを使用することで、作業が煩雑となってしまうという問題があった。
【0009】
また、位置決め装置を水平面に対して回動(傾動)させる作業者は、所定の距離離れた下げ振りの糸又は車両中心線表示装置に設けた基準線にレーザー光を一致させる必要があり、位置決め装置と下げ振りの糸又車両中心線表示装置との距離が遠くなるほどレーザー光を一致させるのが困難になるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は以上の問題点を解決し、検査用基準具の配置位置の位置決め作業を容易とする位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る位置決め装置は、レーザー受部と、レーザー墨出し器と、レーザー計測器と、前記レーザー墨出し器を設置する墨出し器設置部と、前記レーザー計測器を設置する計測器設置部と、を備え、前記レーザー受部は、後側に傾斜して設けられ、前記レーザー受部の前面部に基準線が設けられ、前記レーザー墨出し器は、前記墨出し器設置部に設置された状態で、直交する縦ライン及び横ラインのレーザー光線を床部に照射し、前記縦ラインは、前記基準線と上下方向において重なり、前記横ラインは、前記計測器設置部の後端面部と上下方向において重なり、前記レーザー計測器は、前記計測器設置部に設置された状態で、前記後端面部から被計測物までの距離を計測することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に位置決め装置は、矩形状の枠体と、前記枠体の四隅から下方に向かって延設された脚部と、を備え、前記レーザー受部、前記レーザー墨出し器、前記レーザー計測器、前記墨出し器設置部及び前記計測器設置部が前記枠体に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る位置決め装置は、第1の基準点と第2の基準点の位置を検知する垂直位置出し器を備え、前記垂直位置出し器がレーザー照射器と、前記レーザー照射器の照射部から垂直に下した位置を指し示す位置指示部を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る位置決め装置は、前記被計測物として機能する墨出し板を備え、
前記墨出し板に前記第1の基準点と前記第2の基準点とを結ぶ中心線を決定する際に標的とする位置合わせ線が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、検査用基準具の配置位置の位置決め作業を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の位置決め装置(垂直位置出し器を除く。)の配置を示す略図である。
図2】各種検査用基準具を示す図である。
図3】実施例1のレーザー墨出し器の平面側斜視図である。
図4】実施例1のレーザー墨出し器の底面側斜視図である。
図5】実施例1の装置本体の前側斜視図である。
図6】実施例1のレーザー距離計を設置した装置本体の正面図である。
図7】実施例1の装置本体の右側面図である。
図8】実施例1の装置本体の背面図である。
図9】実施例1の装置本体の底面図である。
図10】実施例1の装置本体の後側斜視図である。
図11】実施例1のレーザー墨出し器とレーザー距離計を設置した装置本体の平面図である。
図12】実施例1の垂直位置出し器の斜視図である。
図13】実施例1の垂直位置出し器の正面図である。
図14】実施例1の垂直位置出し器を車両に当接させた状態を示す斜視図である。
図15】実施例1の墨出し板の正面側斜視図である。
図16】実施例1の墨出し板の背面側斜視図である。
図17】実施例1の各印を付す位置を示す略図である。
図18】(A)縦ラインと基準線がずれた状態を示す装置本体の平面図である。(B)縦ラインと基準線が一致した状態を示す装置本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、添付の図1図18を参照して説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例の位置決め装置1を示している。位置決め装置1は、車両2に搭載されたカメラやミリ波レーダーといった検知デバイスの検査やエーミング作業時に、検査用基準具3を配置する位置の位置決めに使用される。位置決め装置1は、レーザー墨出し器4と、装置本体5と、垂直位置出し器6(図12図14参照)と、墨出し板7と、を備えている。
【0019】
検査用基準具3は、図2に示すような白黒模様等が表示された表示板8であって、床部9に直接載置するもの(図2の(A)~(E))や、支柱10に取り付け、車両2に対向するように載置するもの図2の(F)が例示されるが、その他、各種検知デバイスの検査やエーミング作業に適したものが適宜選択されて使用される。
【0020】
図3に示すように、レーザー墨出し器4は、縦ライン照射部11と横ライン照射部12を有しており、縦ライン照射部11からレーザー光線による縦ライン13が360度に照射され、横ライン照射部12からレーザー光線による横ライン14が360度に照射される。そのため、縦ライン13と横ライン14が直交する天墨ライン(図示せず)を天井部(図示せず)に照射し、地墨ライン15を床部9に照射することができる。
【0021】
図4に示すように、レーザー墨出し器4の底部16には、凹状の取付受部17が形成されており、後述する台座49の取付突起51を挿入することができる。
【0022】
主に図5図11に示すように、装置本体5は、前枠部21、後枠部22、左枠部23、右枠部24を有する矩形状の枠体25と、枠体25の四隅から下方に向かって延設された4本の脚部26を有する。4本の脚部26は同一の長さに形成されており、枠体25は装置本体5が載置される床部9に対して平行となっている。なお、床部9は、検査やエーミング作業を行うため水平となっていることから、床部9に載置された装置本体5の枠体25も水平となる。
【0023】
枠体25に囲まれた内側空間部分には、左支持体27と右支持体28が配設されており、左支持体27は前枠部21と後枠部22に架設され、右支持体28は、前枠部21に取り付けられ後枠部22側に向かって延設されている。本実施例の右支持体28は、左支持体27も約半分の長さに形成されている。
【0024】
図7に示すように、左支持体27と右支持体28の前枠部21側には、レーザー光受け板29を固定する固定部材30が取り付けられている。固定部材30は、略倒A字状に形成され、レーザー光受け板29を傾斜させて取り付けることができるようになっている。
【0025】
レーザー受部であるレーザー光受け板29は、レーザー光受け板29の上側が後側、レーザー光受け板29の下側が前側となるように、後側に傾斜した状態で固定部材30の上面部に固定されている。また、図6に示すように、レーザー光受け板29の前面部31には、レーザー光受け板29の幅方向(左右方向)の中心部に基準線32が設けられている。基準線32は、レーザー光受け板29の上下方向の全長に渡って設けられている。この基準線32は、レーザー墨出し器4から照射されるレーザー光線(縦ライン13)を位置合わせできるものであればよく、例えば、前面部31に印刷したものや、油性インク等で記載したものや、溝状に凹設したものや、紐状の部材を貼り付けたものであってもよい。
【0026】
本実施例のレーザー光受け板29の傾斜角度θ(図7参照)は約45度に設定されているが、レーザー光受け板29にレーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を照射した際に、基準線32とレーザー光線(縦ライン13)との一致やずれを視認可能であれば傾斜角度θは所望の角度とすることができる。また、レーザー光受け板29の傾斜角度θは固定部材30により段階的に変更可能な構成としてもよい。レーザー光受け板29が配置される高さ方向の位置は、後述するように、印B付近の床部9に載置されたレーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を車両2と床部9との間の空間を通過して照射可能な位置に設定されている。
【0027】
図10に示すように、左枠部23と左支持体27との間には計測器設置部である左収容部33が設けられ、右枠部24と右支持体28との間には計測器設置部である右収容部34が設けられている。左収容部33は、上側の開口である上側開口部35と前側の開口である前側開口部36を有した略矩形箱状に形成されている。また、右収容部34は上側の開口である上側開口部37と前側の開口である前側開口部38を有した略矩形箱状に形成されている。左収容部33は、前枠部21の下面部39と左支持体27の下面部40に固定されている。そのため、左収容部33の前側開口部36は前枠部21の下方に位置している。右収容部34は、前枠部21の下面部39と右支持体28の下面部41に固定されている。そのため、右収容部34の前側開口部38は前枠部21の下方に位置している。
【0028】
図6に示すように、左収容部33と右収容部34には、レーザー計測器であるレーザー距離計42が収容可能となっている。左収容部33の底面部43と右収容部34の底面部44は、水平となっており、左収容部33と右収容部34に収容したレーザー距離計42は水平に保持される。レーザー距離計42は、左収容部33上側開口部34と右収容部34の上側開口部36から左収容部33と右収容部34に出し入れされる。また、レーザー距離計42は、投光部45と受光部46が左収容部33の前側開口部36と右収容部34の前側開口部37から露出するように設置される。左収容部33と右収容部34の内側の大きさは、レーザー距離計42の大きさに合わせて設定されており、レーザー距離計42は、左収容部33内及び右収容部34内で大きく移動しないように保持されている。
【0029】
左収容部33又は右収容部34に収容されたレーザー距離計42は、左収容部33の後端面部47と右収容部34の後端面部48の位置から被計測物(本実施例では、墨出し板7)までの距離を計測するように設定されている。なお、本実施例では、被計測物までの距離を計測し易い左収容部33又は右収容部34の何れか一方を選択してレーザー距離計42を収容しているが、左収容部33と右収容部34の両方にレーザー距離計42を収容してもよい。
【0030】
図5及び図10に示すように、左支持体27の後枠部22側には、レーザー墨出し器4を着脱自在に取り付ける墨出し器設置部である台座49が取り付けられている。台座49の上面部50には、取付突起51が立設されている。この取付突起51をレーザー墨出し器4の取付受部17に挿入した状態で、レーザー墨出し器4を台座49に載置することで、装置本体5におけるレーザー墨出し器4の位置決めがされる。台座49の上面部50は、水平となっており、台座49に取り付けたレーザー墨出し器4も水平となる。なお、レーザー墨出し器4は、水平に保持できれば他の方法により台座49に取り付けてもよい。
【0031】
図11に示すように、レーザー墨出し器4を台座49に取り付けた状態でレーザー墨出し器4からレーザー光線を照射すると、縦ライン13がレーザー光受け板29の基準線32と幅方向(左右方向)の位置が一致、すなわち、縦ライン13が基準線32と上下方向において重なるように台座49の位置が設定されている。また、横ライン14が左収容部33の後端面部47と右収容部34の後端面部48の位置と一致、すなわち横ライン14が後端面部47及び後端面部48と上下方向において重なるように台座49の位置が設定されている。このとき、縦ライン13と横ライン14が直交する地墨ライン15が装置本体5の下方の床部9に照射される。装置本体5は、枠体25の内側空間部分は開口しているため、床部9及び床部9に照射された地墨ライン15が視認し易くなっている。
【0032】
図12図14に示す垂直位置出し器6は、後述する第1の基準点である印A、印F及び印Sを付す位置と、第2の基準点である印B、印G及び印Tを付す位置を検知するためのものである。垂直位置出し器6は、矩形板状の縦板部52と横板部53を有し、略L字状に形成されている。縦板部52と横板部53は直角を成している。そのため、縦板部52が上側、横板部53が下側となるように垂直位置出し器6を床部9に載置すると、縦板部52は床部9に対して直角を成す。縦板部52には、レーザー照射器54を収容する照射器収容部55が取り付けられている。照射器収容部55は、縦板部52の上下方向にスライド可能となっており、所望の位置に固定することができる。照射器収容部55の内側の大きさは、レーザー照射器54の大きさに合わせて設定されており、照射器収容部55に収容したレーザー照射器54は照射器収容部55内で大きく移動しないようになっている。照射器収容部55は、水平状態で縦板部52に固定され、照射器収容部55内に収容されたレーザー照射器54は、水平方向にレーザー光線を照射できるようになっている。なお、レーザー照射器54はレーザー光線を照射できるものであればよく、例えば、本実施例のレーザー距離計42等を用いてもよい。
【0033】
縦板部52と横板部53の連結部56であって、垂直位置出し器6の車両2に当接させる側の面である当接面部57側には、三角形板状の位置指示部58が設けられている。位置指示部58の先端部59は、レーザー照射器54の照射部60から垂直に下した仮想線V上に位置するように設定されている。
【0034】
図15及び図16に示すように、墨出し板7は、横長略矩形状の板状部61と、板状部61を床部9に対して直角となるように支持する台形柱状の基部62を有している。基部62は、板状部61の裏面部63の下側に位置している。本実施例の板状部61と基部62は、一体に形成されているが、板状部61と基部62を別体に形成し、両者を接合する構成としてもよい。また、基部62は、板状部61を起立した状態で保持できるものであれば、他の形状としてもよい。墨出し板7の高さは、墨出し板7を床部9に載置した状態で、装置本体5の左収容部33又は右収容部34に収容したレーザー距離計42のレーザー光線Wが板状部61に照射される高さであって、後述する印B付近の床部9に載置したレーザー墨出し器4のレーザー光線がレーザー光受け板29に照射されることを妨げない高さに設定されている。
【0035】
板状部61の表面部64と裏面部63には、板状部61の幅方向(左右方向)の左、中、右の位置に位置合わせ線65A,65B,65Cが設けられている。位置合わせ線65A,65B,65Cは、板状部61の表面部64と裏面部63で一致する位置(対向する位置)に設けられている。位置合わせ線65A,65B,65Cは、板状部61の上下方向の全長に渡って設けられている。この位置合わせ線65A,65B,65Cは、板状部61に照射されたレーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を位置合わせの標的となるものであればよく、例えば、印刷したものや、油性インク等で記載したものや、溝状に凹設したものや、紐状の部材を貼り付けたものであってもよい。なお、本実施例の板状部61には、3本の位置合わせ線65A,65B,65Cが設けられているが、その数は、1本、2本又は4本以上等、所望の数とすることができる。レーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を位置合わせする位置合わせ線65A,65B,65Cは、作業者が適宜選択することができる。
【0036】
ここで、位置決め装置1を用いた検査用基準具3を配置する位置の位置決め方法について説明する。検査用基準具3を配置する位置は、車両2の車種や搭載する検知デバイスにより異なるが、ここでは図17に示すように、車両2の幅方向(左右方向)の中心線Lに沿って車両2の前端2A(印A)から3mの位置(印C)と、その位置(印C)から中心線Lに直交する直交線M1に沿って左右それぞれ60cmの位置(印D、印E)の3箇所を、検査用基準具3を配置する位置として説明する。
【0037】
先ず、検査場等の床部9に停車させた車両2の前端2A(例えば、バンパー66)に垂直位置出し器6の当接面部57を当接させた状態で、垂直位置出し器6を床部9に載置する。このとき、縦板部52が床部9に対して直角になるようにする。そして、レーザー照射器54のレーザー光線を車両2のエンブレム67に照射し、レーザー光線がエンブレム67の左右方向の中心部68に照射されるように照射器収容部55の上下方向の位置と、垂直位置出し器6の床部9上での位置を調整する。そして、レーザー光線がエンブレム67の中心部68に照射された状態の垂直位置出し器6の位置指示部58の先端部59の指し示す床部9の位置が、車両2の前端2Aにおける幅方向(左右方向)の中心位置となる。この位置に印Aを付す。印Aは、チョーク等で床部9に黒塗り点を付したり、×印を付したテープを床部9に貼り付けたもの等でよい。
【0038】
次に、垂直位置出し器6を用いて車両2の後端2Bにおける幅方向(左右方向)の中心位置の位置決めを行う。車両2の前端2Aにおける幅方向(左右方向)の中心位置の位置決めと同様の方法で、車両2の後側のエンブレム(図示せず)を基準に車両2の後端2Bにおける幅方向(左右方向)の中心位置を決める。そして、車両2の後端2Bにおける幅方向(左右方向)の中心位置に印Bを付けておく。なお、本実施例では、車両2のエンブレム67を基準に車両2の幅方向(左右方向)の中心位置を決定したが、車両2のライセンスプレート(図示せず)の左右方向の中心部を基準として車両2の幅方向(左右方向)の中心位置を決定してもよい。
【0039】
次に、墨出し板7の位置合わせ線65Aの下端が印Aに位置するように墨出し板7を印Aの付近の床部9に載置する。このとき、板状部61の表面部64又は裏面部63を車両2側に向ける。
【0040】
次に、レーザー墨出し器4のレーザー光線(地墨ライン15)の直交点Xが印Bに位置するように、レーザー墨出し器4を印B付近の床部9に載置する。そして、レーザー墨出し器4から照射されたレーザー光線(縦ライン13)を印Aに合わせるための標的である墨出し板7の位置合わせ線65Aに重なるようにレーザー墨出し器4を水平方向に回動させて方向を調整する。地墨ライン15の直交点Xが印Bに位置し、墨出し板7に照射されたレーザー光線(縦ライン13)が位置合わせ線65Aに重なったときの縦ライン13が、印Aと印Bを通る車両の幅方向(左右方向)の中心線Lとなる。
【0041】
次に、装置本体5の左収容部33に収容したレーザー距離計42のレーザー光線Wを墨出し板7の板状部61に照射し、墨出し板7から3mの位置の床部9に装置本体5を載置する。このとき、装置本体5の前側(前枠部21側)が車両2に向くように装置本体5を載置する。そして、墨出し板7の位置合わせ線65Aに重なったレーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を装置本体5のレーザー光受け板29に照射させ、図18(A)に示すように、レーザー光線(縦ライン13)が基準線32とずれた状態から、図18(B)に示すように、レーザー光線(縦ライン13)が基準線32に重なるように装置本体5の水平方向の向きを調整する。
【0042】
次に、印B付近の床部9に載置したレーザー墨出し器4を装置本体5まで運び、台座49に取り付け、レーザー光線を照射すると、床部9に地墨ライン15の直交点Xが照射される。この直交点Xは、車両2の中心線Lと、左収容部33の後端面部47と右収容部34の後端面部48の位置を下方の床部9に下した線(直交線M1)との交点を示している。この位置に印Cを付す。この印Cの位置が、車両の幅方向(左右方向)の中心線L上であって、印Aから3mの位置となる。なお、本実施例では、印B付近の床部9に載置したレーザー墨出し器4を装置本体5まで運び、台座49に取り付けて使用したが、同型のレーザー墨出し器4をもう一台使用し、印B付近の床部9に載置したレーザー墨出し器4とは別のレーザー墨出し器4を装置本体5の台座49に取り付けて使用することで、レーザー墨出し器4の運搬作業を不要とすることができる。
【0043】
最後に、装置本体5の台座49に取り付けたレーザー墨出し器4が照射する地墨ライン15の直交点X(印C)から横ライン14(直交線M1)に沿って左右それぞれ60cmの位置に印D、印Eを付す。直交点(印C)から印D、印Eまでの距離60cmは、ひとりの作業者が容易に計測できる距離であるため、巻き尺等の計測機器を用いて計測すればよい。
【0044】
上記のように、検査用基準具3を配置する3箇所の位置(印C、印D、印E)が決定した後に、印C、印D、印Eの位置に検査用基準具3を配置し、車両2の検知デバイスを作動させ、検知デバイスが検査用基準具3を認識するか否か等、正常に作動しているか否かを検査することができる。また、印C、印D、印Eに配置した検査用基準具3を基準に検知デバイスを初期化したり、微調整したりすることもできる。
【0045】
車両2の後方に配置する検査用基準具3の位置決めは、上記車両2の前方に配置する検査用基準具3の位置決め方法と同様の手順により行うことができる。
【0046】
上記の検査用基準具3の位置決めについては、車両2の中心線Lを基準に検査用基準具3を配置する位置の位置決めを行ったが、停車させた車両2の前後の左側のフェンダー69のアーチ中心70(図14参照)から下方に垂直に下した2点である、左前車軸点Qと左後車軸点Rを結ぶ直線である左基準線71(請求項の中心線に相当)を基準に検査用基準具3を配置する位置の位置決めについて説明する。ここでの検査用基準具3を配置する位置は、左基準線71上であって、左前車軸点Qから車両2の前方方向に3mの位置(印H)と、その位置から左基準線71と直交する直交線M2上に沿って左右それぞれ30cmの位置(印I、印J)の3箇所である。
【0047】
先ず、検査場等の床部9に停車させた車両2の前輪上部であって、車両2の左端であるフェンダー69に垂直位置出し器6の当接面部57を当接させた状態で、垂直位置出し器6を床部9に載置する。このとき、縦板部52が床部9に対して直角になるようにする。そして、レーザー照射器54のレーザー光線がフェンダー69のアーチ中心70に照射されるように、照射器収容部55の上下方向の位置と、垂直位置出し器6の床部9上での位置を調整する。そして、レーザー光線がアーチ中心70に照射された状態の垂直位置出し器6の位置指示部58の先端部59の指し示す床部9の位置が、左前車軸点Qであり、この左前車軸点Qに印Fを付す。同様に、左後車軸点Rを決定し、左後車軸点Rに印Gを付す。
【0048】
その後は、印Aと印Bから印C、印D、印Eを決定した方法と同様に、印Fと印Gから車両の前方方向に3mの位置を決定し、その位置の床部9に印Hを付し、印Hの位置から直交線M2上に沿って左右それぞれ30cmの位置を計測し、印Iと印Jを床部9に付す。
【0049】
上記のように、検査用基準具3を配置する3箇所の位置(印H、印I、印J)が決定した後に、印H、印I、印Jの位置に検査用基準具3を配置し、車両2の検知デバイスを作動させ、検知デバイスが検査用基準具3を認識するか否か等、正常に作動しているか否かを検査することができる。また、印H、印I、印Jに配置した検査用基準具3を基準に検知デバイスを初期化したり、微調整したりすることもできる。
【0050】
停車させた車両2の前後の右側のフェンダーのアーチ中心から下方に垂直に下した2点である、右前車軸点Sと右後車軸点Tを結ぶ直線である右基準線72(請求項の中心線に相当)を基準に検査用基準具3を配置する位置の位置決めについては、上記左基準線71を基準に検査用基準具3を配置する位置の位置決めと同様の方法により行うことができる。
【0051】
以上のように、本実施例の位置決め装置1は、レーザー光受け板29と、レーザー墨出し器4と、レーザー距離計42と、レーザー墨出し器4を設置する台座49と、レーザー距離計42を設置する左収容部33及び右収容部34と、を備え、レーザー光受け板29は、後側に傾斜して設けられ、レーザー光受け板29の前面部31に基準線32が設けられ、レーザー墨出し器4は、台座49に設置された状態で、直交する縦ライン13及び横ライン14のレーザー光線を床部9に照射し、縦ライン13は、基準線32と上下方向において重なり、横ライン14は、左収容部33及び右収容部34の後端面部47,48と上下方向において重なり、レーザー距離計42は、左収容部33及び右収容部34に設置された状態で、後端面部47,48から墨出し板7までの距離を計測することにより、中心線L上の印Aから所望の距離の位置(印C)、その位置(印C)から中心線Lに直交する直交線M1上であって左右に所望の距離の位置(印D、印E)を容易に位置決めすることができる。同様に、左基準線71上の印Fから所望の距離の位置(印H)、その位置(印H)から中心線Lに直交する直交線M2上であって左右に所望の距離の位置(印I、印J)を容易に位置決めすることができる。また、レーザー光受け板29が後側に傾斜して設けられていることにより、レーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)をレーザー光受け板29の前面部31に照射した場合に、レーザー光線(縦ライン13)と基準線32がずれているか一致しているかを一目で確認でき、レーザー光線(縦ライン13)を容易に基準線32に合わせることができる。また、左収容部33及び右収容部34が左右に設けられているため、墨出し板7を載置した位置との関係で、墨出し板7までの距離を計測し易い方の左収容部33又は右収容部34を選択してレーザー距離計42を設置することができる。
【0052】
また、本実施例の位置決め装置1は、矩形状の枠体25と、枠体25の四隅から下方に向かって延設された脚部26と、を備え、レーザー光受け板29、レーザー墨出し器4、レーザー距離計42、台座49、左収容部33及び右収容部34が枠体25に取り付けられていることにより、装置本体5を上方から見た場合に、枠体25、レーザー光受け板29、レーザー墨出し器4、レーザー距離計42、台座49、左収容部33及び右収容部34の隙間から床部9を視認することができ、床部9に照射された地墨ライン15の直交点Xを視認することができる。また、枠体25、レーザー光受け板29、レーザー墨出し器4、レーザー距離計42、台座49、左収容部33及び右収容部34の隙間から手を入れて直交点Xに印C、印Hを付すことができ、印C、印Hを付す場合に装置本体5を移動させる必要がない。
【0053】
また、本実施例の位置決め装置1は、印Aと印Bの位置を検知する垂直位置出し器6を備え、垂直位置出し器6がレーザー照射器54と、レーザー照射器54の照射部60から垂直に下した位置を指し示す位置指示部58を有することにより、車両2の幅方向(左右方向)の中心部であるエンブレム67等にレーザー照射器54のレーザー光線が照射されるように照射器収容部55の上下方向の位置と、垂直位置出し器6の床部9上での位置を調整することで、車両2の前端2A及び後端2Bにおける幅方向(左右方向)の中心位置(印A、印B)を容易に検知することができる。同様に、車両2の左端(フェンダー69)におけるアーチ中心70の下方の位置である左前車軸点Q(印F)及び右前車軸点R(印G)を容易に検知することができる。そのため、特許文献1に記載された重りの付いた下げ振りは不要である。
【0054】
また、本実施例の位置決め装置1は、被計測物として機能する墨出し板7を備え、墨出し板7に印Aと印Bとを結ぶ中心線Lを決定する際に標的とする位置合わせ線65A,65B,65Cが設けられていることにより、印B付近の床部9に載置したレーザー墨出し器4のレーザー光線(縦ライン13)を印Aの位置に合わせ易くすることができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、装置本体の枠体は矩形に限らず、他の形状であってもよい。また、印Aの位置よりも印Bの位置を先に位置決めしたり、印Aを付した時点で墨出し板7を載置する等、各位置の位置決め手順は、作業者が実施し易い順番で行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 位置決め装置
4 レーザー墨出し器
6 垂直位置出し器
7 墨出し板(被計測物)
9 床部
13 縦ライン
14 横ライン
25 枠体
26 脚部
29 レーザー光受け板(レーザー受部)
31 前面部
32 基準線
33 左収容部(計測器設置部)
34 右収容部(計測器設置部)
42 レーザー距離計(レーザー計測器)
47 後端面部
48 後端面部
49 台座(墨出し器設置部)
54 レーザー照射器
58 位置指示部
60 照射部
65A 位置合わせ線
65B 位置合わせ線
65C 位置合わせ線
71 左基準線(中心線)
72 右基準線(中心線)
A 印(第1の基準点)
B 印(第2の基準点)
F 印(第1の基準点)
G 印(第2の基準点)
L 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18