(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/20 20060101AFI20220324BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F16B39/20 A
F16B41/00 A
(21)【出願番号】P 2018136605
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503154813
【氏名又は名称】有限会社SIT
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】添田 真弓
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115939(JP,A)
【文献】特開2018-044604(JP,A)
【文献】特開2016-156482(JP,A)
【文献】国際公開第03/095850(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0140810(US,A1)
【文献】中国実用新案第205806185(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1817948(KR,B1)
【文献】中国実用新案第208089736(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/20
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円形状に略同一径で巻回された第1のコイル素線を有する第1のコイルバネ部と、
該第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の一端から延びており、かつ、同第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、同第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、複数の頂部が同第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である多角形状に巻回された第2のコイル素線を有する第2のコイルバネ部と、
前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端から延びており、かつ、同第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、同第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、3つの頂部が同第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回された第3のコイル素線を有し、かつ、前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の前記頂部の内角が他の頂部の内角よりも大きい第3のコイルバネ部と、
該第3のコイルバネ部の前記第3のコイル素線から前記第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向に、かつ、前記第2のコイルバネ部の位置とは反対方向に延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な延長コイル素線を有する延長部とを備える
脱落防止具。
【請求項2】
前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の、前記第3のコイルバネ部の前記頂部から延びる前記第3のコイル素線は略直線形状を有し、
前記第3のコイルバネ部の前記第3のコイル素線と前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端との接続箇所と、前記第1のコイルバネ部の巻回中心と、前記延長部とが、前記第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる同じ平面内に位置している
請求項1に記載の脱落防止具。
【請求項3】
前記延長コイル素線から延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な大きさの巻回範囲で、かつ、前記第3のコイルバネ部と同心状に、かつ、複数の頂部が同第3のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である多角形状に巻回された第4のコイル素線を有する第4のコイルバネ部を備える
請求項1または請求項2に記載の脱落防止具。
【請求項4】
前記第2のコイルバネ部及び前記第3のコイルバネ部は、前記頂部と前記頂部の間に、同第2のコイルバネ部の巻回中心及び同第3のコイルバネ部の巻回中心それぞれとは反対方向へ凸状に曲がった曲部を有する
請求項1、請求項2または請求項3に記載の脱落防止具。
【請求項5】
前記第4のコイルバネ部の前記第4のコイル素線は、略六角形状に巻回されている
請求項3に記載の脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱落防止具に関する。詳しくは、ボルトから被固定物やナットが脱落すること
を防止する脱落防止具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築構造物を構成する二つの部材を固定するための方法として、溶接によって固定する方法や、ボルトとナットによって締結する方法が用いられている。
【0003】
また、溶接による固定は、溶接設備が必要となり、施工に手間と時間がかかり、また、固定を解除する場合も設備が必要となり、固定解除に手間と時間がかかるので、ボルトとナットによって締結する方法が多く採用されている。
【0004】
しかし、ボルトとナットによって締結する方法において、ボルトやナットが振動等を受けることにより、締結後にボルトやナットが緩むことがあるため、ボルトやナットが緩んで、ボルトから被固定物やナットが脱落しないようにする発明が幾つか提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、
図5に示すようなナット緩み止め具110が記載されている。
すなわち、ナット緩み止め具110は、弾性を有する素線で形成されており、コイルバネ部111を本体として有する。
【0006】
また、コイルバネ部111の両端すなわち外側端111A及び内側端111Bには、それぞれ輪状の押圧部すなわち外側押圧部113及び内側押圧部114が素線を延設させて設けられている。
また、外側押圧部113及び内側押圧部114はコイルバネ部111の中心軸Oから遠ざかる方向に向けて形成されている。
【0007】
また、外側押圧部113及び内側押圧部114の少なくとも一方を形成する素線の末端は、内側押圧部114よりもさらに延設されて、コイルバネ部111よりも中心軸Oに向けて延設されている線状突起部115を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のナット緩み止め具は、ナットの上面を押圧するだけであり、ナットの緩み止め効果が充分ではない可能性があった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、ボルトに取付けられたナットを緩まなくすることができる脱落防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の脱落防止具は、略円形状に略同一径で巻回された第1のコイル素線を有する第1のコイルバネ部と、該第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の一端から延びており、かつ、同第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、同第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、複数の頂部が同第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である多角形状に巻回された第2のコイル素線を有する第2のコイルバネ部と、前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端から延びており、かつ、同第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、同第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、3つの頂部が同第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回された第3のコイル素線を有し、かつ、前記第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の前記頂部の内角が他の頂部の内角よりも大きい第3のコイルバネ部と、該第3のコイルバネ部の前記第3のコイル素線から前記第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向に、かつ、前記第2のコイルバネ部の位置とは反対方向に延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な延長コイル素線を有する延長部とを備える。
【0012】
ここで、略円形状に略同一径で巻回された第1のコイル素線を有する第1のコイルバネ部によって、ボルトの脚部に嵌合することができる。
【0013】
また、第1のコイルバネ部の前記第1のコイル素線の一端から延びており、かつ、第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、複数の頂部が第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である多角形状に巻回された第2のコイル素線を有する第2のコイルバネ部によって、一般の工具例えばソケット工具を使用して本発明の脱落防止具を回転させ易い。
【0014】
また、第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端から延びており、かつ、第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、3つの頂部が第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回された第3のコイル素線を有し、かつ、第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の頂部の内角が他の頂部の内角よりも大きい第3のコイルバネ部によって、延長部が第3のコイルバネ部の3番目の頂部をヒンジとして動くことができるので、ナットに取付ける方向への本発明の脱落防止具の回転時にナットの角部を延長部が越えることを可能にすると共に、ナットから取外す方向への本発明の脱落防止具の回転時にはナットの角部を延長部が越えることを抑制できる。
【0015】
また、第3のコイルバネ部の第3のコイル素線から第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向に、かつ、第2のコイルバネ部の位置とは反対方向に延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な延長コイル素線を有する延長部によって、緩む方向にナットが回転しようとしても、ナットの角部が延長部に当たってしまい、それ以上緩む方向にナットが回転することを抑えることができる。
【0016】
また、本発明の脱落防止具において、第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の、第3のコイルバネ部の頂部から延びる第3のコイル素線は略直線形状を有し、第3のコイルバネ部の第3のコイル素線と第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所と、第1のコイルバネ部の巻回中心と、延長部とが、第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる同じ平面内に位置している構成とすることができる。
【0017】
この場合、ボルトに装着された六角ナットに本発明の脱落防止具を当接したときに、第3のコイルバネ部の3番目の頂部にヒンジ応力がなくなる位置である六角ナットの六角辺の略中央部に、延長部が位置することができて安定し、六角ナットの角部を乗り越える回転トルクを発生させない。
【0018】
また、本発明の脱落防止具は、延長コイル素線から延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な大きさの巻回範囲で、かつ、第3のコイルバネ部と同心状に、かつ、複数の頂部が第3のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である多角形状に巻回された第4のコイル素線を有する第4のコイルバネ部を備える構成とすることができる。
【0019】
この場合、緩む方向にナットが回転することをさらに抑えることができる。
【0020】
また、本発明の脱落防止具において、第2のコイルバネ部及び第3のコイルバネ部は、頂部と頂部の間に、第2のコイルバネ部の巻回中心及び第3のコイルバネ部の巻回中心それぞれとは反対方向へ凸状に曲がった曲部を有する構成とすることができる。
【0021】
この場合、第1のコイルバネ部が拡径して第3のコイルバネ部に当たっても、当たった力を分散することができる。
また、頂部と頂部の間に曲部がない場合よりも頂部を内側に配置させることができるので、一般の工具例えばソケット工具内に本発明の脱落防止具を収め易くなって一般のソケット工具を使うことが容易となり、また、頂部と頂部の間に曲部がない場合よりもボルトを抑える箇所を多くすることができる。
【0022】
また、本発明の脱落防止具において、第4のコイルバネ部の第4のコイル素線は、略六角形状に巻回されている構成とすることができる。
この場合、多用されている六角ナットの側面にしっかりと第4のコイル素線を接触させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る脱落防止具は、ボルトに取付けられたナットを緩まなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明を適用した脱落防止具の第2のコイルバネ部を省略した概略平面図である。
【
図3】本発明を適用した脱落防止具をナットが装着されたボルトに装着した状態の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明を適用した他の態様の脱落防止具をナットが装着されたボルトに装着した状態の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した脱落防止具の一例を示す概略図である。
また、
図2は、本発明を適用した脱落防止具の第2のコイルバネ部を省略した概略平面図である。すなわち、本発明の脱落防止具は当然ながら第2のコイルバネ部を備えているが、
図2では第2のコイルバネ部の図示を便宜上、省略しているだけである。
【0026】
図1に示す本発明の脱落防止具1は、第1のコイルバネ部2を備える。
ここで、第1のコイルバネ部2は、略円形状に略同一径で巻回された第1のコイル素線2Aを有する。
第1のコイルバネ部2の内径は、ボルトの脚部の外径よりもわずかに小さい。
【0027】
また、本発明の脱落防止具1は、第2のコイルバネ部3を備える。
ここで、第2のコイルバネ部3は、第2のコイル素線3Aを有する。
また、第2のコイル素線3Aは、第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの一端から延びており、かつ、第1のコイルバネ部2の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部2と同心状に、かつ、3つの頂部3Bが第1のコイルバネ部2の巻回中心9から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回されている。
【0028】
さらに、本発明の脱落防止具1は、第3のコイルバネ部4を備える。
ここで、第3のコイルバネ部4は、第3のコイル素線4Aを有する。
また、第3のコイル素線4Aは、第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端から延びており、かつ、第1のコイルバネ部2の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部2と同心状に、かつ、3つの頂部(4B~4D)が第1のコイルバネ部2の巻回中心9から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回されている。
【0029】
また、第3のコイルバネ部4において、第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて3番目の頂部4Dの内角βが他の頂部すなわち、第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて1番目の頂部4Bの内角α及び2番目の頂部4Cの内角αよりも大きい。
【0030】
また、本発明の脱落防止具1は、延長部5を備える。
ここで、延長部5は、延長コイル素線5Aを有する。
また、延長コイル素線5Aは、第3のコイルバネ部4の第3のコイル素線4Aから第1のコイルバネ部2の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向に、かつ、第2のコイルバネ部3の位置とは反対方向に延びており、かつ、ナットの側面に接触可能である。
【0031】
また、第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて3番目の、第3のコイルバネ部4の頂部4Dから延びる第3のコイル素線4Aは略直線形状を有する。
【0032】
また、第3のコイルバネ部4の第3のコイル素線4Aと第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所と、第1のコイルバネ部2の巻回中心9と、延長部5とが、第1のコイルバネ部2の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる同じ平面10内に位置している。
【0033】
また、本明細書で言う「巻回中心」は、第1のコイル素線と、第2のコイル素線と、第3のコイル素線と、第4のコイル素線それぞれが巻回するときの、実体が無い中心位置を意味し、「平面」は実体が無い平面を意味する。
【0034】
また、本発明の脱落防止具1は、第4のコイルバネ部6を備える。
ここで、第4のコイルバネ部6は、第4のコイル素線6Aを有する。
また、第4のコイル素線6Aは、延長コイル素線5Aから延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な大きさの巻回範囲で、かつ、第3のコイルバネ部4と同心状に、かつ、6つの頂部6Bが第3のコイルバネ部4の巻回中心9から互いに略同一の距離に配置された形状である略六角形状に巻回されている。
【0035】
また、第2のコイルバネ部3は、頂部3Bと頂部3Bの間に、第2のコイルバネ部3の巻回中心とは反対方向へ凸状に曲がった曲部7を有する。
また、第3のコイルバネ部4も、1番目の頂部4Bと2番目の頂部4Cの間や、2番目の頂部4Cと3番目の頂部4Dの間に、第3のコイルバネ部4の巻回中心とは反対方向へ凸状に曲がった曲部7を有する。
また、曲部7の内角は、第2のコイルバネ部3の頂部3Bの内角や第3のコイルバネ部4の頂部(4B、4C、4D)の内角よりも大きい。
【0036】
また、
図1に示す中心軸線8は、第1のコイルバネ部2の巻回中心9と、第2のコイルバネ部3の巻回中心9と、第3のコイルバネ部4の巻回中心9と、第4のコイルバネ部6の巻回中心9とを通り、かつ、第1のコイルバネ部2の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる、実体が無い直線状の軸線である。
また、本明細書で言う「巻回範囲」は、中心軸線に対して略直交する方向における範囲を意味する。
【0037】
また、第1のコイルバネ部2の巻回中心9と、第2のコイルバネ部3の巻回中心9と、第3のコイルバネ部4の巻回中心9と、第4のコイルバネ部6の巻回中心9は、中心軸線8において、互いに異なる位置に在る。
【0038】
すなわち、第1のコイル素線2Aと、第2のコイル素線3Aと、第3のコイル素線4Aと、第4のコイル素線6Aは、中心軸線8を中心として互いに同心状に巻回されていることを示している。
【0039】
また、本発明の脱落防止具において、必ずしも第2のコイルバネ部の第2のコイル素線は略三角形状に巻回されていなくてもよく、例えば略六角形状に巻回されることもできる。
【0040】
また、本発明の脱落防止具において、必ずしも第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の、第3のコイルバネ部の頂部から延びる第3のコイル素線は略直線形状を有していなくてもよい。
また、本発明の脱落防止具において、必ずしも第3のコイルバネ部の第3のコイル素線と第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所と、第1のコイルバネ部の巻回中心と、延長部とが、第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる同じ平面内に位置していなくてもよい。
【0041】
しかし、本発明の脱落防止具がこのような構成であれば、ボルトに装着された六角ナットに本発明の脱落防止具を当接したときに、第3のコイルバネ部の3番目の頂部にヒンジ応力がなくなる位置である六角ナットの六角辺の略中央部に、延長部が位置することができて安定し、六角ナットの角部を乗り越える回転トルクを発生させないので好ましい。
【0042】
また、第2のコイルバネ部及び第3のコイルバネ部は必ずしも、頂部と頂部の間に、第2のコイルバネ部の巻回中心及び第3のコイルバネ部の巻回中心それぞれとは反対方向へ凸状に曲がった曲部を有していなくてもよい。
【0043】
しかし、第2のコイルバネ部及び第3のコイルバネ部が曲部を有していれば、第1のコイルバネ部が拡径して第3のコイルバネ部に当たっても、当たった力を分散することができるので好ましい。
また、第2のコイルバネ部及び第3のコイルバネ部が曲部を有していれば、頂部と頂部の間に曲部がない場合よりも頂部を内側に配置させることができるので、一般の工具例えばソケット工具内に本発明の脱落防止具を収め易くなって一般のソケット工具を使うことが容易となり、また、頂部と頂部の間に曲部がない場合よりもボルトを抑える箇所を多くすることができるので好ましい。
【0044】
また、本発明の脱落防止具において、第4のコイルバネ部の第4のコイル素線は、必ずしも略六角形状に巻回されていなくてもよく、ナットの形状に合わせて適宜変更することができる。
しかし、第4のコイルバネ部の第4のコイル素線が略六角形状に巻回されていれば、多用されている六角ナットの側面にしっかりと第4のコイル素線を接触させることができるので好ましい。
【0045】
次に、本発明の脱落防止具1を、ネジ溝21Cとネジ山21Dが形成されたボルト21の脚部21Bとナット22に装着する方法を説明する。
【0046】
図3は、本発明を適用した脱落防止具をナットが装着されたボルトに装着した状態の一例を示す概略図である。
なお、
図3において被固定物の図示を省略している。また、ボルト21は頭部21Aを有しており、脚部21Bは頭部21Aから延びている。
【0047】
本発明の脱落防止具1の第1のコイルバネ部2をボルト21の脚部21Bに押し当てて、例えばソケットレンチを本発明の脱落防止具1の第2のコイルバネ部3に被せる。
そして、ソケットレンチを押しながら右回転させて、本発明の脱落防止具1を押しながら右回転すなわち本発明の脱落防止具1を締め付ける方向へ回転させる。
【0048】
そのまま、ソケットレンチを本発明の脱落防止具1の第2のコイルバネ部3に被せた状態でソケットレンチと本発明の脱落防止具1を右回転させ、延長部5や第4のコイルバネ部6がナット22の側面に当接して本発明の脱落防止具1が右回転しなくなれば右回転を止める。
【0049】
本発明の脱落防止具1が右回転しなくなると、ソケットレンチを本発明の脱落防止具1から取外し、
図3に示すような状態となる。
【0050】
このとき、略三角形状に巻回された第3のコイル素線4Aを有する第3のコイルバネ部4がナット22の上面に当接しているので、ナット22の左回転すなわちナット22が緩む方向への回転を抑える力が発生する。
【0051】
さらに、緩む方向にナット22が回転しようとしても、ナット22の角部が延長部5に当たってしまい、それ以上緩む方向にナット22が回転することを抑えることができる。
また、第4のコイルバネ部6の頂部6Bがナット22の角部に当接しているので、緩む方向にナット22が回転することをさらに抑えることができる。
【0052】
図4は、本発明を適用した他の態様の脱落防止具をナットが装着されたボルトに装着した状態の一例を示す概略図である。
【0053】
図4に示す本発明の他の態様の脱落防止具31が第4のコイルバネ部6を備えていない点と、
図1や
図3に示す本発明の脱落防止具1の延長部5が有する延長コイル素線5Aの長さに比べて、
図4に示す本発明の脱落防止具31の延長部5が有する延長コイル素線5Aの長さの方が長い点において、
図4に示す本発明の脱落防止具31は、
図1や
図3に示す本発明の脱落防止具1と異なる。
【0054】
すなわち、
図4に示す本発明の脱落防止具31も、第1のコイルバネ部2と、第2のコイルバネ部3と、第3のコイルバネ部4とを備える。
【0055】
また、
図4に示す本発明の脱落防止具31の第3のコイルバネ部4においても、図示していないが第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて3番目の頂部の内角が、他の頂部すなわち第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて1番目の頂部及び2番目の頂部それぞれの内角よりも大きい。
【0056】
また、
図4に示す本発明の脱落防止具31においても、第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所から数えて3番目の、第3のコイルバネ部4の頂部から延びる第3のコイル素線4Aは略直線形状を有する。
【0057】
また、
図4に示す本発明の脱落防止具31においても、第3のコイルバネ部4の第3のコイル素線4Aと第1のコイルバネ部2の第1のコイル素線2Aの他端との接続箇所と、第1のコイルバネ部2の巻回中心と、延長部5とが、第1のコイルバネ部2の巻回半径方向に対して略直交する方向に延びる同じ平面内に位置している。
【0058】
また、
図4に示す本発明の脱落防止具31も、
図3に示す本発明の脱落防止具1と同じようにして、ナットが装着されたボルトに装着することができる。
【0059】
以上のように、本発明の脱落防止具は延長部を備えており、延長部は、第3のコイルバネ部の第3のコイル素線から第1のコイルバネ部の巻回半径方向に対して略直交する方向と同じ方向に、かつ、第2のコイルバネ部の位置とは反対方向に延びており、かつ、ナットの側面に接触可能な延長コイル素線を有するので、緩む方向にナットが回転しようとしても、ナットの角部が延長部に当たってしまい、それ以上緩む方向にナットが回転することを抑えることができる。
【0060】
また、本発明の脱落防止具は第3のコイルバネ部を備えており、第3のコイルバネ部は、第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端から延びており、かつ、第1のコイルバネ部の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部と同心状に、かつ、3つの頂部が第1のコイルバネ部の巻回中心から互いに略同一の距離に配置された形状である略三角形状に巻回された第3のコイル素線を有し、かつ、第1のコイルバネ部の第1のコイル素線の他端との接続箇所から数えて3番目の頂部の内角が他の頂部の内角よりも大きいので、延長部が第3のコイルバネ部の3番目の頂部をヒンジとして動くことができるので、ナットに取付ける方向への本発明の脱落防止具の回転時にナットの角部を延長部が越えることを可能にすると共に、ナットから取外す方向への本発明の脱落防止具の回転時にはナットの角部を延長部が越えることを抑制できる。
【0061】
さらに、第3のコイルバネ部がナットの上面に当接できるので、ナットの左回転すなわちナットが緩む方向への回転を抑えることができる。
【0062】
従って、本発明の脱落防止具は、ボルトに取付けられたナットを緩まなくすることができる。
その結果、ナットは振動しなくなり、ナットの振動でボルトのネジ山が潰れる心配もなくなる。
【符号の説明】
【0063】
1 脱落防止具
2 第1のコイルバネ部
2A 第1のコイル素線
3 第2のコイルバネ部
3A 第2のコイル素線
3B 頂部
4 第3のコイルバネ部
4A 第3のコイル素線
4B 1番目の頂部
4C 2番目の頂部
4D 3番目の頂部
5 延長部
5A 延長コイル素線
6 第4のコイルバネ部
6A 第4のコイル素線
6B 頂部
7 曲部
8 中心軸線
9 巻回中心
10 平面
21 ボルト
21A 頭部
21B 脚部
21C ネジ溝
21D ネジ山
22 ナット
31 脱落防止具