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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】クリアリングエージェント
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/26 20060101AFI20220324BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20220324BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20220324BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220324BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220324BHJP
   C07K 14/36 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
C07H15/26 CSP
A61K47/66
A61K51/02 200
A61P35/00
A61K45/00
A61K49/00
A61K39/395 N
C12N15/31 ZNA
C07K14/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018552971
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2017042190
(87)【国際公開番号】W WO2018097239
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2016228810
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514207197
【氏名又は名称】サヴィッド・セラピューティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】塚越 雅信
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125820(WO,A1)
【文献】特開2012-167987(JP,A)
【文献】WILBUR,D.S. et al,Design and Synthesis of Bis-Biotin-Containing Reagents for Applications Utilizing Monoclonal Antibod,Bioconjugate Chemistry,2010年,Vol.21, No.7,pp.1225-1238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/26
A61K 47/66
A61K 51/02
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 49/00
A61K 39/395
C12N 15/31
C07K 14/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3)で示される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、L10及びL12がそれぞれ独立に、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、又はそれらの組み合わせであり、
L11は3価の連結基を示し、
L13が、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-又は-NHCO-、-O-、および
【化2】
の組み合わせであり、
L14が、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、又はそれらの組み合わせである、
Sugarは糖の残基を示す。)
【請求項2】
L11が、
【化3】
で示される基である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
以下の何れかの化合物又はその塩。
【化4】
【請求項4】
請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩を含む、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体をクリアリングするためのクリアリングエージェント。
【請求項5】
ストレプトアビジン変異体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列において37番目のアミノ酸残基であるAsnが他のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジン変異体である、請求項に記載のクリアリングエージェント。
【請求項6】
ストレプトアビジン変異体が、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるストレプトアビジン変異体である、請求項4又は5に記載のクリアリングエージェント。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載の化合物又はその塩と、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体とを少なくとも含む、治療用、体内診断用又は体外診断用のキット。
【請求項8】
下記式(10)で示される化合物で標識した、治療用、体内診断用又は体外診断用の物質をさらに含む、請求項に記載のキット。
【化5】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し、Y及びYはそれぞれ独立にC又はSを示し、Z及びZはそれぞれ独立にO、S又はNHを示し、V及びVはそれぞれ独立にS又はS-Oを示し、n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に1から10の整数を示し、Lは連結基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内においてストレプトアビジン変異体を除去するためのクリアリングエージェント、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アビジンとビオチン、あるいはストレプトアビジンとビオチンの間の親和性は非常に高く、アビジン/ストレプトアビジン - ビオチン相互作用は、生化学、分子生物学、あるいは医学の分野で広く応用されている。このアビジン/ストレプトアビジンとビオチンの高い結合能と抗体分子とを組合わせたドラッグデリバリーの方法、プレターゲティング法が考案されている(Hnatowich, (1987), J. Nucl. Med., 28, 1294-1302)。
【0003】
ニワトリ由来のアビジンや微生物由来のストレプトアビジンは人体に対し高い免疫原性を示すことから、低免疫原性ストレプトアビジンが報告されている(国際公開WO2010/095455)。さらに、天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体、並びにこの天然ビオチンに対する低親和性のストレプトアビジン変異体に対して高い親和性を有するビオチン改変体が報告されている(国際公開WO2015/125820)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2010/095455
【文献】国際公開WO2015/125820
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hnatowich, (1987), J. Nucl. Med., 28, 1294-1302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際公開WO2015/125820に記載されている天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体、並びにこのストレプトアビジン変異体に対して高い親和性を有するビオチン改変体の組み合わせを用いたプレターゲティング法は、がんなどの疾患に対する新規な治療法として有望である。上記したプレターゲティング法を実現するためには、ストレプトアビジン変異体と分子プローブ(抗体など)との融合体を投与した後に、疾患部位などの標的部位に局在せずに、体内に残存している上記融合体を、体内から迅速に除去(クリアリング)することが望ましい。
【0007】
本発明は、国際公開WO2015/125820に記載されている天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体を投与した後に、疾患部位などの標的部位に局在せずに、体内に残存している上記融合体を、体内から迅速に除去(クリアリング)することができるクリアリングエージェントを提供することを解決すべき課題とした。更に本発明は、上記のクリアリングエージェントを用いた診断キット及び治療キットを提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、国際公開WO2015/125820に記載されているビオチン改変体の二量体に対して、連結基を介して複数の糖残基を結合した化合物を投与することによって、天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体を体内から迅速に除去(クリアリング)できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 下記式(1)で示される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し。Y1及びY2はそれぞれ独立にC又はSを示す。Z1及びZ2はそれぞれ独立にO、S又はNHを示す。V1及びV2はそれぞれ独立にS又はS+-O-を示し。n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示す。L10及びL12はそれぞれ独立に2価の連結基を示す。L11は3価の連結基を示す。L14は2価の連結基を示す。Sugarは糖の残基を示す。)
[2] n1及びn2が0である、下記式(2)で示される、[1]に記載の化合物又はその塩。
【化2】
(式中、X1a、X1b、X2a、X2b、Y1、Y2、Z1、Z2、V1、V2、L10、L12、L11、L14、及びSugarは、[1]と同義である)
[3] 下記式(3)で示される、[1]又は[2]に記載の化合物又はその塩。
【化3】
(式中、L10、L12、L11、L14、及びSugarは、[1]と同義である)
[4] L10及びL12がそれぞれ独立に、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、又はそれらの組み合わせである、[1]から[3]の何れかに記載の化合物又はその塩。
[5] L11が、
【化4】
で示される基である、[1]から[4]の何れかに記載の化合物又はその塩。
[6] L13が、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、
【化5】
又はそれらの組み合わせである、[1]から[5]の何れかに記載の化合物又はその塩。
[7] L14が、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、又はそれらの組み合わせである、[1]から[6]の何れかに記載の化合物又はその塩。
[8] 以下の何れかの化合物又はその塩。
【化6】
[9] [1]から[8]の何れかに記載の化合物又はその塩を含む、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体をクリアリングするためのクリアリングエージェント。
[10] ストレプトアビジン変異体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列において37番目のアミノ酸残基であるAsnが他のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジン変異体である、[9]に記載のクリアリングエージェント。
[11] ストレプトアビジン変異体が、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるストレプトアビジン変異体である、[9]又は[10]に記載のクリアリングエージェント。
【0010】
[12] [1]から[8]の何れかに記載の化合物又はその塩と、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体とを少なくとも含む、治療用、体内診断用又は体外診断用のキット。
[13] 下記式(10)で示される化合物で標識した、治療用、体内診断用又は体外診断用の物質をさらに含む、[12]に記載のキット。
【化7】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し、Y1及びY2はそれぞれ独立にC又はSを示し、Z1及びZ2はそれぞれ独立にO、S又はNHを示し、V1及びV2はそれぞれ独立にS又はS+-O-を示し、n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に1から10の整数を示し、Lは連結基を示す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天然ビオチンに対する親和性を低減させたストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体を体内から迅速に除去(クリアリング)することができる。
本発明のクリアリングエージェントは、ストレプトアビジン変異体と、ビオチン改変体の2量体化合物との組み合わせを用いたプレターゲティング法に基づく診断法・治療法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、125I標識プレターゲティング抗体-Cupidの投与の6時間後にクリアリングエージェントを投与した場合における、マウス血中クリアランスに及ぼすクリアリングエージェントの影響を解析した結果を示す。
図2図2は、125I標識プレターゲティング抗体-Cupidの投与の24時間後にクリアリングエージェントを投与した場合における、マウス血中クリアランスに及ぼすクリアリングエージェントの影響を解析した結果を示す。
図3図3は、化合物14(Zhepyr1)および化合物25(Zephyr2)とCupidとの親和性測定の結果を示す。
図4図4は、In vivo でのZephyr2によるCupidのクリアランスを確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
(1)クリアリングエージェント
本発明の化合物は、下記式(1)で示される化合物又はその塩であり、好ましくは式(1)においてn1及びn2が0である場合である下記式(2)で示される化合物である。
【化8】
【0014】
【化9】
【0015】
上記式中、X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し。Y1及びY2はそれぞれ独立にC又はSを示す。Z1及びZ2はそれぞれ独立にO、S又はNHを示す。V1及びV2はそれぞれ独立にS又はS+-O-を示し。n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示す。L10及びL12はそれぞれ独立に2価の連結基を示す。L11は3価の連結基を示す。L14は2価の連結基を示す。Sugarは糖の残基を示す。
【0016】
式(1)及び式(2)において、下記構造:
【化10】
で示される部分は好ましくは、
【化11】
の何れかであるが、これらに限定はされない。
【0017】
本発明の化合物は、好ましくは、式(3)で示される化合物又はその塩である。
【化12】
(式中、L10、L12、L11、L14、及びSugarは、上記と同義である)
【0018】
好ましくは、L10及びL12はそれぞれ独立に、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、又はそれらの組み合わせである。炭素数1から10のアルキレン基は、-COOCH3等の置換基を有していてもよい。
より好ましくは、L10及びL12はそれぞれ独立に、炭素数1から5のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、又はそれらの組み合わせである。炭素数1から5のアルキレン基は、-COOCH3等の置換基を有していてもよい。
【0019】
さらに好ましくは、L10及びL12はそれぞれ独立に、2つの炭素数1から5のアルキレン基と2つの-CONH-との組み合わせからなる連結基、あるいは2つの炭素数1から5のアルキレン基と2つの-NHCO-との組み合わせからなる連結基である。
【0020】
さらに好ましくは、L10及びL12はそれぞれ独立に、-(CH2p-CONH-(CH2q-CONH-、又は-NHCO-(CH2r-NHCO-(CH2s-である。式中、p、q、r及びsはそれぞれ独立に1から10の整数であり、好ましくは1から6の整数であり、より好ましくは2から6の整数であり、さらに好ましくは4又は5である。
さらに好ましくは、L10及びL12はそれぞれ独立に、-(CH2p-CONH-CH(COOCH3)-(CH2q-NHCO-、又は-CONH-(CH2r-CH(COOCH3)-NHCO-(CH2s-である。式中、p、q、r及びsはそれぞれ独立に1から10の整数であり、好ましくは1から6の整数であり、より好ましくは2から6の整数であり、さらに好ましくは4又は5である。
【0021】
L11は、3価の連結基であり、好ましくは、
【化13】
で示される基である。
【0022】
L13は、好ましくは、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、-O-、及び
【化14】
の組み合わせからなる連結基である。
【0023】
L14は、好ましくは、炭素数1から10のアルキレン基、-CONH-、-NHCO-、及び-O-の組み合わせからなる連結基である。
【0024】
Sugarは糖残基である。好ましい糖残基としては、特に限定されないが、グルコース、マンノース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルマンノサミン、N-アセチルガラクトサミンなどの残基を挙げることができる。
【0025】
本発明の化合物の具体例としては、以下の化合物又はその塩を挙げることができる。
【化15】
【0026】
上記した本発明の化合物(後記する実施例の化合物14および化合物25)は、後記する実施例1に記載の合成法又はそれに準じた合成法により合成することができる。
【0027】
3-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3アセトアミド-4,5-ジアセトキシ-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)プロピオン酸 (化合物2)の合成
化合物 1のジクロロメタン溶液に、3-メルカプトプロピオン酸と塩化スズ(IV)を加え、加熱還流し、溶媒を減圧留去し、0.1規定塩酸を加え酢酸エチルで抽出する。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することで化合物2を得る。
【0028】
(2R,3R,4R,5R,6S)-5アセトアミド-2-(アセトキシメチル)-6-((3-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-3-オキソプロピル)チオ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3.4-ジイルジアセテート (化合物3)の合成
化合物2 にアセトニトリルを加え、炭酸ジ(N-スクシンイミジル) を加えた後、ピリジンを加え室温で攪拌する。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物を中性シリカゲルクロマトグラフィーで精製することで、化合物3を得る。
【0029】
ジ-tert-ブチル(13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14,-ジアザヘプタデカン-17-イル)-13-ニトロ-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジイル)ジカーバメート (化合物5)の合成
ニトロメタントリスプロピオン酸とアミン4、 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩, 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール-無水和物にジクロロメタンを加えた後、トリエチルアミンを加え、室温で攪拌する。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え1規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することで、化合物5を得る。
【0030】
ジ-tert-ブチル(13-アミノ-13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14-ジアザヘプタデカデカン-17-イル)-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジイル)ジカーバメート (化合物6)の合成
塩化ニッケル(II)にメタノールを加えた後、水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温で攪拌する。化合物5のメタノール溶液を加えた後に、水素化ホウ素ナトリウムを徐々に加える。室温で攪拌し、セライトろ過をしたろ液を減圧留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出する。飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチル、ジクロロメタンで再抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して化合物6を得る。
【0031】
2,(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタ-1-ノール (化合物8)の合成
アルコール7のN,N-ジメチルホルムアミド溶液にアジ化ナトリウムを加え、80℃で攪拌する。蒸留水を加え、酢酸エチル、ジクロロメタンで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して化合物8を得る。
【0032】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)カーボネート (化合物9)の合成
化合物8のN,N-ジメチルホルムアミド溶液に炭酸ジ(N-スクシンイミジル)を加え、室温で攪拌する。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して化合物9を得る。
【0033】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチルジ-tert-ブチル(13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14-ジアザヘプタデカン-17-イル)-10,16-ジオキソー3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,13,25-トリイル)トリカーバメート (10)の合成
化合物9に化合物6のジクロロメタン溶液を加え、トリエチルアミンを加える。40℃で攪拌する。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え、1規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して化合物10を得る。
【0034】
13-(3-((2-(2-(2-(2-アンモニオエトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)-3-オキソプロピル)-13-(((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジアンモニウムトリ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (11)の合成
化合物10のジクロロメタン溶液に、トリフルオロ酢酸を加える。室温で攪拌し、溶媒を減圧留去して化合物11を含む粗生成物 (赤色油状)を得る。
【0035】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル(1,33-ビス(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-17-(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)3,14,20,31-テトラオキソ-7,10,24,27-テトラオキサ-4,13,21,30-テトラアザトリトリアコンタン-17-イル)カーバメート (12)の合成
スクシンイミド3, 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール-無水和物にアンモニウム塩11 (12 mg, 10μmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液を加えた後に、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを加える。室温で攪拌し、溶媒を減圧留去する。シリカゲルクロマトグラフィーでスクシンイミド3を除いた後に、メタノールで溶出する。得られた混合物にナトリウムメトキシドを加え、メタノールに溶解させる。室温で3時間攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相シリカゲルクロマトグラフィーで精製して化合物12 を得る。
【0036】
(3aS,3a'S,4S,4'S,6aR,6a'R)-4,4'-(((((5-((2-((1-(28-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-12,12-ビス(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)-10,15,26-トリオキソ-3,6,9,19,22-ペンタオキサ-11,16,25-トリアザオクタコシル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(アザンジイル))ビス(6-オキソヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザンジイル ))ビス(5-オキソペンタン-5,1-ジイル))ビス(テトラヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-2(3H)-イミニウム)ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (14)の合成
【0037】
ビスイミノビオチン13に化合物12を加え、硫酸銅-五水和物、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン、アスコルビン酸ナトリウムを加え、蒸留水,tert-ブタノールを加える。室温で攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相HPLCで精製することで化合物14を得る。
【0038】
ジメチル 6,6’-((5-(3-(2-(2-(2-(ペンタ-4-イナミド)エトキシ)エチル)ウレイド)イソフタロイル)ビス(アザネジイル))(2S,2`S)-ビス(2-(5-((3aS,4S,6aR)-2-イミノヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタナミド)ヘキサノエート) ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (23)の合成
ビスイミノビオチン21、N-ヒドロキシコハク酸イミジルエステル22にN,N-ジメチルホルムアミド、トリエチルアミンを加える。室温で攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を、自動精製装置で精製することで化合物23を得る。
【0039】
ジメチル 6,6`-((5-(3-(2-(2-(2-(3-(1-(28-(((2S,3R,4R,5R,6R,)-アセタミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-12,12-ビス(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセタミド-4,5ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)-10,15,26-トリオキソ-3,6,9,19,22-ペンタオキサ-11,16,25-トリアザオクタコシル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)プロパナミド)エトキシ)エトキシ)ウレイド)イソフタロイル)ビス(アザネジイル))(2S,2`S)-ビス(2-(5-((3aS,4S,6aR)-2-イミノヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタナミド)ヘキサノエート) ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (25)の合成
ビスイミノビオチン23に化合物24(化合物12と同じ)を加え、硫酸銅-五水和物 (CuSO4・5H2O)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン (TBTA)、アスコルビン酸ナトリウムを加え、蒸留水,アセトニトリルを加える。室温で攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相HPLCで精製することで、化合物25を得る。
【0040】
上記した本発明の式(1)、式(2)又は式(3)で示される化合物又はその塩は、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体をクリアリングするためのクリアリングエージェントとして使用することができる。
【0041】
(2)治療用、体内診断用又は体外診断用のキット
本発明による治療用、体内診断用又は体外診断用のキットは、上記した本発明の式(1)、式(2)又は式(3)で示される化合物又はその塩と、ストレプトアビジン変異体と分子プローブとの融合体とを少なくとも含む。
【0042】
本発明におけるストレプトアビジン変異体としては、配列番号3に記載のアミノ酸配列において37番目のアミノ酸残基であるAsnが他のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジン変異体であることが好ましい。
本発明におけるストレプトアビジン変異体としては、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるストレプトアビジン変異体であることが特に好ましい。
【0043】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質は、野生型(天然)のコアストレプトアビジンにおいて、
(1)10番目のアミノ酸残基のチロシンがセリンに置換している変異:
(2)71番目のアミノ酸残基のチロシンがセリンに置換している変異:
(3)72番目のアミノ酸残基のアルギニンがリジンに置換している変異:
(4)89番目のアミノ酸残基のグルタミン酸がアスパラギン酸に置換している変異:
(5)91番目のアミノ酸残基のアルギニンがリジンに置換している変異:
(6)104番目のアミノ酸残基のグルタミン酸がアスパラギンに置換している変異:
(7)11番目のアミノ酸残基のアスパラギンがアスパラギン酸に置換している変異;
(8)15番目のアミノ酸残基のセリンがアスパラギン酸に置換している変異:
(9)33番目のアミノ酸残基のセリンがアスパラギンに置換している変異;
を有するアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号4に記載のアミノ酸配列は、配列番号3に記載したアミノ酸配列においてさらに、
(10)37番目のアミノ酸残基のアスパラギンがグリシンに置換している変異:
を有するアミノ酸配列である。
【0045】
本発明で用いるストレプトアビジン変異体を製造するためには、ストレプトアビジン変異体をコードするDNAを発現ベクターに組み込み、この発現ベクターを宿主に形質転換することによって、本発明のストレプトアビジン変異体を発現させることができる。
【0046】
大腸菌を宿主とする場合には、ベクターとしては、複製起点(ori)を有し、さらに形質転換された宿主を選択するための遺伝子(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン又はクロラムフェニコールなどの薬剤に対する薬剤耐性遺伝子など)を有していることが好ましい。また、発現ベクターの場合には、宿主においてストレプトアビジン変異体を効率よく発現させることができるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーターまたはT7プロモーターなどを持っていることが好ましい。このようなベクターとしては、ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script、pGEX-5X-1(ファルマシア)、「QIAexpress system」(キアゲン)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21を使用することが好ましい)などが挙げられる。また、ベクターには、ストレプトアビジン変異体の収量をあげるためのシグナル配列などを付加することもできる。
【0047】
宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。また、可溶性を向上させるためのタグ、例えばグルタチオンーS-トランスフェラーゼやチオレドキシン、マルトース結合蛋白質をコードする配列が付加されていてもよい。また、精製を容易にすることを目的にした設計されたタグ、例えばポリヒスチジンタグ、Mycエピトープ、ヘマグルチニン(HA)エピトープ、T7エピトープ、XpressタグやFLAGペプチドタグ、その他の既知のタグ配列をコードする配列が付加されていてもよい。
【0048】
大腸菌以外にも、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3(インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS(Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11 、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
【0049】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
【0050】
ベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、原核生物および真核生物のいずれでもよい。例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。
【0051】
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO細胞、COS細胞、3T3細胞、HeLa細胞、Vero細胞、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9、Sf21、Tn5などを用いることができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポーレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
【0052】
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が蛋白質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
【0053】
原核細胞を使用する場合は、大腸菌(E. coli)、例えば、JM109、DH5α、HB101等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
【0054】
これらの細胞を、本発明のDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより本発明のストレプトアビジン変異体が得られる。培養は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、動物細胞の培養液として、例えば、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、約6~8であるのが好ましい。培養は、通常、約30~40℃で約15~200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。また、細胞の増殖を促進するための成長因子の添加を行ってもよい。
【0055】
ストレプトアビジン変異体は、分子プローブを結合させて使用することができる。分子プローブとしては、例えば抗体、ペプチド、核酸、アプタマー等を挙げることができ、具体的には、癌に特異的に発現する以下抗原を標的とした抗体、ペプチド、核酸、アプタマー等を用いることができる。
【0056】
エピレギュリン、ROBO1,2,3,4、1-40-β-アミロイド, 4-1BB, 5AC, 5T4, ACVR2B, 腺がん抗原, α-フェトプロテイン, アンギオポエチン2, 炭疽毒素, AOC3 (VAP-1), B-リンパ腫細胞, B7-H3, BAFF, βアミロイド, C242抗原, C5, CA-125, カルボニックアンヒドラーゼ9 (CA-IX), 心臓ミオシン, CCL11 (eotaxin-1), CCR4, CCR5, CD11, CD18, CD125, CD140a, CD147 (basigin), CD147 (basigin), CD15, CD152, CD154 (CD40L), CD154, CD19, CD2, CD20, CD200, CD22, CD221, CD23 (IgE受容体), CD25(IL-2受容体のα鎖), CD28, CD3, CD30 (TNFRSF8), CD33, CD37, CD38(サイクリックADPリボースヒドロラーゼ), CD4, CD40, CD41(インテグリンα-IIb), CD44 v6, CD5, CD51, CD52, CD56, CD6, CD70, CD74, CD79B, CD80, CEA, CFD, ch4D5, CLDN18.2, クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile),クランピング因子A, CSF2, CTLA-4, サイトメガロウイルス, サイトメガロウイルス糖タンパク質B, DLL4, DR5, E. coli 志賀毒素1型, E. coli志賀毒素2型、EGFL7, EGFR, エンドトキシン, EpCAM, エピシアリン(episialin), ERBB3, 大腸菌(Escherichia coli), 呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus)のFタンパク質, FAP, フィブリンIIβ鎖, フィブロネクチンエクストラドメイン-B, 葉酸受容体1, Frizzled 受容体, GD2, GD3ガングリオシド, GMCSF受容体α鎖, GPNMB, B型肝炎表面抗原, B型肝炎ウイルス、HER1, HER2/neu, HER3, HGF, HIV-1, HLA-DRβ, HNGF, Hsp90, ヒトβアミロイド,ヒト分散因子(scatter factor)受容体キナーゼ, ヒトTNF, ICAM-1 (CD54), IFN-α, IFN-γ, IgE, IgE Fc 領域, IGF-1受容体, IGF-I, IgG4, IGHE, IL-1β, IL-12, IL-13, IL-17, IL-17A, IL-22, IL-23, IL-4, IL-5, IL-6, IL-6受容体, IL-9, ILGF2, インフルエンザA ヘマグルチニン, インスリン様増殖因子I受容体, インテグリンα4, インテグリンα4β7, インテグリンα5β1, インテグリンα7 β7, インテグリンαIIbβ3, インテグリンαvβ3, インテグリンγ誘導タンパク質,インターフェロン受容体, インターフェロンα/β受容体, ITGA2, ITGB2 (CD18), KIR2D, L-セレクチン(CD62L), Lewis-Y抗原, LFA-1 (CD11a), リポタイコ酸, LOXL2, LTA, MCP-1, メソテリン、MS4A1, MUC1, ムチンCanAg, ミオスタチン, N-グリコリルノイラミン酸, NARP-1, NCA-90 (顆粒球抗原), NGF, NOGO-A, NRP1, Oryctolagus cuniculus, OX-40, oxLDL, PCSK9, PD-1, PDCD1, PDGF-R α, フォスファチジルセリン,前立腺がん細胞、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa),狂犬病ウイルス糖タンパク質、RANKL, 呼吸器合胞体ウイルス, RHD, Rh(Rhesus)因子, RON, RTN4, スクレロスチン, SDC1, セレクチンP, SLAMF7, SOST, スフィンゴシン-1-ホスフェート, TAG-72, TEM1, テネイシンC, TFPI, TGFβ1, TGFβ2, TGF-β, TNF-α, TRAIL-R1, TRAIL-R2, 腫瘍抗原CTAA16.88,MUC1の腫瘍特異的グリコシル化, TWEAK受容体, TYRP1(グリコプロテイン75), VEGF-A, VEGFR-1, VEGFR2, ビメンチン, VWF
【0057】
分子プローブの好ましい具体例としては、抗ヒトCD20抗体(例えば、リツキシマブ)、又は抗エピレギュリン一本鎖抗体である。
リツキシマブは抗ヒトCD20抗体であり、ヒトCD20はヒトB細胞にのみ発現する。マウス型抗CD20モノクロナール抗体に放射性同位元素90Yを標識した細胞性非ホジキンスリンパ腫、マントル細胞リンパ腫治療薬が、ゼヴァリン(登録商標)として市販されている。当該医薬品は、抗CD20抗体に直接RIが標識され、体内投与後腫瘍集積までに数日の時間を要する。そのためRIによる骨髄抑制などの重篤な副作用が生じる。これらの解決策として、プレターゲッティング法が提唱されている。Pagneliらは、抗CD20抗体-scfvとストレプトアビジン変異体との融合タンパク及びRI標識ビオチンあるいはビスビオチンを用いたプレターゲッティング法の検討を行っている。
【0058】
エピレギュリン(Epiregulin)は、上皮細胞成長因子(epidermal growth factor)のメンバーであり、Hela細胞の形態変化を誘導する癌増殖阻害因子として機能することが知られている。油谷らは、抗epireulin抗体を作製した(WO2008/047723)。またLeeらは、抗エピレギュリン抗体のヒト化とその評価を行った(Biochemical and Biophysical Research communications 444(2013)1011-1017)。
【0059】
即ち、癌抗原特異的抗体分子などの分子プローブとストレプトアビジン変異体との融合体を調製し、患者に投与することで、癌細胞に特異的にストレプトアビジン変異体を集積できることができる。その後、上記ストレプトアビジン変異体に親和性を有するビオチン改変体に結合させた診断用もしくは治療用物質(蛍光色素、化学発光剤、放射性同位元素、金属化合物等からなる増感剤、金属化合物等からなる中性子捕捉剤、薬剤などの低分子化合物、マイクロあるいはナノバブル、タンパク質など)を患者に投与することによって、癌細胞へ的確に物質を集積させることが可能になる。
【0060】
本発明においては、分子プローブとストレプトアビジン変異体との融合体を患者に投与した後に、本発明のクリアリングエージェントを投与することにより、癌細胞に特異的に集積せずに体内に残存している上記融合体を迅速に体内から除去(クリアリング)することができる。これにより、診断用もしくは治療用物質が、非特異的に集積することを防止することができ、診断における偽陽性、治療における副作用を軽減することができる。
【0061】
ストレプトアビジン変異体に結合させる抗体は種々の分子を用いることができる。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体はどちらも使用することができる。抗体のサブクラスは特に問わないが、好ましくはIgG、特にIgG1が好適に用いられる。また、「抗体」は改変抗体および抗体断片の全てを含む。ヒト化抗体、ヒト型抗体、ヒト抗体、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、サル等の各種動物由来抗体、ヒト抗体と各種動物由来抗体とのキメラ抗体、diabody、scFv、Fd、Fab、Fab‘、F(ab)’2が挙げられるが、これらに限らない。
【0062】
ストレプトアビジン変異体と抗体の融合体は、当業者に公知の方法を用いて得ることができる。例えば、化学的結合方法(US5,608,060)によって得ることもできるし、ストレプトアビジン変異体をコードするDNAと抗体をコードするDNAを連結し、発現ベクター等を用いて宿主細胞に発現させることにより、融合タンパクとして得ることもできる。ストレプトアビジン変異体をコードするDNAと抗体をコードするDNAとの連結は、リンカーと呼ばれる適当なペプチドをコードするDNAを介しても良い。ストレプトアビジン変異体―抗体融合体は、抗体と標的分子との特異的結合力を残して作製されることが望ましい。
【0063】
本発明のキットは、下記式(10)で示される化合物で標識した、治療用、体内診断用又は体外診断用の物質をさらに含むものでもよい。
【化16】
【0064】
(式中、X1a、X1b、X2a及びX2bはそれぞれ独立にO又はNHを示し、Y1及びY2はそれぞれ独立にC又はSを示し、Z1及びZ2はそれぞれ独立にO、S又はNHを示し、V1及びV2はそれぞれ独立にS又はS+-O-を示し、n1及びn2はそれぞれ独立に0又は1の整数を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に1から10の整数を示し、Lは連結基を示す。)
【0065】
上記した式(10)で示される化合物(以下、ビオチン改変体2量体化合物とも言う)は、国際公開WO2015/125820において式(1)で示される化合物として記載されている。国際公開WO2015/125820に記載されている内容、特に国際公開WO2015/125820における式(1)で示される化合物とその好ましい構造は全て本願明細書に引用するものとする。本発明における上記した式(10)で示される化合物としては、国際公開WO2015/125820に記載されている下記の具体的化合物を使用することができる。
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
【化19】
【0069】
【化20】
【0070】
【化21】
【0071】
本発明では、式(10)で示される化合物(ビオチン改変体2量体化合物)で標識した、治療用、体内診断用又は体外診断用の物質を使用することができる。
治療用、体内診断用又は体外診断用の物質として放射性同位元素を使用する場合には、式(10)で示されるビオチン改変体2量体化合物に、放射性同位元素を捕捉するキレート基が結合している化合物を使用してもよい。キレート基としては、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N、N'、N''、N'''-テトラ酢酸), DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-N、N'、N''、N'''-テトラ酢), N2S2、MAG3、CHX-A-DTPA、などを挙げることができる。
【0072】
上記したキレート基が結合している化合物に放射性同位元素が捕捉されている化合物を提供することができる。キレート基に捕捉される放射性同位元素の内、イメージング用の放射性同位元素としてはガンマ線核種(67Ga、99mTc、111In、123I、ポジトロン放出核種(18F、62Cu、64Cu、66Ga、68Ga、76Br、86Y、89Zr、4Tc、124I),を用いることができる。治療用の放射性同位元素としては、ペーター線核種(32P、67Cu、89Sr、90Y、114mIn、117mSn、131I、153Sm、166Ho、177,Lu、186,Re、188Re等)、アルファー線核種(211At、212Bi、212,Pb、213Bi、223Ra、225Ac等)、オージェ電子線核種(125I、165Er等)、を用いることができる。上記の中でも好ましくは、64Cu、124I,76Br, 68Ga、99mTc、123I、131I、90Yを用いることができる。
【0073】
本発明においては、上記したビオチン改変体2量体化合物に蛍光化合物又は薬剤化合物(例えば、抗がん剤)が結合している化合物を使用することもできる。
本発明で用いることができる蛍光化合物としては、フルオレセイン5-イソチオシアナート (FITC)、IR Dye(登録商標)800、又はフルオレセインなどを挙げることができる。本発明で用いることができる薬剤(例えば、抗がん剤)としては、PBD (ピロロベンゾジアゼピン)クラス(例えば、SJG-136、SG2202など)、メイタンシン(maytansine) 類縁体(例えば、DM1、DM4など)、ドラスタチン(dolastatin) 類縁体(例えば、Monomethyl auristatin E (MMAE)、Monomethyl auristatin F (MMAF)、dolastatin 10、tubulysinなど)、デュオカルマイシン(duocarmycin)類縁体(例えば、DC1、DC4、DC44など)、カンプトテシン( camptothecin)類縁体(例えば、SN-38など)、その他(例えば、メトトレキサート(methotrexate)、ビンブラスチン(vinblastine)、カリケアミシン(calicheamicin)、α-アマニチン(α-amanitin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、メルファラン(melphalan))などを挙げることができる。
【0074】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0075】
実施例1:クリアリングエージェント(化合物14)の合成
一般的方法
核磁気共鳴 (NMR) スペクトルは、JEOL ECX500 (1H NMR: 500MHz)、またはJEOL ECS400(1H NMR: 400MHz) スペクトロメータを用いて測定した。化学シフトは、内部参照として重溶媒中の残存溶媒ピークに対する値としてppmで記載した (CDCl3:δ= 7.26 ppm, CD3OD:δ= 3.31 ppm)。低分解能質量スペクトル (LRMS) は、島津製作所 LCMS-2020によりESI-MSを用いて測定した。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル 関東化学 60 (40~50μm) 、あるいはシリカゲル 関東化学 60N (40~100 μm)、WakosilR 40C18 (30~50 μm, 70+%)を用いて行った。反応は薄層クロマトグラフィー (TLC)、あるいは低分解能質量分析 (LRMS) によって追跡した。
【0076】
逆相高速液体クロマトグラフフィー (HPLC) は、JASCO-HPLCシステムを用いて行った。210 nm または 254 nmの紫外光を用いて検出し、移動相はグラジエント溶媒系 (アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸MQ溶液) を用いた。分析については、YMC-Pack ODS-AM (150×4.6 mL) またはYMC-Triart-C18 (150×4.6 mL) のカラムを用い、流速 1 mL/minで行った。分取については、YMC-Triart-C18 (250×10 mL) のカラムを用い流速3 mL/minで行った。
【0077】
試薬は、Aldrich、東京化成工業株式会社 (TCI)、関東化学株式会社 (Kanto)、和光純薬工業株式会社、渡辺化学工業株式会社から購入した。全ての試薬及び溶媒は、特に明記が無い限り市販品をそのまま使用した。
【0078】
3-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3アセトアミド-4,5-ジアセトキシ-6-(アセトキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)プロピオン酸 (化合物2)
【化22】
【0079】
既知の手法(Wangら、Journal of Bacteriology,(2014),196,3122)により合成した化合物 1(386 mg,0.99 mmol)のジクロロメタン(10 mL)溶液に、3-メルカプトプロピオン酸(158 mg,129 μL)と塩化スズ(IV) (336 mg,149 μL)を加え、60℃で18時間加熱還流した。溶媒を減圧留去し、0.1規定塩酸を加え酢酸エチルで2度抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=15:1 酢酸0.5 %)で精製することで化合物2(300 mg, 収率 70%,白色アモルファス状)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ:1.97(s, 3H) , 2.00(s, 3H) , 2.07(s, 3H) , 2.17(s, 3H) , 2.77(ddd, 2H, J = 6.9, 6.9, 2.3 Hz) , 2.98 (ddd, 2H, J = 6.9, 6.9, 2.3 Hz) , 3.89 (t, 1H, J = 5.8 Hz) , 4.06 (dd, 1H, J = 11.5, 6.9 Hz) , 4.19-4.25 (m, 2H) , 4.74 (d, 1H, J = 10.3 Hz) , 5.13 (dd, 1H, J = 10.9, 3.5 Hz) , 5.39 (d, 1H, J = 3.5 Hz) , 5.51 (d, 1H, J = 9.2).
【0080】
(2R,3R,4R,5R,6S)-5アセトアミド-2-(アセトキシメチル)-6-((3-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-3-オキソプロピル)チオ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3.4-ジイルジアセテート (化合物3)
【化23】
【0081】
カルボン酸2 (300 mg, 0.69 mmol) にアセトニトリル (7.0 mL)を加え、炭酸ジ(N-スクシンイミジル) (265 mg, 1.0 mmol) を加えた後、ピリジン (164 mg, 167 μL, 2.1 mmol)を加え室温で17時間半攪拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1度、飽和食塩水で1度洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物を中性シリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール=30:1)で精製することで、標題化合物3 (297 mg, 収率80 %, 白色アモルファス状)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ:1.96 (s, 3H), 2.00 (s, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 2.89-2.99 (m, 6H), 3.05-3.22 (m, 2H), 3.88-3.91 (dd, 1H, J = 6.6, 6.6 Hz), 4.12 (dd, 1H, J = 3.1, 6.6), 4.15 (dd, 1H, J = 3.1, 6.6), 4.30 (q, 1H, J =10.3 Hz), 4.70-4.72 (d, 1H, J =10.3 Hz), 5.05 (dd, 1H, J =10.9, 3.5 Hz), 5.38 (d, 1H, J =3.5 Hz), 5.90 (d, 1H, J =9.8 Hz)
【0082】
ジ-tert-ブチル(13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14,-ジアザヘプタデカン-17-イル)-13-ニトロ-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジイル)ジカーバメート (化合物5)
【化24】
【0083】
ニトロメタントリスプロピオン酸 (150 mg, 0.54 mmol)と既知の手法 (Wilburら, Bioconjugate.Chem. (2010) 21, 1225) により合成したアミン4 (436 mg, 1.8 mmol), 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (WSC・HCl, 363 mg, 1.9 mmol), 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール-無水和物 (HOBt anhydrous, 256 mg, 1.9 mmol)にジクロロメタン (5.4 mL)を加えた後、トリエチルアミン (274 mg, 0.38 mL, 2.7 mmol)を加え、室温で13時間半攪拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え1規定塩酸で1度、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1度、飽和食塩水で1度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール=20:1)で精製することで、標題化合物5 (412 mg, 収率 79 %, 透明油状)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ:1.42 (s, 27H), 2.16 (d, 6H, J =5.6 Hz), 2.24 (d, 6H, J =7.5 Hz), 3.29 (d, 6H, J =5.2 Hz), 3.42 (q, 6H, J =5.2 Hz), 3.51-3.55 (m, 24H), 5.12 (brs, 2H), 6.45 (brs, 2H).
【0084】
ジ-tert-ブチル(13-アミノ-13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14-ジアザヘプタデカデカン-17-イル)-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジイル)ジカーバメート (化合物6)
【化25】
【0085】
塩化ニッケル(II) (36 mg, 0.28 mmol)にメタノール (4.0 mL)を加えた後、水素化ホウ素ナトリウム (33 mg, 0.83 mmol)を加え、室温で30分攪拌した。化合物5 (269 mg, 0.28 mmol)のメタノール (12 mL)溶液を加えた後に、水素化ホウ素ナトリウム (166 mg, 4.2 mmol)を徐々に加えた。室温で2時間半攪拌し、セライトろ過をしたろ液を減圧留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2度抽出した。飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチルで1度、ジクロロメタンで1度再抽出をした。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して標題化合物6 (237 mg, 収率 91 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ:1.42 (s, 27H), 1.67 (brs, 6H), 2.24 (brs, 6H), 3.29-3.31 (m, 6H), 3.42 (q, 6H, J =5.0 Hz), 3.53 (q, 12H, J =5.5 Hz), 3.59 (s, 12H), 5.24(brs, 2H), 6.58(brs, 2H).
【0086】
2,(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エタ-1-ノール (化合物8)
【化26】
【0087】
アルコール7(4.15 g, 14 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド (30 mL)溶液にアジ化ナトリウム(1.78 g, 27 mmol)を加え、80℃で18時間攪拌した。蒸留水を加え、酢酸エチルで2度、ジクロロメタンで3度抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して標題化合物8 (2.26 g, 収率 94 %, 黄褐色油状)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ:2.36 (brs, 1H), 3.36 (t, 2H, J =5. 3 Hz), 3.52-3.71 (m, 10H)
【0088】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)カーボネート (化合物9)
【化27】
【0089】
アルコール8 (514 mg, 2.9 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド (10 mL)溶液に炭酸ジ(N-スクシンイミジル) (1.2 g, 4.9 mmol)を加え、室温で24時間半攪拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1度、飽和食塩水で1度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して標題化合物9 (781 mg, 収率 85 %, 黄褐色油状)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ:2.83 (s, 4H), 3.39 (t, 2H, J =5.3 Hz), 3.66-3.70 (m, 6H), 3.78-3.80 (m, 2H), 4.45-4.48 (m, 2H).
【0090】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチルジ-tert-ブチル(13-(2,2-ジメチル-4,15-ジオキソ-3,8,11-トリオキサ-5,14-ジアザヘプタデカン-17-イル)-10,16-ジオキソー3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,13,25-トリイル)トリカーバメート (10)
【化28】
【0091】
化合物9 (44 mg, 0.14 mmol)にアミン6 (100 mg, 0.11 mmol)のジクロロメタン (1.4 mL)溶液を加え、トリエチルアミン (NEt3, 53 mg, 74 μL, 0.52 mmol)を加えた。40℃で12時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを加え、1規定塩酸で1度、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1度、飽和食塩水で1度洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン/メタノール=15:1→10:1)で精製して標題化合物10 (51 mg, 収率 42 %)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ:1.37 (s, 27H), 1.88-1.91 (m, 6H), 2.12-2.16 (m, 6H), 3.07 (s, 2H), 3.25-3.26 (d, 6H, J =5.0 Hz), 3.32-3.37 (m, 8H), 3.46-3.63 (m, 34H), 4.08 (brs, 2H), 5.22 (brs, 2H), 6.65 (brs, 2H).
【0092】
13-(3-((2-(2-(2-(2-アンモニオエトキシ)エトキシ)エチル)アミノ)-3-オキソプロピル)-13-(((2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)-10,16-ジオキソ-3,6,20,23-テトラオキサ-9,17-ジアザペンタコサン-1,25-ジアンモニウムトリ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (11)
【化29】
【0093】
化合物10のジクロロメタン (1.5 mL)溶液に、トリフルオロ酢酸 (TFA, 0.75 mL)を加えた。室温で1時間半攪拌し、溶媒を減圧留去して標題化合物11を含む粗生成物 (赤色油状)を得た。得られた粗生成物は更なる精製操作を行わずに次の反応に用いた。
LRMS (ESI): m/z 834 [M+H]+.
【0094】
2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エチル(1,33-ビス(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-17-(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)3,14,20,31-テトラオキソ-7,10,24,27-テトラオキサ-4,13,21,30-テトラアザトリトリアコンタン-17-イル)カーバメート (12)
【化30】
【0095】
スクシンイミド3 (18 mg, 34 μmol), 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール-無水和物 (HOBt anhydrous, 1.1 mg, 8.5 μmol)にアンモニウム塩11 (12 mg, 10μmol)のN,N-ジメチルホルムアミド (170 μL)溶液を加えた後に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン (DIPEA, 85 μL)を加えた。室温で25時間半攪拌し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=10:1→8:1)でスクシンイミド3を除いた後に、メタノールで溶出した。得られた混合物 (14.9 mg)にナトリウムメトキシド (NaOMe, 2.0 mg, 37 μmol)を加え、メタノール (1.0 mL)に溶解させた。室温で3時間攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相シリカゲルクロマトグラフィー (水→メタノール)で精製して標題化合物12 (8.0 mg, 収率 46 %, 白色アモルファス状)を得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ:1.93-1.96 (m,6H), 1.97 (s, 9H), 2.20-2.23(m,6H), 2.56 (dd, 6H, J =7.5, 6.9 Hz), 2.87 (ddd, 3H, J =13.8, 6.9, 6.9 Hz), 3.02 (ddd, 3H, J =13.8, 7.5, 7. 5 Hz), 3.36-3.39 (m, 15H), 3.55-3.63 (m, 35H), 3.66 (s, 4H), 3.66-3.73 (m, 6H), 3.81 (dd, 3H, J =11.5, 7.5 Hz), 3.88 (d, 3H, J =2.9 Hz), 4.04 (t, 3H, J =10.3 Hz), 4.12 (brs, 2H), 4.478 (d, 3H, J =10.9 Hz).
【0096】
(3aS,3a'S,4S,4'S,6aR,6a'R)-4,4'-(((((5-((2-((1-(28-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-12,12-ビス(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセトアミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)-10,15,26-トリオキソ-3,6,9,19,22-ペンタオキサ-11,16,25-トリアザオクタコシル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メトキシ)エチル)カルバモイル)-1,3-フェニレン)ビス(アザンジイル))ビス(6-オキソヘキサン-6,1-ジイル))ビス(アザンジイル ))ビス(5-オキソペンタン-5,1-ジイル))ビス(テトラヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-2(3H)-イミニウム)ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (14)
【化31】
【0097】
ビスイミノビオチン13 (3.6 mg, 3.2 μmol)に化合物12 (5.4 mg, 3.2 μmol)を加え、硫酸銅-五水和物 (CuSO4・5H2O, 2.2 mg, 8.7 μmol)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン (TBTA, 0.4 mg, 7.5 μmol)、アスコルビン酸ナトリウム (ascorbic acid Na, 2.5 mg, 13 μmol)を加え、蒸留水 (100 μL),tert-ブタノール (200 μL)を加えた。室温で4時間半攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相HPLC (YMC-Pack YMC-Triart-C18グラジエント: 0-20-20.5-60.5-61 min; 0.5-0.5-17.5-57.5-100% CH3CN in 0.1% TFA MQ, ramp time 40 min (17.5-57.5%), tR = 35.4 min)で精製することで標題化合物14 (3.9 mg, 収率 49 %, 白色固体)を得た。化合物14はZephyr1とも言う。
LRMS (ESI): m/z 875 [M+3H]3+.
【0098】
ジメチル 6,6’-((5-(3-(2-(2-(2-(ペンタ-4-イナミド)エトキシ)エチル)ウレイド)イソフタロイル)ビス(アザネジイル))(2S,2`S)-ビス(2-(5-((3aS,4S,6aR)-2-イミノヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタナミド)ヘキサノエート) ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (23)
【化32】
【0099】
ビスイミノビオチン21 (21.8 mg, 0.015 mmol)、N-ヒドロキシコハク酸イミジルエステル22 (3.9 mg, 0.020 mmol)にN,N-ジメチルホルムアミド (0.2 mL)、トリエチルアミン (6.4 μL, 0.046 mmol)を加えた。室温で7時間半攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を、自動精製装置 (山善 ODS-SM 50μm グエラジエント: 0-1-20-25 min; 5-5-80-100 % MeOH in 0.1% TFA水で精製することで標題化合物23 (16 mg, 69 %, 褐色油状)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ:1.41-1.78 (m, 22H), 1.83-1.92 (m, 2H), 2.24 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 2.26 (t, 4H, J = 2.8 Hz), - (m, 4H), 2.80 (d, 2H, J = 10.2 Hz), 2.98 (dd, 2H, J = 13.3, 5.0 Hz), 3.23-3.28 (m, 2H), 3.34-3.42 (m, 8H), 3.57 (dt, 4H, J = 17.4, 5.5 Hz) 3.64 (s, 4H), 3.70 (s, 6H), 4.40 (dd, 2H, J = 9.6, 5.0 Hz), 4.51 (dd, 2H, J = 8.2, 4.6 Hz), 4.71 (dd, 2H, J = 5.0, 7.8 Hz), 7.81 (s, 1H), 7.95 (d, 2H, J = 1.8 Hz)
【0100】
ジメチル 6,6`-((5-(3-(2-(2-(2-(3-(1-(28-(((2S,3R,4R,5R,6R,)-アセタミド-4,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-12,12-ビス(16-(((2S,3R,4R,5R,6R)-3-アセタミド-4,5ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)チオ)-3,14-ジオキソ-7,10-ジオキサ-4,13-ジアザヘキサデシル)-10,15,26-トリオキソ-3,6,9,19,22-ペンタオキサ-11,16,25-トリアザオクタコシル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)プロパナミド)エトキシ)エトキシ)ウレイド)イソフタロイル)ビス(アザネジイル))(2S,2`S)-ビス(2-(5-((3aS,4S,6aR)-2-イミノヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル)ペンタナミド)ヘキサノエート) ジ(2,2,2-トリフルオロアセテート) (25)
【化33】
【0101】
ビスイミノビオチン23 (2 mg, 1.4 μmol)に化合物24(化合物12と同じ) (2.4 mg, 1.4 μmol)を加え、硫酸銅-五水和物 (CuSO4・5H2O, 2.2 mg, 8.7 μmol)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン (TBTA, 0.8 mg, 1.5 μmol)、アスコルビン酸ナトリウム (ascorbic acid Na, 4.0 mg, 20 μmol)を加え、蒸留水 (100 μL),アセトニトリル (100 μL)を加えた。室温で3時間攪拌し、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物を逆相HPLC (YMC-Pack YMC-Triart-C18グラジエント: 0-20-20.5-60.5-61 min;5-5-17.5-57.5-100% MeCN in 0.1% TFA MQ, ramp time 40 min (17.5-57.5 %),tR= 37.2 min)で精製することで、標題化合物25 (0.5 mg, 11 %, 白色固体)を得た。化合物25はZephyr2とも言う。
LRMS (ESI): m/z 721.7 [M+3H]3+.
【0102】
実施例2:抗CEA-Cupid (ST03-Cupid) の発現ベクターの構築
CEACAM5のN-A1部分を認識するscFv型抗体ST03の遺伝子配列は文献をもとに作製した(US 7626011:Antibodies against tumor surface antigens)。ST03遺伝子とCupid遺伝子とを融合させたST03-Cupidの遺伝子配列は人工遺伝子合成(Eurofingenomics社)を行った(配列番号1)。Cupidとは、WO2015/125820号公報に記載されているV2122(LISA314-V2122とも言う)(WO2015/125820号公報における配列番号4)と称されるタンパク質である。Cupidのアミノ酸配列を、本願の配列表の配列番号4に示す。
【0103】
次に文献を参照し、シャペロン機能を有するタンパク質skpと目的のタンパク質ST03-Cupidと同時に大腸菌で発現させることで可溶性画分にて回収する方法を実施した(国際公開WO2015125820: ビオチン改変体、ストレプトアビジン変異体およびそれらの利用)。具体的には、発現ベクターpETDuet-1(Novagen社)のマルチクローニングサイト1(MCS1)にST03-Cupid遺伝子を組み込み、マルチクローニングサイト2(MCS2)にskp遺伝子(配列番号2)を組み込んだ。ST03-Cupid遺伝子を組み込みは、制限酵素サイトNcoIとEcoRIでベクターを処理し、プライマー(1740_Fw; AGGAGATATACCATGAAATATCTGCTGCCGACCG(配列番号5), 1741_Rv; CGCCGAGCTCGAATTTTAATGATGGTGATGATGATG(配列番号6))を使用し増幅したST03-Cupid遺伝子をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社)を用いてライゲーションおよびクローニングを行った。その後、ST03-Cupid遺伝子が正しく組み込まれたことをシーケンスで確認した。次に、ST03-Cupid遺伝子が組み込まれたベクターを制限酵素NdeIで処理し、プライマー(skp_Fw; AAGGAGATATACATATGGATAAAATTGCCATTGTTAATAT(配列番号7), skp_Rv; TTGAGATCTGCCATATGTTATTTCACTTGTTTCAGAACG(配列番号8))を使用し増幅したskp遺伝子をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社)を用いてライゲーションおよびクローニングを行った。その後、skp遺伝子が正しく組み込まれたことをシーケンスで確認した。これによりST03-Cupidタンパク質とskpタンパク質とを同時に発現できるベクター (pETDuet-ST03-Cupid_skp) が完成した。
【0104】
実施例3:ST03-Cupidの発現
pETDuet-ST03-Cupid_skp ベクターをBL21(DE3)(ニッポン・ジーン社)に形質転換し2xYT培地(BD社)、37℃にて一晩、前培養を行った。前培養を行った培地を新しい培地に100倍希釈になるように添加し、OD(600nm) = 2.0になるまで37℃で培養を行った。次に最終濃度0.5 mM IPTGを添加し37℃で4時間培養し、遠心分離後、培養上清を回収し4℃で保存した。
【0105】
実施例4:ST03-Cupidの精製
ST03-Cupidタンパク質は、C末端に付加されている6xHis-Tagを利用しバッチ法で粗精製を行った。具体的にはバッファーA(50mM TrisHCl, 0.2M NaCl, 1mM EDTA, 5mM Imidazole, pH8.0)で平衡化したcOmplete His-Tag Purification Resin を4℃で保存した培養上清へ添加し、2時間から一晩、4℃にて撹拌しレジンへのタンパク質結合処理を行った。次にレジンをカラムに回収し、バッファーAで20カラム容量の洗浄作業を行った。その後、バッファーB(50mM TrisHCl, 0.2M NaCl, 1mM EDTA, 400mM Imidazole, pH8.0)で溶出しST03-Cupidの粗精製物の回収を行った。
【0106】
次に、Protein L カラム(Capto L; GE Healthcare)による精製を行った。PBSで平衡化したカラムに上述の粗精製物を注入しレジンへのタンパク質結合処理を行ったのちに20カラムボリュームのPBSで洗浄後、10 mMグリシン塩酸バッファー pH2.1 にて溶出した。溶出したタンパク質溶液は脱塩カラム(PD-10 Colum, GE Healthcare)を用いて溶媒をPBSに置換し、限外ろ過カラム(VIVASPIN Turbo 15, Sartorius)にて濃縮を行った。
【0107】
実施例5:ST03-Cupidのヨウ素標識作製
精製されたST03-Cupidタンパク質にN-succinimidyl-3-(4-hydroxy-3-[125I]iodophenyl)propionate, Bolton-Hunter Reagent (NEX120, PerkinElmer)を用いて放射性ヨウ素標識を行った。具体的には、使用するタンパク質のモル数に対し20倍モルのBolton-Hunter Reagentをエッペンチューブ取り出し、溶媒を気化させたのちにタンパク質溶液を添加して氷上で2時間反応させた。その後、脱塩カラム(PD MiniTrap G-25, GE Healthcare)にて未反応の放射性ヨウ素Bolton-Hunter Reagentを取り除き、限外ろ過カラム(VIVASPIN Turbo 4, Sartorius)にて濃縮を行った。濃縮後、ドーズキャリブレータ(CRC-25w, CAPINTEC)で放射能量の測定およびSDS-PAGEによるCBB染色にてタンパク質のクオリティーチェックを行った。
【0108】
実施例6:クリアリングエージェント(化合物14)のin vivo試験
化合物14(Zephyr1)の有効性を確認するために125I標識されたST03-Cupid([125I]ST03-Cupid)を雄性マウスに単回静脈内投与し、継時的に採血し、化合物14投与による血液中放射能濃度変化の測定を行った。具体的に実験群は4群準備した。1群目は[125I]ST03-Cupidを投与し6時間後に化合物14を単回静脈内投与する群とし、2群目は1群目のコントロール群として化合物14の代わりに生理食塩水を投与する群とした。さらに3群目は[125I]ST03-Cupidを投与し24時間後に化合物14を単回静脈内投与する群とし、4群目は3群目のコントロール群として化合物14の代わりに生理食塩水を投与する群とした。
【0109】
具体的にマウスへの[125I]ST03-Cupidの投与は濃度50 kBq/100 μL の[125I]ST03-Cupidを100μL単回静脈内投与した(143 pmol/50 kBq/100 μL injection)。さらに[125I]ST03-Cupid投与6時間後または24時間後に化合物14 をST03-Cupidの投与モル数の2倍量(286 pmol/100 μL injection)もしくは生理食塩水を100μL投与した。またマウスは各群n=4~6で行った。
【0110】
採血は継時的にマウスの眼窩静脈から行った。[125I]ST03-Cupidを投与後6時間後に化合物14を投与した場合の採血は1回目:[125I]ST03-Cupid投与10分後、2回目:[125I]ST03-Cupid投与6時間後、3回目:Saline又は化合物14を投与10分後、4回目:Saline又は化合物14を投与1時間後、5回目:Saline又は化合物14を投与3時間後、6回目:Saline又は化合物14を投与18時間後、7回目:Saline又は化合物14を投与24時間後に行った。同様に[125I]ST03-Cupidを投与後24時間後に化合物14を投与した場合の採血は1回目:[125I]ST03-Cupid投与10分後、2回目:[125I]ST03-Cupid投与24時間後、3回目:Saline又は化合物14を投与10分後、4回目:Saline又は化合物14を投与1時間後、5回目:Saline又は化合物14を投与3時間後、6回目:Saline又は化合物14を投与6時間後、7回目:Saline又は化合物14を投与24時間後に行った。採取された血液(40~50μL)はガンマカウンタにより測定を行った。結果は、ガンマカウンタにより測定された計数率(dmp)を採血量(g)で割り単位重さ当たりの計数率(dpm/g of blood)を計算しグラフ化した。同様に投与前の[125I]ST03-Cupidの計数率で割ることで投与後投与量のうち残存する割合(%ID/g of blood)を計算しグラフ化した。測定の結果を表1及び2並びに図1及び2に示す。これらの結果から、本発明のクリアリングエージェントにより、ST03-Cupidの血中濃度を効率的に低下させることができることが示され、クリアリングエージェントとしての有用性が示された。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
実施例7:化合物14(Zhepyr1)および化合物25(Zephyr2)とCupidとの親和性測定
Zephyr1およびZephyr2のCupidに対する親和性を確認するためにSPR (Biacore T200) によるカイネティクス解析を行った。具体的には、リガンドであるCEA-CupidをSensor Chip CM5 (GE Healthcare) に Amin Coupling Kit (GE Healthcare) を用いて5000RUをターゲットにして固定化し、アナライトであるZephyr1 もしくはZephyr2 を10 nM から2倍希釈5系列をもちいて Single Cycle Kinetics 法によりカイネティクス解析を実施した。取得したデータをBiacore T200 Evaluation Software, version 2.0 (GE Healthcare) を使用し Bivalent Analyte モードでフィッティングしカイネティクスパラメータを算出した。その結果、Zephyr1: ka = 3.792E+4、kd = 4.42E-6(図3のA)およびZephyr2: ka = 1.578E+7、kd = 0.09339(図3のB)となった。 すなわち Zephyr1 KD = ka/kd = 1.167E-10 MおよびZephyr2: KD = ka/kd = 5.885E-09 Mとなった。この結果より、Zephyr2 (KD = 5.885E-09 M )はZephyr1 (KD = 1.167E-10 M )に比べCupidへの親和性が約50分の1に低下していることが確認された。
【0114】
実施例8
<標識体Psyche-B-DOTA(111In)の調製>
111InCl3溶液 37 MBq (約20 pmol)に、同体積の100 mM 酢酸バッファーを加えpH4~5とし、Psyche-B-DOTAをモル比で1000倍 (10 nmol)、DMSO濃度0.2%以上となるよう添加し、80℃で15分以上加熱する。これをHPLCで分析し、放射化学的純度を確認した。これを1 nmol/mLとなるように10 mM酢酸バッファーで希釈し、これを投与液とした。
【0115】
<In vivo でのZephyr2によるCupidのクリアランス>
生体内の血中に存在するCupidがZephyr2 によりクリアランスをされるかどうかについてゼノグラフトモデルマウスを用いて実験をおこなった。Zephyr2投与群マウス3匹、非投与群(コントロール群)マウス3匹で実施した。具体的には、ゼノグラフトモデルマウスにCEA-Cupidを150 pmol 投与し、投与20時間後にZephyr2を100 pmol 投与した(コントロール群は未処理)。さらにZephyr2投与2時間後に投与液Psyche-B-DOTA(111In)を両群に投与した。次に標識体投与4時間後に採血を行いガンマーカクンターにて放射線量の測定を行った。その結果、Zephyr2投与群は4.51 %ID/g、コントロール群は22.09 %ID/gとなりZephyr2投与により血中のCEA-Cupidのクリアランスが確認された(図4)。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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