IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード バイオダイナミクス リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-分類法 図1
  • 特許-分類法 図2
  • 特許-分類法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】分類法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6813 20180101AFI20220324BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20220324BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220324BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220324BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220324BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C12Q1/34
A61K45/00
A61P25/00
A61P25/28
G01N33/50 P
C12N15/09 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019532761
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 GB2016054076
(87)【国際公開番号】W WO2018115802
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】518389864
【氏名又は名称】オックスフォード バイオダイナミックス パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Oxford BioDynamics PLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラマダス,アラウル セルヴァム
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】アコウリチェフ,アレクサンドル
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526543(JP,A)
【文献】特表2009-500031(JP,A)
【文献】特表2010-515449(JP,A)
【文献】特表2011-521633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における神経変性状態の特徴を決定する方法であって、下記の表3または表4




に記載の染色体相互作用から選択される少なくとも10個の染色体相互作用を分類するステップを備え、それによって前記特徴を決定する方法であり、前記染色体相互作用の前記分類が、
(i)一緒になって染色体相互作用をして架橋核酸を形成する染色体領域をインビトロ架橋するステップと、
(ii)前記架橋核酸を酵素での制限消化切断に供するステップと、
(iii)前記架橋され切断された核酸末端をライゲートしてライゲートされた核酸を形成するステップと
を備える方法によって実施され、それによって前記染色体相互作用の有無を検出することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記神経変性状態がアルツハイマー病であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記分類が、一緒になって相互作用をする前記染色体の前記領域を表すライゲートされた核酸の検出を備えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法において、ライゲートされた核酸の検出が、PCRによるまたはプローブハイブリダイゼーション検出によることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、臨床試験のために個体の選択が行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法において、前記臨床試験が、神経変性についての候補薬物の有効性が試験されるものであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、神経変性状態に関連する特徴に基づいて、臨床試験に参加する個体が階層化されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、少なくとも1個の染色体相互作用の分類のために、下記の表2a、2b






に記載のプローブまたは下記の表3b




に記載のプライマーが用いられることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、表3に記載の染色体相互作用から選択される10乃至20個の染色体相互作用を分類するステップを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色体相互作用の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患の現行の診断は、特に初期段階では困難である。通常、診断は症状、例えば知能の低下が現れ始めたときに行われる。
【発明の概要】
【0003】
本発明者らは、染色体の相互作用が神経変性状態に関連するゲノムの領域を特定した。本発明者らの研究により、染色体相互作用に基づいて異なる神経変性特徴を有するサブグループに個体を分類することが可能になる。
【0004】
したがって、当該方法は、神経変性状態の後成的試験に関連する後成的染色体相互作用を判定する方法であって、サブグループを区別する方法であり、サブグループからの核酸の第一セットを、染色体相互作用のインデックス集団を表す核酸の第二セットと接触させ、そして相補配列をハイブリダイズさせることを含み、核酸の第一および第二セット中の核酸は、一緒になって後成的染色体相互作用をする染色体領域の両方からの配列を含むライゲート産物を表し、核酸の第一および第二セット間のハイブリダイゼーションのパターンによって、どの後成的染色体相互作用が集団中のサブグループに特異的であるかの判定が可能になり、サブグループは状態に関連する少なくとも一つの特徴が異なり、場合によって診断、予後、発症の確率および/または状態に対する傾向から選択されてもよい。
【0005】
本発明はまた、個体における神経変性状態の特徴を判定する方法であって:(a)前記方法によって特定された少なくとも一つの染色体相互作用を分類し、および/または(b)神経変性状態の特徴に関連づけられた少なくとも一つの染色体相互作用を分類することを含む方法も提供し、前記特徴は、場合によって、診断、予後、発症の確率、状態に対する傾向および/または状態の早期発症前検出から選択され、前記関連は、染色体相互作用の存在または非存在であり得る。状態は、好ましくは、認知症または認知障害、好ましくはアルツハイマー病である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は3C抽出法の概略図である。3Cとはクロマチンコンフォメーションキャプチャー、または染色体コンフォメーションキャプチャーを意味する。
図2図2は、(A)単一のサンプルの電気泳動図の一例、および(B)対照サンプルと比較してアルツハイマー病患者において高頻度で見られるマーカーについての、複数のサンプルを比較するLabChip GXシステムを用いて作成されるバーチャルゲル画像の一例である。サンプルごとに50μlの血液を使用して分析を実施した。パネル(B)では、各カラムの最上部の標識は、サンプルタイプ(ALZ:アルツハイマー患者;CTL:対照患者)および使用したPCRプライマーを表す。プライマー対:OBD140_061.063;マーカー:10_14270092_14271521_14310504_14315691_RR;このマーカーのq値:0.006191144。
図3図3は、(A)単一のサンプルについての電気泳動図の一例、および(B)アルツハイマー病患者と比較して対照サンプルにおいて存在するマーカーについて、複数のサンプルを比較するLabChip GXシステムを使用して作製したバーチャルゲル画像の一例である。サンプルごとに50μlの血液を使用して分析を実施した。パネル(B)において、各カラムの最上部の標識は、サンプルタイプ(ALZ:アルツハイマー患者;CTL:対照患者)および使用したPCRプライマーを表す。プライマー対:OBD140_005.007;マーカー:8_3184876_3186946_3214817_3221560_FR;このマーカーのq値は0.005343515である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、特に:
-異なるサブグループに関連する後成的染色体相互作用を特定するための方法;
-特定の特徴を有するサブグループを選択する方法、および/または個体のサブグループを特定する方法;
-神経変性状態を治療または予防するために使用できる薬物を特定する方法
を含む、様々な異なる態様を有する。
【0008】
神経変性疾患に関連する領域
本発明は、神経変性状態に関連する、疾患関連または後成的活性領域での染色体相互作用を分類することに関する。そのような領域では、状態の態様に影響を及ぼす染色体相互作用が起こるであろう。染色体相互作用は、(転帰に関連する)状態または予後を有することもしくは感受性であることに影響を及ぼす可能性があるか、または関連づけられる可能性がある。したがって、染色体相互作用は疾患の診断もしくは発症の確率に関連する可能性がある。神経変性状態に関連する特異的染色体相互作用、遺伝子および領域を本明細書中の表で開示する。
【0009】
分類される染色体相互作用は、遺伝子(コーディング配列を含む)とその調節領域、例えばプロモータとの間で起こるものであってもよいし、そうでなくてもよい。分類される染色体相互作用は、遺伝するもの、遺伝子領域の例えば刷り込まれた遺伝形質であってもよいし、そうでなくてもよい。染色体相互作用は、2つの調節領域間で起こり得るもの、例えばエンハンサとプロモータとの間の相互作用またはプロモータと別のプロモータとの間の相互作用などであってもよいし、そうでなくてもよい。染色体相互作用は、遺伝子の調節解除、例えばエンハンサにおける活性の変化(例えば増加または減少)と関連付けることができる。
【0010】
予後
予後は、本明細書中で使用する場合、病状の起こり得る経過、例えば1以上の転帰を予想することに関する。予後因子は典型的には、客観的に測定可能であり、神経変性状態の起こり得る転帰に関する情報を提供する臨床的または生物学的特徴である。
【0011】
後成的相互作用
本明細書中で使用する場合、「後成的」相互作用という用語は、典型的には、染色体上の座の遠位領域間の相互作用を指し、前記相互作用は、染色体の領域の状態に応じて、動的であり、変更、形成または破壊するものである。
【0012】
本発明の特定の方法において、染色体相互作用は、まず、相互作用の一部である染色体の両領域からの配列を含むライゲートされた核酸を生成させることによって検出される。そのような方法では、領域は、任意の好適な手段によって架橋することができる。好ましい実施形態において、相互作用は、ホルムアルデヒドを使用して架橋されるが、任意のアルデヒド、またはD-ビオチニル-e-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-e-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルによって架橋することもできる。パラホルムアルデヒドが好ましく、4オングストローム離間しているDNA鎖を架橋することができる。
【0013】
染色体相互作用は、例えば、転写されるかまたは抑制されるかなどの染色体の領域の状態を反映する可能性がある。本明細書中で定義するようなサブグループに対して特異的である染色体相互作用は安定であり、したがって2つのサブグループ間の差異を測定するための信頼できる手段を提供することが判明している。
【0014】
さらに、特徴に特異的な染色体相互作用は、通常、例えばメチル化またはヒストンタンパク質の結合に対する変化などの他の後成的マーカーと比較すると、生物学的プロセスにおいて早期に起こる。したがって、本発明の方法は生物学的プロセスの初期段階を検出することができる。これにより早期介入(例えば治療)が可能になり、その結果、より有効となり得る。さらに、同じサブグループ内の個体間での関連する染色体相互作用のばらつきがほとんどない。本発明において、染色体相互作用の分類によって、早期および/または発症前診断が可能になる。ある特定の実施形態において、症状発症の少なくとも1、5、10、20または40年前の状態の特徴の検出が可能になる(1年は365日と定義される)。早期または発症前検出はアルツハイマー病に関する実施形態に特に好ましい。
【0015】
後成的相互作用の位置および原因
後成的染色体の相互作用は、関連するかまたは記載されていない遺伝子をコードすることが示された染色体の領域と重複し含み得るが、等しく遺伝子間領域中にあり得る。さらに、本発明者らが全ての領域における後成的相互作用は染色体座の状態を判定する際に等しく重要であることを見出したことに留意すべきである。これらの相互作用は、座に位置する特定の遺伝子のコーディング領域に必ずしもあるとは限らず、遺伝子間領域にある可能性がある。これらの相互作用は、遺伝子とそれらの調節エレメントとの間の長範囲(long range)相互作用であってもよいし、そうでなくてもよい。これらの相互作用は、プロモータ-プロモータ相互作用および/またはプロモータ-エンハンサ相互作用を含んでもよいし、含まなくてもよい。本発明で検出される染色体相互作用は、基礎となるDNA配列に対する変化によって、環境因子、DNAメチル化、非コーディングアンチセンスRNA転写物、非変異誘発性発がん物質、ヒストン修飾、クロマチンリモデリングおよび特異的局所DNA相互作用によって引き起こされ得る。染色体相互作用に至る変化は、基礎となる核酸配列に対する変化によって引き起こされる可能性があり、そのような変化は、それ自体では遺伝子産物または遺伝子発現様式に直接影響を及ぼさない。そのような変化は、例えば、遺伝子の内部および/または外部のSNP、遺伝子間DNA、microRNA、および非コーディングRNAの遺伝子融合および/または欠失であり得る。例えば、SNPのおよそ20%は非コーディング領域にあることが知られており、したがって、記載されているような方法はまた、非コーディング状況においても有益である。一実施形態において、一緒になって相互作用を形成する染色体の領域は、同じ染色体上で5kb未満、3kb未満、1kb未満、500塩基対未満または200塩基対未満離れている。一緒になって相互作用を形成する染色体の領域は、同じ染色体上で5kb超、10kb超、50kb超、100kb超、200kb超、500kb超、または800kb超離れている可能性があり、例えば800kb~1,500kb離れている可能性がある。
【0016】
検出される染色体相互作用は、好ましくは本明細書中の表中で言及する遺伝子のいずれかの内部である。しかしながら、遺伝子の上流または下流であってもよく、例えば、遺伝子またはコーディング配列から最大50,000、最大30,000、最大20,000、最大10,000または最大5000塩基上流または下流であってもよい。
【0017】
臨床的状況のタイプ
本発明の目的は、集団におけるサブグループを規定する特徴に関連する染色体相互作用の検出を可能にすることである。例えば、この技術は、特異的表現型(例えば、神経変性状態に関連する)のバイオマーカーに基づく階層化を可能にし、すなわち、特定の染色体確認シグネチャーおよび/または特定のシグネチャーにおける変化を認識することによる。
【0018】
本発明の方法は、疾患に関連する特定の特徴の関連で、例えば、診断、予後、疾患の経過のモニタリング、および/または疾患に対する傾向の特定に関連して使用することができる。したがって、方法は、特定の状態の存在の診断のために使用してもよいし、使用しなくてもよい。本発明の方法を使用して、疾患の機序が未知であるか、不明であるか、または複雑である座位を分類することができる。染色体相互作用の検出は、その一部が複雑である、異なる調節レベルの変化を追従する効率的な方法を提供する。例えば、場合によって、ほぼ37,000の非コーディングRNAを単一の衝撃によって活性化することができる。
【0019】
サブグループおよびパーソナル化治療
本明細書中で使用する場合、「サブグループ」は、好ましくは集団サブグループ(集団におけるサブグループ)を指し、さらに好ましくは、特定の真核生物、または哺乳類(例えば、ヒト、非ヒト、非ヒト霊長類、または齧歯類、例えばマウスもしくはラット)などの特定の動物の集団におけるサブグループを指す。最も好ましくは、「サブグループ」とは、ヒト集団におけるサブグループを指す。
【0020】
本発明は、集団における特定のサブグループを検出し治療することを含む。そのようなサブグループ内に、本明細書中で検討する特徴(例えば認知障害、または神経変性状態の診断)が存在するかまたは存在しない。染色体に対する後成的相互作用の差異は、一般的に言うと、ゲノムレベルで存在する構造的差異である。本発明者らは、所与の集団におけるサブセット(例えば、2つまたは少なくとも2つのサブセット)間でこれらが異なることを見出した。これらの差異の特定によって、医師は方法で記載されるように集団の1つのサブセットの一部として彼らの患者を分類することができるようになる。したがって、本発明は患者の後成的染色体相互作用に基づいて患者のために医薬をパーソナル化する方法を医師に提供し、さらに有効な代替的治療レジメを提供する。
【0021】
別の実施形態において、どのような程度まで対象が1つのサブグループであり集団の他方ではないと規定されるかを判定するための閾値レベルが適用される。典型的には、サブグループは母集団の少なくとも1%、5%、10%、30%、50%または80%であろう。
【0022】
ライゲートされた核酸の生成
本発明のある特定の実施形態は、ライゲートされた核酸、特にライゲートされたDNAを利用する。これらは、一緒になって染色体相互作用をする領域の両方からの配列を含み、したがって、相互作用に関する情報を提供する。本明細書中で記載するEpiSwitch(商標)法は、そのようなライゲートされた核酸の生成を使用して染色体相互作用を検出する。
【0023】
したがって、本発明の方法は:
(i)染色体座で存在する後成的染色体の相互作用のインビトロ架橋;
(ii)場合によって前記染色体座から架橋したDNAを単離すること;
(iii)前記架橋したDNAを、例えば、それを少なくとも1回切断する酵素(特に前記染色体座内で少なくとも1回切断する酵素)での制限消化により切断すること;
(iv)前記架橋し切断されたDNAの末端をライゲートすること(特にDNAループを形成する);および
(v)前記ライゲートされたDNAおよび/または前記DNAループの存在を、特にPCRなどの技術を使用して特定して、特異的な染色体の相互作用の存在を特定すること
により、ライゲートされた核酸(例えば、DNA)を生成するステップを含み得る。
【0024】
任意の好適な技術を使用して、ライゲートされた核酸を検出することができ、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用してライゲートされた核酸を検出または特定することができる。この場合、産生されるPCR産物のサイズは、存在する特異的染色体相互作用を示すものであり得、したがって、座の状態を特定するために使用できる。PCRを使用して、特定の表現型サブグループについて特異的なバイオマーカーを検出し選択することができる。本明細書中で開示するPCRプライマーまたはプライマー対のいずれか、または同じライゲートされた核酸を増幅することができるホモログおよび/もしくはフラグメントなどの変異体を使用することができる。同様に、本明細書中で開示される任意のプローブ、または同じライゲートされた核酸と特異的に結合できるプローブのホモログおよび/もしくはフラグメントを使用することができる。
【0025】
当業者には関心対象の染色体座内のDNAを切断するために使用できる多くの制限酵素がわかっているであろう。使用される特定の酵素が、研究対象の座およびその中に位置するDNAの配列に依存することは明らかであろう。本発明で記載するようなDNAを切断するために使用できる制限酵素の非限定例はTaqIである。
【0026】
EpiSwitch(商標)技術などの実施形態
EpiSwitch(商標)技術の一部は、後成的染色体コンフォメーションシグネチャーの検出におけるマイクロアレイEpiSwitch(商標)マーカーデータの使用に関する。一実施形態において、EpiSwitch(商標)アレイプラットフォームを使用できるが、本発明はこのアレイプラットフォームに限定されない。一実施形態において、本発明は、PCRに基づく技術のみを使用して実施される。
【0027】
本明細書中で記載する方法でライゲートされた核酸を利用するEpiSwitch(商標)などの実施形態はいくつかの利点を有する。例えば、本発明の核酸の第一セットからの核酸配列が核酸の第二セットとハイブリダイズするかまたはハイブリダイズできないかのいずれかであるので、それらは低レベルの確率的雑音を有する。これは、後成的レベルで複雑な機序を測定するための比較的簡単な方法を可能にする二元結果を提供する。EpiSwitch(商標)技術はまた、処理時間が短く低コストである。一実施形態において、処理時間は3~6時間である。
【0028】
サンプルおよびサンプル治療
サンプルは個体からのDNAを含む。それは通常細胞を含む。一実施形態において、サンプルは低侵襲性手段によって得られ、血液などであってよい。DNAを抽出することができ、標準的制限酵素で切断することができる。これは、どの染色体コンフォメーションが保持され、EpiSwitch(商標)プラットフォームで検出されるかをあらかじめ決定することができる。サンプルが患者からあらかじめ得られた血液サンプルである一実施形態において、記載した方法は手順が低侵襲性であるので有利である。水平移動を含む組織と血液との間の染色体相互作用の同期のために、血液サンプルを使用して、組織、例えば疾患に関連する組織における染色体相互作用を出することができる。
【0029】
本発明で使用する核酸の特性
本発明は核酸に関する。これらは、本明細書中で言及する第一および第二核酸と同じであり得るか、またはその特性のいずれかを有し得る。本発明の核酸は、典型的には、一緒になって染色体相互作用をする染色体の2つの領域のうちの1つからの配列を各々が含む2つの部分を含む。典型的には、各部分が少なくとも8、10、15、20、30または40ヌクレオチド長、例えば、10~40ヌクレオチド長である。好ましい核酸(第一および/または第二の核酸セットを含む)は、表のいずれかで言及する遺伝子のいずれかからの配列を含む。好ましい核酸は、特異的プローブ配列のいずれかおよび/もしくは表のいずれかで言及されるプライマー配列のいずれか;またはそのような配列のフラグメントおよび/もしくはホモログを含む。好ましいライゲートされた核酸(第一または第二の核酸セットを含む)は、本明細書中で言及されるプローブ、プライマーまたはプライマー対のいずれかによって検出することができる(例えば特異的に結合する)。好ましくは、核酸はDNAである。特異的配列が言及される場合、本発明は特定の実施形態で必要とされる相補配列を使用し得ることが理解される。
【0030】
核酸の第二セット-「インデックス」配列
核酸配列の第二セットは、インデックス配列のセットであるという機能を有し、本質的に、サブグループ特異的配列を特定するために好適である核酸配列のセットである。それらは「バックグラウンド」染色体の相互作用を表すことができ、何らかの方法で選択してもよいか、または選択されなくてもよい。それらは概してあらゆる可能な染色体の相互作用のサブセットである。
【0031】
核酸の第二セットは、任意の好適な方法によって誘導することができる。それらはコンピュータ計算によって誘導することができるか、または個体における染色体相互作用に基づくものであってよい。それらは典型的には、核酸の第一セットより大きな集団群である。特定の一実施形態において、核酸の第二セットは特定の遺伝子セットにおける全ての可能な後成的染色体の相互作用を表す。別の特定の実施形態において、核酸の第二セットは、本明細書中で記載する集団中に存在する全ての可能な後成的染色体の相互作用の大部分を表す。一実施形態において、核酸の第二セットは、少なくとも20、50、100または500遺伝子、例えば20~100または50~500遺伝子における後成的染色体の相互作用の少なくとも50%または少なくとも80%を表す。
【0032】
核酸の第二セットは、典型的には、少なくとも100の可能な後成的染色体相互作用を表し、これは、集団における疾患状態/表現型を修飾、調節または何らかの方法で媒介する。核酸の第二セットは、種における疾患状態に影響を及ぼす染色体相互作用を表すことができ、例えば、サイトカイン、キナーゼ、または任意の疾患状態、疾患に対する傾向もしくは疾患表現型に関連するレギュレータをコードする核酸配列を含む。核酸の第二セットは、典型的には、サブグループを規定する特徴に関連する後成的相互作用および関連しない後成的相互作用を表す配列を含む。
【0033】
特定の一実施形態において、核酸の第二セットは、集団において天然に存在する配列から少なくとも部分的に誘導され、典型的には、コンピュータを用いた方法によって得られる。前記核酸は、天然に存在する核酸中に存在する核酸の対応する部分と比較して単一または複数の変異をさらに含み得る。変異は、1以上のヌクレオチド塩基対の欠失、置換および/または付加を含む。特定の一実施形態において、核酸の第二セットは、天然に存在する種において存在する核酸の対応する部分と少なくとも70%の配列同一性を有するホモログおよび/またはオルトログを表す配列を含み得る。別の特定の実施形態において、天然に存在する種において存在する核酸の対応する部分に対して少なくとも80%の配列同一性または少なくとも90%の配列同一性が提供される。
【0034】
核酸の第二セットの特性
特定の一実施形態において、核酸の第二セットにおいて少なくとも100の異なる核酸配列があり、好ましくは少なくとも1000、2000または5000の異なる核酸配列があり、最高100,000、1,000,000または10,000,000の異なる核酸配列がある。典型的な数は100~1,000,000、例えば1,000~100,000の異なる核酸配列である。これらのすべて、または少なくとも90%もしくは少なくとも50%は異なる染色体の相互作用に対応する。
【0035】
特定の一実施形態において、核酸の第二セットは、少なくとも20の異なる座位もしくは遺伝子、好ましくは少なくとも40の異なる座位もしくは遺伝子、そしてさらに好ましくは少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000または少なくとも5000の異なる座位もしくは遺伝子、例えば100~10,000の異なる座位もしくは遺伝子における染色体相互作用を表す。核酸の第二セットの長さは、それらがワトソン・クリック塩基対合にしたがって核酸の第一セットと特異的にハイブリダイズして、サブグループに対して特異的な染色体相互作用の特定を可能とするのに好適である。典型的には、核酸の第二セットは、一緒になって染色体相互作用をする2つの染色体領域に対応する2つの部分を配列中に含む。核酸の第二セットは、典型的には、少なくとも10、好ましくは20、そしてさらに好ましくは30塩基(ヌクレオチド)長である核酸配列を含む。別の実施形態において、核酸配列は、せいぜい500塩基対長、好ましくは100塩基対長まで、そしてさらに好ましくは50塩基対長までであり得る。好ましい実施形態において、核酸の第二セットは、17~25塩基対の核酸配列を含む。一実施形態において、少なくとも100、80%または50%の核酸配列の第二セットは前記のような長さを有する。好ましくは異なる核酸はオーバーラップする配列を有さず、例えば少なくとも100%、90%、80%または50%の核酸は少なくとも5の連続するヌクレオチドにわたって同じ配列を有さない。
【0036】
核酸の第二セットが「インデックス」として作用するなら、第二の核酸の同じセットを異なる特徴のサブグループを表す第一の核酸の異なるセットとともに使用することができる、すなわち、核酸の第二セットは、異なる特徴に関連する染色体相互作用を特定するために使用することができる核酸の「ユニバーサル」なコレクションを表し得る。
【0037】
核酸の第一セット
核酸の第一セットは、通常、コンパニオン診断に関連する特徴、例えば本明細書中で言及される任意のそのような特徴の有無によって規定される2以上の異なるサブグループに含まれることが知られている個体からのものである。第一の核酸は、本明細書中で言及される核酸の第二セットの特徴および特性のいずれかを有し得る。核酸の第一セットは、通常、本明細書中で記載するような治療および処理、特にEpiSwitch(商標)架橋および切断ステップを受けた個体からのサンプルに由来する。典型的には、核酸の第一セットは、個体から採取されたサンプル中に存在する染色体相互作用の全部または少なくとも80%もしくは50%を表す。
【0038】
典型的には、核酸の第一セットは、核酸の第二セットによって表される染色体相互作用と比較して核酸の第二セットによって表される遺伝子の座位にわたる染色体相互作用のより小さな集団を表す、すなわち、核酸の第二セットは、座位または遺伝子の所定のセットにおける相互作用のバックグラウンドまたはインデックスセットを表す。
【0039】
核酸
本明細書中で記載する核酸は、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1,000、少なくとも5,000または少なくとも10,000の異なる核酸、例えば100,000までまたは500,000までの本明細書中で開示する異なる核酸、例えば「第一」または「第二」の核酸のセットを含む核酸のライブラリの形態であってもよい。ライブラリは、例えば相補配列とハイブリダイズすることが可能になる方法でアレイと結合した核酸の形態であってもよい。
【0040】
ハイブリダイゼーション
本発明は、核酸の第一セットおよび核酸の第二セットからの全体的または部分的に相補的な核酸配列がハイブリダイズするのを可能にする手段を必要とする。一実施形態において、核酸の第一セットのすべてを核酸の第二セットのすべてと単一のアッセイで、すなわち単一のハイブリダイゼーションステップで接触させる。しかしながら、任意の好適なアッセイを使用できる。本明細書中で記載する実施形態において、核酸の結合は、典型的には、完全または部分的相補配列間のワトソン・クリック塩基対合(ハイブリッド形成)による特異的結合であってもよい。
【0041】
標識された核酸およびハイブリダイゼーションのパターン
本明細書中で言及される核酸は、例えば、検出可能な標識を使用して、好ましくはハイブリダイゼーション検出の成功を支援するフルオロフォア(蛍光性分子)または放射性標識などの独立した標識を使用して標識してもよい。ある特定の標識をUV光下で検出できる。例えば本明細書中で記載するアレイ上のハイブリダイゼーションのパターンは、2つのサブグループの間の後成的染色体相互作用における差異を表し、したがって、後成的染色体相互作用を比較し、どの後成的染色体相互作用が本発明の集団におけるサブグループに対して特異的であるかを判定する方法を提供する。
【0042】
「ハイブリダイゼーションのパターン」という語は、核酸の第一および第二セット間のハイブリダイゼーションの有無、すなわち、第一セットからのどの特定の核酸が第二セットからのどの特定の核酸とハイブリダイズするかを広範に対象とし、そして任意の特定のアッセイまたは技術に限定されないか、またはその上で「パターン」が検出され得る表面またはアレイを有する必要はない。
【0043】
特定のシステム特徴を有するサブグループの選択
本発明は、個体における特徴の存在または非存在を判定するために、染色体相互作用の存在または非存在、典型的には、1~5、または5~20または5~500のそのような相互作用、好ましくは10~20または20~300または50~100の相互作用を検出することを含む方法を提供する。好ましくは、染色体相互作用は、本明細書中で言及される遺伝子のいずれかにおけるものである。一実施形態において、分類される染色体相互作用は、本明細書中で開示される関連する表のいずれか1つ以上における核酸によって表されるものである。
【0044】
好ましくは、本明細書中で言及される関連する遺伝子のいずれか、例えば、任意の表中で言及される遺伝子の少なくとも1、2、3、4、5、6、10、14、15、最大全部の内部での染色体相互作用のいずれかの存在または非存在が検出される。好ましくは、本明細書中で開示される任意の特異的プライマーおよび/またはプローブ配列によって表される染色体相互作用の有無は当該方法で判定される。典型的には、本明細書中で開示される任意の特異的プライマーおよび/またはプローブ配列によって表される1以上、例えば3、5、7または10の染色体相互作用の存在ならびに本明細書中で開示される任意の特異的プライマーおよび/またはプローブ配列によって表される1以上、例えば3、5、7または10の染色体相互作用の非存在は当該方法で判定される。これらの数の遺伝子または染色体相互作用を本明細書中で言及される様々な実施形態のいずれかで使用することができる。
【0045】
具体的な条件
本発明の方法は、本明細書中で言及される具体的な条件または特徴のいずれかの存在を検出するために使用することができ、好ましくは、神経変性疾患または状態、好ましくは認知症、例えばアルツハイマー病、軽度の認知障害、血管性認知症、レビー小体を伴う認知症、前頭側頭認知症、またはさらに好ましくはアルツハイマー病、最も好ましくはβアミロイド凝集体誘発性アルツハイマー病に対する発症の確率および/または傾向を検出するために使用される。
【0046】
好ましくは、表中で言及される関連する遺伝子のいずれかの内部での染色体相互作用のいずれかの存在および/または非存在が検出される。例えば、表のいずれか1つで言及される少なくとも1、3、5、10、14、15、または20、または30、または42の遺伝子において。好ましくは、表中のプローブ配列によって表される染色体相互作用の存在および/または非存在が当該方法で判定される。これらの数の遺伝子または染色体相互作用を本明細書中で言及される様々な実施形態のいずれかで使用することができる。
【0047】
試験される個体
試験される個体は、本明細書中で言及する任意の状態または特徴の任意の症状を有していてもよいし、有していなくてもよい。個体は任意のそのような状態または特徴のリスクがあり得る。個体は、好ましくは哺乳類、例えば霊長類、ヒト、非ヒト哺乳類または齧歯類である。個体は、オスであってもメスであってもよい。個体は30歳またはそれ以上であってよい。個体は29歳またはそれ以下であってよい。
【0048】
好ましい遺伝子領域、座位、遺伝子および染色体相互作用
本発明のすべての態様について、好ましい遺伝子領域(例えば、特定の位置番号で規定される)、座位、遺伝子および染色体相互作用が本明細書中で言及される。典型的には、本発明の方法において、染色体相互作用は、表中に列挙される少なくとも1、3、5、10、1520、30または42の関連遺伝子から検出される。好ましくは、本明細書中の表のいずれか1つでプローブ配列によって表される少なくとも1、3、5、10、15、20、または30または42の関連する特異的染色体相互作用の存在または非存在が検出される。好ましくは、表のいずれかのプライマー配列によって表される少なくとも1、3、5、10、15、20、または30または42、例えば13、14、20、30または42の関連する特異的染色体相互作用の存在または非存在が検出される。一実施形態において、他の染色体相互作用は検出されない。
【0049】
当該領域は、本明細書中で言及される遺伝子のいずれかの上流または下流、例えばコーディング配列から、例えば50kb上流または20kb下流であってよい。
【0050】
一実施形態において、検出される染色体相互作用は、表中に示される位置のいずれかまたは領域(4kb領域を含む)のいずれかで存在する。ライゲート産物が当該方法で検出される場合、表のいずれかのプローブ配列で示される配列を検出することができる。したがって、典型的には、好ましくは接合配列を含む、プローブの両領域からの(すなわち、染色体相互作用の両部位からの)配列を検出することができた。好ましい実施形態において、表のいずれかで示すプローブと同じかまたは相補的な配列を含むかまたはこれからなるプローブが当該方法で使用される。いくつかの実施形態では、表で示すプローブ配列のいずれかに対して相同性である配列を含むプローブを使用する。PCRによる方法でライゲート産物が検出される場合、表のいずれかのプローブ配列のいずれかで示される配列は、検出することができる。プライマーは表中で記載されるプローブ位置および関連する領域を検出することができるかまたは領域内でハイブリダイズするように設計することができる。好ましい実施形態において、任意の表で示されるプライマー対と同じかまたはプライマー対に対して相補的な配列を含むかまたはこれからなるプライマー対が当該方法で使用される。いくつかの実施形態では、表で示されるプライマー配列のいずれかと相同性である、および/または表で示されるプライマー配列のいずれかのフラグメントである配列を含むプライマーを使用する。
【0051】
本明細書中の表で開示される相互作用のすべてまたは表からの選択(本明細書中で定義される選択のいずれかなど)を表す染色体相互作用の特定の組み合わせを検出すること(すなわち、非存在の存在を判定すること)ができる。本明細書中で言及されるように、特定の数の相互作用を個々の表から選択することができる。一実施形態において、任意の表(表3を含む)で開示される相互作用の少なくとも10%、20%、30%、50%、70%または90%が検出される。
【0052】
一実施形態において、表3中に示されるq値の最低50%(すなわち、0に最も近い)によって表される、少なくとも1、3、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20の関連する特異的染色体相互作用の存在または非存在が検出される。
【0053】
一実施形態において、表3中で示されるq値の最低50%によって表される少なくとも1、3、5、6、7、8、9、10の関連する特異的染色体相互作用の存在は、相互作用の存在がアルツハイマー病に関連する場合に検出される、および/または表3で示されるq値の最低50%によって表される少なくとも1、3、5、6、7、8、9、10の特異的染色体相互作用の非存在は、相互作用の非存在がアルツハイマー病に関連する場合に検出される。
【0054】
一実施形態において、0~0.003のq値を有する表3で示されるありとあらゆる相互作用を検出することができる。別の実施形態において、0.003~0.006のq値を有する表3で示されるありとあらゆる相互作用を検出することができる。別の実施形態において、0.006~0.01のq値を有する表3で示されるありとあらゆる相互作用を検出することができる。
【0055】
一実施形態では、配列番号1~10で表されるありとあらゆる相互作用が検出される。当該方法は、配列番号11~20で表されるありとあらゆる相互作用が検出されるものであり得る。当該方法は、配列番号21~30で表されるありとあらゆる相互作用が検出されるものであり得る。当該方法は、配列番号31~42で表されるありとあらゆる相互作用が検出されるものであり得る。
【0056】
検出される相互作用は、例えば本明細書中、例えば本明細書中の任意の表で規定されるような特定の特徴の存在または非存在に対応し得る。相互作用の組み合わせが検出される場合、それらはすべて特徴の存在に相当し得るか、またはすべて特徴の非存在に相当し得る。一実施形態において、検出される相互作用の組み合わせは、特徴の存在に関連する少なくとも2、5または10の相互作用および特徴の非存在に関連する少なくとも2、5または10の他の相互作用に相当する。
【0057】
方法の一実施形態において、本明細書中で開示される特定の相互作用のいずれかまたは本明細書中で開示される特定の選択のいずれかは、当該方法では検出されない。したがって、当該方法は配列番号1~10によって表される相互作用が検出されないものであり得る。当該方法は、配列番号11~20によって表される相互作用が検出されないものであり得る。当該方法は配列番号21~30によって表される相互作用が検出されないものであり得る。当該方法は配列番号31~42によって表される相互作用が検出されないものであり得る。
【0058】
本明細書中で提示する表
本明細書中の表は、プローブ(EpiSwitch(商標)マーカー)データまたは状態(第一に言及した群)において存在し、対照群において存在しないか、またはその状態において存在せず、対照群において存在する染色体相互作用を表す遺伝子データのいずれかを示す。プローブ配列は、一緒になって染色体相互作用をする遺伝子領域の両領域から生成するライゲート産物を検出するために使用できる配列を示す、すなわち、プローブはライゲート産物中の配列に対して相補性である配列を含む。スタート-エンド位置の第一の2つのセット(A)はプローブ位置を示し、スタート-エンド位置の第二の2つのセット(B)は関連する4kb領域を示す(表2b)。
【0059】
遺伝子表データは、関連する染色体相互作用が起こることが見い出された遺伝子を示す。
【0060】
表3は、指名されたプローブのそれぞれおよびプライマーのセットについて算出されたq値を示す。試験のq値は、特定の試験が有意と呼ばれる場合の発生した偽陽性の割合(偽陽性率と呼ばれる)を評価する。プローブは、状態を有するサブグループにおいて高頻度にみられるマーカー、または状態を有するサブグループにおいて存在しないが、対照サブグループにおいて存在するマーカーを表し得る。
【0061】
表4は本発明の方法での使用に好ましいマーカーを列挙する。これらのマーカーは、例えば、増幅反応において直接マーカーと関連するプライマーを用いて、またはプローブ配列を使用することによって検出することができる。AD-Pマーカーはアルツハイマー患者において存在するが、対照患者においては存在しない。AD-Nマーカーは対照患者において高頻度にみられるが、アルツハイマー患者では高頻度で見られない。
【0062】
プローブはTaq1部位から30bp離れているように設計される。PCRの場合、PCRプライマーはまた、ライゲート産物を検出するように設計されるが、Taq1部位からのそれらの位置は様々である。
【0063】
プローブ位置:
スタート1-フラグメント1上のTaqI部位の30塩基上流
エンド1-フラグメント1上のTaqI制限部位
スタート2-フラグメント2上のTaqI制限部位
エンド2-フラグメント2上のTaqI部位の30塩基下流
4kb配列位置:
スタート1-フラグメント1上のTaqI部位の4000塩基上流
エンド1-フラグメント1上のTaqI制限部位
スタート2-フラグメント2上のTaqI制限部位
エンド2-フラグメント2上のTaqI部位の4000塩基下流
【0064】
サンプル調製および染色体相互作用検出の好ましい実施形態
サンプルを調製する方法および染色体コンフォメーションを検出する方法を本明細書中で記載する。これらの方法の最適化(非従来型)バージョンは、例えばこの節で記載されているように使用することができる。
【0065】
典型的には、サンプルは少なくとも2×10個の細胞を含む。サンプルは最大5×10個の細胞を含み得る。一実施形態において、サンプルは2×10~5.5×10個の細胞を含む。
染色体座で存在する後成的染色体の相互作用の架橋を本明細書中で記載する。これは、細胞溶解が起こる前に実施することができる。細胞溶解は、3~7分、例えば4~6または約5分間実施することができる。いくつかの実施形態において、細胞溶解を少なくとも5分間および10分未満実施する。
【0066】
制限酵素でのDNAの消化を本明細書中で記載する。典型的には、DNA制限を約55℃~約70℃で、例えば約65℃で、約10~30分の期間、例えば約20分実施する。
【0067】
好ましくは、フリークエントカッター(frequent cutter)制限酵素を使用し、これにより最大4000塩基対の平均フラグメントサイズを有するライゲートされたDNAのフラグメントが得られる。場合によって、制限酵素により約200~300塩基対、例えば約256塩基対の平均フラグメントサイズを有するライゲートされたDNAのフラグメントが得られる。一実施形態において、典型的にはフラグメントサイズは200塩基対~4,000塩基対、例えば400~2,000または500~1,000塩基対である。
【0068】
EpiSwitch(商標)法の一実施形態では、DNA調製ステップはDNA制限消化ステップとDNAライゲーションステップとの間で実施されない。
【0069】
DNAライゲーションを本明細書中で記載する。典型的には、DNAライゲーションを5~30分、例えば約10分間実施する。
【0070】
サンプル中のタンパク質は酵素により、例えばプロテイナーゼ、場合によってプロテイナーゼKを使用して消化することができる。タンパク質を約30分~1時間の期間、例えば約45分間酵素により消化することができる。一実施形態において、タンパク質の消化、例えばプロテイナーゼK消化後、架橋逆転(cross-link reversal)またはフェノールDNA抽出ステップはない。
【0071】
一実施形態において、PCR検出は、ライゲートされた核酸の単一のコピーを、好ましくはライゲートされた核酸の存在/非存在についての二元読み出しとともに検出することができる。
【0072】
本発明の方法および使用
本発明の方法は、様々な方法で記載することができる。ライゲートされた核酸を作製する方法であって、(i)一緒になって染色体相互作用をする染色体領域をインビトロ架橋し;(ii)前記架橋したDNAを切断または制限消化切断に供し;そして(iii)前記架橋し切断されたDNAの末端をライゲートして、ライゲートされた核酸を形成することを含み、ライゲートされた核酸の検出を使用して、座での染色体状態を決定することができ、好ましくは:
-座は本明細書中で言及される座位、領域または遺伝子のいずれかであり得、
-および/または染色体の相互作用は、本明細書中で言及されるか、もしくは表中で開示されるプローブのいずれかに対応する染色体相互作用のいずれかであり得、および/または
-ライゲート産物が(i)本明細書中で開示されるプローブ配列のいずれかと同じかもしくは相同性である配列;または(ii)(ii)に対して相補性である配列を有し得るかもしくは含み得る方法として記載することができる。
【0073】
ホモログおよびフラグメント
どの実施形態においても、特異的配列のホモログおよび/またはフラグメントを代わりに使用することができ、場合によって、それらはもとの配列と同じ結合特徴を有する。
【0074】
ポリヌクレオチド/核酸(例えば、DNA)配列のホモログが本明細書中で言及される。そのようなホモログは、典型的には、少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性を、例えば少なくとも10、15、20、30、100もしくはそれ以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、または染色体相互作用に関与する染色体の領域からの核酸の部分にわたって有する。相同性は、ヌクレオチド同一性(「ハード相同性(hard homology)」と称する場合がある)に基づいて算出することができる。
【0075】
したがって、特定の実施形態において、ポリヌクレオチド/核酸(例えば、DNA)配列のホモログは%配列同一性を参照して言及される。典型的には、そのようなホモログは、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を、例えば少なくとも10、15、20、30、100またはそれ以上の連続したヌクレオチドの領域にわたって、または染色体相互作用に関与する染色体の領域からの核酸の部分にわたって有する。
【0076】
例えば、UWGCG Packageは、相同性および/または%配列同一性を算出するために使用できるBESTFITプログラムを提供する(例えばそのデフォルト設定で使用)(Devereux et al (1984)Nucleic Acids Research 12,p387-395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、例えばAltschul S.F.(1993)J MoI Evol 36:290-300;Altschul,S,F et al(1990)J MoI Biol 215:403-10で記載されているようにして相同性および/または%配列同一性および/またはラインナップ配列(等価配列または対応する配列を特定するなど(典型的にはそれらのデフォルト設定で)を算出することができる。
【0077】
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは全米バイオテクノロジー情報センターから好適に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列した場合に、ある正の値の閾値スコアTと一致するかまたは満足するかのいずれかであるクエリ配列中の長さWの短いワードを特定することによって高スコア配列対(HSP)を特定することを含む。Tは近傍ワードスコア(近傍ワードスコア)閾値と称する(Altschul et al、上記)。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含むHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増大させることができる範囲まで各配列にそって両方向に拡張される。各方向でのワードヒットの拡張は、累積アラインメントスコアがその最大実績値から量Xだけ減少する場合;1以上の負のスコアの剰余アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロ以下になる場合;またはいずれかの配列のエンドに達した場合、停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW5TおよびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919を参照)アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両ストランドの比較を使用する。
【0078】
BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計的分析を実行する;例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787を参照。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一手段は最小合計(smallest sum)確率(P(N))であり、これは2つのポリヌクレオチド配列間でどのような一致が偶然起こるかによって確率の指標を提供する。例えば、配列は、第一配列を第二配列と比較した最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、さらに好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満である場合に、別の配列と類似しているとみなされる。
【0079】
相同性配列は、典型的には、1、2、3、4またはそれ以上の塩基、例えば10、15または20未満の塩基が異なる(ヌクレオチドの置換、欠失または挿入であり得る)。これらの変化は、相同性および/または%配列同一性の算出に関連して上述した領域のいずれかにわたって測定することができる。
【0080】
配列のフラグメントまたは一部は、典型的には、もとの配列の少なくとも70%、例えば少なくとも80%、90%または100%を含み、典型的には、少なくとも10、20または30塩基対長である。
【0081】
アレイ
核酸の第二セットはアレイと結合していてもよく、一実施形態において、好ましくは少なくとも300、900、2000または5000の座位を表す、アレイに結合した少なくとも15,000、45,000、100,000または250,000の異なる第二の核酸がある。一実施形態において、第二の核酸の異なる集団の一つ、またはそれ以上、または全部がアレイの一つより多い異なる領域に結合し、事実上、アレイ上で反復して、エラー検出を可能にする。アレイは、Agilent SurePrint G3 Custom CGHマイクロアレイプラットフォームに基づくものであってよい。第一の核酸のアレイへの結合の検出は、二色システムによって実施することができる。
【0082】
治療薬
治療薬を本明細書中で言及する。本発明は、関連する状態の予防または治療するための薬剤を提供する。これは、必要とする個体に治療上有効な量の薬剤を投与することを含み得る。本発明は、疾患を予防または治療するための薬物の製造における薬剤の使用を提供する。本発明の方法は、治療のために個体を選択するために使用することができる。本発明の方法、そして特にコンパニオン後成的試験を実施するための方法は、方法によって特定された個人に、次いで関連する状態を予防または治療する薬剤を投与してもよい治療ステップを含んでもよい。
【0083】
薬剤の処方は、薬剤の性質に依存するであろう。薬剤および医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物の形態で提供される。好適な担体および希釈剤は、等張生理食塩水、例えばリン酸塩緩衝食塩水を含む。典型的な経口投与組成物には、錠剤、カプセル、液状溶液および液状懸濁液が含まれる。薬剤は、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口投与ように処方することができる。
【0084】
薬剤の用量は、様々なパラメータにしたがって、特に使用する物質;治療される個体の年齢、体重および状態;投与経路;および必要とされるレジメンに従って、決定することができる。医師は任意の特定の薬剤について必要とされる投与経路および投与量を決定することができる。しかしながら、好適な用量は0.1~100mg/kg体重、例えば1~40mg/kg体重を、例えば、1日1~3回摂取する。
【0085】
本明細書中で言及する物質の形態
本明細書中で言及する物質、例えば核酸または治療薬のいずれかは、精製または単離形態であってよい。それらは、自然界で見出されるものとは異なる形態であってもよく、例えば、それらは自然界に共存しない他の物質と組み合わせて存在していてもよい。核酸(本明細書中で定義される配列の一部を含む)は、例えば、相同性に関する節で記載するような配列における少なくとも1、2、3、4またはそれ以上のヌクレオチド変化を有する、自然界で見出されるものとは異なる配列を有し得る。核酸は、5’または3’末端で異種配列を有し得る。核酸は、自然界で見出されるものとは化学的に異なり得、例えば、それらは何らかの方法で修飾されていてもよいが、好ましくは、それでもワトソン・クリック塩基対合可能である。適切な場合、核酸は二本鎖または一本鎖形態で提供される。本発明は、一本鎖または二本鎖形態で本明細書中にて言及される特定の核酸配列のすべてを提供し、したがって、開示される任意の配列に対する相補鎖を含む。
【0086】
本発明はまた、特定のサブグループに関連する染色体の相互作用の検出を含む、本発明の任意のプロセスを実施するためのキットも提供する。そのようなキットは、関連する染色体の相互作用を検出できる特異的結合剤、例えば本発明のプロセスによって生成されるライゲートされた核酸を検出できる薬剤を含み得る。キット中に存在する好ましい薬剤は、例えば、PCR反応においてライゲートされた核酸を増幅できる、本明細書中で記載するような、ライゲートされた核酸またはプライマー対とハイブリダイズすることができるプローブを含む。
【0087】
本発明はまた、関連する染色体相互作用を検出できるデバイスも提供する。デバイスは、好ましくは、染色体相互作用を検出できる任意の特異的結合剤、プローブまたはプライマー対、例えば本明細書中で記載する任意のそのような薬剤、プローブまたはプライマー対を含む。
【0088】
特定の記載した状態のために本発明で使用するために好ましい治療薬
A.軽度から中等度のアルツハイマー病(MMAD)の治療
コリンエステラーゼ阻害剤を使用して、軽度から中等度のアルツハイマー病を治療することができる。使用できる薬物としては、ガランタミン、リバスチグミンおよびドネペジルが挙げられる。
B.中等度から重度のアルツハイマー病の治療
D-アスパラギン酸N-メチル拮抗物質は中等度から重度のアルツハイマー病を治療するために処方することができ、例えば、メマンチンはアルツハイマー病の治療のためにFDAによって承認されたNMDA拮抗物質である。
【0089】
NMDA拮抗物質はコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせて使用することができる。例えば、アリセプトおよびナムザリック、メマンチンとドネペジルとの組み合わせは、中等度から重度のアルツハイマー病の治療のためにFDAによって承認されている。
【0090】
当業者は、当該技術分野において適切な、他の神経変性状態用の治療薬を特定することができる。
【0091】
具体的な実施形態
EpiSwitch(商標)プラットフォーム技術は座位における正常状態および異常状態間の調節変化の後成的調節シグネチャーを検出する。EpiSwitch(商標)プラットフォームは、染色体コンフォメーションシグネチャーとも呼ばれるヒト染色体の調節高次構造と関連する遺伝子調節の基礎的後成的レベルを特定しモニタリングする。染色体シグネチャーは遺伝子調節解除のカスケードにおける独立した主要ステップである。それらは、例えばDNAメチル化およびRNAプロファイリングなどの後期後成的および遺伝子発現バイオマーカーを利用するバイオマーカープラットフォームに対して独自の利点を有する高次バイオマーカーである。
【0092】
EpiSwitch(商標)アレイアッセイ
カスタムEpiSwitch(商標)アレイスクリーニングプラットフォームは、15K、45K、100K、および250Kの4種の密度の独自の染色体コンフォメーションで得られ、各キメラフラグメントはアレイ上で4回反復されて、それぞれ60K、180K、400Kおよび1000000の有効な密度を形成する。
【0093】
カスタムデザインのEpiSwitch(商標)アレイ
15KのEpiSwitch(商標)アレイは、EpiSwitch(商標)バイオマーカー発見技術で求められた約300座位を含む全ゲノムをスクリーニングできる。EpiSwitch(商標)アレイはAgilent SurePrint G3 Custom CGHマイクロアレイプラットフォーム上で構築される;この技術は4種の密度、すなわち、60K、180K、400Kおよび1000000プローブを提供する。アレイ当たりの密度は、各EpiSwitch(商標)プローブが4連で提供されるので15K、45K、100Kおよび250Kに減少し、したがって、再現性の統計的評価が可能になる。遺伝子座あたりの求められる潜在的EpiSwitch(商標)マーカーの平均数は50であり;したがって、調査できる座位の数は300、900、2000、および5000である。
【0094】
EpiSwitch(商標)Customアレイパイプライン
EpiSwitch(商標)アレイは、EpiSwitch(商標)ライブラリ作成後にCy5中で標識されたサンプルの一セットとCy3中で標識された比較/分析される他方のサンプル(対照)とを有する二色システムである。アレイは、Agilent SureScan Scannerを使用してスキャンし、結果物の特徴は、Agilent Feature抽出ソフトウェアを使用して抽出する。データを次に、RにおけるEpiSwitch(商標)アレイプロセッシングスクリプトを使用して処理する。アレイは、RにおけるBioconductor中の標準的二色パッケージ:Limma*を使用して処理する。アレイの正規化は、Limma*における正規化されたアレイ内関数を用いて行われ、これは、チップ上のAgilent陽性対照およびEpiSwitch(商標)陽性対照に関して実施される。データをAgilent Flagコールに基づいてフィルタリングし、Agilent対照プローブを除去し、技術的複製プローブは、Limma*を用いて分析するために平均する。プローブは、比較される2つのシナリオ間の差異に基づいてモデル化され、次いで偽陽性率を用いて補正される。<=-1.1または=>1.1であり、p<=0.1FDR p値にパスする変動係数(CV)<=30%を有するプローブをさらなるスクリーニングのために使用する。プローブセットを減らすために、さらなる多因子分析を、RにおけるFactorMineRパッケージを使用して実施する。
*注:LIMMAは、マイクロアレイ実験における差次的発現を評価するための線形モデルおよび経験的ベイズプロセスである。Limmaは、マイクロアレイまたはRNA-Seqから得られる遺伝子発現データの分析のためのRパッケージである。
【0095】
プローブのプールをまず最終ピッキングのために、調節したp値、FCおよびCV<30%(任意のカットオフポイント)パラメータに基づいて選択する。さらなる分析および最終リストを最初の2つのパラメータ(調節したp値;FC)のみに基づいて作成する。
【0096】
統計的パイプライン
EpiSwitch(商標)スクリーニングアレイは、EpiSwitch(商標)PCRプラットフォーム上での翻訳のために高値のEpiSwitch(商標)マーカーを選択するために、RにおいてEpiSwitch(商標)Analytical Packageを使用して処理する。
【0097】
ステップ1。プローブはそれらの補正されたp値(偽陽性率、FDR)に基づいて選択され、これは修飾された線形回帰モデルの積である。p値<=0.1以下のプローブが選択され、次にそれらの後成的比率(ER)によってさらに減少され、プローブERはさらなる分析のために選択するために、<=-1.1または=>1.1でなければならない。最後のフィルターは変動係数(CV)であり、プローブは<=0.3以下でなければならない。
【0098】
ステップ2。統計的リストからの上位40のマーカーをPCR翻訳のためのマーカーとしての選択のためにそれらのERに基づいて選択する。最高の負のERロードを有する上位20のマーカーおよび最高の正のERロードを有する上位20のマーカーでリストを形成する。
【0099】
ステップ3。ステップ1から結果として得られるマーカー、統計的に有意なプローブは超幾何学的エンリッチメント(HE)を用いたエンリッチメント分析の基礎をなす。この分析は有意なプローブリストからのマーカーの減少を可能にし、ステップ2からのマーカーとともに、EpiSwitch(商標)PCRプラットフォーム上に翻訳されたプローブのリストを形成する。
【0100】
統計的プローブをHEによって処理して、どの遺伝子位置が統計的に有意なプローブの濃縮を有し、どの遺伝子位置が後成的差異のハブであるかを示すかを判定する。
【0101】
正しいp値に基づく最も重要な濃縮座位を、プローブリスト作成のために選択する。0.3または0.2のp値の下の遺伝子位置が選択される。ステップ2からのマーカーを用いてこれらの遺伝子位置に対して統計的プローブをマッピングすることで、EpiSwitch(商標)PCR翻訳のための高値マーカーが形成される。
【0102】
アレイ設計およびプロセッシング
アレイ設計
1.遺伝子座は、SIIソフトウェア(現在はv3.2)を使用して処理して:
a.これらの特定の遺伝子座におけるゲノムの配列(上流に50kbおよび下流に20kbを有する遺伝子配列)を取り出し、
b.この領域内の配列がCCに関与する確率を規定し、
c.特異的REを使用して配列を切断し、
d.どの制限フラグメントがある特定の配向で相互作用しやすいかを判定し、
e.一緒になって相互作用する異なるCCの尤度をランク付けする。
2.アレイサイズと、したがって利用可能なプローブ位置の数(x)を決定する。
3.x/4相互作用を取り出す。
4.各相互作用について、パート1からの制限部位に対する30bpおよびパート2からの制限部位に対する30bpの配列を規定する。それらの領域が繰り返し配列でないかを調べ、もしそうであるならば除外し、次の相互作用をリストに載せる。両30bpをあわせてプローブを規定する。
5.x/4のプローブ+規定された対照プローブのリストを作成し、4回複製して、アレイ上に作成されるリストを作成する。
6.プローブのリストをカスタムCGHアレイ用にAgilent Sureデザインウェブサイトにアップロードする。
7.プローブ群を使用して、AgilentカスタムCGHアレイを設計する。
【0103】
アレイプロセッシング
1.鋳型産生用のEpiSwitch(商標)SOPを使用してサンプルを処理する。
2.アレイプロセッシング実験室によりエタノール沈澱で浄化する。
3.血液、細胞または組織のゲノムDNA分析酵素標識のためのAgilent SureTag完全DNA標識キット-Agilent Oligonucleotide Array-based CGHにしたがってサンプルを処理する。
4.Agilent特徴抽出ソフトウェアを使用するAgilent C Scannerを用いてスキャンする。
【0104】
刊行物
本明細書中で言及するすべての刊行物の内容は、参照により本明細書に組み込まれ、本発明に関連する特徴をさらに規定するために使用することができる。
【実施例
【0105】
本発明者らは、AD(アルツハイマー病)陽性患者および年齢が一致したAD陰性対照の所見に基づいて神経変性状態を有する患者の後成的プロフィールを特徴づけた。ADマーカーが特定された遺伝子の詳細を表1に示し、また関連するプローブ配列および位置も示す(表2)。商標名EpiSwitch(商標)抽出プロセスは、抽出反応あたり50μlの血液を使用してサンプルに関して実施した。簡単に言うと、サンプルをホルムアルデヒドで固定し、15分間インキュベートし、グリシンでクエンチした。サンプルを溶解させ、密度クッション遠心分離(density cushion centrifugation)を使用して核を精製した。Proximityライゲーションは制限酵素TaqIおよびT4 DNAリガーゼを使用して実施した。各抽出のために、タンパク質およびRNA量を、プロテイナーゼKを介して除去した。
【0106】
ネステッドPCRは、鋳型として13μlのサンプル希釈シリーズを使用して実施した。LabChip GX Touch HT(Perkin Elmer)ハイスループットゲル電気泳動システムを使用してPCR産物を分析した。Perkin Elmer製のLabChipシステムは、キャピラリー電気泳動を使用して「Lab on a chip」の内部でゲル電気泳動を実施する。PCR産物の検出は、DNA Dye/laser励起システムおよびサイジングおよび標準的ラダーに対して算出した濃度測定値によるものである。各ラダーおよび試験したサンプルは、キャピラリーゲル電気泳動を実施する前に下側および上側マーカー化合物を混入させて、ラダーに対して正しいアラインメントを可能にする。LabChip GXシステムの出力は、Y軸上にRelative 蛍光性ユニットおよびX軸上に時間の電気泳動図の形態である(例えば、図2および3)。Perkin Elmerソフトウェアは電気泳動図のバーチャルゲル画像を作製して、伝統的なゲル画像を表す。検出された各DNAピークのサイズおよび濃度を定量化し、電気泳動図/バーチャルゲル画像およびエクスポート可能な表で提示する。
【0107】
正しいサイズとして特定されたピークを含むPCR反応(可能な3C相互作用に基づいて予想されるサイズと一致するもの)を「1」と記録して、生成物の検出を意味し、一方、サンプルが検出されない生成物である場合は「0」と記録する。この読み出しは、EpiSwitchネステッドPCRプラットフォームの二元読み出しを提供する。別のTaqI部位のために各プライマー組み合わせについて複数のサイズのピークが予想され、したがって、すべての予想されるピークサイズを分析する。
【0108】
患者診断
5人のアルツハイマー患者(重度から軽度の認知症)、および5人の年齢が一致した対照由来のライゲートされたDNAを有するサンプルを、表3に記載したプライマーを使用するPCRアッセイに供した。
【0109】
表3は、対照群からの患者に対するADのEpiSwitch(商標)プローブ(AD-N)を、マーカーのq値およびマーカーがアルツハイマー患者コホートまたは対照コホートにおいて高頻度でみられるかとともに示す。
【0110】
表4は、アルツハイマー病にかかっている対象において高頻度でみられるか、またはアルツハイマー病にかかっていない対象で存在しないと予想されるかをはじめとする、ADについての14の好ましいマーカーの詳細を提示する。
【0111】
サンプル
本データをもたらす血液サンプルはすべてロシア国モスクワ市の白色人種由来のものであった。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】

【0117】

図1
図2
図3