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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】RFタグ用の固定治具
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220324BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20220324BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
G06K19/077 220
G06K19/077 248
G06K19/077 252
G06K19/077 296
H01Q1/22 Z
H01Q13/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019535694
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2018029701
(87)【国際公開番号】W WO2019031535
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017155945
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199353(JP,A)
【文献】特開2011-123789(JP,A)
【文献】特開2007-031135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
H01Q 1/22
H01Q 13/08
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管形状を有する金属資材内にRFタグを固定するためのRFタグ用の固定治具であって、
前記金属資材の開口端部に配置される平板部と、
前記平板部の裏面から前記金属資材の内部へ延在され、前記RFタグを支持するための板部材と、を含み、
前記平板部から前記板部材に連通する導電層が設けられた、RFタグ用の固定治具。
【請求項2】
前記平板部に設けられた導電層は、前記平板部の表面の全面に亘って設けられている、請求項1に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項3】
前記導電層は、前記板部材上に設けられた第1導電層と、前記平板部の裏面から表面に亘って設けられた第2導電層とを含み、前記第1導電層および前記第2導電層が電気的に接続されている、請求項1または2に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項4】
前記平板部の表面に設けられた第2導電層の外周距離は、前記RFタグの周波数の電波の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つを満たすよう設計された、請求項3に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項5】
前記平板部および前記板部材の少なくとも一方に設けられ、前記金属資材の管形状の内周面に当接することにより、前記RFタグおよび前記金属資材の間に設定間隔の空気層を形成する固定部材をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項6】
前記金属資材が建築用資材である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項7】
前記建築用資材が、パイプを含む足場用資材である、請求項6に記載のRFタグ用の固定治具。
【請求項8】
前記金属資材が高圧配管である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のRFタグ用の固定治具。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場用資材など金属資材の使用状況、履歴の管理、追跡などを効率的に実施するため、管形状を有する金属資材内にRFタグを固定するためのRFタグ用の固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
足場用資材は繰り返し使用されるため経年劣化し、強度低下が生じる。そのため、足場用資材の維持管理が重要であり、また現場で使用された期間を把握して管理することが求められる。さらに、足場用資材は同じ種類のものを複数束ね、あるいは重ねて運搬、保管されることが多いため、比較的離れた場所から複数の足場用資材の情報を同時に読み取れるタグの利用が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008-158569号公報)には、工場で製造された足場用資材や据付け機器等の製品が建設現場で使用されるまでの製品管理と、製品が建設現場で使用される際の作業管理とを効率的に管理でき、しかも管理ミスが発生しにくい、RFIDタグ及びそれを用いた建設現場管理システム並びに管理方法について開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の建設現場管理システム40は、RFIDタグ10のうちの長距離通信用RFID22、第1の読取手段42、管理サーバ46、及び通信ネットワークのうちの建設現場の敷地内通信をネットワークする敷地内広域ネットワーク、で構成され、製造工場で製造した製品を建設現場に搬入して使用するまでの製品管理である製品管理システム40Aと、短距離通信用RFID24、第2の読取手段44、管理サーバ46、及び通信ネットワークのうちの建設建屋内の通信をネットワークする建屋内無線ネットワーク、で構成され、製品が建設現場で使用される際の作業管理である作業管理システムと、の2つのシステムで構成されるものである。
【0005】
特許文献2(特開2005-44066号公報)には、コストをかけずに各種の処理が可能な仮設資材のレンタルシステムについて開示されている。
【0006】
特許文献2記載の仮設資材のレンタルシステムにおいては、仮設資材の各々には、各仮設資材を特定するためのICタグが設けられる。レンタルシステムは各機能毎の管理コンピュータ12等を含む。各機能毎の管理コンピュータには、ICタグに近接して、ICタグから各仮設資材を特定する信号を受信して、受信した信号を管理センタコンピュータ12に送信するリーダ35等が接続され、各機能毎の管理コンピュータは、自分を特定する情報とともに、リーダ35等によって読取られたICタグを特定する情報を管理センタコンピュータ12に送信し、管理センタコンピュータ12は、各機能毎の管理コンピュータからの情報に基づいて仮設資材のレンタル状況を管理する。
【0007】
特許文献3(特開2004-59249号公報)には、住宅設計によって指定された資材が、建築工期の要求に従って、建築現場に確実に納入されるようにして、建築現場に納入された資材と指定資材との間で、品番違い、サイズ違い、色違い、工期違いなど、様々な点での不一致を生ずることがなく、現場でのトラブルや工期の遅れをなくすことについて開示されている。
【0008】
特許文献3に記載の住宅資材発注納入管理方法では、発注データに基づく資材情報が資材のICタグに書き込まれ、建築現場又は建築現場に至る流通の過程で、資材のICタグから資材情報が読み取られて、その資材の確認又は認証が行われるものである。
【0009】
しかし、特許文献1乃至3には様々なタイプのRFタグが開示されているが、金属資材にFRタグを取り付けて動作させるRFタグは開示されていない。
金属上に取り付けた場合でも通信できるようにした無線周波数識別タグが以下の特許文献4および5に開示されている。
特許文献4(WO2007/000807号公報)には、薄くてフレキシブルで金属に貼り付けても通信でき、製造コストも低減する無線周波数識別タグについて開示されている。
【0010】
特許文献4に記載の無線周波数識別タグにおいては、逆Fアンテナ(10)は、放射エレメント(11)、ショートピン(12)、給電部(13)、およびグランド地板(14)を有し、フィルム(30)の表面に平面状に形成されている。フィルム(30)は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁フィルムであり、表面に形成された逆Fアンテナ(10)の放射エレメント(11)、ショートピン(12)、および給電部(13)が、電子機器などの金属筐体(40)から突出するように貼り付けられるものである。
【0011】
特許文献5(特開2003-85501号公報)には、金属などの導電体に貼付しても、外部機器(リーダライタ)と交信可能な非接触ICタグについて開示されている。
【0012】
特許文献5に記載の非接触ICタグにおいては、静電結合方式によって、2つのアンテナ間に電位差を生じさせて、外部機器と非接触で交信可能な非接触ICタグであって、導電体40に貼付可能であって、その導電体40との導通を防止する絶縁層11と、絶縁層11に形成された導電層12と、ICチップ13Dを実装し、一部分を導電層12に形成し、他の部分を導電体40に貼付するICチップ実装部13とを備え、導電層12を第1のアンテナとし、導電体40を第2のアンテナにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2008-158569号公報
【文献】特開2005-44066号公報
【文献】特開2004-59249号公報
【文献】WO2007/000807号公報
【文献】特開2003-85501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献4に開示された無線周波数識別タグでは、逆Fアンテナ(10)の放射エレメント(11)、ショートピン(12)、および給電部(13)が金属筐体(40)から突出するように貼り付ける必要があるので、金属筐体から突出した部分が邪魔になってタグの用途が限られる。
【0015】
特許文献5に開示された非接触ICタグでは、静電結合方式によって2つのアンテナ間に電位差を生じさせているので、通信距離が非常に短いという欠点がある。
【0016】
本発明の主な目的は、建築用資材、特に足場用資材などの管形状を有する金属資材にRFタグを固定し、かつ無指向性の電波を受信可能なRFタグ用の固定治具を提供することである。
本発明の他の目的は、複数の金属資材を束ね、あるいは積み重ねてRFタグが金属資材の陰になったような場合でも、複数の金属資材に固定されたRFタグを連続して読み取ることができるRFタグを固定するためのRFタグ用の固定治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)
一局面に従うRFタグ用の固定治具は、管形状を有する金属資材内にRFタグを固定するためのRFタグ用の固定治具であって、金属資材の開口端部に配置される平板部と、平板部の裏面から金属資材の内部へ延在され、RFタグを支持するための板部材と、を含み、平板部から板部材に連通する導電層が設けられているものである。
【0018】
この場合、固定治具を金属資材の開口部に平板部を配置し、平板部の裏面から金属資材の内部へ延在された板部材にRFタグを固定する。また、固定治具の平板部から板部材に電気的に導通する導電層が設けられている。その結果、導電層上にRFタグを電気絶縁性の貼着部材により貼着することで、コンデンサが形成され、RFタグのインダクタンスと共振回路を形成することができる。
一般的に金属資材の直径が、16cm以下の場合、RFタグを金属資材内に収容した場合、読取装置の電波をRFタグが受信できないという問題が生じる。
しかしながら、平板部から板部材に連通する導電層によりRFタグに的確に読取装置の電波をRFタグに供給することができる。
【0019】
すなわち、導電層から取り込まれた高周波電流は、金属資材内の閉鎖空間に設置されたRFタグの一方の導波素子(第1の導波素子)に供給され、RFタグの該第1の導波素子と、RFタグの他方の第2の導波素子(グランドエレメント)間に接続されたICチップ回路を通し、第2の導波素子より金属パイプに放出される。
よって、金属資材全体がアンテナとなり作動することができる。このようにして、RFタグからの電波を、金属資材を介して読取装置へ送ることができ、かつ読取装置からの電波を、金属資材を介してRFタグで受信することができる。
その結果、RFタグを確実に駆動させ、無指向性で通信距離が長いRFタグの読み取りを実施することができる。
【0020】
(2)
第2の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、一局面に従うRFタグ用の固定治具において、平板部に設けられた導電層は、固定治具の平板部の表面の全面に亘って設けられていてもよい。
【0021】
この場合、広い面積の導電層が金属資材の外部に露出されているので、読取装置の電波を効率よく受信することが可能となる。
【0022】
(3)
第3の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、一局面または第2の発明にかかるRFタグ用の固定治具において、導電層は、板部材上に設けられた第1導電層と、平板部の裏面から表面に亘って設けられた第2導電層とを含み、第1導電層および第2導電層が電気的に接続されていてもよい。
【0023】
この場合、第1導電層および第2導電層が電気的に接続されているので、第1導電層に重ねて取り付けられたRFタグは、読取装置の電波を効率よく受信することが可能となる。
【0024】
(4)
第4の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、第3の発明にかかるRFタグ用の固定治具において、平板部の表面に設けられた第2導電層の外周距離は、RFタグの周波数の電波の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つを満たすよう設計されてもよい。
【0025】
この場合、読取装置からの電波を第2導電層によって確実に受信することができる。その結果、RFタグの動作を確実にすることができる。
【0026】
(5)
第5の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、一局面から第4の発明にかかるいずれかのRFタグ用の固定治具において、平板部および板部材の少なくとも一方に設けられ、金属資材の管形状の内周面に当接することにより、RFタグおよび金属資材の間に設定間隔の空気層を形成する固定部材をさらに含んでもよい。
【0027】
固定治具を金属資材に固定した場合、固定部材によって、板部材に固定されたRFタグと金属資材との間に設定間隔の空気層が形成される。この空気層はコンデンサ構成のための誘電層として機能する。すなわち、RFタグ、空気層および金属資材によってコンデンサが構成され、共振回路を形成する。その結果、RFタグが駆動した場合、金属資材がアンテナとなり、読取装置と送受信を行うことができる。
したがって、複数のパイプなどの金属資材が束ねられ、あるいは積み重ねられて保管されている場合であっても、各金属資材の内部に固定されたRFタグの情報を確実に読み取ることができる。
【0028】
(6)
第6の発明にかかる固定治具は、一局面から第5の発明にかかるいずれかのRFタグ用の固定治具において、金属資材が建築用資材であってもよい。
【0029】
この場合、建築用資材に固定治具を固定し、その固定治具の板部材にRFタグを固定することにより、建築用資材の保管状況などの履歴情報の管理が容易に行うことができる。すなわち、読取装置は、金属資材に固定されたRFタグから資材情報を読み取るため、それによって金属資材の移動、または保管などの管理を行うことができる。
【0030】
(7)
第7の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、第6の発明にかかるRFタグ用の固定治具において、建築用資材が、パイプを含む足場用資材であってもよい。
【0031】
この場合、パイプなどの足場用資材の保管状況などの履歴情報の管理を容易に行うことができる。
【0032】
(8)
第8の発明にかかるRFタグ用の固定治具は、一局面から第5の発明にかかるRFタグ用の固定治具において、金属資材が高圧配管であってもよい。
【0033】
この場合、高圧配管の保管状況などの履歴情報の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施の形態にかかるRFタグ用の固定治具およびその固定治具に固定したRFタグをパイプに挿入して固定した状態の一例を示す模式的断面図である。
図2】本実施の形態にかかるRFタグ用の固定治具およびその固定治具に固定したRFタグの一例を示す模式的斜視図である。
図3図1に示すRFタグ用の固定治具およびRFタグをパイプに固定した状態の一例を示す模式的断面図である。
図4】RFタグの一例を示す模式的斜視図である。
図5】裏面側を示すRFタグの一例を示す模式的斜視図である。
図6】RFタグの一例を示す模式的展開図である。
図7図1のRFタグ装置が固定されたパイプの等価回路の一例を示す図である。
図8図1のRFタグ装置が固定されたパイプの作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0036】
[本実施の形態]
図1は、本実施の形態にかかるRFタグ100を固定するためのRFタグ用の固定治具300をRFタグ100とともに管形状を有する金属資材としてのパイプ200の開口部210内に挿入し固定した状態の一例を示す模式的断面図であり、図2は、本実施の形態にかかるRFタグ用の固定治具300およびその固定治具300に取り付けたRFタグ100の一例を示す模式的斜視図である。
【0037】
本発明のRFタグ用の固定治具300は管形状を有する金属資材200に固定されるものである。ここで、金属資材200とは導電性を有する部材のことであり、具体的な一例として、鋼材、アルミニウム材などの任意の金属材により作製される。
【0038】
金属資材200の用途は限定されるものではないが、例えば建築用資材であってもよく、土木用資材、自動車用資材、プラント用資材などであってもよい。土木用資材およびプラント用資材には高圧配管などがあり、建築用資材には、パイプ、クランプ、枠組みなどの足場用資材があるが、本実施の形態では足場用資材のうちパイプ(鋼管、単管パイプとも称される。)に本発明の固定治具300を取り付けた例を以下に説明する。
【0039】
なお、パイプ200は両端が開口したもの、パイプの少なくとも一方側の端部が変形など加工されたもの、パイプの少なくとも一方側の端部にフランジなど連結部材が溶接されたものなどを含む。
【0040】
(RFタグ用の固定治具300)
図1および図2に示すように、本発明のRFタグ用の固定治具300は、金属資材としてのパイプ200に固定されるものである。
【0041】
図1および図2に示すように、固定治具300は、主に平板部320および板部材340を含む。板部材340は、平板部320の背面側(裏面側)からパイプ200内に延在するように設けられる。すなわち、固定治具300の平板部320は、パイプ200の開口部210に沿って形成され、板部材340は、パイプ200の長手方向に延在した形状からなる。
また、本実施の形態において、板部材340には、固定部材360が設けられる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、平板部320および板部材340を一体に形成した場合について説明しているが、これに限定されず、別のパーツとして形成し、接着してもよい。
【0043】
(平板部320)
本実施の形態における平板部320の形状は、主に円板形状からなる。なお、平板部320の形状は限定されない。平板部320の形状は、図2に示すように、円板形状の周縁の一端を切欠した形状であってもよい。平板部320の形状は、例えば、パイプ200の開口部210の形状に合うように略円板状とすることができる。
【0044】
平板部320の大きさは、パイプ200の開口部210を閉塞する程度の大きさに形成されている。平板部320の外形はパイプ200の内径と同じ程度、あるいはパイプ200の内径よりも大きくても小さくてもよい。
【0045】
(板部材340)
本実施の形態において、板部材340は直方体の形状からなる。板部材340の幅寸法は、パイプ200の内径とほぼ同寸法か、内径よりやや小寸法に設定されている。
すなわち、板部材340は、パイプ200の内部に挿入できるサイズであればよい。
【0046】
(固定部材360)
固定部材360は、平板部320および板部材340の少なくとも一方に設けることができる。この固定部材360は、固定治具300がパイプ200内へ挿入された場合に、パイプ200の管形状の内周面に当接することにより、パイプ200の内周面に固定されるものである。
【0047】
本実施の形態においては板部材340に固定部材360が設けられている。なお、固定部材360は、板部材340および平板部320の両方に固定されていてもよく、平板部320に固定されていてもよい。
本実施の形態において固定部材360は、板部材340の下面に板部材340と直交する形態で垂設されている。
【0048】
また、固定部材360には、パイプ200の内面に挿入しやすいように、固定部材360の挿入側端部の角部にC面が形成されている。なお、C面に限定されず、R面等であってもよい。
なお、本実施の形態においては、固定部材360は、板部材340の下面に板部材340と直交することとしているが、これに限定されず、他の形状であっても、図1における矢印Fの力を発生させることができればよい。
【0049】
固定治具300は、板部材340、平板部320および固定部材360から一体に構成してもよく、別部材を接合して固定治具300を構成してもよい。
固定治具300を一体で形成する場合、やや可撓性のある樹脂で形成することが好ましい。特に、固定部材360は変形性および/または弾性を有する樹脂にて形成することが好ましい。
【0050】
板部材340の一方の面にRFタグ100が支持される支持面340aが形成され、板部材340の他方の面に固定部材360が設けられる。そして、固定治具300の板部材340の支持面340aにRFタグ100が支持される。
【0051】
本実施の形態では、固定治具300の平板部320から板部材340に連通する導電層380、382が設けられている。具体的には、固定治具300の板部材340の支持面340a上に第1導電層380が設けられ、平板部320の裏面から表面に亘って第2導電層382が設けられている。
さらに具体的には、板部材340の上面(RFタグ100を支持する側の面)と平板部320の背面、平板部320の上面および前面に亘って導電層380、382が連続して設けられている。
【0052】
導電層380は、板部材340上に形成された第1導電層380、平板部320の背面に形成された第2導電層382a、平板部320の上面に形成された第2導電層382b、および平板部320の前面に形成された第2導電層382cを有する。これらの第1導電層380、第2導電層380a、第2導電層382bおよび第2導電層382cは電気的に連通して形成される。
【0053】
ここで、第2導電層382cは平板部320の前面側の全面に亘って設けられてもよいが、平板部320の前面の一部にのみ設けられてもよい。
この実施形態では、第2導電層382cは平板部320の前面側の全面に亘って設けられている。
導電層382cを平板部320の全面に亘って設けることにより、該導電層382cは広い面積で露出するので、読取装置の電波を効率よく受信することが可能となる。
【0054】
また、平板部320の表面に設けられた第2導電層382cの外周距離は、RFタグの周波数の電波の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つを満たすよう設計されるのが好ましい。この場合、読取装置からの電波を第2導電層382cによって確実に受信することができる。その結果、RFタグの動作を確実にすることができる。
第2導電層382cの形状は、第2導電層382cの外周距離が、RFタグの周波数の電波の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つを満たす限り、様々に変更することができる。例えば、図2に示す略円形に限らず、矩形状、正多角形、多角形、渦巻き状、コイル状などの任意の形状であってもよい。
【0055】
上記の導電層380、382は、金属薄膜により形成することができる。例えば、導電層380、382は、銅箔、アルミニウム箔などの金属箔を板部材340の上面から平板部320の背面、上面および前面に亘って貼着することにより形成することができる。また導電層380、382は、金属ペーストなどの導電性材料をこれらの部材上に印刷することによっても形成することができる。さらに、公知のエッチング技術あるいはメッキによっても導電層380、382を形成することができる。
【0056】
この実施形態では、平板部320の外周縁の一部が切欠されて平坦面322が形成されている。この平坦面322上に第2導電層382bが形成されている。導電層380を導電性テープで形成する場合、平坦面382の上を通るよう導電性テープを固定治具300の平板部320から板部材340に亘って貼着する。その結果、第1導電層380および第2導電層382を形成することができる。このような形態で導電層380、382を形成することにより、固定治具300の生産性を高めることができる。
【0057】
RFタグ100を固定治具300に取り付けるには、公知の方法によって行うことができる。例えば、電気絶縁性の接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを用いてRFタグ100を固定治具300に接着させることができる。
例えば、電気絶縁性の貼着部材を使用して固定治具300の板部材340上(つまり、第1導電層380上)にRFタグ100を貼着することができる。これにより、RFタグ100を板部材340に支持させることができる。
【0058】
(RFタグ100)
次に、上記の固定治具300に支持されるRFタグ100の構成を詳しく説明する。
図4乃至図6に示すように、RFタグ100は、アンテナ10と、給電部50に接続され読取装置(図示せず)が発信した電波に基づいて動作するICチップ80とを備えている。
【0059】
(アンテナ10)
アンテナ10は、第1導波素子20、第2導波素子30、第1絶縁基材40、給電部50及び短絡部60を備えている。
【0060】
第1絶縁基材40は矩形の板状に形成され、上面(第1主面)、及び第1主面の反対側の下面(第2主面)を有する。第1絶縁基材40は、例えば略直方体であるが、これに限らない。例えば、円板状であってもよいし、あるいは断面が円弧状に湾曲したものであってもよい。好ましくは、第1絶縁基材40は、RFタグ100を取り付ける位置における固定治具300の表面形状に応じた形状を有する。
【0061】
図4に示すように、第1導波素子20は第1絶縁基材40の上面に設けられている。図5に示すように、第2導波素子30は第1絶縁基材40の下面に設けられている。第1導波素子20及び第2導波素子30は、いずれも長方形状であり、アルミ等の金属薄膜のエッチング又はパターン印刷等によって形成される。
【0062】
第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状である。なお、本願において「同一形状」とは、厳密な意味での同一に限られるものではなく、アンテナの構造に起因して僅かな差異が生じる場合も「同一形状」に含むものとする。例えば、後述のICチップ80を第1導波素子20と同一平面上に設ける場合、ICチップ80を配置するために、図4に示すように、例えば四角形状の第1導波素子20の一部に凹部25を設ける必要がある。この場合、第1導波素子20と第2導波素子30の形状は厳密には同一ではない。しかし、第1導波素子20は第2導波素子30と同様の四角形状であるので、第1導波素子20と第2導波素子30は同一形状であるというものとする。
【0063】
給電部50は、第1絶縁基材40の側面に設けられ、第2導波素子30にその一端が電気的に接続されている。短絡部60は、第1絶縁基材40の側面に設けられ、第1導波素子20にその一端が電気的に接続され、第2導波素子30にその他端が電気的に接続されている。
図4に示すように、給電部50及び短絡部60は、第1導波素子20と第2導波素子30とに架け渡されるようにシート70上に互いに間隔をおいて並行に設けられる部材である。
【0064】
なお、給電部50及び短絡部60は、互いに並行に設けられなくてもよい。また、給電部50及び短絡部60は、第1導波素子20及び第2導波素子30を形成する際にそれたと同時に一体に形成してもよい。あるいは、給電部50及び短絡部60を別体に成形した後、各々の端部を第1導波素子20及び第2導波素子30に接合してもよい。
【0065】
図4図5及び図6に示すように、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60は、絶縁性のシート70上に形成されており、第1絶縁基材40の辺の部分で折り曲げられたシート70を介して第1絶縁基材40の外面に貼り付けられている。
つまり、図6に示すように、片面に第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60が形成された可撓性のシート70を、給電部50及び短絡部60の部分でともに屈曲させて第1絶縁基材40の表裏面に貼り付けることにより容易にアンテナ10を製造することができる。
【0066】
なお、シート70の材料としては、PET、ポリイミド、ポリ塩化ビニルなど可撓性を有する絶縁材料を用いることが可能である。シート70の厚さは特に限定されるものではないが、一般的には数十μm程度である。また、各導波素子20,30の表面に絶縁被膜処理を施してもよい。
【0067】
また、第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70(基材)上に形成しているが、必ずしもシート70上に形成されたものである必要はない。例えば、第1導波素子20及び第2導波素子30を単体で形成してもよい。あるいは、第1導波素子20及び第2導波素子30をシート70上に形成した後で当該シート70を剥がしてもよい。
【0068】
上記の第1絶縁基材40、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50及び短絡部60により、板状逆Fアンテナが構成される。この板状逆Fアンテナは、読取装置(図示せず)から送信された電波を受信する。第1導波素子20が電波を吸収する場合には、第2導波素子30が導体地板として働く。一方、第2導波素子30が電波を吸収する場合には、第1導波素子20が導体地板として働く。すなわち、導波素子20,30は、RFタグ100の使用態様に応じて、導波素子と導体地板のどちらの機能も果たすことが可能である。
【0069】
図4に示すように、第1導波素子20は、その周囲の側辺20a乃至20fの長さの合計Aがλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれかになるように設計されている。ここで、λは読取装置から送信された電波の波長である。なお、電波の波長λは、RFタグ100として使用可能な範囲内であれば特に限定されない。図5に示すように、第2導波素子30は、その周囲の側辺30a乃至30dの長さの合計Bが合計Aとほぼ等しくなるように設計されている。
【0070】
上記のように、第1導波素子20と第2導波素子30とは同一形状であり、各導波素子20,30の周囲の側辺の長さの合計A,Bはλ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれかにほぼ等しい。これにより、板状逆Fアンテナの共振周波数を容易に設定することができる。
【0071】
なお、各導波素子20,30の周囲の側辺の長さの合計A,Bが上記値のいずれかであれば、各導波素子20,30の平面形状は長方形状に限られない、例えば、各導波素子20,30の中心部を切り取ったロ字状にしてもよい。
【0072】
また、第1絶縁基材40として絶縁体を用いてもよい。これにより、ある程度の大きさの開口面積を確保し、板状逆Fアンテナの感度向上を図ることができる。例えば、第1絶縁基材40として発泡スチロールを使用することが可能である。
【0073】
また、第1絶縁基材40は誘電体であってもよい。第1絶縁基材40として、例えば比誘電率が1以上20以下の誘電体を用いることができる。誘電率が大きい誘電体(例えばセラミック)を用いた場合、コンデンサ93の静電容量が大きくなるため、第1導波素子20及び第2導波素子30の開口面積が小さくなり、RFタグ100を小型化することができる。ただし、アンテナ10の利得が小さくなるため、読取装置との間で通信可能な距離(通信距離)が短くなる。数メートル以上といった比較的長い通信距離が必要な場合は、第1絶縁基材40として誘電率が小さい誘電体を用いる。この場合、比誘電率は5以下であることが好ましい。
【0074】
上記構成のアンテナ10では、読取装置から送信され、上記の板状逆Fアンテナで受信される電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成される。この共振回路は、インダクタパターンLとコンデンサ(第1コンデンサ)93と、により構成される(図7参照)。
ここで、インダクタパターンLは、第1導波素子20、短絡部60、第2導波素子30及び給電部50により構成され、コンデンサ93は、第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40により構成される。この共振回路によって、読取装置から送信された電波(搬送波)を板状逆Fアンテナが高感度で受信できるようになるため、RFタグの読み取り性能を向上させることができる。さらに、後述のICチップ80が生成する電源電圧を高くすることができる。
【0075】
(アンテナの製造方法)
次に、アンテナ10の製造方法について説明する。
まず、図6に示すように、給電部50及び短絡部60の長手方向に直交する方向Hに沿って、給電部50及び短絡部60をそれぞれ、第1導波素子20及び第2導波素子30との接合箇所近傍において折り曲げて、第1導波素子20と第2導波素子30とを対向させる。
次に、第1導波素子20を第1絶縁基材40の上面に接着剤等で貼り付け、第2導波素子30を第1絶縁基材40の下面に貼り付ける。これにより、アンテナ10としての板状逆Fアンテナを製造できる。
【0076】
板状逆Fアンテナとして機能するアンテナ10は、上記のように、給電部50及び短絡部60を屈曲させて、第1絶縁基材40の表面及び裏面に第1導波素子20及び第2導波素子30をそれぞれ貼り付けることにより作製される。したがって、給電用の同軸線路またはストリップ線路を設ける従来のパッチアンテナの場合と比較して、アンテナの構造を簡略化でき、製造コストを抑えることができる。
【0077】
(ICチップ)
ICチップ80は、図4に示すように、第1導波素子20と給電部50との間に設けられている。ICチップ80は、第1絶縁基材40の上面側(第1導波素子20と同一平面上)に配置されている。
なお、板状逆Fアンテナとして機能する範囲内であれば、ICチップ80を第1絶縁基材40の側面に配置してもよい。また、ICチップ80に外部電源を接続して、当該外部電源から供給される電圧によりICチップ80が動作するようにしてもよい。
【0078】
ICチップ80は、アンテナ10の板状逆Fアンテナが受信した読取装置の電波に基づいて動作する。
具体的には、ICチップ80は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流し、ICチップ自身が動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ80は、生成した電源電圧によって、ICチップ80内の制御用の論理回路、パイプ200(金属資材)の固有情報等が格納された不揮発性メモリを動作させる。
また、ICチップ80は、読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
【0079】
ICチップ80には、内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ80は浮遊容量を有する。このため、共振回路の共振周波数を設定する際、ICチップ80内部の等価容量を考慮することが好ましい。換言すれば、共振回路は、インダクタパターンLのインダクタンス、コンデンサ93の静電容量、及びICチップ80内部の等価容量を考慮して設定された共振周波数を有することが好ましい。さらに、後述するように第2のコンデンサの静電容量が考慮される。
【0080】
このように、RFタグ100は、アンテナ10及びICチップ80を備えている。RFタグ100は、読取装置から送信された電波(搬送波)をRFタグ100のアンテナ10で受信する。そして、ICチップ80に記録されているパイプ200の識別データ等を反射波に乗せて読取装置へ返送する。これにより、読取装置をRFタグ100に接触させることなく、RFタグ100は読取装置と通信することが可能である。
【0081】
(固定治具300のパイプ200への固定)
上記構成の固定治具300をパイプ200へ固定するには、固定治具300の板部材340にRFタグ100を支持させたもの(以下、RFタグ装置110ともいう。)を作製した後、次のように行うことができる。
【0082】
パイプ200の開口部210からRFタグ装置110の板部材340および固定部材360をパイプ200内に挿入し(または圧入し)、平板部320をパイプ200の開口端面に当接させる。
【0083】
RFタグ装置110をパイプ200内へ挿入する際には、固定治具300の固定部材360がやや変形するために、RFタグ装置110をパイプ200内へ比較的容易に挿入して取り付けることができる。また、RFタグ装置110をパイプ200内に取り付けた後では、固定部材360の復元力によって、板部材340をパイプ200の内面方向(図1中の矢印Fの方向)へ移動させようとする付勢力が板部材340に作用する。その上方への付勢力によって板部材340の両端部がパイプ200の内面に押される。その結果、板部材340はパイプ200内の設定の位置に固定される。
【0084】
すなわち、固定治具300の板部材340および固定部材360をパイプ200の開口部210からパイプ200内へ挿入した場合には、図1および図3に示すように、板部材340の両端部および固定部材360の下端部がパイプ200の内面に当接し、平板部320の裏面側がパイプ200の開口端に接する。
【0085】
固定治具300は、板部材340の両端部と固定部材360の下端部との少なくとも3点でパイプ200の内面に接する。従って、パイプ200が外部から衝撃を受けた場合でも、固定治具300がパイプ200内で移動することはなく、固定治具300がパイプ200から離間することを防止することができる。
【0086】
ここで、固定治具300の平板部320から板部材340に連通する導電層380が設けられている。そして、この導電層380上にRFタグ100が電気絶縁性の貼着部材390により貼着されている場合は、貼着部材390を介してコンデンサが形成される。RFタグ100と導電層380、382が貼着部材390からなる誘電体を介して容量結合をするため、導電層380がアンテナとして機能する。したがって、無指向性で通信距離が長いRFタグ100にすることができる。
【0087】
次に、図7に基づいて本発明の作用を説明する。
読取装置から送信される電波(キャリア)を固定治具300の第2導電層382が受信する。第2導電層382(放射エレメントとして機能する)から取り込まれた高周波電流は、パイプ200内の閉鎖空間に設置されたF型アンテナまたはL型アンテナを用いたRFタグ100の第1導波素子20(放射エレメントとして機能する)に供給される。
RFタグ100の該第1導波素子20と、RFタグ100の第2導波素子30(グランドエレメントとして機能する)との間に接続されたICチップ回路により、第2導波素子30(グランドエレメント)から金属パイプ200に放出される。よって、パイプ200全体がアンテナとなり、パイプ200全体をアンテナとして作動させることができる。
【0088】
さらに、本実施形態では、板部材340上に固定されたRFタグ100とパイプ200との間に空気層270が形成される。この空気層270はコンデンサ構成のための誘電層として機能する。上記のとおりパイプ200に対する固定治具300の固定位置が規定されるため、空気層270の間隔は所望とする設定間隔となる。よって、RFタグの特性は安定化する。
【0089】
パイプ200内での固定治具300の移動をさらに規制し、空気層270の間隔を一定とするため、固定治具300を次のように構成してもよい。
板部材340の先端部および/または固定部材360の下端部のみを変形性を有する部材で形成してもよい。
具体的には、スプリング、板バネなどの付勢部材を固定部材360に設けて、それら部材の付勢力によって平板部320をパイプ内面方向(図1中の矢印Fの方向)へ押圧付勢するようにしてもよい。
【0090】
(等価回路)
また、図8は、図1に示したRFタグ装置110が固定されたパイプ200の等価回路の一例を示す図である。
図8に示すように、RFタグ100の等価回路は、インダクタパターンLと、コンデンサ93と、ICチップ80とからなる。インダクタパターンL、コンデンサ93およびICチップ80は、読取装置から送信される電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成する。
この共振回路の共振周波数f[Hz]は、式(1)により与えられる。共振周波数fの値は、読取装置から送信される電波の周波数帯域に含まれるように設定される。
【0091】
【数1】
【0092】
式(1)において、La:インダクタパターンLのインダクタンス、Ca:コンデンサ93の静電容量、Cb:ICチップ80内部の等価容量を意味する。
【0093】
ここで、ICチップ80には、内部にコンデンサを含むものがあり、また、ICチップ80は浮遊容量を有する。そのため、共振回路の共振周波数fを設定する場合、ICチップ80内部の等価容量Cbを考慮することが好ましい。
すなわち、共振回路は、インダクタパターンLのインダクタンス、コンデンサ93の静電容量、およびICチップ80の内部の等価容量Cbを考慮して設定された共振周波数fを有することが好ましい。なお、Cbとしては、例えば、使用するICチップの仕様諸元の一つとして公表されている静電容量値を用いることができる。
【0094】
上記のように、ICチップ80内部の等価容量Cbを考慮することで、共振回路の共振周波数fを、電波の周波数帯域に精度良く設定することができる。その結果、RFタグ100の読み取り性能をさらに向上させることができる。また、ICチップ80が生成する電源電圧をさらに高くすることができる。
【0095】
さらに、RFタグ装置110を取り付けたパイプ200においては、RFタグ100とパイプ200との間に空気層270が形成されているので、RFタグ100、空気層270およびパイプ200によってコンデンサ(第2コンデンサ)が構成され、共振回路を形成する。その結果、RFタグ100として読取装置と送受信を行うことができる。
RFタグ100とパイプ200内面との間の距離は共振波長に応じて設定される。よって、コンデンサの容量は変動しない。この第2コンデンサの容量はICチップ80の内部の等価容量以上にすることができる。
【0096】
図8に示すように、第2コンデンサ270は、第1導波素子20、第2導波素子30及び第1絶縁基材40で構成されるコンデンサ93(第1コンデンサ)と直列に接続されている。このため、第1コンデンサ93と第2コンデンサ270の合成容量が変化して、RFタグ100の共振回路の共振周波数が大きく変化する可能性がある。
【0097】
具体的には、コンデンサ270の容量がコンデンサ93の容量よりも非常に小さい場合には、合成容量がコンデンサ93の容量に比べて大きく低下する。このことは、RFタグ100をパイプ200内に配置した場合、RFタグ100の共振回路の共振周波数が大きく変化して、RFタグ100の読み取り性能が低下することを意味する。
【0098】
そこで、本実施形態では、コンデンサ270の容量をICチップ80内部の等価容量以上にすることができる。これにより、コンデンサ93とコンデンサ270の合成容量が大幅に低下することを防ぎ、RFタグ100の性能低下を抑制することができる。コンデンサ270の容量はICチップ80内部の等価容量の2倍以上にすることが好ましい。
【0099】
なお、パイプ200の開口端部に取り付けたRFタグ用の固定治具300を保護するため、該固定治具300を覆うキャップをパイプ200の端部に取り付けてもよい。キャップは電気絶縁性の部材、例えば、合成樹脂製のもので形成することができる。
【0100】
本発明においては、RFタグ装置110が「RFタグ装置」に相当し、RFタグ100が、「RFタグ」に相当し、ICチップ80が「ICチップ」に相当し、インダクタパターンLが「インダクタパターン」に相当し、コンデンサ93が「コンデンサ」に相当し、アンテナ10が「アンテナ」に相当し、パイプ200が「金属資材」、「建築用資材」、「足場用資材」、「パイプ」に相当し、導電層380,382が「導電層」に相当し、固定治具300が「固定治具」に相当し、平板部320が「平板部」に相当し、板部材340が「板部材」に相当し、固定部材360が「固定部材」に相当する。
【0101】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0102】
10 アンテナ
20 第1導波素子
30 第2導波素子
50 給電部
60 短絡部
80 ICチップ
93 コンデンサ
100 RFタグ
110 RFタグ装置
200 パイプ
270 空気層
300 固定治具
320 平板部
340 板部材
360 固定部材
380 導電層
382 導電層
390 貼着部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8