IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フェニックスソリューションの特許一覧

<>
  • 特許-デュアルRFタグ 図1
  • 特許-デュアルRFタグ 図2
  • 特許-デュアルRFタグ 図3
  • 特許-デュアルRFタグ 図4
  • 特許-デュアルRFタグ 図5
  • 特許-デュアルRFタグ 図6
  • 特許-デュアルRFタグ 図7
  • 特許-デュアルRFタグ 図8
  • 特許-デュアルRFタグ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】デュアルRFタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220324BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20220324BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20220324BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G06K19/077 240
G06K19/077 252
G06K19/07 240
H01Q5/371
H01Q13/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019537627
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2018030749
(87)【国際公開番号】W WO2019039447
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017162673
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/014213(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129542(WO,A1)
【文献】特開2012-253700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00 -19/18
H01Q 5/371
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に形成された第1放射エレメント部と、
前記第1放射エレメント部と周長さが異なる第2放射エレメント部と、
前記第1面と対向する第2面を有し、前記第2面に形成されたグランドエレメント部と、
前記第1面に形成されたインダクタパターンと、
前記第1面に形成されたバランスコイルと、
前記インダクタパターンに載置されたICチップと、
前記第1面および前記第2面の間に形成された絶縁基材と、
前記インダクタパターンおよび前記バランスコイルを短絡する短絡部と、を含み、
前記短絡部と前記グランドエレメント部とが電気的に導通された、デュアルRFタグ。
【請求項2】
第1面に形成された第1放射エレメント部と、
前記第1放射エレメント部と周長さが異なる第2放射エレメント部と、
前記第1面と対向する第2面を有し、前記第2面に形成されたグランドエレメント部と、
前記第1面に形成されたインダクタパターンと、
前記第1面に形成されたバランスコイルと、
前記インダクタパターンに載置されたICチップと、
前記第1面および前記第2面の間に形成された絶縁基材と、を含み、
前記グランドエレメント部と前記バランスコイル部とが電気的に導通された、デュアルRFタグ。
【請求項3】
前記第1放射エレメント部は、長手方向に延在して形成され、
前記第2放射エレメント部は、前記第1放射エレメント部と並列して形成された、請求項1または2に記載のデュアルRFタグ。
【請求項4】
前記グランドエレメント部の裏面に金属部材に貼着するための粘着層をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデュアルRFタグ。
【請求項5】
前記第1放射エレメント部は、UHF帯RFID周波数の低周波数側(860MHz付近)の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するよう設計され、
前記第2放射エレメント部は、UHF帯RFID周波数の高周波数側(950MHzから960MHz付近)の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するよう設計された、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデュアルRFタグ。
【請求項6】
前記絶縁基材は、発泡部材からなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデュアルRFタグ。
【請求項7】
前記絶縁基材は、セラミック部材、樹脂または紙からなる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のデュアルRFタグ。
【請求項8】
前記絶縁基材は、前記第1面および前記第2面の対向部位の全面に形成された、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のデュアルRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特表2017-501619号公報)には、アンテナ構成は、開状態及び閉状態を有するスイッチと、スイッチが開状態にあることに応じて、第1の周波数帯域で第1のアクティブ駆動型素子として動作する第1のアンテナと、スイッチが開状態にあることに応じて、第1の周波数帯域で第2のアクティブ駆動型素子として動作する第2のアンテナと、を含む。閉状態は、第1のアンテナと無線周波数接地との間に第1のインピーダンスを動作可能に結合することによって、且つ第2のアンテナと無線周波数接地との間に第2のインピーダンスを動作可能に結合することによって、第1のアンテナ及び第2のアンテナを第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域で動作するように構成する。第1のアンテナは第2の周波数帯域で無給電素子として機能し、第2のアンテナは第2の周波数帯域でアクティブ駆動型素子として機能する方法、について開示されている。
【0003】
特許文献1記載の装置は、開状態及び閉状態を有する少なくとも1つのスイッチと、少なくとも1つのスイッチが開状態にあることに応じて、第1の周波数帯域で第1のアクティブ駆動型アンテナ素子として動作するように構成された第1のアンテナと、少なくとも1つのスイッチが開状態にあることに応じて、第1の周波数帯域で第2のアクティブ駆動型アンテナ素子として動作するように構成された第2のアンテナと、を備える装置であって、閉状態は、第1のアンテナと無線周波数接地との間に第1のインピーダンスを動作可能に結合することによって、且つ第2のアンテナと無線周波数接地との間に第2のインピーダンスを動作可能に結合することによって、第1のアンテナ及び第2のアンテナを第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域で動作するように構成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-501619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、デュアルRFタグは、特許文献1に記載のあるように、開状態及び閉状態を有する少なくとも1つのスイッチが必要な構成となっていた。
本発明の主な目的は、スイッチが不要なデュアルRFタグを提供することである。
本発明の他の目的は、スイッチが不要で、かつ、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができるデュアルRFタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
一局面に従うデュアルRFタグは、第1面に形成された第1放射エレメント部と、第1放射エレメント部と周長さが異なる第2放射エレメント部と、第1面と対向する第2面を有し、第2面に形成されたグランドエレメント部と、第1面に形成されたインダクタパターンと、第1面に形成されたバランスコイルと、インダクタパターンに載置されたICチップと、第1面および第2面の間に形成された絶縁基材と、インダクタパターンおよびバランスコイルを短絡する短絡部と、を含み、短絡部とグランドエレメント部とが電気的に導通されたものである。
【0007】
この場合、第1放射エレメント部により一の周波数に応じたアンテナを形成することができ、第2放射エレメント部により他の周波数に応じたアンテナを形成することができる。
その結果、スイッチが不要なデュアルRFタグを得ることができる。特に、一の周波数を欧州の周波数とし、他の周波数を米国または日本の周波数とすることで、世界的に利用できるデュアルRFタグを得ることができる。
なお、デュアルRFタグとは、複数の周波数に対応できるRFタグを意味する。また、バランスコイルは、バランスドコイルとも呼ばれる。以下、本明細書においては、バランスコイルは、バランスドコイルと同じものとして説明を行う。
【0008】
(2)
他の局面に従うデュアルRFタグは、第1面に形成された第1放射エレメント部と、第1放射エレメント部と周長さが異なる第2放射エレメント部と、第1面と対向する第2面を有し、第2面に形成されたグランドエレメント部と、第1面に形成されたインダクタパターンと、第1面に形成されたバランスコイルと、インダクタパターンに載置されたICチップと、第1面および第2面の間に形成された絶縁基材と、を含み、グランドエレメント部とバランスコイル部とが電気的に導通されたものである。
【0009】
この場合、第1放射エレメント部により一の周波数に応じたアンテナを形成することができ、第2放射エレメント部により他の周波数に応じたアンテナを形成することができる。
その結果、スイッチが不要なデュアルRFタグを得ることができる。特に、一の周波数を欧州の周波数とし、他の周波数を米国または日本の周波数とすることで、世界的に利用できるデュアルRFタグを得ることができる。
【0010】
(3)
第3の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面または他の局面に従うデュアルRFタグにおいて、第1放射エレメント部は、長手方向に延在して形成され、第2放射エレメント部は、第1放射エレメント部と並列して形成されてもよい。
【0011】
この場合、第1放射エレメント部と、第2放射エレメント部との、コンデンサの抵抗(リアクタンス)およびインピーダンスのリアクタンスの関係から、位相差90度、-90度となることから、並列に配置させることが好ましい。
【0012】
(4)
第4の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面から第3の発明のいずれかにかかるデュアルRFタグにおいて、グランドエレメント部の裏面に金属部材に貼着するための粘着層をさらに含んでもよい。
【0013】
この場合、デュアルRFタグを金属部材に貼着することにより、金属部材をアンテナとして利用することができる。その結果、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができる。
【0014】
(5)
第5の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面から第4の発明のいずれかにかかるデュアルRFタグにおいて、第1放射エレメント部は、UHF帯RFID周波数の低周波数側(860MHz付近)の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するよう設計され、第2放射エレメント部は、UHF帯RFID周波数の高周波数側(950MHzから960MHz付近)の波長λに対して、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するよう設計されてもよい。
【0015】
この場合、周波数に対応した放射エレメント長を設定することができる。その結果、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができる。
また、目的とする周波数の波長λ/2に対して、第1放射エレメント部および第2放射エレメント部をそれぞれの周囲測長にすることが好ましい。
【0016】
(6)
第6の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面から第5の発明のいずれかにかかるデュアルRFタグにおいて、絶縁基材は、発泡部材からなってもよい。
【0017】
この場合、絶縁基材は、発泡部材からなるので、耐久性を高めるとともに、コンデンサを確実に形成することができる。また、開口部を確実に保持することができる。特に発泡部材は、発泡スチロール等からなることが好ましい。
【0018】
(7)
第7の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面から第5の発明のいずれかにかかるデュアルRFタグにおいて、絶縁基材は、セラミック部材、樹脂または紙からなってもよい。
【0019】
この場合、絶縁基材は、セラミック部材、樹脂または紙の誘電体からなる場合、デュアルRFタグの小型化を実現することができる。例えば、デバイスとして利用することもできる。
【0020】
(8)
第8の発明にかかるデュアルRFタグは、一局面から第6の発明のいずれかにかかるデュアルRFタグにおいて、絶縁基材は、第1面および第2面の対向部位の全面に形成されてもよい。
【0021】
この場合、絶縁基材は、第1面および第2面の対向する部位の全面に形成されるので、第1面に形成された第1放射エレメント部および第2放射エレメント部と、第2面に形成されたグランドエレメント部とのコンデンサを容易に形成することができるとともに、コンデンサ容量を一定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施の形態にかかるデュアルRFタグを表面から見た一例を示す模式的斜視図である。
図2】本実施の形態にかかるデュアルRFタグを裏面から見た一例を示す模式的斜視図である。
図3】デュアルRFタグの表面側の一例を示す模式的平面図である。
図4】デュアルRFタグの等価回路の一例を示す模式図である。
図5】デュアルRFタグの周波数に対する読取距離の一例を示す図である。
図6】他のデュアルRFタグの表面側の一例を示す模式的平面図である。
図7図6に示したデュアルRFタグの等価回路の一例を示す模式図である。
図8】デュアルRFタグを導電性部材上に接着した図である。
図9】デュアルRFタグを導電性部材上に接着した場合の等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0024】
[本実施の形態]
図1は、本実施の形態にかかるデュアルRFタグ100表面を視野した一例を示す模式的斜視図であり、図2は、本実施の形態にかかるデュアルRFタグ100裏面を視野した一例を示す模式的斜視図である。
図3は、デュアルRFタグ100の表面側の一例を示す模式的平面図である。
【0025】
(デュアルRFタグ100)
図1図2および図3に示すように、デュアルRFタグ100は、ローバンド放射エレメント部210、ハイバンド放射エレメント部220、導通部230、インダクタパターン部250、バランスコイル部260、絶縁基材300、およびグランドエレメント部400を含む。また、デュアルRFタグ100のインダクタパターン部250には、ICチップ500が配設される。
【0026】
図1図2および図3に示すように、デュアルRFタグ100は、直方体形状からなる。
【0027】
(ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220)
デュアルRFタグ100の表面270には、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220が形成される。ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220は、表面270に並列して形成される。
【0028】
(インダクタパターン部250およびバランスコイル部260)
また、表面270には、インダクタパターン部250および、バランスコイル部260が形成される。インダクタパターン部250およびバランスコイル部260がデュアルRFタグ100の表面270の一端側に配設され、バランスコイル部260に接続されたローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220が他端側へ延在して設けられる。
また、バランスコイル部260は、バランスドコイルとも呼ばれる。以下、本明細書においては、バランスコイル部260は、バランスドコイル部260と同じものとして説明を行う。
【0029】
(グランドエレメント部400)
さらに、図2に示すように、デュアルRFタグ100の裏面280には、グランドエレメント部400が形成される。また、グランドエレメント部の裏面に金属部材に貼着するための粘着層450(図8参照)をさらに含んでよい。
【0030】
本実施の形態においてローバンド放射エレメント部210、ハイバンド放射エレメント部220、導通部230、インダクタパターン部250、バランスコイル部260、およびグランドエレメント部400は、アルミニウムの金属薄膜からなる。一般的に本実施の形態における薄膜は、5μm以上35μm以下の範囲の厚みを意味する。
【0031】
ローバンド放射エレメント部210、ハイバンド放射エレメント部220、導通部230、インダクタパターン部250、バランスコイル部260、およびグランドエレメント部400は、エッチングまたはパターン印刷等の手法によって形成される。
【0032】
図1および図3に示すように、ローバンド放射エレメント部210、ハイバンド放射エレメント部220は、主に平板の矩形状からなる。本実施の形態におけるハイバンド放射エレメント部220の面積は、ローバンド放射エレメント部210の面積よりも小さい。
【0033】
ローバンド放射エレメント部210を形成する周辺210a,~,210d(図中の凹凸部も含む)の長さの合計を値S1と呼ぶ。ローバンド放射エレメント部210の値S1は、UHF帯RFID周波数の低周波数側(860MHz付近)の波長λ(ラムダ)を用いた場合、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するように設計されている。
【0034】
なお、値S1は、使用する周波数の波長λの半分の長さであることがより好ましい。
【0035】
また、ハイバンド放射エレメント部220を形成する辺220a,~,220d(図中の凹凸部も含む)の長さの合計を値S2と呼ぶ。ハイバンド放射エレメント部220の値S2は、UHF帯RFID周波数の高周波数側(950MHzから960MHz付近)の波長λ(ラムダ)を用いた場合、λ/4、λ/2、3λ/4、5λ/8のいずれか1つに該当するように設計されている。
【0036】
なお、使用する周波数の波長λの半分の長さであることがより好ましい。
【0037】
(絶縁基材300)
本実施の形態において、図1および図2に示す絶縁基材300は、発泡スチロールからなる。絶縁基材300は、表面270および裏面280の対向部位の全面に形成される。絶縁基材300の一の面には、ローバンド放射エレメント部210、ハイバンド放射エレメント部220、導通部230、インダクタパターン部250、バランスコイル部260の裏面が接着材で接着されている。
【0038】
なお、絶縁基材300は、表面270および裏面280の対向部位の一部の面に形成されていてもよい。
また、絶縁基材300の厚みは、0.5mm以上3mm以下の範囲であることが望ましい。
【0039】
なお、本実施の形態においては、発泡スチロールからなることとしているが、これに限定されず、絶縁体であればよく、ポリエチレン、ポリイミド、薄物発泡体(ボラ―ラ)等、絶縁性を有する他の発泡体または素材を用いてもよい。
【0040】
以上のように、本実施の形態にかかるデュアルRFタグ100は、デュアルRFタグ100の絶縁基材300として発泡スチロールを用いているため、ある程度の大きさの開口面積を確保することができる、後述する導電性部材900を含めたデュアルRFタグ100の感度向上を図ることができる。
【0041】
また、絶縁基材300を誘電体からなるセラミック、紙、樹脂等から形成してもよい。この場合、デュアルRFタグ100のサイズを数ミリサイズに小型化することができる。
【0042】
(導通部230)
図1および図2に示すように、導通部230は、アルミニウムの金属薄膜からなる。導通部230は、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220の間に形成されている。
【0043】
また、本実施の形態においては、導通部230は、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220の形成と同時に、エッチングまたはパターン印刷等の手法によって形成される。
【0044】
なお、本実施の形態においては、エッチングまたはパターン印刷により導通部230を形成することとしているが、これに限定されず、導通部230を別で形成し、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220に電気的に接合してもよい。例えば、導電ピン等を用いてもよい。また、導電部230の幅を、より広くしてもよい。
【0045】
(ICチップ500)
ICチップ500は、図3に示すように、インダクタパターン部250に載置される。ICチップ500は、絶縁基材300の上面側(ローバンド放射エレメント部210と同一平面上)に配置されている。
【0046】
ICチップ500は、デュアルRFタグ100のローバンド放射エレメント部210またはハイバンド放射エレメント部220が受信した電波に基づいて動作する。
【0047】
具体的に本実施の形態にかかるICチップ500は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流して、ICチップ500自身が、動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ500は、生成した電源電圧によって、ICチップ500内の制御用の論理回路、商品の固有情報等が格納された不揮発性メモリを動作させる。
【0048】
また、ICチップ500は、読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
【0049】
(デュアルRFタグ100の等価回路)
図4は、図1に示したデュアルRFタグ100の等価回路の一例を示す模式図である。
【0050】
図4に示すように、インダクタパターン部250において、インダクタLとICチップ500の内部等価容量C(以下、コンデンサCと呼ぶ。)とは、互いに並列接続されている。インダクタL、コンデンサCは、読取装置から送信される電波の周波数帯域で共振する共振回路を構成する。
【0051】
また、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220は、インダクタ―パターン部250に接続され、インダクタパターン部250は、導通部380を介して、グランドエレメント部400に接続されている。
【0052】
その結果、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220を設けることにより、2つの周波数帯域において電波を受信することができるデュアルRFタグ100を形成することができる。
【0053】
また、バランスコイル部260は、インダクタパターン部250と誘導結合し、バランスコイル部260のインピーダンスを適宜調整することにより、インダクタパターン部250に対してインピーダンスを整合することができる。
【0054】
インダクタパターン部250のインピーダンスZは、式(1)により与えられる。
Z=jωL+1/(jωC)、ω=2πf ・・・(1)
ただし、Z:インダクタ―パターン部250のインピーダンス(オーム)
j:虚数単位
ω:読取装置から送信される電波の角周波数(ラジアン/秒)
L:インダクタ―パターン部250のインダクタンス(ヘンリー)
C:ICチップ500の内部等価容量(ファラッド)
π:円周率
f:読取装置から送信される電波の周波数(ヘルツ)
【0055】
バランスコイル部260の周囲長等を調整して、インダクタ―パターン部250のインピーダンスZに等しくなるように調整する。
【0056】
例えば、L=12.5nH(ナノヘンリー)、C=1.4pF(ピコファラッド)、f=920MHz(メガヘルツ)の場合、インダクタ―パターン部250のインピーダンスZは50Ω(オーム)になる。この場合、バランスコイル部260のインピーダンスを50Ωにすれば、インダクタ―パターン部250とバランスコイル部260のインピーダンスを整合することができる。
【0057】
この場合、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220のいずれか一方はωL<1/(ωC)を満たす必要があり、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220のいずれか他方はωL>1/(ωC)を満たす必要がある。
【0058】
その結果、インダクタパターン部250のICチップ500が配置された場所を基準とし、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220のいずれか一方を位相差Φ=90度の位置に配置する。また、インダクタパターン部250のICチップ500が配置された場所を基準とし、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220のいずれか他方を位相差Φ=-90度の位置に配置する。
【0059】
本実施の形態においては、ローバンド放射エレメント部210を位相差Φ=90度の位置に配置し、ハイバンド放射エレメント部220を位相差Φ=-90度の位置に配置した。
【0060】
上記のように、ICチップ500内部の等価容量Cを考慮することで、共振回路の共振周波数fを、電波の周波数帯域に精度良く設定することができる。その結果、デュアルRFタグ100の読み取り性能をさらに向上させることができる。また、ICチップ500が生成する電源電圧をさらに高くすることができる。
【0061】
(デュアルRFタグ100の読取距離)
図5は、図1および図2に示したデュアルRFタグ100の周波数に対する読取距離の一例を示す図である。
【0062】
図5において、曲線630は、読取装置を表面270側に置いた場合の読取距離を周波数毎にプロットしたものであり、曲線640は、読取装置を裏面280側に置いた場合の読取距離を周波数毎にプロットしたものである。
なお、読取距離の単位はメートル(m)であり、周波数の単位はメガヘルツ(MHz)である。
【0063】
図5に示すように、曲線620および曲線640において、860MHz付近および920MHz付近で読取距離が大きくなっている。この結果、デュアルRFタグ100は、従来のようなスイッチを設けていないにも関わらず、複数の周波数帯域において、読取りを実現できていることが分かる。
【0064】
また、表面270側に読取装置を置いた場合に比べて若干読取距離が低下するものの、裏面280側に読取装置を置いた場合でも十分読取距離が長いことが分かる。
【0065】
具体的には、周波数860MHz付近において、曲線620が10.0mであり、曲線640が8.0mである。また、周波数920MHz付近において、曲線620が12mであり、曲線640が5.5mである。このように裏面280側に読取装置を置いた場合でも最低5m前後で読取が可能である。
【0066】
この結果、デュアルRFタグ100は、従来のようなスイッチを設けていないにも関わらず、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができる。
【0067】
(デュアルRFタグの他の例)
図6は、本実施の形態にかかるRFタグ用アンテナ100の他の例を示す模式的平面図であり、図7は、図6に示したデュアルRFタグ100の等価回路の一例を示す模式図である。なお、以下においては、本実施の形態にかかるRFタグ用アンテナ100と異なる点について説明を行う。
【0068】
図6および図7に示すデュアルRFタグ100は、デュアルRFタグ100におけるバランスコイル部260をグランドに接続したものである。
【0069】
この場合、バランスコイル部260およびインダクタパターン部250との誘電効果により電気的に動作される。
【0070】
以上のように、図6および図7のデュアルRFタグ100は、図1乃至図4のデュアルRFタグ100と同様に、従来のようなスイッチを設けていないにも関わらず、デュアルRFタグを実現することができる。
【0071】
(デュアルRFタグ100の使用例)
前述したようにデュアルRFタグ100を導電性部材900上にのせることにより、導電性部材900を良好な感度を有する板状アンテナとすることができる。図8は、デュアルRFタグ100を導電性部材900上に接着した図である。図9は、デュアルRFタグ100を導電性部材900上に接着した場合の等価回路である。
【0072】
デュアルRFタグ100の裏面280側のグランドエレメント部400に粘着層450を設け、粘着層450を介して、デュアルRFタグ100を導電性部材900に貼着する。
これにより、図9に示すように、導電性部材900とグランドエレメント部400とが粘着層450を介して容量結合するため、導電性部材900を板状アンテナとして作用させることができる。したがって、無指向性で通信距離が長いデュアルRFタグ100にすることができる。
【0073】
粘着層450としては、粘着性接着剤、ホットメルトが挙げられ、耐久性および容量結合の観点から粘着性接着剤がより好ましい。
【0074】
なお、本実施の形態においては、デュアルRFタグ100は粘着層450を介して導電性部材900と容量結合をしているが、グランドエレメント部400と導電性部材900とを電気的に接続してもよい。
【0075】
この場合、粘着層450を介した容量結合がないため、グランドエレメント部400と共に導電性部材900がアンテナとして作用し、無指向性で通信距離がより長いデュアルRFタグ100にすることができる。また、設置に伴う静電容量のばらつきをなくすことができる。
【0076】
本実施の形態においては、デュアルRFタグ100を導体性部材900に設置した場合を例示したが、これに限らず、導電性部材900は金属製の導電する板であれば特に制限されない。
【0077】
例えば、建設資材、コンテナ、ナンバープレート、ドラム缶、鋼板、電気電子機材、車両、船舶および航空機などが挙げられる。これらの本体が導電板を有する場合、デュアルRFタグ100を直接設置してもよいし、本体に導電板を別途設置してもよい。
【0078】
例えば、デュアルRFタグ100を車両に用いる場合、車両の屋根部分、ボンネット部分にデュアルRFタグ100を設置してもよい。また、車両は自動車に限られず、工事、農耕作業車等の特殊車両、二輪車、鉄道などに設置してもよく、さらに車両と一体的に使用される取り外し可能な器具(例えば、油圧ショベルのバケット部分)にデュアルRFタグ100を設置してもよい。
【0079】
なお、デュアルRFタグ100を車両に用いる場合であって、導電性部材900を用いない場合、デュアルRFタグを車両の窓部分に設置してもよい。
【0080】
以上のように、デュアルRFタグ100においては、ローバンド放射エレメント部210により一の周波数に応じたアンテナを形成することができ、ハイバンド放射エレメント部220により他の周波数に応じたアンテナを形成することができる。
その結果、スイッチが不要なデュアルRFタグ100を得ることができる。特に、一の周波数を欧州の周波数とし、他の周波数を米国または日本の周波数とすることで、世界的に利用できるデュアルRFタグ100を得ることができる。
【0081】
また、ローバンド放射エレメント部210と、第2放射エレメント部とは、コンデンサの抵抗(リアクタンス)およびインピーダンスのリアクタンスの関係から、位相差90度、-90度となることから、並列に配置させることが好ましい。
【0082】
また、デュアルRFタグ100を導電性部材900に貼着することにより、導電性部材900をアンテナとして利用することができる。その結果、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができる。
【0083】
また、波数に対応した放射エレメント長を設定することができる。その結果、通信感度を飛躍的に向上させるとともに、無指向性の電波を受信することができる。
また、目的とする複数の波長λ/2について、ローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220のそれぞれの周囲測長にすることが好ましい。
【0084】
また、絶縁基材300は、発泡部材からなるので、耐久性を高めるとともに、コンデンサを確実に形成することができる。また、開口部を確実に保持することができる。
【0085】
絶縁基材300は、表面270および裏面280の対向する部位の全面に形成されるので、表面270に形成されたローバンド放射エレメント部210およびハイバンド放射エレメント部220と、裏面280に形成されたグランドエレメント部400とのコンデンサを容易に形成することができるとともに、コンデンサ容量を一定に保持することができる。
【0086】
本発明においては、デュアルRFタグ100が、「デュアルRFタグ」に相当し、表面270が、「第1面」に相当し、ローバンド放射エレメント部210が、「第1放射エレメント部」に相当し、ハイバンド放射エレメント部220が、「第2放射エレメント部」に相当し、裏面280が、「第2面」に相当し、グランドエレメント部400が、「グランドエレメント部」に相当し、インダクタパターン部250が、「インダクタパターン」に相当し、バランスコイル部260が、「バランスコイル」に相当し、ICチップ500が、「ICチップ」に相当し、導電性部材900が、「金属部材」に相当し、粘着層450が「粘着層」に相当し、絶縁基材300が、「絶縁基材」に相当し、短絡部240が、「短絡部」に相当し、導通部230が、「短絡部とグランドエレメント部とが電気的に導通された」に相当する。
【0087】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
100 デュアルRFタグ
210 ローバンド放射エレメント部
220 ハイバンド放射エレメント部
230 導通部
240 短絡部
250 インダクタパターン部
260 バランスコイル部
300 絶縁基材
400 グランドエレメント部
450 粘着層
500 ICチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9