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特許7045120樹脂製成形型および樹脂製成形型の製造方法
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  • 特許-樹脂製成形型および樹脂製成形型の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】樹脂製成形型および樹脂製成形型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/40 20060101AFI20220324BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20220324BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20220324BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20220324BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20220324BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20220324BHJP
【FI】
B29C33/40
B29C70/06
B29C70/68
B32B27/38
B29K105:06
B29L9:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021198286
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2022-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512262927
【氏名又は名称】株式会社ポンド
(74)【代理人】
【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】星野 隆
(72)【発明者】
【氏名】池島 裕二
(72)【発明者】
【氏名】池島 成信
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-370288(JP,A)
【文献】特開2000-355052(JP,A)
【文献】特開2011-179311(JP,A)
【文献】特開平05-261814(JP,A)
【文献】特開平09-174563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステルゲルコートによって形成された表面層と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第1中間層と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成された第2中間層と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第3中間層と、ビニルエステルゲルコートによって形成されたバック層とが順次積層されて構成された樹脂製成形型。
【請求項2】
前記第2中間層は、中央に位置する本体層と、本体層の両側に形成された境界層とによって構成され、境界層は、本体層よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂製成形型。
【請求項3】
前記第2中間層は、網目状のガラス繊維が積層されて形成されており、網目の粗いガラス繊維が積層されて形成された本体層と、本体層の両側に形成されて本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維が積層された境界層とによって構成されている請求項1または2記載の樹脂製成形型。
【請求項4】
鋼材によって形成され、前記バック層に対してシリコーンにより接着された補強材を備えている請求項1から3のいずれかに記載の樹脂製成形型。
【請求項5】
ビニルエステルゲルコートによって表面層を形成する工程と、ビニルエステルが硬化する前に耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を表面層に噴霧する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層して耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合した構成となる第1中間層を形成する工程と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって第2中間層を形成する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層し耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を噴霧して第3中間層を形成する工程と、ビニルエステルゲルコートによってバック層を形成する工程とを有し、表面層と第1中間層と第2中間層と第3中間層とバック層とを順次積層して樹脂製成形型を製造する樹脂製成形型の製造方法。
【請求項6】
前記第2中間層を形成する工程は、中央に位置する本体層を形成する工程と、本体層の両側に位置する境界層を形成する工程とからなり、境界層は、本体層よりも薄くなるように形成することを特徴とする請求項5記載の樹脂製成形型の製造方法。
【請求項7】
前記第2中間層は、網目状のガラス繊維を積層して形成し、網目の粗いガラス繊維を積層して本体層を形成する工程と、本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維を積層した境界層を本体層の両側に形成する工程とを有する請求項5または6記載の樹脂製成形型の製造方法。
【請求項8】
鋼材によって形成された補強材を、前記バック層に対してシリコーンを用いて接着する工程を備えた請求項5から7のいずれかに記載の樹脂製成形型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、収縮による反りの発生のない樹脂製成形型とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を用いた人工大理石は、高級感があるため、近年広く用いられている。しかし、これらの製品の作製は、高温での製品成形になるため、樹脂製成形型は安価であるものの耐熱性が無いことから、用いることができず、高価な金型が通常用いられている。高価な金型ではなく、安価な樹脂型での製品成形ができれば、コストを下げて小ロットでの製品成形が可能であるが、現状の樹脂製成形型では、これを実現することができない。

【0003】
樹脂製成形型に関して、製造工程の簡略化と迅速化が可能なプラスチック成形型に関する技術の一例が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-189939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常の樹脂製成形型は、耐熱性がなく、高温で硬化させる必要がある製品の成形型に用いることはできない。また、耐熱性のある材料を積層して形成された成形型を製作しても、高温になると、積層体を構成する表面層と中間層の模様が型表面に現れるため、綺麗な製品の成型ができない。さらに、高温時の樹脂の収縮により、反りが発生して均一な面の製作ができず、中間層と表面層との剥離等の問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、耐熱性に優れるため高温での製品成形が可能であり、収縮による反りの発生がなく、積層体の剥離や模様の出現を防止することが可能な樹脂製成形型とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の樹脂製成形型は、ビニルエステルゲルコートによって形成された表面層と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第1中間層と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成された第2中間層と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第3中間層と、ビニルエステルゲルコートによって形成されたバック層とが順次積層されて構成されたことを特徴とする。
【0008】
表面層としてビニルエステルゲルコートを用いることにより、成形型の表面を鏡面仕上げにすることができる。また、第1中間層として、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成されたものを用いることにより、耐熱性エポキシ樹脂に固体成分が含まれることになるため、耐熱性エポキシ樹脂だけの状態で固化する際に生じる変形を抑制することができる。また、第1中間層が存在することにより、第2中間層の形成に使用されるガラス繊維の模様が成形型表面に浮かぶことを抑制することができる。
【0009】
さらに、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成された第2中間層が存在することにより、強度を確保することができる。ここでのガラス繊維として、ガラス繊維を織り込んで網目状の構造としたものの他、織り込まずに不織布状の構造となっているものも含む。
【0010】
また、第3中間層とバック層とを積層することにより、成形型の構造がシンメトリー構造になるため、樹脂の収縮による反りの発生を抑制することができる。
【0011】
本発明の樹脂製成形型においては、前記第2中間層は、中央に位置する本体層と、本体層の両側に形成された境界層とによって構成され、境界層は、本体層よりも薄くなるように形成されていることとすることができる。
【0012】
ここで、境界層が本体層の両側に形成されるとは、第2中間層の中央に位置する本体層に対して、第1中間層側と第3中間層側のいずれの側にも境界層が形成されることを意味する。
【0013】
境界層は、本体層よりも薄くなるように形成されているため、境界層における樹脂に対するガラス繊維の比率が高くなる。そのため、第1中間層や第3中間層との境界面において反りの発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の樹脂製成形型においては、前記第2中間層は、網目状のガラス繊維が積層されて形成されており、網目の粗いガラス繊維が積層されて形成された本体層と、本体層の両側に形成されて本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維が積層された境界層とによって構成されていることとすることができる。
【0015】
網目の粗いガラス繊維が積層されて形成された本体層により強度を確保しつつ、その両側に、本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維が積層された境界層を配置することにより、ガラス繊維の模様が成形型の表面に浮かぶことを抑制することができる。
【0016】
本発明の樹脂製成形型においては、鋼材によって形成され、前記バック層に対してシリコーンにより接着された補強材を備えている構成とすることができる。
【0017】
補強材により強度補強ができるとともに、弾性のあるシリコーンにより接着されていることにより、重量のある補強材を搭載しても、ひずみの発生を防止することができる。特に、表面積の広い成形型の場合にはひずみが発生しやすいが、このような状況下においても、効果的にひずみの発生を防止できる。
【0018】
本発明の樹脂製成形型の製造方法は、ビニルエステルゲルコートによって表面層を形成する工程と、ビニルエステルが硬化する前に耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を表面層に噴霧する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層して耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合した構成となる第1中間層を形成する工程と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって第2中間層を形成する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層し耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を噴霧して第3中間層を形成する工程と、ビニルエステルゲルコートによってバック層を形成する工程とを有し、表面層と第1中間層と第2中間層と第3中間層とバック層とを順次積層して樹脂製成形型を製造することを特徴とする。
【0019】
表面層と第1中間層との接合は、ビニルエステルとエポキシ樹脂との接合になるため、通常は密着せずに剥離しやすいが、ビニルエステルが硬化する前に耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を表面層に噴霧することにより、ビニルエステルとエポキシ樹脂との界面における接合状態が良好となり、高温時においても表面層と第1中間層とが剥離せず、密着可能となる。また、ここでのガラス繊維として、ガラス繊維を織り込んで網目状の構造としたものの他、織り込まずに不織布状の構造となっているものも含む。
【0020】
本発明の樹脂製成形型の製造方法においては、前記第2中間層を形成する工程は、中央に位置する本体層を形成する工程と、本体層の両側に位置する境界層を形成する工程とからなり、境界層は、本体層よりも薄くなるように形成することができる。
【0021】
境界層は、本体層よりも薄くなるように形成されているため、境界層における樹脂に対するガラス繊維の比率が高くなる。そのため、第1中間層や第3中間層との境界面において反りの発生を抑制することができる。
【0022】
本発明の樹脂製成形型の製造方法においては、前記第2中間層は、網目状のガラス繊維を積層して形成し、網目の粗いガラス繊維を積層して本体層を形成する工程と、本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維を積層した境界層を本体層の両側に形成する工程とを有することができる。
【0023】
網目の粗いガラス繊維を積層して本体層を形成することにより強度を確保しつつ、その両側に、本体層に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維が積層された境界層を形成することにより、ガラス繊維の模様が型表面に浮かぶことを抑制することができる。
【0024】
本発明の樹脂製成形型の製造方法においては、鋼材によって形成された補強材を、前記バック層に対してシリコーンを用いて接着する工程を備えることができる。
【0025】
補強材により強度補強ができるとともに、弾性のあるシリコーンにより接着されていることにより、重量のある補強材を搭載しても、ひずみの発生を防止することができる。特に、表面積の広い成形型の場合にはひずみが発生しやすいが、このような状況下においても、効果的にひずみの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、耐熱性に優れるため高温での製品成形が可能であり、収縮による反りの発生がなく、積層体の剥離や模様の出現を防止することが可能な樹脂製成形型とその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂製成形型の構成を示す図である。
図2】耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を表面層に噴霧する工程を示す図である。
図3】第2中間層の構造の詳細を示す図である。
図4】補強材の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の樹脂製成形型とその製造方法をその実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る樹脂製成形型の構成を示す。図1においては、積層構造の説明の都合上、樹脂製成形型を構成する各層の位置をずらして表示している。
【0029】
樹脂製成形型1は、ビニルエステルゲルコートによって形成された表面層2と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第1中間層3と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成された第2中間層4と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第3中間層5と、ビニルエステルゲルコートによって形成されたバック層6とが順次積層されて構成されている。バック層6に対して、鋼材によって形成された補強材7が、シリコーンにより接着されている。
【0030】
樹脂製成形型1は、表面層2と、第1中間層3と、第2中間層4と、第3中間層5と、バック層6とを順次積層して形成されており、各層がそれぞれの役割を持っている。これを以下に説明する。
【0031】
第2中間層4は、積層体の中央に位置しており、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成されているため、強度の確保に寄与する。しかし、ガラス繊維が積層されているため、ガラス繊維の模様が成形型の表面に現れると、成形型として機能しなくなる。
【0032】
その対策として、第1中間層3を設けて、ガラス繊維の模様が成形型の表面に現れることを防止している。第1中間層3は、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成されているため、耐熱性エポキシ樹脂に固体成分が含まれることになり、耐熱性エポキシ樹脂だけの状態で固化する際に生じる変形を抑制することができる。そのため、積層することの弊害を防止しつつ、成形型表面へのガラス繊維の模様の写りこみを防止することができる。
【0033】
耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末の一例として、アルミニウムや銅の金属粉末の他、砂等を用いることができるが、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末であれば、他のものであってもよい。
【0034】
第3中間層5は、第1中間層3と同じ組成で同じ厚みとなるように形成されており、バック層6は、表面層2と同じ組成で同じ厚みとなるように形成されている。そのため、成形型の構造がシンメトリー構造となり、樹脂の収縮による反りの発生を抑制することができる。このように、シンメトリー構造を採っていることも、本発明の大きな特徴である。
【0035】
樹脂製成形型1の製造方法は、ビニルエステルゲルコートによって表面層2を形成する工程と、ビニルエステルが硬化する前に耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を表面層2に噴霧する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層して耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合した構成となる第1中間層3を形成する工程と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって第2中間層4を形成する工程と、耐熱性エポキシ樹脂を積層して耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末を噴霧して第3中間層5を形成する工程と、ビニルエステルゲルコートによってバック層6を形成する工程とを有しており、表面層2と、第1中間層3と、第2中間層4と、第3中間層5と、バック層6とを順次積層する。その後、バック層6に対して、鋼材によって形成された補強材7をシリコーンにより接着して、樹脂製成形型を製造する。
【0036】
図2に、表面層2を構成するビニルエステルが硬化する前に、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末8を表面層2に噴霧する工程の作業の様子を示す。表面層2と第1中間層3との接合は、ビニルエステルとエポキシ樹脂との接合になるため、通常は密着せずに剥離するが、この工程を実施することにより、ビニルエステルとエポキシ樹脂との界面における接合状態が良好となり、高温時においても表面層2と第1中間層3とが剥離せず、密着可能となる。
【0037】
図3に、第2中間層4の構造の詳細を示す。
本体層9は、境界層10よりも厚くなるように形成されており、本体層9が樹脂製成形型の強度確保の役割を担っている。境界層10は、本体層9よりも薄くなるように形成されているため、境界層10における樹脂に対するガラス繊維の比率が高くなる。そのため、第1中間層3や第3中間層5との境界面において反りの発生を抑制することができる。
【0038】
本体層9と境界層10に積層するガラス繊維として、ガラス繊維を織り込んで網目状の構造としたものの他、織り込まずに不織布状の構造となっているものを用いることができる。
【0039】
第2中間層4は、網目状のガラス繊維が積層されて形成されている場合には、網目の粗いガラス繊維が積層されて形成された本体層9と、本体層9の両側に形成されて本体層9に積層されるガラス繊維よりも網目の細かいガラス繊維が積層された境界層10とによって構成されている。
【0040】
本体層9に積層された網目の粗いガラス繊維の模様が、樹脂製成形型の表面に現れることを抑制するために、網目の細かいガラス繊維が積層された境界層10が形成されている。
【0041】
図4に、補強材7の詳細を示す。図4(a)は、補強材7が設置された状態での平面図であり、図4(b)は、その断面図である。
【0042】
バック層6に対して、鋼材によって形成された補強材7が、シリコーン11により接着されて固定されている。シリコーンは弾性に富むため、シリコーンにより接着されていることにより、接着部位におけるひずみを生じにくい。そのため、重量のある補強材7を搭載しても、ひずみの発生を防止することができる。特に、表面積の広い成形型の場合にはひずみが発生しやすいが、このような状況下においても、効果的にひずみの発生を防止でき、成形型の表面状態への影響を抑えることができる。
【0043】
補強材7の形状は、図4に示すものに限定されず、成形型に搭載されてひずみの発生を防止できるものであれば、他の形状であってもよい。
【0044】
以上説明したように、本発明の樹脂製成形型1においては、高温状態となっても、表面層2に、ガラス繊維の模様や、補強材7に用いる鋼材等の模様が現れることがない。また、高温時における樹脂の収縮による反りを防止して、均一な面の製作が可能であり、各層の剥離もないため、綺麗な製品の成形が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、耐熱性に優れるため高温での製品成形が可能であり、収縮による反りの発生がなく、積層体の剥離や模様の出現を防止することが可能な樹脂製成形型とその製造方法として利用でき、低コストで小ロットでの製品成形が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 樹脂製成形型
2 表面層
3 第1中間層
4 第2中間層
5 第3中間層
6 バック層
7 補強材
8 耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末
9 本体層
10 境界層
11 シリコーン

【要約】
【課題】耐熱性に優れるため高温での製品成形が可能であり、収縮による反りの発生がなく、積層体の剥離や模様の出現を防止することが可能な樹脂製成形型とその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製成形型1は、ビニルエステルゲルコートによって形成された表面層2と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第1中間層3と、ガラス繊維が積層された耐熱性エポキシ樹脂よって形成された第2中間層4と、耐熱性エポキシ樹脂に混合可能な粉末が耐熱性エポキシ樹脂に混合して形成された第3中間層5と、ビニルエステルゲルコートによって形成されたバック層6とが順次積層されて構成されている。バック層6に対して、鋼材によって形成された補強材7が、シリコンにより接着されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4