(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】基板切断装置および基板切断方法
(51)【国際特許分類】
B23C 1/04 20060101AFI20220324BHJP
B23C 3/30 20060101ALI20220324BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B23C1/04
B23C3/30
H05K3/00 J
H05K3/00 L
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2015006405
(22)【出願日】2015-01-16
【審査請求日】2018-01-15
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391040995
【氏名又は名称】ショーダテクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】島村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】百鬼 和廣
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】田々井 正吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-121493(JP,A)
【文献】特開平02-109630(JP,A)
【文献】特開平01-153213(JP,A)
【文献】実開昭54-038143(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00 - 1/20
B23C 3/00 - 3/36
H05K 3/00 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方面および他方面から前記基板を切断するための基板切断装置であって、
前記一方面から前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を
切削によって切断する複数の第1回転刃を有する第1カッターと、
前記他方面から前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を
切削によって切断する複数の第2回転刃を有する第2カッターと、
前記第1カッターを回転駆動するための第1回転駆動手段と、
前記第2カッターを回転駆動するための第2回転駆動手段と、
前記第1カッターおよび前記第2カッターを回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように支持するためのカッター支持手段と、
前記第1カッターと前記第2カッターとが対向する対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1カッターおよび前記第2カッターの少なくとも一方の位相を調整するための位相調整手段と、
前記第1カッターを前記基板の一方面側から同基板を切断する位置に位置させるとともに前記第2カッターを前記基板の他方面側から同基板を切断する位置に位置させるZ方向駆動手段と、
前記基板をアップカットで切断する方向において前記第1カッターおよび前記第2カッターを前記基板に対して相対的に移動させるためのX方向駆動手段とを備える、基板切断装置。
【請求項2】
前記第1回転駆動手段は第1モーターを有しており、
前記第2回転駆動手段は第2モーターを有しており、
前記位相調整手段は、前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御するための制御部を有しており、
前記制御部は、前記対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御する、請求項1に記載の基板切断装置。
【請求項3】
前記複数の第1回転刃と前記複数の第2回転刃とは、同数かつ同ピッチ角で設けられており、
前記位相調整手段は、前記第1カッターおよび前記第2カッターの各位相を検出するための位相検出部を有しており、
前記制御部は、前記第1カッターおよび前記第2カッターの各位相の差が前記ピッチ角の整数倍から1/2ピッチ角を差し引いた値になるように前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御する、請求項2に記載の基板切断装置。
【請求項4】
基板の一方面および他方面から前記基板を切断するための基板切断方法であって、
(a)前記一方面から前記基板を
切削によって切断するための複数の第1回転刃を有する第1カッターと、前記他方面から前記基板を
切削によって切断するための複数の第2回転刃を有する第2カッターとを、回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように配置し、
(b)前記第1カッターと前記第2カッターとが対向する対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1カッターおよび前記第2カッターを回転させ、
(c)前記基板を
アップカットで切断する方向において前記第1カッターおよび前記第2カッターを前記基板に対して相対的に移動させながら前記第1カッターおよび前記第2カッターがそれぞれ前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を切断する、基板切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の一方面および他方面から基板を切断するための基板切断装置および基板切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器等の基板の製造方法として、1枚の基板に複数の単位基板をまとめて作り込み、当該基板における各単位基板の間に表裏両面から分割溝を形成し、当該基板を分割溝で複数の単位基板に分割するようにしたものがある。特許文献1には、このような基板の製造方法で用いられる分割溝形成装置の一例が記載されている。この分割溝形成方法は、複数の回転刃を有する2つのカッターを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1に記載された分割溝形成装置では、2つのカッターの回転刃どうしの位置関係については全く考慮されていなかったので、2つのカッターどうしを基板に直交する方向から近づけた場合には、各回転刃どうしが干渉するおそれがあった。そのため、この分割溝形成装置を用いて基板を完全に切断することはできなかった。つまり、この分割溝形成装置を基板切断装置に転用することはできなかった。
【0005】
図6は、従来の基板切断装置1の構成を示す正面図である。
図6に示す基板切断装置1は、複数の第1回転刃2aを有する第1カッター2と、複数の第2回転刃3aを有する第2カッター3とを備えている。第1カッター2と第2カッター3とは、基板4を切断する方向において互いに離間して配置されており、これにより第1回転刃2aと第2回転刃3aとの干渉が防止されている。
【0006】
しかし、この基板切断装置1では、基板4における第1回転刃2aが当たる第1部分4aが下方に押されて大きく撓み、基板4における第2回転刃3aが当たる第2部分4bが上方に押されて大きく撓むため、綺麗に切断できないという問題があった。また、肉厚が薄い基板4を切断する際には、剛性不足によって基板4の撓みがより大きくなるため、基板4を切断すること自体が困難であるという問題があった。さらに、第1カッター2と第2カッター3とを含む装置構成が、基板4を切断する方向において大型化するという問題があった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、切断時における基板の撓みを抑制できるとともに、装置構成の大型化を防止できる、基板切断装置および基板切断方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板切断装置の特徴は、基板の一方面および他方面から前記基板を切断するための基板切断装置であって、前記一方面から前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を切削によって切断する複数の第1回転刃を有する第1カッターと、前記他方面から前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を切削によって切断する複数の第2回転刃を有する第2カッターと、前記第1カッターを回転駆動するための第1回転駆動手段と、前記第2カッターを回転駆動するための第2回転駆動手段と、前記第1カッターおよび前記第2カッターを回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように支持するためのカッター支持手段と、前記第1カッターと前記第2カッターとが対向する対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1カッターおよび前記第2カッターの少なくとも一方の位相を調整するための位相調整手段と、前記第1カッターを前記基板の一方面側から同基板を切断する位置に位置させるとともに前記第2カッターを前記基板の他方面側から同基板を切断する位置に位置させるZ方向駆動手段と、前記基板をアップカットで切断する方向において前記第1カッターおよび前記第2カッターを前記基板に対して相対的に移動させるためのX方向駆動手段とを備えることにある。
【0009】
この構成では、第1カッターと第2カッターとが対向する対向領域において隣り合う2つの第1回転刃間に第2回転刃が位置するようにしているので、基板を切断する方向において、第1回転刃と第2回転刃とが大きく離間することを防止できる。したがって、第1回転刃および第2回転刃の一方で基板を切断する際には、他方で基板の撓みを抑制できる。また、第1カッターおよび第2カッターを回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように支持しているので、基板を切断する方向における装置構成の大型化を防止できる。
【0010】
削除
【0011】
また、この構成では、X方向駆動手段によって第1カッターおよび第2カッターを基板に対して相対的に移動させることができるので、基板の切断作業を円滑に行うことができる。
【0012】
本発明の他の特徴は、前記第1回転駆動手段は第1モーターを有しており、前記第2回転駆動手段は第2モーターを有しており、前記位相調整手段は、前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御するための制御部を有しており、前記制御部は、前記対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御することにある。
【0013】
この構成では、第1モーターおよび第2モーターの少なくとも一方を制御部で制御するようにしているので、第1カッターおよび第2カッターの少なくとも一方の位相を迅速かつ正確に調整できる。
【0014】
本発明の他の特徴は、前記複数の第1回転刃と前記複数の第2回転刃とは、同数かつ同ピッチ角で設けられており、前記位相調整手段は、前記第1カッターおよび前記第2カッターの各位相を検出するための位相検出部を有しており、前記制御部は、前記第1カッターおよび前記第2カッターの各位相の差が前記ピッチ角の整数倍から1/2ピッチ角を差し引いた値になるように前記第1モーターおよび前記第2モーターの少なくとも一方を制御することにある。
【0015】
この構成では、位相差がピッチ角の整数倍から1/2ピッチ角を差し引いた値になるように第1モーターおよび第2モーターの少なくとも一方を制御するだけで、隣り合う2つの第1回転刃間に第2回転刃を簡単に位置決めすることができる。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板切断方法の特徴は、基板の一方面および他方面から前記基板を切断するための基板切断方法であって、(a)前記一方面から前記基板を切削によって切断するための複数の第1回転刃を有する第1カッターと、前記他方面から前記基板を切削によって切断するための複数の第2回転刃を有する第2カッターとを、回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように配置し、(b)前記第1カッターと前記第2カッターとが対向する対向領域において隣り合う2つの前記第1回転刃間に前記第2回転刃が位置するように前記第1カッターおよび前記第2カッターを回転させ、(c)前記基板をアップカットで切断する方向において前記第1カッターおよび前記第2カッターを前記基板に対して相対的に移動させながら前記第1カッターおよび前記第2カッターがそれぞれ前記基板に板厚相当量切り込んで同基板を切断することにある。
【0017】
この構成では、基板を切断する方向において、第1回転刃と第2回転刃とが大きく離間することを防止できるので、切断時における基板の撓みを抑制できる。また、基板を切断する方向における装置構成の大型化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板切断装置の構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る基板切断装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】第1回転刃間に第2回転刃を配置した状態を示す拡大正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る基板切断方法の各工程を示すフロー図である。
【
図6】従来の基板切断装置の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る基板切断装置および基板切断方法の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
[基板切断装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る基板切断装置10の構成を示す正面図である。
図2は、基板切断装置10の構成を示すブロック図である。
図3は、基板12を切断する工程を示す斜視図である。
図3に示すように、以下の説明では、基板12を切断する方向をX方向とし、鉛直方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に対して直交する方向をY方向とする。
【0021】
図2に示すように、基板切断装置10は、基板12の一方面12aおよび他方面12bから基板12を完全に切断するための装置である。
図3に示すように、本実施形態で用いられる基板12は、電気機器(例えば携帯電話)等に用いられる複数(本実施形態では9個)の単位基板18が作り込まれた薄肉(厚さ0.3~0.4mm程度)の集合基板である。なお、基板12の厚さは、本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、基板切断装置10は、円板状の第1カッター20と、円板状の第2カッター22と、回転テーブル24と、ワークチャック26とを備えている。
【0023】
図1に示すように、第1カッター20は、円板状の台金30と、台金30の外周部に設けられた複数(本実施形態では20個)の第1回転刃32とを有している。
図2に示すように、台金30の中心部には、後述する第1モーター34の回転軸34aが挿通される貫通孔36が形成されている。台金30における貫通孔36の近傍部分には、ボルト38が挿通される複数(本実施形態では4個)の貫通孔40が形成されている。台金30における貫通孔40の近傍部分には、位置決めピン42が挿通される少なくとも1個(本実施形態では1個)の貫通孔44が形成されている。
【0024】
図1に示す各第1回転刃32は、基板12を切削することによって基板12を切断するための切削刃であり、複数の第1回転刃32が台金30の外周部に等間隔(本実施形態では、18度の角度間隔)で設けられている。本実施形態では、第1カッター20が正面視で時計回りに回転されるように構成されており、各第1回転刃32は、時計回りの先方を向くように設けられている。
【0025】
図1に示すように、第2カッター22は、円板状の台金50と、台金50の外周部に設けられた複数(本実施形態では20個)の第2回転刃52とを有している。
図2に示すように、台金50の中心部には、後述する第2モーター54の回転軸54aが挿通される貫通孔56が形成されている。台金50における貫通孔56の近傍部分には、ボルト58が挿通される複数(本実施形態では4個)の貫通孔60が形成されている。台金50における貫通孔60の近傍部分には、位置決めピン62が挿通される少なくとも1個(本実施形態では1個)の貫通孔64が形成されている。
【0026】
図1に示す各第2回転刃52は、基板12を切削することによって基板12を切断するための切削刃であり、複数の第2回転刃52が台金50の外周部に等間隔(本実施形態では、18度の角度間隔)で設けられている。本実施形態では、第2カッター22が正面視で反時計回りに回転されるように構成されており、各第2回転刃52は、反時計回りの先方を向くように設けられている。
【0027】
図1に示すように、回転テーブル24は、基板12を切断する工程において基板12を支持するものである。回転テーブル24には、その向きをX方向とY方向との間で転換するためのテーブル回転駆動手段68(
図2)が設けられている。したがって、回転テーブル24で支持された基板12を互いに直交する切断線L1および切断線L2(
図3)で切断する場合でも、第1カッター20および第2カッター22を移動させる方向は、X方向およびY方向のいずれか一方(本実施形態ではX方向)だけでよい。テーブル回転駆動手段68は、サーボモーター(図示省略)を有している。
図2に示すように、テーブル回転駆動手段68は、制御部70に対して電気的に接続されており、制御部70から与えられる制御信号に基づいてテーブル回転駆動手段68のサーボモーター(図示省略)等が制御される。
【0028】
図1に示すように、ワークチャック26は、回転テーブル24において基板12を固定するものである。本実施形態のワークチャック26は、基板12を負圧で吸着できるように構成された真空チャックである。ワークチャック26は、吸着状態と吸着解除状態とを切り換えるための電磁弁(図示省略)を有している。
図2に示すように、ワークチャック26は、制御部70に対して電気的に接続されており、制御部70から与えられる制御信号に基づいてワークチャック26の電磁弁(図示省略)等が制御される。
【0029】
また、
図2に示すように、基板切断装置10は、第1回転駆動手段72と、第2回転駆動手段74と、カッター支持手段76と、X方向駆動手段80と、Y方向駆動手段82と、位相調整手段104とを備えている。
【0030】
図2に示すように、第1回転駆動手段72は、第1カッター20を回転駆動するための手段であり、第1モーター34と、第1モータードライバ84とを有している。本実施形態の第1モーター34はサーボモーターであり、8000~10000回転/分の回転数で回転駆動されるように構成されている。第1モーター34の回転軸34aには、第1カッター20が固定されるフランジ86が設けられている。フランジ86には、第1カッター20の貫通孔40に挿通されたボルト38が螺合されるねじ孔88と、第1カッター20の貫通孔44に挿通される位置決めピン42とが設けられている。第1カッター20をフランジ86に固定した状態において、第1モーター34の回転軸34aが第1カッター20の回転軸となる。
【0031】
図2に示すように、第1モーター34には、回転軸34aの位相(すなわち第1カッター20の位相)を検出するための第1位相検出部90が設けられている。本実施形態の第1位相検出部90は、ロータリーエンコーダーを有しており、第1位相検出部90と制御部70とが電気的に接続されている。
【0032】
図2に示す第1モータードライバ84は、第1モーター34に駆動電流を供給するものであり、制御部70に対して電気的に接続されている。制御部70から第1モータードライバ84に制御信号が与えられると、第1モータードライバ84は、その制御信号に応じた駆動電流を第1モーター34に供給する。
【0033】
図2に示すように、第2回転駆動手段74は、第2カッター22を回転駆動するための手段であり、第2モーター54と、第2モータードライバ92とを有している。本実施形態の第2モーター54はサーボモーターであり、8000~10000回転/分の回転数で回転駆動されるように構成されている。第2モーター54の回転軸54aには、第2カッター22が固定されるフランジ94が設けられている。フランジ94には、第2カッター22の貫通孔60に挿通されたボルト58が螺合されるねじ孔96と、第2カッター22の貫通孔64に挿通される位置決めピン62とが設けられている。第2カッター22をフランジ94に固定した状態において、第2モーター54の回転軸54aが第2カッター22の回転軸となる。
【0034】
図2に示すように、第2モーター54には、回転軸54aの位相(すなわち第2カッター22の位相)を検出するための第2位相検出部98が設けられている。本実施形態の第2位相検出部98は、ロータリーエンコーダーを有しており、第2位相検出部98と制御部70とが電気的に接続されている。
【0035】
図2に示す第2モータードライバ92は、第2モーター54に駆動電流を供給するものであり、制御部70に対して電気的に接続されている。制御部70から第2モータードライバ92に制御信号が与えられると、第2モータードライバ92は、その制御信号に応じた駆動電流を第2モーター54に供給する。
【0036】
図2に示すように、カッター支持手段76は、第1カッター20および第2カッター22を、それらの回転軸どうしが平行になるようにして径方向で対向するように支持する手段である。本実施形態のカッター支持手段76は、第1カッター20が取り付けられた第1モーター34と、第2カッター22が取り付けられた第2モーター54と、第1モーター34および第2モーター54を支持するZ方向駆動手段78と、Z方向駆動手段78を支持する支持台102とを有している。Z方向駆動手段78は、第1モーター34および第2モーター54をZ方向に移動させるための手段であり、リニアガイドおよびサーボモーター(図示省略)を有している。Z方向駆動手段78は、制御部70に対して電気的に接続されており、制御部70から与えられる制御信号に基づいてZ方向駆動手段78のサーボモーター(図示省略)等が制御される。
【0037】
図2に示すX方向駆動手段80は、第1カッター20および第2カッター22をカッター支持手段76と共にX方向に移動させるための手段である。
図2に示すY方向駆動手段82は、第1カッター20および第2カッター22をカッター支持手段76と共にY方向に移動させるための手段である。X方向駆動手段80およびY方向駆動手段82は、リニアガイドおよびサーボモーター(図示省略)を有している。X方向駆動手段80およびY方向駆動手段82は、制御部70に対して電気的に接続されており、制御部70から与えられる制御信号に基づいてX方向駆動手段80およびY方向駆動手段82の各サーボモーター(図示省略)等が制御される。
【0038】
図4は、第1回転刃32間に第2回転刃52を配置した状態を示す拡大正面図である。
図2に示す位相調整手段104は、第1カッター20と第2カッター22とが対向する対向領域Q(
図4)において、隣り合う2つの第1回転刃32間に第2回転刃52が位置するように第1カッター20および第2カッター22の少なくとも一方の位相を調整するための手段である。
図4に示すように、複数の第1回転刃32に外接する外接円R1と、複数の第2回転刃52に外接する外接円R2とを想定したとき、外接円R1と外接円R2とは、対向領域Qにおいて交差する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の位相調整手段104は、第1モーター34と、第1位相検出部90と、第1モータードライバ84と、第2モーター54と、第2位相検出部98と、第2モータードライバ92と、制御部70とを有している。位相調整手段104の制御部70は、位相調整のために第1モーター34および第2モーター54の少なくとも一方を制御するものであり、各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)と、プログラムおよびデータを記憶する記憶装置(ROM,RAM)とを有している。
【0040】
図4中の基準線Mは、基板12に対して直交し、かつ、第1カッター20の回転中心および第2カッター22の回転中心を通る仮想直線である。第1位相検出部90および第2位相検出部98が原点位置を示す信号を出力するとき、対向領域Qでは、隣り合う2つの第1回転刃32が基準線Mを挟んだX方向の両側に配置され、第2回転刃52が当該2つの第1回転刃32の間に配置される。
【0041】
本実施形態では、複数の第1回転刃32と複数の第2回転刃52とが、同数かつ同ピッチ角で設けられているので、第1カッター20と第2カッター22の位相差がピッチ角(本実施形態では18度)の整数倍であるとき、第1回転刃32と第2回転刃52とが対向領域Qで対向する。そこで、
図2に示す制御部70は、第1回転刃32と第2回転刃52との干渉を避けるために、上記位相差がピッチ角(本実施形態では18度)の整数倍から1/2ピッチ角(本実施形態では9度)を差し引いた値になるように第1モーター34および第2モーター54の少なくとも一方を制御する。
【0042】
[基板切断方法]
図3に示す切断線L1,L2に沿って基板12を切断する際には、まず、
図1に示す回転テーブル24上に基板12を載置し、この基板12をワークチャック26で固定する。続いて、第1カッター20および第2カッター22を回転駆動し、これらをX方向およびY方向に移動させながら、各切断線L1(
図3)に沿って基板12を切断する。
【0043】
図3に示す複数の切断線L1における基板12の切断作業が完了すると、
図1に示す回転テーブル24を回転させて、基板12の各切断線L2(
図3)が延びる方向をY方向からX方向に転換する。その後、第1カッター20および第2カッター22をX方向およびY方向に移動させながら、各切断線L2(
図3)に沿って基板12を切断する。なお、
図3中の二点鎖線は、方向転換後の基板12の状態を示している。
【0044】
以下には、切断線L1,L2のそれぞれにおける基板12の切断方法(基板切断方法)について、
図5のフロー図に従って詳細に説明する。
【0045】
図2に示す制御部70が基板切断プログラムを開始すると、制御部70は、
図5に示す各ステップS1~S7をこの順に実行する。まず、ステップS1において、制御部70は、第1モーター34および第2モーター54を制御して、第1カッター20および第2カッター22を回転駆動する。このとき、第1カッター20および第2カッター22は、Z方向駆動手段78によりZ方向において互いに引き離された状態にある。
【0046】
図4に示す対向領域Qにおいて、第1回転刃32と第2回転刃52とがZ方向で対向すると、基板12を切断する際にこれらが互いに干渉するため、第1回転刃32および第2回転刃52の各位置をX方向において互いにずらす必要がある。そこで、
図2に示す位相調整手段104の制御部70は、ステップS2およびS3において、隣り合う2つの第1回転刃32間に第2回転刃52が位置するように第2カッター22の位相を調整する。
【0047】
すなわち、ステップS2において、制御部70は、第1位相検出部90および第2位相検出部98(
図2)が検出した第1カッター20および第2カッター22の各位相を取得する。ステップS3において、制御部70は、対向領域Q(
図4)において隣り合う2つの第1回転刃32間に第2回転刃52が位置するように第2カッター22の位相を調整する。より詳細には、位相差がピッチ角(本実施形態では18度)の整数倍から1/2ピッチ角(本実施形態では9度)を差し引いた値になるように第2モーター54を制御する。制御部70は、ステップS2およびS3の各工程を基板切断プログラムが終了するまで継続する。
【0048】
なお、ステップS3では、第1モーター34(
図2)を制御して、
第1カッター20の位相を調整してもよい。また、第1モーター34および第2モーター54(
図2)の両方を制御して、第1カッター20および第2カッター22の両方の位相を調整してもよい。さらに、ピッチ角の整数倍から差し引く値は、1/2ピッチ角に限定されるものではなく、第1回転刃32と第2回転刃52とが干渉しない範囲で適宜変更してもよい。
【0049】
ステップS4において、制御部70は、X方向駆動手段80、Y方向駆動手段82およびZ方向駆動手段78を制御して、第1カッター20および第2カッター22を
図3に示す始点P1に位置決めする。このとき、Z方向駆動手段78は、第1カッター20および第2カッター22を互いに近接する方向に移動させる。ステップS5において、制御部70は、X方向駆動手段80を制御して、第1カッター20および第2カッター22をX方向へ移動させることにより、基板12をX方向に切断する。
【0050】
ステップS6において、制御部70は、第1カッター20および第2カッター22がX方向における終点P2(
図3)に到達したか否かを判断し、「到達していない」と判断するとステップS5の動作(X方向への移動)を続行し、「到達した」と判断するとステップS7に進む。なお、第1カッター20および第2カッター22が終点P2に到達したか否かは、例えば、カッター支持手段76(
図2)で押されるリミットスイッチ(図示省略)の出力に基づいて判断することができる。
【0051】
ステップS7において、制御部70は、X方向駆動手段80、Y方向駆動手段82およびZ方向駆動手段78(
図2)を制御して、第1カッター20および第2カッター22を次の始点へ移動させる。これにより、複数の切断線L1および複数の切断線L2のうちの1つにおける基板12の切断工程が終了する。
【0052】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図4に示すように、第1カッター20と第2カッター22とが対向する対向領域Qにおいて隣り合う2つの第1回転刃32間に第2回転刃52が位置するようにしているので、基板12を切断するX方向において、第1回転刃32と第2回転刃52とが大きく離間することを防止できる。したがって、第1回転刃32および第2回転刃52の一方で基板12を切断する際には、他方で基板12の撓みを抑制できる。また、X方向における装置構成の大型化を防止できる。
【0053】
図2に示すX方向駆動手段80によって第1カッター20および第2カッター22を基板12に対して相対的に移動させることができるので、基板12の切断作業を円滑に行うことができる。また、第1モーター34および第2モーター54を制御部70で制御するようにしているので、第1カッター20および第2カッター22の少なくとも一方の位相を迅速かつ正確に調整できる。
【0054】
図1に示すように、複数の第1回転刃32と複数の第2回転刃52とは、同数かつ同ピッチ角で設けられているため、位相差がピッチ角の整数倍から1/2ピッチ角を差し引いた値になるように第1モーター34および第2モーター54の少なくとも一方を制御するだけで、隣り合う2つの第1回転刃32間に第2回転刃52を簡単に位置決めすることができる。
【0055】
[変形例]
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、
図3に示すように、上記実施形態では、第1カッター20および第2カッター22を基板12に対してX方向に移動させるようにしているが、これとは逆に、基板12を第1カッター20および第2カッター22に対してX方向に移動(図示省略)させるようにしてもよい。
【0056】
また、
図2に示すように、上記実施形態では、第1カッター20および第2カッター22の少なくとも一方の位相を調整するための位相調整手段として、制御部70を有する位相調整手段104を用いているが、これに代えて、ギアやタイミングベルトなどで構成された機械的な位相調整手段(図示省略)を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…基板切断装置、20…第1カッター、22…第2カッター、32…第1回転刃、52…第2回転刃、72…第1回転駆動手段、74…第2回転駆動手段、76…カッター支持手段、104…位相調整手段