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特許7045146樹脂成形品、樹脂成形品の製造方法および金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】樹脂成形品、樹脂成形品の製造方法および金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20220324BHJP
   B29C 45/77 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/77
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017133569
(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公開番号】P2019014149
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝将
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-137247(JP,A)
【文献】特開2005-219240(JP,A)
【文献】特開平11-048294(JP,A)
【文献】特開2007-136996(JP,A)
【文献】特開2013-006341(JP,A)
【文献】特開平06-238704(JP,A)
【文献】特表2001-503689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0315618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/27
B29C 45/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲートから時間差で溶融樹脂を射出する樹脂成形品の製造方法であって、
はじめに溶融樹脂が射出されるメインゲートの開口縁部からキャビティ側内壁へ続く曲部の曲率Rが0.5~1.0mmであることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記メインゲートから射出される溶融樹脂の射出率は、80g/s以上であることを特徴とする請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品、樹脂成形品の製造方法および金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形を用いた樹脂成形品が知られている。また、樹脂成形品の大型化に伴い複数のゲートから樹脂を射出する方法も考案されている。この場合、ゲート間でウェルドラインが発生するため見映えを損なうという問題がある。そこで、各ゲートから樹脂を充填するタイミングをずらすことで、見映えに影響するウェルドラインの発生を防止する方法が考案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-1019号公報
【文献】特開2013-129121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の方法のように、各ゲートから樹脂を充填するタイミングをずらすことで樹脂成形品を製造する場合、特に、最初に樹脂が射出される第1のゲートでの射出量が多くなる。そのため、第1のゲートの周壁近傍では、せん断発熱の増大に伴う蓄熱により、固化しきれない未固化樹脂が生じる。本願発明者は、その未固化樹脂が金型や次のサイクルで製造される樹脂成形品に付着することで、ゲート跡近傍が白化等による樹脂成形品の見映えを悪化させていることに想到した。このような現象は、ゲートが一つの場合でも射出量が増えれば生じ得る。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、ゲート跡近傍の見映えの悪化を抑制する新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の樹脂成形品は、射出成形で製造された樹脂成形品であって、周壁を有するゲート跡が表面に形成されており、周壁の外周基部の曲率Rが0.5~1.0mmであり、ウェルドラインが外部から視認されない。
【0007】
この態様によると、ウェルドラインが外部から視認されない樹脂成形品において、ゲート跡の周壁の外周基部が目立ちにくくなる。
【0008】
樹脂成形品の主要部の厚みが3.0mm未満であってもよい。これにより、薄肉の樹脂成形品においてゲート跡の周壁の外周基部が目立ちにくくなる。
【0009】
ゲート跡は、樹脂成形品の成形に用いた金型に配置されている複数のゲートのうち中央近傍に配置されているゲートによって形成されたものであってもよい。これにより、樹脂の射出量が比較的多くなる中央近傍に配置されているゲートに起因するゲート跡の周壁の外周基部が目立ちにくくなる。
【0010】
複数のゲートから時間差で溶融樹脂が射出されることで製造されていてもよい。これにより、ウェルドラインが外部から視認されにくくなる。
【0011】
樹脂成形品は、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂を主成分としてもよい。
【0012】
ゲート跡は、長径が2.0~3.0mmであってもよい。
【0013】
樹脂成形品の長手方向が500mm以上の部品であってもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、樹脂成形品の製造方法である。この方法は、複数のゲートから時間差で溶融樹脂を射出する樹脂成形品の製造方法であって、はじめに溶融樹脂が射出されるメインゲートの開口縁部からキャビティ側内壁へ続く曲部の曲率Rが0.5~1.0mmである。
【0015】
この態様によると、メインゲートの開口縁部でのせん断発熱を抑制できる。
【0016】
メインゲートから射出される溶融樹脂の射出率は、80g/s以上であってもよい。これにより、生産性を低下させずに、ゲート跡近傍の見映えの悪化を抑制できる。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、金型である。この金型は、複数のゲートが形成されている金型であって、金型全体の中央近傍に配置されているゲートの開口縁部から金型のキャビティ側内壁へ続く曲部の曲率Rが0.5~1.0mmである。
【0018】
この態様によると、ゲート跡近傍の見映えの悪化を抑制できる。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゲート跡近傍の見映えの悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は、本実施の形態に係る金型の概略構成を示す断面図、図1(b)は、図1(a)に示す領域Aの拡大図である。
図2図2(a)は、本実施の形態に係る金型のバルブピンが閉じた状態の概略構成を示す断面図、図2(b)は、図2(a)に示す領域Bの拡大図である。
図3図3(a)は、溶融樹脂をキャビティに向けて射出する際の樹脂の流れを示す模式図、図3(b)は、図3(a)の領域Cの拡大図である。
図4】ゲート近傍の不良樹脂を示す模式図である。
図5】溶融樹脂をキャビティに向けて射出する際の樹脂の流れを示す模式図である。
図6】本実施の形態に係る樹脂成形品に対応するキャビティを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面等を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0023】
(金型)
図1(a)は、本実施の形態に係る金型の概略構成を示す断面図、図1(b)は、図1(a)に示す領域Aの拡大図である。
【0024】
図1(a)に示す金型10は、可動側金型12と、固定側金型14と、ホットランナーノズル16と、バルブピン18と、を備える。固定側金型14にはゲート20が形成されている。本実施の形態に係るゲート20のゲート径X(図1(b)参照)は、2~3mm程度である。
【0025】
固定側金型14は、ゲート20の開口縁部20aから固定側金型14のキャビティ側内壁14aへ続く曲部14bが形成されている。可動側金型12と固定側金型14との間には、製造する樹脂成形品の形状に応じたキャビティ22が形成されている。キャビティ22の厚みtは、2~5mmの範囲、より好ましくは3.0mm未満である。
【0026】
また、射出時に溶融樹脂Mがゲート20に向かって流れる樹脂流路24は、図1に示すようにゲート20から退避した状態のバルブピン18と、ホットランナーノズル16との間に形成されている。
【0027】
図2(a)は、本実施の形態に係る金型のバルブピン18が閉じた状態の概略構成を示す断面図、図2(b)は、図2(a)に示す領域Bの拡大図である。
【0028】
図2(a)、図2(b)に示すように、バルブピン18は、ゲート20から僅かに突出した状態(キャビティ側内壁14aとバルブピン18先端との距離が0.2~0.4mm程度)で樹脂成形品26の表面26aに当接している。そのため、樹脂成形品26の表面26aには、バルブピン18の先端形状に応じたクレータ状の凹み(ゲート跡28)が形成される。ゲート跡28は、ゲート径Lに対応して長径が2.0~3.0mm程度であり樹脂成形品26の見映えを悪化させるため、なるべく目立たなくすることが求められる。
【0029】
次に、ゲート跡が目立つ場合の一例について説明する。図3(a)は、溶融樹脂をキャビティ22に向けて射出する際の樹脂の流れを示す模式図、図3(b)は、図3(a)の領域Cの拡大図である。
【0030】
ゲート20から流入した溶融樹脂Mの一部は、固定側金型14のキャビティ側内壁14aに沿って流れる。その際、平らな面でない曲部14b近傍を溶融樹脂Mが通過する際に、固定側金型14と溶融樹脂Mとの間にせん断発熱(摩擦熱)が生じる。本願発明者は、せん断発熱の量が、曲部14bの曲率Rと相関があることに想到した。
【0031】
例えば、図3(b)に示す曲部14bの曲率Rが0.3mm程度の場合、せん断発熱の量が大きいため、曲部14b近傍の温度が蓄熱により上昇し、射出後の溶融樹脂Mが部分的に正常に固化せずに不良樹脂となる場合がある。図4は、ゲート近傍の不良樹脂を示す模式図である。正常に固化しなかった不良樹脂30は、型開きの際に固定側金型14に付着してしまうことがあり、次回のショットで次に製造される樹脂成形品26に貼り付くことで外観不良を生じさせる。
【0032】
そこで、本願発明者は、固定側金型14の曲部14bの曲率Rが0.5~1.0mmの範囲となるように曲部14bを加工した。図5は、溶融樹脂をキャビティ22に向けて射出する際の樹脂の流れを示す模式図である。図5に示す曲部14bは、曲率Rが0.5~1.0mmの範囲である。このような金型10を用いた場合、射出成形を繰り返しても、蓄熱による固定側金型14の曲部14bでの温度上昇が抑制され、連続してショット数が増加しても樹脂成形品26の外観不良は低減される。
【0033】
図6は、本実施の形態に係る樹脂成形品に対応するキャビティを模式的に示した図である。なお、図6では、金型10本体の図示は省略している。また、図3(a)は、図6のD-D断面に相当する。
【0034】
前述の曲部14b近傍の温度が蓄熱により上昇する現象は、大型の樹脂成形品を製造する場合やゲートの数が少ない場合のように、射出率[g/s]を大きくする必要があるときに生じやすい。例えば、ウェルドラインが目立たなくなるように、図6に示す各ゲート20(20b~20d)から樹脂を充填するタイミングをずらす場合、はじめに溶融樹脂が射出される第1のゲート20bは、少なくとも隣接する第2のゲート20c,20dに到達する量の溶融樹脂Mを射出する必要がある。
【0035】
また、図6に示すキャビティ22を構成する金型は、複数のゲート20b~20dが形成されているが、金型全体の中央近傍に第1のゲート20bが配置されている。
【0036】
そして、本実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法は、複数のゲート20b~20dから時間差で溶融樹脂を射出する方法であって、第1のゲート20bの開口縁部20aからキャビティ側内壁14aへ続く曲部14bの曲率Rが0.5~1.0mmである。これにより、第1のゲート20bの開口縁部20aでのせん断発熱を抑制できる。
【0037】
また、第1のゲート20bから射出される溶融樹脂の射出率は、80g/s以上であり、好ましくは100g/s以上である。これにより、生産性を低下させずに、ゲート跡28近傍の見映えの悪化を抑制できる。
【0038】
次に、上述の金型を用いた製造方法によって製造された樹脂成形品について、図3(a)を参照して詳述する。
【0039】
本実施の形態に係る樹脂成形品26は、射出成形で製造されたものである。樹脂成形品26は、周壁26bを有するゲート跡28が表面26aに形成されている。周壁26bの外周基部26cの曲率Rは0.5~1.0mmである。外周基部26cの曲率Rをある程度大きくすることで、環状の外周基部26cでの形状変化が緩やかとなり、ゲート跡28を上方から見た場合に外周基部26cが目立ちにくくなる。また、樹脂成形品26は、各ゲート20(20b~20d)から樹脂を充填するタイミングを適切にずらすことで、ウェルドラインが外部から視認されにくくなる。
【0040】
樹脂成形品26の主要部の厚みtは3.0mm未満である。そして、このような薄肉の樹脂成形品26においてゲート跡28の周壁26bの外周基部26cが目立ちにくくなる。
【0041】
ゲート跡28は、樹脂成形品26の成形に用いた金型に配置されている複数のゲートのうち中央近傍に配置されている第1のゲート20bによって形成されたものである。これにより、樹脂の射出量が比較的多くなる中央近傍に配置されている第1のゲート20bに起因するゲート跡28の周壁26bの外周基部26cが目立ちにくくなる。
【0042】
本実施の形態に係る樹脂成形品26は、例えば、車両用灯具に用いられる部品として利用できる。具体的には、標識灯レンズやカバーといった長尺部品である。また、樹脂成形品26は、図6に示す長手方向の大きさLは、500~1000mm程度であり、短手方向の大きさWは150~300mm程度である。また、灯具部品のように光を透過させる必要がある部品の場合、樹脂成形品26はポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を主成分として構成されている。
【0043】
なお、樹脂材料の種類によって流動比は異なるため、樹脂成形品の大きさの範囲も樹脂材料によって異なる。例えば、第1のゲートからキャビティ端部までの距離をL1[mm]、キャビティの厚みをt[mm]とすると、材料がポリカーボネート樹脂の場合は流動比L1/tが125~150以下となるような大きさの樹脂成形品が好ましく、材料がアクリル樹脂の場合は流動比L1/tが120~150以下となるような大きさの樹脂成形品が好ましい。
【0044】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0045】
10 金型、 12 可動側金型、 14 固定側金型、 14a キャビティ側内壁、 14b 曲部、 16 ホットランナーノズル、 18 バルブピン、 20 ゲート、 20a 開口縁部、 20b 第1のゲート、 22 キャビティ、 24 樹脂流路、 26 樹脂成形品、 26a 表面、 26b 周壁、 26c 外周基部、 28 ゲート跡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6