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特許7045187混合茶飲料、混合茶飲料の製造方法、並びに、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】混合茶飲料、混合茶飲料の製造方法、並びに、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220324BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220324BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/38 K
A23L2/38 M
A23L2/38 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017255024
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019118299
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】森田 孝平
(72)【発明者】
【氏名】池上 有希子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 遼
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-057161(JP,A)
【文献】特開2012-135241(JP,A)
【文献】特開2003-102450(JP,A)
【文献】特開2015-008704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23F 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽大麦からの抽出液を含む混合茶飲料であって、
リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上の有機酸を含み、
前記有機酸の総含量は、前記混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下であり、
前記混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率が0.53以上0.73以下である、
混合茶飲料。
【請求項2】
前記混合茶飲料中のナトリウムの含量は、8.0mg/100ml以上である、請求項1に記載の混合茶飲料。
【請求項3】
前記混合茶飲料中のアスコルビン酸の含量は、5.0mg/100ml以上である、請求項1又は2に記載の混合茶飲料。
【請求項4】
さらに、ハトムギ、大麦、及び玄米からなる群から選択される1以上の原料穀物からの抽出液、又はケツメイシからの抽出液を含む、請求項1から3のいずれかに記載の混合茶飲料。
【請求項5】
発芽大麦を少なくとも含む原料組成物から抽出溶媒を用いて抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出液中の有機酸の総含量を、前記抽出液に対して、3.5mg/100ml以上7.0mg/100ml以下に調整する有機酸調整工程と、
前記抽出液中のアスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率を0.53以上0.73以下に調整するNa/VC調整工程と、を含み、
前記有機酸は、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上を含む、
混合茶飲料の製造方法。
【請求項6】
前記Na/VC調整工程は、前記抽出液に対し、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、及び炭酸水素ナトリウムからなる1以上を配合する工程である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
発芽大麦からの抽出液を含む混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善する方法であって、
前記混合茶飲料中のアスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率を調整する調整工程を含み、
前記混合茶飲料が、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上の有機酸を含み、
前記有機酸の総含量は、前記混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下であり、
前記調整工程後の前記混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率が0.53以上0.73以下である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合茶飲料、混合茶飲料の製造方法、並びに、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉や穀物等の原料からの抽出液を含む飲料(以下、「茶飲料」という。)は、その香ばしさや止渇性等により、消費者に幅広く受け入れられている飲料のひとつである。茶飲料のうち、複数の原料からの抽出液を含む飲料(以下、「混合茶飲料」という。)は、原料由来の様々な成分を手軽に摂取できるため、健康志向の消費者から強く支持されている。
【0003】
しかし、混合茶飲料は、原料由来の雑味等によって、嗜好性(おいしさ等)が損なわれてしまうことがある。そのため、混合茶飲料の嗜好性を高めるための様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-310160号公報
【文献】特開2008-237066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、混合茶飲料の嗜好性をさらに向上させることへのニーズがある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、飲みやすさを有しつつ、おいしさ及び味の濃さが改善された混合茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、発芽大麦からの抽出液を少なくとも含む混合茶飲料において、混合茶飲料中の特定の有機酸、アスコルビン酸、ナトリウムの各含量を調整することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 発芽大麦からの抽出液を含む混合茶飲料であって、
リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上の有機酸を含み、
前記有機酸の総含量は、前記混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下であり、
前記混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率が0.53以上0.73以下である、
混合茶飲料。
【0009】
(2) 前記混合茶飲料中のナトリウムの含量は、8.0mg/100ml以上である、(1)に記載の混合茶飲料。
【0010】
(3) 前記混合茶飲料中のアスコルビン酸の含量は、5.0mg/100ml以上である、(1)又は(2)に記載の混合茶飲料。
【0011】
(4) さらに、ハトムギ、大麦、及び玄米からなる群から選択される1以上の原料穀物からの抽出液、又はケツメイシからの抽出液を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の混合茶飲料。
【0012】
(5) 発芽大麦を少なくとも含む原料組成物から抽出溶媒を用いて抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出液中の有機酸の総含量を、前記抽出液に対して、3.5mg/100ml以上7.0mg/100ml以下に調整する有機酸調整工程と、
前記抽出液中のアスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率を0.53以上0.73以下に調整するNa/VC調整工程と、を含み、
前記有機酸は、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上を含む、
混合茶飲料の製造方法。
【0013】
(6) 前記Na/VC調整工程は、前記抽出液に対し、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、及び炭酸水素ナトリウムからなる1以上を配合する工程である、(5)に記載の製造方法。
【0014】
(7) 発芽大麦からの抽出液を含む混合茶飲料において、
前記混合茶飲料中のアスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率を調整することで、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飲みやすさを有しつつ、おいしさ及び味の濃さが改善された混合茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
<混合茶飲料>
混合茶飲料とは、異なる原料(穀物、茶葉等)に由来する抽出液が2種以上含まれる茶飲料を意味する。本発明の混合茶飲料は、発芽大麦からの抽出液と、所定量の特定の有機酸と、を少なくとも含み、アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率が所定範囲にある。
【0018】
(有機酸)
本発明の混合茶飲料に含まれる有機酸としては、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上を含み、かつ、これらの有機酸の総含量は、混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下である。以下、「リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群から選択される1以上の有機酸」を「本発明の有機酸」ともいう。
【0019】
本発明者らによる検討の結果、発芽大麦からの抽出液を少なくとも含む混合茶飲料において、本発明の有機酸の総含量を上記の範囲に調整すると、おいしさ、味の濃さ、及び飲みやすさのバランスが良好となりやすいことが見出された。
【0020】
本発明の有機酸は、総含量が混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下であればよく、本発明の有機酸の組み合わせや配合比率は特に限定されない。本発明の有機酸としては、1種類の有機酸を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の効果が奏されやすいという観点から、本発明の有機酸は2種類以上を組み合わせることが好ましく、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、及び酢酸を含むことが特に好ましい。
【0021】
本発明の有機酸は、おいしさや味の濃さのバランスが良好な混合茶飲料が得られやすいという観点から、混合茶飲料に対する総含量の上限が、好ましくは7.0mg/100ml以下、より好ましくは6.0mg/100ml以下であってもよい。
【0022】
本発明の有機酸は、目的とする有機酸の添加や、混合茶飲料の原料(穀物、茶葉等)の配合の調整等によって、所望量を混合茶飲料に配合できる。本発明の有機酸は、混合茶飲料に配合される原料(ハトムギ、大麦、ケツメイシ、玄米、発芽大麦等)からの抽出液に含まれ得る。
【0023】
本発明の混合茶飲料に含まれる、本発明の有機酸の含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定する。具体的には、例えば、以下の装置、条件によって測定することができる。
測定方法:HPLC Prominence((株)島津製作所)
検出器:電気伝導度検出器
カラム:Shim-pack SCR-102H(8mm×300mm、7μm)((株)島津製作所) 2本直列接続
ガードカラム:Shim-pack SCR-102H(6mm×50mm、7μm)((株)島津製作所)
カラムオーブン温度:50℃
移動相:p-トルエンスルホン酸水溶液(5mmol/L)
検出液:p-トルエンスルホン酸(5mmol/L)及びEDTA(100μmol/L)を含むBis-Tris水溶液(20mmol/L)
ポンプ流量(移動相):0.8ml/min
ポンプ流量(検出液):0.8ml/min
注入量:10μl
ポラリティ:+
セル温度:自動設定
【0024】
(アスコルビン酸及びナトリウム)
本発明の混合茶飲料においては、混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率が0.53以上0.73以下である。「アスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率」とは、本発明の混合茶飲料中のナトリウムの含量を本発明の混合茶飲料中のアスコルビン酸の含量で割った値を意味し、以下、「Na/VC」ともいう。
【0025】
本発明者らによる検討の結果、発芽大麦からの抽出液を少なくとも含む混合茶飲料において、上述した本発明の有機酸を所定量に調整するだけでなく、さらに、Na/VCを上記の範囲に調整すると、おいしさ、味の濃さ、及び飲みやすさのバランスがより良好となることが見出された。
【0026】
本発明の混合茶飲料におけるNa/VCは、おいしさを損ないにくいという観点から、上限が好ましくは0.65以下、より好ましくは0.60以下であってもよい。
【0027】
本発明の混合茶飲料におけるNa/VCは、混合茶飲料中に、飲食品に配合可能なアスコルビン酸(アスコルビン酸の遊離体、L-アスコルビン酸)又はその塩、ナトリウム塩を適宜配合することで、所望の値に調整できる。アスコルビン酸の塩としては、アスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。ナトリウム塩としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、食塩、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
アスコルビン酸の塩(アスコルビン酸ナトリウム等)は、抗酸化剤等として、混合茶飲料に配合されてきたものである。該塩の一部又は全てをアスコルビン酸(アスコルビン酸の遊離体)に置き換えたり、ナトリウム塩(炭酸水素ナトリウム等)を添加したりすることで本発明の混合茶飲料におけるNa/VCを容易に調整でき、おいしさ、味の濃さ、及び飲みやすさのバランスが良好な混合茶飲料が得られる。
【0029】
本発明の混合茶飲料におけるナトリウムの含量の下限は、特に限定されないが、混合茶飲料へボディ感を付与するという観点から、好ましくは8.0mg/100ml以上、より好ましくは9.0mg/100ml以上であってもよい。上限は、混合茶飲料の塩味が強くなり飲みやすさが低下してしまうことを抑制するという観点から、好ましくは13.0mg/100ml以下、より好ましくは12.0mg/100ml以下であってもよい。
【0030】
本発明の混合茶飲料におけるアスコルビン酸の含量の下限は、特に限定されないが、混合茶飲料の酸化劣化を抑制するという観点から、好ましくは5.0mg/100ml以上、より好ましくは10.0mg/100ml以上、さらに好ましくは15.0mg/100ml以上であってもよい。上限は、混合茶飲料の風味低下や褐変を抑制するという観点から、好ましくは40.0mg/100ml以下、より好ましくは30.0mg/100ml以下、さらに好ましくは20.0mg/100mlであってもよい。
【0031】
本発明の混合茶飲料に含まれる、アスコルビン酸の含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定する。具体的には、例えば、以下の装置、条件によって測定することができる。
測定方法:HPLC
固定相:Shodex Asahipak NH2P-50 4Eカラム
カラム径:4.6mm
カラム長:250mm
移動相流量:1.0mL/min
移動相 :60mMリン酸溶液:アセトニトリル=20:80
検出波長:254nm
【0032】
本発明の混合茶飲料に含まれる、ナトリウムの含量は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて測定する。具体的には、例えば、以下の装置、条件によって測定することができる。
測定方法:誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)(機種名:Agilent 7700、Agilent社製)
装置:ICP-MS Agilent7700
ガス:Heガス使用
測定モード:スペクトル
スペクトルモードオプション:ピークパターン 3ポイント、繰り返し 3
スイープ回数/繰り返し 100
標準液:関東化学製
【0033】
Na/VCは、特定されたナトリウムの含量をアスコルビン酸の含量で割ることで算出する。
【0034】
(発芽大麦からの抽出液)
本発明の混合茶飲料は、発芽大麦からの抽出液を含む。
【0035】
発芽大麦からの抽出液は、発芽大麦を用いて、穀物や茶葉等から抽出液を得るために通常採用される抽出工程によって得られる。例えば、発芽大麦に対して、抽出溶媒を用いて抽出工程を行うことで、発芽大麦中の諸成分を含む抽出液として発芽大麦からの抽出液を回収できる。
【0036】
発芽大麦は任意の形態のものを使用でき、例えば、粉砕や焙煎等の処理がされていてもよく、されていなくてもよい。
【0037】
本発明の混合茶飲料中の発芽大麦からの抽出液の含量は特に限定されず、得ようとする風味等に応じて適宜調整できる。
【0038】
(その他の原料)
本発明の混合茶飲料には、上記のほか、任意の原料穀物からの抽出液や、任意の茶葉からの抽出液等を含んでいてもよい。本発明において「原料穀物」とは、混合茶飲料の製造において、抽出工程に供される前の穀物(発芽大麦を除く。)を意味する。原料穀物は任意の形態のものを使用でき、例えば、各々独立に、粉砕や焙煎等の処理がされていてもよく、されていなくてもよい。
【0039】
原料穀物としては、茶飲料の原料として通常用いられるものを使用でき、ハトムギ、大麦、玄米、トウモロコシ、大豆、小豆、芋等が挙げられる。得られる混合茶飲料の風味を損ないにくいとう観点から、原料穀物としては、ハトムギ、大麦、及び玄米からなる群から選択される1以上が好ましく、ハトムギ、大麦、及び玄米の全てを含むことがより好ましい。
【0040】
原料穀物からの抽出物とともに、又は原料穀物からの抽出物に代えて、混合茶飲料にはケツメイシからの抽出液が含まれていてもよい。なお、ケツメイシとは、マメ科のエビスグサの種子を乾燥させたものである。
【0041】
茶葉としては、茶飲料の原料として通常用いられるものを使用でき、チャノキ由来の葉(緑茶葉等)、ビワの葉、クワの葉、エゴマの葉、クマザサの葉、柿の葉、アマチャヅルの葉、アシタバの葉、ドクダミの葉、クコの葉、シソの葉、ヨモギの葉、杜仲葉、グァバ葉等が挙げられる。
【0042】
原料穀物からの抽出液や茶葉からの抽出液は、原料穀物や茶葉を用いて、発芽大麦からの抽出液と同様の方法で製造できる。
【0043】
本発明の混合茶飲料には、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般的な茶飲料に通常用いられる他の添加剤等を適宜配合することができる。配合量は得ようとする効果に応じて適宜設定できる。
【0044】
本発明の飲料に配合し得る添加剤としては、下記のものが挙げられる;有機酸類、無機酸類、酸化防止剤、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、ビタミン類や無機塩類、乳化剤、食物繊維等。
【0045】
<混合茶飲料の製造方法>
本発明の混合茶飲料の製造方法は、発芽大麦からの抽出液を少なくとも含む抽出液において、本発明の有機酸の総含量及びNa/VCを調整する工程を含む。
【0046】
具体的には、本発明の混合茶飲料の製造方法は、発芽大麦を少なくとも含む原料組成物から抽出溶媒を用いて抽出液を得る抽出工程と、該抽出液中の有機酸の総含量を、該抽出液に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下に調整する有機酸調整工程と、該抽出液中のアスコルビン酸の含量(mg/100ml)に対するナトリウムの含量(mg/100ml)の比率を0.53以上0.73以下に調整するNa/VC調整工程と、を含んでいてもよい。なお、「原料組成物」とは、抽出工程に供される混合茶飲料の原料を意味する。原料組成物は発芽大麦のみを含んでいてもよいし、さらに、その他の原料(上記の原料穀物や茶葉等)を含んでいてもよい。
【0047】
(抽出工程)
抽出工程の条件は特に限定されず、穀物や茶葉等から抽出液を得るために通常採用される条件を用いることができる。例えば、発芽大麦を少なくとも含む原料組成物に対して、抽出溶媒を用いて抽出工程を行うことで、発芽大麦中の諸成分を含む抽出液を回収できる。
【0048】
抽出溶媒としては特に限定されないが、水、エタノール等が挙げられる。用いる抽出溶媒の量は、得ようとする抽出液の濃度等に応じて適宜設定できる。
【0049】
抽出条件としては特に限定されないが、80~100℃で5~60分間抽出を行ってもよい。
【0050】
発芽大麦とともにその他の原料を含む原料組成物を抽出工程に供する場合、混合茶飲料のおいしさ等の向上効果が奏されやすいという観点から、発芽大麦の含量の下限は、原料組成物の総量に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。発芽大麦の含量の上限は、その他の原料由来の風味や作用が十分に奏されるという観点から、原料組成物の総量に対して、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが好ましい。なお、「原料組成物の総量」とは、抽出工程に供される原料の総量(固形成分の乾燥重量)を意味する。抽出工程に供される原料穀物の含量は、原料組成物の総量に対して、50~90質量%が好ましい。
【0051】
発芽大麦とともにその他の原料を含む原料組成物を抽出工程に供する場合、得られた抽出液を以下の有機酸調整工程やNa/VC調整工程に供する。
【0052】
原料組成物が発芽大麦のみを含む場合、抽出工程において得られた抽出液と、任意の原料穀物や任意の茶葉からの抽出液と、適宜その他の原料と、を混合する混合工程をさらに行い、得られた抽出液を以下の有機酸調整工程やNa/VC調整工程に供する。原料組成物が発芽大麦のみを含む場合、混合工程における各種抽出液等の配合比は、得ようとする風味に応じて適宜設定できる。
【0053】
製造効率の観点から、発芽大麦とともにその他の原料(上記の原料穀物や茶葉等)を含む原料組成物を抽出工程に供することが好ましい。原料組成物は、発芽大麦とともに、ハトムギ、大麦、ケツメイシ、及び玄米からなる群から選択される1以上を含むことが好ましく、ハトムギ、大麦、ケツメイシ、及び玄米の全てを含むことがより好ましい。
【0054】
(有機酸調整工程)
有機酸調整工程では、抽出工程において得られた抽出液における、本発明の有機酸の総含量を、該抽出液に対して、3.5mg/100ml以上、8.0mg/100ml以下(好ましくは7.0mg/100ml以下、より好ましくは6.0mg/100ml以下)に調整する。
【0055】
本発明の有機酸の総含量は、目的とする有機酸の添加や、原料組成物の組成の調整等によって所望の値に調整できる。
【0056】
抽出工程(又は抽出工程及び混合工程)において得られた抽出液における、本発明の有機酸の総含量が上記範囲にあれば、有機酸調整工程においては特段の操作を要しない。
【0057】
(Na/VC調整工程)
Na/VC調整工程では、抽出工程において得られた抽出液におけるNa/VCを、0.53以上、0.73以下(好ましくは0.65以下、より好ましくは0.60以下)に調整する。
【0058】
Na/VCを調整する際には、抽出工程において得られた抽出液に対して、飲食品に配合可能なアスコルビン酸(アスコルビン酸の遊離体、L-アスコルビン酸)又はその塩、ナトリウム塩を適宜配合することで、所望の値に調整できる。アスコルビン酸の塩としては、アスコルビン酸ナトリウムが挙げられる。ナトリウム塩としては、炭酸水素ナトリウム(重曹)、食塩、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
抽出液に添加するナトリウムの含量の下限は、特に限定されないが、混合茶飲料へボディ感を付与するという観点から、抽出液に対して、好ましくは8.0mg/100ml以上、より好ましくは9.0mg/100ml以上であってもよい。上限は、混合茶飲料の塩味が強くなり飲みやすさが低下してしまうことを抑制するという観点から、抽出液に対して、好ましくは13.0mg/100ml以下、より好ましくは12.0mg/100ml以下であってもよい。
【0060】
抽出液に添加するアスコルビン酸の含量の下限は、特に限定されないが、混合茶飲料の酸化劣化を抑制するという観点から、抽出液に対して、好ましくは5.0mg/100ml以上、より好ましくは10.0mg/100ml以上、さらに好ましくは15.0mg/100mlであってもよい。上限は、混合茶飲料の風味低下や褐変を抑制するという観点から、抽出液に対して、好ましくは40.0mg/100ml以下、より好ましくは30.0mg/100ml以下、さらに好ましくは20.0mg/100mlであってもよい。
【0061】
有機酸調整工程及びNa/VC調整工程の順序は特に問わないが、アスコルビン酸の分解を抑制するという観点から、有機酸調整工程を先に行うことが好ましい。
【0062】
(その他の工程)
混合茶飲料の製造方法には、上述した工程のほか、飲料の製造工程に通常採用される工程が含まれていてもよい。このような工程としては、殺菌工程、充填工程等が挙げられる。
【0063】
殺菌工程の方法としては、例えば、超高温加熱処理(UHT)法、加圧加熱処理(レトルト殺菌)法等が挙げられる。
【0064】
充填工程の方法としては、例えば、アセプティック(無菌)充填法、ホットパック充填法等が挙げられる。
【0065】
本発明の混合茶飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶等の密封容器が挙げられる。
【0066】
混合茶飲料の製造方法の各工程に用いられる装置や条件は、通常飲料の製造工程に採用されるものを使用できる。
【0067】
<混合茶飲料の性質>
上述のとおり、発芽大麦からの抽出液を含む混合茶飲料における、有機酸の総含量及びNa/VCを調整することで、飲みやすさを有しつつ、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善することができる。
【0068】
発芽大麦からの抽出液を少なくとも含む抽出液(抽出工程、又は、抽出工程及び混合工程から得られた抽出液)が、本発明の有機酸を上述した総含量で含んでいれば、Na/VCのみを調整することで、飲みやすさを有しつつ、混合茶飲料のおいしさ及び/又は味の濃さを改善することができる。
【0069】
「おいしさ及び/又は味の濃さが改善されている」とは、おいしさ及び/又は味の濃さの強さや質(良さ)がより良好になることを意味する。したがって、本発明の混合茶飲料は嗜好性に優れている。さらに、本発明の混合茶飲料は、好ましい酸味も有し得る。おいしさ、味の濃さ、酸味、飲みやすさは、官能評価によって評価できる。
【実施例
【0070】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
<混合茶飲料の作製>
穀物(ハトムギ、大麦、ケツメイシ、玄米、発芽大麦)を配合した原料組成物を適宜調製し、該原料組成物から、表1に記載された有機酸を含む抽出液を以下の方法で作製した。次いで、得られた抽出液のうち、参考例2及び4について、アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率の調整を行った。以下、アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率を調整する前の抽出液を「混合茶飲料(Na/VC調整前)」ともいい、該比率を調整した後の抽出液を「混合茶飲料(Na/VC調整後)」ともいう。「実施例」の「混合茶飲料(Na/VC調整後)」は、本発明の混合茶飲料に相当する。
【0072】
[混合茶飲料(Na/VC調整前)の作製]
カラム型抽出機を用いて、各穀物を、表1に記載された割合で混合した原料組成物200gに、水温90℃以上の水を加えて粗液を得て、さらにL-アスコルビン酸ナトリウムと重曹(炭酸水素ナトリウム)とを加えて、抽出液を得た。該抽出液は混合茶飲料(Na/VC調整前)に相当する。
【0073】
[混合茶飲料(Na/VC調整前)中のナトリウム含量の測定]
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により、混合茶飲料(Na/VC調整前)中のナトリウムの含量(Na含量)を測定した。具体的な条件は以下のとおりである。
測定方法:誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)(機種名:Agilent 7700、Agilent社製)
装置:ICP-MS Agilent7700
ガス:Heガス使用
測定モード:スペクトル
スペクトルモードオプション:ピークパターン 3ポイント、繰り返し 3
スイープ回数/繰り返し 100
標準液:関東化学製
【0074】
[混合茶飲料(Na/VC調整前)中の有機酸含量の測定]
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、混合茶飲料(Na/VC調整前)中の有機酸の含量を測定した。具体的な条件は以下のとおりである。
測定方法:HPLC Prominence((株)島津製作所)
検出器:電気伝導度検出器
カラム:Shim-pack SCR-102H(8mm×300mm、7μm)((株)島津製作所) 2本直列接続
ガードカラム:Shim-pack SCR-102H(6mm×50mm、7μm)((株)島津製作所)
カラムオーブン温度:50℃
移動相:p-トルエンスルホン酸水溶液(5mmol/L)
検出液:p-トルエンスルホン酸(5mmol/L)及びEDTA(100μmol/L)を含むBis-Tris水溶液(20mmol/L)
ポンプ流量(移動相):0.8ml/min
ポンプ流量(検出液):0.8ml/min
注入量:10μl
ポラリティ:+
セル温度:自動設定
【0075】
[混合茶飲料(Na/VC調整前)の官能評価]
得られた各混合茶飲料(Na/VC調整前)について、専門パネル5名による官能評価を実施した。各評価は、混合茶飲料の(1)おいしさ、(2)味の濃さ、(3)酸味、(4)飲みやすさ、の各観点について7段階評価で行った。各観点の評価基準は以下のとおりである。官能評価の結果を表1に示す。なお、各評価結果は、各パネルが付けた評価点数の平均値によって示した。
【0076】
(強弱)
数字が低いほど弱く、数字が高いほど強いことを意味する。最低点は1点であり、最高点は7点である。
【0077】
(良悪)
数字が低いほど悪く、数字が高いほど良いことを意味する。最低点は1点であり、最高点は7点である。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示されるとおり、有機酸の総含量が、混合茶飲料に対して、3.5mg/100ml以上8.0mg/100ml以下の範囲にある混合茶飲料(参考例3及び4)は、おいしさ(良悪)、味の濃さ(良悪)、飲みやすさ(良悪)が4点以上であり、官能評価のバランスが良い傾向にあった。官能評価のバランスが特に良かった参考例4の混合茶飲料を用いて、以下の方法で、混合茶飲料(Na/VC調整後)を作製した。また、参考例2の混合茶飲料を用いて同様の操作を行った。
【0080】
[混合茶飲料(Na/VC調整後)の作製]
混合茶飲料(Na/VC調整前)に対して、表2に記載された割合でアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、重曹(炭酸水素ナトリウム)を配合し、表2に示す比率でアスコルビン酸及びナトリウムを含む混合茶飲料(Na/VC調整後)を作製した。
【0081】
[混合茶飲料(Na/VC調整前)中のナトリウム含量及びアスコルビン酸含量の測定]
混合茶飲料(Na/VC調整後)中のナトリウムの含量(Na含量)を、上記[混合茶飲料(Na/VC調整前)中のナトリウム含量の測定]と同様の方法で測定した。
混合茶飲料(Na/VC調整後)中のアスコルビン酸の含量(VC含量)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。具体的な条件は以下のとおりである。
測定方法:HPLC
固定相:Shodex Asahipak NH2P-50 4Eカラム
カラム径:4.6mm
カラム長:250mm
移動相流量:1.0mL/min
移動相 :60mMリン酸溶液:アセトニトリル=20:80
検出波長:254nm
【0082】
表2中、「Na/VC」は、各混合茶飲料における「Na含量」を「VC含量」で割った値(アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率)である。
【0083】
なお、表2中、「実施例4-1」~「実施例4-4」及び「比較例4-1」~「比較例4-4」は、参考例4の混合茶飲料を用いて、アスコルビン酸及びナトリウムの含量を調整した混合茶飲料である。「比較例2-1」は、参考例2の混合茶飲料を用いて、アスコルビン酸及びナトリウムの含量を調整した混合茶飲料である。
【0084】
[混合茶飲料(Na/VC調整後)の官能評価]
得られた各混合茶飲料(Na/VC調整後)について、専門パネル5名による官能評価を実施した。各評価は、[混合茶飲料(Na/VC調整前)の官能評価]と同様に行った。官能評価の結果を表3に示す。なお、各評価結果は、各パネルが付けた評価点数の平均値によって示した。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示されるとおり、混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率が0.53以上0.73以下である混合茶飲料(Na/VC調整後)(実施例4-1~4-4)は、いずれも、参考例4の混合茶飲料(Na/VC調整前)と比較して、味の濃さ(強弱)が強められていた。また、おいしさ(良悪)、味の濃さ(良悪)、飲みやすさ(良悪)については、いずれも、4点以上であり良好な風味を有していた。
【0088】
他方、混合茶飲料中の、アスコルビン酸の含量に対するナトリウムの含量の比率が上記範囲内であっても、有機酸の総含量が3.5mg/100ml未満であると(比較例2-1)全体的に官能評価が劣る結果であった。