(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】フリクションダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/139 20060101AFI20220324BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20220324BHJP
F16F 15/129 20060101ALI20220324BHJP
F16F 7/04 20060101ALI20220324BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F16F15/139 D
F16D1/06 210
F16F15/129 D
F16F7/04
F16J15/10 U
(21)【出願番号】P 2018009817
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000167196
【氏名又は名称】光洋シーリングテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂尾 一将
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203464(JP,A)
【文献】特開2008-247190(JP,A)
【文献】特開2013-064474(JP,A)
【文献】特開2015-102122(JP,A)
【文献】特表昭56-500577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 7/04
F16D 1/00- 9/10
F16J 15/10
F16H 55/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に雌スプラインが形成されたハウジングと、前記雌スプラインに嵌合される雄スプラインが外周の一部に形成された軸部材との間に設けられたフリクションダンパであって、
前記軸部材の外周の他部に内周面が嵌合された環状の芯金と、前記芯金の外周に固定された環状の弾性体と、を備え、
前記ハウジングは、内周の軸方向一方側の端部を除き前記雌スプラインが形成されており、
前記弾性体は、前記ハウジングの内周における前記雌スプラインが形成された部分に配置される円筒部と、前記ハウジングの内周における前記雌スプラインが形成されていない部分に配置される密封部とを備え、
前記密封部は、前記ハウジングの内周における前記雌スプラインが形成されていない部分に締り嵌めされ、
前記円筒部は、前記ハウジングに形成された雌スプラインの溝部内に配設され当該溝部の横断面形状に対応する横断面形状を有する複数の突起を備えている、フリクションダンパ。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記弾性体の外周において周方向に等間隔で設けられている、請求項1に記載のフリクションダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフリクションダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンとトランスアクスルとの連結部には、ハウジングの内周に軸部材がスプライン嵌合されている部分がある。このスプライン嵌合部では、ハウジングの内周に形成された雌スプラインに、軸部材の外周に形成された雄スプラインが嵌合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のハウジングと軸部材とのスプライン嵌合部において、雌スプライン又は雄スプラインの寸法精度が低いと、軸部材がハウジングに対して径方向及び/又は周方向にがたつく場合がある。この場合、軸部材のがたつきによって、前記スプライン嵌合部から異音が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ハウジングと軸部材とのスプライン嵌合部から異音が発生するのを抑制することができるフリクションダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフリクションダンパは、
(1)内周に雌スプラインが形成されたハウジングと、前記雌スプラインに嵌合される雄スプラインが外周の一部に形成された軸部材との間に設けられたフリクションダンパであって、
前記軸部材の外周の他部に内周面が嵌合された環状の芯金と、前記芯金の外周に固定された環状の弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記ハウジングに形成された雌スプラインの溝部内に配設され当該溝部の横断面形状に対応する横断面形状を有する複数の突起を備えている。
【0007】
本発明のフリクションダンパでは、芯金に固定された弾性体が、ハウジングに形成された雌スプラインの溝部内に配設される複数の突起を備えており、これらの突起は、当該溝部の横断面形状に対応する横断面形状を有している。これにより、弾性体の突起をハウジングの雌スプラインの溝部内にほぼ隙間なく配設することができる。したがって、雌スプライン又は雄スプラインの寸法精度が低い場合であっても、軸部材のハウジングに対する径方向及び/又は周方向のがたつきを弾性体の突起が溝部の側面又は底面に当接することで抑制することができるため、ハウジングと軸部材とのスプライン嵌合部から異音が発生するのを抑制することができる。
【0008】
(2)前記(1)のフリクションダンパにおいて、前記複数の突起は、前記弾性体の外周において周方向に等間隔で設けられていることが望ましい。この場合、複数の突起を周方向に等間隔で設けることで、軸部材のハウジングに対する径方向及び/又は周方向のがたつきをバランスよく抑制することができる。
【0009】
(3)前記(1)又は(2)のフリクションダンパにおいて、前記弾性体は、当該弾性体の軸方向一方側の端部に、前記ハウジングの内周に締り嵌めされた密封部を有していることが望ましい。この場合、外部からのダストや泥水等の異物がハウジングと軸部材とのスプライン嵌合部に侵入するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフリクションダンパによれば、ハウジングと軸部材とのスプライン嵌合部から異音が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のフリクションダンパの一実施形態を示す断面説明図である。
【
図2】
図1に示されるフリクションダンパの側面説明図である。
【
図3】
図1に示されるフリクションダンパを軸方向他方側から見た説明図である。
【
図4】ハウジングの雌スプラインの溝部とフリクションダンパの突起との関係を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフリクションダンパの実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るフリクションダンパ1を示す断面説明図である。本実施形態のフリクションダンパ1は、例えば、図示を省略するエンジンとトランスアクスルとの連結部に適用することができる。
図1に示されるフリクションダンパ1は、形成されたハウジング50と、ハウジング50の内周にスプライン嵌合された軸部材60との間に設けられている。なお、
図1の左右方向がフリクションダンパ1の軸方向となる。本明細書では、軸方向の位置に関して、スプライン嵌合部を基準としてフリクションダンパ1が位置する側である
図1の右側を「軸方向一方側」、
図1の左側を「軸方向他方側」という。
【0014】
ハウジング50の内周には、軸方向一方側端の一部(後述する弾性体の密封部が嵌め込まれる部分)を除き雌スプライン51が形成されている。軸部材60の外周の一部である軸方向他方側部には、雌スプライン51に嵌合される雄スプライン61が形成されている。この雌スプライン51及び雄スプライン61によって、軸部材60とハウジング50とは、相対回転不能であり、相互間でトルクの伝達が可能である。本実施形態におけるハウジング50は、軸部材60の雄スプライン61と対向する箇所だけでなく当該雄スプライン61を越えて軸方向一方側に雌スプライン51が延長して形成されている。この延長された雌スプライン51の部分に後述する弾性体3の突起が配設される(嵌め込まれる)。
【0015】
フリクションダンパ1は、軸部材60の外周の他部である軸方向一方側部に内周面21が嵌合された環状の芯金2と、この芯金2の外周に固定された環状の弾性体3とを備えている。
【0016】
芯金2は、例えばSPCC等の金属を用いて円筒形状に形成されている。より詳細には、芯金2は軸部材60の外周面62に嵌合される円筒部22と、この円筒部22の軸方向一方側端に一体に形成された底部23とを有している。底部23には、加硫成形により弾性体3を芯金2に固定又は固着する際のエア抜きのための開口24が形成されている。
【0017】
弾性体3は、例えばフッ素ゴム(FKM)等の弾性素材からなり、芯金2の円筒部22の外周面22aと、円筒部22の軸方向他方側端面22bと、底部23の軸方向一方側の側面23aと、底部23の軸方向他方側の側面23bであって開口24の縁部近傍とに加硫接着されている。また、弾性体3は、底部23の開口24を封止ないし閉止するように芯金2の底部23に加硫接着されている。
【0018】
弾性体3は、円筒部31と、この円筒部31の軸方向一方側端に一体に形成された密封部32と、この密封部32の軸方向一方側端から径内方向に一体に形成された蓋部33と、前記円筒部31の軸方向他方側端から径内方向に一体に形成された鍔部34とを有している。
【0019】
弾性体3の円筒部31の外周には、
図2~3に示されるように、複数(本実施形態では3つ)の突起35が一体に形成されている。突起35は、円筒部31の軸方向に沿って形成された凸条の形態を有している。また、突起35は、
図4に示されるように、ハウジング50に形成された雌スプライン51の溝部52の横断面形状に対応した横断面形状を有している。すなわち、突起35は、台形状である、雌スプライン51の溝部52の横断面形状に対応する台形状の横断面形状を有している。また、突起35のサイズは、雌スプライン51の溝部52内に隙間なく嵌め込むことができるサイズとされている。これにより、フリクションダンパ1をハウジング50及び軸部材60の軸方向一方側に組み付けると、弾性体3の突起35がハウジング50の雌スプライン51の溝部52内に隙間なく配設されるないしは嵌め込まれる。したがって、ハウジング50の雌スプライン51又は軸部材60の雄スプライン61の寸法精度が低い場合であっても、軸部材60のハウジング50に対する径方向及び/又は周方向のがたつきを弾性体の突起35が溝部52の側面52a又は底面52bに当接することで抑制することができるため、ハウジング50と軸部材60とのスプライン嵌合部から異音が発生するのを抑制することができる。
【0020】
密封部32はハウジング50の内周の軸方向一方側端に締め代をもたせて嵌合されている。換言すれば、密封部32はハウジング50の内周の軸方向一方側端に締り嵌めされている。このような密封部32によってハウジング50と軸部材60の軸方向一方側端部を密封ないしシールすることができ、外部からのダストや泥水等の異物がハウジング50と軸部材60とのスプライン嵌合部に侵入するのを抑制することができる。
【0021】
また、密封部32の軸方向他方側の端面は、ハウジング50に形成された雌スプライン51の軸方向一方側端に形成された斜面53と当接する斜面36とされている。この斜面36により、フリクションダンパ1をハウジング50及び軸部材60の軸方向一方側に組み付けるときに斜面53と斜面36を合わせることで密封部32のシール性を更に向上させることができる。
【0022】
本実施形態では、3つの突起35が弾性体3の円筒部31の外周面において周方向に等間隔で、すなわち120度の間隔で設けられている。このように複数の突起35を周方向に等間隔に設けることで、軸部材60のハウジング50に対する径方向及び/又は周方向のがたつきをバランスよく抑制することができる。
【0023】
〔その他の変形例〕
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、弾性体の円筒部に3つの突起が形成されているが、突起の数は2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 : フリクションダンパ
2 : 芯金
3 : 弾性体
22 : 円筒部
23 : 底部
24 : 開口
31 : 円筒部
32 : 密封部
33 : 蓋部
35 : 突起
50 : ハウジング
51 : 雌スプライン
52 : 溝部
60 : 軸部材
61 : 雄スプライン