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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】インホイールモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 1/06 20060101AFI20220324BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20220324BHJP
   F16H 1/20 20060101ALI20220324BHJP
   F16H 57/023 20120101ALI20220324BHJP
   B60K 17/14 20060101ALI20220324BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20220324BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20220324BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20220324BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20220324BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20220324BHJP
   F16D 127/02 20120101ALN20220324BHJP
   F16D 129/10 20120101ALN20220324BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20220324BHJP
【FI】
B60T1/06 G
B60K7/00 ZHV
F16H1/20
F16H57/023
B60K17/14
F16H61/32
F16H63/34
F16D63/00 H
F16D65/16
F16D65/12 X
F16D127:02
F16D129:10
F16D127:06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018036441
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019151163
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】雪島 良
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】横山 健
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020593(JP,A)
【文献】特開2011-57011(JP,A)
【文献】特開平7-285422(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/06
B60K 7/00
F16H 1/20
F16H 57/023
B60K 17/14
F16H 61/32
F16H 63/34
F16D 63/00
F16D 65/16
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としての電動モータと、電動モータからの回転を減速して出力する減速機と、駆動輪と連結し、減速機からの出力を駆動輪に伝達する車輪ハブと、前記減速機を収容する減速機ケーシングと、前記減速機ケーシングに収容されるパークロック装置とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、
前記減速機は、前記電動モータの出力軸と連結し、入力歯車としての小径歯車を有する入力歯車軸と、車輪ハブと連結し、出力歯車としての大径歯車を有する出力歯車軸と、前記入力歯車軸と前記出力歯車軸との間で、歯車で噛合うことで動力伝達を行う中間歯車軸を少なくとも一つ以上配置する平行軸歯車減速機であり、
前記各歯車軸は、インボード側減速機ケーシングとアウトボード側減速機ケーシングとで構成される減速機ケーシング内に収容され、
前記各歯車軸は、前記減速機ケーシングに対して回転自在に支持され、
前記パークロック装置は、前記インホイールモータ駆動装置の前記入力歯車軸と同軸に設けられ、外周部に係合のための凹部を複数設けたパークギヤと、前記パークギヤの凹部に係合する突起を有し、係合する位置と待機位置とに支持軸を介して揺動可能なパークポールと、前記パークポールの突起を前記パークギヤの凹部に係合する位置と待機位置とに揺動可能にする移動部材と、前記移動部材を移動させる駆動部と連結される回転軸とを有し、
前記支持軸と回転軸はアウトボード側減速機ケーシングに設けられ、前記パークポールは前記支持軸を、前記移動部材は回転軸を、それぞれ介してアウトボード側減速機ケーシングに取り付けられ、
前記アウトボード側減速機ケーシングがインボード側減速機ケーシングに取り付けられることにより、前記パークギヤと、パークポールと、移動部材は、前記減速機ケーシング内に収容されることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
前記駆動輪と車輪ハブとの間にはブレーキ装置のブレーキロータ又はブレーキドラムが配置され、
前記移動部材は回転式のパークカムからなり、前記回転軸にパークカムが取り付けられ、
前記回転軸は、前記アウトボード側減速機ケーシングのアウトボード側で、前記ブレーキロータの外径面よりも外側に設けた連通穴から前記アウトボード側減速機ケーシングの外部に引き出され、
前記外部に引き出された回転軸がアウトボード側減速機ケーシングのアウトボード側に配置される駆動部としてのステップモータに連結されることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記パークポールの待機位置で、前記パークポールの前記突起の先端が前記入力歯車軸を支持する前記転がり軸受の外輪外径よりも半径方向外側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置のパークロック機構。
【請求項4】
前記入力歯車軸は前記減速機のインボード側に入力歯車を有し、前記パークギヤは前記入力歯車のアウトボード側に、前記入力歯車軸と同軸に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インホイールモータ駆動装置に係り、特に、駐車時に駆動輪をロックするパークロック装置を内蔵したインホイールモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを利用した車両としては、例えば、電気自動車の他、エンジンと電動モータとを併用したハイブリッド車等がある。そして、これらの車両の中には、左右前輪又は左右後輪或いは4輪全輪に電動モータを内蔵したインホイールモータ駆動装置を採用した車両が開発されている。
【0003】
ガソリンエンジン車等、単独の駆動源(エンジン)から伝達装置を介して各駆動輪へと駆動力を伝達する車両においては、各駆動輪へ駆動力を分配する手段より駆動源側で伝達装置をパークロック装置でロックすることで、全ての駆動輪を同時にロックすることが可能である。しかしながら、各駆動輪にインホイールモータ等の駆動源を備える車両においては、各駆動輪にパークロック装置を設け、それぞれ個別にロック動作を行う必要がある。
【0004】
インホイールモータ駆動装置を採用した電動車両のパークロック装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1の装置は、図10及び図11に示すように、インホイールモータ駆動装置101の回転軸に連結された駆動軸102に固定され外周部に係止歯104を有するパークギヤ105と、支持軸107によって揺動可能に支持されその一端側にパークギヤ105と係合する係合突起108を有する係合片106と、係合片106に固定され係合突起108を係止歯104との係合を解除する方向に付勢するばね部材109と、係合片106に当接した状態で当該係合片106に沿って移動可能に配される当接部材110と、当接部材110の移動を規制するガイド部材112とを、各駆動輪に対応してそれぞれ備える。そして、各当接部材110がそれぞれ連結されて各当接部材110の動力源となる単独のアクチュエータ113を各駆動輪間に設けている(図10参照)。このアクチュエータ113の駆動により、ロック状態とロック解除状態が切り替えられる。即ち、車両走行時のロック解除状態は、図11の破線で示すように、アクチュエータ113の駆動により当接部材110が、係合片106の支持軸107よりもアクチュエータ113側に位置され、ばね部材109によって係合片106の係合突起108とは反対側の端部近傍が図中下側に引っ張られることで、係合突起108と係止歯104との係合が解除された状態が保持される。
【0005】
ロックする際には、アクチュエータ113によって各当接部材110を前方に押し出し、各当接部材110を係合片106の係合突起108側に移動させることで、係合片106が当接部材110によって押圧されて、ばね部材109のバネ力に反して係合片106が回転する。これにより、係合突起108がパークギヤ105の係止歯104と係合されて、各駆動輪(インホイールモータ駆動装置101)の回転がロックされた状態となる。
【0006】
上記特許文献1のパークロック装置は、図10に示すように、インホイールモータ駆動装置101の回転軸に連結される駆動軸102がユニバーサルジョイント103を介して、駆動輪間のほぼ中央部まで延ばされ、その端部にパークギヤ105を設けている。このため、インホイールモータ駆動装置101とは別にパークロック装置を設けることになり、インホイールモータ駆動装置101の組み付けとは別に車体側にパークロック装置を組み付ける工程が発生し、組み立て工数が増加するという問題がある。
【0007】
さらに、インホイールモータ駆動装置101の外部にパークロック装置を設けているので、装置が大型化する。そして、車体側にパークロック装置のための空間が必要となる。
【0008】
ところで、インホイールモータ駆動装置は、駆動輪に設けられるために、車体側の居室空間を広く取れるという利点がある。このことから、パークロック装置も車体側の空間に設けずに、インホイール駆動装置の内部に収容することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-151308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者等はパークロック装置をインホイールモータ駆動装置内に収容し、車体側の空間を広くとると共に、装置の大型化を抑制することを鋭意検討した。
【0011】
本発明者等は、減速機として平行軸歯車減速機を用い、減速機のケーシング内にパークロック装置を内蔵することを検討したところ、減速機の内部にパークロック装置を収容する場合、減速機の歯車部を構成する歯車軸をケーシングに組付けた後に、パークロック装置を組付ける、もしくは反対に、パークロック装置をケーシングに組付けた後に、歯車軸を組付けることとなり、組立工数が増加する可能性があることが分かった。
【0012】
さらに、インホイールモータ駆動装置にパークロック装置を組付ける際、インホイールモータ駆動装置の減速機の狭い空間で歯車軸のような大きな部品の近傍にパークロック装置を構成する小さな部品を組付けることとなり、作業性が悪くなる可能性がある。
【0013】
この発明は、かかる知見に基づき、インホイールモータ駆動装置にパークロック装置を内蔵する際に、組み立て作業性の良好な装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、パークロック装置を内蔵したインホイールモータ駆動装置の組み立て作業性が良好になる構造を検討した。その結果、減速機として平行軸歯車減速機を用いたインホイールモータ駆動装置では、駆動源としての電動モータを車両のインボード側に配置し、減速機を車両のアウトボード側に配置する。このため、減速機を構成する各歯車軸は車両のアウトボード側からケーシングに組付けることが望ましいことを見出した。ここで、車両の中央よりをインボード側といい、車両の外側よりをアウトボード側という。
【0015】
さらに、インホイールモータ駆動装置の減速機において、入力歯車軸に設けた入力歯車が車両のインボード側(電動モータ寄り)に配置されると、パークギヤは車両のアウトボード側に配置される。従って、パークポール等の他のパークロック装置の構成部材も車両のアウトボード側からケーシング内に収容されるように組付けられることが望ましいことが分かった。そして、パークギヤ以外のパークロック装置の構成部材が車両のアウトボード側の減速機ケーシングに予め組み付けられ、各歯車軸を車両のインボード側の減速機ケーシングに組付けた後、アウトボード側の減速機ケーシングを組付けると組立性が向上することが分かった。
【0016】
そこで、パークロック装置の構成部材をあらかじめ減速機ケーシングに組付けておくことで、インホイールモータ駆動装置の組立性が向上することが分かった。
【0017】
この発明は、かかる知見に基づきなされたものにして、この発明においては、駆動源としての電動モータと、電動モータからの回転を減速して出力する減速機と、駆動輪と連結し、減速機からの出力を駆動輪に伝達する車輪ハブと、前記減速機を収容する減速機ケーシングと、前記減速機ケーシングに収容されるパークロック装置とを備えたインホイールモータ駆動装置であって、前記減速機は、前記電動モータの出力軸と連結し、入力歯車としての小径歯車を有する入力歯車軸と、車輪ハブと連結し、出力歯車としての大径歯車を有する出力歯車軸と、前記入力歯車軸と前記出力歯車軸との間で、歯車で噛合うことで動力伝達を行う中間歯車軸を少なくとも一つ以上配置する平行軸歯車減速機であり、
前記各歯車軸は、インボード側減速機ケーシングとアウトボード側減速機ケーシングとで構成される減速機ケーシング内に収容され、前記各歯車軸は、前記減速機ケーシングに対して回転自在に支持され、前記パークロック装置は、前記インホイールモータ駆動装置の前記入力歯車軸と同軸に設けられ、外周部に係合のための凹部を複数設けたパークギヤと、前記パークギヤの凹部に係合する突起を有し、係合する位置と待機位置とに支持軸を介して揺動可能なパークポールと、前記パークポールの突起を前記パークギヤの凹部に係合する位置と待機位置とに揺動可能にする移動部材と、前記移動部材を移動させる駆動部と連結される回転軸とを有し、前記支持軸と回転軸はアウトボード側減速機ケーシングに設けられ、前記パークポールは前記支持軸を、前記移動部材は回転軸を、それぞれ介してアウトボード側減速機ケーシングに取り付けられ、前記アウトボード側減速機ケーシングがインボード側減速機ケーシングに取り付けられることにより、前記パークギヤと、パークポールと、移動部材は、前記減速機ケーシング内に収容されることを特徴とする。
【0018】
上記した構成により、パークロック装置の構成部材を減速機ケーシングに事前に組付けることが可能であり、狭い空間での組付け作業をする必要がなくなる。
【0019】
また、前記駆動輪と車輪ハブとの間にはブレーキ装置のブレーキロータ又はブレーキドラムが配置され、前記移動部材は回転式のパークカムからなり、前記回転軸にパークカムが取り付けられ、前記回転軸は、前記アウトボード側減速機ケーシングのアウトボード側で、前記ブレーキロータの外径面よりも外側に設けた連通穴から前記アウトボード側減速機ケーシングの外部に引き出され、前記外部に引き出された回転軸がアウトボード側減速機ケーシングのアウトボード側に配置される駆動部としてのステップモータに連結するとよい。
【0020】
上記のように、パークロック装置の回転軸をアウトボード側減速機ケーシングのアウトボード側に引き出すことで、アウトボード側減速機ケーシングをインボード側減速機ケーシングに組付ける際に組立作業性が向上する。さらに、パークロック装置の回転軸をブレーキロータの外径面より外側に配置することで、インホイールモータ駆動装置の大型化を防止しつつ、ステップモータの設置空間をインホイールモータ駆動装置の外部に確保できる。
【0021】
また、前記パークポールの待機位置で、前記パークポールの前記突起の先端が前記入力歯車軸を支持する前記転がり軸受の外輪外径よりも半径方向外側に配置するとよい。
【0022】
上記の構成により、平行軸歯車減速機を有するインホイールモータ駆動装置において、パークロック装置の構成部材を組付けたアウトボード側減速機ケーシングをインボード側減速機ケーシングに取り付ける際に、部材同士の干渉を気にすることなく、軸方向に直線的な移動で減速機ケーシングを取り付けることが可能となり、組立て作業性が向上する。
【0023】
また、前記入力歯車軸は前記減速機のインボード側に入力歯車を有し、前記パークギヤは前記入力歯車のアウトボード側に、前記入力歯車軸と同軸に配置すればよい。
【0024】
上記の構成により、パークギヤを第2中間歯車の外径側スペースに配置でき、インホイールモータ駆動装置を大型化せずにパークロック装置を配置できる。
【発明の効果】
【0025】
この発明においては、パークロック装置の構成部材を減速機ケーシングに事前に組付けることが可能であり、狭い空間での組付け作業をする必要がなくなり、組み立て作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】インホイールモータ駆動装置を有する電気自動車の概略平面図である。
図2図1の電気自動車を後方から見た図である。
図3】この発明に係る第1の実施形態のインホイールモータ駆動装置を示す横展開断面図である。
図4】この発明の第1の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置のパークロック装置を概略的に示す正面図であり、ロック解除状態を示している。
図5】この発明の第1の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置のパークロック装置を概略的に示す正面図であり、ロック状態を示している。
図6】この発明の第1の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置の組み付け状態を示す横展開断面図である。
図7】この発明の第1の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置のパークロック装置部分を拡大した断面図である。
図8】この発明の第2の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置のパークロック装置を概略的に示す正面図であり、ロック解除状態を示している。
図9】この発明の第2の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置のパークロック装置を概略的に示す正面図であり、ロック状態を示している。
図10】従来のパークロック装置を示す概略平面図である。
図11図10のA-A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
インホイールモータ駆動装置を備えた電気自動車1は、図1に示すように、シャーシ2と、操舵輪としての前輪3と、駆動輪(後輪)4と、左右の駆動輪4それぞれに駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置10とを備える。駆動輪4は、図2に示すように、シャーシ2のホイールハウジング2aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)2bを介してシャーシ2の下部に固定されている。インホイールモータ駆動装置10の搭載形態としては、図1、2で示した後輪駆動方式の他に、前輪駆動方式でも四輪駆動方式のいずれでも構わない。
【0028】
懸架装置2bは、左右に伸びるサスペンションアームによって駆動輪4を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、駆動輪4が地面から受ける振動を吸収してシャーシ2の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等に車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられる。なお、懸架装置2bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、駆動輪の駆動力を効率良く路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
【0029】
この電気自動車1は、ホイールハウジング2a内部に、左右の駆動輪4をそれぞれ駆動するインホイールモータ駆動装置10を設けることによって、シャーシ2上にモータ、ドライブシャフト、およびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の駆動輪の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
【0030】
インホイールモータ駆動装置10は、図3に示すように、駆動力を発生させる電動モータAと、電動モータAの回転を減速して出力する減速機Bと、減速機Bからの出力を駆動輪4に伝える車輪ハブCとを備え、電動モータAと減速機Bとはケーシング25に収納されて、図2に示すように電気自動車1のホイールハウジング2a内に取り付けられる。電動モータA及び減速機Bは、車輪ハブCの軸線Oからオフセットして配置される。軸線Oは車幅方向に延びる。
【0031】
駆動輪4と車輪ハブCとの間にはブレーキ装置のブレーキロータ60が配置される。この実施形態は、ブレーキ装置としてディスクブレーキを用いているが、ブレーキ装置は、ドラムブレーキでもよい。
【0032】
上記電動モータAおよび減速機Bは、ケーシング25内に収容されている。ケーシング25は、電動モータA側のモータケーシング25aと、減速機B側の減速機ケーシング25bとからなる。電動モータA側と減速機B側とは仕切り壁25cで仕切られている。仕切り壁25cに連接してインボード側減速機ケーシング25dが設けられている。インボード側減速機ケーシング25dにアウトボード側減速機ケーシング25eが取り付けられ、減速機ケーシング25bが形成される。
【0033】
インホイールモータ駆動装置10の軽量化の観点から、ケーシング25は、アルミ合金やマグネシウム合金等の軽金属で形成されている。
【0034】
電動モータAは、この実施形態では、モータケーシング25aの内周面にステータ24を設け、このステータ24の内周に間隔をおいてロータ23を設けたラジアルギャップタイプのものを使用している。尚、電動モータAは、ラジアルギャップタイプに限らず、アキシャルギャップタイプのものでもよい。
【0035】
ロータ23は、モータ軸23aを中心部に有し、そのモータ軸23aは電動モータA側の仕切り壁25cからインボード側減速機ケーシング25d内に延び、インボード側減速機ケーシング25d内の減速機Bの入力歯車軸31とスプライン嵌合により連結されている(図3参照)。モータ軸23aは、軸受27、28によってモータケーシング25aに対して回転自在に支持されている。モータ軸23a及びロータ23の回転中心となる軸線Mは、車輪ハブC軸線と平行に延びる。電動モータAは、車輪ハブCの軸線Oから離れるようにオフセットして配置される。
【0036】
回転センサ29によって検知されたモータ軸23aの回転速度は図示しない制御装置に入力され、電動モータAの回転制御に用いられる。
【0037】
モータケーシング25aの開口部は図示しないボルトにより側壁部25fが取り付けられ、側壁部25fの開口部を閉塞するようにボルト25hにより、蓋部25gが取り付けられている。
【0038】
減速機Bのアウトボード側減速機ケーシング25eは、ボルト92により、インボード側減速機ケーシング25dに固定され、減速機ケーシング25bを構成している。
【0039】
上記したように、インホイールモータ駆動装置10のケーシング25は、電動モータAを収容するモータケーシング25aと減速機Bを収容する減速機ケーシング25bに大別される。
【0040】
減速機Bは、電動モータAのモータ軸23aと連結し、入力歯車32としての小径歯車を有する入力歯車軸31と、車輪ハブCと連結し、出力歯車36としての大径歯車を有する出力歯車軸37と、入力歯車軸31と出力歯車軸37との間で、歯車で噛合うことで動力伝達を行う中間歯車軸35を少なくとも1つ以上配置する平行軸歯車減速機である。
【0041】
この実施形態の減速機Bは、3軸の平行軸歯車減速機であり、車輪ハブCの内輪12と結合する出力歯車36と、電動モータAのモータ軸23aと結合する入力歯車32と、入力歯車32から出力歯車36へ回転を伝達する複数の中間歯車である第1中間歯車33と、第2中間歯車34と、を有する。
【0042】
入力歯車32は、小径の外歯歯車であり、モータ軸23aにスプライン嵌合される入力歯車軸31の軸線M方向のインボード側の外周に形成されている。入力歯車軸31は、入力歯車32のインボード側で転がり軸受32nを介してインボード側減速機ケーシング25dに回転自在に支持され、アウトボード側で転がり軸受32mを介してアウトボード側減速機ケーシング25eに回転自在に支持されている。
【0043】
中間歯車軸35の外周には、大径の外歯歯車で構成される第1中間歯車33と小径の外歯歯車で構成される第2中間歯車34が互いに隣接して形成され、入力歯車32と第1中間歯車33が噛合し、大径の出力歯車36と第2中間歯車34が噛合する。中間歯車軸35は、インボード側で転がり軸受35nを介してインボード側減速機ケーシング25dに回転自在に支持され、アウトボード側で転がり軸受35mを介してアウトボード側減速機ケーシング25eに回転自在に支持されている。
【0044】
中間歯車軸35の中心を通る軸線Rは、車輪ハブCの軸線と平行に延びる。これにより、減速機Bは、車輪ハブCからオフセットして配置される。軸線O、R、Mの位置関係は図3に示す通りである。この実施形態の減速機Bは、互いに平行に延びる軸線O、R、Mを有する平行3軸式歯車減速機である。
【0045】
出力歯車36は、出力歯車軸37に同軸に設けられる大径の外歯歯車である。出力歯車軸37はインボード側を転がり軸受37nを介してインボード側減速機ケーシング25dに支持される。出力歯車軸37のアウトボード側は転がり軸受37mを介してアウトボード側減速機ケーシング25eに支持される。出力歯車軸37のアウトボード側は、車輪ハブCの内輪12にスプライン嵌合により連結されている。
【0046】
車輪ハブCは、回転内輪・固定外輪とされ、図示しない車輪ホイールと結合する車輪ハブとしての内輪12と、非回転の外輪13と、内輪12と外輪13との環状隙間に配置される複数の転動体14とを有し、車軸を構成する。内輪12は、外輪13よりも長く形成され、内輪12の両端が外輪13から突出するように、外輪13の中心孔に通される。
【0047】
内輪12の軸線O方向のアウトボード側の端部には、結合部12fが形成されている。結合部12fは、フランジであり、ブレーキロータ60及び図示しない駆動輪と同軸に結合するための結合部を構成する。内輪12は、結合部12fで駆動輪4と結合し、駆動輪4と一体に回転する。
【0048】
内輪12の軸線O方向のインボード側の端部には、内側軌道輪12rが取り付け固定される。転動体14は、軸線O方向に離隔して複列に配置されている。内輪12の軸線O方向の中央部の外周面は、第1列の転動体14の内側軌道面を構成し、外輪13の軸線O方向のアウトボード側の内周面と対面する。内側軌道輪12rの外周面は、第2列の転動体14の内側軌道面を構成し、外輪13の軸線O方向のインボード側の内周面と対面する。
【0049】
外輪13のアウトボード側およびインボード側の内周面には、シール部材38cおよび38dが設けられ、車輪ハブCの軸方向両端部を密封している。
【0050】
外輪13の軸線O方向のアウトボード側の端部には、結合部13fが形成されている。結合部13fはフランジであり、ボルト15を介してアウトボード側減速機ケーシング25eに固定されている。
【0051】
この実施形態の減速機ケーシング25bは、互いに平行に延びる軸線O、M、Rを取り囲むように、減速機B、車輪ハブCを覆うと共に、減速機Bの軸線方向両側を覆う。アウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボート側端面は、ブレーキロータ60と対向する。インボード側減速機ケーシング25dのインボード側はモータケーシング25aと一体化されている。モータケーシング25aは減速機ケーシング25bのインボード側へ突出する。減速機ケーシング25bは、減速機Bの全ての回転要素(軸及び歯車)を収容する。
【0052】
上記したように、入力歯車軸31は、両端を転がり軸受32m、32n、中間歯車軸35は、両端を転がり軸受35m、35n、出力歯車軸37は、両端を転がり軸受37m、37nによりそれぞれ支持され、インボード側減速機ケーシング25dとアウトボード側減速機ケーシング25eにそれぞれ設けた軸受嵌合穴にそれぞれ転がり軸受を嵌合させ、減速機ケーシング25bに対して回転自在に支持される。
【0053】
図6に示すように、各歯車軸31、35、37は、アウトボード側からインボード側減速機ケーシング25dに設けた軸受嵌合穴32c、35c、37cに各歯車軸に嵌め込まれた転がり軸受32n、35n、37nを嵌合することにより取り付けられる。そして、アウトボード側からアウトボード側減速機ケーシング25eの軸受嵌合穴32d、35d、37dに各歯車軸に嵌め込まれた転がり軸受32m、35m、37mを嵌合させることにより取り付けられ、歯車軸31、35、37が減速機ケーシング25bに回転自在に支持され、減速機Bが減速機ケーシング25bに密閉するように取り付けられる。
【0054】
上記したように、インホイールモータ駆動装置10のケーシング25は、電動モータAを収容するモータケーシング25aと減速機Bを収容する減速機ケーシング25bからなり、減速機ケーシング25bは、各歯車軸のインボード側の一端を収容するインボード側減速機ケーシング25dと各歯車軸のアウトボード側の一端を収容するアウトボード側減速機ケーシング25eとを備える。
【0055】
この第1の実施形態のインホイールモータ駆動装置10は、図3図7に示すように、回転カム方式のパークロック装置50を内蔵している。パークロック装置50は、外周部に係合のための凹部51aを複数設けたパークギヤ51と、このパークギヤ51の凹部51aに係合する突起52aを有するパークポールと52と、パークポール52の突起52aをパークギヤ51の凹部51aに係合する位置と係合しない位置である待機位置とに揺動可能にする移動部材としてのパークカム54とを備える。
【0056】
パークギヤ51は、インホイールモータ駆動装置10の入力歯車軸31にスプライン嵌合により取り付けられる。このパークギヤ51は、入力歯車32のアウトボード側に取り付けられている。パークポール52は、支持軸53を介して揺動可能に支持され、突起52aがパークギヤ51の凹部51aと係合するロック位置と待機位置(ロック解除位置)にパークカム54の回転により移動する。
【0057】
図3及び図7に示すように、パークギヤ51と、パークポール52と、パークカム54は、軸方向に重なるように配置され、第2中間歯車34と出力歯車36と軸線方向に重なるように配置されている。そして、パークギヤ51は、第2中間歯車34の外径側スペースに配置することができるので、インホイールモータ駆動装置10を大型化することなくパークロック装置50をインホイールモータ駆動装置10内に設けることができる。さらに、パークギヤ51と、パークポール52と、パークカム54は、第2中間歯車34と出力歯車36と軸線方向に重なるように配置することで、減速機ケーシング25bが軸線方向に長くなることも抑制できる。
【0058】
図3図5に示すように、ブレーキロータ60の外径より外側でアウトボード側減速機ケーシング25eに支持軸53が取り付けられ、この支持軸53にパークポール52が揺動自在に取り付けられる。そして、パークポール52は、ねじりコイルばねからなる離反ばね52bにより、パークギヤ51から離反する方向に付勢されている。
【0059】
図7に示すように、アウトボード側減速機ケーシング25eのブレーキロータ60の外径より外側に連通孔55cが設けられ、この連通孔55cに転がり軸受55aを介して回転軸55が回転自在に取り付けられる。そして、この回転軸55に回転式パークカム54が固定されている。回転軸55は連通孔55cよりアウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に引き出され、引き出された回転軸55にパークカム54を選択的に移動させるためのステップモータ56が連結されている。回転軸55には、ねじりコイルばねからなる付勢ばね58が取り付けられ、パークカム54がパークポール52の背面を当接する方向に付勢している。連通孔55cには、回転軸55の環状隙間を封止するシール材55bが設けられている。
【0060】
上記の付勢ばね58は、係合作動時にパークポール52の突起52aがパークギヤ51の凹部51a以外の外周部に乗り上げた場合、回転軸55の回転によりパークカム54に係合方向の荷重を付勢し、その後、パークギヤ51が係合可能な位置まで回転した時に、パークカム54を係合位置の凹部51aまで移動させる。
【0061】
ところで、平行軸歯車減速機構を用いた減速機Bでは、入力歯車軸31に作用するトルクが他の歯車軸に作用するトルクよりも小さいため、パークギヤ51を入力歯車軸31に設けることで、パークロック装置50を構成するパークポール52やパークカム54などの部材に作用する荷重も小さくでき、部品を小型化できる。従って、パークギヤ51の外径を小さくできる。
【0062】
しかしながら、パークギヤ51を小さくし過ぎてしまうと問題が生じる。例えば、入力歯車軸31をアウトボード側減速機ケーシング25eに対して回転自在に支持している転がり軸受32mの外輪外径(D)よりもパークギヤ51の外径を小さくしてしまうと、パークロック装置50の構成部材を組付けたアウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側の減速機ケーシング25dに組付ける際、パークポール52の突起52aが入力歯車軸支持軸受32mの外輪と干渉してしまい、その干渉を避けるように、アウトボード側減速機ケーシング25eを組付ける必要があり、組立性が悪化する可能性もある。
【0063】
そこで、この実施形態では、図7に示すように、ロック解除時の入力歯車軸31の軸線Mからパークポール52の突起52aまでの距離(R2)は、入力歯車軸31を支持する転がり軸受32mの外径の半分(D/2)より大きく、即ち、(D/2)<R2になるように、各寸法を規定している。
【0064】
上記のように、寸法を規定することで、パークポール52がパークギヤ51と係合しない待機位置(ロック解除位置)で、パークポール52の突起52aの先端が、入力歯車軸31のアウトボード側を支持する転がり軸受32mの外輪外径よりも半径方向外側の位置に配置されるため、アウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに取り付ける際に、転がり軸受32mの外輪とパークポール52の突起52aの先端が干渉することなく、軸方向に直線的な移動で減速機ケーシング25bの取り付け作業が行える。
【0065】
図6に示すように、この実施形態においては、アウトボード側減速機ケーシング25eに、ステップモータ56と、回転軸55と、付勢ばね58、パークカム54と、支持軸53と、パークポール52と、離反ばね52bとが予め取り付け固定されている。
【0066】
図6に示すように、各歯車軸31、35、37は、アウトボード側からインボード側減速機ケーシング25dに設けた軸受嵌合穴32c、35c、37cに各歯車軸に嵌め込まれた転がり軸受32n、35n、37nを嵌合することにより取り付けられる。そして、ステップモータ56と、回転軸55と、付勢ばね58、パークカム54と、支持軸53と、パークポール52と、離反ばね52bとが予め取り付け固定されアウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに取り付ける。アウトボード側からアウトボード側減速機ケーシング25eの軸受嵌合穴32d、35d、37dに各歯車軸に嵌め込まれた転がり軸受32m、35m、37mを嵌合させることにより、歯車軸31、35、37が減速機ケーシング25bに回転自在に支持される。この組み立て作業の際、転がり軸受32mの外輪とパークポール52の突起52aの先端が干渉することなく、アウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに組み付けることができる。
【0067】
アウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに組み付けることで、減速機ケーシング25b内にパークロック装置50が収容される。そして、図5に示すように、パークポール52の突起52aがパークギヤ51の凹部51aに係合すると、パークギヤ51の回転がロックされて、入力歯車軸31は回転できなくなり、ロック状態となる。そして、図4に示すように、パークポール52の突起52aがパークギヤ51の凹部51aと係合しない状態である待機位置は、パークギヤ51が自由に回転し、入力歯車軸31が回転可能となるロック解除状態となる。
【0068】
このように、パークポール52の突起52aとパークギヤ51の凹部51aとの係合状態をステップモータ56の駆動によりパークカム54を回転制御することで、ロック状態とロック解除状態が制御される。
【0069】
パークポール52を移動制御する移動部材としてのパークカム54は、図3に示すように、回転軸55に連結し、回転軸55は、減速機ケーシング25bの外部に引き出され、回転軸55を作動させるパークロック作動部材としてステップモータ56と連結する。減速機ケーシング25bの内部にパークロック装置50を収容した場合、回転軸55を減速機ケーシング25bからインボード側に引き出すと、モータAと減速機Bの間にステップモータ56を設置する空間を確保する必要がある。このように構成すると、インホイールモータ駆動装置10が軸方向に大型化する可能性がある。そこで、この実施形態では、回転軸55は減速機ケーシング25bのアウトボード側、即ち、アウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に引き出して、アウトボード側にステップモータ56を配置している。
【0070】
インホイールモータ駆動装置10の車輪ハブCと駆動輪4との間には、ブレーキ装置(ディスクブレーキ)のブレーキロータ60が配置される。パークロック装置50の回転軸55をアウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に引き出す場合、ブレーキロータ60の外径面よりも内径側に回転軸55を配置すると、パークロック作動部材としてのステップモータ56の設置空間を確保するためにインホイールモータ駆動装置10が軸方向に大型化する可能性がある。インホイールモータ駆動装置10は小型化が必須であるため、回転軸55をアウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に引き出す場合、ブレーキロータ60の外径面よりも外側に回転軸55を配置すると、ブレーキロータ60がステップモータ56を配置する際の妨げにはならずに、軸方向の大型化を招くことなくステップモータ56を配置することができる。
【0071】
尚、ブレーキ装置として、ドラムブレーキを用いた場合には、車輪ハブCと駆動輪4との間には、ブレーキドラムが配置される。この場合もブレーキドラムの外径面より外径側に回転軸55を配置すればよい。
【0072】
上記構成により、パークロック装置50をアウトボード側減速機ケーシング25eに事前に組付けることが可能であり、パークロック装置50の回転軸55をアウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に引き出すことでアウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに組付ける際に組立作業性が向上する。さらに、パークロック装置50の回転軸55をブレーキロータ60の外径面より外側に配置することで、インホイールモータ駆動装置10の大型化を防止しつつ、パークロック装置50の駆動部としてのステップモータ56の設置空間をインホイールモータ駆動装置10の外部に確保できる。
【0073】
上記したように、パークギヤ51以外のパークロック装置50の構成部材がアウトボード側減速機ケーシング25eに予め組み付けられ、各歯車軸をインボード側減速機ケーシング25dに組付けた後、アウトボード側減速機ケーシング25eを組付けるとよい。上記構成により、パークロック装置50の構成部材をあらかじめ減速機ケーシング25d、25eに組付けておくことが可能であり、インホイールモータ駆動装置10の組立性が向上する。
【0074】
上記の構成により、パークロック装置の構成部材を組付けた減速機ケーシングを取り付ける際に、部材同士の干渉を気にすることなく、軸方向に直線的な移動で減速機ケーシングを本体ケーシングに取り付けることが可能となり、組立て作業性が向上する。
【0075】
次に、パーキングロック装置50のロック動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジにセレクト操作されると、図示しない制御装置はパークロック装置50をロックするための指令信号を出力する。これにより、図4に示す非動作時の状態のパークギヤ51とパークポール52の突起52aが離れた状態から図5に示すパークギヤ51の凹部51aとパークポール52の突起52aが係合するロック状態となるように、ステップモータ56が動作してパークカム54がパークポール52の背面を押し下げて、パークポール52が支持軸53を中心に回転する。そして、図5に示すように、パークポール52の突起52aが、凹部51aに係合するので、パークロック装置50がロック状態となる。
【0076】
この結果、入力歯車軸31の回転が禁止され、これに伴い、中間歯車軸35、出力歯車軸37の回転が禁止される。即ち、駆動輪4の回転が規制され、車両の停止状態が維持される。
【0077】
次に、パークロック装置50のロック解除動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジから他のレンジにセレクト操作されると、図示しない制御装置は、パークロック装置50に解除の指令信号を出力する。これにより、ステップモータ56は、図5で説明したパークロック装置50のロック状態からパークカム54を元位置に復帰させてパークポール52の突起52aとパークギヤ51の凹部51aの噛合を解除して待機位置にすることにより、パークロック装置50を図4に示すロック解除状態に移行させる。この結果、駆動輪4のロックが解除され、車両が移動可能となる。
【0078】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。図8及び図9に示すように、この第2の実施形態のパークロック装置は、第1の実施形態のパークロック装置50と基本的には同様の構成を備えているが、移動部材として回転カム方式のパークカム54の変わりにスライド方式のパークロッド59を用いる点が相違する。
【0079】
第1の実施形態の回転カム方式の場合と同様に、ステップモータ56に接続される回転軸55が、ブレーキロータ60の外径面よりも外側に設けた連通孔55cよりアウトボード側減速機ケーシング25eの外側に引き出される。アウトボード側減速機ケーシング25eのアウトボード側に設置される駆動部としてのステップモータ56に回転軸55が連結される。
【0080】
この第2の実施形態は、パークカム54の代わりに、パークロッド59とスプリング部材59bと揺動部材59cと先端部59dとを有している。パークロッド59は、パークギヤ51の凹部51aに係合するロック位置と(図9参照)、係合しない待機位置であるロック解除位置(図8参照)とに、パークポール52の突起52aを移動可能にする。
【0081】
回転軸55は揺動部材59cが固定され、ステップモータ56の回転により、揺動部材が回転軸55を中心として揺動する。揺動部材59cにパークロッド59の後端が回転自在に取り付けられ、回転軸55の回転により揺動する揺動部材59cの動きにより、パークロッド59は、前後方向に移動する。
【0082】
先端部59dは、サポート部材59eと摺動自在に支持されている。先端部59dは、パークロッド59の先端から後端にかけて大径に形成されている。
【0083】
パークロッド59は、スプリング部材59bの付勢力により、パークポール52の先端部の背面側に当接する。
【0084】
ステップモータ56の駆動により揺動部材59cがパークポール52の方向に揺動すると、パークロッド59は、パークポール52方向へ前進する。パークロッド59が前進すると。先端部59dの大径部分とパークポール52の背面とが当接することにより、離反ばね52bの付勢力に抗して、パークポール52をパークギヤ51に移動させる。
【0085】
また、パークポール52がパークギヤ51方向へ移動し、パークポール52の突起52aとパークギヤ51の凹部51aが係合することにより、図9に示すロック状態となる。
【0086】
図8に示すロック解除状態では、パークポール52の突起52aは、パークギヤ51の凹部51aには係合していない。この状態では、図8に示すように、パークロッド59の先端部59dの小径部分とパークポール52と当接し、パークポール52の離反ばね52bの付勢力により、パークギヤ51とパークポール52の離間状態を保つ。
【0087】
ロック解除位置(待機位置)からロック位置にパークポール52を移動させる場合には、ステップモータ56の駆動により揺動部材59cを揺動させ、パークロッド59を前進させ、パークポール52をパークロッド59の先端部59dの大径部分で押圧し、パークポール52の突起52aをパークギヤ51の凹部51aに係合する位置に移動させる。
【0088】
この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、ステップモータ56と、回転軸55と、付勢ばね58、パークロッド59と、スプリング部材59bと揺動部材59cと先端部59dと、支持軸53と、パークポール52とがアウトボード側減速機ケーシング25eに予め取り付け固定されている。
【0089】
そして、アウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに組み付けることで、減速機ケーシング25b内にパークロック装置50が収容される。
【0090】
さらに、第1の実施形態の回転カム方式のパークロック装置50と同様に、この第2の実施形態においてもパークポール52の突起52aの先端が、入力歯車軸31を支持する転がり軸受の外輪外径よりも半径方向外側に配置している。このため、軸受の外輪とパークポール52の突起52aの先端が干渉することなく、軸方向に直線的な移動でアウトボード側減速機ケーシング25eをインボード側減速機ケーシング25dに組み付けることができる。
【0091】
次に、第2の実施形態のパークロック装置50のロック動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジにセレクト操作されると、図示しない制御装置は、パークロック装置50をロックするための指令信号を出力する。これにより、図8に示す非動作時の状態のパークギヤ51とパークポール52が離れた状態から図9に示すパークギヤ51の凹部51aとパークポール52の突起52aが噛み合うロック状態となるように、ステップモータが動作してパークロッド59をパークポール52側(前進側)へ移動させる。そうすると、先端部59dがパークポール52の先端をパークギヤ方向へ回転さる。そして、図9に示すように、パークポール52の突起52aが、パークギヤ51の凹部41aに係合し、パークロック装置50がロック状態となる。
【0092】
この結果、入力歯車軸31の回転が禁止され、これに伴い、中間歯車軸35、出力歯車軸37の回転が禁止される。即ち、駆動輪4の回転が規制され、車両の停止状態が維持される。
【0093】
次に、第2の実施形態のパークロック装置50のロック解除動作について説明する。ドライバによりセレクトレバーがPレンジから他のレンジにセレクト操作されると、図示しない制御装置は、パークロック装置50に解除の指令信号を出力する。これにより、図9で説明したパークロック装置50のロック状態からパークロッド59を元位置に復帰させて突起52aと凹部51aの噛合を解除することにより、図8で説明したパークロック装置50を解除状態に移行させる。この結果、駆動輪4のロックが解除され、車両が移動可能となる。
【0094】
上記したように、パークギヤ51と、パークポール52と、パークカム54又はパークロッド59は、減速機Bを収容する減速機ケーシング25bの内部に収容されている。そして、本実施形態のインホイールモータ駆動装置10は、出力歯車軸37の下方にオイルタンク61が設けられ、パークギヤ51、パークポール52及びパークカム54又はパークロッド59は、オイルタンク61の上方に配置される。
【0095】
平行軸歯車減速機のオイルタンク61の上は、スペースがあるので、この空きスペースを使ってパークロック装置50を配置している。このように、減速機Bを収容する減速機ケーシング25b内の空きスペースを有効に利用して、パークギヤ51、パークポール52及びパークカム54又はパークロッド59を配置している。このため、インホイールモータ駆動装置10の外郭を大きくせずに、パークロック装置50を備えることが可能となる。
【0096】
上記した実施形態においては、駆動部のステップモータ56は、インホイールモータ駆動装置10の外部でパークカム54などの移動部材と直接連結しているが、これ以外に、インホイールモータ駆動装置10の外部でパークカム54などの移動部材をワイヤで連結し、車体側に搭載されたモータやソレノイドなどのアクチュエータによりワイヤを押し引きすることで動作するように構成してもよい。
【0097】
さらに、この発明に係るインホイールモータ駆動装置10を搭載した電気自動車は、後輪を駆動輪としてもよく、また、前輪を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含むものとして理解すべきである。
【符号の説明】
【0098】
10 :インホイールモータ駆動装置
12 :内輪
13 :外輪
14 :転動体
23 :ロータ
23a :モータ軸
24 :ステータ
25 :ケーシング
25a :モータケーシング
25b :減速機ケーシング
25c :仕切り壁
25d :インボード側減速機ケーシング
25e :アウトボード側減速機ケーシング
31 :入力歯車軸
32 :入力歯車
32c :軸受嵌合穴
32d :軸受嵌合穴
33 :第1中間歯車
34 :第2中間歯車
35 :中間歯車軸
35c :軸受嵌合穴
35d :軸受嵌合穴
36 :出力歯車
37 :出力歯車軸
37c :軸受嵌合穴
37d :軸受嵌合穴
50 :パークロック装置
51 :パークギヤ
51a :凹部
52 :パークポール
52a :突起
52b :離反ばね
53 :支持軸
54 :パークカム
55 :回転軸
56 :ステップモータ
58 :付勢ばね
59 :パークロッド
60 :ブレーキロータ
A :電動モータ
B :減速機
C :車輪ハブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11