(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】輸送監視システム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/04 20060101AFI20220324BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20220324BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B61L23/04
B65G61/00 500
G08C25/00 K
(21)【出願番号】P 2018058118
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-03-22
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ラガバン
(72)【発明者】
【氏名】カイル・アーカキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュー
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ヘギー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・キーゼル
(72)【発明者】
【氏名】アヌラグ・ガングリ
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530352(JP,A)
【文献】国際公開第2009/148824(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178868(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/152575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/04
B65G 61/00
G08C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の複数センサのセンサモジュール内に配置され、1つ以上の光ファイバ導波路上に配置される複数の光センサであって、各光センサが、前記複数の光センサの他の光センサから離間され、かつ移動可能な輸送機器を、前記輸送機器が運搬用構造物に沿って移動しているときに支持する前記運搬用構造物により規定される経路に沿った場所に配置され、前記複数の光センサが、前記運搬用構造物及び前記移動可能な輸送機器の一方又は両方に機械的に接続され、各光センサが、出力光信号を、前記運搬用構造物及び前記輸送機器の一方又は両方の振動放射音に応じて供給する、複数の光センサと、
前記光センサからの出力光信号を電気信号に変換するように構成される検出器ユニットと、
前記輸送機器の前記移動に同期して前記センサモジュールへの励起光の供給を制御し、前記電気信号の記録を前記輸送機器の移動に同期させるように構成され、特定の光センサ信号に対応する電気信号の記録を前記輸送機器が前記光センサの前記場所からの所定距離内に位置している時間窓に制限するようにさらに構成されるデータ取得コントローラとを備える、監視システム。
【請求項2】
前記データ取得コントローラは、前記電気信号の記録を、前記電気信号群のうち少なくとも2つの電気信号の振幅が閾値を上回る場合に開始するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記データ取得コントローラは、前記輸送機器の速度及び方向を決定するように構成され、かつ前記輸送機器が前記光センサの前記場所から所定距離内に位置している期間を、前記輸送機器の前記速度及び前記方向に基づいて推定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
1つ以上の光ファイバ導波路上に配置され、前記光ファイバ導波路に沿って直列に配置される複数の光センサであって、各光センサが、異なる波長の励起光に応答し、前記複数の光センサの他の光センサから離間され、かつ移動可能な輸送機器を、前記輸送機器が運搬用構造物に沿って移動しているときに支持する運搬用構造物により規定される経路に沿った場所に配置され、前記複数の光センサが、前記運搬用構造物及び前記移動可能な輸送機器の一方又は両方に機械的に接続され、各光センサが、出力光信号を、前記運搬用構造物及び前記輸送機器の一方又は両方の振動放射音に応じて供給する、複数の光センサと、
前記光センサからの出力光信号を電気信号に変換するように構成される少なくとも1つの検出器と、
前記励起光の前記波長を前記輸送機器の前記移動に同期させることによって前記光ファイバ導波路上の前記出力光信号を時分割多重化し、前記電気信号からのデータ取得を前記輸送機器の移動に同期させるように構成され、特定の光センサ信号に対応する電気信号の記録を前記輸送機器が前記光センサの前記場所からの所定距離内に位置している時間窓に制限するようにさらに構成されるデータ取得コントローラと、
前記運搬用構造物及び前記輸送機器のうち少なくとも一方の状態を、前記電気信号から取得されるデータに基づいて検出するように構成されるプロセッサとを備える、監視システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記運搬用構造物の亀裂、破損、負荷レベル、負荷分布、転動接触疲労、腐食、摩滅、摩耗、及び構造座屈のうち1つ以上を検出するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
出力光信号を1つ以上の複数センサのセンサモジュール内に配置された複数の光センサから受信することであって、
ここで、各光センサが、移動可能な輸送機器を、前記輸送機器が運搬用構造物に沿って移動しているときに支持する運搬用構造物により規定される経路に沿った場所に配置され、前記複数の光センサが、前記運搬用構造物及び前記移動可能な輸送機器の一方又は両方に機械的に接続され、各出力光信号は前記運搬用構造物及び前記輸送機器の一方又は両方の振動放射音に応答する
ものである、
前記受信することと、
前記出力光信号を電気信号に変換することと、
前記電気信号の記録を前記運搬用構造物に沿った前記輸送機器の移動に同期させ、特定の光センサ信号に対応する電気信号の記録を前記輸送機器が前記光センサの前記場所からの所定距離内に位置している時間窓に制限することと、
前記輸送機器の前記移動に同期して前記センサモジュールへの励起光の供給を制御することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記運搬用構造物及び前記輸送機器の少なくとも一方の状態を前記電気信号に基づいて検出することを更に含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記運搬用構造物及び前記輸送機器の少なくとも一方の前記状態を検出することは、前記電気信号から取得される前記電気信号を、前記運搬用構造物又は輸送機器の異なる状態を特徴付ける既知のテンプレートとパターン照合することを含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄道及び橋梁を含む輸送システムの劣化は、メンテナンス不足、製造上の欠陥、環境、及び負荷、速度、環境ストレスなどのような運行状態に起因して発生し得る。輸送システムが劣化することにより、構造的障害、脱線、及び事故を引き起こしてしまう。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、輸送システムを監視する手法に関するものである。監視システムは、1つ以上の光ファイバ導波路に配置される複数の光センサを含む。各光センサは、複数の光センサの他の光センサから離間され、輸送機器が運搬用構造物に沿って移動するときに、移動可能な輸送機器を支持する運搬用構造物により規定される経路に沿った場所に配置される。複数の光センサは、運搬用構造物及び移動可能な輸送機器の一方又は両方に機械的に接続される。各光センサは、出力光信号を運搬用構造物及び輸送機器の一方又は両方の振動放射音に応じて供給する。監視システムは、光センサからの出力光信号を電気信号に変換するように構成される検出器ユニットを含む。データ取得コントローラは、電気信号の記録を輸送機器の移動に同期させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
幾つかの実施形態によれば、監視システムは更に、運搬用構造物及び輸送機器のうち少なくとも一方の状態を、電気信号から取得されるデータに基づいて検出するように構成されるプロセッサを含むことができる。
【0004】
幾つかの実施形態は、輸送システムを監視する方法に関するものである。当該方法は、出力光信号を1つ以上の光センサから受信することを含む。各光センサは、運搬用構造物により規定される経路に沿った位置に配置され、運搬用構造物は、輸送機器が運搬用構造物に沿って移動するときに、移動可能な輸送機器を支持する。これらの光センサは、運搬用構造物及び移動可能な輸送機器の一方又は両方に機械的に接続される。各出力光信号は、運搬用構造物及び輸送機器の一方又は両方の振動放射音に応じて出射される。出力光信号は、電気信号に変換される。電気信号のデータ取得を運搬用構造物に沿った輸送機器の移動に同期させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本明細書において説明される実施形態による輸送システムを監視するために使用することができる光システムの概略ブロック図を示している。
【
図2A】
図2Aは、幾つかの実施形態による輸送機器の移動を、センサから電気信号を収集する時刻に同期させる様子を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、幾つかの実施形態による複数のセンサモジュールを含む監視システムを示す概略図である。
【
図2C】
図2Cは、幾つかの実施形態によるデータ取得をセンサ信号の飛行時間に同期させる様子を示している。
【
図3A】
図3Aは、幾つかの実施形態によるセンサモジュールからのデータ収集を輸送機器の移動に同期させる様子を記述したフロー図である。
【
図3B】
図3Bは、幾つかの実施形態によるセンサからのデータ収集をセンサ信号の飛行時間情報を使用して同期させる様子を記述したフロー図である。
【
図3C】
図3Cは、幾つかの実施形態による輸送システムの状態を検出するために使用されるプロセスを記述したフロー図である。
【
図4】
図4は、複数のセンサに関する波長分割多重化を、検出用に設計されるアレイ導波路回折格子(AWG)を使用して行なう様子を示している。
【
図5A】
図5Aは、ファイバブラッグ回折格子(FBG)センサの反射スペクトルを示している。
【
図5B】
図5Bは、光ファイバケーブル上に配置されるセンサFBG1、FBG2、...FBGNを示している。
【
図5C】
図5Cは、幾つかの実施形態による励起光パルスのタイミング、及び
図5Bのセンサに関する検出期間を示すタイミング図である。
【
図6】
図6は、シングルモードファイバケーブル上に設置されるFBGセンサの波長スペクトルの理想的なシフトを示している。
【
図7】
図7は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、及び検出器ユニットを更に詳細に示している。
【
図8】
図8は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、及び検出器ユニットを更に詳細に示している。
【
図9】
図9は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、及び検出器ユニットを更に詳細に示している。
【
図10A】
図10Aは、幾つかの実施形態によるAWGの一部を示し、意図的にクロストークを出力導波路信号に発生させる方法を示している。
【
図10B】
図10Bは、幾つかの実施形態によるAWGの一部を示し、意図的にクロストークを出力導波路信号に発生させる方法を示している。
【
図11】
図11は、光源の数を減らしてコヒーレント光源アレイからの光の角度分布を広げる様子を示すグラフである。
【
図12】
図12は、幾つかの実施形態による時分割多重化を行なうM個の光スイッチからなる光スイッチバンク、及び波長分割多重化を行なうAWGを実装した監視システムのブロック図を示している。
【
図13】
図13は、センサ出力光をモジュールレベルで合波する構成を示している。
【
図14】
図14は、幾つかの実施形態による時分割多重化及び波長分割多重化を使用する監視システムを示している。
【
図15】
図15は、時分割多重化に使用することができる階層スイッチ部を示すブロック図である。
【
図16A】
図16Aは、砂利層を持つ軌道の上を走っているG-scale(Gゲージ)列車の写真を示している。
【
図16B】
図16Bは、軌道から2インチ(5.08cm)のスタンドオフ距離に位置するファイバブラッグ回折格子(FBG)センサの場所を示す写真である。
【
図16C】
図16Cは、制御型損傷検出試験の場合のヤスリを使用して生じさせた下側の軌道の摩耗損傷を示す写真である。
【
図17A】
図17Aは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【
図17B】
図17Bは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【
図17C】
図17Cは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【
図17D】
図17Dは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【
図17E】
図17Eは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【
図17F】
図17Fは、監視システムから取得される振動放射音を表わす電気信号を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
これらの図は、必ずしも寸法通りにはなっていない。同様の参照番号は、同様の構成要素を指すためにこれらの図に使用されている。しかしながら、所定の図の構成要素を指すための数字の使用は、同じ数字が付された別の図の構成要素を限定するものではないことを理解できるであろう。
【0007】
本開示において説明される実施形態では、輸送システムを光学的に監視する。本明細書において説明される手法は、移動可能な輸送機器を含む輸送システムに適用することができ、移動可能な輸送機器は、輸送機器が運搬用構造物に沿って移動するときに運搬用構造物により支持される。運搬用構造物の例として、鉄道、自動車用橋梁及び車道、路面電車線路、及び/又はコンベヤを挙げることができる。輸送機器の例として、鉄道車両、自動車、路面電車、及び/又はコンベヤにより移動することができるコンテナ又はパッケージを挙げることができる。光学的監視を行なって、輸送システムの様々な状態、例えば運搬用構造物及び/又は輸送機器の劣化、障害、及び/又は負荷状態を検出することができる。
【0008】
本明細書において説明される手法は、様々な種類の輸送システムに使用することができ、鉄道用途に特に有用である。破損レール及び鉄道車両の破損した車輪は、脱線事故の原因となり、雨の破損が、毎年、米国の鉄道事故の3分の1を占めている。過去50年間、車軸に掛かる負荷が大きくなり、北米鉄道業界の鉄道交通量が多くなり、鉄道速度が速くなって、車輪/レールの接触状態を益々苛酷にしている。過酷な環境が、摩耗及び転動接触疲労を大きくし、レール寿命を短くし、メンテナンスコストを増大させている。摩耗レールにより、燃料消費量が非常に大きくなり、制動距離が非常に長くなり、横力が非常に大きくなり、騒音が非常に大きくなり、及び/又は車輪の磨耗量が非常に大きくなる。転動接触疲労を早期に確実に検出することにより、積極的なメンテナンスが可能になり、毎年発生する多くの鉄道事故を防止することができる。
【0009】
本明細書において開示される手法により、輸送システムの性能を、光センサにより収集される高解像度データを使用して包括的にリアルタイムで監視することにより、輸送システムの特定の劣化、及び疲労の程度を検出して定量化することができる。これらの手法により更に、輸送機器の速度、重量、及び/又は負荷分布のような輸送システムに関する他の情報を収集することができる。様々なシナリオでは、運搬用構造物、及び運搬用構造物により支持される輸送機器の一方又は両方の特性を特定することができる、及び/又は定量化することができる。
【0010】
運搬用構造物の従来のメンテナンスは通常、車両の非破壊検査を現地で行なって、及び/又は人が非破壊検査を現地で行なって、当該構造物の内部欠陥を検出する必要がある。このような検査には、超音波検査、渦電流検査、磁性粒子試験、放射線検査などが含まれる。本明細書において説明される実施形態は、効果的な遠隔鉄道監視を、許容できる程度の解像度及びコストで行なうことができる。
【0011】
本開示の監視システムは、光ファイバセンサ群を備え、これらの光ファイバセンサは、輸送システムに機械的に接続される。これらの光ファイバセンサは、運搬用構造物及び/又は輸送機器の振動放射音を、輸送機器が運搬用構造物の上を移動しているときに検出するように構成される。振動放射音は、音響放射音、長手方向/幅方向応力、及び/又は他の種類の振動信号を含むことができる。センサにより収集される高解像度振動データをパターン照合アルゴリズムが使用して、特定の劣化、故障、負荷レベル、負荷状態、及び/又は運搬用構造物及び/又は輸送機器に関する他の情報を特定することができる。例えば、監視システムにより収集される振動放射音データのパターンは、鉄道レールの破損又は劣化、車輪フラット、軸受の過熱、台車の歪みのような鉄道車両の不具合、及び/又は鉄道車両の乱調振動を示唆することができる。振動放射音データのパターンは、橋梁上の自動車の分布、又は輸送機器が搬送するパッケージの重量を示唆することができる。振動放射音データのパターンを使用して、輸送機器の負荷、速度、及び車軸数のような運送状の情報を確認することができる。上に提示した例は、例示であり、振動データが輸送システムに関する更に別の情報を含む可能性があるので、包括的ではない。
【0012】
本明細書において説明される監視手法により、様々な種類の輸送システムの遠隔監視が可能になり、これにより、従来の現地検査に伴うコストを低減させて、運行停止時間を短くすることができる。監視手法により、輸送システムの予知保全を強化することができる。運搬用構造物の故障及び/又は劣化を特定することにより、脱線、橋梁の不具合、事故、運行停止時間、及び他の大惨事を低減することができる。
【0013】
本明細書において説明される実施形態は、運搬用構造物に近接して配置され、かつ運搬用構造物に沿って離間配置される複数の光センサを含む。これらの光センサは、運搬用構造物に機械的に接続される、及び/又は運搬用構造物に沿って移動している輸送機器に機械的に接続される。幾つかの実施形態では、これらの光センサは、輸送機器がセンサの近傍の構造物に沿って移動しているときの運搬用構造物及び/又は輸送機器の振動放射音に対する感度が高い。これらの光センサは、任意の種類の(複数種類の)光センサを含むことができ、当該種類の光センサは、ファイバブラッグ回折格子(FBG)センサ、及び/又はエタロンセンサ又はファブリ-ペロー(FP)センサを含む。FBGセンサ、及びエタロンセンサ/FPセンサは共に、本明細書では、光センサと総称される。以下に提示する例は、FBGセンサを利用しているが、他の種類の光センサを別の構成として、又は更に、これらの実施形態、及び他の実施形態において使用することができることを理解できるであろう。
【0014】
本明細書において説明される実施形態によれば、監視システムは、光センサの出力を監視して、センサの光信号を電気信号に変換する高解像度波長シフト検出器を含むことができる。運搬用構造物及び/又は輸送機器から放出される振動放射音を表わす電気信号は、以下に更に詳細に説明されるように、波長シフト検出器を使用して高解像度で記録することができる、例えば取得して格納することができる。
【0015】
振動放射音を分散配置検出システムで監視することに関連する1つの関心事は、数百個のセンサに必要な高いサンプリングレートに起因して、大量のデータが短時間のうちに生成されてしまうことである。この問題を改善するために、本明細書において説明される実施形態は、データの取得先のセンサを制御するように構成されるデータ取得(DA)コントローラを含むことができる。DAコントローラは、データの収集先のセンサ群の数を、輸送機器が運搬用構造物に沿って移動しているときの輸送機器から所定の距離内に位置するセンサの数に制限することができる。データの取得先のセンサ群の選択は、通過中の輸送機器の存在、及び通過中の輸送機器の速度を検出することにより行なわれる。
【0016】
図1は、幾つかの実施形態による監視システム100のブロック図である。システム100は、1つ以上の光導波路102の上に、例えば光ファイバケーブルの上に、互いに離間配置される複数の光センサ110、例えばS1、S2、…、SNを含む。各光センサ110は、輸送機器が運搬用構造物に沿って移動しているときに移動可能な輸送機器を支持する運搬用構造物により規定される経路に沿った場所に配置される。(運搬用構造物及び輸送機器は
図1には図示されていない。)各光センサ110は、輸送機器が光センサ110の近傍を移動しているときの運搬用構造物及び移動可能な輸送機器の一方、又は両方に機械的に接続される。
【0017】
励起光源120は、励起光を光センサ110に供給する。光センサS1、S2、…、SNはそれぞれ、固有波長(又は、波長帯域)λ1、λ2、...、λNの光を反射するように構成される。励起光源は、センサの波長帯域を含む励起光を供給する。輸送機器がセンサ110の近傍を通過すると、輸送機器が運搬用構造物の上を移動することにより生じる振動放射音により、センサ110により反射される光の波長が固有波長からシフトするようになる。
【0018】
光センサ110により反射される異なる波長範囲の出力光は、光分波器130により分波される(逆多重化される)。光分波器130は、光導波路102上を伝送される光センサS1、S2、…、SNからの光を、当該光の波長に応じて空間的に分散させる。様々な実施態様では、光分波器130は、例えば透過波長可変構造及び/又はアレイ導波路回折格子を備えることができる。
【0019】
光センサ110からの分波光を検出器ユニット140に当て、検出器ユニット140がセンサから出射される分波光を電気信号に変換する。電気信号は、輸送システムの特性に関する情報を含む。輸送システム特性は、プロセッサ170により抽出することができ、プロセッサ170が、信号パターンを、特定の特性に関連する既知のパターンと照合する。例えば、プロセッサ170に書き込みを行なって、運搬用構造物の破損を、センサ110から取得される電気信号のパターンを、破損を示す信号の既知パターンと比較することにより特定することができる。
【0020】
センサS1、S2、…、SNの光波長帯域λ1、λ2、...、λNは、1つのセンサの波長帯域が、他のセンサ群の波長帯域と殆ど重なることがないように選択することができる。幾つかの実施形態では、光センサS1、S2、…、SNは、光センサS1、S2、…、SNの動作波長帯域を含む広い波長帯域にわたる励起光を供給する広帯域光源120に光結合される。光センサS1、S2、…、SNからの出力光は、センサ導波路光ファイバケーブル102上を伝送されて光分波器130の入力導波路131に到達する。光分波器130は、入力導波路131上を伝送されるセンサS1、S2、…、SNからの光を空間的に分散させる。様々な実施態様では、光分波器130は、例えば透過波長可変構造及び/又はアレイ導波路回折格子を備えることができる。
【0021】
光分波器130の出力は、複数の光検出器を含む検出器ユニット140に光結合される。各光検出器は、電気信号を、光検出器の感光面に入光する光が分波されると生成するように構成される。検出器ユニット140の光検出器により生成される電気信号が、運搬用構造物からの振動放射音を表わす。
【0022】
幾つかの実施態様では、検出器ユニット140は、少なくともN個の光検出器を含む。幾つかの実施態様では、検出器ユニット140は、少なくともN個の光検出器ペアを含む。これらの実施態様の各実施態様について以下に更に詳細に説明する。更に別の光検出器を使用して、入力光の強度を、例えば入力光を入力導波路131から取り出すことにより監視することができる。
【0023】
再び
図1を参照すると、光源110からの励起光は、光導波路102内を伝搬して光センサS1、S2、…、SNに到達する。入力光は、導波路102に沿って離間されるFBGセンサS1、S2、…、SNと相互作用する。各光センサは、入力光の一部を反射し、この反射光は、光センサからの出力光と表記される。全てのセンサからの出力光は、光導波路102内を伝搬して、光分波器130の入力導波路131に到達する。
【0024】
ファイバブラッグ回折格子センサは、屈折率を光ファイバケーブルのコアの有限長(通常、数mm)に沿って周期的に変化させることにより形成することができる。このパターンは、ブラッグ波長と呼ばれる波長を反射し、ブラッグ波長は、FBGセンサの屈折率分布の周期的構造により決定される。実際、センサは通常、ブラッグ波長を中心とする狭波長帯域を反射する。外部刺激の固有値又は基底値のブラッグ波長はλと表わされ、ピーク波長、中心波長、又は重心波長λ(及び、λ近傍の狭波長帯域)を有する光は、当該光が、運搬用構造物からの低振動放射音又は無振動放射音に対応する所定の基底状態にある場合にセンサにより反射される。センサが運搬用構造物からの振動放射音を受けると、振動放射音により格子の周期的構造及びFBGセンサの屈折率が変化することにより、反射光が変化して、反射光が、基底波長λとは異なるピーク波長、中心波長、又は重心波長λSを有するようになる。結果的に生じる波長シフトΔλ/λ=(λ-λs)/λが振動放射音の測定結果である。FBGを利用した検出により、複数のセンサ、例えば約64個のセンサを1個の導波路102に組み込むことができる。幾つかの手法では、センサS1、S2、…、SNの各センサは、波長領域多重化及び逆多重化により個々に調査することができる。幾つかの手法では、複数のセンサモジュール内に配置されるセンサは、時間領域多重化と波長領域多重化及び逆多重化を組み合わせることにより個々に調査することができる。
【0025】
輸送監視システム100は、データ取得ユニット150により収集される振動放射音データを制御するように構成されるデータ取得コントローラ160を含む。幾つかの実施形態では、データ取得コントローラ160は、励起光源120を制御して、事前に選択されたセンサ集合体のみが、励起光を特定の時間窓で、輸送機器が、選択されたセンサの近傍を移動しているときに受光するようにする。幾つかの実施形態では、励起光源は、多くのセンサ又は全てのセンサを励起する光を放出するが、データ取得コントローラ160は、移動している輸送機器から遠く離れた他のセンサからの電気信号を無視しながら、移動している輸送機器の近傍に位置するセンサからの電気信号のみを選択的に記録する。これらの方法のいずれかの方法により、データ取得コントローラ160は、特定の光センサに関連する振動放射音データの収集を時間窓に制限し、この時間窓では、輸送機器は、光センサの場所から所定の距離内に位置している。このようにして、データ取得コントローラは、振動放射音データの収集を、運搬用構造物に沿った輸送機器の移動に同期させる。移動している輸送機器の近傍の関連センサだけに限定し、輸送機器から遠く離れたセンサからの関連データを収集しないように収集データの量を制限することにより、リソースの割り当てをより良好に行なって、高解像度高頻度センサデータの収集を容易にすることができる。
【0026】
図2Aは、運搬用構造物281と、構造物281に沿って移動し、かつ3つの異なる場所に位置している様子が図示される輸送機器282と、を含む輸送システム280を示している。センサ261~278は、運搬用構造物281に沿って離間している場所に配置される。
図2Aは、輸送機器が運搬用構造物281に沿って移動するときの第1位置の場所1、第2位置の場所2、第3位置の場所3に位置する輸送機器282を示している。輸送機器282が場所1に位置している場合、センサ263、264、265が輸送機器282の所定距離d内に位置し、監視システムは、データをセンサ263、264、265から収集し、データをセンサ261、262、266~278からは収集しない。輸送機器282が場所2に位置している場合、センサ269、270が輸送機器282の所定距離d内に位置し、監視システムは、データをセンサ269、270から収集し、データをセンサ261~267、271~278からは収集しない。システムはデータを、境界線に位置するセンサ268から収集することができる、又は収集しなくてもよい。輸送機器282が場所3に位置している場合、センサ274、275が輸送機器282の所定距離d内に位置し、監視システムは、データをセンサ274、275から収集し、データをセンサ261~273、276~278からは収集しない。
【0027】
図2Bは、幾つかの実施形態による監視システム200を示す概念図である。
図2Bに示すように、センサ110は、3つのセンサモジュール210a、210b、210c内に配置される。センサモジュール210a、210b、210cは、励起光源120及び光分波器130に並列接続される。各センサモジュール210a、210b、210cは、光導波路202a、202b、202cに沿って直列に配置される複数のセンサ110を含む。センサ群110は、運搬用構造物299に沿って離間される。輸送機器(
図2Aには図示されず)が運搬用構造物299に沿って移動すると、データ取得コントローラ160は、1つのセンサアレイからのデータ収集を別のセンサアレイからのデータ収集に移行させる、及び/又はあるセンサアレイ内の1つのセンサグループからのデータ収集を同じセンサアレイ内の別のセンサグループからのデータ収集に移行させる。
【0028】
例えば、輸送機器が矢印298で示す方向に移動している場合、データ取得コントローラ160は、センサモジュール210aからのデータ収集をセンサモジュール210bからのデータ収集に、センサモジュール210cからのデータ収集に、輸送機器の移動に合わせて移行させる。輸送機器が矢印297で示す方向に移動している場合、データ取得コントローラ160は、センサモジュール210cからのデータ収集をセンサモジュール210bからのデータ収集に、センサモジュール210aからのデータ収集に移行させる。
【0029】
幾つかの実施形態では、データ取得コントローラ160は、輸送機器の位置及び速度を、センサモジュール内の第1センサ集合体、例えばセンサ110a及び110bのような少なくとも2つのセンサに基づいて判断する。列車又は他の輸送機器がFBGセンサ110aの上を通過すると、センサ110aにより検出される振動放射音により、センサ110aの反射波長が閾値だけシフトする。閾値が、2つの物理的に分離されたFBG(ファイバブラッグ回折格子)110a、110bと一致する場合、輸送機器の速度及び方向を判断することができる。輸送機器の速度及び方向に基づいて、データ取得コントローラ160は、能動的に監視されることになる複数のFBG(ファイバブラッグ回折格子)のうち第2FBG集合体を決定する。能動的に監視されるFBG集合体の電気信号は、データ取得ユニット150により記録される。データ取得コントローラ160は、輸送機器の速度及び/又は位置の調整を、更に別のセンサからの情報に基づいて行なうことができる。幾つかの実施形態では、同じセンサを使用して、輸送機器の速度及び位置を検出することができ、運搬用構造物の動作状態を監視することができ、例えば正常動作状態又は異常動作状態について監視することができる。運搬用構造物の異常動作状態として、破損、劣化、異常負荷などを挙げることができる。例えば、運搬用構造物の正常動作状態として、正常な負荷レベル、正常な負荷分布、ジョイント近傍の隙間間隔、鉄道軌道/路面電車軌道拘束の拘束力、湿度/温度の高さなどを挙げることができる。運搬用構造物の異常動作状態として、亀裂、破損、異常レベル又は過負荷レベル、異常負荷分布、転動疲労、腐食、摩滅、摩耗、構造座屈、及び他の障害を挙げることができる。移動可能な輸送機器構造物の正常動作状態として、正常な負荷レベル、正常な負荷分布、速度、乗車料金通知に際して乗務員に掛かる負荷レベル、車軸数/鉄道車両数、列車長などを挙げることができる。輸送機器の異常動作状態として、亀裂、破損、異常負荷レベル、異常負荷分布、転動疲労、腐食、摩滅、摩耗、構造座屈、及び他の障害を挙げることができる。幾つかの実施形態では、センサモジュールは、速度及び位置を判断するための専用の第1センサ集合体と、輸送システムの動作状態を監視するための専用の第2センサ集合体と、を含む。
【0030】
幾つかの実施形態では、センサにより反射される光の飛行時間を使用して、光センサからのデータ取得を制御して、データ収集を輸送機器の移動に同期させることができる。
図2Cは、センサ211a~225aを含むセンサアレイ210aを示しており、センサ211a~215aは第1グループにグループ化され、センサ216a~220aは第2グループにグループ化され、センサ221a~225aは第3グループにグループ化される。第1センサグループと検出器ユニットとの間の距離は、第2及び第3センサグループと検出器ユニットとの間の距離よりも短いので、光が第1センサ群により反射されて検出器ユニットに到達するのに要する時間は、光が第2及び第3センサグループにより反射されて検出器ユニットに到達するのに要する時間よりも短い。
【0031】
第1センサグループ211a~215aによる反射光は、光分波器130に期間t1中に到達し、第2センサグループ216a~220aによる反射光は、光分波器130に期間t2>t1中に到達し、第3センサグループ221a~225aによる反射光は、光分波器130に期間t3>t2>t1中に到達する。1つのセンサグループの各センサは、同じグループの他のセンサとは異なる固有波長を有することができる。幾つかの実施形態では、センサ211a、216a、及び221aは全て、固有波長λ1を有し、センサ212a、217a、及び222aは全て、固有波長λ2≠λ1を有し、センサ213a、218a、及び223aは全て、固有波長λ3≠λ2≠λ1を有し、センサ214a、219a、及び224aは全て、λ4≠λ3≠λ2≠λ1を有し、センサ215a、220a、及び225aは全て、波長帯域λ5≠λ4≠λ3≠λ2≠λ1の光を反射する。従って、データ取得コントローラ160は、データ収集を輸送機器の移動に、光センサにより反射される光の波長帯域に従った波長分割逆多重化、及び光センサ信号の飛行時間に従った時分割逆多重化の両方を使用して同期させることができる。検出器ユニット140により生成される電気信号データを収集した後、監視システムプロセッサ170は、運搬用構造物の状態を、データ取得ユニットにより収集される電気信号のパターンを既知のパターンと照合することにより判断する。
【0032】
図3Aは、例えば
図2Bに示すマルチモジュールセンサアレイを含む実施形態によるセンサデータを収集する方法を示すフロー図である。空間的に離れた2つのセンサからの閾値以上の絶対値を有する信号をDAコントローラにより検出する305、315ことにより、データ収集が開始される。第2光センサが、閾値に等しい、又は閾値を上回る信号絶対値を記録した315後、データ取得コントローラは、輸送機器の速度及び方向を決定する325。輸送機器の運動速度及び運動方向に基づいて、データ取得コントローラは、輸送機器がセンサモジュールの上を通過することになる次のセンサモジュールを判断する。データ取得コントローラは、信号を励起光源に送信して、光源が励起光パルスを、データ取得コントローラが選択したセンサモジュールに向かって放出するようにする335。当該モジュールの光センサにより励起光に応じて反射される光信号は、光分波される345。選択したモジュールのセンサからの電気信号データは、輸送機器の移動に合わせて取得される355。各センサの電気信号は、輸送機器がセンサから所定の距離内に位置している期間中に取得される。
【0033】
図3Bは、飛行時間情報を使用して
図2Cに示す監視システムにより収集される電気信号を選択する実施形態によるセンサデータを収集する方法を示すフロー図である。空間的に離れた2つのセンサからの閾値以上の絶対値を有する信号をデータ取得コントローラにより検出する310、320ことにより、データ収集が開始される。第2光センサが、閾値に等しい、又は閾値を上回る信号絶対値を記録した320後、データ取得コントローラは、輸送機器の速度及び方向を判断する330。広帯域励起光パルスをアレイのセンサ群に供給し340、これらのセンサが光を、励起光パルスに応答して反射する。反射光を光分波し350、分波後の光信号を電気信号に検出器ユニットにより変換する360。
【0034】
データ取得コントローラは、電気信号を処理して、センサからの光信号の飛行時間を決定する370。光信号の飛行時間を使用して、センサの場所を決定する380ことにより、データ取得コントローラは、センサからの電気信号の収集を輸送機器の移動に同期させることができる。データ取得コントローラは、データ収集先のセンサが、移動している輸送機器から所定の距離内に位置するようにデータをセンサから移動時間窓で収集する390。
【0035】
図3Cのフロー図は、センサから収集される取得電気信号を分析して輸送システムの状態を判断するプロセッサ(
図1の170参照)の動作を示している。まず、プロセッサは、取得電気信号及び/又は取得電気信号の特徴点を、信号/特徴点テンプレートと比較し301、信号/特徴点テンプレートは、1つ以上の代表的な信号セグメント及び/又は1つ以上の信号特徴点、例えば正常パラメータ内に収まる状態、例えば無劣化、又は無故障、予測速度、負荷、及び負荷分布を特徴付ける振動数成分、振動波数、又は振動ピーク、信号振幅などを含む。幾つかの実施形態では、システムは、取得電気信号を複数の正常信号/特徴点テンプレートと比較することができ、各正常信号/特徴点テンプレートは、輸送システムの異なる正常状態を特徴付ける。取得電気信号が、正常信号/特徴点テンプレートのいずれかに一致する303場合、監視システムは輸送システムを、更に別の電気信号を光センサから取得することにより監視し続ける311。
【0036】
しかしながら、取得電気信号が、正常信号/特徴点テンプレートに一致しない303場合、プロセッサは、更に別のステップを実施して、輸送システムの状態を判断する。プロセッサは、1つ以上の代表的な信号セグメント及び/又は1つ以上の信号特徴点、例えば振動数成分、振動波数、又は振動ピーク、信号振幅などを含む格納正常信号/特徴点テンプレートライブラリを含む。これらの信号/特徴点テンプレートのうち少なくとも幾つかの信号/特徴点テンプレートは、輸送システムの異常状態、例えば運搬用構造物の破損、運搬用構造物及び/又は輸送機器の1種類以上の劣化を特徴付けることができる。これらの信号/特徴点テンプレートのうち少なくとも幾つかの信号/特徴点テンプレートは、輸送システムの他の状態、例えば輸送機器の負荷及び/又は負荷分布などを特徴付けることができる。信号/特徴点テンプレートは、実験により取得することができる、いくつかのシステムモデル又はシステム表現から生成することができる、もしくは本明細書に記載される監視システムにより取得することができる。
【0037】
プロセッサは、第1信号/特徴点テンプレートをテンプレートライブラリから選択し321、選択したテンプレートを取得電気信号と比較する。選択した信号テンプレートが取得電気信号に一致する321場合、プロセッサは、輸送システムの作業員に通知する措置323を採る。選択した信号テンプレートが取得電気信号に一致しない321場合、プロセッサは、チェック331を行なって、比較すべき更に多くのテンプレートがあるかどうかを判断する。プロセッサは、ライブラリのテンプレートを、比較すべきテンプレートが無くなるまで331比較し続ける。取得電気信号が、ライブラリのテンプレート群のいずれのテンプレートにも一致しない場合、プロセッサは、取得したテンプレートを、輸送システムの未知の状態を表わす新規テンプレートとして格納する341ことができる。プロセッサに書き込みを行なって作業員に、新規テンプレートを取得して作業員が輸送システムを点検して輸送システムの状態を特定することができることを通知する343ことができる。作業員は、あるラベルを入力して、プロセッサが当該ラベルを新規テンプレートに関連付けることができるようにする。ラベル及び新規テンプレートは、テンプレートライブラリに格納され、引き続き使用されることにより、作業員が割り当てたラベルにより特定される状態を検出することができる。
【0038】
本明細書において開示される実施形態は、
図4に示すように、センサを複数設ける場合に、波長分割多重化及び波長分割逆多重化を行なうことができる。
図4の例では、複数の多重化光信号が導波路402により伝送される。これらの多重化信号は、光分波器430により光分波され、光分波器430は、この例では、検出用に設計されるアレイ導波路回折格子(arrayed waveguide grating:AWG)である。
図4は、幾つかの実施形態による輸送監視システムの光学素子の動作を示している。(簡単のため、データ取得コントローラ及びプロセッサは図示されていないことに留意されたい)。
図4は、複数のFBGセンサFBG1、FBG2、...FBGNを示しており、これらのセンサは、前に説明したように、運搬用構造物に沿って、互いに離間して配置することができる。FBG1は、ピーク波長、中心波長、又は重心波長λ
1を有する波長帯域で動作し、FBG2は、ピーク波長、中心波長、又は重心波長λ
2を有する波長帯域で動作し、FBGNは、中心波長λ
Nを有する波長帯域で動作する。運搬用構造物及び/又は輸送機器からの振動放射音であって、輸送機器が運搬用構造物に沿って走行しているときに発生する振動放射音により、センサFBG1、FBG2、...FBGNにより反射される光の波長がシフトする。振動放射音に応じた波長シフトは、個々のFBGの固有基底波長間の間隔と比べて小さい。従って、情報を異なるFBGから、アレイ導波路回折格子、リニア可変フィルタ、及び/又は他の分散素子のような分散素子を光波長分割逆多重化方式において使用して分離することができる。本明細書において以下に更に詳細に説明されるように、幾つかの実施形態では、光時分割多重化方式は、任意に実行することができ、波長分割逆多重化方式と併せて使用することができる。
【0039】
光源420は、励起光をFBGに光サーキュレータ415を介して供給するように構成される。光源420は、励起光をFBGセンサの各FBGセンサに対応して、センサ群の全てについて予測される反射波長範囲にわたって供給するために十分広い帯域を有する。AWG430は、N個の出力導波路ペア445を含むことができ、各出力導波路ペア445は、特定のFBGによる反射波長の近傍の波長を中心とする。光源420からの励起光は、サーキュレータ415内を伝搬して、FBGにより出力光として反射される。FBGからの出力光は、センサ光導波路402によりサーキュレータ415内を伝送されてAWG430の入力導波路441に到達する。AWG430は、この実施形態では、波長ドメイン光分波器として使用される。光分波器として使用される場合、AWG入力導波路441からの光は、光の波長によって異なるが、回折により分散されて出力導波路445に到達する。例えば、AWGは、1550nmの中心波長を有することができ、100GHzのチャネル間隔(当該波長では0.8nm)を有する16個の出力チャネルを有することができる。このシナリオでは、1549.6nmの波長の入力光は、チャネル8に入射することになり、1550.4nmの波長の入力光は、チャネル9に入射することになるなどである。
【0040】
幾つかの構成では、AWGは、入力導波路441と、第1スラブ導波路442と、アレイ導波路443と、第2スラブ導波路444と、出力導波路445と、を含む。これらのアレイ導波路443の各アレイ導波路は、隣のアレイ導波路よりも徐々に長くなる。入力導波路441からの光は、第1スラブ導波路442内で分岐されて、これらのアレイ導波路443内を分かれて伝搬する。各アレイ導波路443の出力では、当該光により、波長によって異なる位相シフトが生じ、この位相シフトも1つの波長から隣の波長になるにつれて徐々に大きくなる。アレイ導波路443の出力は、コヒーレント光源アレイに類似している。従って、アレイ導波路443から放出されて第2スラブ導波路444に入射する光の伝搬方向は、回折格子におけるように、光源間の位相シフト増分、従って波長増分によって異なる。
【0041】
幾つかの実施形態では、AWG(又は、他の光分波器)及び検出器ユニット440は、平面光波回路として、すなわち集積光デバイスとして構成することができる。例えば、これらのシステム構成要素は、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハから、光線リソグラフィ技術及び/又は電子線リソグラフィ技術を使用して形成することができる。平面光波回路は、シリコンを異方性エッチングして形成されるV溝を使用して位置合わせされる光ファイバに接続することができる。他の半導体、例えばゲルマニウムとのハイブリッド集積が可能であり、光検出をシリコンのバンドギャップよりも狭いエネルギーで行なうことができる。
【0042】
AWG430では、アレイ導波路443の出力(及び、従ってスラブ導波路444の入力側)は、所定の曲率半径を有する円弧に沿って並んでいるので、これらのアレイ導波路443からの光は、第2スラブ導波路444内を伝搬して、ある有限距離だけ離れた焦点に集光する。出力導波路445の入力は、予定通り、特定の波長に対応する焦点に配置されるが、これらの入力は、後で説明するように、焦点の前方又は後方のいずれかに設定されて、「クロストーク」を出力導波路間に意図的に発生させるようにしてもよい。従って、AWG430の入力441の光は、当該光の波長によって異なるが、出力導波路群445のうちの所定の1つの出力導波路に受動的に経路伝搬する。従って、センサFBG1、FBG2、FBGNからの出力光は、当該反射出力光の波長によって異なるが、出力導波路群445に経路伝搬する。
【0043】
これらの出力導波路445は、光検出器、例えば2N個の光検出器を含む検出器ユニット440に光結合される。AWG内で空間的な波長分散が行なわれることにより、センサFBG1、FBG2、…、FBGNからの出力光は、検出器ユニット440の表面全体にわたって空間的に分散される。光検出器は、出力導波路からの光を検出し、輸送システムの振動放射音に関する情報を含む電気信号を生成する。
【0044】
例えば、導波路401により伝送される複数の光信号は合波信号である。これらの合波信号は、光分波器430により光分波される。
【0045】
図5Aは、センサ出力を光合波する監視システムの動作を示している。
図5Aに示すように、広帯域光が光源520から放出され、光源520は、例えば発光ダイオード(LED)又は超発光形レーザダイオード(SLD)を備えることができる、もしくは発光ダイオード(LED)又は超発光形レーザダイオード(SLD)とすることができる。広帯域光のスペクトル特性(強度と波長の関係)が挿入グラフ591で示される。光は、光ファイバケーブル511内を透過して第1FBGセンサ521に到達する。第1FBGセンサ521は、ピーク波長、中心波長、又は重心波長λ
1を有する第1波長帯域光の一部を反射する。第1波長帯域内の波長以外の波長を有する光は、第1FBGセンサ521内を透過して第2FBGセンサ522に到達する。透過して第2FBGセンサ522に到達する光のスペクトル特性は、挿入グラフ592で示され、切り欠きを、λ
1を中心とする第1波長帯域に有し、この波長帯域の光が、第1センサ521により反射されることを示している。
【0046】
第2FBGセンサ522は、中心波長、又はピーク波長λ2を有する第2波長帯域の光の一部を反射する。第2FBGセンサ522により反射されない光は、第2FBGセンサ522内を透過して第3FBGセンサ523に到達する。透過して第3FBGセンサ523に到達する光のスペクトル特性は、挿入グラフ593で示され、λ1及びλ2を中心とする切り欠きを含んでいる。
【0047】
第3FBGセンサ523は、中心波長又はピーク波長λ3を有する第3波長帯域の光の一部を反射する。第3FBGセンサ523により反射されない光は、第3FBGセンサ523内を透過する。第3FBGセンサ523内を透過する光のスペクトル特性は、挿入グラフ594で示され、λ1、λ2、及びλ3を中心とする切り欠きを含んでいる。
【0048】
中心波長λ1、λ2、及びλ3を有する波長帯域581、582、583の光(挿入グラフ595で示される)は、第1、第2、又は第3FBGセンサ521、522、523、それぞれにより、光ファイバケーブル511及び511’に沿って反射されて光波長分波器に到達する。波長分波器から、センサ光が経路伝搬して検出器ユニットに到達し、検出器ユニットが光信号を前に説明した通りに電気信号に変換する。
【0049】
幾つかの場合では、センサによる反射光は、時分割多重化することができる。時分割多重化は、波長分割多重化の代わりに、又は波長分割多重化の他に使用することができる。1つのシナリオでは、広帯域励起光を放出するのではなく、光源をデータ取得コントローラにより制御して、波長範囲全体にわたって光走査を行なうことにより、複数の狭波長帯域の光パルスを放出することができ、各狭波長帯域は、センサ群のうちの1つのセンサの動作波長帯域に対応する。センサによる反射光は、狭波長帯域の光パルスの放出時間に合わせた複数の検出期間中に検出される。
【0050】
例えば、
図5Bに示すセンサ、及び
図5Cのタイミング図について考察する。
図5Bは、光ファイバケーブル上に配置されるセンサFBG1、FBG2、...FBGNを示している。FBG1は、中心波長λ
1を有する波長帯域で動作し、FBG2は、中心波長λ
2を有する波長帯域で動作し、FBGNは、中心波長λ
Nを有する波長帯域で動作する。
【0051】
図5Cのタイミング図は、励起光パルスのタイミング、及びセンサの検出期間を示している。光源は、データ取得コントローラにより制御して、波長λ
1を有する励起光パルスを期間T1中に放出することができる。データ取得コントローラは、検出器ユニットを制御して反射光を、期間T1と重なる期間T1a中に検出する。期間T1aの後、光源は、波長λ
2を有する励起光を期間T2中に放出し、反射光を、期間T2と重なる期間T2a中に検出する。期間T2aの後、光源は、波長λ
Nを有する光を期間TN中に放出し、反射光を、期間TNと重なる期間TNa中に検出する。この方式の光時間分割多重化を使用して、センサFBG1、FBG2、...FBGNの各センサを離散期間中に調査することができる。
【0052】
輸送システム監視に使用される光ファイバケーブルは、シングルモード(SM)FOケーブルを備えることができる、又はマルチモード(MM)FOケーブルを備えることができる。シングルモード光ファイバケーブルは、解読が容易な信号を供給して、広範な適用可能性を実現し、組立コストを下げるが、マルチモードファイバを使用してもよい。
【0053】
MMファイバは、SMファイバに通常使用されるシリカではなく、プラスチックにより作製することができる。MMファイバは、超発光形ダイオード(SLD)とのより高精度な位置合わせが必要とされるSMファイバとは異なり、安価な光源(例えば、LED)で動作することができる。従って、MMファイバの光センサを利用する検出システムは、より低コストのシステムを生み出すことができる。
【0054】
図6は、シングルモード光ファイバケーブルに設置されるFBGセンサにより反射される光の理想的な分布である。固有の基底状態又は既知の状態では、FBGセンサは、重心波長λを有する比較的狭い波長帯域610の光を反射する。FBGセンサに、輸送システムからの振動放射音を表わす歪みの変化が生じた後、センサにより反射される光は、重心波長λ
Sを有する異なる波長帯域620にシフトする。波長帯域620は、波長帯域610と比較すると、幅、振幅、及び又は他の形態的特徴の点で同様とすることができるが、波長帯域620の重心波長λ
Sが波長帯域610の重心波長λから、振動放射音により生じる歪みの変化に関連する量630だけシフトしている。同様の幅の波長帯域は、波長帯域が、例えば同様の半値全幅(FWHM)値を有するものとして特定することができる。
【0055】
図7、
図8、及び
図9は、波長シフト検出器ユニットの様々な構成を示しており、波長シフト検出器ユニットを使用して、運搬用構造物及び/又は輸送機器の振動放射音を検出することができる。これらの構成により、高解像度信号の取得が可能になり、高解像度信号を既知の信号/特徴点テンプレートとパターン照合することにより、輸送システムの動作状態を決定することができる。本明細書に開示される波長シフト検出器ユニットを使用することにより、約100fmと20fmとの間の解像度、又は70fmと30fmとの間の解像度、例えば50fm以下の解像度を有する機械的変位を表わす信号を取得することができ、これにより広範囲の正常動作状態及び異常動作状態を見分けることができる。
【0056】
図7は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、及び検出器ユニットを更に詳細に示している。この構成では、2N個の光検出器をそれぞれ接続して光をN個のセンサから受光する。AWGは、重心波長λ
1、λ
2、...λ
Nを有するセンサ出力光を空間的に分散させて、出力導波路ペア845a、b、846a、b、...847a、bに到達させる。重心波長λ
1を有するセンサ出力光を分散させて導波路845a、845bに到達させ;重心波長λ
2を有するセンサ出力光を分散させて導波路846a、846bに到達させ;重心波長λ
Nを有するセンサ出力光を分散させて導波路847a、847bに到達させるなどである。出力導波路845aからの光は、信号I
11を検出光に応じて生成する光検出器855aに光結合させ;出力導波路845bからの光は、信号I
12を検出光に応じて生成する光検出器855bに光結合させ;出力導波路846aからの光は、信号I
21を検出光に応じて生成する光検出器856aに光結合させ;出力導波路846bからの光は、信号I
22を検出光に応じて生成する光検出器856bに光結合させ;出力導波路847aからの光は、信号I
N1を検出光に応じて生成する光検出器857aに光結合させ;出力導波路847bからの光は、信号I
N2を検出光に応じて生成する光検出器857bに光結合させる。
【0057】
センサの出力光の重心波長が歪みに応じてシフトすると、AWGにより、センサの出力光の空間位置もシフトするようになる。例えば、
図7に示すように、最初に重心波長λ
1を有するセンサ出力光が重心波長λ
1+Δ
1にシフトする場合、出力導波路845aにより伝送される光量が減少し、出力導波路845bにより伝送される光量が増加する。従って、光検出器855aにより検出される光量は、光電流I
1及びI
2が対応して変化するにつれて減少し、光検出器855bにより検出される光量が増加する。従って、センサに生じる歪みが変化することにより、出力光の重心波長がλ
1からλ
1+Δ
1にシフトするようになり、これにより今度は、I
11とI
12の比が変化するようになる。
【0058】
各フォトダイオードの光電流は、抵抗又はトランスインピーダンスアンプで電圧に変換され、検出されてデジタル化される。波長シフトは、第iFBGについて以下の数式に従って計算することができる:
【0059】
【0060】
式中、λiは、第iFBGの推定波長であり、λi0は、出力導波路ペアの中心波長であり、Δλは、出力導波路ペアのピーク透過波長の間の波長間隔であり、光電流I2i及びI2i-1は、ペアの各導波路の出力の光検出器により記録される光強度を表わす。幾つかの実施形態では、これらのFBGは、Δλ/2に略等しいFWHMを有するので、FBGによる反射ピークがペアの一方の光検出器から他方の光検出器にシフトすると、ペアの差分信号に継続的かつ単調な変化が生じる(上の数式の分子)。幾つかの実施形態によれば、電圧信号V11、V12、V21、V22、VN1、VN2を記録して、既知の信号/特徴点テンプレートと比較することにより、輸送システムの状態を特定することができる。
【0061】
図8は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、及び検出器ユニットの別の構成を更に詳細に示している。この構成では、N個の光検出器をそれぞれ接続して光をN個のセンサから受光する。AWGは、重心波長λ
1、λ
2、...λ
Nを有するセンサ出力光を空間的に分散させて、出力導波路845、846、...847に到達させる。重心波長λ
1を有するセンサ出力光を分散させて導波路845に到達させ;重心波長λ
2を有するセンサ出力光を分散させて導波路846に到達させ;重心波長λ
Nを有するセンサ出力光を分散させて導波路847に到達させるなどである。出力導波路845からの光は、信号I
1を検出光に応じて生成する光検出器855に光結合させ;出力導波路846からの光は、信号I
2を検出光に応じて生成する光検出器856に光結合させ;出力導波路847からの光は、信号I
Nを検出光に応じて生成する光検出器857に光結合させる。
【0062】
センサの出力光の重心波長が検出パラメータに応じてシフトすると、AWGにより、センサの出力光の空間位置もシフトするようになる。例えば、
図8に示すように、最初に重心波長λ
1を有するセンサ出力光が重心波長λ
1+Δ
1にシフトする場合、出力導波路645により伝送される光量が増加する。従って、光検出器855により検出される光量は、光電流I
1が対応して変化するにつれて増加する。従って、運搬用構造物からの振動放射音により、センサ出力光の重心波長がλ
1からλ
1+Δ
1にシフトするようになり、これにより今度は、I
1が変化するようになる。幾つかの実施形態によれば、光電流I
1、I
2、I
Nを電圧信号V
1、V
2、V
Nに変換することができる。電圧信号V
1、V
2、V
Nを記録して既知の信号/特徴点テンプレートと比較することにより、輸送システムの状態を特定することができる。
【0063】
励起光源強度の変動により生じる光検出器電流の変化は、センサ出力光の波長シフトにより生じる光検出器電流の変化から、光源強度を電流IN+1を生成する更に別の光検出器899で測定することにより区別することができる。次に、波長シフトは、センサ1に関する比I1/IN+1、及びセンサ2に関する比I2/IN+1などに基づいて計算することができる。
【0064】
図9は、幾つかの実施形態による波長ドメイン光分波器として使用されるAWGの出力導波路、更に別の分散素子、及び検出器ユニットを更に詳細に示している。この例では、初期重心波長λ
1、λ
2、...λ
Nを有するセンサ1、2...Nからの出力光をそれぞれ、空間的に分散させてAWGの出力導波路945、946、...947に到達させる。出力導波路945、946、...947からの光は、リニア可変透過波長構造(LVTS)965、966、...967、又は他の空間分散光学素子に入射させる。
【0065】
任意であるが、LVTSは、拡散素子955、956...957を含み、これらの拡散素子は、出力導波路945、946...947からの光をLVTS965、966、...967の入射面全体にわたってコリメート化させる、及び/又は拡散させるように構成される。光の十分な拡散が出力導波路945、946...947により行なわれる構成では、拡散素子を使用しなくてもよい。LVTS965、966、...967は、プリズム又はリニア可変フィルタのような分散素子を含む。LVTS965、966、...967は、光を当該LVTSの入射面965a、966a、...967aで、導波路945、946、...947、及び(任意であるが)拡散素子955、956、...957から受光し、光を当該LVTSの出射面965b、966b、...967bから透過させて光検出器ペア975、976、...997に到達させる。LVTS965、966、...967の出射面965b、966b、...967bでは、当該光の波長は、当該出射面に沿った距離とともに変化する。従って、LVTS965、966、...967は、LVTS965、966、...967の入射面965a、966a、....967aに入射する光信号を、当該光の波長に応じて、更に細かく分波するように機能することができる。
【0066】
図9は、LVTS965から放出される光の2つの波長帯域を示しており、初期の発光帯域は、出射面965bに沿った基準位置(REF)から距離d
1の位置から放出される光の重心波長λ
1を有する。検出パラメータに応じて、初期波長帯域が、重心波長λ
1+Δ
1を有する波長帯域にシフトする。シフト後の波長帯域で光が、基準位置から距離d
Δ1の位置から放出される。
【0067】
光検出器ペア975は、LVTS965に対して位置決めされて、LVTS965内を透過する光が光検出器ペア975に入光するようにする。例えば、波長λ1を有する光は主として、光検出器975aに入光し、波長λ1+Δ1を有する光は主として、光検出器975bに入光する。光検出器975aは信号I11を、光が当該光検出器の感光面に入光すると生成し、光検出器975bは信号I12を、光が当該光検出器の感光面に入光すると生成する。光電流I11、I12は、前に説明したように、電圧信号に変換することができる。電圧信号は、記録して、既知の信号/特徴点テンプレートと比較することにより、輸送システムの状態を判断することができる。
【0068】
従来、AWGは、高速通信システムに使用されており、隣接チャネル間のクロストークを最小限に抑えるように設計される。これは、ビットエラーレートを非常に低く抑えて(約10-12)、ビットエラーレートが、光が1つのチャネルから隣のチャネルに漏れ込む場合に準最適となるようにする必要があるので、デジタル通信には重要である。本明細書に記載の実施形態は、検出用に設計されたAWGを伴う。これらのAWGにより、クロストークを隣接チャネル間に意図的に発生させる。
【0069】
幾つかの実施形態では、クロストークを発生させるAWGは、出力導波路ペアの隣接出力導波路間の中心間間隔が、出力導波路の位置の光スポットサイズよりも小さくなるように構成され、光スポットサイズは、当該スポットの強度の半値全幅(FWHM)である。
図10Aでは、AWGの出力カプラーが、出力導波路群の間隔が「正常な」電気通信動作が行なわれる場合の間隔から短くなってクロストークが隣接チャネル間に発生している状態として図示されている。この場合、隣接するアレイ導波路の間の長さ増分がΔLである。この増分は、AWGの中心波長のm倍として予定通りに選択されて(mは、AWGの回折次数を表わす)、中心波長の光がAWGの中心出力導波路から出射されるようになる。これらのアレイ導波路の間隔はdであり、波長の変化Δλに対応する出力導波路の入力にある光スポットの位置の変化は次式で与えられる:
【0070】
【0071】
式中、fは、アレイ導波路から出力導波路までの距離である(スラブ導波路の入射面及び出射面の両方の曲率半径もfであるので、光スポットが、出力導波路に集光することに留意されたい)。
【0072】
出力導波路ペアの間隔は、FBGにより反射される波長がFBGの距離にわたって変換されるときにスポットがもっぱら一方の導波路からもっぱら他方の導波路まで並進移動する距離を表わす必要がある。すなわち、反射中心波長が変化Δλする場合、当該ペアの間隔は、上の数式に従って選択される必要がある。しかしながら、異なる出力導波路ペアの中心波長は、干渉が異なるペア間で生じることがないように調整されているはずである(例えば、8個のチャネルがAWG内で、等間隔で離間している場合、第2センサ7及び8に対応する第1センサ4及び5のチャネル1及び2を第3センサに使用することにより、所定の環境におけるセンサ読み出し値を十分離すことができる)。
【0073】
幾つかの実施形態では、出力導波路ペアの位置における光スポットサイズは、センサの動作範囲にわたって予測されるスポットの横方向並進移動距離にほぼ等しく、センサの動作範囲が今度は、ペア間隔にほぼ等しくなる必要がある。スポットが間隔と比較して非常に幅広である場合、ペア内の2つの出力導波路の間の差分信号は小さくなり、スポットが非常に幅狭である場合、センサのダイナミックレンジが小さく制限される。スポットサイズは、回折を考慮に入れることによりほぼ
【0074】
【0075】
であると推定され、Kは、アレイ導波路の数であり、λは動作波長である。
【0076】
スポットサイズをチャネル間隔に対して、例えば出力導波路間隔を短くすることにより、出力導波路の入力に位置するスポットサイズを大きくすることにより、及び/又は出力導波路をアレイ導波路の焦点から離れるように移動させることにより調整するために使用することができる多くの方法が存在する。
【0077】
図10Aでは、チャネル間隔/スポットサイズの比は、スポットサイズを一定に保持し(当該スポットサイズが、動作するための最適なサイズに既になっていて、例えば最適な動作を行なうことができると仮定する)、かつ出力導波路間隔を短くすることにより調整される。
図10Bでは、チャネル間隔が、上記考察に従って十分である、例えば最適であると推定されるが、スポットサイズを、アレイ導波路の数Kを減らすことにより大きくして、当該スポットサイズの最適範囲に収まるようにする。Kの良好値を、
【0078】
【0079】
の関係を設定することにより
【0080】
【0081】
の関係が成り立つ場合に上の方程式を組み合わせることにより見つけ出すことができる。また、チャネル間隔に対するスポットサイズの調整は、出力導波路をアレイ導波路の焦点f0から離れるように新規の距離fの位置まで移動させることにより行なって、スポットサイズがおよそ、
【0082】
【0083】
となるようにする。
【0084】
図11に示すように、光源の数を減らすことにより、コヒーレント光源アレイからの光の角度分布を広げることができる。この現象は、より大きなレンズと比較して、回折抑制がより低下しているより小さなレンズに類似していると理解することができる。従って、比較的狭いスペクトルピークでも、2つのチャネルにわたって分布させることができるので、強度に依存しない波長シフトを検出することができる。
【0085】
利用可能なAWGのフォトダイオード群/出力チャネル群よりも更に多くのFBGを検出する必要がある場合が多い。従って、幾つかの実施形態では、光時間分割多重化が、光波長分割多重化及び逆多重化と併せて使用される。マルチ入力AWGの各入力に関して、波長によって異なる公知のマッピングが出力導波路に対して行なわれる。従って、時分割多重化及び波長分割逆多重化を組み合わせて、いずれかの方法を単独で用いて対処することができるよりも遥かに多くの数のセンサを用いて対処することができる。時分割多重化を使用することによりまた、センサの電気信号を、輸送機器の移動と同期する移動窓で記録し易くなる。幾つかの実施形態では、光スイッチ群を、AWGと同じ基板上に集積させることができるので、同じ構造を有するモジュールの組み立てが可能になる。
【0086】
図12は、時分割多重化及び波長分割多重化の両方を使用して、複数のFBGセンサを有する複数のモジュールに対処するシステム1200の構成を示している。この特定の例では、システム1200は、輸送システムを、M個のセンサモジュールを使用して監視し、各モジュールは、単一の光ファイバ上に配置されるN個のFBGセンサS1、S2、...SNを有する。N個のFBGは、波長ごとに、波長ドメイン光分波器として使用されるAWG1240の出力チャネルに従って分散配置される。モジュール及び光ファイバ/FBGは全て、同じように構成することができる。光を光源120から透過させてセンサモジュールに、1xM光パワースプリッタ1201及びM個のサーキュレータ1270を経て到達させる。モジュール1、2、...Mからのセンサ出力光を、時分割光多重化装置1250内を透過させて、M入力x2N出力AWG1240のM個の入力に到達させる。時分割多重化装置1250は、データ取得コントローラ1280により制御されるM個の光スイッチからなる光スイッチバンクを備える。モジュール1~Mの出力導波路1231、1232、...1233を同時に1回選択し、AWG1240のそれぞれの入力導波路に光結合させる。AWG1240は、前に説明したように、センサモジュールからの光を空間的に分散させて、AWG出力導波路1241に到達させ、次に出力光を検出器ユニット1260に経路伝搬させる。
【0087】
図12は、各センサの出力光が、モジュールの単一の出力導波路1231、1232、...1233により合波されるように配置されるセンサS1、S2、...SNを示している。
図13は、異なる波長帯域を有するセンサ出力光をモジュールレベルで合波する別の構成を示している。1つ以上のFBG1302は、センサ光導波路1303上に配置される。入力光は、1xNパワースプリッタ1371を介してサーキュレータ1370に光結合させる。サーキュレータ1370は、センサ出力導波路群1303を、Nx1パワースプリッタ1372を介してモジュール1305の出力導波路1320に接続する。出力導波路は、センサモジュール1305内の全てのFBG1302からの合成(波長分割多重化)出力光を伝送する。
図13に示すモジュール構造は、例えば
図12に示すモジュール群の各モジュールに代えて使用することができる。
【0088】
図14は、幾つかの実施態様による時分割多重化及び波長分割多重化を使用する別の監視システム1400を示している。
図14の監視システム1400は、
図12の監視システム1200と幾つかの点で同様であるので、同様の参照番号を使用して同様の構成要素を指すようにしている。システム1400は、M個の光スイッチ1250及びM個の光サーキュレータ1270に代えて、1xM光スイッチ1450及びスイッチ1450と光源120との間に配置される1個の光サーキュレータ1470を用いる。
【0089】
図15は、光時間分割多重化を行なう階層スイッチ部を含む監視システム1500を示している。図示の監視システム1500のスイッチ部1550は、4個の1x2光スイッチ1551からなり、かつ8個のセンサモジュールに接続される第1階層の光スイッチ(
図15Aの最下層の階層スイッチ)と、2個の1x2光スイッチ1552からなり、かつ第1階層スイッチ1551と1個の1x2第3階層光スイッチ1553との間に光結合させた第2階層の光スイッチ(
図15Aの最下層の階層のスイッチの隣のスイッチ)と、を含む。スイッチ部1550は、光源120及び波長分波器(AWG)1540に、光サーキュレータ1570を介して接続される。スイッチ1551、1552、1553は、データ取得コントローラ1580により制御されて、各センサモジュールからの出力光を時分割多重化してAWGの入力導波路1541に入射させる。AWG1540は、時分割多重化したセンサ出力光を分波して、出力光を波長に応じて空間的に分散させて出力導波路及び検出器ユニット1560に到達させる。
【0090】
様々な種類の光スイッチは、本明細書において説明される時分割多重化装置に使用することができる。適切な光スイッチ技術として、例えばマイクロ電気機械システム(MEMS)光スイッチ、液晶スイッチ、気泡スイッチ、熱光学スイッチ、フェーズドアレイスイッチ、及び電子ホログラフィックスイッチを挙げることができる。
【0091】
前に説明したように、上の例で説明した検出器ユニットにより生成される電気信号の記録は、データ取得コントローラにより制御される。データ取得コントローラは、電気信号の取得を輸送機器の移動に同期させるように構成される。
【0092】
本明細書において提案される監視システムは、同じ基板上に集積される1つ以上の構成素子を含む。例えば、監視システムは、個別素子を使用して、例えばAWGの出力をファイバ結合させ、次にAWG出力を個々のファイバ結合光検出器に送信することにより実現することができる。
【0093】
別の構成として、光検出器、例えばフォトダイオードは、AWGの出力導波路に直接集積させることができる。監視システムの構成要素群のうち1つ以上の構成要素を同じ基板上に集積させることにより、コスト、サイズを大幅に節減して、複雑さを大幅に低減することができる。電子/フォトニック回路ハイブリッド集積法を使用して、光源、サーキュレータ、光スイッチ、AWG、フォトダイオード、及びデジタイザを含む全ての構成要素を同じ基板上に集積させることができることに注目されたい。
【0094】
本明細書において説明される手法により、1個の検出部による高度なセンサ多重化が可能となるだけでなく、高度な集積化が可能となる。監視システムの検出部の幾つかの構成要素又は全ての構成要素-光源、サーキュレータ(群)、時分割多重化装置、波長分波器、及びデジタイザ-は、同じ基板上に集積させることができ、外部接続のみを電源との電気接続とし、監視プロセッサ及び/又は管理プロセッサとの電気通信及び/又は光通信を行ない、センサとの光ファイバ接続を行なう。このような集積素子により、集積素子が大量に製造される場合には、集積手法以外の手法と比較して、大幅なコスト低減/サイズ低減/性能向上を図ることが可能になる。
【実施例】
【0095】
実験を、1:22(線路幅45mm)のG-scale(Gゲージ)列車軌道システムを使用して行なった。円形ループ状の鋼鉄製軌道を層状の砂利の上に敷設した。重量物を積み込むことができる運搬貨車を牽引する模型電気機関車を軌道の上を走らせた。
【0096】
図16A~
図16Cに示すように、ファイバブラッグ回折格子(FBG)センサを砂利層に軌道から2インチ(5.08cm)の距離の位置に配置した。実験モデルの2インチ(5.08cm)の実験的距離は、実際規模の列車軌道システムにおける3.5インチ(8.89cm)の距離に相当する。
図16Aは、砂利層を有する軌道の上を走るG-scale(Gゲージ)列車の写真を示している。
図16Bは、軌道から2インチ(5.08cm)のスタンドオフ距離に位置するファイバブラッグ回折格子センサの場所を示す写真である。
図16Cは、ヤスリを制御型損傷検出試験に使用して生じさせた下側軌道の摩耗損傷を示す写真である。FBGは、
図13において既に説明して図示したように、高頻度でデータ取得を行なって監視した。
【0097】
データをFBGから、様々な負荷状態で異なる時刻に収集して、非損傷状態における代表的な基本データ集合を、1kHzのサンプリングレートで収集した。
図17A~
図17Fは、振動放射音を表わし、かつ監視システムから取得される電気信号を示しており、
図18A~
図18Fは、列車が軌道の上を通過しているときの振動放射音の対応するスペクトル写真を示している。
図17A及び
図18Aはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号、及び負荷が運搬貨車に掛かっていない健全な状態の場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
図17B及び
図18Bはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号、及び負荷が運搬貨車に掛かっている健全な状態の場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
図17C及び
図18Cはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号を拡大したグラフ、及び負荷が運搬貨車に掛かっていない健全な状態の場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
図17D及び
図18Dはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号、及び軌道区間の間の2~3mmの隙間で模擬したレールが破損した場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
図17E及び
図18Eはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号、及び摩耗損傷が、FBGセンサに隣接する下側の軌条区間の上に生じている状態、及び負荷が運搬貨車に掛かっていない状態の場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
図17F及び
図18Fはそれぞれ、監視システムにより高頻度で取得される振動放射音信号、及び摩耗損傷が、FBGセンサに隣接する下側の軌条区間の上に生じている状態、及び負荷が運搬貨車に掛かっている状態の場合の振動放射音スペクトル写真を示している。
【0098】
図17A及び
図18Aに示すように、振動放射音信号の振動数成分は、この模型列車軌道システムの場合は、5~50Hz及び200~500Hzの範囲に、より多く集まっている。振動数成分の分布は、
図17B及び
図18Bに示すように、負荷が掛かっている状態で大きく変化することがない、又は
図17C及び
図18Cに示すように、負荷が掛かっていない状態で大きく変化することがない。
図17C及び
図18Cでは、信号は、模擬した破損信号を基準として時間領域において拡大している。
【0099】
健全な状態の場合のデータを取得した後、3種類の損傷を別々に生じさせた:i)レール破損を模擬するために隣接する軌道区間の間の微小な切断部(2~3mm)、ii)切断部を軌道の間に早期に生じることなく、
図16Cに示すようなレール波状摩耗を模擬するために金属ヤスリで摩耗させることにより生じる軌道の軽度の研削摩耗、及びiii)大きな衝撃を受ける車輪を模擬するためのエンジン駆動車輪のフラットスポット。
【0100】
図17C及び
図18Cに示すように、時間領域及び振動数領域における僅かな変化を、レール破損を模擬した場合に観察することができる。時間領域におけるより多くの数のピークが車輪から、車輪がレール破断部の上を通過しているときに観察される。摩耗損傷モードでは、振動放射音信号は、健全な状態の場合(
図17E及び
図18E参照)におけるよりも更に強くなっていて、振動数成分が、ずっと広くなっている。同様の結果が、列車に負荷が掛かっている場合(
図17F及び
図18F参照)、及び車輪フラット損傷モードの場合に当てはまる。このデータに適用されるパターン照合アルゴリズムは、負荷状態及び/又は欠陥状態を特定する際の精度が約85%~約95%であり、誤アラーム率が約5%以下であることを示している。
【0101】
本明細書において開示されるシステム、デバイス、又は方法は、本明細書において説明される特徴、構造、方法、又はこれらの組み合わせのうち1つ以上を含むことができる。例えば、デバイス又は方法は、本明細書において説明される特徴及び/又はプロセスのうち1つ以上を含むように実現することができる。このようなデバイス又は方法は、本明細書において説明される特徴及び/又はプロセスの全てを含む必要はなく、有用な構造及び/又は機能を実現するように選択される特徴及び/又はプロセスを含むように実現することができる。