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  • 特許-車両用ハンドル装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】車両用ハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 79/06 20140101AFI20220324BHJP
   E05B 77/34 20140101ALI20220324BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220324BHJP
   E05B 85/16 20140101ALN20220324BHJP
【FI】
E05B79/06 C
E05B77/34
B60J5/04 H
E05B85/16 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018099399
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019203318
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】小野田 将也
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056519(JP,A)
【文献】特開2010-100993(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001263(WO,A1)
【文献】特開2008-069536(JP,A)
【文献】特開平04-007476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00 - 85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を保持して裏面方向に突出する突出部を備えたハンドル本体と、
前記突出部に裏面方向から外嵌し、嵌合深さの浅い初期位置から、嵌合深さの深い操作位置まで移動操作自在にハンドル本体に連結される操作部材とを有し、
前記突出部には、該突出部内を貫通して上下方向に連通する排水通路が形成される車両用ハンドル装置。
【請求項2】
前記排水通路は、側方に複数本並べて設けられる請求項1記載の車両用ハンドル装置。
【請求項3】
前記排水通路は上部開口端における開口面積が下部開口端における開口面積に比して大きく形成される請求項1または2記載の車両用ハンドル装置。
【請求項4】
前記突出部は、ハンドル本体の裏面に配置される電子部品と、
前記ハンドル本体に設けられ、前記電子部品の裏面を支承して該電子部品を保持する部品支承部とからなり、
前記部品支承部の電子部品との境界部に凹設された排水溝と電子部品の裏面により前記排水通路が形成される請求項1、2または3記載の車両用ハンドル装置。
【請求項5】
前記部品支承部は弾性変形可能な片持梁状に形成される請求項4記載の車両用ハンドル装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに固定されるハンドル本体の裏面に可動部品を配置した車両用ハンドル装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、ハンドル本体の中央部に配置されるグリップ部の裏面には操作部材が回転操作自在に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-322834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例において、操作部材はハンドル本体のグリップ部の裏面に露出して配置されるために、雨滴等が付着して凍結すると、操作不能になるという欠点がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、凍結等による操作不良を防ぐことのできる車両用ハンドル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
電子部品1を保持して裏面方向に突出する突出部2を備えたハンドル本体3と、
前記突出部2に裏面方向から外嵌し、嵌合深さの浅い初期位置から、嵌合深さの深い操作位置まで移動操作自在にハンドル本体3に連結される操作部材4とを有し、
前記突出部2には、該突出部2内を貫通して上下方向に連通する排水通路5が形成される車両用ハンドル装置を提供することにより達成される。
【0007】
ハンドル装置は、電子部品1を保持することにより裏面に突出部2が形成されたハンドル本体3を有し、突出部2に裏面側から外嵌するように、操作部材4が装着される。
【0008】
操作部材4は、初期位置と操作位置との間を操作可能であり、初期位置から操作位置までの操作する際に指等の挟み込みを防止するために、初期位置においても適宜の深さで突出部2を外嵌しており、操作位置において嵌合深さが最大となる。
【0009】
操作部材4を未操作の状態、すなわち、初期位置にある状態でハンドル本体3の裏面側に回り込んだ雨水、あるいは洗浄水が操作部材4と突出部2との嵌合部位に入り込んで滞留し、凍結すると、操作部材4の作動に支障を来すが、突出部2に突出部2内を貫通する排水通路5を形成した本発明において、雨水等は嵌合部位に滞留することなく速やかに排出され、あるいは、排水通路5内に吸収されるために凍結等による操作部材4の作動不良の虞がなくなる。
【0010】
この場合、排水通路5を側方に複数本並べて配置すると、各々の排水通路5の管路面積が小さくなるために、毛細管現象による排水通路5への吸い込みを期待することができために嵌合部位への雨水等の滞留を効果的に防止することができる。
【0011】
さらに、排水通路5の開口面積を上部開口端において大きく形成すると、上部開口端における表面張力を小さくすることができるために、排水通路5内への吸い込み力を大きくすることができる。
【0012】
電子部品1はハンドル本体3の内部に収容することも可能であり、この場合、突出部2は、ハンドル本体3の表面への突出を防ぐために裏面方向への膨隆部として形成される。
【0013】
また、電子部品1をハンドル本体3の裏面に配置する場合、電子部品1の裏面をハンドル本体3に形成される部品支承部6により支承し、これら電子部品1、および部品支承部6を突出部2として操作部材4により外嵌するように構成することができ、この場合、排水通路5は、部品支承部6の電子部品1との境界部に凹設された排水溝7と電子部品1の裏面により形成することができる。
【0014】
このように、部品支承部6と電子部品1との境界に排水通路5を形成すると、突出部2に暗渠状の貫通孔を形成する必要がなくなるために、金型の構造を簡単にすることが可能になる。
【0015】
さらに、前記部品支承部6は弾性変形可能な片持梁状に形成される車両用ハンドル装置を構成すると、ハンドル本体3に引いてドアを開放する際にハンドル本体3に負荷がかかって湾曲し、電子部品1部品に曲げ方向の負荷が加わっても部品支承部6が弾性変形して荷重を軽減するために、電子部品1への過大な負荷に起因する破損、故障等を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を示す図で、(a)は表面から見た図、(b)は裏面図である。
図2図1(a)の2A-2A線断面図で、(a)は操作部材が初期状態を示す図、(b)は操作状態を示す図である。
図3】ハンドル本体を示す図で、(a)は裏面方向から見た図、(b)は(a)の3B方向矢視図である。
図4】ハンドル本体を示す図で、(a)は分解図、(b)は(a)の4B-4B線断面図である。
図5図1(a)の5A-5A線断面図で、(a)は初期状態を示す図、(b)は操作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1以下に車両のドアアウトサイドハンドル装置として構成された本発明の実施の形態を示す。
【0018】
ハンドル装置は、車両のドアに固定されるハンドル本体3と、ハンドル本体3に連結されるレバー状の操作部材4、および第1、第2レバー8、9を有して形成される。
【0019】
ハンドル本体3は、ハンドルベース10の表面にカバー部材11を連結して前後方向に長く形成されており、前後方向両端部においてドアに固定される。本明細書において、図1(a)において左側を「前方」、右側を「後方」、図2(a)において上方を「表面」、下方を「裏面」とし、図1(a)を「上下」方向の基準とする。
【0020】
ハンドルベース10の後端部にはシリンダ錠12が固定されており、カバー部材11にはシリンダ錠12に対するアクセス開口11aが開設される。また、図3(b)に示すように、ハンドル本体3の長手方向中央部には、ドアを開放操作する際の手掛けとなる手掛け凹部3aが設けられる。
【0021】
図2に示すように、カバー部材11は外表面形状を形成するための薄肉状の殻状部材であり、両端部にドアへの固定用のスタッド11bが埋め込まれ、一方のスタッド11bはハンドルベース10に共締めされてドアに固定される。
【0022】
また、図4に示すように、カバー部材11の裏面には、後述する電子部品1としてのアンテナを位置決めするための位置決めリブ11cと、アンテナ1の支持座面を形成する2条の突条11dとが突設される。
【0023】
ハンドルベース10は上記カバー部材11の裏面に沿って該カバー部材11を裏面から支えて補剛、補強しており、中央部に開設される開口10aには、該開口10aの前端縁を固定端とする片持梁状の部品支承部6が配置される。
【0024】
部品支承部6は、薄板状に形成されて弾性変形能が付与され、図2、4に示すように、開口10aの前端縁に対して裏面方向に偏位しており、部品支承部6の表面とカバー部材11の裏面との間にアンテナ1を挟み付けるようにして収めることができる。
【0025】
さらに、図4に示すように、ハンドルベース10の後端部には、裏面方向に第2レバー9の支持用突部10bが形成され、その付け根部に第1レバー8の連結孔10cが上下方向に開設される。
【0026】
アンテナ1は直方体形状に形成されて、図5に示すように、予め粘着テープ13を使用してカバー部材11の裏面に仮固定され、カバー部材11をハンドルベース10に連結した状態で裏面が上記部品支承部6に支承される状態となり、これらアンテナ1、および部品支承部6がハンドル本体3の裏面への突出部2を構成する。
【0027】
このように、アンテナ1の裏面を部品支承部6により保持することにより、ハンドル本体3の表面に意匠的影響を与えることなくアンテナ1を固定することができる。
【0028】
図2に示すように、操作部材4は、前端部が上記ハンドルベース10の連結孔10cに挿入する回転軸(C4)周りに回転自在に連結され、図2(a)に示す初期位置と、図2(b)に示す操作位置との間で回転する。
【0029】
操作部材4の中間部は、図5に示すように、内部を嵌合凹部4aとした表面方向に開口するU字状断面形状を有しており、嵌合凹部4aの対向する内壁間の間隔は、上記部品支承部6の幅方向寸法に比してやや大寸に形成される。
【0030】
一方、第1レバー8は、図2に示すように、ハンドルベース10の後端部に上下方向に延びる回転軸(C8)周りに揺動自在に連結される。第1レバー8はハンドルベース10への枢軸位置から前方に延びる入力片8aと、枢軸位置から裏面方向に延び、先端に二股状の分岐部8bを備える。
【0031】
この第1レバー8の入力片8aは、図2に示すように、操作部材4の後端から表面方向に膨隆される押圧突部4bに当接し、操作部材4の操作位置側への回転に伴って図2(a)において時計回りに回転する。
【0032】
一方、上記第2レバー9は、ハンドルベース10の支持用突部10bの端面に、表裏方向に伸びる回転軸(C9)周りに回転自在に連結される。この第2レバー9は、図1(b)に示すように、上記第1レバー8の分岐部8bに挿入する被伝達杆部9aと、ラッチ連結片9bとを有しており、図2(a)において第1レバー8が時計回りに回転すると、図1(b)に示す初期位置から反時計回りに回転して操作位置に移動する。
【0033】
上記第2レバー9は、該第2レバー9の回転軸(C9)周りに巻装される図外のトーションスプリングにより図1(b)において時計回りに付勢され、この結果、第2レバー9への付勢力により第1レバー8は図2(a)の位置に付勢され、該第1レバー8に伝達された付勢力により操作部材4は初期位置に保持される。
【0034】
図1(b)に示すように、上記第2レバー9のラッチ連結片9bは適宜の連結手段を使用してドア内に固定されるドアラッチ装置14に連結されており、第2レバー9が操作位置まで回転すると、ドアラッチ装置14のラッチが解除されてドアを開放操作することができる。また、上記ドアラッチ装置14には、シリンダ錠12が図外のシリンダレバーを介して連結されており、シリンダ錠12が解錠状態にあるときにのみ上記第2レバー9によるラッチ解除動作が許容される。
【0035】
ドアラッチ装置14の解除操作は、ハンドル本体3の手掛け凹部3aに手を掛けて握るようにして操作部材4を操作位置まで回転させることにより行われる。
【0036】
図5(a)に示すように、アンテナ1と、このアンテナ1の裏面を支承する部品支承部6とから構成される突出部2に対して操作部材4の開口端は浅く嵌合しているために、ハンドル本体3を握って操作部材4を作動させる際に突出部2と操作部材4との隙間に指を挟むことを確実に防止することができる。
【0037】
また、図4に示すように、部品支承部6の表面には、上方で幅広で下方に行くに従って漸次幅狭となる台形形状の導水溝7が複数、前後方向に並べて配置されており、この部品支承部6にアンテナ1を載せると、アンテナ1と部品支承部6との境界には、導水溝7の形状を側壁の形状とする複数の排水通路5が形成される。
【0038】
これらの排水通路5は、図5(a)に示すように、初期位置にある操作部材4の表面側端面の表裏方向位置とほぼ等しい位置に配置されており、図5(a)において矢印で示すように、上方からハンドル本体3内に進入した雨水等は、直ちに排水通路5に導かれるために、突出部2の上面への滞留が防止される。
【0039】
また、各排水通路5は上端が幅広に形成されているために、排水通路5への吸い込みが効率的に行われ、さらに、下端が幅狭に形成されているために、下端からの滴下が導入部に比して困難になり、排水通路5内での保水性能が高くなる。この結果、雨水等は、突出部2と操作部材4との嵌合部に比して相対的に排水通路5内に導かれて滞留することが多くなり、氷結時の操作部材4の作動不良を相対的に低下させることができる。
【0040】
なお、図5において操作部材4の上下端縁は表裏方向に同一位置となるように設定されているが、図5(a)においてハッチングを施して示す部分を取り除き、下端縁のみを導水路から裏面側に後退した位置に配置すると、排水通路5から滴下した雨水等が操作部材4の下部壁面と突出部2との間に滞留することを防止することができる。
【0041】
上述したように、ドアの開放操作は、操作部材4を操作することによりドアラッチ装置14のラッチを解除して行われ、その後、さらに、ドアを開放させるためにハンドル本体3にドア開放方向への操作力(F)(図3(b)参照)を加えると、カバー部材11には曲率が小さくなる方向の僅かな変形が発生し、アンテナ1に伝達される。アンテナ1へに裏面方向への力が負荷されると、片持梁状の部品支承部6は図4(b)において矢印で示すように弾性変形してアンテナ1への応力発生が防がれる。
【0042】
この結果、アンテナ1の長手方向両端への裏面方向への負荷による折り曲げ力、あるいは全長にわたる裏面方向への負荷による圧縮力がアンテナ1に発生することがなく、アンテナ1の破壊、性能劣化が効果的に防がれる。
【符号の説明】
【0043】
1 電子部品
2 突出部
3 ハンドル本体
4 操作部材
5 排水通路
6 部品支承部
7 排水溝



図1
図2
図3
図4
図5