(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】液体貯留タンクおよびインクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220324BHJP
【FI】
B41J2/175 307
B41J2/175 501
B41J2/175 111
B41J2/175 141
(21)【出願番号】P 2018155885
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊広
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-46531(JP,A)
【文献】特開昭56-127871(JP,A)
【文献】実開昭63-130164(JP,U)
【文献】特開2013-59980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留されていた前記液体を流通させる液体流路と、
前記液体流路を開閉する弁と、
前記液体貯留部内に設けられて前記液体に浮かぶフロートと
を備え、
前記フロートは、前記液体貯留部内の前記液体の液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、前記弁の一部に接触することによって前記弁に前記液体流路を閉じさせ、
前記液体貯留部は、
主貯留部と、
前記主貯留部と比較して鉛直方向における長さが短く、水平方向のうち特定の方向に前記主貯留部から突出して設けられる副貯留部と
を備え、
前記フロートは、前記主貯留部と、前記副貯留部とに跨って配置され、前記特定の方向における長さが前記主貯留部と比較して長いことを特徴とする液体貯留タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の液体貯留タンクと、
前記液体貯留部から前記液体流路を介して供給される前記液体としてのインクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッドと
を備えることを特徴とするインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留する液体貯留タンクおよびインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体貯留タンクとして、液体としてのインクを貯留する液体貯留部と、液体貯留部に貯留されていたインクを流通させる液体流路と、液体流路を開閉する弁と、液体貯留部内に設けられてインクに浮かぶフロートとを備えるインクカートリッジが知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の液体貯留タンクにおいて、フロートは、液体貯留部内のインクの液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、弁の一部に接触することによって弁に液体流路を閉じさせる。従来の液体貯留タンクにおいて、液体貯留部は、主貯留部と、主貯留部と比較して鉛直方向における長さが短く、水平方向のうち特定の方向に主貯留部から突出して設けられる副貯留部とを備えている。従来の液体貯留タンクにおいて、フロートは、主貯留部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体貯留タンクにおいては、水平方向のうち特定の方向におけるフロートの長さに対する鉛直方向におけるフロートの長さの比率が比較的大きいので、液体貯留タンクの外部から液体貯留タンクに振動が加わった場合などに、液体貯留部内で液面に浮かんでいるフロートが鉛直方向に振動し易く、液体流路の開閉を高精度に制御することが困難であるという問題がある。
【0005】
従来の液体貯留タンクにおいても、フロートを軽くすれば、液体貯留部内で液面に浮かんでいるフロートが鉛直方向に振動することによる、液体からフロートに加わる浮力の変動量がフロートの重量に対して大きくなるので、液体貯留タンクの外部から液体貯留タンクに振動が加わった場合などであっても、液体貯留部内で液面に浮かんでいるフロートが鉛直方向に振動し難くすることが可能である。しかしながら、従来の液体貯留タンクにおいて、フロートは、軽くなる場合、液体貯留部内のインクの液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、弁の一部に接触することによって弁に液体流路を閉じさせる精度が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、液体貯留部内の液体の液面に応じて液体流路の開閉を高精度に制御することができる液体貯留タンクおよびインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体貯留タンクは、液体を貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留されていた前記液体を流通させる液体流路と、前記液体流路を開閉する弁と、前記液体貯留部内に設けられて前記液体に浮かぶフロートとを備え、前記フロートは、前記液体貯留部内の前記液体の液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、前記弁の一部に接触することによって前記弁に前記液体流路を閉じさせ、前記液体貯留部は、主貯留部と、前記主貯留部と比較して鉛直方向における長さが短く、水平方向のうち特定の方向に前記主貯留部から突出して設けられる副貯留部とを備え、前記フロートは、前記主貯留部と、前記副貯留部とに跨って配置され、前記特定の方向における長さが前記主貯留部と比較して長いことを特徴とする。
【0008】
この構成により、本発明の液体貯留タンクは、水平方向のうち特定の方向においてフロートが主貯留部の長さより長く、特定の方向におけるフロートの長さに対する鉛直方向におけるフロートの長さの比率を従来より小さくすることができるので、液体貯留タンクの外部から液体貯留タンクに振動が加わった場合などであっても、液体貯留部内で液面に浮かんでいるフロートが鉛直方向に振動し難くすることができる。したがって、本発明の液体貯留タンクは、液体貯留部内の液体の液面に応じて液体流路の開閉を高精度に制御することができる。
【0009】
本発明のインクジェットプリンターは、上述の液体貯留タンクと、前記液体貯留部から前記液体流路を介して供給される前記液体としてのインクを吐出することによって印刷を実行するインクジェットヘッドとを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、液体貯留部内のインクの液面に応じて液体流路の開閉を高精度に制御することができるので、空気が混入したインクが液体貯留タンクからインクジェットヘッドに供給されることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体貯留タンクおよびインクジェットプリンターは、液体貯留部内の液体の液面に応じて液体流路の開閉を高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】インクカートリッジが取り付けられている状態での本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターの外観斜視図である。
【
図2】インクカートリッジが取り外されている状態での
図1に示すインクジェットプリンターの外観斜視図である。
【
図3】
図1に示すインクジェットプリンターのブロック図である。
【
図4】液体貯留部の内部にインクが貯留されていない状態での
図1に示すインクカートリッジの側面断面図である。
【
図5】液体貯留部の内部にインクが貯留されていてインク針が刺さっていない状態での
図4に示すインクカートリッジの側面断面図である。
【
図6】液体貯留部の内部にインクが貯留されていてインク針が刺さっている状態での
図4に示すインクカートリッジの側面断面図である。
【
図7】
図6に示す状態からインクが使用された場合におけるインクカートリッジの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0015】
図1は、インクカートリッジ30が取り付けられている状態での本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の外観斜視図である。
図2は、インクカートリッジ30が取り外されている状態でのインクジェットプリンター10の外観斜視図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10aで示す鉛直方向における下側から媒体90を支持するプラテン11と、プラテン11に対して鉛直方向における上側に配置されていて鉛直方向に直交する矢印10bで示す左右方向に延在しているガイドレール12と、ガイドレール12によって矢印10bで示す方向における移動がガイドされるキャリッジ13と、キャリッジ13に搭載されて媒体90に向けてインクを吐出することによって媒体90上に印刷を実行する複数のインクジェットヘッド14と、鉛直方向においてインクジェットヘッド14より上に配置されていてインクジェットヘッド14にインクを供給する液体貯留タンクとしての複数のインクカートリッジ30と、鉛直方向および矢印10bで示す方向の両方に直交する矢印10cで示す方向にインクカートリッジ30が1つずつ挿入される複数のカートリッジ挿入部15とを備えている。
【0017】
図3は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0018】
図3に示すように、インクジェットプリンター10は、複数のインクジェットヘッド14と、矢印10c(
図1参照。)で示す方向に媒体90(
図1参照。)を搬送する媒体搬送装置21と、ガイドレール12(
図1参照。)に沿って矢印10b(
図1参照。)で示す方向にキャリッジ13(
図1参照。)を移動させるキャリッジ駆動装置22と、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部23と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部24と、スピーカー25と、ネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部26と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部27と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部28とを備えている。
【0019】
制御部28は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部27に記憶されているプログラムを実行する。
【0020】
図4は、液体貯留部32の内部にインクが貯留されていない状態でのインクカートリッジ30の側面断面図である。
図5は、液体貯留部32の内部にインク50が貯留されていてカートリッジ挿入部15の内部に設けられたインク針15aが刺さっていない状態でのインクカートリッジ30の側面断面図である。
図6は、インク針15aが刺さっている状態でのインクカートリッジ30の側面断面図である。
【0021】
図4~
図6において、矢印10aおよび矢印10cは、インクカートリッジ30がカートリッジ挿入部15(
図2参照。)に挿入された場合の方向を示している。
【0022】
図4~
図6に示すように、インクカートリッジ30は、インクカートリッジ30がカートリッジ挿入部15に対して着脱される場合に作業者によって掴まれる取っ手31と、インク50を貯留する液体貯留部32と、液体貯留部32に貯留されていたインク50を流通させる液体流路としての流路33と、流路33を開閉する弁34と、液体貯留部32内に設けられてインク50に浮かぶフロート35とを備えている。
【0023】
液体貯留部32は、主貯留部32aと、主貯留部32aと比較して矢印10aで示す鉛直方向における長さが短く、水平方向のうち矢印10cで示す方向に主貯留部32aから突出して設けられる副貯留部32bとを備えている。副貯留部32bは、カートリッジ挿入部15に挿入される部分である。液体貯留部32は、インク50が注入されるためのインク注入口32cと、液体貯留部32の内部のインク50の量の変動による液体貯留部32の内部の気体の圧力の変動を抑えるために液体貯留部32の内外を連通する気体用穴32dと、インクカートリッジ30が動いた場合に液体貯留部32の内部のインク50が気体用穴32dから出ることを防止するために屈曲した細い気体用流路32eと、流路33に連通するインク用穴32fと、矢印10aで示す方向および矢印10cで示す方向の両方に直交する方向に延在してフロート35を回転可能に支持する軸32gと、フロート35に接触することによって軸32gを中心としたフロート35の回転を規制する規制部32hとを備えている。
【0024】
流路33は、気体を排出するための気体排出口33aを備えている。流路33は、インク用穴32fおよび弁34を連通する流路33bと、弁34および気体排出口33aを連通する流路33cとに弁34によって分割されている。
【0025】
弁34は、フロート35によって押されていない場合に流路33bと、流路33cとを連通させる。すなわち、弁34は、フロート35によって押されていない場合に流路33を開く。弁34は、フロート35によって押されることによって流路33bと、流路33cとの連通を禁止する。すなわち、弁34は、フロート35によって押されることによって流路33を閉じる。
【0026】
フロート35は、軸32gによって回転可能に支持されている被支持部35aと、弁34の一部に接触して弁34を押すための作用部35bとを備えている。フロート35は、液体貯留部32内のインク50の液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、作用部35bで弁34の一部に接触することによって弁34に流路33を閉じさせる。フロート35は、主貯留部32aと、副貯留部32bとに跨って配置されている。フロート35は、矢印10cで示す方向における主貯留部32aの長さLと比較して、矢印10cで示す方向における長さが長い。
【0027】
インクカートリッジ30は、インク用穴32fを覆い液体貯留部32から流路33に不純物が入ることを防止するためのフィルター36と、インク針15aが刺されるゴム栓37と、液体貯留部32の内部のインク50を作業者が手動で攪拌するための攪拌棒38と、気体排出口33aを閉じるためのゴム栓39とを備えている。
【0028】
インクカートリッジ30がカートリッジ挿入部15の内部の端部に突き当たるまでインクカートリッジ30がカートリッジ挿入部15の内部に挿入されると、カートリッジ挿入部15の内部に設けられたインク針15aは、ゴム栓37に刺さって先端が流路33cの内部に配置される。
【0029】
攪拌棒38は、インク注入口32cから液体貯留部32の内部に一部が挿入されている。攪拌棒38は、インク注入口32cを閉じるためのゴム栓38aを備えている。
【0030】
ゴム栓39は、インク注入口32cを介してインク50が液体貯留部32の内部に注入される場合に、流路33の内部にインク50が導入されるために気体排出口33aから外される。そして、ゴム栓39は、インク50が液体貯留部32の内部に注入された後、気体排出口33aに取り付けられて気体排出口33aを閉じる。
【0031】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0032】
通信部26を介して印刷データを受信すると、制御部28は、通信部26を介して受信した印刷データに基づいて、媒体90に対して印刷を実行する。すなわち、制御部28は、キャリッジ駆動装置22によって矢印10bで示す方向にキャリッジ13を移動させてインクジェットヘッド14によって媒体90に向けてインク50を吐出することによって、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する。ここで、インクジェットヘッド14は、インクカートリッジ30の液体貯留部32から流路33およびインク針15aを介して供給されるインク50を吐出することによって印刷を実行する。また、制御部28は、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行すると、必要に応じて、媒体搬送装置21によって矢印10cで示す方向に媒体90を搬送することによって、矢印10cで示す方向における媒体90に対する印刷の位置を変更する。
【0033】
なお、制御部28は、インクカートリッジ30の液体貯留部32に特定の量のインク50が貯留されている状態の後にインクジェットヘッド14によって吐出したインク50の量を積算することによって、インクカートリッジ30の液体貯留部32に貯留されているインク50の残量を推定する。そして、制御部28は、インクカートリッジ30の液体貯留部32に貯留されているインク50の残量が特定の残量以下になった場合に、インクカートリッジ30の液体貯留部32へのインク50の補充を作業者に促すための通知を表示部24による表示およびスピーカー25による音の少なくとも1つによって実行する。
【0034】
インクカートリッジ30は、
図7に示すように、液体貯留部32内のインク50の液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、フロート35が作用部35bで弁34の一部に接触することによって弁34に流路33を閉じさせるので、流路33の内部のインク50に気体が混入することがない。したがって、インクジェットプリンター10は、インク針15aからインクジェットヘッド14におけるインク50の吐出口までの流路に気体が混入することを防止することができ、インクジェットヘッド14によるインク50の吐出の精度を高精度に維持することができる。
【0035】
以上に説明したように、インクカートリッジ30は、水平方向のうち矢印10cで示す方向においてフロート35が主貯留部32aの長さLより長く、矢印10cで示す方向におけるフロート35の長さに対する矢印10aで示す鉛直方向におけるフロート35の長さの比率を従来より小さくすることができるので、インクカートリッジ30の外部からインクカートリッジ30に振動が加わった場合などであっても、液体貯留部32内で液面に浮かんでいるフロート35が鉛直方向に振動し難くすることができる。したがって、インクカートリッジ30は、液体貯留部32内のインク50の液面に応じて流路33の開閉を高精度に制御することができる。
【0036】
インクカートリッジ30は、液体貯留部32内のインク50の液面に応じて流路33の開閉を高精度に制御することができるので、空気が混入したインクがインクカートリッジ30からインクジェットヘッド14に供給されることを抑えることができる。
【0037】
なお、フロート35は、本実施の形態において、弁34とは異なる部材である。しかしながら、フロート35の一部は、弁34の一部を構成していても良い。例えば、フロート35は、作用部35bが弁34の弁体を兼ねていて、液体貯留部32内のインクの液面が鉛直方向において特定の高さ以下になった場合に、作用部35bで弁34の弁座に接触することによって弁34に流路33を閉じさせても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 インクジェットプリンター
10a 矢印(鉛直方向を示す矢印)
10b 矢印(水平方向を示す矢印)
10c 矢印(水平方向のうちの特定の方向を示す矢印)
14 インクジェットヘッド
30 インクカートリッジ(液体貯留タンク)
32 液体貯留部
32a 主貯留部
32b 副貯留部
33 流路(液体流路)
34 弁
35 フロート
50 インク(液体)
L 長さ(特定の方向における主貯留部の長さ)