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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20220324BHJP
   F04C 18/18 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F04C27/00 311
F04C18/18 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018246288
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105986
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼荷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽平
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298246(JP,A)
【文献】特開2014-224589(JP,A)
【文献】米国特許第05002290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 27/00
F04C 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有するハウジングと、
前記第1ハウジング構成体と前記第2ハウジング構成体との合わせ面を形成する前記第1ハウジング構成体の第1形成面及び前記第2ハウジング構成体の第2形成面の少なくとも一方に形成される環状のシール収容溝と、
前記シール収容溝に収容されるとともに前記ハウジング内外をシールする弾性体である環状のシール部材と、を備え、
前記シール収容溝は、底面と、前記底面に接続される一対の側面と、を有している流体機械であって、
前記一対の側面は、前記ハウジングの内部側に位置する溝内側周面と、前記ハウジングの外部側に位置する溝外側周面と、を含み、
前記シール部材は、
前記第1ハウジング構成体及び前記第2ハウジング構成体に接する環状のシール本体部と、
前記シール本体部の内周面から前記溝内側周面に向けて突出するとともに前記シール本体部の周方向に間隔をおいて配置される複数の押付け用突起と、を備え、
前記シール部材が前記シール収容溝に収容される前の状態において、前記シール本体部の径方向における前記シール本体部の外周面と前記押付け用突起の先端部との間の距離は、前記シール収容溝の径方向における前記溝内側周面と前記溝外側周面との間の距離よりも小さく、
前記シール本体部は、前記複数の押付け用突起によって前記溝内側周面と前記溝外側周面との間に押圧され
前記シール本体部の外周面は、前記溝外側周面に接触していることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記シール本体部は、前記第1形成面と前記第2形成面との合わせ方向で前記第1ハウジング構成体に接する第1シール部と、前記合わせ方向で前記第2ハウジング構成体に接する第2シール部と、を有し、
前記第1シール部は、複数の環状の第1リップ部により構成されており、前記第2シール部は、複数の環状の第2リップ部により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有するハウジングと、
前記第1ハウジング構成体と前記第2ハウジング構成体との合わせ面を形成する前記第1ハウジング構成体の第1形成面及び前記第2ハウジング構成体の第2形成面の少なくとも一方に形成される環状のシール収容溝と、
前記シール収容溝に収容されるとともに前記ハウジング内外をシールする弾性体である環状のシール部材と、を備え、
前記シール収容溝は、底面と、前記底面に接続される一対の側面と、を有している流体機械であって、
前記シール部材は、
前記第1ハウジング構成体及び前記第2ハウジング構成体に接する環状のシール本体部と、
前記シール本体部から前記一対の側面の少なくとも一方に向けて突出するとともに前記シール本体部の周方向に間隔をおいて配置される複数の押付け用突起と、を備え、
前記シール本体部は、前記複数の押付け用突起によって前記一対の側面間に押圧され、
前記シール本体部は、前記第1形成面と前記第2形成面との合わせ方向で前記第1ハウジング構成体に接する第1シール部と、前記合わせ方向で前記第2ハウジング構成体に接する第2シール部と、を有し、
前記第1シール部は、複数の環状の第1リップ部により構成されており、前記第2シール部は、複数の環状の第2リップ部により構成され、
前記シール本体部は、隣り合う第1リップ部の間に形成される環状の第1凹み部、及び隣り合う第2リップ部の間に形成される環状の第2凹み部における前記シール本体部の周方向で前記各押付け用突起と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっていることを特徴とする流体機械。
【請求項4】
前記シール収容溝は、前記第1形成面に形成されており、
前記シール収容溝の開口は、前記第2形成面に閉塞され、
前記複数の第2リップ部のリップ幅の合計は、前記複数の第1リップ部のリップ幅の合計よりも大きいことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記一対の側面は、前記シール収容溝の周方向で局所的に屈曲する屈曲部を有しており、
前記複数の押付け用突起は、前記シール収容溝の周方向で前記屈曲部に対してずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の流体機械。
【請求項6】
前記シール本体部は、隣り合う第1リップ部の間に形成される環状の第1凹み部と、隣り合う第2リップ部の間に形成される環状の第2凹み部と、を有し、
前記シール収容溝の深さは、前記第1凹み部の最深部と前記第2凹み部の最深部とを結ぶ直線の長さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているルーツポンプのような流体機械は、互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有するハウジングを備えている。第1ハウジング構成体と第2ハウジング構成体との合わせ面を形成する第1ハウジング構成体の第1形成面及び第2ハウジング構成体の第2形成面の少なくとも一方には、環状のシール収容溝が形成されている。そして、シール収容溝には、ハウジング内外をシールする弾性体である環状のシール部材が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-283664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、流体機械を搭載した車両が海岸付近を走行する等した場合に、塩水が、ハウジングの外部から第1ハウジング構成体の第1形成面と第2ハウジング構成体の第2形成面との間を介してハウジングの内部に向けて侵入しようとする場合がある。この場合、シール部材は、第1ハウジング構成体の第1形成面と第2ハウジング構成体の第2形成面との間を介したハウジングの外部からハウジングの内部への塩水の侵入を抑制する。しかし、シール収容溝におけるハウジングの外部側に位置する側面とシール部材との間の隙間が大きいと、その隙間に塩水が溜まり易くなる。そして、その隙間に溜まった塩水の塩分濃度が高まっていくと、塩水に接するハウジングの部位や、塩水に接するシール部材の部位が塩水によって腐食してしまうという問題が起こり得る。
【0005】
また、燃料電池自動車には、燃料電池に酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されており、例えば特許文献1に開示されているルーツポンプは、燃料電池に水素を供給するポンプとして用いられている。ルーツポンプには、燃料電池にて酸素と反応しなかった水素が吸入される。水素は、燃料電池の発電に伴い生成された生成水を含んでいる。シール部材は、第1ハウジング構成体の第1形成面と第2ハウジング構成体の第2形成面との間を介したハウジングの内部からハウジングの外部への生成水を含んだ水素の洩れを抑制する。しかし、シール収容溝におけるハウジングの内部側に位置する側面とシール部材との間の隙間が大きいと、その隙間に生成水を含んだ水素が溜まり易くなる。すると、その隙間に溜まった水素に含まれる生成水に接するハウジングの部位や、生成水に接するシール部材の部位が生成水によって腐食してしまうという問題が起こり得る。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、耐腐食性を向上させることができる流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する流体機械は、互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有するハウジングと、前記第1ハウジング構成体と前記第2ハウジング構成体との合わせ面を形成する前記第1ハウジング構成体の第1形成面及び前記第2ハウジング構成体の第2形成面の少なくとも一方に形成される環状のシール収容溝と、前記シール収容溝に収容されるとともに前記ハウジング内外をシールする弾性体である環状のシール部材と、を備え、前記シール収容溝は、底面と、前記底面に接続される一対の側面と、を有している流体機械であって、前記シール部材は、前記第1ハウジング構成体及び前記第2ハウジング構成体に接する環状のシール本体部と、前記シール本体部から前記一対の側面の少なくとも一方に向けて突出するとともに前記シール本体部の周方向に間隔をおいて配置される複数の押付け用突起と、を備え、前記シール本体部は、前記複数の押付け用突起によって前記一対の側面間に押圧されている。
【0008】
これによれば、シール本体部が、複数の押付け用突起によって一対の側面間に押圧されているため、シール収容溝の側面とシール部材との間の隙間が小さくなる。このため、シール収容溝の側面とシール部材との間の隙間に流体が溜まり難くなる。したがって、ハウジングやシール部材の耐腐食性を向上させることができる。
【0009】
上記流体機械において、前記シール本体部は、前記第1形成面と前記第2形成面との合わせ方向で前記第1ハウジング構成体に接する第1シール部と、前記合わせ方向で前記第2ハウジング構成体に接する第2シール部と、を有し、前記第1シール部は、複数の環状の第1リップ部により構成されており、前記第2シール部は、複数の環状の第2リップ部により構成されているとよい。
【0010】
これによれば、第1ハウジング構成体の第1形成面と第2ハウジング構成体の第2形成面との間を流れる流体が、隣り合う第1リップ部の間に位置する環状の第1凹み部、及び隣り合う第2リップ部の間に位置する環状の第2凹み部の内部で拡散される。これにより、流体の流れの直進性が失われるため、流体がシール部材を通過し難くなる。その結果、シール部材のシール性を向上させることができる。
【0011】
上記流体機械において、前記シール本体部は、隣り合う第1リップ部の間に形成される環状の第1凹み部、及び隣り合う第2リップ部の間に形成される環状の第2凹み部における前記シール本体部の周方向で前記各押付け用突起と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっているとよい。
【0012】
シール本体部の周方向で各押付け用突起と対応するそれぞれの部分は、各押付け用突起が押し潰される分だけ、その他の部分よりも変形量が大きくなる。このとき、シール本体部は、隣り合う第1リップ部の間に形成される環状の第1凹み部、及び隣り合う第2リップ部の間に形成される環状の第2凹み部におけるシール本体部の周方向で各押付け用突起と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっている。したがって、各押付け用突起が押し潰されてシール本体部が変形したときに、第1凹み部及び第2凹み部におけるシール本体部の周方向で各押付け用突起と対応する部分が消滅してしまうことを抑制することができる。その結果、シール部材のシール性を確保することができる。
【0013】
上記流体機械において、前記シール収容溝は、前記第1形成面に形成されており、前記シール収容溝の開口は、前記第2形成面に閉塞され、前記複数の第2リップ部のリップ幅の合計は、前記複数の第1リップ部のリップ幅の合計よりも大きいとよい。
【0014】
第1ハウジング構成体とシール部材との間のシール長は、複数の第1リップ部と第1ハウジング構成体との接触部分に、シール本体部と側面との接触部分を加えた合計である。それに対して、第2ハウジング構成体とシール部材との間のシール長は、複数の第2リップ部と第2ハウジング構成体との接触部分の合計である。そこで、複数の第2リップ部のリップ幅の合計を、複数の第1リップ部のリップ幅の合計よりも大きくすることで、第2ハウジング構成体とシール部材との間のシール長と、第1ハウジング構成体とシール部材との間のシール長との差を小さくすることができる。その結果、シール部材のシール性を向上させることができる。
【0015】
上記流体機械において、前記一対の側面は、前記シール収容溝の周方向で局所的に屈曲する屈曲部を有しており、前記複数の押付け用突起は、前記シール収容溝の周方向で前記屈曲部に対してずれた位置に配置されているとよい。
【0016】
これによれば、例えば、複数の押付け用突起が、シール収容溝の周方向で屈曲部と一致した位置にそれぞれ配置されている場合に比べると、シール本体部は、各押付け用突起が押し潰されたときに、各押付け用突起に対してシール本体部の周方向両側に広がるように弾性変形し易くなる。したがって、各押付け用突起が押し潰されてシール本体部が変形したときに、第1凹み部及び第2凹み部におけるシール本体部の周方向で各押付け用突起と対応する部分が消滅してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態におけるルーツポンプを示す平断面図。
図2図1における2-2線断面図。
図3】シール部材の周辺を拡大して示す断面図。
図4】シール部材の正面図。
図5図4における5-5線断面図。
図6図4における6-6線断面図。
図7】第2の実施形態におけるシール部材の正面図。
図8図7における8-8線断面図。
図9図7における9-9線断面図。
図10】第3の実施形態におけるシール部材の周辺を拡大して示す断面図。
図11】第4の実施形態におけるシール収容溝とシール部材との関係を示す図。
図12】比較例におけるシール収容溝とシール部材との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、流体機械をルーツポンプに具体化した第1の実施形態を図1図6にしたがって説明する。本実施形態のルーツポンプは、燃料電池車に搭載されている。燃料電池車には、酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されている。そして、ルーツポンプは、燃料電池に流体としての水素(水素オフガス)を供給するポンプとして用いられている。
【0020】
図1に示すように、ルーツポンプ10のハウジング11は、モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15を有する筒状である。モータハウジング12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有する有底筒状である。ギアハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有する有底筒状である。
【0021】
ギアハウジング13は、ギアハウジング13の底壁13aの外面13cとモータハウジング12の周壁12bの開口端面12cとが突き合わされた状態で、モータハウジング12の周壁12bの開口側に連結されている。ギアハウジング13の底壁13aは、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。モータハウジング12の周壁12bの軸心方向とギアハウジング13の周壁13bの軸心方向とはそれぞれ一致している。
【0022】
ロータハウジング14は、板状の底壁14aと、底壁14aの外周部から筒状に延びる周壁14bと、を有する有底筒状である。ロータハウジング14は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14cとギアハウジング13の周壁13bの開口端面13dとが突き合わされた状態で、ギアハウジング13の周壁13bの開口側に連結されている。ロータハウジング14の底壁14aは、ギアハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。ギアハウジング13の周壁13bの軸心方向とロータハウジング14の周壁14bの軸心方向とはそれぞれ一致している。
【0023】
カバー部材15は、板状である。カバー部材15は、カバー部材15の一端面15aとロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dとが突き合わされた状態で、ロータハウジング14の周壁14bの開口側に連結されている。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口を閉塞している。
【0024】
ルーツポンプ10は、ハウジング11に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸16及び従動軸17を有している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向は、各周壁12b,13b,14bの軸心方向に一致している。駆動軸16には、円板状の駆動ギア18が固定されている。従動軸17には、駆動ギア18と噛合する円板状の従動ギア19が固定されている。駆動軸16には駆動ロータ20が設けられている。従動軸17には駆動ロータ20と噛合する従動ロータ21が設けられている。
【0025】
ルーツポンプ10は、駆動軸16を回転させる電動モータ22を備えている。電動モータ22は、ハウジング11内に形成されたモータ室23に収容されている。モータ室23は、モータハウジング12の底壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の底壁13aによって区画されている。電動モータ22は、駆動軸16に一体回転可能に止着された円筒状のモータロータ22aと、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されるとともにモータロータ22aを取り囲む円筒状のステータ22bと、を有している。ステータ22bは、図示しないティースに巻回されたコイル22cを有している。そして、電動モータ22は、コイル22cに電力が供給されることにより駆動して、モータロータ22aが駆動軸16と一体的に回転する。
【0026】
ハウジング11内には、駆動ギア18及び従動ギア19を収容するギア室24が形成されている。ギア室24は、ギアハウジング13の底壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の底壁14aによって区画されている。駆動ギア18及び従動ギア19は、互いに噛合した状態でギア室24に収容されている。ギア室24には、オイルが封入されている。オイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑及び温度上昇の抑制に寄与する。駆動ギア18及び従動ギア19は、オイルに浸されながら回転することにより、焼き付いたり磨耗したりすることなく高速回転が可能になっている。
【0027】
ハウジング11内には、駆動ロータ20及び従動ロータ21を収容するロータ室25が形成されている。ロータ室25は、ロータハウジング14の底壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって区画されている。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、互いに噛合した状態でロータ室25に収容されている。本実施形態において、モータ室23、ギア室24、及びロータ室25は、駆動軸16の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0028】
ギアハウジング13の底壁13aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とモータ室23とを隔てている。ロータハウジング14の底壁14aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とロータ室25とを隔てている。カバー部材15は、ロータ室25と外部とを隔てている。
【0029】
駆動軸16は、ギアハウジング13の底壁13a及びロータハウジング14の底壁14aを貫通している。従動軸17は、ロータハウジング14の底壁14aを貫通している。ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのモータ室23側の壁面を形成している。ロータハウジング14の底壁14aの外面14cは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのロータ室25側の壁面を形成している。
【0030】
ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、駆動軸16を回転可能に支持する第1軸受26を収容する円孔状の第1軸受収容凹部27が形成されている。駆動軸16は、第1軸受収容凹部27を貫通している。また、第1軸受収容凹部27の底面27aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とモータ室23との間をシールする環状の第1シール材28が収容される円孔状の第1シール収容凹部29が形成されている。第1シール収容凹部29は、第1軸受収容凹部27に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第1軸受26と第1軸受収容凹部27の底面27aとの間には、環状の第1スペーサ30が配置されている。
【0031】
ロータハウジング14の底壁14aの外面14cには、駆動軸16を回転可能に支持する第2軸受31を収容する円孔状の第2軸受収容凹部32が形成されている。駆動軸16は、第2軸受収容凹部32を貫通している。また、第2軸受収容凹部32の底面32aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第2シール材33が収容される円孔状の第2シール収容凹部34が形成されている。第2シール収容凹部34は、第2軸受収容凹部32に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第2軸受31と第2軸受収容凹部32の底面32aとの間には、環状の第2スペーサ35が配置されている。
【0032】
また、ロータハウジング14の底壁14aの外面14cには、従動軸17を回転可能に支持する第3軸受36を収容する円孔状の第3軸受収容凹部37が形成されている。従動軸17は、第3軸受収容凹部37を貫通している。また、第3軸受収容凹部37の底面37aには、従動軸17が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第3シール材38が収容される円孔状の第3シール収容凹部39が形成されている。第3シール収容凹部39は、第3軸受収容凹部37に連通している。また、従動軸17の回転軸線方向における第3軸受36と第3軸受収容凹部37の底面37aとの間には、環状の第3スペーサ40が配置されている。
【0033】
ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、従動軸17の一端部を回転可能に支持する第4軸受41を収容する円孔状の第4軸受収容凹部42が形成されている。従動軸17の一端部は、第4軸受収容凹部42内に配置され、第4軸受41に回転可能に支持されている。従動軸17の他端部は、第3軸受収容凹部37及び第3シール収容凹部39を貫通してロータ室25に突出している。従動軸17の他端部には従動ロータ21が取り付けられており、従動軸17の他端部は自由端になっている。よって、従動軸17は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0034】
モータハウジング12の底壁12aの内底面12eには、駆動軸16の一端部を回転可能に支持する第5軸受43を収容する円筒状の軸受部44が形成されている。駆動軸16の一端部は、軸受部44の内側に配置され、第5軸受43に回転可能に支持されている。駆動軸16の他端部は、第1シール収容凹部29、第1軸受収容凹部27、ギア室24、第2軸受収容凹部32、及び第2シール収容凹部34を貫通してロータ室25に突出している。駆動軸16の他端部には駆動ロータ20が取り付けられており、駆動軸16の他端部は自由端になっている。よって、駆動軸16は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0035】
図2に示すように、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が二葉状(瓢箪状)に形成されている。駆動ロータ20は、二条の山歯20aと、両山歯20aの間に形成された谷歯20bと、を有している。従動ロータ21は、二条の山歯21aと、両山歯21aの間に形成された谷歯21bと、を有している。
【0036】
そして、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動ロータ20の山歯20aと従動ロータ21の谷歯21bとの噛合、及び駆動ロータ20の谷歯20bと従動ロータ21の山歯21aとの噛合を繰り返しながらロータ室25内を回転可能になっている。駆動ロータ20は、図2に示す矢印R1の方向に回転し、従動ロータ21は、図2に示す矢印R2の方向へ回転する。
【0037】
ロータハウジング14の周壁14bには、ロータ室25を挟んで対向する位置に吸入口45及び吐出口46がそれぞれ形成されている。吸入口45及び吐出口46は、ロータ室25と外部とを連通する。
【0038】
吸入口45と吐出口46とを結ぶ直線方向Z1は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線r1,r2のそれぞれに対して垂直に交差する。ルーツポンプ10は、吸入口45が重力方向下向きに開口するように燃料電池自動車に搭載され、直線方向Z1は重力方向と一致する。図2において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。
【0039】
電動モータ22の駆動によって駆動軸16が回転すると、互いに噛合された駆動ギア18及び従動ギア19のギア連結を介して従動軸17が駆動軸16に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ20及び従動ロータ21が互いに噛合された状態でそれぞれ逆回転し、ルーツポンプ10は、駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転によって、吸入口45を介したロータ室25への水素の吸入、及び吐出口46を介したロータ室25からの水素の吐出を行う。
【0040】
図1に示すように、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間、及びロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間には、環状のシール部材50が設けられている。各シール部材50は、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間、及びロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間をシールしている。したがって、各シール部材50は、ハウジング11内外をシールしている。各シール部材50は、弾性体である。シール部材50は、ゴム製である。
【0041】
図3では、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成について詳しく説明する。なお、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間に設けられたシール部材50に関する構成は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成と同じであるため、その詳細な説明を省略する。同様に、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間に設けられたシール部材50に関する構成は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図3に示すように、シール部材50は、第1ハウジング構成体であるロータハウジング14の開口端面14dに形成される環状のシール収容溝60に収容されている。シール収容溝60の開口は、第2ハウジング構成体であるカバー部材15の一端面15aに閉塞されている。ロータハウジング14の開口端面14dは、カバー部材15との合わせ面を形成する第1形成面であり、カバー部材15の一端面15aは、ロータハウジング14との合わせ面を形成する第2形成面である。そして、本実施形態において、シール収容溝60は、第1形成面に形成されており、シール収容溝60の開口は、第2形成面に閉塞されている。ハウジング11は、互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有している。
【0043】
シール収容溝60は、ハウジング11の内部側に位置する環状の溝内側周面61と、ハウジング11の外部側に位置する環状の溝外側周面62と、を有している。また、シール収容溝60は、溝内側周面61におけるシール収容溝60の開口側とは反対側の端縁と溝外側周面62におけるシール収容溝60の開口側とは反対側の端縁とを接続する環状の溝底面63を有している。したがって、シール収容溝60は、底面である溝底面63と、溝底面63に接続される一対の側面である溝内側周面61及び溝外側周面62と、を有している。溝内側周面61及び溝外側周面62は、ロータハウジング14の周壁14bの軸心方向に互いに平行に延びている。溝底面63は、ロータハウジング14の周壁14bの軸心方向に対して直交する方向に延びている。溝底面63は、ロータハウジング14の開口端面14dと平行に延びている。
【0044】
シール収容溝60は、溝内側周面61におけるシール収容溝60の開口側の端縁とロータハウジング14の開口端面14dとの間に形成された環状の溝内側面取り部64を有している。また、シール収容溝60は、溝外側周面62におけるシール収容溝60の開口側の端縁とロータハウジング14の開口端面14dとの間に形成された環状の溝外側面取り部65を有している。溝内側面取り部64及び溝外側面取り部65は、ロータハウジング14の開口端面14dに対して直線状に斜交するテーパ形状(C面取り形状)である。
【0045】
図4に示すように、シール部材50は、環状のシール本体部51と、シール本体部51の内周面51aから突出するとともにシール本体部51の周方向に間隔を置いて配置される複数の押付け用突起52と、を備えている。なお、以下の説明において、シール本体部51を貫通する方向をシール本体部51の軸線方向とし、シール本体部51の軸線を中心に外周側へ延在する方向をシール本体部51の径方向とする。本実施形態において、シール本体部51の内周面51aからは9つの押付け用突起52が突出しており、9つの押付け用突起52は、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。各押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aから膨出する薄板状である。各押付け用突起52の厚み方向は、シール本体部51の軸線方向に一致する。各押付け用突起52における厚み方向の両側に位置する両面は、互いに平行に延びる平坦面状である。各押付け用突起52におけるシール本体部51の内周面51aからの膨出方向に位置する面は、湾曲面状であるとともにシール本体部51の内周面51aに連続している。
【0046】
図5に示すように、シール本体部51は、複数の環状の第1リップ部53を有している。本実施形態において、シール本体部51は、第1リップ部53を二つ有している。二つの第1リップ部53は、シール本体部51の径方向で互いに離間した状態でシール本体部51の周方向全周に亘って延びている。そして、シール本体部51は、隣り合う第1リップ部53の間に形成される環状の第1凹み部53aを有している。
【0047】
二つの第1リップ部53及び第1凹み部53aは、シール本体部51の軸線方向の一方に位置する端面を形成している。二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第1リップ部53は、シール本体部51の外周面51bに連続している。二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第1リップ部53は、シール本体部51の内周面51aに連続している。二つの第1リップ部53は、シール本体部51の径方向で隣り合っている。二つの第1リップ部53の外面同士は、シール本体部51の径方向で重なっている。二つの第1リップ部53の外面同士は、第1凹み部53aの内面によって接続されている。第1凹み部53aの内面は、弧状に湾曲している。
【0048】
二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第1リップ部53におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H1は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第1リップ部53におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H2は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。二つの第1リップ部53それぞれのリップ幅H1,H2は、同じ幅である。
【0049】
シール本体部51は、複数の環状の第2リップ部54を有している。本実施形態において、シール本体部51は、第2リップ部54を二つ有している。二つの第2リップ部54は、シール本体部51の径方向で互いに離間した状態でシール本体部51の周方向全周に亘って延びている。そして、シール本体部51は、隣り合う第2リップ部54の間に形成される環状の第2凹み部54aを有している。
【0050】
二つの第2リップ部54及び第2凹み部54aは、シール本体部51の軸線方向の他方に位置する端面を形成している。二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54は、シール本体部51の外周面51bに連続している。二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54は、シール本体部51の内周面51aに連続している。二つの第2リップ部54は、シール本体部51の径方向で隣り合っている。二つの第2リップ部54の外面同士は、シール本体部51の径方向で重なっている。二つの第2リップ部54の外面同士は、第2凹み部54aの内面によって接続されている。第2凹み部54aの内面は、弧状に湾曲している。
【0051】
二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H3は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H4は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。二つの第2リップ部54それぞれのリップ幅H3,H4は、同じ幅である。二つの第1リップ部53それぞれのリップ幅H1,H2は、二つの第2リップ部54それぞれのリップ幅H3,H4と同じ幅である。
【0052】
シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1は、シール本体部51の軸線方向における第1リップ部53の外面と第2リップ部54の外面との間の距離L2よりも小さい。また、第1凹み部53aの最深部531a及び第2凹み部54aの最深部541aは、シール本体部51の軸線方向で互いに重なる位置に配置されている。したがって、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1は、シール本体部51の軸線方向に延びている。本実施形態において、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3は、シール本体部51の周方向で一定である。したがって、第1凹み部53a及び第2凹み部54aの深さは、シール本体部51の周方向で一定である。第1凹み部53aの深さは、第2凹み部54aの深さと同じである。
【0053】
図6に示すように、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、各押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aにおけるシール本体部51の軸線方向の中央部に配置されている。シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも小さい。また、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bと押付け用突起52の先端部52eまでの距離L5は、図3に示すように、シール収容溝60の径方向における溝内側周面61と溝外側周面62との間の距離L6よりも小さい。さらに、シール収容溝60の深さL7は、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きい。したがって、シール収容溝60の深さL7は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。
【0054】
シール部材50は、シール部材50がシール収容溝60内に収容されてシール収容溝60内で弾性変形する前の状態において、押付け用突起52の先端部52eをシール本体部51の軸線方向で通過するシール部材50の断面(図6に示す断面)でのシール収容溝60に対する充填率が100%を超えるように設計されている。
【0055】
図3に示すように、二つの第1リップ部53は、シール収容溝60の溝底面63に接している。したがって、二つの第1リップ部53は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向(図3において矢印X1で示す方向)でロータハウジング14に接する第1シール部を構成している。また、二つの第2リップ部54は、カバー部材15の一端面15aに接している。したがって、二つの第2リップ部54は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でカバー部材15に接する第2シール部を構成している。ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向は、ロータハウジング14の周壁14bの軸心方向に一致している。シール本体部51は、ロータハウジング14及びカバー部材15に接する。
【0056】
さらに、複数の押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aからシール収容溝60の溝内側周面61に向けて突出している。そして、複数の押付け用突起52は、溝内側周面61に接触して溝内側周面61を押圧している。シール本体部51は、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、溝外側周面62に押圧された状態で接している。したがって、シール本体部51は、複数の押付け用突起52によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されている。
【0057】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
シール部材50は、シール部材50がシール収容溝60内に収容されてシール収容溝60内で弾性変形する前の状態において、押付け用突起52の先端部52eをシール本体部51の軸線方向で通過するシール部材50の断面でのシール収容溝60に対する充填率が100%を超えるように設計されている。このため、カバー部材15がロータハウジング14に取り付けられる際に、シール部材50は、二つの第1リップ部53がシール収容溝60の溝底面63に接するとともに、二つの第2リップ部54がカバー部材15の一端面15aに接した状態で、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰される。そして、シール部材50が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰されるように弾性変形することにより、複数の押付け用突起52が、溝内側周面61に接触して溝内側周面61を押圧する。
【0058】
複数の押付け用突起52が溝内側周面61を押圧すると、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより各押付け用突起52が押し潰される。そして、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されることにより、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形しようとする。このとき、二つの第1リップ部53がシール収容溝60の溝底面63に接するとともに、二つの第2リップ部54がカバー部材15の一端面15aに接していることから、シール本体部51全体としては、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との間の隙間への弾性変形が許容される。その結果、シール本体部51の外周面51bが溝外側周面62に接触するとともに溝外側周面62を押圧するようにシール本体部51が弾性変形する。
【0059】
ところで、例えば、燃料電池車が海岸付近を走行する等した場合に、塩水が、ハウジング11の外部からロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介してハウジング11の内部に向けて侵入しようとする場合がある。この場合、シール部材50は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介したハウジング11の外部からハウジング11の内部への塩水の侵入を抑制する。
【0060】
例えば、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水が、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との間、及び二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第1リップ部53と溝底面63との間を通過する場合がある。この場合であっても、第1凹み部53aの内部で塩水が拡散され、塩水の流れの直進性が失われる。これにより、塩水がシール部材50を通過し難くなり、塩水がハウジング11の内部へ侵入し難くなっている。
【0061】
例えば、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水が、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54とカバー部材15の一端面15aとの間を通過する場合がある。この場合であっても、第2凹み部54aの内部で塩水が拡散され、塩水の流れの直進性が失われる。これにより、塩水がシール部材50を通過し難くなり、塩水がハウジング11の内部へ侵入し難くなっている。
【0062】
また、シール本体部51の外周面51bが、複数の押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、溝外側周面62に押圧された状態で接しているため、溝外側周面62とシール部材50との間の隙間が小さくなっている。このため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなる。
【0063】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1-1)シール部材50は、シール本体部51から溝内側周面61に向けて突出するとともにシール本体部51の周方向に間隔をおいて配置される複数の押付け用突起52を備えている。そして、シール本体部51は、複数の押付け用突起52によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されている。これによれば、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間が小さくなる。このため、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなる。したがって、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0064】
(1-2)複数の環状の第1リップ部53は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でロータハウジング14に接する第1シール部を構成している。また、複数の環状の第2リップ部54は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でカバー部材15に接する第2シール部を構成している。これによれば、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水が、隣り合う第1リップ部53の間に位置する環状の第1凹み部53a、及び隣り合う第2リップ部54の間に位置する環状の第2凹み部54aの内部で拡散される。これにより、塩水の流れの直進性が失われるため、塩水がシール部材50を通過し難くなる。その結果、シール部材50のシール性を向上させることができる。
【0065】
(1-3)シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1が、シール本体部51の軸線方向における第1リップ部53の外面と第2リップ部54の外面との間の距離L2よりも小さい。この場合であっても、カバー部材15がロータハウジング14に取り付けられる際に、複数の押付け用突起52が溝内側周面61に接触することにより、シール部材50の倒れ(捩れ)を抑制することができる。
【0066】
(1-4)押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも小さい。そして、シール収容溝60の深さL7は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。これによれば、複数の押付け用突起52が、シール収容溝60の溝底面63やカバー部材15の一端面15aに接触することが抑制される。このため、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、シール本体部51の外周面51bが溝外側周面62に接触するとともに溝外側周面62を押圧するようにシール本体部51が弾性変形し易くなる。その結果、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間を確実に小さくすることができる。
【0067】
(1-5)シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bと押付け用突起52の先端部52eまでの距離L5は、シール収容溝60の径方向における溝内側周面61と溝外側周面62との間の距離L6よりも小さい。これによれば、シール部材50をシール収容溝60内に収容し易くなるため、シール部材50におけるシール収容溝60に対する組み付け性を向上させることができる。
【0068】
(1-6)シール収容溝60の深さL7は、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きい。これによれば、シール部材50が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰されるように弾性変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aが消滅してしまうことを抑制することができる。また、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けて、シール本体部51が弾性変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aが消滅してしまうことを抑制することができる。
【0069】
(1-7)複数の押付け用突起52は、シール本体部51の周方向に間隔をおいて配置されている。これによれば、例えば、シール本体部51の内周面51aから押付け用突起がシール本体部51の内周面51aの全周に亘って突出している場合に比べると、各押付け用突起52が押し潰されたときに、各押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向両側への弾性変形が許容され易くなる。したがって、シール本体部51が、カバー部材15を押し退けるように弾性変形してしまうことが抑制され、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間のシール性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0070】
(第2の実施形態)
以下、流体機械をルーツポンプに具体化した第2の実施形態を図7図9にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0071】
図7図8及び図9に示すように、シール本体部51は、隣り合う第1リップ部53の間に形成される環状の第1凹み部53a、及び隣り合う第2リップ部54の間に形成される環状の第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっている。
【0072】
図7に示すように、第1凹み部53aは、第1深溝部71a及び第1浅溝部71bを有している。第1深溝部71aは、シール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分に一つずつ配置されている。したがって、第1凹み部53aは、9つの第1深溝部71aを有しており、9つの第1深溝部71aは、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。第1浅溝部71bは、第1凹み部53aにおいて、シール本体部51の周方向で隣り合う第1深溝部71aの間に位置する部分である。したがって、第1凹み部53aは、9つの第1浅溝部71bを有しており、9つの第1浅溝部71bは、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。
【0073】
各第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71aはそれぞれ同じである。各第1浅溝部71bにおけるシール本体部51の周方向の長さL71bはそれぞれ同じである。シール本体部51の周方向で隣り合う第1深溝部71aと第1浅溝部71bとは、第1段差部71cによって接続されている。
【0074】
第2凹み部54aは、第2深溝部72a及び第2浅溝部72bを有している。第2深溝部72aは、シール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分に一つずつ配置されている。したがって、第2凹み部54aは、9つの第2深溝部72aを有しており、9つの第2深溝部72aは、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。第2浅溝部72bは、第2凹み部54aにおいて、シール本体部51の周方向で隣り合う第2深溝部72aの間に位置する部分である。したがって、第2凹み部54aは、9つの第2浅溝部72bを有しており、9つの第2浅溝部72bは、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。
【0075】
各第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aはそれぞれ同じである。各第2浅溝部72bにおけるシール本体部51の周方向の長さL72bはそれぞれ同じである。シール本体部51の周方向で隣り合う第2深溝部72aと第2浅溝部72bとは、第2段差部72cによって接続されている。
【0076】
また、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71aは、第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aと同じである。第1浅溝部71bにおけるシール本体部51の周方向の長さL71bは、第2浅溝部72bにおけるシール本体部51の周方向の長さL72bと同じである。
【0077】
図8に示すように、第1浅溝部71b及び第2浅溝部72bの内面は、弧状に湾曲している。第1浅溝部71bの深さは、第2浅溝部72bの深さと同じである。図9に示すように、第1深溝部71a及び第2深溝部72aの内面は、弧状に湾曲している。第1深溝部71aの深さは、第2深溝部72aの深さと同じである。図8及び図9に示すように、第1浅溝部71bの最深部711bと第2浅溝部72bの最深部721bとを結ぶ直線S11の距離L11は、第1深溝部71aの最深部711aと第2深溝部72aの最深部721aとを結ぶ直線S12の距離L12よりも大きい。
【0078】
図9に示すように、第1深溝部71a及び第2深溝部72aは、第1深溝部71aの最深部711aと第2深溝部72aの最深部721aとを結ぶ直線S12の距離L12が、シール本体部51の軸線方向における第1リップ部53の外面と第2リップ部54の外面との間の距離L2の半分よりも小さくなるようにシール本体部51に形成されている。また、第1深溝部71aの最深部711aと第2深溝部72aの最深部721aとを結ぶ直線S12の距離L12は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。
【0079】
図7に示すように、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aは、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8よりも大きい。特に、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aは、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8の2倍よりも大きい。シール部材50を軸線方向から見たときに、各押付け用突起52は、シール本体部51の径方向で第1深溝部71a及び第2深溝部72aと重なっている。したがって、シール本体部51は、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっている。
【0080】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
シール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分は、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けると、各押付け用突起52が押し潰される分だけ、その他の部分よりも変形量が大きくなる。このとき、シール本体部51は、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっている。したがって、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅してしまうことが抑制されている。
【0081】
第2の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-5)、(1-6)、(1-7)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0082】
(2-1)シール本体部51は、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分の深さが、その他の部分の深さよりも深くなっている。したがって、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅してしまうことを抑制することができる。その結果、シール部材50のシール性を確保することができる。
【0083】
(2-2)第1深溝部71aの最深部711aと第2深溝部72aの最深部721aとを結ぶ直線S12の距離L12は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。これによれば、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1リップ部53及び第2リップ部54が、第1凹み部53a及び第2凹み部54aそれぞれに向けて倒れてしまうことを抑制することができる。
【0084】
(2-3)各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分への影響範囲は、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8よりも大きい。そこで、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aを、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8よりも大きくした。特に、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aを、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8の2倍よりも大きくした。これによれば、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅してしまうことをさらに抑制し易くすることができる。
【0085】
(2-4)第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応するそれぞれの部分の深さを、その他の部分の深さよりも深くしたことにより減少したシール部材50におけるシール収容溝60に対する体積分を、例えば、第1リップ部53及び第2リップ部54に振り分けることが可能となる。したがって、二つの第1リップ部53のリップ幅H1,H2及び二つの第2リップ部54のリップ幅H3,H4を長くすることができ、二つの第1リップ部53とロータハウジング14との間のシール長、及び二つの第2リップ部54とカバー部材15との間のシール長を長く確保することができる。
【0086】
(第3の実施形態)
以下、流体機械をルーツポンプに具体化した第3の実施形態を図10にしたがって説明する。
【0087】
図10に示すように、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H4は、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H3よりも大きい。また、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H4は、二つの第1リップ部53それぞれのリップ幅H1,H2よりも大きい。二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H3は、二つの第1リップ部53それぞれのリップ幅H1,H2と同じ幅である。したがって、二つの第2リップ部54のリップ幅H3,H4の合計は、二つの第1リップ部53のリップ幅H1,H2の合計よりも大きい。
【0088】
第3の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-5)、(1-6)、(1-7)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0089】
(3-1)ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長は、二つの第1リップ部53とシール収容溝60の溝底面63との接触部分に、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との接触部分を加えた合計である。それに対して、カバー部材15とシール部材50との間のシール長は、二つの第2リップ部54とカバー部材15の一端面15aとの接触部分の合計である。そこで、二つの第2リップ部54のリップ幅H3,H4の合計を、二つの第1リップ部53のリップ幅H1,H2の合計よりも大きくすることで、カバー部材15とシール部材50との間のシール長と、ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長との差を小さくすることができる。その結果、シール部材50のシール性を向上させることができる。
【0090】
(第4の実施形態)
以下、流体機械をルーツポンプに具体化した第4の実施形態を図11及び図12にしたがって説明する。
【0091】
図11に示すように、シール収容溝60の溝内側周面61及び溝外側周面62は、シール収容溝60の周方向で局所的に屈曲する複数の屈曲部66と、シール収容溝60の周方向で隣り合う屈曲部66同士を接続する平面部67と、をそれぞれ有している。シール収容溝60の溝外側周面62は、シール収容溝60の周方向で溝内側周面61に沿って延びている。そして、複数の押付け用突起52は、シール収容溝60の周方向で屈曲部66に対してずれた位置にそれぞれ配置されている。したがって、複数の押付け用突起52は、シール収容溝60の周方向で各平面部67と一致した位置にそれぞれ配置されている。
【0092】
そして、各押付け用突起52が溝内側周面61の各平面部67を押圧すると、各押付け用突起52による各平面部67への押圧力に対する反発力を平面部67から受けることにより各押付け用突起52が押し潰される。そして、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されることにより、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形しようとする。このとき、二つの第1リップ部53がシール収容溝60の溝底面63に接するとともに、二つの第2リップ部54がカバー部材15の一端面15aに接していることから、シール本体部51全体としては、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との間の隙間への弾性変形が許容される。その結果、シール本体部51の外周面51bが溝外側周面62に接触するとともに溝外側周面62を押圧するようにシール本体部51が弾性変形する。
【0093】
次に、第4の実施形態の作用について説明する。
図12に示すように、例えば、各押付け用突起52が、シール収容溝60の周方向で各屈曲部66と一致した位置にそれぞれ配置されている場合を考える。この場合、各押付け用突起52が溝内側周面61の各屈曲部66を押圧すると、各押付け用突起52による各屈曲部66への押圧力に対する反発力を屈曲部66から受けることにより各押付け用突起52が押し潰される。このとき、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されても、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形し難くなっている。このため、二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第1リップ部53、及び二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の周方向で押付け用突起52と対応する部分が、第1凹み部53a及び第2凹み部54aそれぞれに向けて倒れ易い。その結果、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅し易くなっている。
【0094】
そこで、本実施形態では、図11に示すように、各押付け用突起52が、シール収容溝60の周方向で屈曲部66に対してずれた位置にそれぞれ配置されており、シール収容溝60の周方向で各平面部67と一致した位置にそれぞれ配置されている。これによれば、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されたときに、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形し易くなっている。このため、二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第1リップ部53、及び二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の周方向で押付け用突起52と対応する部分が、第1凹み部53a及び第2凹み部54aそれぞれに向けて倒れ難い。したがって、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅してしまうことが抑制されている。
【0095】
第4の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-5)、(1-6)、(1-7)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0096】
(4-1)複数の押付け用突起52は、シール収容溝60の周方向で屈曲部66に対してずれた位置にそれぞれ配置されている。これによれば、例えば、各押付け用突起52が、シール収容溝60の周方向で屈曲部66と一致した位置に配置されている場合に比べると、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されたときに、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形し易くなる。このため、二つの第1リップ部53のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第1リップ部53、及び二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の周方向で押付け用突起52と対応する部分が、第1凹み部53a及び第2凹み部54aそれぞれに向けて倒れ難い。したがって、各押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、第1凹み部53a及び第2凹み部54aにおけるシール本体部51の周方向で各押付け用突起52と対応する部分が消滅してしまうことを抑制することができる。
【0097】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0098】
○ 上記各実施形態において、ルーツポンプ10は、シール収容溝60がロータハウジング14の開口端面14dに形成されておらず、カバー部材15の一端面15aに形成され、シール収容溝60の開口がロータハウジング14の開口端面14dによって閉塞されている構成であってもよい。
【0099】
○ 上記各実施形態において、ルーツポンプ10は、ロータハウジング14の開口端面14dに加えて、カバー部材15の一端面15aにもシール収容溝60が形成されており、両シール収容溝60が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向で重なっている構成であってもよい。要は、シール収容溝60は、第1ハウジング構成体の第1形成面及び第2ハウジング構成体の第2形成面の少なくとも一方に形成されていればよい。この場合、二つの第2リップ部54は、カバー部材15の一端面15aに形成されたシール収容溝60の溝底面63に接している。そして、複数の押付け用突起52は、両シール収容溝60それぞれの溝内側周面61を跨ぐ部分を押圧し、シール本体部51の外周面51bは、両シール収容溝60それぞれの溝外側周面62に押圧された状態で接している。これによれば、カバー部材15とシール部材50との間のシール長と、ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長との差を小さくすることができ、シール部材50のシール性を向上させることができる。
【0100】
○ 上記各実施形態において、複数の押付け用突起52がシール本体部51の外周面51bから突出していてもよい。そして、シール部材50は、複数の押付け用突起52がシール本体部51から溝外側周面62に向けて突出するとともに溝外側周面62を押圧するように、シール収容溝60内に収容されていてもよい。この場合、シール本体部51の内周面51aは、複数の押付け用突起52による溝外側周面62への押圧力に対する反発力を溝外側周面62から受けることにより、溝内側周面61に押圧された状態で接している。例えば、ロータ室25内に吸入される水素は、燃料電池の発電に伴い生成された生成水を含んでいる。シール部材50は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介したロータ室25内からハウジング11の外部への生成水を含んだ水素の洩れを抑制する。そして、シール本体部51の内周面51aが、複数の押付け用突起52による溝外側周面62への押圧力に対する反発力を溝外側周面62から受けることにより、溝内側周面61に押圧された状態で接しているため、溝内側周面61とシール部材50との間の隙間が小さくなっている。このため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に生成水を含んだ水素が溜まり難くなる。したがって、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性が向上する。
【0101】
○ 上記各実施形態において、シール部材50は、二つの第1リップ部53及び第1凹み部53aを有していない構成であってもよい。そして、シール部材50は、シール本体部51の軸線方向の一方に位置する端面全体が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でロータハウジング14に接する第1シール部として機能する構成であってもよい。これによれば、ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長を長く確保することができる。
【0102】
○ 上記各実施形態において、シール部材50は、二つの第2リップ部54及び第2凹み部54aを有していない構成であってもよい。そして、シール部材50は、シール本体部51の軸線方向の他方に位置する端面全体が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でカバー部材15に接する第2シール部として機能する構成であってもよい。これによれば、カバー部材15とシール部材50との間のシール長を長く確保することができる。
【0103】
○ 上記各実施形態において、第1リップ部53の数を3つ以上にしてもよい。
○ 上記各実施形態において、第2リップ部54の数を3つ以上にしてもよい。特に、第3の実施形態のように、二つの第2リップ部54のリップ幅H3,H4の合計を、二つの第1リップ部53のリップ幅H1,H2の合計よりも大きくするために、リップ幅H3,H4を変更するのではなく、第2リップ部54の数を第1リップ部53の数よりも多くするようにしてもよい。
【0104】
○ 上記各実施形態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1が、シール本体部51の軸線方向における第1リップ部53の外面と第2リップ部54の外面との間の距離L2よりも大きくてもよい。
【0105】
○ 上記各実施形態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4が、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3と同じであってもよい。
【0106】
○ 上記各実施形態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、シール本体部51の軸線方向における第1リップ部53の外面と第2リップ部54の外面との間の距離L2よりも小さければ、第1凹み部53aの最深部531aと第2凹み部54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きくてもよい。
【0107】
○ 第2の実施形態において、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aが、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8よりも大きく、且つ押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8の2倍よりも小さくてもよい。
【0108】
〇 第2の実施形態において、第1深溝部71aにおけるシール本体部51の周方向の長さL71a及び第2深溝部72aにおけるシール本体部51の周方向の長さL72aが、押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向の長さL8と同じであってもよい。
【0109】
〇 第3の実施形態において、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向外側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H3を、二つの第2リップ部54のうち、シール本体部51の径方向内側に位置する第2リップ部54におけるシール本体部51の径方向のリップ幅H4よりも大きくしてもよい。
【0110】
○ 上記各実施形態において、押付け用突起52の数は、複数であれば特に限定されるものではなく、例えば、9つよりも少なくてもよいし、9つよりも多くてもよい。
○ 上記各実施形態において、押付け用突起52は、溝内側周面61に向けて突出する押付け用突起と、溝外側周面62に向けて突出する押付け用突起とを、シール本体部51の周方向に交互に設けてもよい。要は、シール部材50は、シール本体部51から溝内側周面61及び溝外側周面62の少なくとも一方に向けて突出する複数の押付け用突起を備えていればよい。
【0111】
○ 上記各実施形態において、例えば、ロータハウジング14とカバー部材15とが、ロータハウジング14の周壁14bの内側にカバー部材15が嵌め込まれた状態で連結されていてもよい。この場合、ロータハウジング14の周壁14bの内周面、及びカバー部材15の外周面は、ロータハウジング14とカバー部材15との合わせ面を形成しており、ロータハウジング14の周壁14bの内周面とカバー部材15の外周面との合わせ方向が、ロータハウジング14の周壁14bの径方向に一致している。
【0112】
○ 上記各実施形態において、溝内側周面61及び溝外側周面62は、ロータハウジング14の周壁14bの軸心方向に互いに平行に延びていなくてもよく、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に対して斜交して延びるとともに互いに斜交していてもよい。
【0113】
〇 第4の実施形態において、シール収容溝60の溝内側周面61及び溝外側周面62は、シール収容溝60の周方向で局所的に屈曲する複数の屈曲部66と、シール収容溝60の周方向で隣り合う屈曲部66同士を接続するとともに屈曲部66よりも曲率が小さい曲面部と、をそれぞれ有していてもよい。
【0114】
○ 上記各実施形態において、シール部材50の材質は、弾性体であれば、ゴム製に限定されるものではない。
○ 上記各実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が、例えば、三葉状であったり、四葉状であったりしてもよい。
【0115】
○ 上記各実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21が、例えば、ヘリカル形状であってもよい。
○ 上記各実施形態において、流体機械としては、ルーツポンプ10に限らず、例えば、スクロール型圧縮機やピストン型圧縮機などであってもよい。要は、互いに連結される第1ハウジング構成体及び第2ハウジング構成体を有するハウジング11を備えた流体機械であれば、その型式は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0116】
10…流体機械としてのルーツポンプ、11…ハウジング、14…第1ハウジング構成体であるロータハウジング、14d…第1形成面である開口端面、15…第2ハウジング構成体であるカバー部材、15a…第2形成面である一端面、50…シール部材、51…シール本体部、52…押付け用突起、53…第1シール部を構成する第1リップ部、53a…第1凹み部、54…第2シール部を構成する第2リップ部、54a…第2凹み部、60…シール収容溝、61…側面である溝内側周面、62…側面である溝外側周面、63…底面である溝底面、66…屈曲部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12