(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】ロール負極をアルカリ化するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220324BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20220324BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220324BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2018529619
(86)(22)【出願日】2016-12-08
(86)【国際出願番号】 US2016065550
(87)【国際公開番号】W WO2017100415
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-04
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512138976
【氏名又は名称】ナノスケール コンポーネンツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】グラント,ロバート,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】スウィートランド,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】アカリッジ,アセラ,マハ
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-077963(JP,A)
【文献】特開2014-017074(JP,A)
【文献】特開2002-367607(JP,A)
【文献】特開2014-126411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0038497(US,A1)
【文献】米国特許第05372687(US,A)
【文献】米国特許第06084796(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極をアルカリ化して、アルカリ金属を有さないむき出しの基板領域を特徴とするアルカリ化負極を作製する電気化学的方法であって、
a. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで、該負極は、表面上にアルカリ化コーティングを有する少なくとも1つの領域およびアルカリ化コーティングを有さない少なくとも1つの領域を特徴とする少なくとも1つの表面を含む導電性基板を含む;
b. 順還元電流を適用して、アルカリ化コーティングを有する領域中で負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な時間、負極をアルカリ化する工程;
c
. 逆酸化電流を適用してむき出しの基板領域から任意のアルカリ金属堆積を除去する工程;ならびに
d. 工程bおよび/またはcを反復する工程
を含む、方法。
【請求項2】
該アルカリ化された負極が、0.1mAh/cm
2~10mAh/cm
2の適用量を達成し、かつアルカリ金属堆積を示さない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程bおよびcが少なくとも約3回、好ましくは少なくとも約5回、より好ましくは少なくとも約20回反復される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1回の工程bにより作製される生成物が、アルカリ金属堆積を含むむき出しの基板領域を含む、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
逆酸化電流が、少なくとも1回の工程cにおいてむき出しの基板領域から任意のアルカリ金属堆積を除去するために適用される、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
該アルカリ金属堆積が樹枝状晶を含む、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
該アルカリ化コーティングが不連続である
、請求項
1~6いずれか記載の方法。
【請求項8】
該負極が、ロール負極である
、請求項
1~7いずれか記載の方法。
【請求項9】
アルカリ化コーティングを有さない少なくとも1つの領域が、負極の周および/または該負極の周に垂直でありかつ該負極の周
を連結するバンドを含み、暴露された導電性基板を有する
、請求項
1~8いずれか記載の方法。
【請求項10】
該アルカリ金属塩が塩化リチウムで構成される
、請求項
1~9いずれか記載の方法。
【請求項11】
該導電性基板が銅またはニッケルである
、請求項
1~10いずれか記載の方法。
【請求項12】
該アルカリ化コーティングが、グラファイトもしくはケイ素またはそれらの配合物で構成される
、請求項
1~11いずれか記載の方法。
【請求項13】
該アルカリ化コーティングが、導電性基板の2つの表面上にある
、請求項
1~12いずれか記載の方法。
【請求項14】
該むき出しの基板領域が、導電性基板の縁に沿って配置される
、請求項
1~13いずれか記載の方法。
【請求項15】
該順還元電流および逆酸化電流がDCである
、請求項
1~14いずれか記載の方法。
【請求項16】
該順還元電流および逆酸化電流がACである、請求項1~
14いずれか記載の方法。
【請求項17】
該逆
酸化電流と順
還元電流の比が固定される、請求項1~16いずれか記載の方法。
【請求項18】
該逆
酸化電流と順
還元電流の比が増加する、請求項1~
16いずれか記載の方法。
【請求項19】
該逆
酸化電流の持続時間と順
還元電流の持続時間の比が固定される、請求項1~18いずれか記載の方法。
【請求項20】
該逆
酸化電流の持続時間と順
還元電流の持続時間の比が増加する、請求項1~
18いずれか記載の方法。
【請求項21】
工程bが1ミリ秒~15分である
、請求項
1~20いずれか記載の方法。
【請求項22】
工程bが1センチ秒~5分である、請求項
21記載の方法。
【請求項23】
工程bが1秒~3分である、請求項
22記載の方法。
【請求項24】
工程cが1ミリ秒~15分である
、請求項
1~23いずれか記載の方法。
【請求項25】
工程cが1センチ秒~5分である、請求項
24記載の方法。
【請求項26】
工程cが1秒~3分である、請求項
25記載の方法。
【請求項27】
該順還元電流が、該逆酸化電流よりも1~8倍大きい
、請求項
1~26いずれか記載の方法。
【請求項28】
該順還元電流が、該逆酸化電流よりも約2倍大きい
、請求項
1~27いずれか記載の方法。
【請求項29】
該順還元電流密度が0.1mA/cm
2~10mA/cm
2である
、請求項
1~28いずれか記載の方法。
【請求項30】
該順還元電流密度が約1mA/cm
2である
、請求項
1~29いずれか記載の方法。
【請求項31】
該逆酸化電流密度が0.1mA/cm
2~1.2mA/cm
2である
、請求項
1~30いずれか記載の方法。
【請求項32】
該逆酸化電流密度が約0.6mA/cm
2である
、請求項
1~31いずれか記載の方法。
【請求項33】
該逆酸化電流
のパルスの持続時間が、該順還元電流
のパルスの1%~100%の時間である、請求項1~
14および16~32いずれか
1項記載の方法。
【請求項34】
該逆酸化電流
のパルスの持続時間が、該順還元電流
のパルスの5%~30%の時間である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
該逆酸化電流
のパルスの持続時間が、該順還元電流
のパルスの約20%の時間である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
該逆酸化電流
のパルスの持続時間が、該順還元電流
のパルスの約15%の時間である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
該逆酸化電流
のパルスの持続時間が約30秒であり、該順還元電流
のパルスの持続時間が約150秒である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
a. 負極の暴露された縁の上下のそれぞれに、縁ガード孔、誘電場孔、またはシールドを配置する工程;
b. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで、該負極は、少なくとも1つの表面、該少なくとも1つの表面上のアルカリ化コーティングを含む導電性基板を含む;および
c. 該溶液を介して順還元電流を適用して負極をアルカリ化する工程
を含む、負極をアルカリ化する電気化学的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2015年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/265,090号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
グラファイトは、リチウムイオン電池を作製するために使用される最も一般的な負極物質である。グラファイトは通常、銅基板またはホイル上にコーティングされるが、他のリチウム不活性金属が使用されることもある。グラファイトは約370mAh/グラムの可逆的容量を提供し、固体電解質界面(solid electrolyte interphase)(SEI)層の構築のために約5%の不可逆的容量消失を被る。最近、リチウムイオン電池の比容量を大きく増加し得たより高い容量の負極物質が紹介された。例えば、不定形ケイ素は、3500mAh/グラムも提供し得る(Obrovac MN and Krause LJ, 2007. Reversible cycling of crystalline silicon powder. J. Electrochem. Soc. 154: A103-A108)。
【0003】
リチウムイオン電池に使用される負極物質は初期にはリチウムを含まないので、通常、正極物質が、電池サイクリングおよび不可逆的サイクル消失(irreversible cycle loss) (IRCL)に使用されるリチウムの全てを供給する。不運なことに、ケイ素は25%までのIRCLを発揮する。これは、電池のサイクル可能容量の25%が利用可能でなくなり、高価で重い正極が十分に利用されていないことを意味する。
【0004】
a) 薄層リチウム金属をセルに添加すること;b) 非水性の乾燥環境における電気分解によりリチウムを負極活物質に添加すること;c) 安定化したリチウム金属粉末またはSLMP(FMC Corporation, Philadelphia, PA)としてリチウムを負極物質に分散させること;およびd) 組み立ての際に、リチウム供与物質を電池電解液に添加することにより、過剰なリチウムを負極物質に添加する試みがなされている。US 8,133,374 B2は、これらの方法のいくつかの部分的概要として本明細書において参照される。2015年7月9日にGrantらによって発明の名称Method of Alkaliating Electrodesで米国特許出願公開公報2015019184号として公開され、2015年1月6日に出願されたUSSN 14/590,573は、その全体において、ならびに電気化学的リチウム化についての方法および装置の詳細について参照により援用される。
【0005】
商業的環境における負極ロールについて、タブ溶接、スリット切断(slitting)または他の目的などのその後のセル組み立て方法を考慮して、基板の一部がコーティングされないことが望ましい。負極ロールは、延びる(roll)のに十分な長さの負極物質として定義される。
図1は、らせん状に巻かれたセルをパッケージ化する技術を容易にするために、基板の両面上にむき出しの銅領域が存在するコーティング102を有する一般的な負極基板101の縁から見た図を示す。別の状況において、むき出しの銅は、切られて重ねられた電極シートにより構築されるセルの溶接を考慮して、ロールの1つまたは両方の縁103上で暴露され得る。さらに別の場合では、消費者用電子機器デバイスのための小さなセルの効率的な製造のために広い負極ロール(例えば、30~60cm)を使用することが望ましくあり得る。かかる場合において、これらのより大きな負極ロールの内表面は、横列(row)または縦列(column)において多くのむき出しの銅領域を含み、外表面または縁も保護される必要があり得る。これらすべての場合において、任意のむき出しの基板領域は、負極ロールの電気化学的リチウム化の際にリチウム金属集積(buildup)から保護される必要がある。これらおよび他の形態が延びるように加工されたロールであり得る場合、大量生産が実現され得る。
【0006】
US 8,133,374 B2には、むき出しの銅領域を通過している間に電流を「切る(turn off)」ために参照電極がむき出しの銅領域を検出する、負極基板をリチウム化するための電気分解を使用する方法が教示される。両面がコーティングされた負極上でどのようにこれを行い得るかは教示されていないので、負極ロールが二面であるほとんどの商業目的には実用的ではない。基板の縁でのリチウムめっきまたは樹枝状晶(dendrite)集積をどのように回避するかも教示されていない。電気分解槽において基板の縁で場の強度が高まるので、US 8,133,374 B2は、縁を保護しない点で実用的ではない。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、アルカリ金属を有さないむき出しの基板領域を特徴とするアルカリ化負極を製造する電気化学的方法に関し、該方法は、電池または導電性基板およびコーティングで構成される電気化学的セル負極のアルカリ化の際に、電極ロールのむき出しの基板領域または縁上でリチウム(またはアルカリ金属)めっきまたは樹枝状晶集積を防ぐために、単一でまたは組み合わせて使用され得、ここで該電極ロールは、一面または両面でコーティングされ得、縁上で、または基板表面のいずれかもしくは両方の面の連続もしくは不連続な部分で暴露された基板を有し得る。本発明の方法のいずれかによるアルカリ化コーティングを有さない他の領域は、暴露された導電性基板を有し、負極の周および/または負極の周に垂直でかつ連結するバンドを含む。溶液および装置の詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許出願第13/688,912号に記載される。一態様において、コーティングはアルカリ化コーティングであり、ここでアルカリ化コーティングはアルカリ化イオンを受けるための任意のコーティングであり、該コーティングは好ましくはグラファイトもしくはケイ素またはそれらの組合せで構成される。
【0008】
アルカリ化負極の製造の際に、アルカリ金属の堆積(deposition)は、むき出しまたは暴露された導電性基板上で起こり得る。むき出しの基板領域を含むコーティングされた電極上でのリチウム(またはアルカリ金属)めっきまたは樹枝状晶集積を防ぐための方法は、順/逆電流法(forward/reverse current method)である。少なくとも一面でコーティングされる導電性基板は、リチウム(またはアルカリ金属)塩を含む非水性電解溶液中で維持される。導電性基板コーティングは、リチウムイオンを吸収および放出し得る活物質層で構成される。コーティングは、好ましくはグラファイトもしくは他の炭素の形態、もしくはケイ素、スズ等、またはそれらの組合せであり得、コーティング領域は、好ましくは基板上で不連続である。かかる物質は、元素物質、合金、化合物、固溶体およびケイ素含有物質またはスズ含有物質を含む複合活性物質のいずれであるかに関わらず、本発明の効果を発揮し得る。むき出しまたは暴露された領域は、基板の縁、任意の表面辺縁部または表面の一方もしくは両方上の内部領域であり得、むき出しの領域は、シートを小さな負極物質に切断することを容易にするため、または溶接のための領域を残すために、パターン形成され得る。例えば、むき出しの領域は、基板の幅を横切るようにまたは基板ロールの長さに沿って規則的に細長く切断され得る。コーティングされた電極を製造するための方法が示される。
【0009】
作業対電極(working counter electrode)は、電力D.C.電源の正側に連結され得る。導電性基板は電源の負側に連結され得る。電流は、電極の間の電解液体積を通って、作業電極と導電性基板の間を通過する。これは、作業電極で酸化電流および導電性基板で還元電流を生じる。導電性基板でのこの還元電流は、コーティングされた電極および暴露された基板上にリチウム堆積を提供する。還元電流は、周期的に遮断され、還元電流持続時間に関して短期間逆流される(酸化電流)。この様式で、還元電流段階の間に銅導電性基板などのむき出しの導電性基板上に堆積するリチウムは、酸化段階の間に除去される。この技術は、負極基板ロール内での位置に関係なく、むき出しの銅導電性基板などのむき出しの導電性基板領域の内部および外部で良好に働く。負極表面での酸化電流は、挿入されたリチウムと比較してめっきされたリチウムのより大きな電気化学的電位のために、コーティングされた領域と比較して暴露された基板領域からのリチウム除去に有利である。むき出しの基板表面および縁からのリチウムの除去に有利である逆電流を用いてこの様式で電極全体をリチウム化することにより、IRCL(または他の目的)を補償するリチウムの量が制御され得、かつセルの組み立ての前に成功裡に、電極活物質に前合金化され得るかまたは前挿入され得る。セル組み立てのその後の工程は、溶接、スリット切断または他の目的のためのきれいなリチウムを含まない領域のために、より安全で実用的になる。
【0010】
用語「リチウム化する(lithiate)」または「リチウム化(lithiation)」は、一般的な用語「アルカリ化する(alkaliate)」または「アルカリ化(alkaliation)」のより具体的な場合であることが理解される。すなわち、用語「リチウム化する」または「リチウム化」が本明細書中で使用される場合、代替的な態様は「アルカリ化する」または「アルカリ化」およびその逆を含むことが理解される。
【0011】
電極が一面または両面でコーティングされ得る電池または電気化学的セル負極のアルカリ化の際に、むき出しの基板領域およびコーティングされた電極の縁におけるリチウム(または他のアルカリ金属)めっきまたは樹枝状晶集積を防ぐための第2の方法は、休息期間法(rest period method)である。休息期間法は、ゼロ電圧パルス(休息期間)と交互になる順(還元)電圧パルスを含み、該方法は、交互の順電圧パルスおよびゼロ電圧パルスの延長されたサイクルにわたり続く。休息期間法は、単独で、または順/逆電流法と組み合わせて実行され得る。
【0012】
電極が一面または両面でコーティングされ得る電池または電気化学的セル負極のアルカリ化の際に、むき出しの基板領域およびコーティングされた電極の縁におけるアルカリ金属めっきを防ぐための第3の方法は、縁ガード法(edge guard method)である。縁ガードは、使用される溶媒と適合性である誘電物質で構成され、ロール負極の暴露された縁の上下のそれぞれにマウントされてむき出しの基板の縁のアルカリ化を防ぐ。縁ガード法は、休息期間法、順/逆電流法、順/逆電流法と組み合わせた休息期間法または順(還元)電流のみで休息期間がない方法を用いて実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の前述および他の主題、特徴および利点は、添付の図面に図示されるように、本発明の好ましい態様の以下のより具体的な記載から明らかであり、図面において、同様の参照記号は、異なる図面を通して同じ部分を言及する。図面は必ずしも同じ縮尺ではなく、代わりに本発明の原理の説明に重点が置かれる。
【
図1】
図1は、むき出しの銅領域を有する二面負極コーティングの例示である。
【
図2】
図2は、負極での還元段階の間のリチウム電束の大きさの例示である。
【
図3】
図3は、負極での酸化段階の間のリチウム電束の大きさの例示である。
【
図4】
図4は、1mA/cm
2での酸化および還元パルス期間の電圧の大きさの例示である。
【
図5】
図5は、AC源を使用した1mA/cm
2での酸化および還元パルス期間の電圧の大きさの例示である。
【
図6】
図6は、還元モードにおけるロール負極配列の例示である。ロール負極601は、ロール負極伸ばし(unwind)602から、電源605に動作可能に連結される対電極604の間を、電解液607を含む槽608の方向に取り出され、ロール負極巻取り(rewind)606に戻される。ローラー603は負極の方向付けを補助する。
【
図7】
図7は、誘電場孔を通したロール負極のリチウム化の例示である。
【
図8】
図8は、対電極とロール負極の間の電束ラインの、コーティングされた負極物質のより低い電気化学的電位の関数としての例示である。
【
図9】
図9は、リチウム樹枝状晶形成の、開放銅領域の過電圧および寸法の関数としての例示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、負極の導電性基板のむき出しの基板領域または縁上のアルカリ金属めっきまたは樹枝状晶集積を防ぐための負極のアルカリ化のための方法に関し、ここで該負極は電極または電極ロールを含む。一態様において、むき出しの基板領域は、負極の導電性基板の縁に沿って配置される。負極は、銅、ニッケルなどの導電性基板上でコーティングされるリチウム活物質で構成され得る。一態様において、負極はリチウム挿入負極である。リチウム挿入負極を含む物質の例としては、限定されないが、炭素およびグラファイト、酸化スズ、ケイ素、酸化ケイ素、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)結合剤、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる態様において、リチウム挿入負極物質は、グラファイト、コークスおよびメソカーボンから選択される。代替的に、リチウム合金化物質は、導電性基板上に堆積またはめっき等され得る。一態様において、該合金化物質としては限定されないが、スズ、アルミニウム、ケイ素またはゲルマニウムが挙げられる。説明のみの目的で、コーティングされた導電体物質のロールまたは活性合金化物質のロールはロール負極と称される。
【0015】
一態様において、本発明は、アルカリ金属を含まないむき出しの基板領域を特徴とするアルカリ化負極を製造するための、負極をアルカリ化する電気化学的方法であって、
a. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで該負極は、アルカリ化コーティングを有する少なくとも1つの領域およびアルカリ化コーティングを有さない少なくとも1つの領域を特徴とする少なくとも1つの表面を含む導電性基板を含む;
b. 順還元電流を適用して、アルカリ化コーティングを有する領域において負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な時間、負極をアルカリ化する工程;
c. 工程(b)で作製された負極を該溶液中に維持し、任意に逆酸化電流を適用して、むき出しの基板領域から任意のアルカリ金属堆積を除去する工程;ならびに
d. 工程bおよび/またはcを反復する工程
を含む方法に関する。
【0016】
一態様において、工程bおよびcは少なくとも約2回反復される。好ましい態様において、工程bおよびcは少なくとも約3回反復される。より好ましい態様において、工程bおよびcは少なくとも約5回、少なくとも約10回またはより好ましくは少なくとも約20回反復される。さらなる態様において、負極は、少なくともいくつかのアルカリ金属のアルカリ化コーティングへの拡散を可能にするのに十分な時間、実質的に電流の非存在下で、少なくとも1回工程cに維持される。
【0017】
コーティングされた電極の製造のための方法は、導電性基板の表面を洗浄する工程:活物質を有するスラリーを、連続または非連続パターンで基板の一面上にコーティングする工程;コーティングされた物質の第1の面を乾燥させる工程;導電性基板の第2の面を、連続または非連続パターンで活物質によりコーティングする工程;コーティングされた物質の第2の面を乾燥させる工程;コーティングされた導電性基板を最終的な形状および大きさにカレンダー加工およびスリット切断する工程を含む。
【0018】
ロール負極は、少なくとも1つの対電極、アルカリ金属塩を含む非水性溶液ならびに回路をロール負極に誘導および完了するためのローラーで構成される電気化学槽を通して方向づけられる。非水性溶液は、無機イオン塩を溶媒和化する目的で機能する電解液に添加される有機溶媒(1つまたは複数)を含む。非水性溶媒の典型的な例は、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、γブチロラクトン(GBL)、トリグリム、テトラグリム、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、室温イオン性液(RTIL)およびそれらの混合物である。一態様において、非水性溶媒は、炭酸エチレン、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレン、GBLおよびそれらの混合物から選択される。第2の態様において、非水性溶媒はGBLである。用語アルカリ金属塩は、非水性溶媒中での使用に適した無機塩をいう。アルカリ金属塩を含む適切なアルカリ金属カチオンの例は、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+、およびそれらの混合物から選択されるものである。アルカリ金属塩を含む適切なハロゲンアニオンの例は、F-、Cl-、Br-、I-、およびそれらの混合物から選択されるものである。一態様において、アルカリ金属塩は、LiF、LiCl、LiBr、NaF、NaCl、NaBr、KF、KCl、KBr、およびそれらの混合物から選択される。LiNO3などの他の塩が使用されてもよいが、好ましい態様において、アルカリ金属塩はハロゲン化物LiClである。
【0019】
十分に低い電流密度では、負極活物質のリチウム化は、むき出しの基板領域をめっきすることなく起こる。低電流密度でのむき出しの基板と負極活物質のリチウム化電位の間には、むき出しの銅領域上のリチウム金属の堆積を回避するのに十分な電気化学的電位差がある。一態様において、還元段階は、0.1mA/cm2未満の低電流密度である。
【0020】
しかしながら、製造のための実用的な電流密度では、「過電圧(over-potential)」が必要になる。この過電圧は、1回のリチウム化工程の後であっても、リチウム金属をむき出しの基板領域および縁に堆積させるための負極リチウム化理論電圧をかける場合に十分であり、ここで負極をアルカリ化するための順還元電流は、アルカリ化コーティングを有する領域において負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な時間適用される。すなわち、「過電圧」は、上述の工程(b)の間に、コーティングされた基板のリチウム化に加えて、むき出しの基板上にリチウムもしくはアルカリ金属堆積、またはめっきを引き起こすのに十分な電圧を意味することを意図する。これは、矢印が、コーティングされた基板102およびコーティングされない基板103上のリチウム堆積の相対的な大きさを示す
図2に図示される。対電極104も
図2に示される。一態様において、還元段階(例えば、工程(b))は、0.1mA/cm
2~10mA/cm
2の電流で実施される。別の態様において、還元段階は、0.5mA/cm
2~3.0mA/cm
2の電流で実施される。より好ましい態様において、還元段階は1.0mA/cm
2~1.4mA/cm
2で実施される。
【0021】
この様式でむき出しの銅領域上にめっきされるリチウム金属は、リチウム化された負極活物質にほとんど影響を与えずに除去され得る。負極酸化(逆)段階の間の電束の大きさは、負極活物質(コーティングされた基板102に対応)からの消失に対して、リチウムめっき金属領域(コーティングされない基板101に対応)からのリチウムの消失に有利であり得る。
図3。負極酸化の間に、負極活物質からいくつかのリチウムイオンが除去されるが、リチウムめっき金属領域は、矢印の大きさで示されるそれらのより大きな電位(水素参照に対して-3.0ボルト)のために、負極活物質に挿入されたリチウムの電位(水素参照に対して-2.8ボルト)と比較して好ましい。一態様において、酸化段階は、0.1mA/cm
2~2.4mA/cm
2の電流で実施される。好ましい態様において、酸化段階は0.1mA/cm
2~1.2mA/cm
2で実施される。さらに好ましい態様において、酸化段階は0.1mA/cm
2~0.8mA/cm
2で実施される。最も好ましい態様において、酸化段階は0.6mA/cm
2で実施される。
【0022】
順および逆電流密度の大きさならびに持続時間は、むき出しの基板領域および対電極の規模に影響される。例示のために、LiCl電解質源は炭素対電極にわたり均一に塩素を酸化する。コーティングされる負極物質のより低い電気化学的電位のために、Li
+イオンは、
図8に示され、電束ライン105で示されるように、負極活物質に向かって流れる。種々の開放銅領域にわたる電圧プロフィールは影響を受ける。
図9に示す例において、2つの開放銅領域に対する電圧プロフィールは、表面から7mm上で記録される。電気化学的セルは2cmの深さであり、小さい銅領域107は5mmであり、大きい銅領域108は6mmの幅である。電圧が、臨界電圧、例えばAg/AgClに対して-3.2Vを超えるとすぐに、Li
0は銅上での形成を開始する。すなわち「臨界電圧」は、むき出しの基板上でリチウム堆積を引き起こすために必要な電圧である。観察により、より大きな開放銅領域の中心領域は、リチウム樹枝状晶106の形態のアルカリ金属堆積の第1の徴候を示す。この例において、より小さい領域は空のままであった。
【0023】
典型的に、順電流 対 逆電流の持続時間の比は約8:1である。一態様において、順電流(還元)持続時間 対 逆電流(酸化)持続時間の比は固定され、5:1~20:1である。より好ましい態様において、固定された比は8:1である。したがって、順 対 逆電流の例としては限定されないが、1.4mA/cm2の固定された順電流、および0.6mA/cm2の固定された逆電流;1.2mA/cm2の固定された順電流、および0.2mA/cm2の固定された逆電流が挙げられる。
【0024】
1つの順(還元)電流パルスおよび1つの逆(酸化)電流パルスの組み合わされた持続時間の合計は、1サイクルを示す。該サイクルは、連続的または非連続的に反復され得る。サイクルは1ナノ秒~2時間の長さであり得る。好ましいサイクル長さとしては、1マイクロ秒~60分、1ミリ秒~30分、1センチ秒~10分、および1秒~6分が挙げられる。一態様において、サイクル時間は1~6分から選択される。
【0025】
順または還元電流の過剰電圧および持続時間(すなわち、時間の長さまたはパルス期間)に応じて、暴露された、コーティングされないまたはむき出しの基板領域および縁上にリチウムは堆積する。逆電流は、(Li0からLi+への酸化により)これらの堆積を除去し得る。還元および酸化段階の間のパルス期間の持続時間は、還元段階の際により短いパルス期間を使用することにより堆積が阻害または制限され得るので、重要である。これは酸化段階の間に必要な時間を短縮し、プロセスの処理量の増加を補助する。一態様において、アルカリ化コーティングを有する領域において負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な還元段階のパルス期間持続時間は、1ナノ秒~1時間の長さである。好ましいパルス期間は、1マイクロ秒~30分、1ミリ秒~15分、1センチ秒~5分、1秒~3分、および1秒~1分である。第2の態様において、酸化段階のパルス期間持続時間は、1ナノ秒~1時間の長さである。好ましいパルス期間は、1マイクロ秒~30分、1ミリ秒~15分、1センチ秒~5分、1秒~3分および1秒~1分である。
【0026】
さらなる態様において、アルカリ化コーティングを有さない任意の領域および縁における負極導電性基板からアルカリ金属堆積および樹枝状晶を除去するのに十分な逆(酸化)電流パルスの持続時間は、順(還元)電流パルスの1%~100%の持続時間、順(還元)電流パルスの1%~40%の持続時間、順(還元)電流パルスの5%~30%の持続時間、または順(還元)電流パルスの5%~20%の持続時間である。好ましい態様において、逆(酸化)電流パルスの持続時間は、順(還元)電流パルスの15%または20%の持続時間である。別の態様において、逆(酸化)電流パルスの持続時間は、順(還元)電流パルスの10%~15%の持続時間である。一態様において、順および逆電流はDCとして供給される。第2の態様において、順および逆電流はACとして供給される。本発明の方法は、ACおよびDCの両方の使用を可能にする。
【0027】
さらなる例により、Kiethleyモデル2220-30-1二重チャンネルなどの電源により生成される還元電流は、リチウムを挿入するなどの方法において負極に適用され得る。第1のチャンネルは、1ナノ秒~1時間の長さで、還元パルスにおけるロール負極の0.5mA/cm
2~2.0mA/cm
2の電流密度で操作される。一態様において、第1のチャンネルは、1mA/cm
2の電流密度で60秒間操作され、第2のチャンネルは、還元パルス期間の10%について、逆(酸化)電流の方向において0.6mA/cm
2で操作される(
図4;6秒)。タイミング回路により、より短いかまたはより長い期間が制御され得る。
【0028】
この電流(例えば、1mA/cm
2)での還元段階で、操作の電圧は約6ボルトになる(
図4)。逆電流モードにおいて、電圧は約1ボルトになる。これらの電圧は、逆または脱リチウム化段階の間に、銅上でのリチウム化段階(負極上の還元)およびLi
0からLi
+への酸化において塩の解離により支配される。得られる電圧はまた、電解質溶媒の範囲(例えば、7ボルト未満)で制限されなければならない。
【0029】
順/逆電流法の間に、種々の速度および持続時間の電極移動(electrode movement)が使用され得る。一般的に、速度および持続時間は、所望のリチウム化適用量、機械の大きさおよび活性負極速度特性により変化する。好ましい速度は0.02メートル/分~12メートル/分である。より好ましい速度は0.1メートル/分~3メートル/分である。電極リチウム化の好ましい持続時間は10分~500分である。より好ましい持続時間は60分~120分である。
【0030】
予めリチウム化したロール負極を純粋な溶媒ですすぎ、残存塩含有物を除去し、巻取り、次いで任意に真空オーブン中で溶媒を乾燥させる。予めリチウム化したロール負極は、次いで乾燥環境において、巻き上げ、袋詰め(pouch)または柱状セル組み立てのための形状に切断される。
【0031】
この様式で、むき出しの基板表面および縁から任意のリチウム金属堆積を除去する逆電流を用いて電極全体をリチウム化することにより、IRCL(または他の目的)を補償するために適切な量のリチウムを成功裡に、セルの組み立ての前に、電極活物質に前合金化または前挿入し得る。セル組み立て後の工程は、溶接、スリット切断または他の目的のためのきれいな、リチウムを含まない領域のために、より安全かつ実用的になる。
【0032】
逆電流工程の速度および持続時間は、より速い処理量を得るためおよび全体プロセスリチウム化持続時間を短縮するために、リチウム化プロセスを通じて改変され得る。これは、任意の暴露された基板表面がリチウム化の初期に過剰に酸化/腐食されることを防ぐようにも働き得る。リチウム化の初期(例えば、全標的適用量の最初の20%)に、逆電流は実際に、基板自体の酸化のために暴露された基板に損傷を与え得る。初期に、リチウムを負極活物質に挿入するために必要とされる過剰電圧は、挿入されるリチウムの全適用量が増加するにつれて、リチウムの挿入に必要とされる過剰電圧よりも低くなる。この低い過剰電圧要件は、暴露された基板表面上のリチウムのめっきを低減し、さらには排除し得る。この時点で負極ロールが逆電流に暴露される場合、基板表面での酸化はリチウムの除去の代わりに基板物質の酸化を引き起こし得る。この酸化は、基板の腐食および機械的破損を引き起こし得るか、または基板/負極活物質の界面で生成される、完成したリチウムイオンセルの作動効率を低減する電気的絶縁膜(electrical isolating films)を生じる。
【0033】
これが生じることを防ぐために、時間比および順/逆電流比を、前リチウム化プロセスの全体の持続時間を通じて改変し得る。一態様において、全プロセスについての順/逆持続時間比は、一定に維持され得るかまたは8:1に固定され得るが、逆サイクルについての電流密度は、全適用量がゼロから0.6mA/cm
2まで増加するにつれて増加し得るが、順電流密度は全プロセスについて一定に維持されるかまたは1.2mA/cm
2で固定される。別の態様において、順/逆電流密度比は、前リチウム化プロセス全体を通じて固定され得るかまたは一定に維持され得るが、逆/順持続時間比は、ゼロからいくつかの所定の値、例えば1:8に増加し得る。これら2つの態様は、逆電流密度が全適用量に対して増加し、逆/順持続時間比も全適用量に対して増加する場合に組み合わされてもよい。これらの方法は、一定持続時間比または一定順/逆電流比のいずれかと比較して、有効平均順電流速度を増加しながら、暴露された基板が表面酸化されることを防ぐ。AC源は、ほとんどの時間に還元状態が適用されるように適用されるバイアス電圧(biasing voltage)が見られる場合にも使用され得る(
図5)。
【0034】
還元段階の際に短いパルス期間が使用されるいくつかの場合において、むき出しの基板領域および縁上のリチウム堆積は、逆電流の代わりに休息工程のみを使用することにより除去される。この場合、拡散したリチウムへの短い電荷の転移は、基板の表面上の遊離した(loose)リチウム金属形態の形成を妨げる。短いパルスの使用のために、Dynatronix製のModel DuPR10-1-3などのパルス電源を使用し得る。休息期間法は、ゼロ電圧パルス(休息期間)と交互な順(還元)電圧パルスを含み、該プロセスは、順電圧パルスとゼロ電圧パルスを交互に行う延長されたサイクルを越えて継続される。例えば、Dynatronix Model DuPR10-1-3を用いて休息期間法を使用することにより、順(還元)電圧パルスは、Vmaxについて4V~Vmaxについて+100Vであり得る。より好ましい順電圧パルスはVmaxについて4V~Vmaxについて8Vである。アルカリ化コーティングを有する領域において負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な順(還元)電圧パルス期間の好ましい持続時間は、2ミリ秒~1000ミリ秒である。電圧パルス期間のより好ましい持続時間は10ミリ秒~800ミリ秒である。電圧パルス期間のさらに好ましい持続時間は100ミリ秒~500ミリ秒である。ゼロ電圧パルス期間(休息期間)の好ましい持続時間は、2ミリ秒~1000ミリ秒である。ゼロ電圧パルスのより好ましい持続時間は10ミリ秒~800ミリ秒である。ゼロ電圧パルスのさらに好ましい持続時間は100ミリ秒~500ミリ秒である。
【0035】
順電圧パルスとゼロ電圧パルスを組み合わせた反復サイクルの総持続時間は、1分~1000分である。反復サイクルのより好ましい持続時間は10分~500分である。反復サイクルのさらに好ましい持続時間は30分~100分である。サイクルは連続または非連続的に反復し得る。
【0036】
試料のリチウム容量を決定するために、試料をセパレータおよびリチウムホイルにマウントして、半電池(half cell)を形成する。電解液に24時間浸漬した後、試料を数ボルト以上のリチウム、例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5および3.0ボルト以上のリチウムまで脱リチウム化するために電流を適用する。好ましい電流密度はC/5~C/30である。より好ましい電流密度はC/10~C/20である。
【0037】
本発明はまた、電極ロール負極のむき出しの表面または縁上のリチウム(またはアルカリ金属)堆積の予防も提供する。態様は、ロール負極の暴露された縁の上下のそれぞれにマウントされる縁ガード孔、誘電場孔(dielectric field aperture)またはシールドの使用を含む。
【0038】
一態様において、本発明は、負極をアルカリ化するための電気化学的方法であって、
a. 負極の暴露された縁の上下のそれぞれに、縁ガード孔、誘電場孔またはシールドを配置する工程;
b. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで該負極は、少なくとも1つの表面、該少なくとも1つの表面上のアルカリ化コーティングを含む導電性基板を含む;および
c. 該溶液を介して順還元電流を適用して負極をアルカリ化する工程
を含む、方法に関する。
【0039】
縁ガード孔または場孔は、使用される溶媒と適合性である誘電性物質で構成される。GBL溶媒の場合、ガードはポリエチレン製である。他の適合性のプラスチックまたはセラミックなどの材料も、溶媒と適合性であり、同レベルの場還元を提供する場合は使用し得る。場還元の量は、基板または負極ロールの縁またはむき出しの特徴上の得られる適用量を調べることにより決定される。シールドと負極ロールの間の領域において局所的な電場は減少するので、この領域で低い適用量またはリチウムめっきが起こり得る。縁ガード法は、休息期間法、順/逆電流法、順/逆電流法と組み合わせた休息期間法、または順(還元)電流のみで休息期間がない方法を使用することにより実施され得る。縁ガード法の利点としては、より速い処理時間、低減された費用、および電極のアルカリ化についての優れた適用が挙げられ、ここでむき出しの基板は、負極の縁の近位のみまたは縁に沿って存在する。
【0040】
本発明の全ての方法によると、達成される正味の適用量は0.1mAh/cm2~10mAh/cm2である。
【実施例】
【0041】
実施例
実施例1. 順/逆方法後の休息期間法の使用
それぞれの面の1つの長い縁上で0.5cmの辺縁がむき出しになる(約10%のむき出しの銅)ように銅基板の両面上でグラファイト-ケイ素配合物を有するパターンでコーティングした4.6x3.2cm
2の面積の負電極を、枠内にマウントして、2cmの間隔を使用して対電極間に配置した。25℃に維持したGBL溶媒および0.5M LiCl塩溶液で電極を囲んだ。溶液中に二酸化炭素が泡立った。Maccor 4200電池テスターを使用して、0.9mA/cm
2の順(還元)電流密度を150秒間生成し、+6Vのセル電圧を発揮した(
図6)。このパルスの直後に30秒間の休息期間を続け、0Vのセル電圧を生成した。前リチウム化の初期段階で、負極中に最小量の挿入Liが見られるので、逆電流は導入しなかった。順/休息パルスを連続で4サイクル行い、その後順/逆パルス法を導入した。次いで、Maccor 4200電池テスターを使用して、休息期間を、30秒間の1.0mA/cm
2の電流密度を有する逆電流(酸化)パルスに変えた。むき出しの銅領域上で任意のリチウム堆積を阻害しながら所望の適用量が達成されるまで、順および逆電流またはパルスを連続的に反復した。この方法により、Li
0金属粒子を含まないむき出しのCu領域を有する前リチウム化負極が生成される。
【0042】
実施例2. 休息期間法の使用
それぞれの面の1つの長い縁上で0.5cmの辺縁がむき出しになる(約10%のむき出しの銅)ように銅基板の両面上でグラファイト-ケイ素配合物を有するパターンでコーティングした4.6x3.2cm2の面積の負電極を、枠内にマウントして、2cmの間隔を使用して対電極間に配置した。25℃に維持したGBL溶媒および0.5M LiCl塩溶液で電極を囲んだ。溶液中に二酸化炭素が泡立った。前述のDynatronix (DuPR10)電源を使用して順(還元)電流および休息期間を生成した。パルスは、500ミリ秒の持続時間(還元)および0Vで500ミリ秒の休息期間によりVmaxについて+6Vと定義した。これらのパルスを連続して90分間反復した。この方法により、Li0金属粒子を有さないむき出しのCu領域を有する前リチウム化負極が生成される。2.5cm2の電極試料を切断してセパレータおよびリチウムホイルにマウントし、半電池を形成した。電解液に24時間浸漬後、0.20mA/cm2の電流密度を適用して、試料を0.9V以上のリチウムまで脱リチウム化し、試料の前リチウム化リチウム容量を決定した。該方法によると、生成される適用量は約1.5mAh/cm2であり、むき出しの銅領域に堆積したリチウムはなかった。
【0043】
実施例3. 順/逆電流比の変更
6cmの幅の銅基板のうち、5cmが両面でグラファイト-ケイ素配合物でコーティングされた銅基板を、2センチメートルの間隔を使用して対電極の間に配置した。25℃に維持したGBL溶媒および.5M LiCl塩溶液で電極を囲んだ。溶液中に二酸化炭素が泡立った。全プロセス時間は90分であった。プロセス時間の最初の25%の間に、155秒間で1.2mA/cm2の順(還元)電流を生成した。このパルスの直後に25秒の持続時間で0.15mA/cm2の逆電流を続けた。プロセス時間の第2の25%の間に、155秒間で1.0mA/cm2の順(還元)電流を生成した。このパルスの直後に25秒の持続時間で0.3mA/cm2の逆電流を続けた。プロセス時間の第3の25%の間に、155秒間で1.0mA/cm2の順(還元)電流を生成した。このパルスの直後に25秒の持続時間で0.6mA/cm2の逆電流を続けた。プロセス時間の最後の25%の間に、155秒間で1.0mA/cm2の順(還元)電流を生成した。このパルスの直後に25秒の持続時間で0.8mA/cm2の逆電流を続けた。順および逆の電流またはパルスを、むき出しの銅領域上の任意のリチウム堆積を阻害しながら所望の適用量が達成されるまで連続的に反復した。この例において、電極移動の速度は約113cm/hrであった。試料を切断してセパレータおよびリチウムホイルにマウントし、半電池を形成した。電解液に24時間浸漬後、.25mA/cm2の電流を使用して試料を2ボルト以上のリチウムまでに脱リチウム化し、試料のリチウム容量を決定した。正味の適用量は約0.62mAh/cm2であり、むき出しの銅領域に堆積したリチウムはなかった。
【0044】
実施例4. 縁ガード保護
6cmの幅の銅基板のロール701のうち、5cmが両面でグラファイト-ケイ素複合物でコーティングされ、1cmのコーティングされない辺縁が銅の1つの縁に残った銅基板を、2センチメートルの間隔を使用して対電極の間に配置した。
図7に示されるように、銅まで伸びる枠の縁からむき出しの銅を覆うコーティング遷移(coating transition)まで生じる活性対電極704の面に沿って、高密度ポリエチレン縁ガード703をマウントした。25℃に維持したGBL溶媒および.5M LiCl塩溶液で電極を囲んだ。溶液中に二酸化炭素が泡立った。116.4分間に、1.2mA/cm
2の順(還元)電流を生成した。その後の半電池試験により決定されるように、コーティングされた領域において所望のリチウム化適用量が達成された。むき出しの銅表面のリチウム堆積からの保護は、前リチウム化の間に視覚的に観察され、次いで蒸留水をむき出しの銅の縁に配置して水とリチウムの可視的な反応がないことを見出すことにより、確認された。
【0045】
本明細書に参照される特許文献および科学文献は当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される全ての米国特許および公開または非公開米国特許出願は参照により援用される。本明細書に引用される全ての公開された外国特許および特許出願は参照により本明細書に援用される。本明細書に引用される全ての他の公開された参考文献、書類、文書および科学文献は参照により本明細書に援用される。
【0046】
本発明は、その好ましい態様を参照して具体的に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解されよう。本明細書に記載される態様はいずれも相互に排他的でなく、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく種々の様式で組み合され得ること、および本発明は、添付の特許請求の範囲に該当する全ての態様を含むことも理解されよう。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]負極をアルカリ化して、アルカリ金属を有さないむき出しの基板領域を特徴とするアルカリ化負極を作製する電気化学的方法であって、
a. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで、該負極は、表面上にアルカリ化コーティングを有する少なくとも1つの領域およびアルカリ化コーティングを有さない少なくとも1つの領域を特徴とする少なくとも1つの表面を含む導電性基板を含む;
b. 順還元電流を適用して、アルカリ化コーティングを有する領域中で負極を少なくとも部分的にアルカリ化するのに十分な時間、負極をアルカリ化する工程;
c. 工程(b)において作製された負極を該溶液中に維持し、任意に逆酸化電流を適用してむき出しの基板領域から任意のアルカリ金属堆積を除去する工程;ならびに
d. 工程bおよび/またはcを反復する工程
を含む、方法。
[2]該アルカリ化された負極が、0.1mAh/cm
2
~10mAh/cm
2
の適用量を達成し、かつアルカリ金属堆積を示さない、[1]記載の方法。
[3]工程bおよびcが少なくとも約3回、好ましくは少なくとも約5回、より好ましくは少なくとも約20回反復される、[2]記載の方法。
[4]実質的に電流の非存在下、少なくともいくつかのアルカリ金属のアルカリ化コーティングへの拡散を可能にするのに十分な時間、少なくとも1回の工程cにおいて、該負極が維持される、[3]記載の方法。
[5]少なくとも1回の工程bにより作製される生成物が、アルカリ金属堆積を含むむき出しの基板領域を含む、[3]または[4]記載の方法。
[6]逆酸化電流が、少なくとも1回の工程cにおいてむき出しの基板領域から任意のアルカリ金属堆積を除去するために適用される、[5]記載の方法。
[7]該アルカリ金属堆積が樹枝状晶を含む、[6]記載の方法。
[8]該アルカリ化コーティングが不連続である、前記いずれか記載の方法。
[9]該負極が、ロール負極である、前記いずれか記載の方法。
[10]アルカリ化コーティングを有さない少なくとも1つの領域が、負極の周および/または該負極の周に垂直でありかつ該負極の周に連結するバンドを含み、暴露された導電性基板を有する、前記いずれか記載の方法。
[11]該アルカリ金属塩が塩化リチウムで構成される、前記いずれか記載の方法。
[12]該導電性基板が銅またはニッケルである、前記いずれか記載の方法。
[13]該アルカリ化コーティングが、グラファイトもしくはケイ素またはそれらの配合物で構成される、前記いずれか記載の方法。
[14]該アルカリ化コーティングが、導電性基板の2つの表面上にある、前記いずれか記載の方法。
[15]該むき出しの基板領域が、導電性基板の縁に沿って配置される、前記いずれか記載の方法。
[16]該順還元電流および逆酸化電流がDCである、前記いずれか記載の方法。
[17]該順還元電流および逆酸化電流がACである、前記いずれか記載の方法。
[18]該逆電流と順電流の比が固定される、前記いずれか記載の方法。
[19]該逆電流と順電流の比が増加する、前記いずれか記載の方法。
[20]該逆持続時間と順持続時間の比が固定される、前記いずれか記載の方法。
[21]該逆持続時間と順持続時間の比が増加する、前記いずれか記載の方法。
[22]工程bが1ミリ秒~15分である、前記いずれか記載の方法。
[23]工程bが1センチ秒~5分である、[22]記載の方法。
[24]工程bが1秒~3分である、[23]記載の方法。
[25]工程cが1ミリ秒~15分である、前記いずれか記載の方法。
[26]工程cが1センチ秒~5分である、[25]記載の方法。
[27]工程cが1秒~3分である、[26]記載の方法。
[28]該順還元電流が、該逆酸化電流よりも1~8倍大きい、前記いずれか記載の方法。
[29]該順還元電流が、該逆酸化電流よりも約2倍大きい、前記いずれか記載の方法。
[30]該順還元電流密度が0.1mA/cm
2
~10mA/cm
2
である、前記いずれか記載の方法。
[31]該順還元電流密度が約1mA/cm
2
である、前記いずれか記載の方法。
[32]該逆酸化電流密度が0.1mA/cm
2
~1.2mA/cm
2
である、前記いずれか記載の方法。
[33]該逆酸化電流密度が約0.6mA/cm
2
である、前記いずれか記載の方法。
[34]該逆酸化電流パルスの持続時間が、該順還元電流パルスの1%~100%の時間である、前記いずれか記載の方法。
[35]該逆酸化電流パルスの持続時間が、該順還元電流パルスの5%~30%の時間である、[34]記載の方法。
[36]該逆酸化電流パルスの持続時間が、該順還元電流パルスの約20%の時間である、[35]記載の方法。
[37]該逆酸化電流パルスの持続時間が、該順還元電流パルスの約15%の時間である、[35]記載の方法。
[38]該逆酸化電流パルスの持続時間が約30秒であり、該順還元電流パルスの持続時間が約150秒である、[36]記載の方法。
[39]縁ガード孔、誘電場孔、またはシールドが、該負極の暴露された縁の上下のそれぞれにマウントされる、前記いずれか記載の方法。
[40]a. 負極の暴露された縁の上下のそれぞれに、縁ガード孔、誘電場孔、またはシールドを配置する工程;
b. 負極を、アルカリ金属塩を含む非水性電解溶液に供する工程、ここで、該負極は、少なくとも1つの表面、該少なくとも1つの表面上のアルカリ化コーティングを含む導電性基板を含む;および
c. 該溶液を介して順還元電流を適用して負極をアルカリ化する工程
を含む、負極をアルカリ化する電気化学的方法。
[41]該縁ガード孔、誘電場孔、またはシールドが、非水性電解溶液と適合性である誘電性材料で構成される、[40]記載の方法。