(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20220324BHJP
F16K 3/02 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
F16K47/02 F
F16K3/02 F
(21)【出願番号】P 2018531432
(86)(22)【出願日】2016-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2016081243
(87)【国際公開番号】W WO2017102973
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】102015121983.2
(32)【優先日】2015-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078316
【氏名又は名称】ビンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー, ローベルト
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03636971(US,A)
【文献】実開昭57-053167(JP,U)
【文献】特開平10-047501(JP,A)
【文献】実開平07-038825(JP,U)
【文献】米国特許第02824715(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0031899(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/02
F16K 3/00 - 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記バルブ本体が、互いに連結された2つの板状の要素(16,18)を有することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記幾何学的特徴が可撓性のある構造であることを特徴とする、請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記幾何学的特徴が、前記隙間に配置されて可撓性があり、前記開口部に突出する要素として構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記幾何学的特徴が、前記オリフィス用の端部シールの一部であることを特徴とする、請求項5に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記バルブ本体が鋳造部品として構成されており、前記幾何学的特徴が前記鋳造部品の構成部品であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記オリフィスが、全開の場合に前記開口部の断面全体を解放するように構成されていることを特徴とする、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【請求項9】
ガス貫流を調整するためのオリフィス調整スライド装置として構成されていることを特徴とする、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状媒体用のバルブ装置であって、該バルブ装置は、媒体が流れ方向に通過することができ、バルブ本体の周面によって画定される開口部を有するバルブ本体と、開口部を通る流れに影響を及ぼすために、流れ方向に対して垂直に変位することができるようにバルブ本体内の隙間に配置されたオリフィスとを有し、該隙間が、周面を入口側部分周面と出口側部分周面とに分け、出口側部分周面が、オリフィスに向いている第1の縁部およびオリフィスから離れる方向に向いている第2の縁部を有する、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプのバルブ装置はよく知られている。それらは、例えば開口部を通るガス状媒体などの貫流を調整するために使用される。前記調整は、流れが通過する開口部の断面が、流れ方向に対して垂直なオリフィスの変位によって変化することによって行われる。
動作中、このタイプのバルブ装置には非常に顕著なノイズ放射が生じ、前記ノイズ放射は、特に、約40~100%のオリフィスの上昇範囲で知覚され得る。
このタイプの部分的に非常に顕著なノイズ放射は、多くの用途において望ましくない。
【発明の概要】
【0003】
この背景技術に対して、本発明の目的は、特に、最初に述べたバルブ装置を、ノイズ放射の低減を実現するように発展させることである。
前記目的は、特に、第1の縁部が、第1の縁部を不均一にするように構成された少なくとも1つの幾何学的特徴を割り当てられることによって達成される。
第1の縁部の幾何形状の不均一状態が、ガス状媒体が開口部を通過する間のノイズの低減につながることを、本発明者らは驚くべきことに特定した。流れの対称性を「破る」ことは、明らかに、ノイズもまた変化する要因である一定の圧力波につながる。
【0004】
この文脈では、「縁部」という用語は、互いに対して略垂直に位置する2つの面を互いに接続する縁部領域を意味するものと理解されたい。結果として、「縁部」は、単に幾何学的線を意味するものと理解されるべきではなく、領域とすることもできる。
少なくとも1つの幾何学的特徴が、第1の縁部に向かって開口する、出口側部分周面内の凹部として構成されていることが特に好ましい。好ましくはこのタイプの複数の凹部がある。
前記1つの幾何学的特徴または複数の幾何学的特徴は、流れの対称的な構成を防止する不均一な経路を第1の縁部に与えることにつながる。
【0005】
その代わりに、または加えて、幾何学的特徴はまた、第1の縁部に設けられ、好ましくは開口部に突出する、少なくとも1つの隆起として構成することもできる。
結果として、流れが上を通過する縁部の幾何形状もまた変化し、その結果、対称的な流れが結果的に同様に防止される。
このタイプの幾何学的特徴は、特に好ましくは可撓性のある構造であり、すなわち、ゴムなどの可撓性材料から作製されている。
可撓性材料を使用することは、ノイズの低減に関して有利であることが分かった。
【0006】
加えて、またはその代わりに、幾何学的特徴は、隙間に配置され、好ましくは可撓性があり、開口部に突出する要素として構成されている。幾何学的特徴は、特に好ましくはオリフィス用の端部シールの一部である。
いずれの場合でも、オリフィス用のこのタイプの端部シールがなければならないので、前記幾何学的特徴もまた、特に有利であることが分かり、加えて、非常に安価に実現することができる。
【0007】
さらなる好ましい実施形態では、バルブ本体は鋳造部品として構成されており、幾何学的特徴は鋳造部品の構成部品である。
前記手段には、ノイズを低減する必要がある幾何学的特徴もまた、バルブ本体の鋳造製造時に予め非常に簡単に構成することができるという利点がある。それに続く機械加工工程は、結果的に必要ではない。
鋳造法を用いてバルブ本体を製造し、それに続く材料除去工程で幾何学的特徴を導入することも考えられることは、言うまでもない。前記解決策の利点は、2つのハウジングプレートに対して1つの鋳型しか必要とならないことにあるであろう。
【0008】
好ましい1つの発展形態では、オリフィスは、弓形、好ましくは部分円形、または部分楕円形の構造の下縁部を有する。
幾何学的特徴は、さらに好ましくは、開口部の閉鎖中にオリフィスが入り込む隙間の領域に対して隣接する、周面の領域に設けられている。
すなわち、言い換えれば、幾何学的特徴は、事実上バルブ装置の動作領域全体の流れの中に位置する、開口部の領域に設けられている。幾何学的特徴は、特に好ましくは、オリフィスが60%(100%は全開を意味する)、好ましくは40%、非常に好ましくは20%開いたときに流れの中に位置する、周面の領域に位置している。
【0009】
本発明は、ガス貫流を調整するためのオリフィス調整スライドバルブの場合に特に興味深いものである。
上記の文章で述べ、また引き続き以下の文章で説明する特徴が、それぞれ明記する組合せだけでなく、他の組合せでも、またはそれら単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のさらなる利点および実施形態が、明細書および添付図面からもたらされる。
【
図2B】
図2Aに示すバルブ本体の概略図を別の視点から示す。
【
図3A】従来技術によるバルブ装置の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3Aは、符号10で示すバルブの大幅に簡略化した概略斜視図を示す。単純化のために、ごくわずかなバルブの構造要素のみが示してある。バルブ10は、たとえば、オリフィス調整スライドバルブ12として構成することができる。
バルブ10は、互いに解放可能に連結された少なくとも2つのハウジングプレート16,18からなるバルブ本体14を備える。
バルブ本体14、したがって2つのハウジングプレート16,18には、ガス状媒体が通過する開口部20、好ましくは円形開口部が設けられている。与えられる流れ方向は、
図3Aに矢印Sによって示してある。
バルブ本体14の開口部20は、周面22によって半径方向に、すなわち、流れ方向Sに対して直角に画定される。周面22は、好ましくは流れ方向Sと平行に延びる。
【0012】
流れ方向Sに見て、周面22は、2つのハウジングプレート16,18上に構成された2つの部分周面24,26に分かれている。流れ方向Sのために、部分周面を入口側部分周面24と呼び、部分周面26を出口側部分周面26と呼ぶ。
開口部20を通る媒体、好ましくはガスの貫流を調整するために、オリフィス30が設けられている。オリフィス30は板状構造であり、流れ方向Sに対して垂直に移動することができるように、2つのハウジングプレート16,18の間に保持されている。この目的のために、2つのハウジングプレート16,18の間には、オリフィス30が保持される隙間32が設けられている。開口部20は、オリフィス30の移動によって、完全に開き、また完全に閉じることができる。
図3Aに示す例では、オリフィス30は約60%閉じている。
【0013】
2つの部分周面24,26は、隙間32によって互いに分離しており、その結果、流れ方向Sに見て、出口側部分周面26上に縁部36が形成されている。前記縁部36は、流れ方向Sと平行に延びる部分周面26と、これに対して垂直に走る、ハウジングプレート16の面との間の接続領域である。
縁部36は、
図3Aに示す例示では線状であるが、2つの面、すなわち、部分周面とこれに対して垂直に走るハウジングプレートの面との間の接続をもたらす平面領域もまた、本明細書の文脈では縁部として理解されたい。
部分周面26は、流れ方向Sに見て第1の縁部36の次にくるさらなる縁部38を有する。
【0014】
図3Bからももたらされるように、隙間32、したがってオリフィス30のための収容空間は、ガイド40,42によって横方向に画定され、そこで、オリフィスは、第1に移動のために案内され、第2に対応するシールによって密封される。バルブ本体14の下部領域では、隙間32にシールまたは端部シール44が設けられており、このシールまたは端部シール44の形状は、オリフィス30の対向縁部の形状に適合されている。閉鎖状態では、符号46で示す下縁部が密封動作に耐える。
本例示的実施形態では、オリフィスの縁部46は、弓形形状、好ましくは部分円形状または部分楕円形状を有する。
バルブ10の動作中、媒体、好ましくはガスは、たとえば部分的に閉じた開口部20を通って流れ、流れはまた、第1の縁部36を越えて流れる。
【0015】
第1の縁部36が非常に顕著なノイズ放射の原因であることを、本発明者らはここで驚くべきことに特定した。ノイズ放射を引き起こす一定の圧力波が、対称的な縁部36で発生する。
ノイズ放射を低減するために、出口側部分周面26上の第1の縁部36、特に下部領域に、縁部36の対称性を破る1つまたは複数の幾何学的特徴を設ける。すなわち、言い換えれば、少なくとも周面26の規定円周領域で、縁部36の経路を不均一にする。ここで、「下部領域」とは、オリフィス30の下縁部46に対向して位置する、部分周面26の領域を意味する。「下部領域」は、特に、オリフィスが60%まで、好ましくは最大40%まで開いた場合に露出され、または上を通過される、すなわちオリフィスによって覆われていない、部分周面26の領域である。
【0016】
この領域の流れに影響を及ぼす非常に幅広い種類の要素を、幾何学的特徴として設けることができる。例として、たとえば、部分周面26上に、開口部20に突出する隆起を幾何学的特徴として設けることができる。流れが上を通過する縁部36の経路は、前記隆起の結果として変化する。
部分周面26内に設けられ、第1の縁部36の領域の開口縁部を有して構成される凹部が、特に有利な幾何学的特徴であることが分かった。
図1Aは、このタイプの実施形態を示す。
単純化のために、
図1A、
図1B、
図2A、および
図2Bの同一の構成要素については、
図3A、
図3Bと同じ符号を使用し、その結果、前記構成要素の説明の繰り返しをなくすことができる。
【0017】
図1Aでは、部分周面26内の凹部に符号50を付してある。凹部50は、縁部36に対する開口縁部を有して構成されており、その結果、縁部36の経路は凹部50の領域で変化する。凹部50は、縁部36の経路が変化する限り、異なる形状を有することができる。本例示的実施形態では、凹部50は、平面視で見て弓形形状を有する。
このタイプの2つの凹部50が、特に好ましくは部分周面26内に設けられている。ここで、1つの凹部50または複数の凹部50は、部分周面26の下部領域に設けられている。この文脈では、「下部」とは、開口部が閉じる間にオリフィス30が移動して向かう領域を意味する。
【0018】
図1Bは、
図1Aのバルブ10を反対側からも示す。すなわち、出口側ハウジングプレート16、したがってまた出口側部分周面26は、ここでは手前に見ることができる。2つの凹部50を見ることができ、これらが、既に述べたように、第1の縁部36の経路を変化させる。しかし、凹部50が部分周面26のさらなる縁部38の経路を変化させない、すなわち元のままにしておくことも見ることができる。しかし、この点について、縁部38の変更も同様に可能となることに留意されたい。
部分周面26の構造のさらなる明確化のために、
図2Aおよび
図2Bは、さらなるハウジングプレート18なしに、ハウジングプレート16を単独で両側から示す。ここで、
図2Aには、オリフィス30用のガイド40,42、および下部シールまたは端部シール44を見ることができる。さらに、
図2Aの例示は、縁部36の経路が、凹部50の結果として、Pによって識別される点で変化し、したがって縁部36の対称性を破ることを再度明確にする。
【0019】
上を通過される縁部36の縁部経路の変化は、ノイズ放射のかなりの低減につながるが、過度の圧力損失を引き起こすことはない。凹部50の作製は、ハウジングプレート16の鋳造中に予め行うことができるので、幾何学的特徴50は非常に簡単かつ安価に実現することができる。
縁部36の縁部経路が結果的に変化する限り、凹部50の形状を変更することができることは言うまでもない。
加えて、またはその代わりに、シール44は、開口部20に突出するように構成することができる。流れが上を通過する縁部36もまた、このタイプの手段の結果として変化し、その結果、不均一状態または非対称が実現される。
全体的な結果として、たとえば凹部50の形をとる、出口側部分周面上の少なくとも1つの幾何学的特徴の構造によって、ノイズ放射を低減するための簡単な解決策が提供されるということになる。