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▶ シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】燃料組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/23 20060101AFI20220324BHJP
   C10L 1/08 20060101ALI20220324BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C10L1/23
C10L1/08
C11D3/37
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018561205
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017062687
(87)【国際公開番号】W WO2017203003
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】16171534.7
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100205453
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,クリストファー・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】カール,ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】ギー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リマー,ジョン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-215094(JP,A)
【文献】特表2001-521565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00-32
C11D 3/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮点火式燃焼エンジンにおける内部ディーゼル噴射器堆積物を低減することを目的とする、ディーゼル燃料組成物中の硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤の使用であって、ディーゼル燃料組成物を使用してエンジンを30時間作動させた後に、CEC F110-16試験方法に基づいて達成された評価スコアを測定して、1つ以上の洗浄剤を含有するが硝酸2-エチルヘキシルを含有しない、対照ディーゼル燃料組成物を使用してエンジンを30時間作動させた後に達成された評価スコアより高いことを評価することによって、内部ディーゼル噴射器堆積物の低減を評価する工程を含む使用。
【請求項2】
圧縮点火式燃焼エンジンの燃料経済性を改善することをさらに目的とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記洗浄剤が、ポリ(エチレンアミン)のポリイソブチレンスクシンイミドである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
硝酸2―エチルヘキシルが600~1000ppmwの範囲のレベルで燃料組成物中に存在する、請求項1~3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
ディーゼル燃料組成物中の1つ以上の洗浄剤の活性物質濃度が、ディーゼル燃料組成物の総量に基づいて10~750ppmwであり、硝酸2-エチルヘキシルが、ディーゼル燃料組成物の総量に基づいて50~1000ppmwのレベルで燃料組成物中に存在する、請求項1~4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
硝酸2-エチルヘキシルと、1つ以上の洗浄剤とを含むディーゼル燃料組成物を用いて内部燃焼エンジンに燃料を供給することにより、前記内部燃焼エンジンにおける内部ディーゼル噴射器堆積物を低減するための方法であって、ディーゼル燃料組成物を使用してエンジンを30時間作動させた後に、CEC F110-16試験方法に基づいて達成された評価スコアを測定して、1つ以上の洗浄剤を含有するが硝酸2-エチルヘキシルを含有しない、対照ディーゼル燃料組成物を使用してエンジンを30時間作動させた後に達成された評価スコアより高いことを評価することによって、内部ディーゼル噴射器堆積物の低減を評価する工程を含む方法。
【請求項7】
ディーゼル燃料組成物中の1つ以上の洗浄剤の活性物質濃度が、ディーゼル燃料組成物の総量に基づいて10~750ppmwであり、硝酸2-エチルヘキシルが、ディーゼル燃料組成物の総量に基づいて50~1000ppmwのレベルで燃料組成物中に存在する、請求項6に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された清浄度および堆積物の低減特性、特に内部ディーゼル噴射器堆積物(IDID)の低減特性を有する液体燃料組成物に関し、具体的には、ディーゼル燃料組成物中で組み合わせた硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤を使用して、該改善を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
政府の規制および市場の需要は、輸送業界における化石燃料の保全を強調し続けている。エンジン中の燃料燃焼から生じる堆積物の蓄積は、さらなる燃焼の効率を低減させ、エンジンの寿命にわたって燃料の非効率的な使用をもたらす。
【0003】
ディーゼルエンジンに共通する問題は、噴射器、特に噴射器本体および噴射器ノズルの汚損である。噴射器ノズルの汚損は、ノズルがディーゼル燃料からの堆積物で塞がれた場合に発生する。堆積物はまた、噴射器先端に発生することが知られている。
【0004】
流れの低減および電力損失につながる、ノズル穴および噴射器先端にあるこれらの「外部」噴射器堆積物に加えて、噴射器本体内で堆積物が発生し、さらなる問題を引き起こし得る。これらの堆積物は、内部ディーゼル噴射器堆積物またはIDIDと称され得る。IDIDには、ニードルシートおよび噴射器内の上流の堆積物が含まれ、噴射器ノズル穴内の堆積物は除かれる。IDIDは、重要な可動部品の噴射器内部で発生する。IDIDは、これらの部品の動きを妨害して燃料噴射のタイミングおよび量に影響を及ぼし得、また他の望ましくない影響を有し得る。現代のディーゼルエンジンは非常に正確な条件下で作動するので、これらの堆積物は、性能に著しい影響を及ぼし得る。
【0005】
IDIDは、最適な燃料計量や燃焼の不足による電力損失、エンジンの故障、不安定なアイドリング、燃料経済性の低減を含む多くの問題を引き起こし得る。最初、使用者は、冷間始動の問題および/または不安定なエンジンの動作を経験し得る。最終的に、これらの堆積物は、より深刻な噴射器固着につながり得る。これは、堆積物が噴射器の部品を動かなくさせ、故に、噴射器が機能しなくなった場合に発生する。噴射器のうちの1つ以上が固着すると、エンジンは、完全に故障し得る。
【0006】
洗浄剤添加物は、通常、ディーゼル燃料に添加されて、エンジン堆積物の蓄積を低減、除去、または減速させる。故に、堆積物を低減しようとするために、洗浄剤添加剤が燃料組成物中で一般的に使用されているが、堆積物形成、特に「内部」ディーゼル噴射器堆積物またはIDID形成を低減するためのより良好な添加剤が依然として必要とされている。
【0007】
燃料経済性(FE)のいかなる漸進的な改善も、自動車分野で非常に重要である。したがって、内部燃焼エンジンに燃料を供給するために使用される燃料組成物の燃料経済性能の改善も継続的に必要とされている。
【0008】
有機硝酸塩は、時に燃料中の点火促進剤として知られており、一部はディーゼル燃料のセタン価を増加させることでも知られている。おそらく、最も一般的に使用されるディーゼル燃料点火改良剤は、硝酸2-エチルヘキシル(2-EHN)であり、これは、添加される燃料の点火遅延を短縮することにより作動することが一般に理解されている。
【0009】
しばしば、得られる燃料配合物のセタン価特性を向上させることに関する特定の利点を達成するために、他のディーゼル燃料成分と組み合わせた2-EHNの使用が当該技術分野においていくつか提案されている。
【0010】
RU2010/124844Aは、そのような提案の1つであり、セタン価を増加させる添加剤を含有するディーゼル燃料に関する。添加剤は、予じめ混合された硝酸シクロヘキシルまたは2-EHN、ならびにジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、およびクミルヒドロペルオキシドから選択されたペルオキシドからなる。これらの添加剤の効果は、ディーゼル燃料のセタン価が高く、排ガス中の窒素酸化物の含量が低いことである。
【0011】
したがって、先行技術から、2-EHNの単独使用またはある特定の他の成分と組み合わせた使用により、セタン価効果の向上が達成されることが知られている。
【0012】
この業界では、2-EHNが、エンジンの清浄度または堆積物形成、特に内部ディーゼル噴射器堆積物(IDID)の形成に何らかの影響を及ぼすことはこれまで知られていなかった。
【発明の概要】
【0013】
今回驚くべきことに、洗浄剤と組み合わせた2-EHNの使用により、エンジンの清浄度の向上、およびエンジン噴射器堆積物、特に「内部」ディーゼル噴射器堆積物、またはIDIDの低減の相乗効果が達成され得ることが見出された。洗浄剤単独の使用により達成され得る清浄度を上回る清浄度のそのような上昇は、全く驚くべきことであり、予想外である。
【0014】
2-EHNおよび洗浄剤を併用すると、噴射器堆積物、特に「内部」ディーゼル噴射器堆積物、またはIDIDが低減し、エンジンの清浄度が上昇し、燃料組成物の燃料経済性特性の改善に間接的につながる。それはまた、高価な洗浄剤添加剤の使用量の低減を可能にする。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様では、圧縮点火式エンジンにおける「内部」ディーゼル噴射器堆積物もしくはIDIDを回避もしくは低減させることを目的とし、かつ/または燃料経済性を改善することを目的とする、ディーゼル燃料組成物中で硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤の使用が提供される。
【0016】
本発明の別の態様では、硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤を組み合わせて含むディーゼル燃料組成物を用いて内部燃焼エンジンに燃料を供給することにより、内部燃焼エンジンの清浄度および/または燃料経済性能を改善する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「燃料経済性」という用語は、本明細書で使用される場合、エンジン消費燃料の最適化効率を指し、すなわち、より少ない燃料を消費しながら(したがって、より少ない二酸化炭素を放出する)、同じ電力出力をエンジンから得ることができる。
【0018】
本発明によると、特に清浄度を改善し、結果として、燃料経済性を改善することを目的とする、ディーゼル燃料組成物中の硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤の使用が提供される。本発明のこの態様の文脈において、「改善」という用語は、いずれの程度の改善も包含する。(堆積物の低減により評価された)清浄度評価により、250~300%の改善が見られたことが見出された。改善は、例えば、CEC F-110-16(第1号)の試験方法に従う評価スコアの上昇により測定される場合、本発明に従って、類似の燃料配合物に硝酸2-エチルヘキシルおよび洗浄剤の両方を添加する前の、類似の燃料配合物の清浄度の約10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、特に100%以上であり得る。
【0019】
本発明によると、清浄度および堆積物の低減は、当該技術分野で既知の任意の方法で決定され得る。しかし、本発明に関連して、CEC F110-16(第1号)試験方法により評価することが好ましい。
【0020】
本発明によると、燃料組成物の燃料経済性も、任意の既知の方法で、例えば、シャシーダイナモメーターまたはベンチエンジンの車両のための新欧州運転試験サイクル(NEDC)を使用するEEC指令90/C81/01に従って標準試験手順を使用して決定され得る。これは、エンジン動作条件下で得られる、いわゆる「測定された」燃料消費数を提供する。いくつかの実施形態では、この方法/用途は、燃料経済性能を調整するために、または所望の目標燃料経済性値を達成もしくはそれに到達するために、燃料組成物に2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤を添加することを包含する。本発明の文脈において、目標燃料経済性値に「到達」することは、その数値を超えることも包含し得る。故に、目標燃料経済性数は、目標最小燃料経済性値であり得る。
【0021】
洗浄剤添加剤は、エンジン堆積物の蓄積を低減、除去、または減速させることが意図されるレベルで、ディーゼル燃料に添加され得る。本発明の所見により、この正常な作用は、2-EHNの使用により相乗的に上昇または向上される。ディーゼル燃料組成物中の1つ以上の洗浄剤の(活性物質)濃度は、従来、5~1500ppmw、好適には10~750ppmw、より好適には10~600ppmwの範囲内にある。本発明の一実施形態では、ディーゼル燃料組成物中の1つ以上の洗浄剤の(活性物質)濃度は、10~500ppmwの範囲内にある。本発明の有利な点は、洗浄剤と共に2-EHNを使用する相乗効果の利点により、高価な洗浄剤添加剤の量を低減することができることである。
【0022】
2-EHNは、好ましくは10~1500ppmw、より好ましくは50~1000ppmw、さらにより好ましくは100~800ppmw、特に200~700ppmwの範囲のレベルで燃料組成物中に存在する。ここで提供される2-EHNのレベルは、ベース燃料中に既に存在し得る任意の2-EHNを上回ってベース燃料に添加される2-EHNを指す。2-EHNは、例えば、ベース燃料が、EN590またはASTM D975などの標準ディーゼル燃料仕様に準拠するように、ベース燃料中に既に存在し得る。ベース燃料全体の重量で最大1500ppmwまで、またはそれ以上の2-EHNが、ベース燃料中に既に存在し得る。
【0023】
本組成物は、1つ以上の洗浄剤を含有する。本発明の一実施形態では、本組成物は、1つの洗浄剤のみを含有する。
【0024】
本発明の目的のために使用するのに好適な洗浄剤の例には、ポリアミンのポリオレフィン置換スクシンイミドもしくはスクシンアミド、例えば、ポリイソブチレンスクシンイミドもしくはポリイソブチレンアミンスクシンアミド、脂肪族アミン、マンニッヒ塩基、またはアミンおよびポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレン)無水マレイン酸が含まれる。スクシンイミド分散剤添加剤は、例えば、GB-A-960493、EP-A-0147240、EP-A-0482253、EP-A-0613938、EP-A-0557516、およびWO-A-98/42808に記載されている。ポリイソブチレンスクシンイミドなどのポリオレフィン置換スクシンイミド、および、特にPIBSI-TEPA(高い割合のテトラエチレンペンタミンを含有するポリアミン技術的混合物を使用して生成されるポリイソブチレンスクシンイミド)が特に好ましい。
【0025】
本目的のためのディーゼル燃料添加剤中で使用するのに好適な他の洗浄剤には、US2012/0102826、US2012/0010112、WO2011/149799、WO2011/110860、およびWO2006/135881に開示されているものなどの四級アンモニウム塩が含まれる。
【0026】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、洗浄剤および2-EHNに加えて、他の成分を含有し得る。例は、潤滑性向上剤;曇り防止剤、例えば、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー;消泡剤(例えば、ポリエーテル-変性ポリシロキサン);追加の点火改良剤(セタン改良剤)、例えば、硝酸シクロへキシル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびUS-A-4208190のコラム2、27行目~コラム3、21行目に開示されているもの);防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン-1,2-ジオールセミ-エステル、またはコハク酸誘導体の多価アルコールエステル、そのアルファ炭素原子の少なくとも1つに、20~500個の炭素原子を含有する非置換または置換脂肪族炭化水素基を有するコハク酸誘導体、例えば、ポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル;腐食防止剤;付香剤;磨耗防止添加剤;酸化防止剤(例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどのフェノール、またはN,N’-di-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン);金属不活性化剤;燃焼改良剤;静電気拡散添加剤;低温流動性改良剤;ならびにワックス沈降防止剤である。
【0027】
別途記載されない限り、添加剤が加えられたディーゼル燃料組成物中の各々のそのような任意の追加の添加剤成分の(活性物質)濃度は、好ましくは最大10000ppmw、より好ましくは0.1~1000ppmw、有利には0.1~300ppmw、例えば0.1~150ppmwの範囲内にある。
【0028】
以下、他の添加剤がより詳述される。
【0029】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、特にディーゼル燃料組成物が低い(例えば、500ppmw以下)硫黄含量を有する場合、潤滑性向上剤を含有し得る。添加剤が加えられたディーゼル燃料組成物中で、潤滑性向上剤は、好都合には、1000ppmw未満、好ましくは50~1000ppmw、より好ましくは70~1000ppmwの濃度で存在する。好適な市販の潤滑性向上剤は、エステル系および酸系添加剤を含む。他の潤滑性向上剤は、特に低硫黄含有ディーゼル燃料中でのそれらの使用に関連して、特許文献、例えば、
-Danping WeiおよびH.A.Spikesによる論文、“The Lubricity of Diesel Fuels”,Wear,III(1986)217-235;
-WO-A-95/33805-低硫黄燃料の潤滑性を向上させるための低温流動性改良剤;
-US-A-5490864-低硫黄ディーゼル燃料のための耐摩耗潤滑性添加剤としてのある特定のジチオリン酸ジエステル-ジアルコール;ならびに
-WO-A-98/01516-特に低硫黄ディーゼル燃料中で耐摩耗潤滑性効果を与えるための、芳香核に結合した少なくとも1つのカルボキシル基を有するある特定のアルキル芳香族化合物
に記載されている。
【0030】
2-EHNに加えて、本明細書の燃料組成物は、1つ以上の他のセタン価向上剤を含み得る。セタン価向上剤は、知られており、かつ市販されており、前述されるように、「セタン(価)改良剤」、「燃焼改良剤」、および「点火改良剤」などとしても(ディーゼル燃料の文脈において)知られている場合がある。
【0031】
セタン向上剤は、添加剤レベル(典型的には、10~2000ppm w/w)でディーゼル燃料に添加されることが多い。
【0032】
それらは、点火遅延、すなわち、燃料の噴射時期と燃焼開始(点火)の間の時間を低減するように機能する。
【0033】
燃料のセタン価(CN)は、n-ヘキサデカン(セタン、CN=100)と、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタ-メチルノナン(CN=15)との標準混合物の点火特性を参照することにより定義される。高いCNを有する燃料は、短い点火遅延を有する。典型的には、ガソリン火花点火エンジンにおいて自然発火に対する耐性を与える高いオクタン価を有する分子は、低いセタン価を有する。したがって、少量のセタン向上剤をディーゼル燃料に添加すると、より短い点火遅延に基づいて改善された燃料特性がもたらされ得る。
【0034】
既知のセタン価向上剤には、2-EHN以外のある特定の有機硝酸塩(例えば、硝酸イソプロピル、硝酸シクロヘキシル、および硝酸メトキシエチル)、ならびに有機過酸および過エステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
それはまた、消泡剤を含有するディーゼル燃料組成物のために好ましい場合があり、防錆剤、および/または腐食防止剤、および/または潤滑性向上添加剤との組み合わせがより好ましい。
【0036】
ディーゼル燃料組成物中の任意の曇り防止剤の(活性物質)濃度は、好ましくは0.1~20ppmw、より好ましくは1~15ppmw、さらにより好ましくは1~10ppmw、特に1~5ppmwの範囲内にあるであろう。あるいは、より高レベルの曇り防止化合物が使用され得る。
【0037】
存在する任意の追加の点火改良剤の(活性物質)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、より好ましくは2000ppmw以下、さらにより好ましくは300~1500ppmwであるであろう。
【0038】
ディーゼル燃料組成物のための従来の燃料添加剤混合物は、典型的には、ディーゼル燃料と適合する希釈剤を含有するであろう。そのような希釈剤は、鉱物油、Shell社により「SHELLSOL」という商標で販売されているものなどの溶媒、極性溶媒、例えば、エステル、ならびに、特に、アルコール、例えば、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール、およびアルコール混合物、例えば、Shell社により「LINEVOL」という商標で販売されているもの、特に、市販されているC7~9の第一級アルコールの混合物、またはC12~14アルコール混合物であるLINEVOL79アルコールであり得る。本発明の使用を達成するための燃料添加剤混合物は、上述したように1つ以上の洗浄剤、2-EHN、および希釈剤を含有し得る。本発明の使用を達成するための燃料添加剤混合物は、代わりに、2-EHNなしで上述した1つ以上の洗浄剤および希釈剤を含有し得る。そのような場合、2-EHNは、既にベース燃料中に存在するか、またはベース燃料に別個に添加される。別の実施形態では、2-EHNは、燃料添加剤混合物およびベース燃料の両方に存在し得る。
【0039】
故に、使用時に、2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤は、好適な溶媒、例えば、鉱油またはフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素混合物などの油、添加剤が使用されるディーゼル燃料組成物(例えば、軽油または灯油などの中間蒸留燃料成分)と適合する燃料成分(これは、再び鉱物またはフィッシャー・トロプシュ誘導であり得る);ポリアルファオレフィン;いわゆるバイオ燃料、例えば、脂肪酸アルキルエステル(FAAE)、フィッシャー・トロプシュ誘導バイオマスおよび液体合成物、水素化植物油、廃棄物もしくは藻類油、またはエタノールなどのアルコール;芳香族溶媒;任意の他の炭化水素または有機溶媒;あるいはそれらの混合物中で予め溶解され得る。この文脈で使用するのに好ましい溶媒は、重質芳香族ナフサを含む鉱物油系ディーゼル燃料成分および溶剤、ならびに以下に言及される「XtL」成分などのフィッシャー・トロプシュ誘導成分である。ある特定のケースでは、バイオ燃料溶媒も好ましい場合がある。典型的には、2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤は、消泡剤、腐食防止剤、曇り防止剤などの他の添加剤をさらに含有する添加剤(性能)パッケージの一部であるであろう。あるいは、2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤は、ベース燃料と直接ブレンドされ得る。
【0040】
ディーゼル燃料組成物中の任意の追加の添加剤の全含量は、好適には0~10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であり得る。
【0041】
上記において、成分の量(濃度、体積%、ppmw、重量%)は、活性物質であり、すなわち揮発性溶媒/希釈剤は排除される。
【0042】
本発明の液体燃料組成物は、燃料添加剤を内部燃焼エンジンでの使用に好適なディーゼルベース燃料と組み合わせて混合することにより生成され得る。
【0043】
本組成物の残部は、典型的には、例えば、任意に、上述したような1つ以上の他の燃料添加剤と合わせて1つ以上の自動車用ベース燃料からなるであろう。
【0044】
本発明の燃料組成物が使用されるエンジンは、任意の適切なエンジンであり得る。故に、燃料がバイオディーゼルを含むディーゼル燃料組成物である場合、エンジンは、ディーゼルまたは圧縮点火式エンジンである。同様に、ターボチャージディーゼルエンジンなどの任意のタイプのディーゼルエンジンが使用され得るが、但し、同じかまたは同等のエンジンが使用されて、燃料経済性を増加させる構成要素の有無にかかわらず、燃料経済性が測定されることを条件とする。一般に、本発明の燃料経済性改良剤は、広範なエンジン動作条件にわたって使用するのに好適である。
【0045】
本発明に従って調製されたディーゼル燃料組成物は、一般に、圧縮点火式(ディーゼル)エンジンで使用するのに好適な任意のタイプのディーゼル燃料組成物であり得、それは、それ自体でディーゼル燃料成分の混合物を含み得る。
【0046】
故に、本発明に従って調製されたディーゼル燃料組成物は、2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤に加えて、従来のタイプの1つ以上のディーゼル燃料成分を含み得る。それは、例えば、以下に記載されるタイプの、過半割合のディーゼルベース燃料を含み得る。この文脈において、「過半割合」は、本組成物全体に基づいて、少なくとも50%w/w、典型的には少なくとも85%w/wを意味する。より好適には、少なくとも90%w/wまたは少なくとも95%w/wである。いくつかのケースでは、燃料組成物の少なくとも98%w/wまたは少なくとも99%w/wがディーゼルベース燃料からなる。したがって、いくつかの実施形態では、ベース燃料は、それ自体で以下に記載されるタイプのうちの2つ以上のディーゼル燃料成分の混合物を含み得る。
【0047】
典型的なディーゼル燃料成分は、液体炭化水素中間蒸留燃料油、例えば、石油誘導軽油を含む。そのようなべース燃料成分は、有機的または合成的に誘導され得、かつ原油から所望の範囲の留分を蒸留することにより好適に得られる。それらは、典型的には、等級と用途に応じて、150~410℃または170~370℃の通常のディーゼルの範囲内の沸点を有するであろう。それらは、典型的には、15℃(IP365)で、0.75~0.9g/cm、例えば、0.8~0.86g/cmの密度、および35~80、より好ましくは40~75の測定されたセタン価(ASTM D613)を有するであろう。それらの初期沸点は、好適には150~230℃の範囲内にあり、最終沸点は290~400℃の範囲内にあるであろう。40℃におけるそれらの動粘度(ASTM D445)は、好適には、1.5~4.5センチストークスであり得る。そのような燃料は、一般に、間接噴射タイプまたは直接噴射タイプのいずれかの圧縮点火式(ディーゼル)内部燃焼エンジンにおいて使用するのに好適である。
【0048】
本発明を実施することにより得られる自動車用ディーゼル燃料組成物も好適に、これらの一般仕様内に入るであろう。したがって、それは、概して、例えばEN590(欧州)またはASTM D975(米国)などの適用可能な現在の標準仕様(複数可)に準拠するであろう。一例として、燃料組成物は、15℃で0.82~0.845g/cmの密度、360℃以下のT95沸点(ASTM D86)、45以上のセタン価(ASTM D613)、40℃で2~4.5mm/sの動粘度(ASTM D445)、50mg/kg以下の硫黄含量(ASTM D2622)、および/または11%w/w未満の多環式芳香族炭化水素(PAH)含量(IP391(mod))を有し得る。しかしながら、関連する仕様は、国ごとに、および年々異なり得、燃料組成物の使用目的に依存し得る。特に、その測定されたセタン価は、好ましくは40~70、~75、もしくは~80、より好ましくは50~65、または少なくとも50超、55超、60超、もしくは65超であるであろう。
【0049】
例えば、原油源を精製し、任意に(水素化)処理することにより得られる石油誘導軽油は、ディーゼル燃料組成物中に組み込まれ得る。それは、そのような精製処理から得られた単一の軽油ストリーム、または異なる処理経路を介する精製処理において得られたいくつかの軽油留分のブレンドであり得る。そのような軽油留分の例は、直留軽油、真空軽油、熱分解処理において得られるような軽油、流体接触分解ユニット内で得られるような軽質および重質循環油、ならびに水素化分解ユニットから得られるような軽油である。任意に、石油誘導軽油は、いくつかの石油誘導灯油留分を含み得る。そのような軽油は、その硫黄含量をディーゼル燃料組成物中に含まれるのに好適なレベルまで低減するために、水素化脱硫(HDS)ユニット内で処理され得る。これはまた、酸素または窒素含有種などの他の極性種の含量を低減させる傾向がある。いくつかのケースでは、燃料組成物は、重質炭化水素を分割することにより得られた1つ以上の分解生成物を含むであろう。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、ベース燃料は、植物油、水素化植物油もしくは植物油誘導体(例えば、脂肪酸エステル、特に脂肪酸メチルエステル、FAME)、または酸、ケトン、もしくはエステルなどの別の酸素化物などの別のいわゆる「バイオディーゼル」燃料成分であり得るか、またはそれらを含有し得る。そのような構成要素は、必ずしも生体由来である必要はない。燃料組成物がバイオディーゼル成分を含有する場合、バイオディーゼル成分は、最大100%、例えば、1%~99%w/w、2%~80%w/w、2%~50%w/w、3%~40%w/w、4%~30%w/w、または5%~20%w/wの量で存在し得る。一実施形態では、バイオディーゼル成分は、FAMEであり得る。
【0051】
ディーゼルベース燃料は、フィッシャー・トロプシュ誘導ディーゼル燃料成分、典型的にはフィッシャー・トロプシュ誘導軽油からなり得るか、またはそれらを含み得る。本明細書で使用される場合、「フィッシャー・トロプシュ誘導」という用語は、材料がフィッシャー・トロプシュ凝縮処理の合成生成物であるか、またはその合成から得られることを意味する。したがって、フィッシャー・トロプシュ誘導燃料または燃料成分は、添加された水素以外の実質的な部分が、フィッシャー・トロプシュ凝縮処理から直接的または間接的に誘導される、炭化水素ストリームであるであろう。
【0052】
フィッシャー・トロプシュ燃料は、ガス、バイオマス、または石炭を液体に変換すること(XTL)により、特にガスから液体に変換すること(GTL)、またはバイオマスから液体に変換すること(BTL)により誘導され得る。フィッシャー・トロプシュ誘導燃料成分の任意の形態は、本発明によるベース燃料として使用され得る。
【0053】
ベース燃料は、好適には、例えば、最大2000mg/kg(重量/ppmwによる百万分の2000部)の低硫黄含量を有する。より好適には、それは、例えば、350mg/kg(350ppmw)以下、さらにより好適には100、または50、または10、またはさらに5mg/kg(5ppmw)以下の硫黄などの、最大500mg/kg(500ppmw)の低硫黄含量または超低硫黄含量を有するであろう。これは、いわゆる「ゼロ硫黄」燃料であり得るが、いくつかのケースでは、ベース燃料が硫黄を含まない(「ゼロ硫黄」)燃料でないことが望ましい場合がある。理想的には、本発明を実施することにより得られる燃料組成物はまた、これらの限界内にある硫黄含量を有するであろう。
【0054】
本発明に従って調製された自動車用ディーゼル燃料組成物は、例えばEN590(欧州)またはASTM D-975(米国)などの適用可能な現在の標準仕様(複数可)に好適に準拠するであろう。一例として、燃料組成物全体は、15℃で820~845kg/m(ASTM D-4052またはEN ISO 3675)の密度、360℃以下のT95沸点(ASTM D-86またはEN ISO 3405)、40以上の測定されたセタン価(ASTM D-613)、2~4.5mm/sのVk40(ASTM D-445またはEN ISO 3104)、50mg/kg以下の硫黄含量(ASTM D-2622またはEN ISO 20846)、および/または8%w/w未満の多環芳香族炭化水素(PAH)含量(IP 391(mod))を有し得る。しかしながら、関連する仕様は、国ごとに、および年々異なり得、燃料組成物の使用目的に依存し得る。
【0055】
しかしながら、ブレンド全体の特性は、その個々の成分から、しばしば著しく異なる場合があるので、本発明に従って調製されたディーゼル燃料組成物は、これらの範囲外の特性を有する燃料成分を含有し得ることが、理解されるであろう。
【0056】
本発明の一態様によると、燃料組成物の堆積物低減または清浄性能を改善し、かつ/または燃料組成物の燃料経済性能を改善するための2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤の使用が提供される。本発明の文脈において、燃料組成物中の2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤の「使用」は、典型的にはブレンド(すなわち、物理的な混合物)として2-EHNおよび/または1つ以上の洗浄剤を、2-EHNおよび洗浄剤(複数可)以外の、1つ以上の燃料成分(典型的には、ディーゼルベース燃料)、および任意に1つ以上の追加の燃料添加剤と共に本組成物中に組み込むことを意味する。
【0057】
2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤は、好ましくは、本組成物が本組成物で動作するエンジンに導入される前に、燃料組成物に組み込まれる。したがって、2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤は、精製所で燃料組成物またはベース燃料の1つ以上の成分に直接(例えば、ブレンドされて)添加され得る。例えば、それらは、後に自動車用燃料組成物全体の一部を形成する好適な燃料成分中で予備希釈され得る。あるいは、それらは、精製所の下流でディーゼル燃料組成物に添加され得る。例えば、それらは、1つ以上の他の燃料添加剤を含有する添加剤パッケージの一部として添加され得る。これは、いくつかの状況において、精製所で燃料組成物を変更することが不便または望ましくない可能性があるため、特に有利であり得る。例えば、ベース燃料成分のブレンドは、全ての場所で実現可能ではない場合があるが、比較的低濃度での燃料添加剤の導入は、燃料デポ、または道路タンカー、艀もしくは列車充填点などの他の充填点、ディスペンサー、カスタマータンク、および車両でより容易に達成され得る。
【0058】
したがって、本発明の「使用」はまた、2-EHNおよび/または1つの以上の洗浄剤を、本発明の利点のうちの1つを達成するためのディーゼル燃料組成物中でそれらを使用するための説明書と一緒に供給することを包含し得る。したがって、2-EHNおよび/または1つ以上の洗浄剤は、燃料添加剤、特にディーゼル燃料添加剤として使用するのに好適な、かつ/または使用を意図した配合物の成分として供給され得る。一例として、2-EHNおよび/または1つ以上の洗浄剤は、1つ以上の他の燃料添加剤と共に添加剤配合物またはパッケージに組み込まれ得る。上述したように、1つ以上の燃料添加剤は、当業者に既知の耐腐食添加剤、曇り防止剤、消泡剤、エステル、ポリアルファオレフィン、長鎖有機酸、アミンまたはアミド活性中心を含有する成分、およびそれらの混合物などの任意の有用な添加剤から選択され得る。
【0059】
本発明の別の態様によると、方法がディーゼルベース燃料(または、ベース燃料混合物)を2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤とブレンドすることを伴う自動車用燃料組成物の調製のための方法が提供される。ブレンドすることは、本明細書に記載される目的のうちの1つ以上のために実施され得る。
【0060】
いくつかのケースでは、2-EHNおよび/または1つ以上の洗浄剤は、他の燃料添加剤との予備混合には好適ではない場合があり、したがって、凝縮(100%)または予備希釈されたストックから燃料組成物に直接添加され得る。
【0061】
本発明による使用のための2-EHNおよび1つ以上の洗浄剤の量は、使用される燃料のタイプおよび/またはエンジンの動作条件に応じて変化し得るが、本発明のさらなる利点は、いくつかのエンジン条件下で、特に本発明の利点を観察するのに必要な1つ以上の洗浄剤の量が、驚くほど低く、同じ清浄度/堆積物低減効果を提供するのに必要な通常の洗浄剤添加剤の濃度よりも低い場合があることである。これは、同様に、燃料調製プロセスのコストおよび複雑さを低減し得る。
【0062】
また、比較的低濃度で使用される添加剤は当然、約数十重量パーセントの濃度で使用されることが必要である燃料成分より費用効果的に、搬送、保存され得、燃料組成物に導入され得る。
【0063】
本発明の別の態様は、内部燃焼エンジン、および/またはそのようなエンジンにより動力提供される車両の作動の方法を提供し、本方法は、本発明に従って調製された燃料組成物を、エンジンの燃焼室に導入することを含む。燃料組成物は、本発明に関連して記載される目的のうちの1つ以上のために有利に導入される。故に、エンジンは、好ましくは、エンジンの使用中の清浄度および堆積物低減、ならびに/または燃料経済性、例えば、エンジン排気量の低減などの関連する利益を改善することを目的として、燃料組成物を用いて作動される。エンジンは、特にディーゼルエンジンであり、ターボチャージディーゼルエンジンであり得る。ディーゼルエンジンは、例えば、ロータリーポンプ、インラインポンプ、ユニットポンプ、電子ユニット噴射器、もしくはコモンレールタイプなどの直接噴射タイプ、または間接噴射タイプであり得る。それは、重負荷または軽負荷ディーゼルエンジンであり得る。例えば、それは、電子ユニット直接噴射(EUDI)エンジンであり得る。
【0064】
特定の評価に関連する場合、排出レベルは、欧州R49、ESC、OICA、もしくはETC(重負荷エンジンの場合)、またはECE+EUDCもしくはMVEG(軽負荷エンジンの場合)試験サイクルなどの標準試験手順を使用して測定され得る。理想的には、排出性能は、ユーロII標準排出ガス規制(1996年)、またはユーロIII(2000年)、IV(2005年)、もしくはV(2008年)標準規制に準拠するように作られたディーゼルエンジンで測定される。
【0065】
本明細書の記述および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈が別途必要としない場合、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、複数形、ならびに、文脈が別途必要としない場合は単数形を企図すると理解されたい。
【0066】
故に、本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と併せて記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分、または化学基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態、または実施例に適合しない場合を除いて、それらに適用可能であることを理解されたい。したがって、本発明の「使用」の特徴は、本発明の「方法」に直接適用可能である。また、別途記載されない限り、本明細書に開示される任意の特徴は、同じかまたは同様の目的を果たす代替の特徴により置き換えられ得る。
【0067】
本発明はここで、以下の非限定的な実施例によりさらに例示される。
【実施例
【0068】
実施例1
最終燃料配合物中で160ppmwの洗浄剤のレベルおよび最終燃料配合物中で600ppmwの2-EHNのレベルを達成するのに十分な量の洗浄剤および2-EHNを含有する添加剤パッケージを、EN590に準拠する標準的な低硫黄ディーゼルベース燃料にブレンドした。添加剤パッケージには、加えて他にもいくつかの少量の成分が含有されていた。低分子量PIBスクシンイミドの形態の代用汚損物質を、最終組成物の重量で10ppmwのレベルでディーゼルベース燃料にブレンドした。ベース燃料の仕様を以下の表1に示す。
【表1】
【0069】
実施例2
洗浄剤を含有するが2-EHNを含有しない添加剤パッケージを、上記の実施例1で使用したのと同じ標準的な低硫黄ディーゼルベース燃料にブレンドした。実施例2で使用した洗浄剤および少量の添加剤成分のタイプおよびレベルは、実施例1で使用したものと同じであった。低分子量のPIBスクシンイミドの形態の代用汚損物質は、最終組成物の重量で10ppmwのレベルでディーゼル燃料配合物中に含まれていた。
【0070】
試験される燃料ブレンドを、CEC F-110-16(第1号)試験方法に供した。疑念を避けるために、CEC F-110-16(第1号)に記載されているナトリウムおよびドデセニルコハク酸(DDSA)は、実施例1または実施例2のいずれの燃料にもブレンドされなかった。上述したように、低分子量のPIBスクシンイミドの形態の代用汚損物質を、最終組成物の重量で10ppmwのレベルで代わりに使用した。
【0071】
洗浄剤と2-EHNとを組み合わせて含有する燃料ブレンド(実施例1)、およびベース燃料のみ、ならびに同じレベルの洗浄剤だけを添加した同じ燃料(実施例2)の結果を表2に示す。
【表2】
【0072】
討論
表2に示す結果は、同じ洗浄剤パッケージのみを含有する参照燃料(2-EHNなし)と比較して、洗浄剤パッケージと組み合わせた2-EHNの使用による堆積物の著しい低減を実証する。
以下に、本発明の実施態様を記載する。
態様1
圧縮点火式燃焼エンジンにおける内部噴射器堆積物を低減することを目的とする、ディーゼル燃料組成物中の硝酸2-エチルヘキシルおよび1つ以上の洗浄剤の使用。
態様2
圧縮点火式燃焼エンジンの燃料経済性を改善することをさらに目的とする、態様1に記載の使用。
態様3
前記ディーゼル燃料組成物中の硝酸2-エチルヘキシルの濃度が、前記ディーゼル燃料組成物全体の重量に基づいて、10~1500ppmwの範囲にある、態様1または態様2に記載の使用。
態様4
前記ディーゼル燃料組成物中の前記1つ以上の洗浄剤の濃度が、前記ディーゼル燃料組成物全体の重量に基づいて、5ppmw~1500ppmwの範囲内にある、態様1~3のいずれかに記載の使用。
態様5
前記洗浄剤が、ポリ(エチレンアミン)のポリイソブチレンスクシンイミドである、態様1~4のいずれか一項に記載の使用。
態様6
前記ディーゼル燃料組成物が、洗浄剤以外および2-EHN以外の1つ以上の燃料添加剤をさらに含む、態様1~5のいずれか一項に記載の使用。
態様7
内部ディーゼル噴射器堆積物の前記低減が、CEC F-110-16試験方法に従って測定される、態様1~6のいずれかに記載の使用。
態様8
硝酸2-エチルヘキシルと、1つ以上の洗浄剤とを含むディーゼル燃料組成物を用いて内部燃焼エンジンに燃料を供給することにより、前記内部燃焼エンジンにおける内部噴射器堆積物を低減するための方法。