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特許7045334多孔質ポリウレタン研磨パッドおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】多孔質ポリウレタン研磨パッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20220324BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
B24B37/24 C
C08G18/00 J
H01L21/304 622F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018562597
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 KR2018010562
(87)【国際公開番号】W WO2019050365
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2018-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0116069
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0116108
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521133816
【氏名又は名称】エスケイシー・ソルミックス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC solmics Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ソ・チャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ヒョクヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】リュ・ジュンソン
(72)【発明者】
【氏名】クォン・ヨンピル
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
C08G 18/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂および該ポリウレタン樹脂中に分布された孔を含み、
該孔が、固相発泡剤によって形成された孔を含み、
1μm単位に分類した孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が50~65μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、
最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、50~95%である
、多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項2】
孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、
最大ピークの孔径が、平均孔径より大きく、
該平均孔径が、35~55μmであり、
最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、70~90%である、請求項1記載の多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項3】
孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、
最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、30~50%である、請求項1記載の多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項4】
孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が平均孔径より10~60μm大きい、請求項1記載の多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項5】
前記固相発泡剤によって形成された該孔が、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔を含む、請求項1記載の多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項6】
タングステンの研磨速度が1である場合、0.6~0.99の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有する、請求項1記載の多孔質ポリウレタン研磨パッド。
【請求項7】
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、およびシリコーン系界面活性剤を混合して、孔を形成しながら混合物を成形する際に、不活性ガスを吹き込む工程を含み、
該ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1~3重量部の配合量で、該固相発泡剤を使用し、
1μm単位に分類した孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が50~65μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、
最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、50~95%である、多孔質ポリウレタン研磨パッドを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、化学機械研磨に使用される多孔質ポリウレタン研磨パッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造方法における化学機械研磨(CMP)法は、ウェハをヘッドに固定し、プラテン上に取り付けた研磨パッドの表面と接触させ、次いで上記プラテンおよびヘッドを相対的に移動させて、それによってウェハ表面上の凹凸を機械的に平坦化しながら、上記ウェハをその上に供給されたスラリで化学的に処理する工程を示す。
【0003】
研磨パッドは、このようなCMP法において重要な役割を果たす必須部材である。一般に、研磨パッドは、ポリウレタン系樹脂から構成され、その表面上にスラリの大流量のための溝および微小流量を支持するための孔を有する。研磨パッドにおける孔は、空隙を有する固相発泡剤、揮発性液体を有する液相発泡剤、不活性ガス、繊維などを使用することにより、或いは化学反応によるガスを発生することによって形成してもよい。
【0004】
不活性ガスまたは揮発性液相発泡剤を使用することによる孔形成技術は、上記CMP法に悪影響を与える可能性のある如何なる材料も排出しないという優位性を有する。しかしながら、制御の難しい気相を取り扱うことが避けられないので、上記孔径および上記パッドの密度を正確に制御することは困難である。50μm以下の均一な孔を製造することは特に困難である。更に、研磨パッドのポリウレタンマトリックスの組成を変更せずに、孔径および上記パッドの密度を制御することが非常に困難であるという問題がある。
【0005】
固相発泡剤として、熱膨張によってサイズを調節されたマイクロカプセルが使用される。既に膨張したマイクロバルーン構造体中の熱膨張したマイクロカプセルは均一な粒子径を有するので、孔径を均一に制御することができる。しかしながら、熱膨張したマイクロカプセルは、100℃以上の高温の反応条件下でマイクロカプセルの形状が変化するので、孔を制御するのが困難であるという欠点を有する。従って、微小孔を従来の方法のように単一の発泡剤を使用することによって提供する場合に設計されるように、上記孔を上記径および分布を有する形態に形成してもよいが、上記孔を設計する自由度は低くなり、孔分布を制御するには限界がある。
【0006】
特許文献1には、不活性ガスおよび孔誘発ポリマー(pore‐inducing polymer)を用いることによる低密度研磨パッドの製造方法が開示されている。しかしながら、上記特許文献には、孔径および孔分布、並びに研磨パッドの研磨速度は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2016‐0027075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、発泡剤、界面活性剤および反応速度制御剤を適切に使用して製造され、かつその径および分布を制御した孔を有する多孔質ポリウレタン研磨パッド、並びにその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態により、ポリウレタン樹脂および上記ポリウレタン樹脂中に分布された孔を含み、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が18~28μmまたは50~65μmである、多孔質ポリウレタン研磨パッドを提供する。
【0010】
本発明の別の実施形態により、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、およびシリコーン系界面活性剤を混合して、孔を形成しながら混合物を成形する際に、不活性ガスを吹き込む工程を含み、
該ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1~3重量部の配合量で、該固相発泡剤を使用し、
孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が18~28μmまたは50~65μmである、多孔質ポリウレタン研磨パッドを製造する方法を提供する。
【0011】
本発明の具体的な実施態様では、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が18~28μmであり、
最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、10~30%である。
【0012】
本発明の別の具体的な実施態様では、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が50~65μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、
最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、50~95%である。
【発明の効果】
【0013】
上記実施態様によれば、発泡剤、界面活性剤および反応速度制御剤を適切に使用することによって、多孔質ポリウレタン研磨パッドにおける孔径および孔分布を制御することができ、それによって、その研磨性能(即ち、研磨速度)を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1a】、
図2a】および
図3a】それぞれ実施例1および比較例2~3において製造された多孔質ポリウレタン研磨パッドにおける孔径に対する孔の断面積の合計の分布図を示す(A:最大ピーク)。
図1b】、
図2b】および
図3b】それぞれ実施例1および比較例2~3において製造された多孔質ポリウレタン研磨パッドの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(多孔質ポリウレタン研磨パッド)
本発明の実施態様による多孔質ポリウレタン研磨パッドは、ポリウレタン樹脂および上記ポリウレタン樹脂中に分布された孔を含み、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が18~28μmの範囲内または50~65μmの範囲内である。
【0017】
原材料
上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、ポリウレタン樹脂から構成され、上記ポリウレタン樹脂はイソシアネート末端基を有するウレタン系プレポリマーから誘導されてもよい。そのような場合、上記ポリウレタン樹脂は上記プレポリマーを構成するモノマー単位を含む。
【0018】
プレポリマーは、上記製造方法において最終的に製造される成形物を都合よく成形するように、重合度を中間レベルに調節する比較的低い分子量を有するポリマーと一般的に呼ばれる。プレポリマーはそれ自体によって、または別の重合性化合物との反応後に成形されてもよい。例えば、プレポリマーは、イソシアネート化合物をポリオールと反応させることによって作製してもよい。
【0019】
例えば、ウレタン系プレポリマーの作製に用いられてもよい上記イソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレン‐1,5‐ジイソシアネート、p‐フェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートから成る群から選択される少なくとも1つのイソシアネートであってもよい。
【0020】
例えば、ウレタン系プレポリマーの作製に用いられてもよい上記ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびポリアクリルポリオールから成る群から選択される少なくとも1つのポリオールであってもよい。上記ポリオールは、300~3,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0021】
上記ポリウレタン樹脂は、500~3,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。特に、上記ポリウレタン樹脂は、600~2,000g/モルまたは700~1,500g/モルの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0022】

孔は、ポリウレタン樹脂中に分散したように存在する。具体的には、気泡は、固相発泡剤として用いられる熱膨張したマイクロカプセルから誘導されても、または不活性ガスから形成されてもよい。
【0023】
2aを参照すると、特定の実施形態による多孔質ポリウレタン研磨パッドにおける孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は18~28μmの範囲内であり、最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、10~30%である。
【0024】
具体的には、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が平均孔径よりも小さく、平均孔径が24μm~36μmであり、最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、10~30%であってもよい。具体的には、最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、14%~20%であってもよい。
【0025】
また、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は、平均孔径より1μm~10μmまたは1μm~5μm小さくてもよい。
【0026】
上記孔は、固相発泡剤によって形成された孔を含んでもよい。
【0027】
更に、上記孔は、気相発泡剤によって形成された孔を含んでもよい。このような場合、気相発泡剤によって形成される孔は、最大ピークの孔径よりも20μm以上大きい孔径を有する孔を含んでいてもよい。
【0028】
1aを参照すると、別の特定の実施形態による多孔質ポリウレタン研磨パッドにおける孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が50~65μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、50~95%である。
【0029】
具体的には、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が平均孔径より大きく、上記平均孔径が35~55μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、70~90%であってもよい。より具体的には、最大ピークの孔径よりも小さい孔の断面積の合計は、全孔の断面積の合計の100%に基づいて、75%~85%であってもよい。
【0030】
また、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きくてもよい。また、最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、30~50%、特に35~45%であってもよい。また、最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、15%~45%、20%~40%、または25%~35%であってもよい。
【0031】
また、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が平均孔径より10~60μm大きくてもよい。
【0032】
上記孔は、固相発泡剤によって形成された孔を含んでもよい。そのような場合、固相発泡剤によって形成される孔は、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔を含んでもよい。また、固相発泡剤により形成された孔は、最大ピークの孔径より20μm以上小さい孔径を有する孔を含んでもよい。
【0033】
更に、上記孔は、気相発泡剤によって形成された孔を含んでもよい。このような場合、気相発泡剤によって形成される孔は、最大ピークの孔径よりも5μm以上大きい孔径を有する孔を含んでもよい。
【0034】
ここで、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図は、X軸に研磨パッドの断面上に観察される種々の孔の孔径(μm)を示し、Y軸に全孔の断面積の合計100%に基づいて、孔径に対する孔の断面積の合計(%)を示すグラフ図を表す。例えば、研磨パッドの断面上に観察される全孔の断面積の合計が100%である時に、約24μmの孔径を有する孔の断面積の合計が3%である場合、X軸に24μm、Y軸に3%として表される(図1a参照)。
【0035】
加えて、最大ピークの孔径は、その断面積の合計の最も高い比を有する孔径として定義することができる。例えば、最大ピーク(A)の孔径は、図1aの孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において59μmであり、研磨パッドの断面上に存在している様々な孔の内、その孔径が59μmである孔の断面積の合計の比が最も高いことを意味する。
【0036】
更に、上記平均孔径は、面積加重平均孔径と呼ばれる。例えば、以下の式1で定義することができる。
【0037】
[式1]
平均孔径(μm)=(Σ孔径(μm)×上記孔径(%)を有する孔の断面積の合計の比)/100%
上記孔の体積は、研磨パッドの研磨性能において重要である。従って、平均孔径、最大ピークの孔径および各孔特性は、研磨パッドの断面における孔の断面積に基づいて調整されなければならない。
【0038】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、研磨パッドの合計断面積100%に基づいて、30%~70%、または30%~60%の面積比で孔を含んでもよい。
【0039】
添加剤
上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、3級アミン系化合物および有機金属化合物からなる群から選択される少なくとも1つの反応速度調節剤;並びにシリコーン系界面活性剤を更に含んでもよい。
【0040】
反応速度制御剤は、反応促進剤であっても、または反応抑制剤であってもよい。具体的には、反応速度制御剤は反応促進剤であってもよい。例えば、反応速度調節剤は、トリエチレンジアミン(TEDA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、2‐メチル‐トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、1,4‐ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ビス(2‐メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N”,N”‐ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N‐エチルモルホリン、N、N‐ジメチルアミノエチルモルホリン、N、N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、2‐メチル‐2‐アザノルボルナン、ジブチル錫ジラウレート、第一錫オクトアート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジ‐2‐エチルヘキサノエート、およびジブチル錫ジメルカプチドからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。具体的には、上記反応速度制御剤は、ベンジルジメチルアミン、N,N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、およびトリエチルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0041】
シリコーン系界面活性剤は、形成される孔が互いに重なり合い、および合体するのを防止するように作用することができる。界面活性剤の種類は、研磨パッドの製造に一般的に用いられているものであれば特に限定されない。
【0042】
研磨パッドの物理的特性
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、1mm~5mmの厚さを有してもよい。具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドの厚さは、1mm~3mm、1mm~2.5mm、1.5mm~5mm、1.5mm~3mm、1.5mm~2.5mm、1.8mm~5mm、1.8mm~3mm、または1.8mm~2.5mmであってもよい。研磨パッドの厚さが上記範囲内であれば、研磨パッドとしての基本的な物理的特性を十分に発揮させることができる。
【0043】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、その表面に機械的研磨のための溝を有していてもよい。上記溝は、機械的研磨に必要な深さ、幅、間隔を有していてもよいが、それらは特に限定されない。
【0044】
多孔質ポリウレタン研磨パッドの密度および物理的特性は、イソシアネートとポリオールとの反応によって重合されたウレタン系プレポリマーの分子構造によって制御することができる。具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、30ショアD~80ショアDの硬度を有してもよい。より具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、40ショアD~70ショアDの硬度を有してもよい。
【0045】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、0.6g/cm~0.9g/cmの比重を有してもよい。具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、0.7g/cm~0.85g/cmの比重を有してもよい。
【0046】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、10kgf/cm~100kgf/cmの引張強さを有してもよい。具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、10kgf/cm~70kgf/cm、10kgf/cm~50kgf/cm、10kgf/cm~40kgf/cm、または15kgf/cm~40kgf/cmの引張強さを有してもよい。
【0047】
具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、30%~300%の伸びを有してもよい。より具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、50%~200%または100%~180%の伸びを有してもよい。
【0048】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.6~0.99、または0.7~0.99の範囲の、酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有してもよい。具体的には、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.7~0.9、または0.75~0.8の範囲の、酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有してもよい。
【0049】
例えば、多孔質ポリウレタン研磨パッドは、500Å/分~1,500Å/分、700Å/分~1,300Å/分、700Å/分~1000Å/分、600Å/分~1,000Å/分、または600Å/分~800Å/分の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有してもよい。
【0050】
(多孔質ポリウレタン研磨パッドの製造方法)
本発明の1つの実施形態による多孔質ポリウレタン研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、およびシリコーン系界面活性剤を混合して、孔を形成しながら混合物を成形する際に、不活性ガスを吹き込む工程を含み、上記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1~3重量部の配合量で、上記固相発泡剤を使用し、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が18~28μmまたは50~65μmである。
【0051】
特定の実施形態によれば、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は18μm~28μmの範囲にあり、最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計は、全孔の断面積の合計100%に基づいて、10%~30%である。
【0052】
別の特定の実施形態によれば、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が50~65μmであり、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計より大きく、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計と、最大ピークの孔径より5μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計との差が、全孔の断面積の合計100%に基づいて、50~95%である。
【0053】
ウレタン系プレポリマー
ウレタン系プレポリマーは、上記のようにイソシアネート化合物とポリオールとを反応させることにより製造してもよい。イソシアネート化合物およびポリオールの具体的な種類は、研磨パッドに関して先に例示した通りである。
【0054】
上記ウレタン系プレポリマーは、500g/モル~3,000g/モルの重量平均分子量を有してもよい。具体的には、上記ウレタン系プレポリマーは、600g/モル~2,000g/モルまたは800g/モル~1,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0055】
1つの例として、ウレタン系プレポリマーは、イソシアネート化合物としてのトルエンジイソシアネートおよびポリオールとしてのポリテトラメチレンエーテルグリコールから重合させた500g/モル~3,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有するポリマーであってもよい。
【0056】
硬化剤
硬化剤は、アミン化合物およびアルコール化合物の少なくとも一方であってもよい。具体的には、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコール、および脂肪族アルコールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでもよい。
【0057】
例えば、硬化剤は、4,4’‐メチレンビス(2‐クロロアニリン)(MOCA)、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m‐キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリプロピレンジアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびビス(4‐アミノ‐3‐クロロフェニル)メタンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0058】
固相発泡剤
固相発泡剤は、熱膨張した(即ち、サイズ制御された)マイクロカプセルであり、5μm~200μmの平均孔径を有するマイクロバルーンの構造であってもよい。熱膨張した(即ち、サイズ制御された)マイクロカプセルは、熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させることによって得てもよい。
【0059】
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を含むシェルと、上記シェルの内部にカプセル化された発泡剤とを含む。熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。また、上記内部に封入される発泡剤は、炭素原子1~7個を有する炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。具体的には、上記内部に封入される発泡剤は、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n‐ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n‐ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n‐ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の低分子量炭化水素;トリクロロフルオロメタン(CClF)、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、クロロトリフルオロメタン(CClF)、テトラフルオロエチレン(CClF‐CClF)などのクロロフルオロ炭化水素;並びにテトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル‐n‐プロピルシランなどのテトラアルキルシランから成る群から選択されてもよい。
【0060】
固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部~3重量部の量で使用してもよい。具体的には、固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1.3重量部~2.7重量部、1.3重量部~2.6重量部、または1.5重量部~3重量部の量で使用してもよい。
【0061】
反応速度制御剤
反応速度制御剤は、3級アミン系化合物および有機金属化合物からなる群から選択される少なくとも1つの反応促進剤であってもよい。具体的には、上記反応促進剤は、トリエチレンジアミン(TEDA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、2‐メチル‐トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、1,4‐ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ビス(2‐メチルアミノエチル)エーテル、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N”,N”‐ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N‐エチルモルホリン、N、N‐ジメチルアミノエチルモルホリン、N、N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、2‐メチル‐2‐アザノルボルナン、ジブチル錫ジラウレート、第一錫オクトアート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジ‐2‐エチルヘキサノエート、およびジブチル錫ジメルカプチドから成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。具体的には、上記反応速度制御剤は、ベンジルジメチルアミン、N,N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、およびトリエチルアミンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0062】
反応速度調節剤を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.05重量部~2重量部の量で使用してもよい。具体的には、反応速度調整剤を、上記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.05重量部~1.8重量部、0.05重量部~1.7重量部、0.05重量部~1.6重量部、0.1重量部~1.5重量部、0.1重量部~0.3重量部、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.5重量部~1重量部の量で使用してもよい。反応速度制御剤を上記範囲内の量で使用すると、混合物(即ち、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調節剤、およびシリコーン系界面活性剤)の反応速度(即ち、固化時間))が適切に制御され、所望の大きさの孔を有する研磨パッドを製造することができる。
【0063】
シリコーン系界面活性剤
シリコーン系界面活性剤は、形成される孔が互いに重なり合い、および合体するのを防止するように作用することができる。
【0064】
シリコーン系界面活性剤を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~2重量部の量で使用してもよい。具体的には、上記界面活性剤を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~1.9重量部、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.5重量部~1.5重量部の量で使用してもよい。シリコーン系界面活性剤の量が上記範囲内であると、気相発泡剤から誘導される孔を型内で安定して形成および保持することができる。
【0065】
不活性ガス
不活性ガスは、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調節剤、およびシリコーン系界面活性剤を混合および反応させて、それによって研磨パッド中に孔を形成する際に供給される。不活性ガスの種類は、上記プレポリマーと硬化剤との反応に関与しないガスであれば特に限定されない。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス(N)、アルゴンガス(Ar)、およびヘリウム(He)から成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。具体的には、不活性ガスは、窒素ガス(N)またはアルゴンガス(Ar)であってもよい。
【0066】
不活性ガスは、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調節剤、およびシリコーン系界面活性剤の合計量に対して、15%~30%の量で供給してもよい。具体的には、不活性ガスを、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、およびシリコーン系界面活性剤の合計量に対して、20~30%の量で供給してもよい。
【0067】
1つの例として、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調節剤、シリコーン系界面活性剤および不活性ガスを実質的に同時に混合工程に投入してもよい。
【0068】
別の例としては、ウレタン系プレポリマー、固相発泡剤、およびシリコーン系界面活性剤を予め混合しておき、その後、硬化剤、反応速度調整剤、および不活性ガスを導入してもよい。即ち、反応速度調整剤を、ウレタン系プレポリマーまたは硬化剤と予め混合しない。
【0069】
反応速度調整剤をウレタン系プレポリマー、硬化剤等と予め混合する場合、反応速度を制御することが困難となる可能性がある。特に、イソシアネート末端基を有する上記プレポリマーの安定性を著しく損なう可能性がある。
【0070】
混合により、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤の反応を開始させ、固相発泡剤および不活性ガスを原材料中に均一に分散させる。このような場合には、反応速度を制御するために、反応開始時からウレタン系プレポリマーおよび硬化剤の反応において反応速度制御剤を介在させてもよい。具体的には、上記混合は、1,000rpm~10,000rpmまたは4,000rpm~7,000rpmの速度で行ってもよい。上記速度範囲内では、原材料中に不活性ガスおよび固相発泡剤を均一に分散させることがより有利である。
【0071】
ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤を、各分子中の反応性基のモル数に対して、1:0.8~1:1.2のモル当量比、または1:0.9~1:1.1のモル当量比で混合してもよい。ここで、「各分子中の反応性基のモル数」とは、例えば、ウレタン系プレポリマー中のイソシアネート基のモル数および硬化剤中の反応性基(例えば、アミン基、アルコール基など)のモル数を意味する。従って、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤を前述のモル当量比を満足する単位時間当たりの量で供給するように供給速度を制御することにより、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤を混合工程中に一定速度で供給してもよい。
【0072】
反応および孔の形成
ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤は、それらの混合により互いと反応して、シート状などに成形される、固体ポリウレタンを形成する。具体的には、ウレタン系プレポリマー中のイソシアネート末端基は、硬化剤中のアミン基、アルコール基などと反応することができる。この場合、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との反応に関与することなく、不活性ガスおよび固相発泡剤を原材料中に均一に分散して孔を形成する。
【0073】
また、反応速度制御剤は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤の反応を促進または遅延させることにより、孔径を調節する。例えば、反応速度制御剤が反応を遅延させる反応遅延剤である場合、原材料中に微細に分散された不活性ガスが互いと組み合わせられる時間を延長し、平均孔径を大きくすることができる。これに対して、反応速度制御剤が反応を促進させる反応促進剤である場合には、原材料中に微細に分散された不活性ガスが互いと組み合わせられる時間が短縮され、平均孔径を低減することができる。
【0074】
成形
成形は金型を用いて行われる。具体的には、混合ヘッドなどによって十分に撹拌された原材料(即ち、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調整剤、シリコーン系界面活性剤および不活性ガスを含む混合物)を、金型内に注入して内部を充填してもよい。ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤の反応が金型内で完了し、それによって金型の形状に適合する固化したケーキ状の成形体を製造する。
【0075】
その後、このようにして得られた成形体を、研磨パッド製造用シートに適宜スライスまたは切断してもよい。1つの例として、最終的に製造される研磨パッドの厚さの5~50倍の高さを有する金型内で成形体を作製し、次いで、これを同じ厚さにスライスして複数の研磨パッド用シートを一度に製造する。このような場合には、十分な固化時間を確保するために、反応速度制御剤として反応遅延剤を使用してもよい。従って、研磨パッド用シートを製造するために、金型の高さは、最終的に製造される研磨パッドの厚さの約5~約50倍であってもよい。しかしながら、スライスされたシートは、金型内の成形位置に依存して異なる大きさの孔を有していてもよい。即ち、金型の下部位置で成形されたシートは微細な孔を有するのに対して、金型の上部位置で成形されたシートは、下部位置で形成されたシートよりも大きな孔を有する。
【0076】
従って、シートが均一な大きさの孔を有するためには、1回の成形で1枚のシートを製造することができる成形型を使用することが好ましい。この目的のために、金型の高さは、最終的に製造される多孔質ポリウレタン研磨パッドの厚さと大きく異なることはない。例えば、最終的に製造される多孔質ポリウレタン研磨パッドの厚さの1~3倍の高さを有する金型を用いて成形を行ってもよい。より具体的には、上記金型は、最終的に製造される研磨パッドの厚さの1.1~2.5倍、または1.2~2倍の高さを有してもよい。このような場合、より均一な大きさを有する孔を形成するために、反応速度調節剤として反応促進剤を使用してもよい。
【0077】
その後、上記金型から得られた成形体の上端部および下端部をそれぞれ切り取ってもよい。例えば、成形体の上端部および下端部のそれぞれを、成形体の合計厚さの1/3以下、1/22~3/10、または1/12~1/4だけ切り取ってもよい。
【0078】
具体的な例としては、最終的に製造される多孔質ポリウレタン研磨パッドの厚みの1.2~2倍の高さを有する金型を用いて成形を行い、成形時に上記金型から得られた成形体の上端部および下端部のそれぞれを、成形体の合計厚さの1/12~1/4だけ切り取る更なる工程を次いで行ってもよい。
【0079】
上記切り取る工程に続いて、上記製造方法は、上記成形体の表面上に溝を加工する工程、下部に接着する工程、検査、包装工程等を更に含んでもよい。これらの工程を、研磨パッドを製造するための従来の方法において実施してもよい。
【0080】
(別の実施形態の多孔質ポリウレタン研磨パッド)
別の実施形態による多孔質ポリウレタン研磨パッドは、ポリウレタン樹脂および上記ポリウレタン樹脂中に分布された孔を含み、孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径が平均孔径より小さく、最大ピークの孔径が18~28μmであり、平均孔径が24~36μmであり、最大ピークの孔径より15μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より10μm以上15μm未満大きい孔径を有する孔の断面積の合計よりも大きい。
【0081】
上記孔は、ポリウレタン樹脂中に分散しているように存在する。具体的には、上記孔は、固相発泡剤として用いられる熱膨張したマイクロカプセルから誘導されてもよいし、不活性ガスから形成されてもよい。
【0082】
図3aを参照すると、多孔質ポリウレタン研磨パッドにおける孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は平均孔径より小さく、最大ピークの孔径より15μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より10μm以上15μm未満大きい孔径を有する孔の断面積の合計よりも大きい。具体的には、最大ピークの孔径より15μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計および最大ピークの孔径より10μm以上15μm未満大きい孔径を有する孔の断面積の合計の差は、1%~10%または5%~9%である。
【0083】
例えば、最大ピークの孔径は18μm~28μmであってもよく、平均孔径は24μm~36μmであってもよい。具体的には、最大ピークの孔径は、平均孔径より1μm~10μm小さくてもよい。より具体的には、最大ピークの孔径は、平均孔径よりも5μm~10μmまたは5μm~8μm小さくてもよい。
【0084】
多孔質ポリウレタン研磨パッドは、上記研磨パッドの合計断面積の100%に基づいて、30%~70%、または30%~60%の面積比で孔を含んでもよい。
【0085】
孔は、固相発泡剤によって形成される第1の孔と、気相発泡剤によって形成される第2の孔とを含んでもよい。具体的には、第2の孔は、最大ピークの孔径よりも15μm以上大きい孔径を有する孔および最大ピークの孔径よりも小さな孔径を有する孔を含んでもよい。
【0086】
多孔質ポリウレタン研磨パッドの密度および物理的特性は、イソシアネートおよびポリオールの反応によって重合されたウレタン系プレポリマーの分子構造によって制御することができる。具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、30ショアD~80ショアDの硬度を有してもよい。より具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、40ショアD~70ショアDの硬度を有してもよい。
【0087】
具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、0.6g/cm~0.9g/cmの比重を有してもよい。より具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、0.7g/cm~0.85g/cmの比重を有してもよい。
【0088】
具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、10kgf/cm~100kgf/cmの引張強さを有してもよい。より具体的には、上記孔性ポリウレタン研磨パッドは、15kgf/cm~70kgf/cmの引張強さを有してもよい。
【0089】
具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、30%~300%の伸びを有してもよい。より具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、50%~200%の伸びを有してもよい。
【0090】
上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.8~0.99の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有してもよい。具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.82~0.98の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有してもよい。より具体的には、上記多孔質ポリウレタン研磨パッドは、850Å/分~1500Å/分、860Å/分~1300Å/分、または900Å/分~1,300Å/分の酸化ケイ素の研磨速度を有してもよい。
【0091】
多孔質ポリウレタン研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、およびシリコーン系界面活性剤を混合して、孔を形成しながら混合物を成形する際に、不活性ガスを吹き込む工程を含み、上記ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1~3重量部の配合量で、上記固相発泡剤を使用し、最大ピークの孔径が平均孔径より小さく、最大ピークの孔径が18~28μmであり、平均孔径が24μm~36μmであり、最大ピークの孔径より15μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計が、最大ピークの孔径より10μm以上15μm未満大きい孔径を有する孔の断面積の合計よりも大きい。
【0092】
固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部~3重量部の量で使用してもよい。具体的には、上記固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1.3重量部~2.7重量部、または1.3重量部~2.6重量部の量で使用してもよい。
【0093】
反応速度調節剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~2重量部の量で使用してもよい。具体的には、上記反応速度調整剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、または0.2重量部1.5重量部の量で使用してもよい。上記反応速度制御剤を上記範囲内の量で使用すると、混合物(即ち、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度調節剤、およびシリコーン系界面活性剤)の反応速度(即ち、固化時間))が適切に制御され、所望の大きさの孔を有する研磨パッドを製造することができる。
【0094】
シリコーン系界面活性剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~2重量部の量で使用してもよい。具体的には、上記界面活性剤を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.2重量部~1.9重量部、0.2重量部~1.8重量部、0.2重量部~1.7重量部、0.2重量部~1.6重量部、または0.2重量部~1.5重量部の量で使用してもよい。上記シリコーン系界面活性剤の量が上記範囲内であると、気相発泡剤から誘導される孔を型内で安定して形成および保持することができる。
【実施例
【0095】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲をこれに限定するものではない。
【0096】
(実施例1:多孔質ポリウレタン研磨パッドの作製)
1-1:装置の構成
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガスおよび反応速度調整剤用の供給ラインを備えた注型機において、未反応NCO含有量が9.1重量%であるPUGL‐550D(SKC)をプレポリマータンクに充填し、ビス(4‐アミノ‐3‐クロロフェニル)メタン(Ishihara)を硬化剤タンクに充填した。不活性ガスとしての窒素(N)および反応速度制御剤としての反応促進剤(三級アミン化合物、メーカー:Air Products、製品名:A1)を準備した。更に、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、2重量部の固相発泡剤(メーカー:AkzoNobel、製品名:Expancel 461 DET 20 d40、平均粒径20μm)および1重量部のシリコーン系界面活性剤(メーカー:Evonik、製品名:B8462)を予め混合し、次いでプレポリマータンクに充填した。
【0097】
1-2:研磨パッドの作製
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、不活性ガスを、それぞれの供給ラインによって混合ヘッドに一定速度で供給しながら撹拌した。その際、硬化剤中の反応性基に対するウレタン系プレポリマー中のNCO基のモル当量比を1:1に調整し、全供給量を10kg/分の速度に維持した。また、不活性ガスを、ウレタン系プレポリマー、硬化剤、固相発泡剤、反応速度制御剤、シリコーン系界面活性剤の合計体積に対して、25%の体積で連続的に供給した。反応速度調節剤を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.1重量部の量で供給した。
【0098】
混合した原材料を金型(幅1,000mm、長さ1,000mm、高さ3mm)に注入し、固化してシートを得た。その後、多孔質ポリウレタン層の表面をグラインダーで研削し、次いでチップを用いて溝を入れ、そして多孔質ポリウレタンは2mmの平均厚さを有した。
【0099】
ホットメルトフィルム(メーカー:SKC、製品名:TF‐00)を用いて、多孔質ポリウレタンおよび基材層(平均厚さ1.1mm)を120℃で熱接着させて研磨パッドを作製した。
【0100】
比較例2:多孔質ポリウレタン研磨パッドの作製)
工程1‐2の反応速度調整剤の供給量を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
【0101】
比較例3:多孔質ポリウレタン研磨パッドの作製)
工程1‐2の反応速度調整剤の供給量を、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して、1重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。
【0102】
試験方法
実施例1および比較例2~3で作製した研磨パッドの特性を、以下の条件および方法に従って測定した。その結果を表1~4および図1a~図3bに示す。
【0103】
(1)硬度
ショアD硬度を測定した。上記研磨パッドを2cm×2cmの大きさ(厚さ2mm)に切断し、次いで温度23℃、30℃、50℃、および70℃並びに50±5%の湿度の条件下で16時間静置した。その後、硬度計(D型硬度計)を用いて研磨パッドの硬度を測定した。
【0104】
(2)比重
上記研磨パッドを4cm×8.5cm(厚さ2mm)の長方形に切断し、次いで温度23±2℃、湿度50±5%の条件下で16時間静置した。比重計を用いて研磨パッドの比重を測定した。
【0105】
(3)平均孔径および孔径に対する孔の断面積の合計の分布
上記研磨パッドを2cm×2cm(厚さ2mm)の正方形に切断し、100倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。画像解析ソフトウェアを用いて画像を取得し、全孔径を上記画像から測定し、それから平均孔径、孔径に対する孔の断面積の合計の分布、および孔面積の比を得た。
【0106】
孔径に対する孔の断面積の合計の分布を、図1a、図2a、および図3aに示した。SEM画像を図1b、図2b、および図3bに示した。
【0107】
このような場合、SEM画像から得られた孔を1μm単位に分類することにより、孔径に対する孔の断面積の合計の分布を作成した。例えば、図1aの孔径に対する孔の断面積の合計の分布図では、孔径が10~11μmより大きい孔径を有する孔を孔径11μmを有する孔に分類し、孔径が11~12μmより大きい孔径を有する孔を孔径12μmを有する孔に分類し、孔径が12~13μmより大きい孔径を有する孔を孔径13μmを有する孔に分類した。14μm、15μm、16μm、17μmなどの孔径を有する孔も、同様に分類した。
【0108】
また、平均孔径を、上記式1で定義した面積加重平均孔径として算出した。
【0109】
更に、孔面積の比を、研磨パッドの断面積100%に基づいて、断面内に観察された全孔の面積の比として算出した。
【0110】
(4)引張強さ
万能試験機(UTM)を用いて500mm/分の速度で上記研磨パッドを試験しながら、破断直前の極限強さを測定した。
【0111】
(5)伸び
引張強さと同じ測定方法を用いた。破断直前の最大変形量を測定し、初期長さに対する最大変形量の比を百分率(%)で表した。
【0112】
(6)弾性率
引張強さと同じ測定方法を用いた。初期弾性領域における歪み‐応力曲線の傾きを計算した。
【0113】
(7)表面粗さ(Ra)
上記研磨パッドの2.5mm×1.9mmの領域の表面粗さを、3Dスコープを用いて測定し、表面粗さ(Ra)をISO25178‐2:2012の粗さ規格に従って計算した。
【0114】
(8)タングステンおよび酸化ケイ素の研磨速度
CMP研磨装置に、CVD法により形成したタングステン(W)層を有する300mmのサイズを有するシリコンウェハをセットした。シリコンウェハのタングステン層を下に向けながら、シリコンウェハをプラテン上に搭載した研磨パッド上にセットした。その後、プラテンを115rpmの速度で30秒間回転させ、研磨パッド上にタングステンスラリーを190mL/分の速度で供給しながら、タングステン層を2.8psiの研磨荷重下で研磨した。研磨終了時に、シリコンウェハをキャリアから取り外し、スピンドライヤに取り付け、純水(DIW)で洗浄し、次いで15秒間風乾した。接触式シート抵抗測定装置(4点プローブ付)を用いて、研磨前後の乾燥シリコンウェハの層厚を測定した。次いで、以下の式2を用いて研磨速度を算出した。
【0115】
[式2]
研磨速度(Å/分)=研磨前後の厚さの差(Å)/研磨時間(分)
【0116】
また、同じ装置に、タングステン層を有するシリコンウェハの代わりに、TEOSプラズマCVD法によって形成された酸化ケイ素(SiOx)層を有する300mmのサイズを有するシリコンウェハを使用した。次に、シリコンウェハの酸化ケイ素層を下に向けながら、プラテン上に搭載した研磨パッド上に上記シリコンウェハをセットした。その後、プラテンを115rpmの速度で60秒間回転させ、研磨パッド上に焼成したシリカスラリーを190mL/分の速度で供給しながら、酸化ケイ素層を1.4psiの研磨荷重下で研磨した。研磨終了時に、シリコンウェハをキャリアから取り外し、スピンドライヤに取り付け、純水(DIW)で洗浄し、次いで15秒間風乾した。研磨前後の乾燥したシリコンウェハの膜厚差を、分光反射率計型厚さ測定器(メーカー:Kyence、型式:SI‐F80R)を用いて測定した。次いで、上記式2を用いて研磨速度を算出した。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
図1a並びに表1および表2に示すように、実施例1の研磨パッドの孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は59μmであり、最大ピークの孔径は平均孔径より大きかった。また、孔の断面積の合計を100%とした時に、最大ピークの孔径より小さい孔径を有する孔の断面積の合計は82.8%であり、最大ピークの孔径より5μm大きい孔径を有する孔の断面積の合計は8.4%であった。更に、表1に示すように、実施例1の研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.70の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有した。
【0122】
図2a並びに表1および表3に示すように、比較例2の研磨パッドの孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は26μmであり、最大ピークの孔径は平均孔径より大きかった。また、孔の断面積の合計を100%とした時に、最大ピークの孔径より20μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計は17%であった。更に、表1に示すように、比較例2の研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.795の酸化ケイ素(SiOx)の研磨速度を有した。
【0123】
図3a並びに表1および表4に示すように、比較例3の研磨パッドの孔径に対する孔の断面積の合計の分布図において、最大ピークの孔径は23μmであり、最大ピークの孔径は平均孔径より小さかった。また、孔の断面積の合計を100%とした時に、最大ピークの孔径より15μm以上大きい孔径を有する孔の断面積の合計は14.8%であり、最大ピークの孔径より10μm~15μm未満大きい孔径を有する孔の断面積の合計は7.3%であった。更に、表1に示すように、比較例3の研磨パッドは、タングステンの研磨速度が1である時に、0.93の酸化ケイ素(SiOx)を有した。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b