(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】リードスクリュー装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/167 20060101AFI20220324BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
H02K5/167 A
H02K7/08 B
(21)【出願番号】P 2019200947
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】王 東暉
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-67649(JP,A)
【文献】特開平6-233493(JP,A)
【文献】特開平7-7885(JP,A)
【文献】中国実用新案第207010445(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103280921(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードスクリューと、
前記リードスクリューの先端が突出し基端が内部に挿入された状態で前記リードスクリューを回転するモータと、を備え、
前記モータは、
前記リードスクリューの外周部の一部に嵌合した中空軸と、
前記中空軸の外周部に嵌合したロータコアと、
前記ロータコアに対向したステータと、
前記ステータよりも前記先端側に配置された第1ブラケットと、
前記ステータよりも前記基端側に配置され、前記第1ブラケットと共に前記ステータを保持する第2ブラケットと、
前記第2ブラケットに螺合し、螺合量に応じて前記リードスクリューの軸心方向に移動するネジ蓋と、
前記ロータコアよりも前記先端側で前記中空軸の外周に嵌合した第1軸受と、
前記ロータコアよりも前記基端側で前記中空軸の外周に嵌合した第2軸受と、
前記第1ブラケットと前記第1軸受との間に配置された弾性体と、を含み、
前記中空軸は、前記第1軸受が嵌合した第1小径部、前記第1小径部よりも前記基端側にあり前記第1小径部よりも外径が大きく前記ロータコアが嵌合した大径部、前記大径部よりも前記基端側にあり前記大径部よりも外径が小さく前記第2軸受が嵌合した第2小径部、を含み、
前記螺合量に応じて、前記ネジ蓋は、前記第2軸受、前記大径部、及び前記第1軸受を介して、前記第1ブラケットとの間で前記弾性体を圧縮する、リードスクリュー装置。
【請求項2】
前記弾性体は、ウェーブワッシャを含む、請求項1のリードスクリュー装置。
【請求項3】
前記弾性体は、複数の前記ウェーブワッシャを含む、請求項2のリードスクリュー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスクリュー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードスクリューとモータとを備えたリードスクリュー装置が知られている。例えばリードスクリューを回転可能に支持する軸受を備えた場合がある(特許文献1参照)。このような軸受は、モータの熱により熱膨張する場合がある。上記特許文献1では、ウェーブワッシャによりその熱膨張が吸収され、軸受の破損が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば2つの軸受を軸心方向に離れて配置する場合がある。この場合にも、これらの軸受の熱膨張を吸収できることが望ましい。
【0005】
そこで本発明は、2つの軸受の熱膨張を吸収できるリードスクリュー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、リードスクリューと、前記リードスクリューの先端が突出し基端が内部に挿入された状態で前記リードスクリューを回転するモータと、を備え、前記モータは、前記リードスクリューの外周部の一部に嵌合した中空軸と、前記中空軸の外周部に嵌合したロータコアと、前記ロータコアに対向したステータと、前記ステータよりも前記先端側に配置された第1ブラケットと、前記ステータよりも前記基端側に配置され、前記第1ブラケットと共に前記ステータを保持する第2ブラケットと、前記第2ブラケットに螺合し、螺合量に応じて前記リードスクリューの軸心方向に移動するネジ蓋と、前記ロータコアよりも前記先端側で前記中空軸の外周に嵌合した第1軸受と、前記ロータコアよりも前記基端側で前記中空軸の外周に嵌合した第2軸受と、前記第1ブラケットと前記第1軸受との間に配置された弾性体と、を含み、前記中空軸は、前記第1軸受が嵌合した第1小径部、前記第1小径部よりも前記基端側にあり前記第1小径部よりも外径が大きく前記ロータコアが嵌合した大径部、前記大径部よりも前記基端側にあり前記大径部よりも外径が小さく前記第2軸受が嵌合した第2小径部、を含み、前記螺合量に応じて、前記ネジ蓋は、前記第2軸受、前記大径部、及び前記第1軸受を介して、前記第1ブラケットとの間で前記弾性体を圧縮する、リードスクリュー装置によって達成できる。
【発明の効果】
【0007】
2つの軸受の熱膨張を吸収できるリードスクリュー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、リードスクリュー装置の
外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、リードスクリュー装置1の
外観図である。リードスクリュー装置1は、リードスクリュー10と、リードスクリュー10を回転するモータ20とを備える。リードスクリュー10は、先端がモータ20から突出し、基端はモータ20の内部に挿入されている。リードスクリュー10は、モータ20により回転可能に保持された軸部12、モータ20から突出して外周面に溝が形成された雄ネジ部11が形成されている。雄ネジ部11には、ナット部材200が螺合している。軸部12の外周面には、雄ネジ部11のような溝は形成されていない。リードスクリュー10は金属製であるがこれに限定されない。尚、モータ20はステッピングモータである。
【0010】
モータ20は、ブラケット30及び40、ステータ50、ロータコア60、中空軸70、調整ネジ80、ネジ蓋110等を含む。互いに略円板状に形成されたブラケット30及び40は、略円筒状のステータ50を挟むようにステータ50に固定されている。換言すれば、ブラケット30及び40はステータ50を保持している。ブラケット40はリードスクリュー10の基端側に配置され、ブラケット30はブラケット40よりもリードスクリュー10の先端側に配置されている。ネジ蓋110は、詳しくは後述するがブラケット40に螺合している。ブラケット30及び40は金属製であるがこれに限定されない。ステータ50は、金属製である。ブラケット30は第1ブラケットの一例であり、ブラケット40は第2ブラケットの一例である。
【0011】
ステータ50内には、4つのロータコア60や2つのマグネット61、スペーサ63、中空軸70が配置されている。中空軸70は、リードスクリュー10の軸部12の外周部に部分的に嵌合している。中空軸70は金属製であるがこれに限定されない。中空軸70は、小径部71及び72と大径部73とが形成されている。小径部71は、先端側に形成されている。大径部73は、小径部71よりも基端側に形成されている。小径部72は、大径部73よりも基端側に形成されている。大径部73の外径は、小径部71及び72のそれぞれの外径よりも大きい。ここで、ブラケット30及び40は、それぞれ中空軸70を回転可能に支持するための軸受91及び92を保持している。軸受91の内輪は、小径部71の外周面に嵌合している。同様に、軸受92の内輪は、小径部72の外周面に嵌合している。小径部71は第1小径部の一例であり、小径部72は第2小径部の一例である。軸受91は第1軸受の一例であり、軸受92は第2軸受の一例である。
【0012】
4つのロータコア60は、軸心方向に並ぶようにして中空軸70の大径部73の外周面に嵌合している。尚、ロータコア60の数は4つに限定されず、1つであってもよい。マグネット61は、ブラケット30に隣接したロータコア60とこれに隣接したロータコア60との間に配置され、更に、ブラケット40に隣接したロータコア60とこれに隣接したロータコア60との間にも配置されている。スペーサ63は、4つのロータコア60のうち中心側に配置された2つのロータコア60の間に配置されている。マグネット61は、薄い円板状であり、周方向に異なる極性が交互に並ぶように着磁されている。スペーサ63は、アルミ製又は合成樹脂製の薄い円板状である。また、調整ネジ80は、リードスクリュー10の軸部12の基端に形成されたネジ穴に螺合しており、螺合量に応じてリードスクリュー10と中空軸70との軸心方向での相対位置を調整する。このように、リードスクリュー10、ロータコア60、マグネット61、スペーサ63、中空軸70、及び調整ネジ80は、ブラケット30及び40、及びステータ50に対して一体的に回転する。
【0013】
ステータ50には、不図示の複数のコイルが巻回され、これらの通電状態によりステータ50が励磁される。これにより、ステータ50とマグネット61との間に作用する磁気的吸引力及び磁気的反発力によって、リードスクリュー10、4つのロータコア60、2つのマグネット61、スペーサ63、中空軸70、及び調整ネジ80が一体的に回転する。
【0014】
以上のように、ロータコア60はリードスクリュー10に直接嵌合しているのではなく、中空軸70の大径部73の外周面に嵌合している。このため、例えばリードスクリュー10とは外径の大きさが異なるリードスクリューを採用する場合には、中空軸70とは異なる、そのリードスクリューの外径の大きさに対応した内径を有した中空軸を用意すればよく、ロータコア60をそのまま流用できる。ここで、ロータコア60は、ステータ50との間に作用する磁力や磁束などの回転動力への影響を考慮して設計、製造する必要があり、コストが高い。このようなコストの高いロータコア60を流用できるため、低コストで外径の大きさが異なるリードスクリューを容易に交換できる。
【0015】
また、軸受91及び92の内輪も、リードスクリュー10に直接嵌合しているのではなく中空軸70に嵌合している。この場合も、中空軸70とは内径の大きさが異なる中空軸を用意することにより、軸受91及び92をそのまま流用しつつ外径の大きさが異なるリードスクリューを採用できる。
【0016】
図2Aは、
図1の軸受91周辺の拡大図である。軸受91とブラケット30との間には2つのウェーブワッシャ100が軸方向に重ねて配置されている。ウェーブワッシャ100は弾性体の一例である。
図2Bは、
図1の軸受92周辺の拡大図である。ネジ蓋110の外周部には雄ネジ部112が形成され、ブラケット40の雌ネジ部42に螺合している。雄ネジ部112と雌ネジ部42との螺合量に応じて、ネジ蓋110はブラケット40に対して軸心方向に相対移動する。ここで、ネジ蓋110は、軸受92に向けて突出して軸受92の外輪に当接した突部114が形成されている。突部114は、軸受92に対向するネジ蓋110の面の外周縁を周回するように形成されている。ネジ蓋110の突部114は軸受92の外輪を先端側に押圧することにより、軸受92の内輪は中空軸70の小径部72と大径部73との境界に形成された段部732を先端側に押圧する。これにより、中空軸70の大径部73と小径部71との境界に形成された段部731は、軸受91の内輪を先端側に押圧する。これにより軸受91は、軸受91とブラケット30との間に配置された2つのウェーブワッシャ100を圧縮する。このように、ネジ蓋110の雄ネジ部112とブラケット40の雌ネジ部42との螺合量を調整することにより、ブラケット30及び40やステータ50に対する中空軸70やロータコア60の軸心方向での相対位置を調整することができる。
【0017】
ここで、モータ20の発熱により軸受91及び92が熱膨張する場合がある。例えば軸受91が熱膨張して軸心方向に膨張しても、ウェーブワッシャ100がその熱膨張を吸収するように弾性変形する。また、軸受92が熱膨張して軸心方向に膨張しても、中空軸70や軸受91を介してウェーブワッシャ100がその熱膨張を吸収する。中空軸70が熱膨張する場合も同様である。このように、ウェーブワッシャ100がこれらの熱膨張を吸収するため、これらの部材の破損などが抑制されている。なお、軸受92側にもウェーブワッシャ100を配置することも考えられるがネジ蓋110があるためウェーブワッシャ100を配置する空間は無い。かといってネジ蓋110などからなる軸心方向の調整機構が無いと各部品の精度や組立精度が必要となるためコストアップにつながってしまう。
【0018】
上記実施例では、弾性体として2つのウェーブワッシャ100を一例として説明したが、これに限定されず、単一のウェーブワッシャ100であってもよいし、3つ以上のウェーブワッシャ100であってもよい。また、弾性体はウェーブワッシャ100以外のものであってもよく、例えば板バネやコイルスプリングであってもよい。
【0019】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 リードスクリュー装置
10 リードスクリュー
20 モータ
30 ブラケット(第1ブラケット)
40 ブラケット(第2ブラケット)
50 ステータ
60 ロータコア
70 中空軸
71 小径部(第1小径部)
72 小径部(第2小径部)
73 大径部
91 軸受(第1軸受)
92 軸受(第2軸受)
100 ウェーブワッシャ(弾性体)
110 ネジ蓋