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特許7045377幅広い直交分布のフィルム用メタロセンポリエチレン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】幅広い直交分布のフィルム用メタロセンポリエチレン
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/02 20060101AFI20220324BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220324BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F4/6592
C08J5/18 CES
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019530059
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017060433
(87)【国際公開番号】W WO2018106388
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】62/430,105
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17152326.9
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ホルトキャンプ マシュー ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルー チン-タイ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ アドリアナ エス
(72)【発明者】
【氏名】リ ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】フィスカス デイヴィッド エム
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0179872(US,A1)
【文献】国際公開第2015/123164(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/123169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4,10,110,210
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン由来の単位、およびポリエチレンの質量の0.5~20質量%の範囲のC3~C12α-オレフィン由来の単位を含み、
0.94g/cm3未満の密度、0.5~20g/10分の範囲のI2値、5~100g/10分の範囲のI21値、18~40の範囲のI21/I2比を有し、Mw1/Mw2値が-16~-36℃の範囲内のTw1-Tw2値で測定して少なくとも0.9であるポリエチレンを形成する方法であって;
ここでMw1は、温度および分子量の勾配で温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラム(TREFカラム)から溶出するポリエチレン画分において、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分が溶出するポリエチレン画分(TREF曲線の第一の半分量)の質量平均分子量であり、Mw2は、TREFカラムから溶出する50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分(TREF曲線の第二の半分量)の質量平均分子量であり、Mw1/Mw2値はMw1のMw2に対する比であり、Tw1はTREF曲線の第一の半分量の質量平均溶出温度であり、Tw2はTREF曲線の第二の半分量の質量平均溶出温度であり、Tw1-Tw2値はTw1とTw2の差であり;
架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび(すべてのモノマーの質量に対し)0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含み、
前記架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、次式:
【化1】
により表される触媒から選択され、
式中、Mは、第4族金属であり;各R1~R8は、C1~C20アルコキシド、または置換または非置換のC1~C20アルキル基から独立に選択され;ただし、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8のうちの少なくとも1つは、置換または非置換の直鎖C3~C10アルキル基であり
Tは、1つのジ-置換イ素である架橋基であり;
各Xが、独立に一価のアニオン性配位子であり、または2つのXが、一緒になって前記金属原子に結合してメタロサイクル環を形成し、または2つのXが、一緒になってキレート配位子、ジエン配位子またはアルキリデン配位子を形成する、方法。
【請求項2】
前記ポリエチレンのMw1/Mw2値が、0.9~5の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエチレンが150,000g/モル超のMw1値を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエチレンが150,000g/モル未満のMw2値を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエチレンが前記Mw1画分のものより大きい前記Mw2画分の短鎖分岐レベルを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエチレンが1000炭素当たり0.1から1000炭素当たり0.8の範囲の内部不飽和総数を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエチレンが1000炭素当たり0.001から1000炭素当たり0.4の範囲の末端不飽和総数を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリエチレンが40%以上のDSCによる結晶化度%を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも500g/milの落槍値、および少なくとも40%の光沢(MDまたはTD)を有するフィルムを形成する方法であって、該フィルムが請求項1から8のいずれか1項に記載の方法で形成されるポリエチレンを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月5日に出願された米国特許出願第62/430,105号および2017年1月20日に出願された欧州特許出願第17152326.9号の利益を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本開示は、フィルム用として有用なポリエチレンに関し、特にインフレーションフィルム用として望ましい、分子量および短鎖分岐分布での複雑なマルチモダリティを有するポリエチレンから作製されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
新しいポリエチレン製品技術の開発では、様々な性能特性の間に両立しない関係性が存在し、これが主な障害となってきた。そのような性能特性としては、剛性、靭性、加工性および光学特性の組み合わせが挙げられ、そのすべてが大部分の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムの用途で重要である。しかし、1つの組成物でこれらの属性のすべてを実施するのは困難であり、靭性を改善するとしばしば加工性が低下し、剛性を高めると光学特性が悪化し得る。性能特性におけるそのような両立しない関係性は、製品の分子量およびコモノマー分布を慎重に調整することによりかなり克服できると考えられる。本発明者らは、混合触媒システムおよびその製品の適切なスクリーニングにより、独自のポリエチレン設計を開発する手法を採用した。より具体的には、いわゆる幅広い直交組成(またはコモノマー)分布(BOCD)空間、すなわち、ポリエチレン鎖の低質量平均分子量(Mw)および低短鎖分岐(SCB)(高密度)集団と高Mwおよび高SCB(低密度)集団との組み合わせを目的とした2つのメタロセン触媒の使用により、望ましい性能特性の最良の組み合わせが実現することがわかった。
背景技術の参考文献には、国際公開第2014/099307号パンフレット、国際公開第2015/123164号パンフレット、米国特許第6,875,828号;米国特許第7,256,239号;米国特許第7,504,055号;米国特許第7,576,166号;米国特許第9,371,441号;米国特許出願公開第2013/167486号;欧州特許出願公開第2621969号、韓国特許第101485566(B1)号、および韓国特許第101288500(B1)号が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
エチレン由来の単位、およびポリエチレンの質量の0.5~20質量%の範囲のC3~C12α-オレフィン由来の単位を含み(またはそれらからなり、またはそれらから本質的になり);0.94または0.93g/cm3未満の密度、0.5~20g/10分の範囲のI2値を有し;5~100g/10分の範囲のI21値を有するポリエチレンであって;ポリエチレン画分は、温度および分子量の勾配で温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラムから溶出し、ここで、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分は、Tw1の温度で溶出し、および50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分は、Tw2の温度で溶出し、Tw1で溶出する分子量画分は、分子量成分Mw1であり、Tw2で溶出する画分は、分子量成分Mw2であり;ポリエチレンのMw1/Mw2値は、-16~-36℃の範囲のTw1-Tw2値で測定して少なくとも0.9である、ポリエチレンが開示される。
少なくとも500g/milの落槍値、および少なくとも40%の光沢(MDまたはTD)を有する、本明細書に記載されるポリエチレンを含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)フィルムも開示される。
【0004】
架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび(すべてのモノマーの質量に対し)0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)本明細書に記載されるポリエチレンを形成する方法であって、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、次式:
【0005】
【化1】
により表される触媒から選択され、
式中、Mは、第4族金属であり、各R1~R8は、C1~C20アルコキシド、または置換または非置換のC1~C20アルキル基から独立に選択され;ただし、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8のうちの少なくとも1つは、置換または非置換の直鎖C3~C10アルキル基であり、R1またはR2および/またはR7およびR8のうちの任意の2つは、5~7個の炭素を含む芳香族環を形成することができ;Tは、架橋基であり;各Xは、独立に、一価のアニオン性配位子であり、または2つのXは、一緒になって金属原子に結合してメタロサイクル環を形成し、または2つのXは、一緒になってキレート配位子、ジエン配位子またはアルキリデン配位子を形成する、方法も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】担持混合触媒:Rac/meso Me2Si(3-nPrCp)2HfMe2:(1-EtInd)2ZrMe2:添加剤:Irganox(商標)1010を使用する気相エチレン/ヘキセン重合からの例示的なポリエチレンの1H NMRオレフィン分析を示す図である。
図2図1と同じポリマーのTw1およびTw2の計算を示す、CFC(TREF)データの温度の関数としての質量%のグラフである。
図3図1のポリマーのMw1およびMw2の計算を示す、CFCデータの温度の関数としての質量平均分子量のグラフである。
図4】本発明および比較例のポリマーの(Tw1-Tw2)の関数として(Mw1/Mw2)値をプロットする組成分布(分岐の関数としての分子量)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載される低密度BOCD型ポリエチレンは、分子量および短鎖分岐で多峰性であるポリエチレンを提供することにより実現した。これは、低コモノマー組込み触媒が高コモノマー組込み触媒と気相プロセスで組み合わされた、組み合わせ触媒を使用して、所望のBOCDを有する多峰性ポリエチレンを製造することによって達成される。そのようなポリエチレンは、フィルム、例えばキャストまたはインフレーションフィルム、特にインフレーションフィルムの形成において非常に有用であり、インフレーションフィルムは、ポリエチレンをシートまたは円筒形/管の形態にする溶融押出し法により形成され、形成フィルムに正の空気圧をかけてシートを横方向および縦方向(TDおよびMD)に拡張し、場合によってはある程度縦方向(MD)張力を伴い、冷却の前または最中に材料を伸長する。本発明のポリエチレンは、押出コーティング用途でも有用である。
【0008】
本明細書では、「フィルム」という用語は、0.1、または1、または10、または15μm~40、または60、または100、または200、または250μmの範囲の平均厚さを有する連続で、平坦で、好ましくは可撓性のポリマー構造、または可撓性の、非可撓性の、またはそうでない場合は固体の構造に付着する同様の厚さのそのようなコーティングを指す。「フィルム」は、1層、または多層を含み(または、からなり)得り、その各々は、本発明のポリエチレンを含み(または、からなり、または、から本質的になり)得る。例えば、「フィルム」の1つまたは複数の層は、ポリエチレンの混合物ならびにLDPE、別のLLDPE、ポリプロピレンホモおよびコポリマー、またはプラストマー(高コモノマーポリエチレン)を含み得る。そのようなフィルムの望ましい使用には、表示および包装用途、望ましくは商品の周りを包むためのストレッチおよびクリングフィルムが含まれる。
ポリエチレンおよびその製造方法は、さらに以下で記載されることになり、測定可能な量へのすべての参照は、「試験方法」の記述に従い、または本明細書の「実施例」の項で説明されるように測定した。
【0009】
ポリエチレン
任意の実施形態では、エチレン由来の単位、およびポリエチレンの質量の0.5~10、または15、または20質量%の範囲のC3~C12α-オレフィン由来の単位を含み(またはそれらからなり、またはそれらから本質的になり)、0.94または0.93g/cm3未満の密度、0.5~2、または4、または6、または12、または20g/10分(ASTM D1238、2.16kg、190℃)の範囲のI2値、および5、または8~20、または30、または40、または60、または80、または100g/10分(ASTM D1238、21.6kg、190℃)の範囲のI21値を有するポリエチレンであって;ポリエチレン画分の勾配が、温度の勾配で温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラム(以下に記載されるGPCおよびCFC技法で測定)から溶出し、ここで、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分が、Tw1の温度で溶出し、50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分が、Tw2の温度で溶出し、Tw1で溶出する分子量画分は分子量成分Mw1であり、Tw2で溶出する画分は、分子量成分Mw2であり;ポリエチレンのMw1/Mw2値は、-16または-18から、-30、または-34、または-36℃の範囲のTw1-Tw2値で測定して少なくとも0.9、もしくは少なくとも1、または0.9もしくは1.5から3、もしくは4、もしくは5、もしくは8、もしくは10の範囲である、ポリエチレンが提供される。Mw値とTw値の関係は、式(2)および(3)、ならびに本明細書の記述でさらに示される。
【0010】
任意の実施形態では、ポリエチレンは、150,000、もしくは170,000g/モル超、または150,000、もしくは170,000g/モル~250,000g/モル、もしくは280,000g/モル、もしくは300,000g/モル、もしくは350,000g/モル、もしくは400,000g/モルの範囲のMw1値を有する。任意の実施形態では、先行する請求項のいずれか1項のポリエチレンは、150,000、もしくは130,000、もしくは120,000g/モル未満、または60,000、もしくは80,000g/モル~120、000、もしくは130,000g/モル、もしくは140,000g/モルの範囲であるMw2値を有する。任意の実施形態では、ポリエチレンのマルチモダリティは、定量化することができ、それによって成分の質量平均分子量(Mw)に少なくとも50,000、もしくは80,000g/モルの差、または50,000、もしくは80,000g/モル~100,000、もしくは120,000、もしくは160,000g/モルの範囲の差がある。任意の実施形態では、高および低Mw成分のどちらも、個々に、1.8、または2~3.5、または4、または4.5、または5の範囲のMWD(Mw/Mn、Mnは、数平均分子量である)を有する。
【0011】
任意の実施形態では、ポリエチレンは、Mw1画分のものより大きいMw2画分の短鎖分岐レベルを有する。これは、時には当該技術分野でBOCDを有すると呼ばれる。本明細書に記載されるように、これは、ポリエチレン画分が、温度および分子量の勾配で温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラムから溶出するようにクロス分別クロマトグラフィー(CFC)が実施される任意の実施形態で特徴付けられ、ここで、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分は、Tw1の温度で溶出し、50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分は、Tw2の温度で溶出し、Tw1で溶出する分子量画分は、分子量成分Mw1であり、Tw2で溶出する画分は、分子量成分Mw2であり;ポリエチレンのMw1/Mw2値は、少なくとも0.9、もしくは少なくとも1、または0.9、もしくは1.5~3、もしくは4、もしくは5、もしくは8、もしくは10の範囲であり、-16、または-18~-30、または-34、または-36℃の範囲のTw1-Tw2値で測定される。
【0012】
任意の実施形態では、ポリエチレンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-4D)により測定した100,000、または120,000g/モル~140,000、または160,000、または200,000g/モルの範囲の全Mw;および8,000、または10,000g/モル~30,000、または36,000g/モルの範囲のMn値;および200,000、または220,000g/モル~260,000、または300,000、または340,000g/モルの範囲のz-平均分子量(Mz)を有する。任意の実施形態では、ポリエチレンの全Mw/Mn(MWD)は、3、または4~5、または6、または8、または10、または12、または16、または20、または30の範囲であり、ここで、例示的なMWD範囲は3~10の範囲である。全Mz/Mw値は、2、または2.2、または2.4~2.8、または3、または3.5の範囲である。
【0013】
ポリエチレンは、内部(ポリマー鎖に沿って)と末端炭素-炭素二重結合または「不飽和」の両方の望ましいレベルを含めて、他の特徴も有する。任意の実施形態では、ポリエチレンは、以下に記載するNMRにより測定して、1000炭素当たり0.1、または0.2から1000炭素当たり0.5、または0,6、または0.8の範囲の内部不飽和総数を有する。任意の実施形態では、ポリエチレンは、1000炭素当たり0.001、または0.01から1000炭素当たり0.15、または0.2、または0.3、または0.4の範囲の末端不飽和、例えばビニルまたはビニリデン基の総数を有する。任意の実施形態では、不飽和の総レベルは、1000炭素当たり0.5、または0.6から、0.8、または1、または1.2の範囲である。
任意の実施形態では、ポリエチレンは、18、または20~30、または35または40、または80の範囲のI21/I2比を有する。
【0014】
上記のように、ポリエチレンは、任意の実施形態で0.94、または0.93g/cm3未満の密度を有し(ASTM 1505、下記する);および任意の実施形態では、ポリエチレンは、0.91、または0.915~0.92、または0.925、または0.93、または0.94g/cm3の範囲の密度を有し得る。また、任意の実施形態では、ポリエチレンは、40%以上、または40%から48%、もしくは50%、もしくは52%の範囲のDSCによる結晶化度百分率(%);またはGDCによる46以上の、または46%から56%もしくは60%の範囲の結晶化度を有し、DSCとGDCの両方の方法は、以下でさらに記載する。
ポリエチレンのホットタック性能が望ましい。これは、「70%累積熱流での温度」の測定からある程度示唆され、これは、ポリエチレンから作製されるフィルムのホットタック温度(℃)の概算である。任意の実施形態では、下記のようにしてDSCにより決定する70%累積熱流での温度は、117、もしくは118、もしくは119℃以上、または117、もしくは118、もしくは119℃~128、もしくは130℃の範囲である。
【0015】
任意の実施形態では、ポリエチレンは、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属(好ましくはジルコニウムまたはハフニウム)触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび(すべてのモノマーの質量に対し)0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む方法により形成され、この場合、少なくとも活性化剤および触媒の1つは担持され、最も好ましくは、3つすべてが、固体担持材料により担持されている。これは、以下でさらに記載される。
【0016】
ポリエチレンの製造方法
任意の実施形態では、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび0.1~5質量%、または0.01~1、もしくは1.5、もしくは2モル%(すべてのモノマーの質量/モルに比べて)の範囲のC3~C8、またはC10、またはC12α-オレフィン(好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、および/または1-オクテン)と、60、または50~80℃、または100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)ポリエチレンを形成する方法であって、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、次式:
【0017】
【化2】
により表される触媒から選択され、
式中、Mは、(元素周期表の)第4族金属、好ましくはジルコニウムまたはハフニウムであり、各R1~R8は、C1~C8、またはC10、またはC20アルコキシド、または置換または非置換のC1~C8、またはC10、またはC20アルキル基から独立に選択され;ただし、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R8のうちの少なくとも1つは、置換または非置換の直鎖C3~C6、またはC10アルキル基であり、R1またはR2および/またはR7およびR8のうちの任意の2つは、5~7個の炭素を含む芳香族環を形成することができ、好ましくはシクロペンタジエニルとインデニル環を形成し;
Tは、架橋基、好ましくはジ-置換炭素またはケイ素、最も好ましくはジ-置換シリル基、例えばジフェニルまたはジ-C1~C4、またはC6、またはC10アルキルであり;および
各Xは、独立に、一価のアニオン性配位子であり、または2つのXが、一緒になって金属原子に結合してメタロサイクル環を形成し、または2つのXが一緒になってキレート配位子、ジエン配位子、またはアルキリデン配位子を形成し;好ましくは各Xが、ハロゲン、最も好ましくは塩化物もしくはフッ化物、またはC1~C5、もしくはC10アルキル基、最も好ましくはメチルである、方法である。
任意の実施形態では、架橋ビス-シクロペンタジエニルハフノセン触媒は、上記の構造から選択され、この場合、「T」は、ジ-C1~C5アルキルまたはジフェニル置換シリル基であり、R1~R8の各々は、独立にC1~C5アルキルである。
【0018】
「非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒」は、任意のビス-シクロペンタジエニル第4族金属(好ましくはジルコニウムまたはハフニウム、最も好ましくはジルコニウム)化合物とすることができる。各シクロペンタジエニルは、環に沿った任意の1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の位置でC1~C6、またはC8、またはC10アルキルまたはアルコキシ基と置換することができる。上記の架橋化合物のように、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、1つ、2つ以上の上記で定義した「X」基を含む。
また任意の実施形態では、架橋または非架橋触媒中のシクロペンタジエニル基の1つまたは両方は、インデニル、フルオレニル、またはテトラヒドロインデニル基とすることができる。
【0019】
本発明の方法で使用される2つの「メタロセン」触媒は、互いに任意の割合で使用することができる。任意の実施形態では、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属(好ましくはジルコニウムまたはハフニウム)触媒は、2つの触媒の50または60~75質量%または85質量%の範囲で存在し、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、2つの触媒の50または40~25質量%または15質量%の範囲で存在する。
【0020】
任意の実施形態では、メタロセン触媒は、活性化剤も含む(またはそれから本質的になる、またはそれからなる)。別の実施形態では、活性化剤は、重合反応器に入る前に、または触媒がオレフィンモノマーと接触している重合反応器中にある際に同時に触媒と接触する。任意の実施形態では、「活性化剤」は、触媒前駆体を活性な重合触媒に変換することができる任意の化合物を含み、好ましくは、アルキルアルモキサン化合物(例えば、メチルアルモキサン)および/またはテトラ(パーフルオロ芳香族)ホウ酸塩を含むが、より好ましくは、テトラ(パーフルオロ芳香族)ホウ酸塩を含む。さらにより好ましくは、活性化剤は、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、テトラ(パーフルオロビフェニル)ホウ酸塩、テトラ(パーフルオロナフチル)ホウ酸塩、およびそれらの組み合わせから選択されるアニオンを含む。アニオン性活性化剤の場合に、活性化剤は、嵩高い有機カチオン(トリアルキルアンモニウム、トリアルキルメチル)、好ましくはジアルキルアニリニウムカチオン、またはトリフェニルメチルカチオンも含む。最も好ましくは、活性化剤は、アルモキサン化合物、好ましくは固体担体上の担持である。任意の実施形態では、担持触媒は、本明細書で開示される担体、活性化剤、および少なくとも1つの触媒、好ましくは触媒と活性化剤の両方から本質的になる(またはそれらからなる)。
【0021】
記載するように、不均一系触媒および活性化剤は、不溶性の固体担持材料に「付いて」おり、これは、触媒および/または活性化剤が、担体に化学的に結合しているか、または担体上および/もしくは担体中に物理的に吸収されていてもよいことを意味する。任意の実施形態では、担体は、第2、4、13~14族金属酸化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、担体は、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアなど、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;最も好ましくはシリカである。担体の化学的同一性に関わらず、任意の実施形態では、担体は、200、または400~800、または1000、または1200、または1400m2/gの平均表面積を有する。
【0022】
担体は、好ましくは、シリカ、例えば、非晶質シリカを含み、これは、脱プロトン化して、活性化剤および/または触媒前駆体を固定するための反応性部位を形成し得るヒドロキシルまたは他の基を表す水和表面を含み得る。他の多孔性担体材料、例えば、タルク、他の無機酸化物、ゼオライト、クレイ、有機化クレイ、または他の任意の有機もしくは無機担体材料など、またはそれらの組み合わせは、共担体としてシリカと共に任意選択で存在してもよい。適切であり得るシリカは、PD 14024(PQ Corporation)、D70-120A(Asahi Glass Co.,Ltd.またはAGC Chemicals Americas,Inc.)などの商品名で市販されている。
シリカ担体が、本明細書で言及される場合、シリカ担体(未変更の形態)は、少なくとも60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、95質量%、98質量%、または99質量%またはそれ以上のシリカを含む。シリカ担体は、最大で5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、または40質量%の別の化合物を含み得る。他の化合物は、本明細書で議論される任意の他の担体材料であってもよい。他の化合物は、チタン、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、他の化合物は、タルク、他の無機酸化物、ゼオライト、クレイ、有機化クレイ、またはそれらの組み合わせであってもよい。シリカ担体は、任意の相当量の他の任意の化合物を含まなくてもよい、すなわち、シリカ担体は、5質量%、1質量%、0.5質量%、0.2質量%、またはそれ以下未満の他の任意の化合物を含み得る。
【0023】
担体は、好ましくは乾燥している、すなわち、吸収水がない。担体の乾燥は、少なくとも130℃、または好ましくは130~850℃、または200~600℃の範囲に、1分間~100時間、またはより好ましくは12時間~72時間、または24時間~60時間、加熱または仮焼により実施されてもよい。仮焼担体材料は、本発明の担持触媒システムを製造するために、有機金属化合物と反応性のある少なくともいくつかの基、例えば、反応性ヒドロキシル(OH)基を含み得る。
【0024】
ポリエチレンは、任意の既知の方法、例えばスラリー(溶液中)方法で、例えば当該技術分野で公知のいわゆる「ループ」反応器で、または気相反応器、特に流動床気相反応器(モノマーおよび他の気体は、ポリマー床を通して再循環される)で製造することができる。最も好ましくは、ポリエチレンは、少なくとも2、または3、または4ft/秒のガス速度の気相方法で製造される。そのような方法は、当該技術分野で公知であり、ポリエチレンを作製するための方法は、普通なら特に制限されない。
任意の実施形態では、ポリエチレンは、単一の反応器方法(モノマーは、ただ1つの反応器で触媒に接触してポリエチレンを製造する)、または二重反応器方法(モノマーは2つ以上の反応器で並行してまたは連続して触媒に接触する)で製造されるが、最も好ましくは単一の反応器方法で製造される。
【0025】
フィルム
任意の実施形態では、先行する請求項のいずれか1項に記載のポリエチレンを含む(またはそれからなる、またはそれから本質的になる)フィルムであり;少なくとも500、もしくは550、もしくは600g/mil、または500、もしくは550、もしくは600~700g/mil、もしくは800g/mil、もしくは1000g/milの範囲の落槍値、および少なくとも40、もしくは45%、または40、もしくは45~60、もしくは80%の範囲の光沢(MDまたはTD)を有する。フィルムを任意の既知の方法により形成することができるが、好ましくはインフレーションフィルム方法の「吹込み」により形成される。最終フィルムは、他のポリマー、特に他のポリオレフィンとの混合種としてのポリエチレンを含み、またはポリエチレンおよび一般的な添加剤、例えば酸化防止剤、フィラーなどから本質的になる単一の層フィルムであってもよい。フィルムは、2、3、4、5またはそれ以上の層も含み得り、ここで、任意の1つまたは複数の層は、ポリエチレンを含み得る、または、から本質的になり得る。フィルムの層が、ポリエチレンを含む場合は、他のポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、およびそれらの組み合わせとの混合種であってもよい。
【0026】
典型的な方法では、ポリエチレンメルトは、ダイス、例えば環状スリットダイスを通して、通常垂直方向に押し出されて、薄肉管を形成する。好ましくは正の空気圧の形態である冷却をダイスの中心にある装置を通して導入して、チューブをバルーンのように膨らませる。冷却は、他の手段、例えば外部(フィルムに)装置によっても実施または支援することができ、空気は、窒素/酸素または他の気体または気体もしくは液体の混合物であってもよい。例えば、ダイスの上部に取り付けられて、高速エアリングは、熱いフィルムの外側に吹き、フィルムを冷却する。冷却は、通常、メルトが押し出されるダイスから少なくとも1cmの、ダイスからある程度調整可能な距離で行うことができる。次いで、フィルムのチューブは、上方にまたはダイスから離れて「縦方向」に続くことができ、ニップロールを通過するまで連続して冷却し、ここで、チューブは平坦にされて、フィルムの「レイフラット」チューブとして知られているものを作る。次いで、このレイフラットまたは縮径したチューブは、より多くのローラーにより、押出「塔」に戻され得る。より高い出力ラインでは、気泡内の空気も交換される。これは、IBC(内部バブル冷却)として知られている。
【0027】
より詳細にはインフレーションフィルム方法では、フィルムを形成するのに使用される原料は、任意の望ましい形態で、好ましくは顆粒物として、1つまたは複数の押出機に材料を供給するホッパーに添加され、ここで、材料は、剪断力および/または加熱により所望の温度で溶融混合される。次いで、溶融材料が場合によってはろ過をしてダイスに供給され、ダイスはまた、所望の温度、例えば180~220℃に加熱され、次いで、少なくとも一部は吹かれた空気の力により、ダイスから離れる方向に引き離される。フィルムがダイスから離れると形成フィルムの冷却が起こり、好ましくは、周囲の空気より少なくとも10または20℃冷たい空気を吹く高速エアリングは冷却を促進する。好ましくはフィルムを形成する領域の周囲温度は、20℃、または30℃~50℃、または60℃の範囲である。最も好ましくは、形成フィルムは、円筒形であり、エアリングは冷却管の周りに環を形成し、それは、フィルムと同一円状に空気を吹く。空気は、好ましくは、フィルムの外側に対して吹き、最も好ましくはフィルムにより形成される円周全体の周りに吹く。冷却装置からの冷却空気に曝される前に、熱いフィルムが徐々に冷却する「緩和時間」が可能になるように、ダイスの開きからの装置の距離は、変化し得る。内部に吹く空気もあり、これは、冷却を行い、かつ、フィルムをバルーンのように膨張させる。フィルムは、拡張し始め、ここで、フィルムは最終的に冷却し、結晶化して、最終ブローフィルムを形成し、ここで、最終フィルムは、様々な手段、例えばローラー、ニップなどにより最終的に単離される。
【0028】
次いで、レイフラットフィルムは、そのように保たれるか、または2つの平坦なフィルムシートを製造するためにレイフラットの端に切り目を入れて、リールに巻かれる。物品、例えばバッグは、そのようなレイフラットフィルムから作製することができる。これに関して、レイフラットとして保つと、フィルムのチューブは、フィルムの幅を密封し、各バッグを作製するために切断、またはミシン目を入れることによりバッグになる。これは、インフレーションフィルムプロセスに即して、または後の段階で実施される。
好ましくは、フィルムのダイスとブローチューブの間の膨張比は、ダイス直径の1.5~4倍となるであろう。メルト壁厚さと冷却した膜厚間のドローダウンが、半径方向と縦方向の両方で生じ、気泡内の空気量を変更することにより、また引取速度を変えることにより容易に制御される。このため、押出し法方向のみに沿って引き下ろされる従来のキャストまたは押出しフィルムに比べ、インフレーションフィルムの特性バランスが改善する。
【0029】
好ましくは、本明細書のフィルムの形成で使用されるダイスは、溶融ポリオレフィンが押し出されるダイスの開きが、環の形態であり、そこから出る溶融ポリオレフィンが、連続チューブの形態であるように設計される。フィルムが形成されるダイスファクター値は、10lb/in-時、または15~20lb/in-時、または26lb/in-時、または30lb/in-時、または40lb/in-時(0.56kg/mm-時、または0.84~1.12kg/mm-時、または1.46kg/mm-時、または1.69kg/mm-時、または2.25kg/mm-時)の範囲にあり;好ましくは押出し法の最高速度は、350lb/時(159kg/時)~500lb/時(227kg/時)の範囲にある。「ダイスファクター」では、単位以外にもう1つ違いがあることに留意されたい。英国の単位では、ダイス寸法は、ダイス円周であり、一方、メートル法単位では、ダイス寸法は、ダイス直径である。
【0030】
本発明のフィルム、最も好ましくはポリエチレンを含む、または、から本質的になる単分子層フィルムは、多くの望ましい特性を有することになる。任意の実施形態では、フィルムは、10、または15μm~40、または60、または80、または100μm、最も好ましくは15~40μmの範囲の平均厚さを有する。任意の実施形態では、フィルムは、80℃、または85℃~105℃、または110℃、または115℃の範囲の1Nの力でのシール開始温度(以下に記載の方法で測定)(℃)を有する。任意の実施形態では、フィルムは、10、もしくは12、もしくは13N超、または10、もしくは12、もしくは13N~18、もしくは20Nの範囲の最大ホットタック力(以下に記載の方法で測定)を有する。任意の実施形態では、フィルムは、7800psi~8,000、または10,000psiの範囲のMD引張り強度;および6500psi~6500、または8500psiの範囲のTD引張り強度を有する。任意の実施形態では、フィルムは、350~500%、または600%の範囲のMD破断点伸び、および450~800%の範囲のTD破断点伸びを有する。任意の実施形態では、フィルムは、100~200g、または250、または300gの範囲のMDエルメンドルフ引裂強さ、および350~650gの範囲のTDエルメンドルフ引裂強さを有する。任意の実施形態では、フィルムは、25~35kpsi、または40kpsi、または50kpsiの範囲のMD1%割線曲げ弾性率、および20~50kpsi、または60kpsi、または70kpsiの範囲のTD1%割線曲げ弾性率を有する。
【0031】
本明細書でポリエチレンまたはポリエチレンフィルムを言及する場合、任意の実施形態で、表現「から本質的になる」が使用されるとき、その表現は、ポリエチレン、またはポリエチレンから作製されるフィルムが、ポリエチレンの質量の5、または4、または3、または2、または1質量%未満の当技術分野で公知の添加剤、例えばフィラー、着色剤、酸化防止剤、抗UV添加剤、硬化剤および架橋剤、しばしば炭化水素ポリエチレンと呼ばれる脂肪族および/または環式含有オリゴマーまたはポリマー、および当該技術分野で周知の他の添加剤、および例えば、国際公開第2009/007265号パンフレットで開示される他の一般的添加剤を含むことを意味する。
【実施例
【0032】
上記の方法により製造した例示的なポリエチレンを本明細書に記載する。ポリエチレン、方法およびフィルムについて本明細書で開示される様々な記述的要素および数値範囲は、本発明を記載するために他の記述的要素および数値範囲と組み合わせることができる;さらに、所与の要素では、任意の数値の上限は、そのような組み合わせを可能にする管轄の例を含めて、本明細書に記載される任意の数値の下限と組み合わせることができる。本発明の特徴は、以下の非限定例で示される。ポリマーおよびそれから作製されるフィルムを試験するために使う試験方法も記載される。
【0033】
【表1】
【0034】
担持触媒調製
例示的なポリエチレンを生じる実施例で使用される触媒前駆体は、以下の通りであり、組み合わせの比は、質量比である:
C1=Rac/meso Me2Si(3-nPrCp)2HfMe2
C2=Rac/meso(1-EtInd)2ZrMe2
C3=Rac/meso(1-MeInd)2ZrMe2
C4=Rac/meso(Me5Cp)(1-MeInd)ZrMe2
【0035】
C1/C2(80:20):撹拌容器に1400gのトルエンを925gのメチルアルミノキサン(30質量%/トルエン)と共に添加した。この溶液に、734gのES70-875℃仮焼シリカ(PQ Corporationから購入し、使用前に875℃で仮焼した)を添加した。反応器内容物を100℃で3時間撹拌した。次いで、温度を下げ、反応を室温まで冷却した。次いで。ジチルシリル(n-プロピルシクロペンタジエニド)ハフニウムジメチル(11.50g、24.00mmol)およびビス-エチルインデニルジルコニウム(IV)ジメチル(2.45g、6.00mmol)をトルエン(250g)に溶解し、容器に加え、さらに2時間撹拌した。次いで、混合物をゆっくり撹拌し、真空下で60時間乾燥し、その後1019gの淡黄色シリカが得られた。
【0036】
C1/C3(80:20):撹拌容器に1400gのトルエンを925gのメチルアルミノキサン(30質量%/トルエン)と共に添加した。この溶液に734gのES70-875℃仮焼シリカを添加した。反応器内容物を100℃で3時間撹拌した。次いで、温度を下げ、反応を室温まで冷却した。次いで、ジメチルシリル(n-プロピルシクロペンタジエニド)ハフニウムジメチル(11.50g、24.00mmol)およびビス-メチルインデニルジルコニウム(IV)ジメチル(2.28g、6.00mmol)をトルエン(250g)に溶解し、容器に加え、さらに2時間撹拌した。次いで、混合物をゆっくり撹拌し、真空下で60時間乾燥し、その後1049gの淡黄色シリカが得られた。
【0037】
C1/C4(70:30):撹拌容器に1400gのトルエンを925gのメチルアルミノキサン(30質量%/トルエン)と共に添加した。この溶液に、734gのES70-875℃仮焼シリカを添加した。反応器内容物を100℃で3時間撹拌した。次いで、温度を下げ、反応を室温まで冷却した。次いで、ジメチルシリル(n-プロピルシクロペンタジエニド)ハフニウム(IV)ジメチル(10.06g、21.00mmol)およびテトラメチルシクロペンタジエニルメチルインデニルジルコニウムジメチル(2.31g、6.00mmol)をトルエン(250g)に溶解し、容器に加え、さらに2時間撹拌した。次いで、混合物をゆっくり撹拌し、真空下で60時間乾燥し、その後998gの淡黄色シリカが得られた。
【0038】
C1/C4(80:20):撹拌容器に1400gのトルエンを925gのメチルアルミノキサン(30質量%/トルエン)と共に添加した。この溶液に734gのES70-875℃仮焼シリカを添加した。反応器内容物を100℃で3時間撹拌した。次いで、温度を下げ、反応を室温まで冷却した。次いで、ジメチルシリル(n-プロピルシクロペンタジエニド)ハフニウム(IV)ジメチル(11.50g、24.00mmol)およびテトラメチルシクロペンタジエニルメチルインデニルジルコニウムジメチル(3.47g、9.00mmol)をトルエン(250g)に溶解し、容器に加え、さらに2時間撹拌した。次いで混合物をゆっくり撹拌し、真空下で60時間乾燥し、その後1027gの淡黄色シリカが得られた。
【0039】
ポリエチレンを製造するための混合触媒系
直径18インチの直線(床)部を有する高さ18.5フィートの気相流動床反応器で重合を実施した。サイクルおよびフィードガスを、穿孔分配平板を通して反応器本体に供給し、反応器を300psiおよび70mol%エチレンに制御した。サイクルガスを加熱することにより反応器温度を維持した。異なるコモノマー少量組込み触媒を使用すると、得られるポリマーの諸特性を変更するのに使用することができる。C3と比較してC1を使用すると、より低いMWの成分を得られ、同じ標的メルトインデックスを作製するのにH2は少なくて済む。これは、プロピレン(C3)システムで見られるより高いMIRの原因である可能性が高い。
【0040】
少量組込み触媒および大量組込み触媒(2つのメタロセン、1つは架橋、他は非架橋)の比を使用して、製品特性を調整することもできる。C4と対のC1を20mol%から30mol%に増加すると、MIRが21から24に増加した。MWD(Mw/Mn)は、3~7の範囲であった。ヘキセンおよび水素のレベルの微調整を行い、所望の製品を得たが、最も重要な点は、比を変えて、各触媒の組み合わせから様々な製品を作ったことである。
【表2】

ポリエチレンの核磁気共鳴測定値は、表2にまとめて示すようにいくつかの不飽和を明らかにする。ラベル「Vy1」、「Vy2」、「Vy5」は、図11H NMR例に示すように、ポリマー骨格内の二重結合上のプロトンに帰属するプロトン共鳴を指す。
【0041】
【表3】
【0042】
1H NMR
1H NMRデータを、少なくとも400MHzの1H周波数を有するBruker分光計(Agilent Technologies(Santa Clara、CA)から入手可能)を使用して、10mmプローブ、393Kで収集した。45℃の最大パルス幅、パルス間5秒間、およびシグナル平均512の過渡を使用してデータを記録した。スペクトルシグナルを積算し、様々な基を1000倍し、結果を炭素の総数で割ることにより、1000炭素当たりの不飽和種の数を算出した。数平均分子量(Mn)は、不飽和種の総数を割り、14,000と算出し、g/molの単位を有する。
【0043】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-4D)
多チャンネル帯域フィルタ系赤外検出器IR5、18-angle光散乱検出器および粘度計を具備する高温ゲル浸透クロマトグラフィー(Polymer Char GPC-IR)を使用することにより分子量(Mw、Mn、Mw/Mnなど)の分布およびモーメントを決定した。3つのAgilent PLgel 10μmMixed-BLSカラムを使用して、ポリマー分離を行う。300ppmの酸化防止剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を有するAldrich試薬用1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を移動相として使用する。TCB混合物を、0.1μmテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過し、GPC装置に入る前にオンラインデガッサーを用い脱ガスする。公称流速は、1.0mL/分であり、公称注入量は200μLである。移動ライン、カラム、検出器を含む全システムは、145℃に保持したオーブンに含まれている。所与の量のポリマー試料を秤量し、それに添加した80μLのフローマーカー(ヘプタン)と共に標準バイアルに密封する。オートサンプラーにバイアルを装填した後、ポリマーは、8mLの添加したTCB溶媒を有する装置に自動で溶解する。大部分のポリエチレン試料では約1時間またはポリプロピレン試料では2時間、連続して振とうしながらポリマーを160℃で溶解する。濃度計算で使用するTCB密度は、室温で1.463g/mlおよび145℃で1.284g/mlである。試料溶液濃度は、0.2~2.0mg/mlであり、より大きい分子量試料では、より低い濃度が使用される。Mnの値は±2,000g/モルであり、Mwは、±5,000g/モルであり、Mzは、±50,000g/モルである。
【0044】
クロマトグラムの各点での濃度(c)は、次式:c=βI(ここで、βは、ポリエチレンまたはポリプロピレン標準を用い決定した質量定数である)を使用して、ベースラインを差し引いたIR5ブロードバンドシグナル強度(I)から算出する。回収率は、溶出量に対する濃度クロマトグラフィーの積分領域の比、および所定の濃度と注入ループ容積の積に等しいインジュクション・マスから算出する。
【0045】
従来の分子量(IR MW)は、ユニバーサル校正関係と、700~10,000kg/モルの範囲の一連の単分散ポリスチレン(PS)標準品を用いて実施されるカラム校正を組み合わせることにより決定した。各溶出量でのMWは、次式(1):
【数1】
を用い計算し、
ここで、下付き文字「PS」を有する変数は、ポリスチレンを表し、他方、下付き文字なしのものは、テスト試料用のものである。この方法では、aPS=0.67および、KPS=0.000175他方aおよびKは、Exxon Mobilで確立され、および文献(T. Sun, P. Brant, R. R. Chance, and W. W. Graessley, 34(19) MACROMOLECULES 6812-6820, (2001))で出版されている一連の実験式から算出する。特に、a/K=0.695/0.000579(ポリエチレン)および0.705/0.0002288(PP)。別段の留意がない限り、すべての濃度は、g/cm3で表され、分子量は、g/モルで表され、固有粘度は、dL/gで表される。
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)
【0046】
国際公開第2015/123164号パンフレットで開示され、2016年6月15日に出願された米国特許出願第62/350,223号に記載される、TREFと従来のGPC(TREF/GPC)を組み合わせるクロス分別クロマトグラフィー(CFC)を、Polymer Char(Valencia、Spain)製のCFC-2装置を用い、上記の表1で記載する発生したポリエチレンに対し実施した。装置を操作し、その後のデータ処理、例えば、平滑化パラメーター、ベースライン設定、および積分限界の定義を、装置と共に提供されるCFCユーザーマニュアルに記載される方法、または当該技術分野で一般的に用いられる方法で実施した。1次元目ではTREFカラム(ステンレス鋼、外径、3/8”;長さ、15cm;充填剤、非多孔性ステンレス鋼マイクロボール)および2次元目ではGPCカラムセット(3xPLgel 10μm混合Bカラム、Polymer Labs(UK)製)を装置に具備した。溶液中のポリマー濃度に比例する吸光度シグナルを発生することができる赤外検出器(Polymer Char製のIR4)は、GPCカラムの下流側にあった。
【0047】
請求項および記載全体で使用されるように、そのような二重カラムシステムは、分子量感受性および感温性または分岐感受性の分離手段の任意の組み合わせを使用することができ、1つ、2つ、またはそれ以上の種類の分離手段、例えば溶解したポリマーが差次的に溶出されるカラムを含み得るように、一般に「温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラム」と呼ばれることになる。
【0048】
分析すべき試料を、150℃で75分間撹拌することにより約5mg/mlの濃度でオルト-ジクロロベンゼンに溶解した。次いで、2.5mgのポリマーを含有する容積0.5mlの溶液をTREFカラムの中心に負荷し、カラム温度を下げ、約120℃で30分間安定化させた。次いで、カラムをゆっくり(0.2℃/分)30℃(周囲温度での実行用)に、または-15℃(低温での実行用)に冷却して、不活性担体上にポリマーを結晶化させた。可溶性の画分をGPCカラムに注入する前に、低温を10分間保った。すべてのGPC分析を溶媒オルト-ジクロロベンゼンを使用し、1ml/分、カラム温度最大140℃、および「オーバーラップGPCインジェクション」モードで実施した。次いで、TREFカラム温度を画分設定値に段階的に上げ、ポリマーを16分間(「分析時間」)溶解し、および溶解したポリマーをGPCカラムに3分間(「溶出時間」)注入することにより、その後のより高温の画分を分析した。ポリマーの可溶性部分または「パージ(purge)」は分析せず、ポリマー試料の「不溶性の」部分、すなわち、-15℃以下で不溶性の部分のみを分析した。
【0049】
溶出ポリマーの分子質量を決定するために、ユニバーサル校正法を使用した。1.5~8,200Kg/molの範囲を有する13の狭い分子量分布ポリスチレン標準(Polymer Labs(UK)から入手)を使用して、ユニバーサル検量線を得た。Mark-Houwinkパラメーターは、Appendix I of Size Exclusion Chromatography by S. Mori and H. G. Barth (Springer, 1999)から得た。ポリスチレンでは、K=1.38x10-4dl/gおよびα=0.7;およびポリエチレンでは、K=5.05x10-4dl/gおよびα=0.693を使用した。0.5%未満の質量%回収率(装置のソフトウェアにより報告される)を有する画分は、個々の画分または合計の画分の分子量平均(Mn、Mwなど)の計算のために加工しなかった。CFC測定値の結果は、表3にまとめて示し、ここで、第一のカラムでの「密度」は、密度0.918g/cm3に対し「918」と表され、およびMIおよびHLMIは、g/10分)と表される。
【0050】
CFCによるTw1、Tw2、Mw1およびMw2の決定
CFCから得られるデータを解釈する手順は、以下で詳細に議論される。他の情報の中で、この技法は、ポリエチレンの高~低分子量画分のコモノマーのレベルを解明する助けとなる。
得られたCFCデータから、各画分は、その正規化質量百分率(質量%)値(Wi)、累積質量%、すなわち、図2および図3のグラフの質量%総和、および分子量平均(質量平均分子量、Mwiを含めて)の様々なモーメントと共にその分別温度(Ti)により列挙される。
【0051】
図2および図3は、ポリエチレンの分子量画分内の分岐を決定するために使用した計算をグラフとして示すプロットである。図2図3の両方で、x軸は、溶出温度を摂氏で表し、他方、右側のy軸は、溶出温度までに溶出したポリマー質量の積分の値を表す。この例で材料の100%が溶出した温度は、約100℃であった。ポリマーの50%が溶出した最近接の点を積算により決定し、その点は、次いでプロットの各々を第一の半分量と第二の半分量に分割するのに使用した。
【0052】
定性的には、ポリエチレンの分子量画分の勾配(個々のポリマー鎖の分子量と各鎖上の分岐レベルの両方に基づく勾配)が、少なくとも1つの温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラムから温度および分子量の勾配で溶出し、ここで、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分がTw1の温度で溶出し、50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分がTw2の温度で溶出し、Tw1で溶出する分子量画分は、分子量構成要素Mw1であり、Tw2で溶出する画分が分子量構成要素Mw2である。
定量的には、Tw1、Tw2、Mw1およびMw2の値を算出するために、分別CFCから得られるデータを2つのほぼ等しい半分量に分割した。各半分量で、各分画「i」のTwiおよびMwiを通常の質量平均の定義に従い算出した。元のデータファイルに分子量平均用に加工すべき十分な量(<0.5質量%)を有しない画分は、Tw1、Tw2、Mw1およびMw2の計算から除外した。
【0053】
方法の最初の部分を図2に示す。CFCデータから、累積質量百分率(合計質量)が50%に最も近い画分は、ポリエチレンと同定した(例えば、図2の84℃の画分)。分別CFCデータを2つの半分量、例えば、図2で第一の半分量としてTi≦84℃、および第二の半分量としてTi>84℃に分割した。元のデータファイルで報告された分子量平均を有しない画分は除外され、例えば、図2で25℃と40℃の間のTiを有する画分を除く。
図2では、左側y軸は、溶出画分の質量百分率(質量%)を表す。曲線を2つの半分量に分割するために、上記の手順を使い、これらの値を使用し、(2):
【数2】
に示す式を使用して各半分量の質量平均溶出温度を算出する。
等式(2)では、Tiは、各溶出画分の溶出温度を表し、Wiは、各溶出画分の正規化質量%(ポリマー量)を表す。図2に示す例では、これは、第一の半分量では64.9℃、および第二の半分量では91.7℃の質量平均溶出温度を提供する。
【0054】
図3では、左側軸は、各溶出画分の質量平均分子量(Mwj)を表す。これらの値を使用し、(3):
【数3】
に示す式を使用して各半分量の質量平均分子量を算出する。
等式(3)では、Mwは、各溶出画分の質量平均分子量を表し、Wiは、各溶出画分「i」の正規化質量%(ポリマー量)を表す。図3に示す例では、これは、第一の半分量では237,539g/モル、および第二の半分量では74,156g/モルの質量平均分子量を提供する。上述の技法を使用して算出した値は、実験用ポリマーおよび対照ポリマー用のMWDおよびSCBDを分類するために使用することができる。
【0055】
図3のプロットでは、x軸は、第一と第二の質量平均溶出温度の差の値(Tw1-Tw2)を表す。logスケールのy軸は、第一の質量平均分子量と第二の質量平均分子量の比(Mw1/Mw2)を表す。図2~3に表される様々な種類のポリマー組成物間の一般化は、下記のように記載することができる:
- X=0/Y=0の点:狭いMWDおよび狭いSCBDの理想ケース。図2および図3に示すように、温度軸に沿った2つの半分量への強制分割のため、X=0はほとんど不可能である。
- X=0の線:幅広いMWDおよび狭いSCBDの理想ケース。X=0では、Y値が上下に動く方向で差はない、すなわち、SCBDは狭いままで、MWDは幅広い。
- Y=0の線:MWDは変化せず、狭いが、SCBDが幅広いケース。
- X<0/Y<1の隅:ポリマー組成物が、低Mwi/低Ti(高SCB)分子と高Mwi/高Ti(低SCB)分子との組み合わせにより特徴付けられる製品;ZN-触媒を有する従来のLLDPEにより例示される。
- X<0/Y>1の隅:ポリマー組成物が、低Mwi/高Ti(低SCB)分子と高Mwi/低Ti(高SCB)分子との組み合わせにより特徴付けられる製品;BOCDにより例示される。
【0056】
図4は、市販のベンチマークと比較して本発明の例間のMWD/SCBD組み合わせにおける重要な差を示すように設計されている(Tw1-Tw2)の関数としての(Mw1/Mw2)のセミログプロットである。そのような差は、トレードオフパターンおよび/または様々な性能特性、例えば剛性、靭性および加工性のバランスを決定する上で重要な役割を果たすと考えられる。ポリエチレンは、中間の水平線より上にあり、他方、典型的な短鎖分岐分布(SCBD)を有する従来のポリエチレンは、中間線の下である。また、図4で、プロットの狭い短鎖分岐分布(NSCBD)領域が、幅広い短鎖分岐分布(BSCBD)領域と共に強調される。ポリエチレンは、0.9~10、より好ましくは1.5~5間のMw1/Mw2値により表される極値の合間にある。
【0057】
図4のプロットでは、SCBDおよびMWDが、一緒に指定されて記載される。すなわち、個別にMwまたはSCBではなく、分子量特性と特定の集団のSCBとの特定の組み合わせが強調される。したがって、NSCBD極値(一番右側の縦の線)とBSCBD極値(一番左側の縦の線、中央の線ではない)の間にプロットの好ましい領域が記載される。異なるポリエチレン製品コンセプトを分ける2つのさらなる区分がある:
図4の中央の線の上の半分量は、通常、BOCDと呼ばれるもの、すなわち、低Mw/高Tw(低SCB、高密度)集団と高Mw/低Tw(高SCB、低密度)集団との組み合わせである。
図4の中央の線の下の半分量は、通常、「従来」(チーグラー-ナッタ様)と呼ばれるもの、すなわち、高Mw/低Tw(低SCB、低密度)集団と低Mw/高Tw(高SCB、高密度)集団との組み合わせである。測定値は、表3にまとめて示し、ここで、以下は比較例である:
- Dowlex(商標)2045ポリエチレンは、Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から得られる。
- Borstar(商標)FB2230ポリエチレンは、Borealis AG(Austria)から得られる。
- Evolue(商標)3010ポリエチレンは、Mitsui Chemical Company(Japan)から得られる。
- Elite(商標)5400ポリエチレンは、Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から得られる。
- Exceed(商標)1018およびEnable(商標)2010ポリエチレンは、ExxonMobil Chemical Company(Baytown、Texas)から得られる。
- LL3001ポリエチレンは、ExxonMobil Chemical Company(Baytown、Texas)から得られる。
- VPRは、国際出願PCT/US2015/015119号に記載される、メタロセン気相方法で作製したポリエチレンである(ポリマー1-10、表1)。
【0058】
【表4】
表1からの本発明のポリマーのインフレーションフィルム評価を、Gloucesterインフレーションフィルムラインを用い、60milダイギャップおよび2.5BURで実施した。さらなるプロセスデータを表4に示す。1.0milゲージ(25μm)でのフィルム特性は表5Aで、シール特性(「ヒートシール」)は図5Bで、および比較用のフィルム特性およびシール特性は表6で以下にまとめて示す。
「ESO」は、エネルギー特定出力であり、および「速度」は、押出機電力(hp)消費により標準化したフィルム押出し法の押出量(lb/時)であり、および材料の加工性の測定値である。
【0059】
「TDA」は、総欠陥領域である。これは、フィルム試験片の欠陥の測定であり、調査した平方メートル(m2)でのフィルム領域により正規化した平方ミリメートル(mm2)での欠陥の累積領域として報告され、したがって、(mm2/m2)または「ppm」の単位を有する。以下の表4では、200μm超の寸法の欠陥のみが報告される。光制御システム(OCS)によりTDAが得られた。このシステムは、小さな押出機(ME202800)、キャストフィルムダイス、チルロールユニット(Model CR-9)、良好なフィルム張力制御を有する巻き取り装置、および発生するキャストフィルムの光学的欠陥を調べるためのオンラインカメラシステム(Model FSA-100)からなる。キャストフィルム発生用の典型的な試験条件を以下に示す。
- 押出温度設定(℃):供給口/ゾーン1/ゾーン2/ゾーン3/ゾーン4/ダイス:70/190/200/210/215/215
- 押出速度:50rpm
- チルロール温度:30℃
- チルロール速度:3.5m/分
フィルム形成システムは、幅約4.9インチおよび公称ゲージ1mil(25μm)のキャストフィルムを生成する。溶融温度は、材料により変化し、通常、約215℃である。
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】

【0064】
本発明のポリエチレンの独自の特性を示すために、追加の重合実験を実施した。同じ触媒および一般的条件を使用して表7のポリエチレンを生成した。表7では、「VPR」ポリマーは、上記の表3と同様に、BOCDの性質を有する比較用ポリエチレンであるが、分子量では単一モードである。
【0065】
密度勾配カラム(GDC)による結晶化度
ポリエチレンの結晶含量は、以下の2成分モデル(4):
【数4】
を使用して密度測定値から推定することができ、
ここで、「ρ」は、試料の勾配密度(グラム/立方センチメートル)である[Y. Haung and B. Brown, 29 J. POLY. SCI.: PART B, 129-137 (1991)]。ポリエチレンの結晶化度は、分子の結晶および非晶質領域に対し仮定される密度に依存する:純粋なポリエチレン結晶は、0.999g/cm3の勾配密度を有し、他方、完全な非晶質ポリエチレンは、0.860g/cm3の勾配密度を有する。勾配密度法により決定されるポリエチレンの密度は、その「総結晶化度」と呼ばれる。
【0066】
DSC分析
表7に記すポリエチレンも、アルミニウム試料パンに密封した3-5mgの試料を用いて示差走査熱量測定を行い分析した。試料の第二の溶融を使用したので、コンディショニングは実施しなかった。DSCデータは、試料を10℃/分の速度で180~200℃に徐々に加熱することにより記録した。冷却-加熱サイクル(どちらも10℃/分の速度で実施した)を行う前に、試料を最大温度で5分間保った。再加熱する前に、試料を40℃以下に冷却した。第一および第二サイクルの両方の熱イベントを記録した。溶融温度を測定し、第二の加熱サイクル(または第二の溶融)時に報告した。少なくとも3つの複製を用い分析を実施し、3つの平均を記録した。
【0067】
完全なポリエチレン結晶の溶融のエンタルピー(ΔHf o)4110J/モルを使用することにより、DSCサーモグラムから決定した溶融のエンタルピーを結晶化度の度合いに変換した。複製からの結晶化度の度合いを平均化した。各ポリエチレンの累積融解熱を決定し、最大累積融解熱の50%、60%、70%および80%での温度を記録した。70%累積熱流での温度のみが表7で報告される。
【0068】
70%累積熱流での温度は、ポリエチレンフィルムのホットタック温度(℃)の概算である。80%累積熱流での温度は、ポリエチレンフィルムのヒートシール開始温度(℃)の概算である。60%累積熱流での温度は、ポリエチレンの「粘着性」の概算であり、これは、気相反応器でのポリエチレンを製造する能力の測定値である。反応器は、「粘着性温度」を超える温度で、例えば、100℃または110℃または120℃超の温度で汚染する傾向がある。3つすべての温度は、指標(最初の2つの温度は、フィルム性能用、最後の温度は反応器操作性用)である。
【0069】
DSCによる結晶化度
DSC法を使用してポリエチレンの結晶化度を決定し、結果は、ポリエチレンの「コア結晶化度」と呼び、以下の(5):
【数5】
で定義し、ここで、ΔHfは、試料の融解熱であり、ΔHf oは、純粋なポリエチレン結晶の融解熱(4110J/モル)である。各ポリエチレンの融解熱(ΔHf)をその総熱流量(ΔHinJ/g)から決定した。例えば、ポリエチレンの融解熱1962.8J/モル(140.2J/g・14g/モル)は、コア結晶化度47%に相当する。
界面および非晶質領域の決定
【0070】
「界面含量」は、GDCによるポリエチレンの結晶化度とそのコア結晶化度の差であり;例えば46-39は、界面含量7%となる。非晶質含量は、コア結晶化度および界面含量を計上した後に残ったポリエチレンの量である:非晶質含量=100-コア結晶化度-界面含量;例えば、100-39-7は、非晶質含量54%となる。次いで、等式(3)を再構成し、およびその密度を決定するためポリエチレンのコア結晶化度を使用することにより、DSCによる密度を算出した。DSCによる密度は、例えば、以下の通りである:1/(1.168-0.162・(コア結晶化度の質量分率))。
【表9】
表7のデータに基づき、本発明の方法は、これらのデータで推定できるように、剛性およびシール性能のバランスの改善、すなわち、任意のホットタックでの剛性の増加、および任意のヒートシール開始温度での剛性の増加を有すべきポリエチレンを製造する。データは、本発明のポリエチレンが、任意の結晶化度(密度)でより高い操作性温度も有することになることも示す。この新しい結晶化度および操作性温度のバランスは、気相ポリエチレンを製造するための新しい操作ウィンドウを開くことができる。
【0071】
本明細書では、「から本質的になる」は、主張するポリエチレンまたはポリエチレンフィルムが、指定される成分のみを含み、およびその測定される特性を変えることになる20%超のさらなる成分を含まないことを意味し、最も好ましくは、さらなる成分が、組成物の5、または4、または3、または2質量%未満のレベルで存在することを意味する。そのようなさらなる成分は、例えば、フィラー、着色剤、酸化防止剤、抗UV添加剤、硬化剤および架橋剤、しばしば炭化水素ポリエチレンと呼ばれる脂肪族および/または環式含有オリゴマーまたはポリマー、および当該技術分野で公知の他の添加剤を含み得る。方法に関して、表現「から本質的になる」は、ポリエチレンおよび/またはそれから製造されるフィルムの主張される特性を10または20%超変えることになる他のプロセスの特徴がないことを意味する。
「参照により組み込む」の原則が適用するすべての管轄では、すべての試験方法、特許刊行物、特許および参照記事は、参照によりその全体を、または参照される関連部分を本明細書に組み込む。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. エチレン由来の単位、およびポリエチレンの質量の0.5~20質量%の範囲のC3~C12α-オレフィン由来の単位を含み;
0.94g/cm 3 未満の密度、0.5~20g/10分の範囲のI 2 値、および5~100g/10分の範囲のI 21 値を有するポリエチレンであって;
前記ポリエチレンの画分が、温度および分子量の勾配で温度勾配ゲル浸透クロマトグラフカラムから溶出し、ここで、50質量%以下の累積分子量ポリエチレン画分が温度T w1 で溶出し、および50質量%超の累積分子量ポリエチレン画分がT w2 の温度で溶出し、T w1 で溶出する前記分子量画分が分子量成分M w1 であり、およびT w2 で溶出する前記画分が分子量成分M w2 であり;
前記ポリエチレンのMw 1 /Mw 2 値が-16~-36℃の範囲内のTw 1 -Tw 2 値で測定して少なくとも0.9である、ポリエチレン。
2. 前記Mw 1 /Mw 2 値が、0.9~5の範囲にある、上記1に記載のポリエチレン。
3. 150,000g/モル超のM w1 値を有する、上記1または2に記載のポリエチレン。
4. 150,000g/モル未満のM w2 値を有する、上記1から3のいずれか1項に記載のポリエチレン。
5. 前記M w1 画分のものより大きい前記M w2 画分の短鎖分岐レベルを有する、上記1から4のいずれか1項に記載のポリエチレン。
6. 1000炭素当たり0.1から1000炭素当たり0.8の範囲の内部不飽和総数を有する、上記1から5のいずれか1項に記載のポリエチレン。
7. 1000炭素当たり0.001から1000炭素当たり0.4の範囲の末端不飽和総数を有する、上記1から6のいずれか1項に記載のポリエチレン。
8. 40%以上のDSCによる結晶化度%を有する、上記1から7のいずれか1項に記載のポリエチレン。
9. 架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび(すべてのモノマーの質量に対し)0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと、60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む方法により形成された、上記1から8のいずれか1項に記載のポリエチレン。
10. 少なくとも500g/milの落槍値、および少なくとも40%の光沢(MDまたはTD)を有する、上記1から9のいずれか1項に記載のポリエチレンを含むフィルム。
11. 10μm~100μmの範囲の平均厚さを有する、上記10に記載のフィルム。
12. 80℃~115℃の範囲の1Nの力でのシール開始温度(℃)を有する、上記10または11に記載のフィルム。
13. 10N超の最大ホットタック力を有する、上記10から12のいずれか1項に記載のフィルム。
14. 7800psi~10,000psiの範囲のMD引張り強度;および6500psi~8500psiの範囲のTD引張り強度を有する、上記10から13のいずれか1項に記載のフィルム。
15. 350~600%の範囲のMD破断点伸び、および450~800%の範囲のTD破断点伸びを有する、上記10から14のいずれか1項に記載のフィルム。
16. 100~300gの範囲のMDエルメンドルフ引裂強さ、および350~650gの範囲のTDエルメンドルフ引裂強さを有する、上記10から15のいずれか1項に記載のフィルム。
17. 25~50kpsiの範囲のMD1%割線曲げ弾性率、および20~70kpsiの範囲のTD1%割線曲げ弾性率を有する、上記10から16のいずれか1項に記載のフィルム。
18. 前記ポリエチレンが、1000炭素当たり0.1から1000炭素当たり0.8の範囲の内部不飽和総数を有する、上記10から17のいずれか1項に記載のフィルム。
19. 前記ポリエチレンが、架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよびすべてのモノマーの質量に対し0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと、60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む方法により形成された、上記10から18のいずれか1項に記載のフィルム。
20. 架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒、および活性化剤を、エチレンおよび(すべてのモノマーの質量に対し)0.1~5質量%の範囲のC3~C12α-オレフィンと60~100℃の範囲の温度で組み合わせることを含む、上記1~9のいずれか1項に記載のポリエチレンを形成する方法であって、前記架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒は、次式:
[化1]

により表される触媒から選択され、
式中、Mは、第4族金属であり;各R 1 ~R 8 は、C1~C20アルコキシド、または置換または非置換のC1~C20アルキル基から独立に選択され;ただし、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 6 、R 7 、R 8 のうちの少なくとも1つは、置換または非置換の直鎖C3~C10アルキル基であり、R 1 またはR 2 および/またはR 7 およびR 8 のうちの任意の2つは、5~7個の炭素を含む芳香族環を形成することができ;
Tは、架橋基であり;
各Xが、独立に一価のアニオン性配位子であり、または2つのXが、一緒になって前記金属原子に結合してメタロサイクル環を形成し、または2つのXが、一緒になってキレート配位子、ジエン配位子またはアルキリデン配位子を形成する、方法。
21. 前記モノマー、触媒および活性化剤が、気相反応器中で組み合わされる、上記20に記載の方法。
22. 前記架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒が、2つの触媒の質量の50~85質量%の範囲で存在し、前記非架橋ビス-シクロペンタジエニル第4族金属触媒が、2つの触媒の質量の50~15質量%の範囲で存在する、上記20または21に記載の方法。
23. 前記触媒および活性化剤が、固体担持材料上に担持されている、上記20から22のいずれか1項に記載の方法。
24. 少なくとも2ft/秒のガス速度で行われる気相方法である、上記20から23のいずれか1項に記載の方法。
25. 架橋ビス-シクロペンタジエニルハフノセン触媒が、「T」が、ジ-C1~C5アルキルまたはジフェニル置換シリル基であり、R 1 ~R 8 の各々が、独立にC1~C5アルキルである構造から選択される、上記20から24のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4