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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】光学デバイスの3次元印刷
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20220324BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220324BHJP
   B29C 64/227 20170101ALI20220324BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220324BHJP
   B29C 64/25 20170101ALI20220324BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220324BHJP
   B29C 64/364 20170101ALI20220324BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220324BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220324BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20220324BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/209
B29C64/227
B29C64/245
B29C64/25
B29C64/264
B29C64/364
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019547775
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017079711
(87)【国際公開番号】W WO2018095837
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】62/425,992
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519183689
【氏名又は名称】アセニアム・オプティカル・サイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Atheneum Optical Sciences, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス・アンソニー・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ガネーシュ・ナラヤナン・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ルシアン・ギヨン
(72)【発明者】
【氏名】トゥーア・キント-ラーセン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-083326(JP,A)
【文献】特表2000-501853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/112,64/20,64/209,
64/227,64/245,64/25,64/264,
64/364
B33Y 10/00,30/00,40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の3次元堆積印刷のための方法であって、
制御された雰囲気下で、重合性混合物からなる複数の液滴が基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物からなる液滴の連続層を形成し、
制御された雰囲気は、0.01から1.0体積%未満の酸素濃度を有し、重合性混合物の酸素平衡濃度は0.05から8.0体積%であ
制御された雰囲気中の酸素濃度は、重合性混合物中の酸素平衡濃度よりも低い、方法。
【請求項2】
重合性混合物の前記複数の液滴は、前記基板の前記表面上に堆積され、これにより重合性混合物の液滴の連続層を形成し、前記配置された連続層は、必要に応じて各層の堆積後に化学線に露出してもよく、そして、光学素子を形成するために、液滴の連続層の最後の堆積の後に化学線に露出される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
連続層が、化学線に露出されて、部分的な重合またはゲル化を達成し、後続の液滴および層が混合して、歪み無し構造を形成することを可能にする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合性混合物は、例えば、熱開始剤および光開始剤から選択される1つ以上の重合開始剤を含有し、好ましくは、重合性混合物は、異なる波長の化学線に対する応答性を有する複数の光開始剤を含有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1重合開始剤が連続層を部分的に硬化する際に使用され、第2重合開始剤が硬化プロセスを完了するために使用される、請求項1またはに記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記表面は、連続層のうちの第1層の堆積の前に、界面活性剤を用いて、またはプラズマ処理によって前処理される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
光学素子は、続いて基板から解放される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマーを含む、メタクリレートまたはアクリレートモノマーを含み、
好ましくは、方法は、光学素子を水中で膨潤させる後続ステップを含み、これにより光学素子は、10~80重量%、好ましくは35~70重量%の含水量を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
重合性混合物は、反応性シリコーンモノマーまたはオリゴマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
方法は、光学素子を水中で膨潤させる後続ステップを含み、これにより光学素子は、5~70重量%、好ましくは10~50重量%の含水量を得る、請求項に記載の方法。
【請求項11】
重合後の重合性混合物は、水中で非膨潤性であるポリマーを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
液滴の1つ以上の層の重合性混合物は、顔料を含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
重合性混合物は、重合性混合物の重量を基準として、0.5~5.0重量%の量の1つ以上の架橋剤、0~60.0重量%の量の1つ以上の非反応性希釈剤、および100.0ppm未満、好ましくは50.0ppm未満の量の1つ以上の重合禁止剤を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
光学素子は、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、オーバーレイレンズ、眼内レンズ、角膜インプラント、例えば、角膜インレーインプラント、および眼科/眼インサートから選択される眼科デバイスであり、好ましくは、眼科デバイスは、円錐角膜および非点収差角膜における屈折誤差を補正するコンタクトレンズである、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
眼科デバイスは、非対称デザインを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
光学素子は、内部に埋め込まれた1つ以上の物体を有し、好ましくは、1つまたは複数の物体は、インサート、エレクトロニクス、および機能性添加剤放出リザーバまたはデポから選択される固体物体を含み、より好ましくは、光学素子は、非点収差を隠すための剛性埋め込みインサートを有するソフトコンタクトレンズである、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
光学素子は、生物学的に活性な物質を含む1つ以上の機能的に活性な物質を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
光学素子は、第1重合性混合物の液滴を分注する第1印刷ヘッドと、第1重合性混合物、前記第1重合性混合物とは組成的に異なる第2重合性混合物、および非重合性混合物から選択される組成物の液滴をそれぞれ分注する1つ以上の追加の印刷ヘッドとを備える複数の印刷ヘッドにより形成される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び/又は第2重合性混合物は、機能的に活性な物質を含み、及び/又は、前記非重合性混合物は、機能的に活性な物質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基板は、1つ以上の表面が基板として機能する眼科デバイスなどの光学デバイスである、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
UV光源は、印刷ヘッドから隔離されている、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元印刷技術によって調製できるポリマー光学素子、特に眼科デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素阻害は、フリーラジカル重合によって硬化するコーティング塗料にとって問題である(文献: Arcenaux, Jo Ann, Mitigation of oxygen inhibition in UV LED, UVA and low intensity UV cure, Allnex, U.S.A. (2014); Kiyoi, Ed., The State of UV-LED curing: An Investigation of Chemistry and Applications, Radtech Report, Issue 2 (2013), pp. 33-34; Odian, G., Principles of Polymerization, McGraw Hill (1981), p. 249; Decker, C., J. Coating Technology (1987), NO. 751, pp. 59-65; Calo, E. and Khutoryanskiy, V.V., European Polymer J., 65 (2015), pp. 254-255)。
【0003】
酸素は、空気中に約21%存在するため、フリーラジカル重合の酸素阻害は、ポリマー材料のエネルギー硬化中に対処するための極めて関連性のある問題である。酸素阻害を低減または克服するために使用される方法がいくつか存在する。米国特許出願公開第2003/0164571号は、インモールドコーティングプロセスを開示する。米国特許出願公開第2010/0259589A1号明細書は、大気中酸素の完全な排気を必要としない不活性UVインクジェット印刷方法を開示する。
【0004】
コンタクトレンズ製造(Calo and Khutoryanskiy (2015))は、旋盤切削からスピンキャスト成形(molding)、キャスト成形へと過去数十年にわたって発展しており、これは費用対効果が最も良いプロセスとして存続する。コンタクトレンズのキャスト成形は、2つのモールドセクションによって形成されたモールド空洞内に重合性モノマーの硬化性混合物を堆積させること、モノマー混合物を硬化させること、モールドアセンブリを分解してレンズを取り外すことを含む。一方のモールドセクションは、前側レンズ表面を形成し、他方のモールドセクションは、後側レンズ表面を形成する。キャスト成形のコストは、光学品質の金属インサートの製造および、これらのプロセスの各々において関連する廃棄を伴う後続のプラスチックモールドの射出成形に起因して依然として高い。このことは、膨大な数のSKU(最小在庫管理単位)の在庫を管理することと関連し、レンズ成形プロセスによって製作されたコンタクトレンズのファミリーが、光学パワー及び/又はベースカーブ(base curve)、直径などの選択において限定された数の変動を有するに過ぎない。
【0005】
材料およびキャスト成形プロセスの両方を網羅する幾つかの特許が存在する。国際公開第87/04390号、米国特許第5271875号、米国特許第5843346号、米国特許第6861123号および米国特許第5760100号。米国特許第7860594号明細書は、ステレオリソグラフィを用いて眼科デバイスを製造する方法を開示する。CLIP(continuous liquid interface production)「連続液体界面製造」プロセスは、国際公開第2014126837号に開示される。
【0006】
例えば、レンズの自由成形などの他の方法が開示されている。米国特許第9180634号および米国特許第9266294号は、反応性混合物から自由成形された一方の表面の少なくとも一部を備えた眼科レンズ前駆体の一方または両方を生成する方法を開示する。
【0007】
国際公開第2016/014563A1号(Chapoy)は、既存のレンズに特別な特徴を加えるために、3次元プリンタを利用したトーリックレンズおよび他の特殊レンズのためのプロセスを開示する。欧州特許第2392473B1号および米国特許第8840235B2号(共にLuxexcel Holding BV.)は、透明印刷インクの液滴を噴出し、堆積された液滴をUV放射線によって硬化させることによって、基材上に光学構造を印刷する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最新技術の観点で、廃棄物を最小化し、コストを削減することによって、光学素子、例えば、ヒドロゲル系の眼科デバイスを製造し、そして特別注文の特殊な光学素子、例えば、眼鏡レンズ、コンタクトレンズおよび眼内レンズなどを製作する柔軟性を備えるニーズが明らかに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のように、酸素は、モノマー材料およびプレポリマーのフリーラジカル重合における重要な変数である。これは、眼科デバイスに特に関連し、例えば、重合後に水和され、そしてポリマー網目構造での変動から形状が極めて容易に歪むことがある比較的低レベルの架橋剤を含有するヒドロゲルのものに関連する。重合の際に、酸素濃度が、光学デバイスの一方の側面(側面1)において他の側面と比べて高くなると、側面1は、他の側面よりも相対的に大きく膨張することがあり、そして光学特性の歪みが生ずることがあることが発見された。
【0010】
3D印刷産業において、比較的「高い」濃度の開始剤、高強度のUV光エネルギー、そして脱酸素剤、ワックスまたはコーティングが一般に使用され、酸素の影響を管理している。しかしながら、今日まで、これらのいずれもが画像品質光学素子を製造可能であることが示されていない。
【0011】
本発明は、酸素の存在および濃度を低レベルに制御し、同時に調整された濃度に制御することによって、眼科デバイスなどの光学素子を作成する3D印刷の使用において新規な手法を採用する。本発明者は、光学素子の所望の寸法特性および生ずる光学特性を得るために、重合性混合物中の酸素のレベルを雰囲気のレベルに対して制御することが必要であることを見出した。この原理はまた、堆積印刷が行われる基板を含むように拡張できる。よって、酸素レベルは、重合プロセスの際に予め定めたレベルに維持されるべきである。
【0012】
そのため第1態様において、本発明は、光学素子の3次元堆積印刷のための方法に関するものであり、制御された雰囲気下で、重合性混合物からなる複数の液滴が基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物からなる液滴の連続層を形成し、制御された雰囲気は、最大で5.0体積%の酸素濃度を有し、重合性混合物の酸素平衡濃度は最大で8.0体積%である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】3D印刷システム110の概略図であり、重合性混合物の液滴の堆積のための1つ以上の3D印刷ヘッド101,101Aと、同一または異なる発光波長の光の1つ以上のUV LEDを含んでもよい1つ以上のLED UV光源105,106と、基板104(この場合は湾曲した表面)と、基板上に構築された例示のレンズ103とを示しており、全てが、制御された雰囲気109を筺体114内に提供するための1つ以上のポート107,108を備えた筺体114内に収容される。
図2】代替の3D印刷システム110の概略図である。図1と同じ参照番号が使用される(3D印刷ヘッド101,101A、LED UV光源105,106、基板104、1つ以上のポート107,108を備えた筺体114)。さらに、図2の実施形態は、酸素センサ102と、筺体114の内外でコンポーネントを移動させるためのゲート111と、UV遮蔽スクリーン112と、基板104と前記1つ以上の3D印刷ヘッド101,101A及び/又は前記1つ以上のLED UV光源105,106との間の相対移動を提供するように構成された駆動構造113(例えば、ベルトドライブまたはリニアドライブ)とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記の議論において、例示および説明の目的のために眼科レンズを使用しているが、この原理は、一般に正確な寸法形状および光学特性、同様の均一なポリマー特性を要求する任意の光学素子においてより広く使用できる。
【0015】
ポリマー合成の観点から、モノマーまたは「インク」を使用する液滴3次元堆積印刷は、旋盤加工、キャスト成形、ステレオリソグラフィーおよびバット(vat)3D印刷、および樹脂3D印刷のような従来の方法とは、物品を構築するために使用される基板および後続する層に重合性混合物を供給する方法が実質的に異なる点で、極めて相違している。重合性混合物は、比較的高い表面対体積比を備えた気体雰囲気を通じて、典型的には1~15ピコリットル量の極めて小さい液滴の形態で高速で供給される。25ミリグラムのレンズを形成するのに必要とされる液滴の数(150万個から900万個の間と推定される)を考えた場合、いくつかの要因を考慮する必要がある。これらは、これに限定されないが、周囲プロセス条件への露出、基板に衝突した場合に生ずる材料層の厚さ、基板と衝突する液滴との相互作用/濡れ、後続する層間の露出時間、および硬化/重合を含む。こうして受容基板表面および以前に付着した液滴、特に周囲プロセス雰囲気(ここでは制御された雰囲気)への酸素の露出およびそこからの酸素の取り込みについて著しい機会がある。もしこうした要因が考慮され制御されなければ、光学特性を含む、表面特性およびバルク特性の両方が悪影響を受けるようになる。
【0016】
ソフトコンタクトレンズおよびソフト眼内レンズに使用される、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)または他のモノマーなどのヒドロゲル材料を用いてレンズを製造した場合、酸素の影響を実感することがより容易である。これらの材料では、水の吸収後の最終的な硬化レンズにおいて、変動はより明白である。より多くの酸素が存在する表面または表皮領域は、バルクよりも多くのポリマー網目構造欠陥を含み、これらの領域により多くの水を吸収させることが可能になる。これらの表皮領域に生じる歪みは、通常、機械特性全体(モジュラス(modulus: 軟らかさ)、引張強度、伸長)、光学特性(光透過率、屈折率など)、形状、そして部品間の再現性に悪影響を及ぼす。
【0017】
重合性混合物(PM)の酸素含有量を、制御された雰囲気の酸素含有量に対して調整する本発明により(ここで説明するように)、光学素子の特性が著しく影響されない程度に酸素の影響を制御できる。眼科デバイス、特にコンタクトレンズおよび眼内レンズの場合、光学的処方を作成する能力は、湾曲した表面の正確な形状に大きく依存する。これらおよび他の非眼科用光学素子の上にこれらの必要な表面を製造することは、本発明で請求する原理を使用することによって達成可能であり、こうして単純さ、効率、設計の自由度の増大、時間短縮要求、そしてコストなど、3D堆積印刷を使用する利点を可能にする。
【0018】
重合プロセスにおける酸素の影響および生じる特性への悪影響が排除または実質的に低減されるため、本発明の他の実施形態は、ポリマーマトリクスの層状形成の際に堆積後の重合混合物の移動を制御することである。これは、湾曲し、任意のまたは不規則な表面または形状の作成において重要になることがあり、そして正確な湾曲表面を必要とする複雑な光学デバイスを作成する場合により重要になる。従って、光学製品用途において、酸素阻害を克服しつつ、重合混合物の移動を制御することの複合効果は、光学アーチファクト(artifact)および歪みを低減し、さらに排除するようになる。
【0019】
よって、本発明は、光学素子、例えば、眼科デバイスの3次元堆積印刷方法を提供するものであり、その方法では、重合性混合物からなる複数の液滴が、制御された雰囲気下で基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物の液滴の連続層を形成する。
【0020】
本発明の興味深い特徴が、重合性混合物中の酸素濃度は、制御された雰囲気の酸素濃度に関連して調整されること(そして特定の実施形態において、環境の他の部分、特に液滴が堆積される基板での酸素濃度もまた、制御された雰囲気の酸素濃度に関連して調整されること)であり、その結果、一方の供給源から他方の供給源への酸素の移動が回避され、または少なくとも僅かな程度に抑制される。
【0021】
(定義)
ここで使用する場合、表現「重合性混合物の酸素平衡濃度X」は、混合物が、X%の酸素濃度を有する雰囲気で1.0気圧(1013ミリバール)で仮想的に平衡化できる場合に得られる重合性混合物中の酸素濃度を意味することを意図する。
【0022】
ここで使用する場合、用語「光学素子」は、これに限定されないが、眼科デバイス、産業用途で使用されるレンズ、内視鏡用レンズ、検査装置、光ファイバ装置、カメラレンズ、望遠レンズなどを含むことを意図する。現時点で特に興味深い実施形態が眼科デバイスである。
【0023】
いくつかの実施形態において、光学素子は、内部に埋め込まれた1つ以上の物体、例えば、インサート、エレクトロニクス、および機能性添加剤放出リザーバまたはデポ(depot)(貯蔵部)から選択される固体物体を有する。
【0024】
他の実施形態において、光学素子は、生物学的に活性な物質を含む1つ以上の機能的に活性な物質を含む。
【0025】
ここで使用する場合、「眼科デバイス」は、角膜、眼瞼および眼腺(ocular gland)を含む、目の前方にあるか、または目もしくは目のいずれかの部分の中または上に位置する任意のデバイスである。これらのデバイスは、光学補正、美容増強(例えば、虹彩色用)、視覚増強、治療効果(例えば、包帯レンズとして)を提供でき、あるいは、治療薬、例えば、潤滑剤、湿潤剤、活性医薬成分(API)および生物剤など(抗炎症性、抗アレルギー性、抗細菌性、抗感染性、抗高血圧性など)を供給するデバイスを提供でき、あるいは、眼の健康のための栄養補助食品、ビタミンおよび抗酸化剤、あるいは前述のいずれかの組合せでの配給でもよい。眼科デバイスの実例は、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ(例えば、ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズ)、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、角膜インプラント、例えば、角膜インレーインプラント、および眼科/眼インサートから選択されるものを含む。
【0026】
特に興味深い眼科デバイスは、レンズ、特にコンタクトレンズおよび眼内レンズから選択されるものである。
【0027】
一実施形態において、眼科デバイスは、コンタクトレンズ、特に「ソフト」コンタクトレンズ、即ちヒドロゲル材料のコンタクトレンズである。
【0028】
用語「ヒドロゲル」とは、水を、その少なくとも10重量%の含水量まで吸収した(「膨潤した」)架橋ポリマーを参照する。好ましくは、こうしたヒドロゲル材料は、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも25重量%、最大70~90重量%の含水量を有する。水を吸収する能力は、「実験の詳細-ヒドロゲルデバイスの含水量の測定方法」のセクションで説明されるように決定できる。
【0029】
ここで使用する場合、用語「重合性混合物」(時には「PM」と称する)とは、成分の液体混合物(反応性および時には非反応性の成分)を参照し、これは、外部エネルギー(例えば、化学線(actinic radiation)280~450nm(UV光または青色光など)または熱))に露出した場合、重合を受けてポリマーまたはポリマー網目構造を形成できる、典型的には、混合物は、反応性成分、例えば、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤および開始剤などを含む。さらに、重合性混合物はさらに、添加剤のような他の成分、例えば、湿潤剤、離型剤、染料、UV吸収剤、フォトクロミック化合物などの光吸収化合物などを含んでもよく、これらのいずれもが反応性でも非反応性でもよいが、得られる眼科デバイス内に保持可能であり、そして、医薬品、ビタミン、抗酸化剤および栄養補助化合物を含んでもよい。製作される眼科デバイスおよびその意図される用途に基づいて、広範囲の添加剤が添加できることは理解されよう。
【0030】
混合物が「重合性」であるという事実は、典型的には、その1つ以上の成分(モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤など)が、少なくとも1つの重合性官能基、例えば、エチレン性不飽和基、その場合は(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、およびスチリルの官能基など、を含むことを意味する。
【0031】
いくつかの実施形態において、重合性混合物は、少なくとも1つの親水性成分を含有する。一実施形態において、親水性成分は、親水性モノマー、例えば、ヒドロゲルを調製するのに有用であることが知られているもの、から選択できる。
【0032】
ここで使用する場合、「親水性」とは、少なくとも5グラムの化合物が、弱酸性(pH5~7)または塩基性の条件(pH7~9)の下で25℃で100mLの脱イオン水に溶解可能であること、いくつかの実施形態において、10グラムの化合物が、弱酸性または塩基性の条件下で25℃で100mLの脱イオン水に溶解可能であることを意味する。これに対して「疎水性」とは、5グラムの化合物が、弱酸性または塩基性の条件下で25℃で100mLの脱イオン水に完全には溶解しないことを意味する。化合物の溶解度は、目視観察によって確認でき、目に見える沈殿剤または濁度は、化合物が疎水性であることを示す。溶解度は、約8時間の混合または撹拌後に決定される。
【0033】
1つのクラスの適切な親水性モノマーは、アクリル-またはビニル-含有モノマーを含む。こうした親水性モノマーはそれ自体、架橋剤として使用してもよいが、2つ以上の重合性官能基を有する親水性モノマーが使用される場合、これらの濃度は、所望のモジュラスを有するコンタクトレンズを提供するために、上述のように制限すべきである。
【0034】
用語「ビニル型」または「ビニル含有」モノマーとは、ビニル基(-CH=CH)を含有し、重合可能であるモノマーを参照する。親水性ビニル含有モノマーの例は、これに限定されないが、モノマー、例えば、N-ビニルアミド、N-ビニルラクタム(例えば、N-ビニルピロリドン(「NVP」))、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、ビニル-N-エチルアセトアミド、およびN-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミドなどを含む。代替のビニル含有モノマーは、これに限定されないが、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、および5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドンなどを含む。
【0035】
「アクリル型」または「アクリル含有」モノマーは、アクリル基(CH=CRCOX)を含有するモノマーであり、ここでRはHまたはCHであり、XはOまたはNであり、これらもまた容易に重合することが知られており、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、およびこれらの混合物などである。
【0036】
本発明で採用可能な他の親水性モノマーは、これに限定されないが、重合性二重結合を含む官能基で置換された末端ヒドロキシル基の1つ以上を有するポリオキシエチレンポリオールを含む。その例は、ポリエチレングリコール、エトキシ化C1-20アルキルグルコシド、および1以上のモル当量の末端キャッピング基と反応したエトキシ化ビスフェノールA、例えば、イソシアナートエチルメタクリレート(「IEM」)、メタクリル酸無水物、メタクリロイルクロリド、ビニルベンゾイルクロリドなどを用いたものを含み、カルバメート基またはエステル基などの連結部分を介してポリエチレンポリオールに結合した1つ以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを製造する。他の適切な親水性モノマーは当業者に明らかであろう。
【0037】
一実施形態において、親水性成分は、少なくとも1つの親水性モノマー、例えば、DMA、HEMA、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、NVP、N-ビニル-N-メチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、およびこれらの組合せなどを含む。他の実施形態において、親水性モノマーは、DMA、HEMA、NVPおよびN-ビニル-N-メチルアクリルアミドおよびこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態において、親水性モノマーは、DMA及び/又はHEMAを含む。
【0038】
親水性成分(例えば、親水性モノマー)は、所望する特性の特定のバランスに応じて、広範囲の量で存在してもよい。一実施形態において、親水性成分の量は、全反応性成分を基準にして最大60重量%であり、例えば、5~40重量%などである。
【0039】
疎水性シリコーン含有成分(またはシリコーン成分)は、モノマー、マクロマーまたはプレポリマー中に少なくとも1つの[-Si-O-Si]基を含有するものである。一実施形態において、Siおよび結合したOは、シリコーン含有成分の全分子量の20重量%より大きい量、例えば、30重量%より大きい量で、シリコーン含有成分中に存在する。有用なシリコーン含有成分は、重合性官能基、例えば、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、およびスチリル官能基などを含む。
【0040】
また、架橋モノマーが単独でまたは組合せで採用でき、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(ここでポリエチレングリコールは、例えば、400までの分子量を有する)、および他のポリアクリレート、およびポリメタクリレートエステルを含む。架橋性モノマーは、通常の量、例えば、重合性混合物100重量部当り0.1~5重量部、好ましくは0.2~3重量部で使用される。
【0041】
使用可能な他のモノマーは、メタクリル酸を含み、これは、ヒドロゲルが平衡状態で吸収するようになる水の量に影響を及ぼすために使用される。メタクリル酸は、通常、HEMAなどの親水性モノマー100部当たり0.2~8重量部の量で採用される。重合混合物中に存在できる他のモノマーは、メトキシエチルメタクリレート、アクリル酸などを含む。
【0042】
上述したように、本発明の特徴の1つは、HEMA系コポリマーを重合する従来技術の方法で遭遇する程度まで非相溶性の問題に遭遇することなく、疎水性モノマーが重合性混合物中に含有できることである。
【0043】
実施形態において、重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマー、またはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを含む。
【0044】
実施形態において、重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルアクリレートモノマーではない、メタクリレートモノマーまたはアクリレートモノマーを含む。
【0045】
実施形態において、重合性混合物は、反応性シリコーンモノマーまたはオリゴマーを含む。
【0046】
更なる実施形態において、重合後の重合性混合物は、水中で非膨潤性、即ち、2重量%を超える含水量を得ることができないポリマーを提供する。
【0047】
1以上の重合開始剤が、反応混合物中に含まれていてもよい。重合開始剤の例は、これに限定されないが、適度に上昇した温度でフリーラジカルを発生する、例えば、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、イソプロピルペルカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの化合物、そして光開始剤システム、例えば、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、および第三級アミン+ジケトン、それらの混合物などを含む。光開始剤の例示的な例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(イルガキュア) 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、および、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、およびカンファーキノンと4-(N、N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルとの組合せである。市販の紫外線および可視光開始剤システムは、これに限定されないが、Irgacure 819(登録商標)およびIrgacure 1700(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals社から)、およびLucirin TPO開始剤(BASF社から入手可)を含む。市販のUV光開始剤は、Irgacure 651、Darocur 1173およびDarocur 2959(Ciba Specialty Chemicals社)を含む。使用できるこれらおよび他の光開始剤は、文献(Volume III, Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization, 2nd Edition by J. V. Crivello & K. Dietliker; edited by G. Bradley; John Wiley and Sons; New York; 1998)に開示される。
【0048】
重合開始剤は、反応混合物の重合を開始させるのに有効な量、例えば、0.1~2重量%で反応混合物中で使用される。反応混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて、熱、可視光、紫外光、または他の手段の適切な選択を用いて開始できる。代替として、開始は、例えば、電子ビーム(e-beam)を用いて光開始剤なしで行うことができる。しかしながら、光開始剤を使用した場合、好ましい開始剤は、ビスアシルホスフィンオキシド、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))、または1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとDMBAPOの組合せなどであり、そして他の実施形態において、重合開始の方法は、可視光活性化によるものである。
【0049】
一実施形態において、反応混合物は、1つ以上の内部湿潤剤を含む。内部湿潤剤は、これに限定されないが、高分子量の親水性ポリマーを含んでもよい。内部湿潤剤の例は、これに限定されないが、ポリ(N-ビニルピロリドン)およびポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)などのポリアミドを含む。
【0050】
内部湿潤剤は、所望する特定のパラメータに応じて、広範囲の量で存在してもよい。一実施形態において、湿潤剤の量は、全反応性成分を基準として最大50重量%、例えば、5~40重量%、例えば、6~30重量%である。
【0051】
さらに、重合性混合物は、これに限定されないが、キレート剤、重合禁止剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、ガラス転移調整剤、相溶化成分、紫外線吸収化合物、眼科用医薬などの薬剤、眼科用粘滑剤(demulcent)、賦形剤、抗菌化合物、共重合性および非重合性染料、離型剤、反応性着色剤、顔料(pigment)、およびキレート剤、およびこれらの組合せから選択される1つ以上の補助成分を含有してもよい。一実施形態において、こうした補助成分の合計は、最大20重量%でもよい。
【0052】
重合性混合物は、典型的には、その成分を単に混合することによって調製される。
【0053】
一実施形態において、反応性成分(例えば、親水性モノマー、湿潤剤及び/又は他の成分)は、不活性希釈剤と共にまたは不活性希釈剤なしで一緒に混合され、反応性混合物を形成する。これらの希釈剤は、水和時に眼科デバイスの膨張を制御し、成分の溶解性を支援し、そしてガラス転移温度を調節するという追加の利点を有する。
【0054】
適切な希釈剤のクラスは、限定なしで、3~20個の炭素を有するアルコール、1級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、エーテル、ポリエーテル、3~10個の炭素原子を有するケトン、および8~20個の炭素原子を有するカルボン酸を含む。炭素の数が増加すると、極性部分の数も増加して、所望のレベルの水混和性を提供できる。いくつかの実施形態において、一級および三級アルコールが好ましい。好ましいクラスは、4~20個の炭素を有するアルコールと、10~20個の炭素原子を有するカルボン酸とを含む。
【0055】
一実施形態において、希釈剤は、1,2-オクタンジオール、t-アミルアルコール、3-メチル-3-ペンタノール、デカン酸、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、トリプロピレンメチルエーテル(TPME)、ブトキシ酢酸エチル、およびこれらの混合物などから選択される。
【0056】
一実施形態において、希釈剤は、ある程度の水中溶解度を有するものから選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも約3パーセントの希釈剤が水と混和可能である。水溶性希釈剤の例は、これに限定されないが、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert(ターシャリー)-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、エタノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、1-エトキシ-2-プロパノール、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、EH-5(Ethox Chemicals社から市販)、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-2,3,6,7-テトラメチルオクタン、9-(1-メチルエチル)-2,5,8,10,13,16-ヘキサオキサヘプタデカン、3,5,7,9,11,13-ヘキサメトキシ-1-テトラデカノール、これらの混合物などを含む。アルコールのエステル、例えば、アルコールのホウ酸エステルなどは、希釈剤の他の実施形態である。
【0057】
希釈剤の量は、典型的には、完全な重合性混合物を基準として、最大60重量%、例えば、10~60重量%、例えば、20~50重量%である。
【0058】
実施形態において、重合性混合物は、重合性混合物の重量を基準として、0.5~5.0重量%の量の1つ以上の架橋剤、0~60.0重量%の量の1つ以上の非反応性希釈剤(例えば、多価アルコール、多価アルコールのエステル、または多価アルコールのエーテル、例えば、グリセロール、グリセロールエステルなど)、および100.0ppm未満、好ましくは50.0ppm未満の量の1つ以上の重合禁止剤を含む。
【0059】
重合性混合物の粘度も重要な役割を果たすことがあり、典型的には1~25cP、例えば2~15cP、特に3~10cPである。
【0060】
上述したように、重合性混合物の酸素平衡濃度は、好ましくは、0.05~8.0体積%、例えば、0.2~6.0体積%、例えば、0.5~6体積%の範囲内である。下限(例えば、0.05%,0.1%,0.2%など)は、実用的な理由で記述しており、さらに低い濃度を達成することが全く可能である。
【0061】
重合性混合物の酸素含有量は、重合性混合物(周囲雰囲気(1013ミリバール、21体積%のO)の下で予め混合されている)を減圧Pに露出することによって、所望のレベル(X)に調整できる。ここで、P=X*1013/21ミリバール。続いて、真空を解放でき、酸素調整重合性混合物は、酸素濃度Xを有する適切な雰囲気に対応する酸素濃度を有する雰囲気下で保管できる。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態において、制御された雰囲気中の酸素濃度は、重合性混合物中の酸素平衡濃度よりも低い。
【0063】
(3D印刷装置)
複数の液滴の堆積は、典型的には従来のインクジェット印刷ヘッドを用いて達成される。こうした従来の印刷ヘッドは、1次元パターン(ラインの形態)または2次元パターンのいずれかで複数の液滴の同時堆積が可能である。速度および正確さのために、インクジェット印刷ヘッドは、重合性混合物の2次元パターンの同時堆積が可能であることが好ましく、そのため眼科デバイスのサイズを表現する、重合性混合物の液滴の1層または複数層が印刷可能になる。
【0064】
より好ましくは、ここで開示された実施例の場合のように、印刷ヘッドによって達成可能な2次元パターンは、少なくとも眼科デバイスのサイズ(「エリア」)であるサイズ(エリア)を表現している。この目的に適した市販の印刷ヘッドは、富士フイルム社製のSamba(登録商標)印刷ヘッドであり、例えば、Samba(登録商標)G3L印刷ヘッドは、モジュール当たり2048個のノズルを有し、ネイティブ液滴サイズで2.4ピコリットルから、1200ネイティブdpiの精度で13.2ピコリットルの最大ネイティブ液滴サイズまでのオーダーの液体の堆積が可能である。
【0065】
3D印刷装置によって堆積した液滴の各層のパターンは、ターゲット光学素子の所望の形状に関連して決定される。例えば(眼科デバイスの場合)、患者の眼の測定から収集したデータを使用して入力を生成できる。データは、例えば、光学特性、表面特性、サイズおよび形状寸法、および眼疾患状態の観察を含んでもよい。3次元(3D)印刷可能モデルは、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージまたは患者の眼の走査に基づいて作成できる。患者の眼の走査は、患者の眼の形状および外観を表現するデジタルデータの収集および解析を含む。そして収集したデータに基づいて、ターゲット眼科デバイスの3次元モデルを製造できる。3Dモデルをソフトウェアによって処理して、そのモデルを一連の薄層に変換し、特定のタイプの3Dプリンタに調整された命令を含むファイルを生成してもよい。
【0066】
(基板)
重合性混合物の複数の液滴は、基板の表面上に堆積される。基板に適した材料は、ガラス、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスチレンなどである。
【0067】
基板の形態は、典型的には(非水和)眼科デバイスの片側の形状を表現することであり、即ち、それは典型的には湾曲している。そのサイズは、仕上げ含水眼科デバイスの要求寸法に適合するように減少できる。基板は、旋盤加工、研削加工、射出成形及び/又はこれらの方法のいくつかによって形成してもよい。この形成のため、部品には回転軸が存在する。しかしながら、基板は、それ自体、3D印刷を用いて調製してもよい。これにより基板の表面構造は、回転の制約なしで比較的任意の様式で液滴を堆積させることによって形成でき、従来の手段では得られない光学表面形状を可能にする。
【0068】
基板の表面の濡れ性を調整するために、その表面は、界面活性剤で前処理してもよく、あるいはUV、オゾンもしくはプラズマ処理またはこれらの組合せを施してもよい。よって、例えば、ガラスまたはポリマー基板は、Tween 80またはシリコーン界面活性剤、例えば、Dow Corning社Additive 67、Additive 14、Additive 57、Xiameter OFX-0193などを用いて前処理してもよい。時には、界面活性剤は、重合性混合物に含有させてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、基板中の酸素濃度はまた、制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡状態にある。
【0070】
制御された雰囲気中の酸素濃度と平衡状態にある基板中の酸素濃度を得るために、基板は単に、液滴の堆積前に、制御された雰囲気(または対応する雰囲気)に、例えば、少なくとも8時間、露出することが可能である。
【0071】
いくつかの実施形態において、基板は、内部に極めて限られた量の酸素しか含むことができないことがあり、よって、基板中の酸素濃度に関して特別な注意を払う必要はないかもしれない。
【0072】
別の実施形態において、基板は、それ自体、光学デバイス、例えば、眼科デバイス(通常の市販のコンタクトレンズなど)であり、これは、ここで記載した方法によって修正され、例えば、異なる光学特性を有する最終的な眼科デバイスを形成する。
【0073】
(制御された雰囲気)
堆積印刷が行われる制御された雰囲気は、適切に低い酸素濃度を好ましく確保でき、これにより重合性混合物の酸素含有量が適切に制御できるという点で重要な役割を果たす。
【0074】
よって、典型的には、制御された雰囲気は、最大で5.0体積%の酸素濃度を有する。いくつかの実施形態において、制御された雰囲気中の酸素濃度は、最大で2.0体積%、例えば0.01~2.0体積%、例えば0.03~1.5体積%、例えば0.05~1.2体積%の範囲、例えば、0.1~1.1体積%、より好ましくは最大で1.0体積%である。下限(0.01%、0.03%、0.05%など)は、実用的な理由で記述しており、さらに低い濃度を達成することが全く可能である。
【0075】
重合性混合物の堆積が行われる制御された雰囲気は、最も好都合には1.0気圧の圧力であり(1013ミリバール)、これは21体積%の酸素濃度に相当する。通常の大気中に見られる21体積%より低い酸素濃度は、大気中の空気を窒素、ヘリウム、アルゴンなどの他の不活性ガス、好ましくは窒素と混合することによって、あるいは純粋な酸素を窒素のような他のガスと混合することによって適切に得られる。制御された雰囲気のための1つの好ましい手法は、不活性ガスとして窒素を使用し、大気中の酸素を置換して所望のレベルの酸素濃度を達成することであろう。
【0076】
実際の酸素濃度は、酸素濃度計によって監視でき、手順の開始時に調整してもよく、好ましくは、光学素子を調製するプロセス中に断続的にまたは連続的に制御してもよい。
【0077】
(層の印刷および硬化)
本発明の方法において、重合性混合物の複数の液滴が、制御された雰囲気下で基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物の液滴の連続層を形成する。
【0078】
重合性混合物は、典型的には、上述したように3D印刷装置を用いて堆積される。
【0079】
実施形態において、個々の液滴は、0.5~50pL、例えば、1~40pL、または1.5~30pL、2.0~15pLなどの体積を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、重合性混合物の複数の液滴は、基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物の液滴の連続層を形成し、配置された連続層は、眼科デバイスを形成するために、液滴の連続層の最後の堆積の後に、続いて化学線または熱に露出される。配置された連続層が化学線、特に紫外光に露出される変形例において、重合性混合物は、光開始剤を含んでもよい。配置された連続層が熱に露出される変形例において、重合性混合物は熱開始剤を含んでもよい。
【0081】
そのいくつかの変形例において、配置された連続層は、液滴の層の各堆積後に、化学線(例えば、UV光)に露出される。特に、化学線(例えば、UV光)へのこうした断続的露出によって得られる重合度は、典型的には、重合性混合物のゲル化を得る目的のためだけであり、個別の層の液滴が、後続の層の堆積時に所定場所に維持されることを確保している。
【0082】
よって、いくつかの実施形態において、重合性混合物の複数の液滴は、基板の表面上に堆積され、これにより重合性混合物の液滴の連続層を形成し、前記配置された連続層は、必要に応じて各層の堆積後に化学線に露出してもよく、及び/又は、光学素子を形成するための液滴の連続層の最後の堆積の後に化学線に露出してもよい。
【0083】
そのいくつかの変形例において、一連の連続層、例えば、2~20層は、堆積した層を断続的な化学線に露出する前に堆積してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、各層の最大厚さは、最大で50μmであり、特に25μmの最大値までである。
【0085】
実施形態において、重合性混合物は、例えば、熱開始剤および光開始剤から選択される1つ以上の重合開始剤を含有する。
【0086】
その変形例において、重合性混合物は、異なる波長の化学線に対する応答性を有する複数、例えば、2つの光開始剤を含有する。これは、間欠露光(ゲル化)のための1つの波長、そして光学素子の最終硬化のための他の波長でのUV光を利用することが望ましい場合に特に興味深い。
【0087】
よって、ある実施形態において、第1重合開始剤が連続層を構築する際に使用され、第2重合開始剤が硬化プロセスを完了するために使用される。
【0088】
請求項を備えた本願において、用語「化学線(actinic radiation)」は、280~450nmの範囲内の波長の放射線として理解される。いくつかの実施形態において、適用可能な放射線は、UVAおよび青色光に対応する315~450nmの範囲の波長を有する。
【0089】
重合性混合物中の酸素レベルを制御することに加えて、本発明のいくつかの実施形態はまた、重合を慎重に制御することによって、上述した課題のいくつかを解決しており、その結果、光学素子を製造している最中に、堆積時の個々の層での重合度がゲル化の程度に制限され、後続の液滴および層が混合して、歪みなしで構造を形成できるようにしながら、重合性混合物の移動を停止または実質的に遅くするようにしている。使用している他の一般用語は、このゲル化プロセスまたはゲル形成についての「UVピン止め(pinning)」である。それは、ある量の紫外(UV)光を紫外線硬化インク(UVインク)に照射するプロセスである。光の波長は、インクの光化学特性に適正に整合している必要がある。その結果、インク液滴は、より高い粘度状態に移るが、完全な硬化の手前で停止する。これはまた、前述のようにインクの「ゲル化」とも称される。UVピン止めまたはゲル化(またはゲル形成)は、フローおよび形態の管理を改善し、可能な最高の画質を提供する。
【0090】
実施形態において、これは、主として光開始剤の選択および濃度、架橋剤の選択および濃度、そしてUV光源、光の強度および露光時間によって達成される。化学線源の例は、発光ダイオード(「LED」)または電球、レーザなどを含んでもよい。
【0091】
1つの特定の実施形態において、2つの異なる波長で吸収する2つの光開始剤が、対応するUV LED光源と共に使用される(例えば、365nmおよび400nm)。この概念は、1つの開始剤が、重合性混合物のゲル化を開始できるが、重合を完了させるには不十分な濃度で存在することである。このことは、個々の層の各々が、最終硬化前に、同じ相対変換度に達することを可能にする。光学素子全体での最終重合は、第2光開始剤/UV LED光の組合せを用いて別個のステップとして行われ、その結果、光学機能に必要な均一なポリマー網目構造が得られる。その代替として、第2光開始剤の代わり、またはそれに加えて、Tgまたはそれ以上で活性である熱開始剤を使用して硬化を完了させる。また、連続層の堆積中および最終硬化ステップ中に重合性混合物の酸素含有量の制御なしでは、阻害効果が、ポリマー網目構造の均一性に悪影響を及ぼすことがあり、さらに不完全に硬化した粘着性のある製品を導くことがあることが観測される。
【0092】
堆積印刷が湾曲した表面上で行われる実施形態において、まさに第1層または最初の数層は、湾曲した表面上にドットのパターンとして堆積してもよく、それ以外では上述した手法を採用する。ドットのパターンは、部分的に硬化するまで、表面張力がドットのパターンを所定場所に維持するような大きさでもよい。そして続く印刷ヘッドからの液滴の堆積は、完成した層がその上に最終的な光学素子を構築するための基礎層として確立されるまで、第1の層または複数層によって残された空間を充填してもよい。ドットパターンの代替は、極めて薄い層(例えば、1ミクロン~8ミクロン)を形成するための液滴の堆積、および多くのこうした薄い層を備えた光学素子の構築である。
【0093】
3D印刷において、主要な関心事のうちの1つは、印刷ヘッド内でのインクの早過ぎるゲル化または重合である。印刷ヘッドの交換、修理時間および生産の損失は、コスト高になる。この関心事は、低レベルの阻害剤を備えた反応性モノマーを使用し、低酸素レベルを実装する場合にかなり大きい。この可能性を最小化または排除することは、大いに望ましい。材料の同時の印刷およびUVピン止めを達成して、最終硬化前に全ての層が追加されるまで、一旦堆積したインクまたは重合性混合物の移動を停止または遅くするために、本発明の実施形態の1つは、UV光源を印刷ヘッドから隔離して、ヘッド内の可能性あるゲル化/重合を本質的に排除または実質的に低減することである。印刷ヘッドをUV光源から分離すること、そして重合性混合物の酸素レベルおよび移動の両方を制御するという本発明の原理を使用することにより、最終レンズの光学性能に悪影響を及ぼす可能性があるマトリクス内のアーチファクトなしで正確な形状および光学デバイスの製造が可能になる。
【0094】
連続層の個々の塗布後で最終硬化が行われる前に、溶媒または水を用いた洗浄、例えば、余分なモノマーを除去することは行わないことが好ましい。
【0095】
一実施形態において、図1図2を参照して、システム110をブロック図で説明している。基板104は、1つ以上の3D印刷装置に近接して、例えば、その下方に位置決めできる。「下方または下部」の関係は、重力の方向から導出される。システムは、印刷ヘッド101を有する3D印刷装置と、重合性混合物(PM)の液滴を基板104に分注して、PMの連続層をターゲット光学素子103の所望形状に形成する印刷ヘッド101Aを有する他の3D印刷装置とを含む。
【0096】
基板へのPM液滴の塗布後、化学線、例えば、紫外光または青色光などが、化学線源105を介してPM層に供給される。最終的な硬化は、線源106の下方で異なる波長で行うことができる。最終的な硬化は、必要に応じて高温で行うことができる。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、システム110の第1印刷ヘッド101は、第1PMを提供でき、第2印刷ヘッド101Aは、第1PMと組成的に異なって、機能性添加剤または非重合性混合物(例えば、機能性添加剤または、機能性添加剤を含む溶媒)を含んでもよい第2PMを提供できる。
【0098】
システム110内の周囲条件、特に制御された雰囲気109の酸素含有量に関して、そして温度、周囲光などに関しても、典型的には制御される。
【0099】
基板104が化学線を透過できる条件では、放射線源105,106は、両方またはいずれか個々に、または交互の組合せで、図1に示したものと同様に、基板104の下方または基板104に対してある角度で配置できる。
【0100】
周囲ガス環境の性質は、例えば、入口107,108を通るパージ(purging)窒素ガスの使用によって制御することができる。パージは、酸素分圧を予め定めたレベルに増加または減少させるように実施できる。
【0101】
図2は、図1に類似した3D印刷システム110を示しており、基板104と、前記1つ以上の3D印刷ヘッド101,101A及び/又は前記1つ以上のLED UV光源105,106との間で相対移動を提供するように構成された駆動構造113を備える。従って、基板104は、前記1つ以上の3D印刷ヘッド101,101A及び/又は前記1つまたは複数のLED UV光源105,106に対して可動であり、あるいは、前記1つ以上の3D印刷ヘッド101,101A及び/又は前記1つまたは複数のLED UV光源105,106は、前記基板104に対して可動である。ベルト駆動装置が駆動構造113として図示されているが、他の構成も使用できる。駆動構造113は、印刷ヘッドに接続され、基板104/印刷ヘッド101,101Aの相対移動が印刷ヘッドからの材料の堆積と協調できるようになる。
【0102】
上述したシステムを用いて、光学素子は、第1重合性混合物の液滴を分注する第1印刷ヘッドと、第1重合性混合物、前記第1重合性混合物とは組成的に異なる第2重合性混合物、および非重合性混合物から選択される組成物の液滴をそれぞれ分注する1つ以上の追加の印刷ヘッドとを備える複数の印刷ヘッドにより形成してもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2重合性混合物は、機能的に活性な物質を含み、及び/又は、非重合性混合物は、機能的に活性な物質、例えば、溶解した形態でのこうした物質を含む。
【0104】
(基板からの眼科デバイスの取り外しおよび後処理)
光学素子(例えば、眼科デバイス)の調製に続いて、デバイスは、典型的には基板から取り外される。光学デバイスは、その調製中に基板に充分に物理的に結合されることを意図しているが、その硬化を含むその調製中に光学素子と基板との間に共有結合が形成されないように注意すべきである。
【0105】
眼科デバイスは、物理的手段によって基板から解放(または取り出し)でき、種々の方法、例えば、洗浄によって副生成物を除去し、緩衝食塩水に浸漬し、着色し、マーキングし、パッケージングすることによって、デバイスを処理できる。また、特に眼科デバイスがヒドロゲルポリマーである場合、それを水または緩衝食塩水に浸漬して膨張できるようにし、これにより基材からの解放を可能にしてもよい。離型剤は、水と組み合わせた場合、剥離剤を含まない水溶液を用いてこうしたレンズを解放するのに必要な時間と比較して、基板からコンタクトレンズを解放するのに必要な時間を減少する化合物または化合物の混合物である。
【0106】
典型的には好ましいが、眼科デバイスの硬化が、基板からの解放前に完了することは厳密には必要ではない。
【0107】
一実施形態において、硬化後、レンズに抽出を施して未反応成分を除去する。抽出は、従来の抽出流体、例えば、アルコールなどの有機溶媒などを用いて行うことができ、あるいは、水または水溶液、例えば、緩衝食塩水など、またはこれらの組合せを用いて抽出できる。種々の実施形態において、抽出は、例えば、水溶液でのレンズの浸漬、またはレンズを水溶液の流れに曝すことによって達成できる。種々の実施形態において、抽出はまた、例えば、水溶液を加熱すること、水溶液を攪拌すること、水溶液中の離型補助剤(aid)のレベルをレンズの解放を生じさせるのに十分なレベルまで増加させること、レンズの機械的または超音波攪拌、および、レンズからの未反応成分の適切な除去を促進にするのに十分なレベルまで少なくとも1つの浸出補助剤を水溶液に組み込むこと、のうちの1つ以上を含んでもよい。前述のものは、熱、攪拌またはその両方を追加し、または追加なしで、バッチ式または連続プロセスで行ってもよい。
【0108】
眼科デバイスはまた、既知の手段、例えば、これに限定されないが、オートクレーブ滅菌および放射線滅菌などによって滅菌してもよい。滅菌は、包装の前または後に、好ましくは包装の後に行ってもよい。
【0109】
また、光学素子、例えば、眼科デバイスは包装してもよい。眼科デバイスは、典型的には水溶液中で包装される。
【0110】
ヒドロゲルの眼科デバイスでは、包装は、約0.9%の塩化ナトリウムおよび適切な緩衝剤、例えば、リン酸塩またはホウ酸塩緩衝剤システムを備えた生理食塩水中で包装することを含んでもよい。さらに、包装溶液は、生物学的に活性な物質を含む1つ以上の機能的に活性な物質を含んでもよい。
【0111】
水溶液はまた、追加の水溶性成分、例えば、離型剤、湿潤剤、平滑剤、活性医薬成分(API)、ビタミン、酸化防止剤、および栄養補助成分、これらの組合せなどを含んでもよい。一実施形態において、水溶液は、10重量%未満の、他の実施形態では5重量%未満の有機溶媒、例えば、イソプロピルアルコールなどを含み、他の実施形態では有機溶媒なしである。組成に応じて、水溶液は、特別な操作、例えば、精製、リサイクルまたは特別な廃棄手順などを要することもあり、または要しないこともある。
【0112】
一実施形態において、本発明におけるヒドロゲルデバイスの含水量は、少なくとも30重量%の水を含み、いくつかの実施形態において少なくとも50重量%の水を含み、いくつかの実施形態において少なくとも70重量%の水を含み、他の実施形態では少なくとも90重量%の水を含む。
【0113】
実施形態において、重合性混合物は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)モノマーを含み、該方法は、光学素子、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる後続ステップを含み、これにより光学素子は、10~80重量%、好ましくは35~70重量%の含水量を得る。
【0114】
実施形態において、重合性混合物は、HEMAモノマーを含まないアクリレートモノマーを含み、該方法は、光学素子、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる後続ステップを含み、これにより光学素子は、10~80重量%、好ましくは35~70重量%の含水量を得る。
【0115】
実施形態において、重合性混合物は、反応性シリコーン前駆体を含み、該方法は、光学素子、好ましくは眼科デバイスを水中で膨潤させる後続ステップを含み、これにより光学素子は、5~70重量%、好ましくは10~50重量%の含水量を得る。
【0116】
(新規な眼科デバイス)
本発明の方法は、例えば、後述するものなど、新規な眼科デバイスを提供することが想定される。
【0117】
コンタクトレンズまたは眼内レンズが、本発明の方法に従って形成され、非回転対称表面を備え、極めて急峻な曲率半径および極めて高い球面状および円柱状の補正コンポーネントを含む、対応する光学補正を備える。
【0118】
コンタクトレンズまたは眼内レンズが、本発明の方法に従って形成され、フォロプター(phoropter)または屈折計からの屈折パワーの平均補正パワーだけでなく、眼のパワー分布図を反映する単一の球面状補正パワーとは対照的に、同じレンズ内に複数の球面状補正および円柱状補正を有する。
【0119】
コンタクトレンズまたは眼内レンズが、本発明の方法に従って形成され、これは、PRKまたはLASIKまたはLASEK手術の不充分な手術結果から、または異常な角膜表面に起因する収差から生じる光学収差を(非回転対称性に起因して)補正することが可能である。
【0120】
(一般的見解)
本説明および請求項は、場合により、ある混合物、ある開始剤などを参照するが、ここで定義される材料および組成は、1つ、2つまたはそれ以上のタイプの個々の成分を含んでもよいことは理解すべきである。こうした実施形態では、個々の成分の総量は、個々の成分について上述した量に対応すべきである。
【0121】
混合物、開始剤などの表現における「s(複数)」は、1つ、2つまたはそれ以上のタイプの個々の成分が存在してもよいことを示す。一方、表現「1」が使用される場合、個々の成分の1つだけが存在する。
【0122】
別に言及していない限り、表現「%」は、個々の成分の重量%を意味することを理解すべきである。
【0123】
(実験の詳細)
(方法)
(ヒドロゲルデバイスの含水量を決定する方法)
ヒドロゲルデバイス(例えば、コンタクトレンズ)の含水量は、ISO/DIS 18369-4:2016、セクション4.6(4.6.2に記載の重量法)に記載されているように決定される。
【0124】
(角膜曲率測定法)
角膜曲率測定法は、コンタクトレンズの測定のために変更した。角膜測定器(keratometer)は、角膜の中心半径を測定し、この場合は、PMMAドーム上に形成された非水和ヒドロゲル部分の前面の中心半径を測定する(PMMAドーム上の3-D印刷に関する実験セクションを参照)。使用した機器は、Nidek社の自動角膜測定器モデルARK900Sであった。支持体を水平プラットフォーム上に置き、ヒドロゲル表面を支持するPMMAドームの中心および軸を角膜測定器の中心および軸と整列させるためにくさびを追加した。行った最初の測定セットでは多量の非点収差を有しており、くさびは使用せず、測定した非点収差は、軸外れで行われた測定に起因してアーチファクトであった。
【0125】
(曲率半径測定)
コンタクトレンズのパワーは、コンタクトレンズの前面および後面のパワーの組合せに依存し、材料の屈折率およびコンタクトレンズの厚さによって調節される。コンタクトレンズの前面および後面のパワーは、これら表面の半径に依存する。
【0126】
パワーと空気中の半径の間の関係は、パワー=(コンタクトレンズの屈折率-1)/半径である。パワーはジオプター単位、半径はメートル単位である。
【0127】
前面については、半径は、単一の屈折素子を有する表面の前面光学ゾーンの曲率半径として、ISO18369-1:2006(E)(2.1.2.2.5)に定義される。
【0128】
PMMAドームの前面の曲率半径は、ISO DIS18369-3:2016(付属書C)に規定される方法の1つである角膜曲率計(ophthalmometer)としても知られる自動角膜測定器を用いて測定した。角膜曲率計法は、硬質または軟質のレンズ表面の前方にある既知の距離に置かれたターゲットの反射像サイズを測定し、そして曲率と反射像の倍率との間の関係を用いて、後面光学ゾーン半径を決定する。それでも、この方法を使用して、PMMAドームの前面半径を測定した。
【0129】
(光透過率)
視感透過率は、ISO 18369-1:2006(E)で定義される。視感透過率について下記の表に提示した値は、380nm~780nmの間の平均を表す。測定方法は、ISO DIS 18369-3:2106(4.8.2)に詳述されている。
【0130】
(装置および材料)
本発明の原理を実証するために、一連の実験を行った。実験は下記を用いて行った。
【0131】
(原料)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);16ppmのMEHQを備えた99.9%のHEMA
エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA);アッセイ:98.0%
メタクリル酸(MAA);アッセイ:99.0%
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、工業グレード
Irgacure 651光開始剤、BASF社、ミシガン州サウスフィールド
Irgacure 819光開始剤、BASF社、ミシガン州サウスフィールド
ガラス顕微鏡スライド、 EMS社、ペンシルベニア州ハットフィールド、および、AmScope社
Tween 80(ポリソルベート80)界面活性剤
試薬グレードのイソプロパノール
脱イオン水または蒸留水
無菌食塩水、Walgreens社またはB&L社
窒素ガスシリンダ(<0.1%の酸素)及び/又は液体窒素タンク
ロータリーエバポレータ(Rotovap)、グローブバッグ、デシケータ、褐色ボトル、シリンジ、5μmフィルタ、糸くず無しタオル、標準ビーカー、重量スケール(0.001g精度)、真空ポンプ
【0132】
(LED光源および測定器)
365nmおよび400nmの出力を持つオムニ(OMNI)ランプ
Omnicure LM 2011 強度を測定する光度計。
Honeywell Toxi Pro 544590VD 簡易ガス酸素モニター
33ミリバール未満の酸素を読み取るゲージ
【0133】
(3D印刷ステーション)
a)富士フイルム社Samba印刷ヘッドと、b)印刷ヘッドの下方で基板を移動させるためのコンベアベルト、そして2つの異なるUVランプを備えた特注設計。印刷ステーション全体は、ガスポートを備えた筐体に収容される。
【0134】
(例 シリーズA-モデルサンプルの調製)
このシリーズでは、均一な厚さの重合HEMAの正方形サンプル(10mm×10mm)を調製して評価した。
【0135】
(基板の準備)
3滴のTween 80を20mlの試薬グレードのイソプロパノールに添加し、そして3.1μmフィルタを通して濾過した。スライドガラスをこの溶液に3回浸し、空気乾燥した。
【0136】
(水和溶液の調製)
100mLの脱イオン水に5滴のTween 80を混合し、80~90℃に加熱した。
【0137】
(重合性混合物の調製)
PM-1A、PM-1BおよびPM-1C
HEMA:97.7%
EGDMA:1.6%
Irgacure 819:0.2%
Irgacure 651:0.5%
PM-2:
HEMA:98.1%
EGDMA:1.2%
Irgacure 819:0.2%
Irgacure 651:0.5%
PM-3A、PM-3BおよびPM-3C
無触媒重合混合物サンプル(PM-1A、PM-1B、PM-1C、PM-2、PM-3A、PM-3BおよびPM-3C;上記参照)を、褐色ボトルの中でモノマーおよび架橋剤を混合することによって調製し、一晩中冷蔵庫に置いた。光重合開始剤と共に、最終の重合混合物サンプルを、脱ガスおよび窒素ブランケット処理の交互サイクルを用いてロータリーエバポレータ内で処理した。サンプルは、PM-1A、PM-1B、PM-1CおよびPM-2の各々について約120グラムの重さであった。PM-3A、PM-3BおよびPM3Cの各々について同じ量は、約34.5グラムであった。
【0138】
ポリマー混合物中の酸素濃度に対応して生じた分圧は、下記のとおりである。
PM-1A:<0.5%のO
PM-1B:2.0%のO
PM-1C:5.0%のO
PM-2:<0.5%のO
PM-3A:<0.5%のO
PM-3B:2.0%のO
PM-3C:8.5%のO
【0139】
<0.5%のOのO濃度:11.0~12.0torr(約14.0ミリバール)までの脱ガスおよび760torrの窒素を用いたブランケット処理の3~4サイクルを交互に行うことによって、120gのサンプルを下記プロトコルに従ってロータリーエバポレータによって処理した。1回の脱ガスサイクルは5~20分の範囲であり、1回のブランケット処理サイクルは5分を超えなかった。
【0140】
2.0%のOのO濃度:72torr(95ミリバール)までの脱ガスおよび760torrの窒素を用いたブランケット処理によって、120gのサンプルを下記プロトコルに従ってロータリーエバポレータによって2.0%のOに処理した。脱ガスサイクルは49分であり、ブランケット処理サイクルは15分を超えなかった。
【0141】
5.0%のOのO濃度:179torr(235ミリバール)までの脱ガスによって、120gのサンプルを下記プロトコルに従ってロータリーエバポレータによって5.0%のOに処理し、そして45分間混合を維持し、続いてNを用いたブランケット処理を760torrまで5分を超えない時間で行った。
【0142】
8.0%のOのO濃度:300torr(400ミリバール)までの脱ガスによって、120gのサンプルを下記プロトコルに従ってロータリーエバポレータによって8.5%のOに処理し、そして45分間混合を維持し、続いてNを用いたブランケット処理を760torrまで15分を超えない時間で行った。
【0143】
(LED光源および印刷ステーションの設定)
400nmのオムニランプを基板から22.0mmに設定し、そして基板位置で光度計によって測定して、強度を4.5W/cmに設定した。
【0144】
365nmのオムニランプを基板から123mmに設定し、そして光度計によって測定して、強度を0.63W/cmに設定した。基板を印刷ステーションからUVステーションに移動させるためのベルト速度は、40フィート/分に設定した。
【0145】
重合性混合物の10mm×10mm平方のデザインを印刷した。400nmランプへの露出の30秒後(10秒間の3サイクル)に、UVピン止めまたはゲル化(触れると糸状で/粘着性)が生じた。測定した層の厚さは約24μmであった。前述した条件を選択するために、異なる強度設定および露出時間でいくつかの実験を事前に行った。
【0146】
(3D印刷条件)
UVピン止めでは、2400dpiで層を印刷し、そして400nmランプに30秒間露出することを6回行った。これに続いて、ピン止めまたはゲル化したサンプルを365nmランプの下で120秒間露出して、サンプルを硬化させた。
【0147】
酸素濃度を2つの酸素プローブによって測定し、一方は、印刷ステーションの近くに搭載し、他方は、UVステーションの近くに設置した。酸素の制御は、別個の空気流および窒素流のフローを制御することによって達成した。空気および窒素は、処理筺体内に入る前に混合される。
【0148】
(結果)
ガラス顕微鏡スライド上に印刷された水和サンプルから、2つの積み重ねた手術ブレードNo.23を用いてサンプルの中央を切断することによって断面を作製した。そして、400ミクロン幅の切断部を0.9%食塩水溶液を入れたペトリ皿内の側面に置き、1時間平衡化させ、そしてその形状を顕微鏡で観察した。
【0149】
不均一性または応力が、意図した形状(この場合は平坦)からの逸脱として観察できる。
【0150】
不均一性または応力は、材料の光学特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0151】
非水和サンプル(365nmで硬化した後)の外観および粘着性を、「目視検査」および「触感」によってそれぞれ評価した。
【0152】
上述のように調製した水和ヒドロゲルサンプル(10mm×10mm)について光透過率値を、そして基準として市販のACUVUE 2コンタクトレンズ(透過率96.83%)のものを380nmと780nmの間の平均として計算した。下記表を参照。
【0153】
水和サンプルの中心厚さを、顕微鏡を用いて断面上で光学的に測定した。
【0154】
(水和ヒドロゲルサンプルの評価)
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
「n.d.」は、測定が行われなかったことを示す。
【0157】
処理雰囲気中の酸素レベルは、成形物品に極めて強い影響を与えると思われる。水和サンプルの光透過率は、光学的機能にとって重要であり、処理雰囲気中の低い酸素レベル(0.1%、0.5%および1.0%)で非常に高く、市販のコンタクトレンズに匹敵する。処理雰囲気中の2.0%酸素では、光透過率が減少し、5.0%酸素では、光透過率はかなり減少する。同様に、水和サンプルの断面は、処理雰囲気中の低い酸素レベルで、最低レベルの変形が得られることを示す。
【0158】
重合性混合物中の酸素レベルは光透過率にいくらかの影響を与えるが、処理雰囲気中の酸素が低い場合、5.0%までの酸素が許容される。水和サンプルの断面は、処理雰囲気中の低レベルの酸素と組み合わせて、重合性混合物中の2.0%および5.0%の酸素で最低レベルの変形を示す。
【0159】
断面サンプルに見られるような低レベルの変形は、製品が均一であり、光学用途に適していることを示す。
【0160】
重合混合物PM-3A,PM-3BおよびPM-3Cを用いて製作したサンプルについては、6層を印刷して、硬化なしでピン止めした後に、接触に基づいて観察を行った。
【0161】
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持され、印刷ステーションとピン止めステーションの両方に近接して搭載された酸素プローブによって測定した。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成した。
【0162】
(結果)
<0.5%の酸素を有するPM-3A:やや粘着性があるが、糸状ではない。
2.0%の酸素を有するPM-3B:やや粘着性があるが、糸状ではない。
8.5%の酸素を含むPM-3C:粘着性であり、糸状である。
【0163】
(例 シリーズB-PMMAドーム上のヒドロゲル表面の調製)
このシリーズでは、種々の厚さの重合HEMAのドーム形状サンプルを調製して評価した。
【0164】
(重合性混合物の調製)
HEMA:97.9~98.1%
EGDMA:1.2~1.4%
Irgacure 651:0.5%
Irgacure 819:0.2%
重合性混合物は、例えば、PM-1AおよびPM-2の調製など、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前回の実験で説明したように調製した。
【0165】
(3D印刷条件)
Tween 80処理後、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))ドームを一晩中脱ガスし、「D」と「E」のラベルを付与し、そして基板として用いた。6つの層を4mm~11mmの範囲の直径で堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行い、365nmで120秒間、最終硬化を行った。
【0166】
(結果)
ヒドロゲル表面が印刷された2つのPMMAドームの測定は3回行い、測定は、3つの値、即ち、最も平坦な曲率半径、最も急峻な曲率半径、および主軸を含む。
PMMAドームD 上右側に傾斜:
1. 8.09/8.06 @180
2. 8.10/7.94 @120
3. 8.12/7.95 @112
平均値:8.10/7.99
PMMAドームE 上側で僅かにやや左側に傾斜
1. 8.16/7.97 @82
2. 8.16/7.97 @97
3. 16/7.96 @94
平均値:8.16/7.97
【0167】
結果は、下記のことを論証する。
i.規則的な光学表面の存在(これは自動角膜測定器で測定可能にするために必要な面の特徴である)。
ii.最も平坦な半径および最も急峻な半径の両方の高い再現性のある測定値:ドームD:平坦範囲0.03mm、急峻範囲0.12mm、ドームE:平坦範囲0.00mm、急峻範囲0.01mm。軸は、主方向を示しており、特定のマーキングなしで機器の前方にドームを設置することに起因して変動し、よってこの変動は関連性はない。
iii.両ドームは、小さい量の非点収差を示した。非点収差は、「曲率半径測定」で説明したパワー式を用いて、2つの想定した屈折率に基づいて計算した。
【0168】
ヒドロゲル表面を備えたPMMAドームD
(n=1.49)パワー1=60.49D、パワー2=61.32D、非点収差=0.83D、
(n=1.42)パワー1=51.85D、パワー2=52.57D、非点収差=0.72D
【0169】
ヒドロゲル表面を備えたPMMAドームF
(n=1.49)パワー1=60.05D、パワー2=61.48D、非点収差=1.43D、
(n=1.42)パワー1=51.47D、パワー2=52.69D、非点収差=1.22D
【0170】
上記ヒドロゲル表面で印刷されたPMMAドームの前面は、同等の前面トーリックコンタクトレンズの前面に対応し、ドームDは、0.75Dトーリックコンタクトレンズに相当し、ドームEは、1.25Dトーリックコンタクトレンズに相当する。
【0171】
(例 シリーズC-埋め込みインサートの調製)
(重合性混合物の調製)
実施例シリーズBと同じ。重合性混合物は、例えば、PM-1AおよびPM-2の調製など、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前回の実験で説明したように調製した。
【0172】
(3D印刷条件)
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持し、2つの酸素プローブによって測定し、一方は、印刷ステーションの近くに搭載し、他方は、UVステーションの近くに配置した。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成した。
【0173】
Tween 80を用いて処理した脱ガスしたポリプロピレン球を、基板として使用した。6つの層を4mm~11mmの範囲の直径で堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。Tween 80処理後、青色で着色したPMMAインサート(直径6mmで厚さ50ミクロン)を一晩中脱ガスし、ピン止め層の上に配置し、2つの層を直径11mmで堆積し、各層をピン止めした後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。最終硬化は365nmで120秒間行った。
【0174】
(結果)
青色に着色したPMMAインサートは、はっきりと観察でき、ヒドロゲルデバイス内に完全に埋め込まれていることが判った。さらに、この方法は、非点収差を隠すための剛性インサートを備えたソフトコンタクトレンズを製造するために使用できる。
【0175】
(例 シリーズD-埋め込みリザーバまたはデポの調製)
(重合性混合物の調製)
PM-2の調製と同じ。重合性混合物は、例えば、PM-1AおよびPM-2の調製など、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前回の実験で説明したように調製した。
【0176】
(3D印刷条件)
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持し、2つの酸素プローブによって測定し、一方は、印刷ステーションの近くに搭載し、他方は、UVステーションの近くに配置した。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成した。
【0177】
直径13mmを有するTween 80処理済のガラス半球を、基板として使用した。15個の層を直径9.5mmで堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。そして、食品着色結晶を詰めたプラスチック製のマイクロピペットの小片を、ピン止めした15層の上に配置した。3つの追加層を直径9.5mmで堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。数個の追加液滴の重合性混合物を堆積して、マイクロピペット片の完全なカプセル封入(encapsulation)を確実にし、このアセンブリを365nmで120秒間硬化させた。
【0178】
(結果)
食品着色結晶を含有するプラスチック製マイクロピペットは、はっきりと観察でき、ヒドロゲルデバイス内に完全に埋め込まれた。この方法は、コンタクトレンズなどの眼科デバイス内に機能性添加剤放出リザーバまたはデポの埋め込みを実証する。続いて、水中でのアセンブリの水和は、水和している水が着色し、そしてマイクロピペット片の中に食品着色結晶が存在しないことを示した。
【0179】
(例 シリーズE-非対称デザインを備えた眼科デバイスの調製)
(重合性混合物の調製)
PM-2の調製と同じ。重合性混合物は、例えば、PM-1AおよびPM-2の調製など、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前回の実験で説明したように調製した。
【0180】
(3D印刷条件)
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持し、2つの酸素プローブによって測定し、一方は、印刷ステーションの近くに搭載し、他方は、UVステーションの近くに配置した。酸素濃度の制御は、窒素タンクに接続された流量計によって達成した。
【0181】
直径13mmを有するTween 80処理済のガラス半球を、基板として使用した。約6mm×4mmの非対称デザイン(Atheneum Optical Sciencesのロゴ)を備えた10個の層を堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。そして、17個の層を堆積し、各層を印刷した後、400nmで15秒間、UVピン止めを行った。そして、このアセンブリを365nmで120秒間硬化させた。
【0182】
(結果)
ロゴの非対称デザインは、生理食塩水中での水和の前後で、ヒドロゲルデバイス内ではっきりと観察できる。この方法は、コンタクトレンズなどの眼科デバイス内に非対称な屈折誤差を補正するために、非対称な構造を組み込むことの実行可能性を実証する。
【0183】
(例 シリーズF-画像品質光学および屈折補正を備えたサンプルの調製)
(重合性混合物の調製)
HEMA:95.4%
MAA:2.5%
EGDMA:1.2%
TMPTMA:0.1%
Irgacure 819:0.3%
Irgacure 651:0.5%
重合混合物は、PM-1AおよびPM-2の調製と同様に、<0.5体積%の酸素平衡濃度に対応する前回の実験で説明したように調製した。
【0184】
(3D印刷条件)
雰囲気中の酸素濃度は、<0.5体積%に維持され、印刷ステーションとピン止めステーションの両方に近接して搭載された酸素プローブによって測定した。酸素濃度の制御は窒素タンクに接続された流量計によって達成した。Samba印刷ヘッド解像度は1200dpiに設定した。
【0185】
直径10.0mmの円形デザインを印刷し、サンプルを作成した。ベルト速度は、10フィート/分に設定した。400nmのUVランプへの10秒間露出の後、UVピン止めまたはゲル化が生じた。365nmのUVランプへの露出によって硬化を120秒間行った。印刷された処方(prescriptions)では、基礎層が最初に印刷され、ピン止めされ、そして硬化され、その後、各処方層をピン止めし、そして120秒間硬化させ、その後、上部コートまたは最終コートを印刷し、ピン止めし、そして硬化した。サンプルを調製するために使用した基板は、例シリーズAで説明したように、Tween 80で処理されたガラス顕微鏡スライドであった。ジオプター(D)単位のパワーは、トプコン社CL-200レンズメータを用いて測定した。乾式パワーは、ガラススライド基板を含む印刷サンプルで測定し、一方、水和溶液(前述のようにTween80を含有する加熱蒸留水)からサンプルを取り出し、そして20時間超の間に生理食塩水中で平衡化した後に湿式パワーを測定した。水和サンプルの直径は13.9±0.1mmと測定した。
【0186】
結果を下記の表に示す。
【表3】
【0187】
(結果)
上記の表に示される乾式および湿式パワーの結果は、3次元堆積印刷が、屈折誤差を補正するように、眼科レンズなどの画像品質光学系を備えた光学デバイスを製造できることを示す。
図1
図2