(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】安定化されたタンパク質結合カンナビノイド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20220324BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220324BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220324BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K47/12
A61K47/42
(21)【出願番号】P 2019548645
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 IL2018050278
(87)【国際公開番号】W WO2018163187
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-16
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515007877
【氏名又は名称】イズン ファーマスーティカルズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,シュミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ルバイン,ウィリアム ジー
(72)【発明者】
【氏名】レクト,シモン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-208280(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140736(WO,A1)
【文献】Current Pharmaceutical Design,2015年,21(14),1862-1865
【文献】Advances in Molecular and Cell Biology,2003年,33,29-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/352
A61K 47/00 - 47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸-カンナビノイド-血漿タンパク質(FCP)組成物を製造するための方法であって、前記方法は:
少なくとも1つの脂肪酸及び少なくとも1つのカンナビノイドが血漿タンパク質又はその一部に結合しているFCP複合体を含む複合組成物が調製されるように、
血漿タンパク質又はそのペプチド部分を、少なくとも1つの脂肪酸を含む補助脂肪酸組成物と接触させること;及び
血漿タンパク質又はその一部を、少なくとも1つのカンナビノイドを含むカンナビノイド組成物と接触させること、
を含
み、
少なくとも1つの脂肪酸がリノール酸からなり、
少なくとも1つのカンナビノイドがTHCであり、
血漿タンパク質又はその一部がアルブミンであり、
血漿タンパク質又はその一部への脂肪酸及び/又はカンナビノイドの結合が非共有結合であり、
非共有結合が、血漿タンパク質又はその一部における疎水性タンパク質ポケットとの非特異的な親油性及び極性の相互作用を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
カンナビノイド組成物が
、血漿タンパク質に結合しない脂肪酸を本質的に含まない、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
複合組成物中の少なくとも80%の脂肪酸及び少なくとも80%のカンナビノイドが、血漿タンパク質又はその一部に結合するように、複合組成物を精製して、血漿タンパク質又はその一部を保持し、かつ血漿タンパク質又はその一部に結合していない脂肪酸又はカンナビノイドを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複合組成物中の実質的にすべての脂肪酸及び実質的にすべてのカンナビノイドが、血漿タンパク質又はその一部に結合する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
血漿タンパク質又はその一部を補助脂肪酸組成物と接触させることには、血漿タンパク質又はその一部を含む組成物を補助脂肪酸組成物と混合し、かつ該混合物をインキュベートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
インキュベーションが、摂氏25度(℃)~40℃の温度である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
インキュベーションが、含水アルコール媒体で行われる、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
含水アルコール媒体に含まれるアルコールがエタノールである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
含水アルコール媒体の初期のアルコール濃度が2%~10%である、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
血漿タンパク質又はその一部をカンナビノイド組成物と接触させることには、血漿タンパク質又はその一部を含む組成物をカンナビノイド組成物と混合し、かつ該混合物をインキュベートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
インキュベーションが、摂氏25度(℃)~40℃の温度である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
インキュベーションが、含水アルコール媒体で行われる、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
含水アルコール媒体に含まれるアルコールがエタノールである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
含水アルコール媒体の初期のアルコール濃度が16%~30%である、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
複合組成物が、含水媒体中で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
含水媒体が、水又は生理食塩水からなる、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
複合組成物を乾燥又は凍結乾燥することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
血漿タンパク質又はその一部が組換え体である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
血漿タンパク質に結合するカンナビノイドの安定性を改善するための方法であって、請求項1の記載に従ってFCP組成物を製造することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条下で、2017年3月9日に提出された米国仮出願62/469,022の利益を主張し、その内容及び開示は、参照によりその全体に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイドは、ヒトのカンナビノイド受容体及び他の受容体に対して活性な化合物である。植物由来のカンナビノイドは、植物カンナビノイド(phyto-cannabinoid)とも呼ばれ、大麻(cannabis)属の植物に豊富に含まれる。カンナビスサティバに比較的高濃度で存在する既知のカンナビノイドの1つは、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)又はその脱炭酸産物であるテトラヒドラカンナビノール(THC)である。THCには、向精神作用、鎮痛作用、及び抗酸化作用があり、かつ食欲を増進させることがわかっている。
【0003】
医療用大麻の喫煙は欠点があるが、特定の症状で有益であることが証明されている。しかしながら、喫煙される植物の一部の有効成分の量は植物によって異なり得る。その結果、医療用大麻を使用して治療される患者は、有効なカンナビノイドの適切な投薬を制御できない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療大麻の喫煙の別の欠点は、大麻の煙のいくつかの成分の負の影響である。植物性物質からの煙には、所望のカンナビノイドに加えて発がん性物質が含まれていることがあり、喫煙による大麻の大量使用は、肺機能低下の促進に関連している。
【0005】
カンナビノイドの含水組成物は、ヒトの投与及び迅速な吸収のために品質管理され、正確な投与量の医薬組成物の調製を可能にするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明の実施形態は、カンナビノイドを含む改良された組成物を提供する。このような組成物を生成する方法もまた本明細書にて提供される。特に下記の本明細書に記載される組成物は含水組成物の場合に安定化する。組成物の安定化は、例えば、組成物の色及び/又はカンナビノイドの分解速度、及び/又は生物活性の保持を観察することにより測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、カンナビノイドの安定化された組成物を調製する工程を示すフロー図を示す;
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による、カンナビノイドの安定化された組成物を調製する工程を示すフロー図を示す;
【
図3AB】
図3Aは、本開示の一実施形態に従って製造された、THC、アルブミン及びリノール酸から調製されたFCP組成物のクロマトグラムを示す(+L組成物);
図3Bは、対照としてのTHC及びアルブミン(リノール酸なし)から調製されたカンナビノイド-血漿タンパク質のクロマトグラムを示す(-L組成物)。
【
図5A】
図5Aは、1週間保管後の+L及び-L組成物中のTHCの生物活性を試験するNF-κBルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示す;及び
【
図5B】
図5Bは、1ヶ月保存後の+L及び-L組成物中のTHCの生物活性を試験するNF-κBルシフェラーゼレポーターアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用されるような「含水」組成物は、少なくとも50%の水である液体媒体を有する組成物である。本明細書で使用される「水溶液」は、溶媒が少なくとも50%の水である溶液である。
【0009】
本開示の一態様によれば、安定化された脂肪酸-カンナビノイド-血漿タンパク質(「FCP」)組成物を製造する方法が提供され、この方法は:血漿タンパク質を少なくとも1つの脂肪酸を含む補助脂肪酸組成物と接触させること;及び該血漿タンパク質を少なくとも1つのカンナビノイドを含むカンナビノイド組成物と接触させることを含む。任意に、補助脂肪酸組成物に含まれる脂肪酸は、カンナビノイド組成物に含まれ得る脂肪酸若しくはすでに血漿タンパク質と複合化され得る脂肪酸の他に、脂肪酸を提供する。本開示の一実施形態では、上記の方法に従って製造されるFCP組成物中の血漿タンパク質の少なくとも一部、大部分、又は本質的に全てが、脂肪酸及びカンナビノイドに非共有結合し、その結果、FCP複合体が形成される。任意に、非共有結合は、タンパク質-リガンド相互作用である。任意に、非共有結合は、例えば血漿タンパク質中の疎水性タンパク質ポケットであり、非特異的な親油性及び極性の相互作用を特徴とする。
【0010】
本開示の一実施形態では、血漿タンパク質を補助脂肪酸組成物と接触させることは、血漿タンパク質を含む組成物を補助脂肪酸組成物と混合し、かつ混合物をインキュベートすることを含む。任意に、インキュベーションは摂氏25度(℃)~40℃であり、約25℃、約30℃、約37℃又は約40℃である。任意に、インキュベーションは30分~2時間、約30分、約1時間、又は約2時間の持続時間を有する。任意に、インキュベーションは、混合物の初期アルコール濃度が2%~10%、又は約5%である含水アルコール媒体で行われる。任意に、アルコールはエタノールである。
【0011】
本開示の一実施形態では、血漿タンパク質をカンナビノイド組成物と接触させることは、血漿タンパク質を含む組成物をカンナビノイド組成物と混合し、かつ該混合物をインキュベートすることを含む。任意に、インキュベーションは摂氏25度(℃)~40℃であり、約25℃、約30℃、約37℃又は約40℃である。任意に、インキュベーションは10時間~24時間、及び16~18時間の持続時間を有する。任意に、インキュベーションは、混合物の初期アルコール濃度が16%~30%、又は約20%である含水アルコール媒体で行われる。任意に、アルコールはエタノールである。
【0012】
本開示の一実施形態では、方法は、FCP組成物の濾過又は篩分から血漿タンパク質画分を保持することをさらに含み、保持された血漿タンパク質画分は、少なくとも1つの脂肪酸及び少なくとも1つのカンナビノイドを含む。
【0013】
本開示の一実施形態では、濾過又は篩分の後、脂肪酸-カンナビノイド-血漿タンパク質組成物に含まれるTHCのうち、少なくとも80%、90%又は本質的に全て、及び脂肪酸-カンナビノイド-血漿タンパク質組成物に含まれる脂肪酸のうち、少なくとも80%、90%、又は本質的に全てが、血漿タンパク質に結合する。
【0014】
本開示の一実施形態では、FCP組成物は、水、及び任意に水混和性の非含水溶媒を含む溶液中で提供される。本開示の一実施形態では、FCP組成物がフリーズドライ又は乾燥されている。
【0015】
本開示の一実施形態では、補助脂肪酸組成物は、少なくとも1つの脂肪酸、水混和性の非含水溶媒、及び任意に水を含む。任意に、非含水溶媒はエタノールである。任意に、脂肪酸組成物は、少なくとも1つの脂肪酸からなる。
【0016】
本開示の一実施形態では、カンナビノイド組成物は、大麻抽出物を含む。大麻抽出物は、非カンナビノイド抽出物成分(例えばタンパク質、脂質、又は脂肪酸)において減量した精製大麻抽出物であり得る。任意に、精製大麻抽出物はカンナビノイドを豊富に含む。本開示の一実施形態では、カンナビノイド組成物は、少なくとも1つのカンナビノイド、水混和性の非含水溶媒、及び任意に水を含む溶液である。
【0017】
本開示の一実施形態では、水混和性の非含水溶媒はエタノールである。
【0018】
脂肪酸は、炭化水素の尾を持つカルボン酸である。本開示の一実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸は:長鎖長脂肪酸(13個以上の炭素)、短鎖長脂肪酸(13個までの炭素);トリグリセリド;ポリイソプレノイド、又は界面活性剤のうちの1つ又は2つ以上の混合物を含む。本開示の一実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸はリノール酸を含む。別の実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸はリノール酸からなる。
【0019】
任意で、少なくとも1つのカンナビノイドは:テトラヒドラカンナビノール酸(THCA)又はその脱炭酸産物テトラヒドラカンナビノール(THC)及びカンナビジオール酸(CBDA)又はその脱炭酸産物カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビゲロール酸(CBGA)及びカンナビクロメン(CBC)からなる群から選択されるカンナビノイドの1つ又は2つ以上の組み合わせを含む。あるいは、又はさらに、この群は、HU-210、WIN55,212-2及びJWH-133などの合成カンナビノイドを含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用されるとおり、血漿タンパク質は、例えば脂肪酸を含む様々な疎水性化合物のための血流中の輸送媒体として機能することが知られているタンパク質を指す。血漿タンパク質は、血漿から生成又は精製され得る、若しくは植物、細菌、細胞株又は他の微生物で産生される組換えタンパク質であり得る。血漿タンパク質は:アルブミン、リポタンパク質、糖タンパク質、及びα、β、及びγグロブリン、並びにそれらの混合物から任意に選択される。血漿タンパク質は、完全な血漿タンパク質又は血漿タンパク質の一部を含むペプチドを組み込み得る。血漿タンパク質の一部は、カンナビノイドを吸着する部分を含み得る。血漿タンパク質は、自然に発生する血漿タンパク質の変異体であり得る。
【0021】
本開示の一実施形態では、FCP組成物は、少なくとも1時間又は少なくとも24時間の間、安定化された組成物の色変化を本質的に防止するのに十分な量の少なくとも1つの脂肪酸を含む。より好ましい実施形態では、防止の期間は少なくとも4ヶ月間である。
【0022】
本開示の一実施形態では:(1)脂肪酸-血漿タンパク質組成物を製造するために、補助脂肪酸組成物で血漿タンパク質を前処理すること;及び(2)FCP組成物を製造するために、脂肪酸-血漿タンパク質組成物をカンナビノイド組成物と組み合わせることを含む。
【0023】
あるいは、この方法は:(1)カンナビノイド-血漿タンパク質組成物を製造するために、カンナビノイド組成物で血漿タンパク質を前処理すること;及び(2)FCP組成物を製造するために、カンナビノイド-血漿タンパク質組成物を補助脂肪酸組成物と組み合わせることを含む。
【0024】
あるいは、この方法は:(1)補助脂肪酸-カンナビノイド組成物を製造するために、補助脂肪酸組成物をカンナビノイド組成物と組み合わせること、及び(2)FCP組成物を製造するために、血漿タンパク質を補助脂肪酸-カンナビノイド組成物と接触させることを含む。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つのカンナビノイドは大麻植物に由来しない。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つの脂肪酸の少なくとも一部分は大麻植物に由来しない。
【0027】
特に明記しない限り本説明において、本発明の一実施形態の1つ又は複数の特性の条件又は関連の特徴を修飾する、「実質的に(substantially)」及び「約(about)」などの形容詞は、条件又は特徴が、意図する適用のために実施形態を運用するのに許容される範囲内で定義されることを意味することが理解できる。特に明記しない限り、本明細書及び請求項における「又は」という単語は、排他的ではなく包括的な「又は」とみなされ、「又は」が結合する項目の少なくとも1つ又は任意の組み合わせを示す。
【0028】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに記載される簡略化された形態において、いくつかの概念を紹介するために提供される。この概要は、主張される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、主張される主題の範囲を制限するために使用されることも意図しない。
【0029】
本発明の実施形態の非限定的な例は、この段落に続いて列挙される添付の図を参照して以下に説明される。複数の図に表示される同一の構造、要素、又は部分には、通常、それらが表示されるすべての図において、同じ数字がラベル付けされる。
【0030】
詳細な説明
カンナビノイドの供給源として大麻樹脂及びハーブ大麻は、貯蔵中に効力を失い、効力の損失は主に、THCなどのカンナビノイドの損失(分解など)によるものであることが長い間認識されてきた。
【0031】
血漿タンパク質は、血流において脂肪酸を含むさまざまな疎水性化合物のための輸送媒体として機能することが知られている。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)は脂肪酸を組織に送達するための主要な輸送体であり、多くの脂肪酸結合部位を有する。本発明者らは以前に、カンナビノイドが血漿タンパク質に結合することが、含水組成物中のカンナビノイドの安定性を改善させることを見出した。さらに、カンナビノイドの供給源が植物物質である場合、該結合は、結合カンナビノイドを調製するために植物物質から抽出物へ持ち込まれる望ましくない不純物からカンナビノイドを分離するのにも役立つ。通常、結合工程には、カンナビノイド及び血漿タンパク質を特定の条件下で溶液中にて一緒にインキュベートしてカンナビノイド-タンパク質複合体を製造し、次いでカンナビノイド-タンパク質複合体を濃縮し、そして複合体を洗浄してタンパク質と結合しない望ましくない物質を除去し、結果としてカンナビノイド-タンパク質複合体が豊富な含水組成物を生じる。
【0032】
しかしながら、そのような含水組成物では、経時的に着色が変化することが見出されており、これは組成物の不安定化及び分解を示している。この分解は、上記の認識されるTHCの効力損失と同様に、溶解したカンナビノイドの望ましくない効力の損失に関連している可能性があり、さらに血漿タンパク質の分解に関連している可能性がある。
【0033】
本発明者らは驚くべきことに、精製カンナビノイドよりはむしろ、大麻抽出物(例えば大麻煙抽出物又は大麻蒸気抽出物)を使用することでカンナビノイドが提供される場合、血漿タンパク質及びカンナビノイドを含む含水組成物は、より安定であることを見出した。脂肪酸は(天然に大麻抽出物に含まれているが、精製カンナビノイド調製で通常減量する)、安定化の改善に寄与すると最初に仮定された。以下の本明細書の記載のとおり、本発明者らは、血漿タンパク質及びカンナビノイドを含むFCP組成物の製造中に、例えばリノール酸などの脂肪酸を添加すると、含水媒体に保存された場合に得られる組成物が安定化し、かつカンナビノイドの分解が減少することを見出した。例えば、カンナビノイドの分解の減少、カンナビノイド分解生産物の出現の減少、沈降の減少及び含水FCP組成物の凝集の減少を介して、安定性の改善が実証された。また、含水PFC組成物中のカンナビノイドの生物活性の度合いの管理された減少を介して、安定性の改善が実証された。安定化された調製物は、非経口又は鼻腔内の送達用の溶液などであるがこれらに限定されない、例えば医薬調製物に適している。
【0034】
図1は、本開示の一実施形態による、FCP組成物を調製する方法100の工程の概要である。方法100は:少なくとも1つの血漿タンパク質を少なくとも1つの脂肪酸と混合し、脂肪酸-血漿タンパク質混合物を生成すること(ブロック110);及び脂肪酸-血漿タンパク質混合物を少なくとも1つのカンナビノイドと混合すること(ブロック120)を含む。
【0035】
あるいは、カンナビノイドを最初に血漿タンパク質と混合することができ、その後にカンナビノイドー血漿タンパク質混合物を脂肪酸と混合することができる。
【0036】
図2は、本開示の一実施形態による、FCP組成物を調製する方法200の工程の概要である。方法200は:脂肪酸を血漿タンパク質溶液に加えることにより前処理された血漿タンパク質溶液を調製すること(ブロック210);及び前処理された血漿タンパク質溶液を、カンナビノイド及び非水溶媒を含むカンナビノイド溶液と組み合わせること(ブロック220)を含む。FCP組成物は、含水組成物の形態であってもよく、フリーズドライされていても、又は粉末に乾燥されていても、又は凍結乾燥(lyophilize)されていてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥FCP組成物は、例えば鎮痛剤として使用するために、注射又は鼻腔内の適用のための食塩水などの媒体に懸濁される。
【0037】
カンナビノイドは、通常、大麻植物からの抽出物の形態で提供される。そのような抽出物は、非カンナビノイド化合物を除去するために、抽出物を精製するか、又はどの程度精製するかに少なくとも部分的に依存し、さまざまな量の脂肪酸を含み得る。しかし、本開示の一実施形態によれば、大麻抽出物に既に含まれているいずれかの脂肪酸の他に補助脂肪酸を加えることは、脂肪酸-血漿タンパク質-カンナビノイド混合物を安定化するのに機能する。血漿タンパク質調製には、また、他の分子を除去するために血漿タンパク質を精製するか、又はどの程度精製するかに応じて、すでに複合体化されている異なる量の脂肪酸も含まれ得る。しかしながら、本開示の一実施形態によれば、血漿タンパク質に既に複合体化され得るいずれの脂肪酸の他に補助脂肪酸を加えることは、カンナビノイド-血漿タンパク質複合体を安定化するのに機能する。さらに、脂肪酸-血漿タンパク質-カンナビノイド混合物を精製して、血漿タンパク質に結合していない「緩い」脂肪酸を除去した後でもなお、補助脂肪酸の安定化効果が持続する。
【実施例】
【0038】
実施例1:カンナビノイドの安定化組成物の調製
1.1 リノール酸でのアルブミンの前処理
純粋なリノール酸を50%のエタノールに溶解して、150mMの濃度にした。1mLのリノール酸溶液を10mLの100mg/mL HSA(ヒト血清アルブミン)水溶液に加えた。エタノール濃度が5%未満のリノール酸-HSA溶液を1分間混合し、次いで攪拌せずに37℃で1時間インキュベートした。
【0039】
1.2 THCでのリノール酸-HSA溶液のインキュベーション
工程1.1で調製したリノール酸-HSA溶液を元の濃度の10分の1に水で希釈し、HSA濃度を10mg/mLに削減し、エタノール濃度を約0.5%に削減した。
【0040】
THCが94~95%の純度の植物抽出物を100%エタノールで0.16mg/mLのTHC濃度に希釈した。25mLの0.16mg/mLのTHC溶液を、この工程で調製した100mLの希釈リノール酸-HSA溶液にゆっくりと添加し、エタノールの蒸発を促進するために開いた容器で、30℃、16~18時間インキュベートし、光から保護した。インキュベーション後、THC-リノール酸-HSA組成物は、約100mLの体積、約10mg/mLのHSA濃度、及び約0.4mg/mLのTHC濃度であった。
【0041】
インキュベーション中に、溶液中のアルコール濃度は徐々に減少しており、リノール酸-HSA-THC組成物の体積は、最初の体積の約125mlから約100mLに削減した。
【0042】
THCは、インキュベーション中に徐々に、アルブミンに結合する。結果として、遊離THCの濃度は徐々に低下し、それに応じてエタノールの濃度はインキュベーション中に低下するが、一方でTHCが溶液から出て、沈殿物又は油に合体する危険性を緩和する。例えば、初期THC濃度が0.32mg/mLの場合、前インキュベーションのエタノール濃度が16.7%を超えると、THCが溶液から出ることを阻止する。より高い初期濃度のTHC溶液では、THCが溶液中でとどまるために、より高い初期のエタノール濃度が必要とされ得る。しかしながら、アルブミンの沈殿を防ぐため、エタノールの初期濃度は約30%未満である必要がある。CBD複合体などの他のカンナビノイド-アルブミン複合体の生成でも、同様の調節が必要となり得る。
【0043】
1.3 THC及びリノール酸に結合するアルブミンの精製
インキュベーション後、孔径10kDのPellicon XL50カセット(Ultracel)(Pellicon XL Ultra filtration Module Ultracel 10kDa 0.005m2、カタログ番号 PXCO10c50)を使用して、メルク社のCogent μscale装置でDI(脱イオン水)ろ過による洗浄サイクルで透析ろ過により、HSAに結合していないTHC及び脂肪酸の大部分を除去した。その後、リノール酸-THC-HSA複合体を100mlから50mlに該Cogent装置を用いて濃縮した。濃縮リノール酸-THC-HSA複合体試料を3回、300mLの水で洗浄し、最後に洗浄した試料を約20mLの体積に濃縮した。カンナビノイド及び血漿タンパク質のレベルを監視するため、及び3回の洗浄で十分な量の強固に結合した複合体が得られることを測定するために、いくつかの精製段階から試料を採取した。
【0044】
1.4 対照の調製
添加リノール酸の添加を含まない対照THC-HSA組成物(「-L組成物」)は、上記の工程1.1~1.3のとおり調製されたが、工程1.1のリノール酸の添加の工程は行わなかった。最終精製及び濃縮THC-HSA組成物は、66mg/mLの濃度のアルブミン及び1790ug/mLの濃度のTHCを含んでいた。
【0045】
1.5 リノール酸-THC-アルブミン(+L)組成物とTHC-アルブミン(-L)組成物の比較
最終精製及び濃縮の対照THC-アルブミン複合体(「-L」、上記工程1.4の生産物)を含むバイアル及び最終精製及び濃縮のリノール酸-THC-アルブミン複合体(「+L」、上記工程1.3の生産物)を含む別のバイアルは同一条件下、4℃、暗所で保管した。
【0046】
表1は、経時的なバイアル内のTHC-アルブミン組成物の外観を概要する。
【0047】
【0048】
+L及び-Lの組成物は、カンナビノイドがアルブミンから乖離するようにそれぞれ処理した。非結合カンナビノイドを、HPLC分析によって定量的及び定性的に測定し、アルブミンを調製時及び4か月後に個別に測定した。0か月(調製時)及び調製後4か月の-L組成物のクロマトグラムを
図3a及び3bにそれぞれ示す。0か月及び調製後4か月での+L組成物のクロマトグラムを
図4a及び4bにそれぞれ示す。-L組成物(
図3a)及び+L組成物(
図4a)の0か月のクロマトグラムは、予想どおり本質的に同一であることに注意されたい。対照的に、4か月の-L組成物(
図3b)及び+L組成物(
図4b)のクロマトグラムには大きな違いがあり、-Lのクロマトグラムは-L組成物の分解の増加から生じる不純物を表すより多くのピークを示している。
【0049】
表2は、HPLC分析の定量結果を概要する。
【0050】
【0051】
-L組成物及び+L組成物のTHCの生物活性もまた、それぞれの組成物のTHCの安定性を評価するために比較した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手)にNF-κBルシフェラーゼレポーター構築物を形質導入した。リポ多糖(LPS)を使用して、形質導入されたRAW264.7細胞でNF-κBルシフェラーゼレポーターを誘導し、そして試験組成物(-L組成物及び+L組成物)を加え、LPS誘導ルシフェラーゼ発現を阻害する能力を試験した。カルセインAM(カルセインのアセトメトキシ誘導体)を蛍光色素として使用して、補正のためにRAW264.7細胞数を測定した。該モデル内の発光はNF-κBの活性化と相関しているため、発現の阻害は発光の阻害との相関によって測定できる。
【0052】
NF-κBルシフェラーゼレポーターの発現がアルブミン-結合THCの投与により阻害されることがRAW-264.7のNF-κBルシフェラーゼレポーターアッセイを使用により以前から示されている。
【0053】
図5Aを参照。形質導入されたRAW264.7細胞は、2つの試験組成物:+L組成物又は-L組成物(4℃、密閉、暗所で1週間保存後)のどちらかで処理された。試験組成物が最初に作られた時点で(保存前に)試験組成物を培養物に添加した場合、細胞は1μg/mlの濃度のTHCにさらされるように、各試験組成物について、十分な量の試験組成物を培地に加えた。両方の試験組成物について、発光を試験組成物なしのLPSによりルシフェラーゼ発現が誘導された陰性対照と比較した。1週齢の-L組成物の投与は、陰性対照と比較してLPS誘導ルシフェラーゼ発現を50%阻害したことがわかった。対照的に、+L組成物は陰性対照と比較してルシフェラーゼ発現を70.9%阻害し、このことはリノール酸の添加によりアルブミン-結合THCの安定性が向上し、保管した週の間、THCの分解を抑制したことを示す。
【0054】
図5Bを参照。+L組成物及び-L組成物を、同じ条件下で1か月保管後に同様に試験した。1ヶ月齢の-L組成物の投与は、陰性対照と比較してNF-κBルシフェラーゼレポーターの発現を36.4%阻害することがわかった。対照的に、+L組成物は陰性対照と比較してルシフェラーゼ発現を56.8%阻害し、このことはリノール酸の添加により、アルブミン-結合THCの安定性が向上し、保管した月の間、THCの分解を抑制したことを示す。
【0055】
実施例1の工程1.2で例として説明されるとおり、いくつかの実施形態では、方法200は、安定化されたカンナビノイド組成物をインキュベートする240をさらに含む。インキュベーションは、経時的に安定化されたカンナビノイド組成物中の非水溶媒の濃度を徐々に低下させることを含む。濃度の低下では、安定化されたカンナビノイド組成物からのカンナビノイドの沈殿を本質的に最小化する、又は防止するために、十分に速度を遅くしてもよい。
【0056】
好ましくは、実施例1の工程1.1に例として記載されるとおり、前処理された血漿タンパク質溶液を調製する210は、脂肪酸を血漿タンパク質溶液とインキュベートすることをさらに含む。好ましくは、ELISA分析においてプラスチック容器上にペプチドを吸着させる際に行われる手順と同様に、溶液をできるだけ小さく移動して複合化工程の混乱を最小限に抑える。
【0057】
実施例1の工程1.3で例として説明したとおり、方法は、溶液中のFCP複合体を豊富にするために安定化されたカンナビノイド組成物の濾過又は篩分から血漿タンパク質画分を保持することを含み得、保持された血漿タンパク質画分は、血漿タンパク質及び少なくとも1つの脂肪酸に結合したカンナビノイドを含む。
【0058】
少なくとも1つのカンナビノイドは:テトラヒドラカンナビノール酸(THCA)又はその脱炭酸産物テトラヒドラカンナビノール(THC)及びカンナビジオール酸(CBDA)又はその脱炭酸産物カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビゲロール(CBG)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビゲロール酸(CBGA)及びカンナビクロメン(CBC)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。あるいは、又はさらに、該群は、HU-210、WIN55,212-2及びJWH-133などの合成カンナビノイドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カンナビノイドは1つの又は複数の植物抽出物として提供される。1つ以上の植物抽出物は、テルペン及びカンナビノイドの混合物を含み得(カンナビノイドテルペン及び任意に追加の化合物の芳香を生成する)、1つ以上のアルブミン-リノール酸複合体に共に結合し得る。少なくとも1つの血漿タンパク質はヒト血清アルブミン(HSA)を含み得る。
【0059】
少なくとも1つの脂肪酸はリノール酸を含んでもよい。しかしながら、他の脂肪酸は、THC-血漿タンパク質を安定化する能力を有し得る、又は少なくとも類似の能力を有し得る。このような脂肪酸もまた、方法及びそれにより生成される組成物の範囲であると見なされる。
【0060】
表1及び表2に示されるように、調製時から組成物の色の識別可能な変化がないにもかかわらず、その時間中に組成物中のTHCのいくらかの分解があり得る。実際、THCの量は、4か月などの長期間にわたって大幅に低下し得る;並びに組成物の早期使用が好ましいことがある;しかしながら、THC-アルブミン組成物中のTHCの安定性は、それにもかかわらず、THC-アルブミン複合体に関連するリノール酸の存在により大幅に改善される。
【0061】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸の大部分はカンナビノイド植物に由来しない。いくつかのカンナビノイド植物、特に果物や種子などのこれらの植物の部分には、かなりの量の脂肪酸を有し得る。しかしながら、カンナビノイドは通常、少なくとも90%以上のカンナビノイドを含む精製抽出物として提供される。カンナビノイド精製抽出物は、カンナビノイド植物源からの微量の脂肪酸を含み得るが、補足脂肪酸の添加により上記のカンナビノイド-血漿タンパク質-脂肪酸組成物の安定性が向上し得る。
【0062】
それにもかかわらず、他のいくつかの実施形態では、脂肪酸の大部分をカンナビノイド植物に由来してもよい。そのような場合、脂肪酸はカンナビノイド抽出物の単なるマイナー化合物ではなく、むしろカンナビノイド抽出物への補助剤である。現在、発明者らは、脂肪酸のこの特定の供給源は観察された安定性効果に有意ではないと考えている。
【0063】
本開示の一実施形態によれば、安定化されたカンナビノイド-血漿タンパク質-脂肪酸組成物は:少なくとも1つの脂肪酸で前処理された血漿タンパク質、及びカンナビノイドを含む。
【0064】
前処理は、水溶液中の血漿タンパク質及びエタノールなどの水と混和する適切な溶媒中の脂肪酸を提供すること、並びに2つの溶液を一緒に混合することを含み得る。前処理で使用される脂肪酸の供給源は、カンナビノイド植物からの少なくとも一部分に存在することがあるが、通常はカンナビノイド植物からではない。組成物中の脂肪酸の供給源は、通常カンナビノイド植物からではない。
【0065】
カンナビノイドは一般的には抽出物として、特にカンナビノイド植物からのカンナビノイドの抽出物として提供され、溶媒は、エタノールなどの水の混合可能な非含水溶媒である。抽出物は微量の脂肪酸を含み得るが、これらの微量の脂肪酸は前処理には使用されない。いくつかの実施形態では、組成物中の少なくとも1つの脂肪酸の濃度は:安定化された組成物と同じ濃度のカンナビノイド、及び安定化された組成物と同じ濃度の少なくとも1つの血漿タンパク質を含む、非安定化カンナビノイド組成物の色とは異なる色を有する安定化カンナビノイド-血漿タンパク質-脂肪酸組成物を提供するように選択され、安定化カンナビノイド組成物及び非安定化カンナビノイド組成物が、同時に調製され、かつその後に同時に測定される。他の実施形態では、組成物中の少なくとも1つの脂肪酸の濃度は、組成物中のカンナビノイドの分解、例えばTHCの分解を実質的に遅延するように選択される。例えば、組成物中のTHCの少なくとも50%を、例えば10℃未満かつ暗所など安定する環境にて、4か月を超えて保持する。
【0066】
本開示の特定の実施形態では、カンナビノイドの濃度に対する脂肪酸の濃度は、安定化された組成物にいずれの色の変化がある場合に、色の変化は肉眼で知覚できないようなものである。色の変化は、安定性の試験のために、組成物の新しい試料を調製し、そして新しい試料と同じ条件及び濃度で作成され保存される試料と、新しい試料の色とを比較することにより試験することができる。
【0067】
したがって、本開示の一実施形態において、脂肪酸-カンナビノイド-血漿タンパク質(FCP)組成物を製造する方法が提供され、この方法は:少なくとも1つの脂肪酸及び少なくとも1つのカンナビノイドが血漿タンパク質又はその一部に結合しているFCP複合体を含む複合組成物を調製するように、血漿タンパク質又はそのペプチド部分を、少なくとも1つの脂肪酸を含む補助脂肪酸組成物と接触させること;及び血漿タンパク質又はその一部を、少なくとも1つのカンナビノイドを含むカンナビノイド組成物と接触させることを含む。任意に、少なくとも1つの脂肪酸はリノール酸を含む。任意に、少なくとも1つの脂肪酸のリノール酸からなる。任意に、カンナビノイド組成物は本質的に脂肪酸を含まない。
【0068】
本開示の一実施形態では、この方法は:複合組成物中の少なくとも80%の脂肪酸及び少なくとも80%のカンナビノイドが血漿タンパク質又はその一部に結合するように、複合組成物を精製して、血漿タンパク質又はその一部を保持し、かつ血漿タンパク質又はその一部に結合していない脂肪酸又はカンナビノイドを除去することをさらに含む。任意に、複合組成物中の実質的にすべての脂肪酸及び実質的にすべてのカンナビノイドは、血漿タンパク質又はその一部に結合している。
【0069】
本開示の実施形態では、脂肪酸及び/又はカンナビノイドの血漿タンパク質又はその一部への結合は非共有結合である。任意に、非共有結合は、タンパク質-リガンド相互作用である。任意に、非共有結合は、血漿タンパク質又はその一部における疎水性タンパク質ポケットでの非特異的な親油性及び極性の相互作用を特徴とする。
【0070】
本開示の一実施形態では、血漿タンパク質又はその一部を補助脂肪酸組成物と接触させることは、血漿タンパク質又はその一部を含む組成物を補助脂肪酸組成物と混合し、そして該混合物をインキュベートすることを含む。任意に、インキュベーションは、摂氏25度(℃)~40℃の温度である。任意に、インキュベーションは含水アルコール媒体中で行われる。任意に、含水アルコール媒体に含まれるアルコールはエタノールである。任意に、含水アルコール媒体の初期のアルコール濃度は2%~10%である。
【0071】
本開示の一実施形態では、血漿タンパク質又はその一部を、カンナビノイド組成物と接触させることは、血漿タンパク質又はその一部を含む組成物をカンナビノイド組成物と混合し、そして該混合物をインキュベートすることを含む。任意に、インキュベーションは、摂氏25度(℃)~40℃の温度である。任意に、インキュベーションは含水アルコール媒体中で行われる。任意に、含水アルコール媒体に含まれるアルコールはエタノールである。任意に、含水アルコール媒体の初期のアルコール濃度は16%~30%である。
【0072】
本開示の実施形態では、複合組成物は含水媒体において提供される。任意に、含水媒体は、水又は生理食塩水からなる。
【0073】
本開示の一実施形態では、この方法は、複合組成物を乾燥又は凍結乾燥することをさらに含む。
【0074】
本開示の一実施形態では、少なくとも1つのカンナビノイドは:THCA、THC、CBDA、CBD、CBN、CBG、THCV、CBGA、CBC、HU-210、WIN55,212-2及びJWH-133からなる群の1つ又は2つ以上の組み合わせである。
【0075】
本開示の一実施形態では、血漿タンパク質又はその一部は:アルブミン、リポタンパク質、糖タンパク質、並びにα、β、及びγグロブリン、並びにそれらの1つ以上の混合物からなる群から選択される。任意に、血漿タンパク質又はその一部は組換え体である。
【0076】
本開示の一実施形態による方法を使用して製造されたFPC組成物もまた提供される。
【0077】
本開示の実施形態に従う方法を使用してFCP組成物を製造することを含む、血漿タンパク質に結合するカンナビノイドの安定性を改善する方法もまた提供される。
【0078】
本出願の明細書及び特許請求項において、各動詞「comprise(含む)」、「include(含む)」及び「have(有する)」、並びにそれらの複合語は、目的語又は動詞の目的語が構成物、要素又は主語の一部分若しくは動詞の主語の完全な一覧である必要はないことを示すために使用される。
【0079】
本出願において本発明の実施形態の説明は、実施例により提供されるが、本発明の範囲を限定するものではない。記載の実施形態では異なる特徴を含み、それらのすべてが本発明のすべての実施形態で必要とされるわけではない。いくつかの実施形態では特徴のいくつかのみ、又は特徴の可能な組み合わせのみを利用する。記載された本発明の様々な実施形態、及び記載の実施形態に示された特徴の異なる組み合わせを含む本発明の実施形態は、当業者に理解されるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ制限される。