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特許7045421移動体位置検出システムおよび移動体位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】移動体位置検出システムおよび移動体位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220324BHJP
   G01S 17/42 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
G05D1/02 J
G01S17/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020124175
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022020917
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】711003749
【氏名又は名称】株式会社Wave Technology
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 滋樹
(72)【発明者】
【氏名】赤谷 憲司
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120629(JP,A)
【文献】特開2016-183919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が走行する領域に設置されたサインポストに設けられ、識別情報がマーカ情報として定義されたマーカ、前記移動体に搭載され、前記マーカにレーザ光を照射する測距レーザ、前記マーカの前記マーカ情報および前記マーカごとの絶対位置座標が格納されたマーカ情報記憶部、走行する前記移動体の前記測距レーザによって前記マーカを検出して前記マーカに定義されたマーカ情報を導出するマーカ検出部、前記マーカ検出部で得られた前記マーカ情報と前記マーカ情報記憶部に格納されている前記マーカ情報に基づき前記移動体の自己位置を演算する絶対位置演算部を備え、前記マーカは、前記測距レーザの出力変化に前記マーカの前記マーカ情報を与えるパッシブプレートであることを特徴とする移動体位置検出システム。
【請求項2】
前記移動体の車速に基づいて前記移動体の移動距離を演算する移動距離演算部、前記移動体の旋回角度を演算する旋回角度演算部、前記移動距離演算部からの移動距離と前記旋回角度演算部からの旋回角度に基づき前記移動体の移動量を演算する移動量演算部、前記移動量演算部の演算出力および前記絶対位置演算部からの出力に基づき前記移動体の相対移動位置と絶対位置による自己位置を推定する自己位置推定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動体位置検出システム。
【請求項3】
前記マーカは、前記マーカ情報を与える穴を基材の表面に設けたパッシブプレートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体位置検出システム。
【請求項4】
前記マーカは、前記マーカ情報を与える突起部を基材の表面に設けたパッシブプレートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体位置検出システム。
【請求項5】
前記マーカは、基材とは反射率が異なる素材で前記マーカ情報を与えるパッシブプレートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体位置検出システム。
【請求項6】
前記測距レーザは、前記マーカに対して走査動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の移動体位置検出システム。
【請求項7】
移動体が走行する領域に設置されたサインポストに設けられ、識別情報がマーカ情報として定義されたマーカ、前記移動体に搭載され、前記マーカにレーザ光を照射する測距レーザ、前記マーカの前記マーカ情報および前記マーカごとの絶対位置座標が格納されたマーカ情報記憶部、走行する前記移動体の前記測距レーザによって前記マーカを検出して前記マーカに定義されたマーカ情報を導出するマーカ検出部、前記マーカ検出部で得られた前記マーカ情報と前記マーカ情報記憶部に格納されている前記マーカ情報に基づき前記移動体の自己位置を演算する絶対位置演算部を備え、前記マーカ検出部は、前記マーカのマーカ端検出時の前記マーカと前記移動体までの測距距離および前記マーカのマーカ端通過時の前記マーカと前記移動体までの測距距離から前記マーカに対する前記移動体の方位を演算することを特徴とする移動体位置検出システム。
【請求項8】
測距レーザによって測距したマーカと移動体までの距離の長さと、前記移動体の移動距離によって、前記移動体が走行する移動領域に設置されたマーカのマーカ情報を演算するステップと、前記マーカのマーカ端検出時の前記マーカと前記移動体までの測距距離および前記マーカのマーカ端通過時の前記マーカと前記移動体までの測距距離から前記マーカに対する前記移動体の方位を演算するステップと、前記マーカ情報を取得したか否を判定するステップと、前記マーカ情報を取得した場合は、当該マーカに対応したマーカ情報である識別情報の座標データを取得するステップと、前記マーカ情報である識別情報の座標データに測距距離および方位を加算した絶対位置、絶対方位の情報を用いて自己位置を演算するステップを含むことを特徴とする移動体位置検出方法。
【請求項9】
移動体の車速によって移動体の移動距離を演算するステップと、移動体の方位変化量から前記移動体の旋回角度を演算するステップと、前記移動距離と前記方位変化量を用いて前記移動体の移動量を演算するステップと、測距レーザによって測距したマーカと前記移動体までの距離の長さと、前記移動体の移動距離によって、前記移動体が走行する移動領域に設置されたマーカのマーカ情報を演算するステップと、前記マーカのマーカ端検出時の前記マーカと前記移動体までの測距距離および前記マーカのマーカ端通過時の前記マーカと前記移動体までの測距距離から前記マーカに対する前記移動体の方位を演算するステップと、前記マーカ情報を取得したか否を判定するステップと、前記マーカ情報を取得していない場合は、自己位置推定の動作を繰り返すステップと、前記マーカ情報を取得した場合は、当該マーカに対応したマーカ情報である識別情報の座標データを取得するステップと、前記マーカ情報である識別情報の座標データに測距距離および方位を加算した絶対位置、絶対方位の情報を用いて自己位置を演算するステップを含むことを特徴とする移動体位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、移動体位置検出システムおよび移動体位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体、例えば、自動車の走行位置を検出する方法として、GPS(Global Positioning System)を使った測位法、ジャイロセンサと車速センサを利用した自律航法、並びにこれらを組み合わせる機能を備えた方法がある。
また、屋内を走行する無人搬送車あるいは倉庫での在庫管理の効率化のために有人フォークリフトの自己位置を測定、検出するニーズが高まっている。
屋内の移動体位置検出方法として、超音波センサ方式、IMES(Indoor Messaging System)方式、UWB(Ultra Wide Band)方式、レーザスキャン方式などが知られている。
例えば、屋内における測位システムとして、特許文献1における自律超音波屋内測位システムにおいては、建屋の天井に設置された超音波位置ビーコン送信装置と、位置ビーコンを受信し、受信した位置ビーコンからそれ自身の位置を計算する超音波位置ビーコン受信装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-288245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の屋内移動体位置検出方法では、屋内倉庫など建物側に複数の高価な位置検知用機器を設置する必要がある。また、これらの機器を設置する場合は、電源配線などの工事が必要となり、運用中の倉庫あるいは工場などに設置する場合に利便性が悪く、コストがかかるいという問題がある。
また、カーナビゲーションシステムによる移動体の位置推定に用いる自律航法(移動量を検出し相対位置を推定)では、移動量の累積誤差が蓄積するため、GPSを利用できない屋内では自律航法のみで絶対位置を特定することは不可能である。このため、屋内測位システムに自律航法を用いるには、定期的に絶対位置の補正処理が必要となる。この補正処理のため、絶対位置を定義したサインポストを設け、移動体がサインポストを何らかの手法で検出することが必要となる。
特許文献1では、天井に複数の超音波送信器を設置するために電源配線などの工事を要するため、運用中の倉庫などに簡易設置することができない。
【0005】
本願は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、絶対位置を検出するための設備を簡素化できる高精度な絶対位置検出処理を用いた移動体位置検出システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される移動体位置検出システムは、移動体が走行する領域に設置されたサインポストに設けられ、識別情報がマーカ情報として定義されたマーカ、移動体に搭載され、マーカにレーザ光を照射する測距レーザ、マーカのマーカ情報およびマーカごとの絶対位置座標が格納されたマーカ情報記憶部、走行する移動体の測距レーザによってマーカを検出してマーカに定義されたマーカ情報を導出するマーカ検出部、マーカ検出部で得られたマーカ情報とマーカ情報記憶部に格納されているマーカ情報に基づき移動体の自己位置を演算する絶対位置演算部を備え、マーカは、測距レーザの出力変化にマーカのマーカ情報を与えるパッシブプレートである。
【発明の効果】
【0007】
本願の移動体位置検出システムによれば、GPS受信できない環境下でも移動体の自己位置を安価で高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る移動体位置検出システムの概略構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る移動体位置検出システムにおける位置検出装置の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態2に係る移動体位置検出システムにおける位置検出装置の一例を示すブロック図である。
図4】実施の形態1、2に係る移動体位置検出システムにおけるマーカの一例を示す斜視図である。
図5】実施の形態1、2に係る移動体位置検出システムにおけるマーカの他の例を示す斜視図である。
図6】実施の形態1、2に係る移動体位置検出システムにおけるマーカの他の例を示す斜視図である。
図7】実施の形態1、2に係る移動体位置検出システムにおける測距レーザの出力イメージを示す図である。
図8】実施の形態1、2に係る移動体位置検出システムによるマーカと移動体の方位差を演算する一例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る移動体位置検出システムにおける絶対位置検出処理の流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る移動体位置検出システムにおける移動体位置検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る移動体位置検出システムを図面に基づいて説明する。各図において、同一または相当部分については、同一符号を付している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る移動体位置検出システムの概略構成を示す斜視図である。無人搬送車、フォークリフト、台車などの移動体3が走行する倉庫、配送センタ等の建屋の屋内には、移動体3が移動する領域の特定場所にサインポスト1A、1B、1Cが設置されている。サインポスト1A、1B、1Cは、各サインポストの識別情報がマーカ情報として組み込まれたマーカ2A、2B、2Cが設置されている。
移動体3には、位置検出装置4、設置台5に保持された測距レーザ6が設けられている。測距レーザ6は、移動体3がサインポスト1A、1B、1Cの前を通過する際に当該サインポストのマーカ2A、2B、2Cにレーザ光を照射することができる。
【0011】
図2は、実施の形態1に係る移動体位置検出システムにおける位置検出装置4の構成を示すブロックである。位置検出装置4は、マーカ検出部41、マーカ情報記憶部42、絶対位置演算部43を有している。
マーカ検出部41は、測距レーザ6の測距パターンからマーカ識別情報を検出する。
マーカ情報記憶部42には、移動体3が走行する移動領域の走行経路の主要箇所に設置されたサインポスト1A、1B、1Cのマーカ2A、2B、2Cに定義された当該マーカの識別情報とマーカ毎の絶対位置座標が格納されている。即ち、マーカ情報記憶部42には、移動体3が走行する移動領域の走行経路に沿ってマーカ2A、2B、2Cがあらかじめ対応付けされた地図情報に相当するものが保存されている。例えば、各マーカ2A、2B、2C毎に定義された識別情報と絶対位置座標をマーカ情報として格納されている。
絶対位置演算部43は、マーカ情報記憶部42に記憶されているマーカ情報とマーカ検出部41によって得られたマーカ情報を照合し一致する場合に、マーカ検出部41で得られた相対距離と相対角度を、マーカ情報記憶部42の絶対位置と絶対方位に加算し、移動体3の絶対位置、絶対方位を検出する。
【0012】
図4は、マーカ2(図1における2A、2B、2Cに相当している。以下同様)の構成の一例を示している。
マーカ2は、移動体3の走行方向における幅寸法MLをあらかじめ規定したものであり、且つ、マーカ2の基材表面20には当該マーカのマーカ情報を定義するための部分として複数の穴21a~21dが形成されている。このマーカ2は、マーカ毎に複数の穴21a~21dの幅寸法を特定して、その大きさに特徴を付けて設けることで、それぞれのマーカにマーカ情報としての識別情報であるIDを定義することができ、複数のマーカを判別できるようにしたものである。このマーカ情報は、位置検出装置4のマーカ情報記憶部42にも格納されている。
【0013】
図5は、マーカ2の他の構成例を示している。マーカ2のマーカ情報を与える部分として、図4に示した穴21a~21dの代わりにマーカ2の基材表面20に突起部(凸部)22a~22dを設けて測距レーザ6とマーカ2間の距離に変化を与えることで測距距離を変更するものである。
【0014】
図6は、マーカ2の他の構成例を示している。マーカ2のマーカ情報を与える部分として、図4に示した穴21a~21dの代わりにレーザ光を吸収する素材のシート23a~23dをマーカ2の基材表面20に貼り付けて、測距レーザ6がマーカ2を走査した際に、レーザ反射光に強弱を与え測距レーザ6の測距距離を変更するものである。
【0015】
図7は、測距レーザ6の出力イメージを示した図である。
移動体3に取付けた測距レーザ6は常に測距状態としておき、マーカ2(図1に示されたマーカ2A、2B、2C、以下同様)の横を移動体3が水平に走行してマーカ2を測距レーザ6で走査した際の測距レーザ6の出力変化を示したものである。マーカ2の幅寸法MLの範囲における測距レーザ6の出力分布は、穴21a~21dを有しないマーカ2の基材表面20からの反射による出力はP1、P2のように同じとなり、穴21a~21dを有する部分では、サインポスト1(図1における1A、1B、1Cに相当している。以下同様)の表面からの反射となって距離が長くなるので、出力はP3のように、P1、P2よりも減少する。即ち、マーカ2に対して水平に移動体3が走行しているため、マーカ2の穴21a~21dが存在しない部分での測距距離L1、L2は同一となる。なお、測距レーザによっては、距離が長くなるほど、出力が増加するものもある。
なお、図5図6に示したマーカ2についても、突起部22a~22dあるいはシート23a~23dによって測距レーザ6の出力分布が変化する。
【0016】
図8は、マーカ2と移動体3の自己位置の方位差を演算する際の一例を示した図である。
移動体3に取付けた測距レーザ6は常に測距状態としておき、マーカ2の横を移動体3が斜めに走行してマーカ2を測距レーザ6で走査した際の測距レーザ6の出力変化を示したものである。マーカ2の幅寸法MLの範囲における測距レーザ6の出力分布は、穴21a~21dを有しないマーカの基材表面20からの反射による出力はP1、P2のように移動体3と距離が長くなるに応じて減少し、穴21a~21dを有する部分では、サインポスト1の表面からの反射となって距離が長くなるので、出力はP3のように、その距離に応じてP1、P2よりも減少する。
即ち、マーカ2に対して移動体3が斜めに走行しているため、マーカ端検出時の測距距離L1と、マーカ端通過時の測距距離L2とは異なるので、マーカ2に対する移動体3の傾きの角度θをarccos(L1-L2)/MLの演算により求めることができ、その結果、移動体3がマーカ2に対して何度の方位差で走行しているかを検出することができる。
これにより、マーカ2の穴とマーカ2の表面部の割合が何%短く反応するかを計算することで、マーカ2のマーカ情報である識別情報を検出することが可能となる。これらの処理は、マーカ検出部41によって実行される。図5図6に示したマーカ2を用いた場合でも同様である。
【0017】
実施の形態1では、測距レーザ6の出力変化にマーカ2のマーカ情報を与える部分となる形状あるいは反射率の異なる素材を組み合わせたパッシブプレートをマーカとしてサインポスト1に設け、これを安価な測距レーザで検出することで、絶対位置検出を実現することができる。
また、パッシブプレートを用いることで、サインポスト側には電源等が不要であり、インフラ導入コストを抑制することができる。また、電池交換なども不要であることからメンテナンスフリーとなる。
移動体側には、測距レーザ6を用いることで、マーカ2までの距離を検出することができるため、より高精度な位置検出が実現可能である。通常のバーコードリーダでは、サインポストは検出できても、サインポストとの相対距離は検出できない。
【0018】
実施の形態1の構成によれば、測距レーザ6がマーカ2を通過した時点で絶対的な自己位置を検出することができるため、屋内でも安価で高精度な自己位置検出が可能である。
測距レーザ6のレーザ光は円形のスポットとなるため、マーカを認識するためには移動体3がマーカ2の端から端までを走行することで、走査を完了する。
測距レーザ6がマーカ2を認識するために、マーカ2の基材からの反射区間の距離と、マーカ2の基材以外の部分(図4においては、穴21a~21dの部分)の反射区間の距離を移動距離から測定すること、かつマーカ端から通過後のマーカ端までの距離を測定し、その間の測定距離内にマーカ情報記憶部42に登録した識別情報から、該当する識別情報のマーカを抽出しマーカ情報記憶部42に定義したマーカの座標から測距レーザ6との距離を用いて、自己位置を検出する。
測距レーザ6がマーカ2を通過した時点でマーカ2の全体の幅寸法MLを測定した結果、その距離があらかじめ登録しているマーカサイズよりも短い場合、移動体3はマーカ2に対して斜めの角度θで走行していることが計算でき、また最初のマーカ端までの距離と最後のマーカ端との測距距離L1、L2を用いても傾斜角度が計算できることから、これらの測定結果から自己位置の検出と共に自己方位の検出もあわせて実施する。
【0019】
測距レーザ6は固定ビーム式のため、移動体3がマーカ2の前を通過することで初めてマーカ認識が可能となるが、測距レーザ6の設置台5を水平方向に可動な構造にすることで、測距レーザ6が自動で左右に走査するバーコードリーダのような動作を行うものでも良い。
固定ビーム式の場合は、移動体3がマーカ2を通過して初めて、位置、方位の検出タイミングが確定するが、測距レーザ6が自動で走査動作するものの場合は、移動体3がマーカ2の付近に接近すれば、マーカ2を検出でき、かつ端面の手前と奥までの距離を測定することで、検出タイミングを広い範囲で実施することが可能となる。
この場合、移動体3がマーカ2を通過しなくても測距レーザ6の走査範囲にマーカ2が存在すれば絶対位置検出が可能となる。
【0020】
実施の形態1における移動体位置検出システムは、移動体が走行する領域に設置されたサインポストに設けられ、識別情報がマーカ情報として定義されたマーカ、移動体に搭載され、マーカにレーザ光を照射する測距レーザ、マーカのマーカ情報およびマーカごとの絶対位置座標が格納されたマーカ情報記憶部、走行する移動体の測距レーザによってマーカを検出してマーカに定義されたマーカ情報を導出するマーカ検出部、マーカ検出部で得られたマーカ情報とマーカ情報記憶部に格納されているマーカ情報に基づき移動体の自己位置を演算する絶対位置演算部を備えたことを特徴とする。
【0021】
実施の形態2.
図3は、実施の形態1に係る移動体位置検出システムにおける位置検出装置に自律航法機能を組み合わせた場合の位置検出装置4の構成を示すブロックである。位置検出装置4は、移動体3に搭載されており、図2に示したマーカ検出部41、マーカ情報記憶部42、絶対位置演算部43の他に、移動距離演算部44、旋回角度演算部45、移動量演算部46、自己位置推定部47を有している。マーカ検出部41、マーカ情報記憶部42、絶対位置演算部43の機能は、実施の形態1と同様である。


【0022】
移動距離演算部44は、無人搬送車、フォークリフト、台車などの移動体3に搭載された車速センサ7によって得られた移動体3の車輪の移動距離に従い発生する車速パルスから相対移動距離を演算する。
旋回角度演算部45は、移動体3に搭載されたジャイロセンサ8によって得られた移動体3のヨー方向の方位変化量から移動体3の旋回角度を演算する。
移動量演算部46は、移動距離演算部44と旋回角度演算部45の演算結果出力に基づき移動体3の移動量である相対移動ベクトルを演算する。
移動距離演算部44、旋回角度演算部45および移動量演算部46、自己位置推定部47は自律航法の基本機能を果たしている。
自己位置推定部47は、移動量演算部46からの出力により、移動体3の相対的位置を推定する。即ち、自己位置推定部47は、絶対位置演算部43によって得られた移動体3の絶対位置および絶対方位に自己位置を更新することで移動体3の自己位置を補正する機能を有している。
【0023】
実施の形態2では、測距レーザ6の出力変化にマーカ2のマーカ情報を与える部分となる形状あるいは反射率の異なる素材を組み合わせたパッシブプレートをマーカとしてサインポスト1に設け、これを安価な測距レーザで検出することで、絶対位置検出を実現することができる。
また、パッシブプレートを用いることで、サインポスト側には電源等が不要であり、インフラ導入コストを抑制することができる。また、電池交換なども不要であることからメンテナンスフリーとなる。
移動体側には、測距レーザ6を用いることで、マーカ2までの距離を検出することができるため、より高精度な位置検出が実現可能である。通常のバーコードリーダでは、サインポストは検出できても、サインポストとの相対距離は検出できない。
【0024】
実施の形態2の構成によれば、測距レーザ6がマーカ2を通過した時点で絶対的な自己位置を検出することができるため、屋内でも安価で高精度な自己位置検出が可能である
車速パルスは予め搭載する機器に1パルスあたりの移動距離を定義しておく。
測距レーザ6のレーザ光は円形のスポットとなるため、マーカを認識するためには移動体3がマーカ2の端から端までを走行することで、走査を完了する。
測距レーザ6がマーカ2を認識するために、マーカ2の基材からの反射区間の距離と、マーカ2の基材以外の部分(図4においては、穴21a~21dの部分)の反射区間の距離を車速パルスによる移動距離から測定すること、かつマーカ端から通過後のマーカ端までの距離を測定し、その間の測定距離内にマーカ情報記憶部42に登録した識別情報から、該当する識別情報のマーカを抽出しマーカ情報記憶部42に定義したマーカの座標から測距レーザ6との距離を用いて、自己位置を検出する。
測距レーザ6がマーカ2を通過した時点でマーカ2の全体の幅寸法MLを測定した結果、その距離があらかじめ登録しているマーカサイズよりも短い場合、移動体3はマーカ2に対して斜めの角度θで走行していることが計算でき、また最初のマーカ端までの距離と最後のマーカ端との測距距離L1、L2を用いても傾斜角度が計算できることから、これらの測定結果から自己位置の検出と共に自己方位の検出もあわせて実施する。
【0025】
実施の形態2における移動体位置検出システムは、移動体の車速に基づいて前記移動体の移動距離を演算する移動距離演算部、移動体の旋回角度を演算する旋回角度演算部、移動距離演算部からの移動距離と旋回角度演算部からの旋回角度に基づき移動体の移動量を演算する移動量演算部、移動量演算部の演算出力および絶対位置演算部からの出力に基づき移動体の相対移動位置と絶対位置による自己位置を推定する自己位置推定部を備えたことを特徴とする。
【0026】
上記の実施の形態によれば、屋内でも予め決められた1パルスあたりの移動距離を用いて自己位置推定を行い、移動体がマーカ通過ごとに累積誤差を初期化して簡易で高精度な自己位置推定が可能なシステムを安価に提供することができる。
【0027】
また、上記の実施の形態では、建屋の屋内を走行する移動体位置検出システムについて説明したが、サインポストを屋外に設置する場合でも同様に適用することが可能である。
【0028】
複数の移動体が存在し、測距レーザ間の誤検知を避けるため、測距レーザ毎に固有の周波数でパルス制御し、その反射パルスを識別することで誤検知を回避することも可能である。
【0029】
図9は、実施の形態1に係る移動体位置検出システムにおける絶対位置検出処理のフローチャートを示す図である。
マーカ検出部41では、移動体3がマーカを通過した際、マーカと移動体間の相対距離、相対方位を求める。また同時に、マーカの識別情報も検出する(ステップS91)。
マーカの識別情報を取得できたか否かを判断し(ステップS92)、取得できた場合は、識別情報比較処理を実施する(ステップS93)。取得できなかった場合は、マーカ検出処理を継続する(ステップS91)。
ステップS93における識別情報比較処理は、絶対位置演算部43で、検出したマーカ識別情報とマーカ情報記憶部42に記憶されているマーカ識別情報の比較を行う。
マーカ識別情報が一致した場合は(ステップS94)、マーカ識別情報の座標データに、マーカ検出部41で検出したマーカと移動体間の相対距離、相対方位を加算し、移動体の絶対位置、絶対方位を演算する(ステップS96)。移動体3の絶対位置、絶対方位演算後は、マーカ検出処理に戻る(ステップS91)。
マーカ情報を比較した結果、マーカ識別情報が一致しない場合は、マーカ情報記憶部42に記憶されている全ての識別情報と比較したか否かを判断し(ステップS95)、未だ比較すべき識別情報が残っている場合は、識別情報比較処理を継続する(ステップS93)。マーカ情報記憶部42にある全てのマーカ情報と一致しない場合は、エラーとして、マーカ検出処理に戻る(ステップS91)。
【0030】
実施の形態1における移動体位置検出方法は、測距レーザによって測距したマーカと移動体までの距離の長さと、移動体の移動距離によって、移動体が走行する移動領域に設置されたマーカのマーカ情報を演算するステップと、マーカ情報を取得したか否を判定するステップと、マーカ情報を取得した場合は、当該マーカに対応したマーカ情報である識別情報の座標データを取得するステップと、マーカ情報である識別情報の座標データに測距距離および方位を加算した絶対位置、絶対方位の情報を用いて自己位置を演算するステップを含むことを特徴とする。
【0031】
図10は、実施の形態2に係る移動体位置検出システムにおける位置検出方法のフローチャートを示す図である。
まず、車速センサ7で得られた車速パルスからパルス数によって移動体3の移動距離を演算し(ステップS101)、次にジャイロセンサ8から得た方位変化量から移動体3の旋回角度を演算する(ステップS102)。
ステップS101とステップS102で得た移動距離と方位変化量を用いて移動量演算部46において移動体3の移動量を演算する(ステップS103)。
次に、マーカ検出部41で、移動体3がマーカを通過した際、マーカと移動体間の相対距離、相対方位を求める。また同時に、マーカの識別情報も検出する(ステップS104)。
マーカの識別情報を取得できたか否かを判断し(ステップS105)、取得していない場合は、自己位置推定部47において、移動量演算部46の移動体3の移動量演算結果を元に自己位置推定の動作を行い(ステップS106)、その後ステップS101に戻る。
マーカの識別情報を取得した場合は、実施の形態1における移動体位置検出方法の処理フローチャート(図9)のステップS93~ステップS96と同様の処理をステップS107(ステップS93に相当)、ステップS108(ステップS94に相当)、ステップS109(ステップS95に相当)、ステップS110(ステップS96に相当)において実施し、移動体の絶対位置、絶対方位を検出する。また、自己位置推定部47の自己位置情報を検出した絶対値、絶対方位に更新する。
【0032】
実施の形態2における移動体位置検出方法は、移動体の車速によって移動体の移動距離を演算するステップと、移動体の方位変化量から移動体の旋回角度を演算するステップと、移動距離と方位変化量を用いて移動体の移動量を演算するステップと、測距レーザによって測距したマーカと移動体までの距離の長さと、移動体の移動距離によって、移動体が走行する移動領域に設置されたマーカのマーカ情報を演算するステップと、マーカ情報を取得したか否を判定するステップと、マーカ情報を取得していない場合は、自己位置推定の動作を繰り返すステップと、マーカ情報を取得した場合は、当該マーカに対応したマーカ情報である識別情報の座標データを取得するステップと、マーカ情報である識別情報の座標データに測距距離および方位を加算した絶対位置、絶対方位の情報を用いて自己位置を演算するステップを含むことを特徴とする。
【0033】
上記実施の形態における移動体位置検出方法によれば、測距用レーザがマーカを通過した時点で絶対的な自己位置を推定することができるため、屋内でも安価で高精度の自己位置推定が可能である。
【0034】
なお、位置検出装置4は、ハードウエアとして、プロセッサと記憶装置から構成される。記憶装置は、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクあるいはSDカードなどの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサは、記憶装置から展開されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサにプログラムが展開される。また、プロセッサは、演算結果等のデータを記憶装置の不揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置から無線装置などを用いて、外部の管理用コンピュータに自己位置情報を送信してもよい。
【0035】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B,1C サインポスト、2,2A,2B,2C マーカ、3 移動体、4 位置検出装置、6 測距レーザ、7 車速センサ、8 ジャイロセンサ、41 マーカ検出部、42 マーカ情報記憶部、43 絶対位置演算部、44 移動距離演算部、45 旋回角度演算部、46 移動量演算部、47 自己位置推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10